零号機

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折り返し?

[1] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/21 00:46 (Mon) No.176

名場面もここまで5作。

・雨のち晴れ
・蒼き淵にて
・時が、走り出す
・それは夏の夜の夢
・I burn for you

以下、作品選ぶに当たっての言い訳(?)を少し。

なるべく散らしたいな、と思って選んではいるですが、どうしても好み、てのは出ちゃいますね。
「活劇」って感じの作品より「静かな」作品を選んでしまうのは、かつて「叙情派」などとこっぱずかしいことを
標榜していた私らしいかと思います。

「本編やり直し系」の作品が無い(蒼き、は微妙ですが)のは、この系統は長編が多く、よほど作品名とその
情景を記憶していないと、その場面に辿り着けない、という現実的な理由があります。

また学園もの、特に「リナレイもの」を含めたいな、と考えてはいるのですが、この系統の作品はどうしても
キャラ間の「掛け合い」が多いので、字数限界を考えての切り取りがとても難しい、という理由が有ります。
でも、せめて一作品は入れたいな、と考えています。
(と、いうか既に「これなんだよなぁ」って作品は有るんですが、どのシーンを選ぶか?がものすごく難しい。)

あと今の所、徹底的な「痛モノ」も無いですよね。
実はこれも候補作がいくつか有ったのですが、どうしてもR18系が多く含まれるので引用するのが憚られる、という
理由があります。
たとえば「まさひこ」さんの「絆シリーズ」で描かれるレイの猛烈なエロティシズムは「興奮」するなんてものを
遥かに通り越して心底「綺麗」だとも思いますが、ある種リアル過ぎる故に流石に引用するのは諦めました。

それともう一作除外した作品を具体名で書いておくと「ゆきかきさん」の「記憶のノート」。
あのラスト、夏に雪が降り積もるシーンはそれこそ「名場面」に値すると思いますが、あのシーンだけを切り取っても、
あのレイの哀しさ、ひたむきさと、シンジの純粋さを伝えるのは到底無理だろうと思えたので除外しました。
でも、かつて読んだことの有る方は最終ファイルだけでも再読してみると・・・・あの夏に帰れるかもしれませんね。

[2] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/21 00:47 (Mon) No.177


また「何故あの人の作品を出さないの?」って思う作家さんが何人かいるかと思います。
大丈夫。全部じゃないけど、何人かは、多分これから出てくると思います。
ここまでわざと外してた作家さんもいらっしゃいますからね。
でもねぇ、難しいんですよ。どの作のどの箇所を選ぶか?ってのが。
嬉しい悩みなんですけどね。

それと本人が出てきて下さったので泣く泣く外した「YASさん」というご本人にとっては幸か不幸か解らない
作家さんもいらっしゃいましたね。
(そもそもマジで1作考えてたんだけどなぁ・・・・うーん、やっぱちと検討しよう)

さて、当初の目標まであと5作。
実は作品候補はほぼ決まっていて「どう切り取ろうか?」という感じなのですが、どうも始めてみたら
結構\面白くなってきてしまって、あれこれ読み直しているウチに結果的に溢れてしまう作品が多数、残りそう。
ですので10作品を少し超えるかな?と思います。

ま、そもそも「ベスト10!!」とかじゃ無くて、ただ単に私が好きな作品、ってだけですしね。
「あーそんなのもあったね」って思ってもらたら本望です。

あ、で、もし気が向いた人がいたら別作品、書いてももらっても嬉しいかも。



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少し違う話

[1] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/19 00:59 (Sat) No.174

コロナの影響で完全テレワークに移行したため、昨年の4月(?)以来、出勤したのはたった3回。
当初はなかなか慣れずかなりイライラしていたのが、最近では、すっかり慣れてしまい、呑みに
行けないことを除けば

「まぁ、これはこれで良いか。時間作りやすいし」

とか思っていたら7月から異動で週の半分程度かなり遠距離のオフィスへ出勤しなければならなくなり
「今更耐えられるのかなぁ」と不安を感じている昨今です。

「シン」の劇場公開ももうすぐ終了らしいので「せめてもう一回くらい観ておく?」とか思いつつも、
上記のようにすっかり出不精になった身体はなかなか動かせず「どうせ若干でも感染リスクを背負うのなら
蛇喰夢子ちゃんか雪代巴さんが観たいかな」とかの浮気心が激しく頭をもたげてくるのですが、私の中の
綾波さんは「黒波さん」や「ポカ波さん」のように優しくは無いので、冷たく「そう……さよなら」とか
言われそうで逆に「うー、どうしよ」とか悩んでます。

