[1] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/21 00:58 (Mon) No.178
レイを助けるためにその身を盾にしたシンジ。
以来、眠り続けるシンジに、目覚める可能\性が薄いことを知らされたレイは一つの決断を下す。
そんなレイとシンジに寄り添うアスカとかつての友人達、
そして父としてのゲンドウの願い。
あの日と同じ月明かりの元、レイはその一歩を踏み出す。
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午前0時、約束の日
三人で過ごす最後の夜。
窓辺にもたれたまま、アスカは眠っている。
夕方から窓の外を眺めたまま
一人涙を流していたアスカ。
私への気遣いからか、その顔を決して見せはしないが
時折目をこするアスカの仕種で解る。
何日も眠っていなかったのだろう・・・
開け放たれた窓から差し込む月光。
アスカの横で、暫く月を眺める。
「ごめんね、アスカ・・・」
アスカにそっとカーディガンを掛ける。
カチャ・・・
気付かれない様に、折畳み式の簡易ベッドを用意する。
コポポポポ・・・
携帯用のボンベとレギュレーターに酸素を送る。
カラ・・・カラカラ・・・
キィッ・・・カチャ・・・ン・・・
病室のドアをゆっくりと閉めると
私は碇君を乗せたベッドを押して、エレベーターへ向かった。
[2] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/21 00:59 (Mon) No.179
カシュー
コォー
蒼い月の光に包まれる屋上
カシュー
コォー
ここにあるのは
月の光と静寂
そして
私と碇君と
彼が生きている証の・・・音。
カシュー
コォー
カシュー
コォー
カシュー
コォー
カシュー
シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・・・・
呼吸器を外して碇君を抱き上げる
彼が自分より軽くなっている事に気付いたのは何時だったか・・・
溢れる涙を堪えながら、両腕に力を込める。
トクン・・・トクン・・・
微かな心音。
不安と
焦燥と
絶望と
そして、安らぎ。
トクン・・・
『レイ・・・大丈夫?』
アスカの声が聞こえたような気がする。
ごめんね、アスカ・・・わがままで・・・
私、そんなに・・・強くない・・・
トクン・・・
アスカが居てくれて、本当に良かった・・・
でも・・・
トクン・・・
碇君の居ない世界・・・
考えられないの・・・
トクン・・・
碇君を抱きしめたまま、屋上の縁まで数歩進む
トクン・・・
碇君、憶えてる?
あの日・・・あの日も二人きりだったわね・・・
トクン・・・
貴方はあの日、微笑む事を教えてくれた
トクン・・・
約束、守れなかった・・・
トクン・・・
碇君を・・・守れなかった・・・
トクン・・・
私が・・・私が死ねばよかった・・・
トクン・・・
私の頬を伝った涙が、碇君の頬に落ちる。
トクン・・・
再び彼を、きつく抱く。
トク・・・
まだ暖かい唇に
私の唇を合わせる。
トク・・・
もっと早く、こうしていれば・・・
トク・・・
碇君に・・・
トク・・・
碇君に、きつく抱きしめて欲しかった・・・
トク・・・
さよなら、アスカ。
トク・・・
あと
あと、数歩進むと
私達の存在は消えてしまう
見上げると
滲んだ月は
蒼く・・・
ひたすら、蒼く・・・
もう一度
彼をきつく抱きしめる
そっと目を閉じ
ゆっくりと
月の光に吸い込まれるように
私は
一歩、踏み出した。
碇君・・・
やっと一緒に、なれるね・・・
[3] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/21 01:01 (Mon) No.180
作者は@isaoさん。
ご自身のHPで公開されていました。
私のこのHP自体がこの作品へのオマージュなのをご存じの方もいるかもしれません。
