[1] 投稿者:ZETTON 投稿日時:2021/11/7 00:04 (Sun) No.283
暑さにマンションでひとり目覚めたシンジ。
いったいどれだけの時間眠っていたのだろう?
いや「目覚めた」のでは無く「気付い」だけなのかも知れない。
同時に襲ってくる圧倒的な憔悴、絶望、後悔、そして孤独
耐えられずに「誰か」を求めて一人、外に出る。
ーーー本文よりーーーーー
誰か・・・・助けて・・・・・
「・・・・ここには・・・いたくないよ・・・」
シンジは人影を認識し、それが彼女であると気づいた瞬間、反射的に顔を伏せた。
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無表\情な紅い瞳に怯えながら、
それでも誰かにそばにいて欲しくて
彼女を連れ、彷徨うシンジ。
彼女は、決して逆らわず
シンジ共に歩み、そして
何も語らない。
[2] 投稿者:ZETTON 投稿日時:2021/11/7 00:06 (Sun) No.284
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シンジは軟らかな感触の中で目が覚めた。ゆっくりと瞼を持ち上げる。暗い。自分
は軟らかな何かに包まれているようだ。目が慣れてくると視界にアスファルトの路
面が映る。シンジはゆっくりと身体を起こした。あたりはすでに夜。まばらな街灯
が国道を照らしている。
「・・・・・・」
シンジは彼女の膝の上で寝ていたのに気づいた。彼女も上体をベンチが作り付けら
れたバス停の壁にあずけて目を閉じている。
「・・・あや・・な・・み・・・」
シンジはじっと彼女の寝顔を見つめていた。そしてゆっくりとマンションを出てか
らのことを思い出していった。
・・・僕は・・・僕は・・・
久しぶりに味わった安らかな眠りと目覚めの余韻が急速に遠のいて行く。シンジの
胸に逃れることにできない現実が苦い感触とともに重くのしかかってくる。
・・・いつまで・・続くんだ・・いつまで・・・
シンジは彼女の白い頬を見つめたまま全身が冷たい汗に包まれていくのを感じた。
軽い嘔吐感がこみ上げてくる。シンジは目を閉じてそれをやり過ごす。
「・・・くっ・・・」
シンジは目を開けるともう一度彼女の寝顔を見つめた。疲れきったシンジの心にも、
彼女の姿はたとえようもなく美しいものに思えた。だが同時にそれはシンジにとっ
て恐怖の対象でもあった。
・・・行かないで・・・行かないでよ・・・
シンジの瞳に恐れと狂気の色が浮かぶ。シンジはゆっくりと彼女の肩に手を伸ばした。
[3] 投稿者:ZETTON 投稿日時:2021/11/7 00:07 (Sun) No.285
シンジの瞳に恐れと狂気の色が浮かぶ。シンジはゆっくりと彼女の肩に手を伸ばした。
「・・・う・・んっ・・・」
シンジは彼女の肩を掴むと乱暴\に唇を重ねた。彼女が驚いて目を開ける。彼女の頭
が背後の壁に強くぶつかった。
「・・・んんっ・・・ん・・・」
彼女は反射的に両手でシンジを押しのけようとしたが、シンジは全身の力で彼女を
壁に押し付けていた。彼女は何が起こったのかを理解するとシンジの胸に両手を置
いた姿勢のままじっとしていた。
・・・行かないで・・行かないでよ・・・綾波・・・
シンジは何かから逃れようとするように彼女の身体に自分の身体をあずけていった。
シンジの体重を支えきれない彼女は左手をベンチについたが、それでも支えきれず
に2人は重なるようにベンチに倒れる。
「・・・ん・・・・」
ベンチに倒れ込むと自然に唇が離れた。シンジは目を開けると彼女の瞳を見つめた。
・・・くっ・・・
そこには翳りのない紅い瞳があるだけだった。彼女はその紅い瞳でシンジの黒い瞳
をじっと見上げていた。深く、澄んだ紅い瞳で。だがそこには何もなかった。
・・・どう・・して・・・・・・どうしてだよ・・・
シンジは耐え切れずに彼女を押し倒した姿勢のまま目を閉じた。そのままのろのろ
と起き上がると彼女とは逆の方向に倒れ込んだ。
「・・・君は・・・君は・・・本当に・・・」
シンジが小さな声でつぶやいた。だが彼女は何も言わずに起き上がり、静かにシン
ジの背中を見つめた。彼女自身も気づいてはいなかったが、かすかに紅い瞳が潤ん
でいた。
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[4] 投稿者:ZETTON 投稿日時:2021/11/7 00:11 (Sun) No.286
作者はShinさん。
以前「想い - Always...with you.」を紹介した際に触れた作品です。
初出はこの作品も@isaoさんの「Innocent Red Eyes」でした。
引用部分は作品中盤での比較的温かい情景部分ですが、本作、とにかく全編通して見事なまでの憔悴感と
閉塞感の中で描かれるレイとシンジの物語は、私的に、とても辛いながらも、ある意味「これもLRSなのでは?」と言いたい作品です。
比較的短い作品だからなのかな?
昔からあまり話題にならない作品だったような気もするのですが何故なのでしょうね。
やはり内容が「キツい」からなのかな?
でも、TV本編の「綾波レイ」を追いかけた方なら絶対に理解出来る作品だと思うのですが。
「綾波展」でも「Innocent Red Eyes」」どちらもでも、現在でも読むことが可能\な作品です。
未読の方は是非、本作ラストのレイを受け止めてあげて下さい。