そんな私。
この15年くらい、あまりアニメも観ず、そもそもゲームもほとんどやらない私の、ほぼ全ての情報ソ\ースで
ある息子達から得た情報だと、最近だと「ゆるキャン」というアニメが人気とのこと。少し観てみたら・・・
・・・ふーん、なるほどねぇ。

20年まえのアニメの二次創作作品を読み直していたアタマで見たこの作品は、当初そのあまりの距離感に
暫し呆然としたのですが、しばらくしたら「実は20年たっても何も変わってないのかな?」と思ったり。

「ゆるキャン」って、これといったストーリー、ドラマも無くただただひたすら少女達がキャンプする
というアニメみたいですね。(まだ全部見終わってないので)
美少女アニメですが男の子は全くでてこない。
争い事、的なものも全く無い。
全編、とても平和。
どうやらそれは「狙って」のことらしい。(息子談)

これってある種「閉塞感」に対する回答なのかな?と。
例えれば、もしかしたらTV版26話の「学園エヴァ」の世界なのかな?と
「虚構\」の中に「閉塞感に満ち溢れた現実の埋め合わせを」求めているのかなぁ?と。
TEOEてのは正直な作品だったんですね。改めて。

[2] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/19 01:00 (Sat) No.175


とか思っていたら「スーパーカブ」って作品も結構\、話題になっているらしい。
戦後日本最強の工業製品である「スーパーカブ」を称える(?)原作小説/漫画のアニメ化らしいけど
これもまぁ、ある種レイみたいな(でもレイと違って美少女じゃない)女の子と、その周囲数人だけの
これまた非常に「閉じた世界」で進んでいくストーリ。
ロマン派印象波のクラシックピアノ曲のみで構\成される劇伴の音楽が、これまた非常に美しい作画に
実に気持ちよく溶け合って、やわらかい世界感を構\築しています。

と、思っていたらこの作品も、一部で炎上騒ぎを起こしているらしく、主人公の女の子が、絵面に似合わず
実は結構\自己主張強めの女の子である事が段々あきらかになってきて少しキナ臭くなって来た所へ、
話中、交通法規に抵触する描写が有った事、などが槍玉にあげられているらしい。

そもそも、主人公の大人しい女の子が「閉塞」した日常からカブに乗る事で少しずつ脱出することを
描いているのだと思いますが、そういった平和な「虚構\」の中に安息を求めていたら、
脱出した(=逸脱した)とたんに「僕の気持ちを裏切ったな!」て感じなのかな?
やっぱりTEOE当時と変わっていないのかなぁ、とか思ったり。

庵野さんってのは「馬鹿」正直な人なんでしょうね。確かに。

ちなみに私、上記両作品ともネガティブなイメージは全く無いので誤解なきよう。
むしろどっちか?ていうと肯定的だと思う。昔はキャンプにもよく行ったし。
「スーパーカブ」は今後の展開、結構\、楽しみにみてます。

それとここ最近で一番気に入ったアニメは「少女終末旅行」。
これは綾波な人へのシンクロ率、高かったんじゃないかな?


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【名場面】I burn for you

[1] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/17 01:36 (Thu) No.171


カメラマンとなったケンスケに声を掛けてきた兵士「碇シンジ」
戦場での僅かな休息時間での語らいでは埋めきれない10年の歳月と、癒せない心。


---------------------------------------



硝煙の匂いが流れ込んできた。俺はカメラを構\えてみた。ファインダーを覗く
と、そこには戦争があった。殺し、殺される戦争。破壊し、破壊される戦争。ご
く一般的な戦争がそこにあった。ナショナリズムに根ざした戦争。停戦協定が破
られ、UN軍との間に起こった小競り合い。ありがちな、世界の裏じゃ誰も気に
しない様な戦争。

俺はフィルムを1本写し終えた。次のフィルムを用意しようとした時、一人の
兵士が立ち上がってゆっくりと歩きはじめた。ライフルを持たずに、その男は歩
いていた。俺はフィルムを入れすぐにファインダーを覗き込んだ。

