[1] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/23 01:21 (Wed) No.181
銀髪に紅瞳、そして抜けるような白い肌の転校生「綾波レイ」。
そんな彼女の転校以来、幼馴染のアスカとの関係をイジられ続ける毎日に困惑しつつも、どこか意識してしまっているシンジに対して、
レイはいつも至って無邪気なまま。
そんなある日、風邪をひいたレイの見舞いにアスカやいつもの面々と一緒行き、またぞろ散々イジられたシンジだが、
帰宅後、レイの部屋に忘れ物をしたことに気づき、一人取りに行ったのだが。
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「な、何言ってるんだよ!アスカとは関係ないよ!」
思わず僕は大声を出してしまった。何でこんな時にアスカの名前が出て来るんだよ。どうも昔から綾波は僕とアスカをくっつけようとしたがる。やめて欲しいよね。
「ゴメン。大声出して。でもさ、綾波がどう僕たちのこと思ってるか知らないけど、僕はアスカとは幼なじみでしかないって。変なこと言わないでよ、ホントに。」
僕の大声に始めは目と口で3つの「O」を作った綾波だったけど、すぐに表\情を思い詰めたような、それでいて覚悟を決めたような、そんな複雑な物に変えて僕をまっすぐ見つめてきた。
(どうしたんだろう・・・綾波が・・・いつもと違う・・・)
普段の綾波なら、絶対あそこで更にからかってきたに違いなかった。それに僕が必死で反論して、そんな僕を綾波が大笑いしてそれで終わり、のはずだった。
「じゃあさ、碇君にとって幼なじみ以上って・・・アスカ以上の人ってどんな人なのかな・・・」
言われた瞬間、僕は心臓が飛び出しそうなほど驚いた。この展開ってもしかして・・・
都合のいい方へと僕の思考は流れ始める。けれど頭の片隅で、この2年間散々綾波にからかわれた経験が、危険信号を発するのもまた理解していた。
(ちょっと待てよ、シンジ。何度こうやって綾波に騙された?綾波は僕をからかうのにいろんな手段を使ってきたじゃないか。もしそうじゃなくても今は綾波は風邪引いて動揺してるだけだよ。たまたま僕がそばにいたからこんなに優しいんだ。それにつけ込もうって言うの?ホントにそれでいいの?納得できるの?)
「・・それは・・僕にとっては・・・・・・」
そこで言葉が切れてしまう。理性が勝った訳じゃない。ただ、この期に及んでどうしても最後の一言が出ない。最初の言葉を口にしようと口は上下に開くのに、声帯がおかしくなっちゃったのかな、声が全然出てこない。
僕たちはただ見つめ合っている。
[2] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/23 01:21 (Wed) No.182
綾波が何を考えてるのかは分からない。僕だって心の整理がついてるわけじゃない。けどこの雰囲気は捨てたくなかった。
こんなに静かだったら、絶対聞こえるはずの時計の音も聞こえない。明るいはずの部屋も、目の前以外全く見えない。頭の中の警告音がすうっと遠くなっていって真っ白になっていく。
微かに綾波の唇が動いた。
ギシ・・・
ベッドがきしみ、そして綾波が体を寄せてくる。
・・・ゆっくりと目の前の紅が閉じられていき、軽く開いた唇が近づいてくる。まるで磁石に引き寄せられるように、僕の体も自然に前に傾いていた。
(綾波・・・僕は・・・)
僕は首を軽く傾けて、ゆっくり綾波の頭に接近させていく。それが、本当にゆっくりした動きなのか、時間がゆっくり感じられたからなのかは分からない。
ただ、今感じられるのはボーっとした自分の意識と、近づいてくる綾波の呼気だけ。
あと10センチ・・・3センチ・・・5ミリ・・・1・・・
コンコン
(!!)
(え?)
私はその乾いた音で我に返った。
そして、瞬間的に私達が何をしようとしていたかを理解して、右手で唇を押さえながら慌てて体の距離を取る。
(・・・私・・・何をしようと・・・)
きっと私今、困った顔してる。だって目の前の碇君がそうだもん。
二人の視線があった瞬間、私は碇君の方を見ていられなくなって、まるで逃げるようにベッドから身を起こした。
「あ、私が行くからいいって。見てくるね。」
「あ、うん。」
碇君も同じ事考えてたみたい。椅子から腰を浮かそうとしてたけど、私はそれを制して立ち上がった。
今は碇君見てられないし、とにかく何でもいいから動いていないと頭がおかしくなっちゃう。それに、こんな時間に碇君が出たら、それこそ他人に何を勘ぐられるか分かったものじゃないわよね。
「はーい」
どことなく落ち着かなそうな碇君を残して玄関に向かう。こんな時間に誰かしら?お見舞いにしては時間が遅すぎるし、回覧かな?
「どなたですかー」
外にも聞こえるようにちょっと大きめの声で聞いてみる。
返事はすぐに返ってきたけど、それは私にとってかなり意外な声だった。
『レイちゃん?私よ、ユイ。開けてくれる?』
[3] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/23 01:22 (Wed) No.183
作者はHALさん
この作品の初出はHP「ぴぐのへや」への投稿作だったと思いますが、その後ご自身のHP「HALの惑星」内でも
公開されたと記憶していますが、同HPは現在は「綾波展」内にサルベージされており、そこでの閲覧・DL可能\です。
HAL氏にはこういった「学園・リナレイ物」以外にも本編サイド、本編分岐の作品が多数有り、当時の一部LRS陣営(?)の
中では圧倒的な人気を誇った作家さんでしたが、特に「それから」「これから」の2作に救われた方も多かったのでは
無いでしょうか。
また引用したこの作品は、先行して公開されていた「LAST TRAVEL」の前日譚なので、もしそちらの作品を未読の方がいらっしゃったら
そちらも併せてお読みになるとさらに「ゴロゴロ」(古い表\現多謝:笑)出来ると思います。