改めて読み直してみると「時が、走り出す」との相似性が指摘出来るかもしれませんが、
@さんご自身も「時が〜」には思い入れが有る的なことを仰っていたともあるので意図的なのかもしれませんね。
引用したのはラスト少しだけ前。
少ない言葉と改行で表\現された静謐さと月明りの下、哀しくもあまりに一途なレイの想いが心に染みる場面だと思います。
ちなみに、上記引用の後にほんの少しだけ続きが有り、そこが本当のラストなのですが、実は初稿では別の言葉での
ラストだったそうです。
その言葉とは・・・・・覚えてるけど教えてあーーーげない。
[4] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/8/12 00:50 (Thu) No.241
----以下、追加引用----------
それから・・・いつだったか・・・
僕の方が綾波より先にこの部屋に来た時
僕は勝手に、部屋の床を雑巾で拭いた。
その後、帰ってきた綾波は・・・
黙って、玄関で靴を脱ぎ、入ってきた。
そして・・・
僕がケトルを持ち込み、紅茶を入れた。
次の日、僕が部屋に来ると
綾波は黙ってお湯を沸かし始めた・・・
あの頃からだったかな・・・
それまで、綾波はベッドに座って本を読み
僕は椅子に座って音楽を聴いていたのが・・・
二人並んでベッドにもたれかかるようになったのは・・・
そして、僕が学校の帰りに偶然見つけたこのジグソ\ーパズル。
白と、青のコントラストに惹かれて思わず買ってしまった。
必然的にこの部屋で始める事になった。
最初は僕が、一人でやっていた。
相変わらず綾波は、興味無い様に本を読んでいたっけ・・・
何処だったかな・・・
僕が空のピースを持って悩んでいた時。
『それ、多分、そこよ・・・』
僕の背後から声がした。
Pati!
綾波の指した場所に、ピースは正確に埋め込まれた。
もう、8割程出来上がったパズル。
綾波と、一緒に創ったパズル。
ピースが埋め込まれた瞬間、綾波が時折見せる微笑み。
その横顔・・・
”干渉しない優しさ ”
違う・・・
干渉しないんじゃなくて
綾波は僕を・・・
「僕を受け入れてくれていたのか・・・?」
不意に顔を上げ、部屋を見渡す。
差し込む西日
括られたカーテン
きちんと折りたたまれた毛布
磨かれた床
空の郵便受
整頓されているキッチン
二つのスリッパ
二つのカップ
一緒に創っている・・・パズル
綾波・・・
だとしたら、僕は綾波に・・・
綾波に言わなければならない・・・
言わなければならない事があるんだ。
[5] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/8/12 00:51 (Thu) No.242
@さんの「PIECE」より追加引用&紹介
冒頭から少し進んだ箇所。
シンジとレイの静かで、穏やかな、
でも確かなふれあいの描写から、
多分、私が作品として一番好きなのはKameさんの作品世界なのですが(Kameさんの作品に関しては、いつか
少しまとめて書いてみたいけど俺じゃ無理かな:笑)、でも@さんの描く世界観は、私の中ではもうちょっと別格。
そして一番好きなレイは@さんのレイなんだと思います。
@さんのレイって、それこそ超絶的に可愛かったり、もの凄く哀しく儚い存在だったり、絶妙に「ボケ」てたり、
作品毎に結構\「幅」があったんですが、でもいつでも、とても「暖かな」な女の子だった気がします。
で、どことなく「大人」な部分も感じさせる。
この「PIECE」冒頭部のレイなんかその典型ですね。
と同時に、@さんのシンジもまたTV本編のシンジよりもっとずっと「男の子っぽい」んですよね。
貞本シンジほどは斜に構\えてないけど、こちらも「暖かい」男の子、って感じかな?
そんな@さんの作品、ご自身のHPはまだ残ってはいるけれど自作は全て撤去されているんですよね。
今更だけど、頼んだら引き取らせてくれるかなぁ?
勿論ウチじゃなくて「綾展」でもいいけど。
でも、あの人のことだから「・・・私の作品なんて・・・」とか言いそうだな・・・