「何をしてるんだ……気でも狂ったか」

男はゆっくりと教会に向かってきた。素早くピントを合わせる。戦車の機銃が
掃射され、男の傍を土煙が走った。それほど距離がある訳でもないのに当たらな
かった。ゆっくりと土煙が晴れる。

「シンジ……」

俺の呟きは爆音にかき消された。シンジはゆっくりと歩いていた。土煙が晴れ
ていく。再び爆音が鳴り響き土煙が立ち上った。至近弾だった。シンジの姿が消
える。俺は教会を飛び出した。

なんなんだ……何をしてるんだシンジ……いったい。俺は教会の大きな扉を開
け放った。土煙の中からシンジの姿が現われる。シンジは何も持たずにゆっくり
と歩いていた。ただ歩いていた。俺は立ち止まった。

不思議な光景だった。硝煙の立ち込める戦場を、飛び交う銃弾を気にも留めず
に、ただ歩いていた。通りを、教会に向かって、ゆっくりと………まるで日曜の
お祈りにでも行くかの様だった。俺はカメラを構\えシャッターを押した。


美しかった。その姿は……ただ、美しかった。俺はシンジを撮り続けた。しか
しそれは長く続かなかった。シンジは教会から20m程の所でひざまずいて、腕
を前に伸ばした。何かを優しく抱きしめるかの様に。そう……シンジは何も無い
空間をそっと抱きしめていた。

そして……血しぶきが舞った。



[2] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/17 01:37 (Thu) No.172




オフィス街の中の小さな公園を通り抜け、俺達はある国連機関のビルの前まで
来た。前を歩いていたアスカはくるりと振り返った。

「明日の晩、開けときなさいよ」

「なに?デートのお誘い?」

「ぶーっ。鈴原とヒカリ呼んで、アンタの帰国祝いするからね」

「そりゃどうも」

「みんな心配してたんだからね。全然連絡無かったし」

アスカが口を尖らせて文句を言う。

「俺だって心配してたよ。生きて帰れるのかってね」

「全く無茶ばっかりして……。いつまで日本にいるの?」

「しばらくいるよ。ゆっくりしたいし。先輩がさ、山の写真撮らないかって誘
ってくれてるんだ」

「やま?」

「セカンドインパクト以後の日本アルプスの植生の変化を写すんだって」

「ふーん」

アスカは興味なさそうに肯いて時計を見た。

「いけない、行かなくちゃ。時間と場所、電話するね」

「ああ。じゃ、頑張って」

アスカは小走りでビルに入ってく。俺はその形の良いお尻を眺めていた。素晴
らしい、そう思った瞬間アスカがこっちを向いた。

「ねえ……シンジの……探し物って何だったのかな」

「さあ…聞かなかったから」

「見つかったのかな」

「………たぶんね」


----------------------------------------



作者はdoc_itohさん。ご自身のHPでの公開だったと記憶しています。
読み直して改めて思い出したのですが、この作品、作中レイは一言も話さない、というより
上記の引用の後の1シーン、いやたった一言で描かれだけなんですよね。
なので流石にそこを引用するのは止めておきました。

まぁ、上記を読めば判っちゃいますけどね。

言ってしまうば某有名アニメジブリ映画でのヒロイン登場シーンと同じでは
あるのですが、こんなにも印象が違う上に、こんなにも美しいシーンになるんだ、
と初読の時に感激したのをよく覚えています。

TEOEの先を想った時にありうる未来。
哀しむのでは無く、ただ受け入れる。
それが最も「正しい」気がした作品です。

※このケンスケだったらアスカに似合うよね・・・



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【名場面】それは夏の夜の夢

[1] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/16 00:49 (Wed) No.166


あの夏から10年、晴れて夫婦となったシンジとレイに同窓会の案内状が届く。
愛娘の「アヤ」を連れ訪れた会場の隣ではなんとNERVの面々も飲み会の真っ最中。
アスカも居ればミサトもいるしオペレーターズに冬月副指令、そしてゲンドウも。
こうなってしまってはタダで済むわけも無く、案の定、色々と騒ぎが起こるのだが・・・


********************************


レイが駆けた。

立ちはだかり、ゲンドウの前にアヤをそっと差し出した。

ゲンドウはそれを見つめた。自分を見つめる四つの目。特になんの汚れもない

小さな瞳がゲンドウの心に突き刺さった。

逡巡が心の中を駆ける。出そうとした掌に、血の幻覚が見える。

ゲンドウはそれを振り払うように拳を握りしめた。

血塗られた手には決して触れてはならないものがある。今のゲンドウにはアヤが

そうだった。

「お義父さん‥‥」

レイが言った。今度は迷わなかった。

ゲンドウの胸にアヤを押しつけ、まっすぐにその瞳を見つめる。レイばかりでは

ない。ゲンドウは背にシンジの視線を痛いほど感じていた。

それでもゲンドウはしばし手を出そうとはしなかった。

ゲンドウに手を出させたのはアヤだった。

預けられた胸に無い手がかりを求め、アヤはその小さな手で服地をしっかりと掴

んだ。まるでゲンドウによじ登ろうとでもするように‥‥

それが思わず手を出させた。反射的にアヤの腰を支えた。

体重を支えた事を確認して、レイは手を引いた。

一歩。そしてもう一歩、レイが下がる。

それでアヤは完全にゲンドウの腕に抱かれた。

「あなたの‥‥おじいさんよ」

レイはアヤに小さく言った。

アヤはゲンドウの腕の中でしばらくその顔を見上げていた。初めての人間に対し

て見せる赤ん坊特有の表\情。まるで相手のすべてを見透かしてるような、後ろめた

い人間には恐くなるような顔でじっとゲンドウを見ていた。

どのくらいそうしていただろうか、アヤはその均衡を自ら破った。

おもむろに小さな手を伸ばすと、ゲンドウのあごひげを鷲掴みにして引っ張った

のだ。

アヤにしてみれば父親にないそれに興味を持ったのだろう。

ゲンドウの顔が奇妙に歪む。

それを見てアヤが笑った。もう一方の手も動員し、両手で髭を引っ張る。

「やめなさい、アヤ」

慌ててレイが止めようとする。

「いや、いい」

ゲンドウはそれを制した。

[2] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/16 00:51 (Wed) No.167



アヤが髭から手を離したのを見計らって、ゲンドウは放り投げるように高く頭上

にかざす。アヤはこれが、高い高いが大好きだった。いつもはシンジがしてやるが、

その度に大喜びする。

甲高い声、手足を可能\な限りバタつかせ、まるでもっとしろと言うようにゲンド

ウを見つめる。その顔に浮かんでいるのはこぼれ落ちるような満面の笑み―\―\

ゲンドウはそれに釣られた。不思議と自然に笑みがこぼれた。

「ははは、そらッ!」

二度、三度。下げてからまた上げる。それを繰り返す。その度にアヤは嬌声を振

りまいた。

「シンジの子だな。おまえも高い高いが好きか‥‥」

ゲンドウがポツリと呟いた。

顔立ちはレイに似ているが、父親から譲られた黒い髪。目元が似ているせいか笑

うと幼いときのシンジを彷彿とさせる。

あの時もそうだった。赤ん坊の頃のシンジもこうして高い高いをしてやると喜ん

ではしゃぎ回った。

幸福だった思い出と、苦い思いが共によみがえった。

ゲンドウはもう一度アヤを自らの腕に抱き、それからレイの腕に戻した。

「シンジ‥‥」

振り返ったゲンドウはシンジと目をあわせた。その表\情には見たことのない薄笑

みが浮かんでいた。

「ありがとう」

恐らく、誰も聞いたことのないゲンドウの言葉だった。







作者は「特2−22」さん。
初出はNIFTYだったと記憶していますが、Web公開がどこだったのか?は不明です。

TEOE前に書かれた作品なためLRSなんて発想自体が存在せず、ただ素直にTV本編の後日談を描いた作品なため、
夫婦となっているシンジとレイの関係も妙にベタベタせずとても自然な分、逆にリアリティがあり結果として
これ以上ほのぼの暖かいLRS作品もそうは無かったと思います。

以降ある種お約束となるドタバタ劇含め、どこをとっても幸せなシーンが続きますが、引用したのはゲンドウとの場面。
やはりゲンドウとシンジの和解有ってこそレイも本当に幸せになるれのだと思います。


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蒼き淵にて

[1] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/8 20:46 (Tue) No.155

蒼き淵にて

「全ての使徒を撃退した筈なのに」
予\想外の最後の使徒の出現により引き起こされたサードインパクトの結果、人類は滅んだ。
初号機にシンジとレイ、弐号機にアスカだけを残して。
絶望的な状況の中、プラグの機能\により提供される過去の記憶の幻影による安らぎと後悔を道連れに
3人だけの時間が静かに時が過ぎていく。

**************

「ええ、わたし行くわ」

「無茶だ!」

「ええ、恐らく帰りまでエネルギーがもたないでしょうね。
 でも、今そこへ戻ればもう二度と外へ出ることはできない気がするの。
 テストに使っちゃってロケットがもうないし」

「駄目だよ!」

「そう、駄目なのよシンジ。わたしはもう待っていられない。
 何もすることが無くなってここでただ待つだけなんて気が狂うわ。
 お願い、黙って行かせて。
 きっとなんとかなるわ。勘だけどね」

「…アスカ」

「そういうことよ。じゃ、行ってくるわ、シンジ。
 うまくいったら助けに戻るからね。
 それからファースト、」

 レイが顔を上げる。

「みっずいーらずぅ!シンジとお幸せにっ」

「アスカってば」

シンジがうろたえ、モニタのアスカがウィンクし、弐号機が身を翻して、通信は途絶した。

[2] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/8 20:49 (Tue) No.156


アスカは帰らなかった。
シンジの苛立ちは日ごとに募っていった。
当たり前といえば当たり前だ、彼女は当てもなしに出ていったのだ。

「全く、どっちがバカなんだよ」

そう言うシンジを自己嫌悪が襲う。
なんとしても引き止めるべきだったのではないか?

シンジは塞ぎ込んでいた。レイも話すことがなかった。
無言の一日が暮れた夜、シンジは悪夢にうなされた。

彼の前に、アスカとカヲルが無残な姿で倒れている。
周りを取り囲む人々がシンジを責めている。
自責の念に押しつぶされる彼の脇へ立って、レイは人々を追い払った。
すると、全員がゲンドウになった。

偽者、と呼んでやると今度は子供のシンジになって逃げ惑った。

次の日、レイは初号機を動かして施設の点検作業をしていた。
シンジは補助シートで力なく横たわっていた。

ふとレイは、シンジが自分を見つめていることに気付いた。
見返しても目線を逸らそうとしない。
無視して作業を続けていると、唐突に話し掛けてきた。

「奇麗だな、綾波は」

しばらく固まっていたレイは、ゆっくりとシンジの方を向いた。

「この照明の中で、近くで見てるとまるで妖精みたいだ。
 外で制服を着ていたときとは全然感じが違う」

「そう」

「うん。でも僕は、太陽の下で、学校での綾波をまた見てみたいんだ。
 もう無理だけどね」

「…」

「でもその代わりに、僕らは一緒だ。ずっと、いやでも、死ぬまで」

にっこりと笑った。

「碇君」

レイの抵抗は弱々しく、シンジは容易に彼女の自由を奪っていた。
両手首を頭の上へ押さえつけて、唇を重ねる。
レイは体を強張らせながらも、逃げようとはしなかった。
シンジの指がスイッチを探り当て、レイのプラグスーツが音を立てて緩んだ。
シンジは無表\情にそれを脱がせ始める。
レイは顔を背けていた。上半身を露にされてしまうと、彼女は目を閉じた。

しばらくの間、二人は、そのまま動かなかった。
レイが再び目を開くと、シンジは彼女に覆い被さったまま、肩を震わせて泣いていた。

息がし難くて顔が火照るのはどういうことだろう、などとレイは考えていた。

[3] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/8 20:53 (Tue) No.157


Sadaさん作。本放送放映直後に上梓された作品だと思われますが、初出、初出場所は不明です。

あくまでも静かに、ある種突き放した文体で描かれる透明な絶望感と閉塞感。
今回、久しぶりに再読してみましたが、TV本放送を受けての作品なので、新劇場版はもちろん旧劇場版とも違う世界観と読後感が強く印象りますね。

転記したのは、物語ラスト前、アスカが可能\性を求めて外界で出ていく場面とそれに引き続いてのシンジとレイの情景。
本当は一番ラストのシーンで描かれるのレイそれはそれは綺麗なのですが、流石にラストシーンはねぇ。

この作品で描かれるとにかくクールなレイって、TV本編から「綾波レイ」と付き合ってきた方々にとってはある種懐かしいレイかと思いますが、
新劇でのレイのイメージとは、しみじみかなり距離ありますね。


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