[1] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/12 01:59 (Sat) No.160
最後の戦いから3年。深い心理的ダメージを受け心を閉し続ける「綾波レイ」を見舞い続けるシンジと、
そんなシンジに寄り添い続けるアスカ。
そんなある日、シンジの願いは叶い、
レイが言葉を取り戻す。
止まっていて時が走り出した、が・・・
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シンジに促されてベッドに戻ったレイは、スピーカーを通してシンジと話し始めた。
「こんな姿を見せること、碇君を苦しめるってわかってる。
本当は何も知らせずに消えたかった。そのつもりだったの。
でも、アスカさんに大切な事を教えてもらったから・・・
だから今は、何も残さないで消えてしまうのが嫌なの。
悲しみでもいい、つらさでもいい。
何でもいいから、私のこと、碇君の記憶に残していきたいの。
それが苦しめるってことわかってるのに・・・
どうして、こんなに嫌なことをしてしまうの?
感情を持つということがこんなに嫌なことだったら・・・
私・・・昔の方が良かったかもしれない。
何も感じない。
何も思わない。
ただ言われたことに従っていれば良かったあの頃・・・」
レイが少しだけ遠い目をしたので、シンジは思わず口を挟んだ。
「ほんとにそう思ってる?」
「・・・ううん・・・今は違うわ。私わかったの」
と言って、くすっとレイは微笑んだ。
「碇君を苦しめたくないって気持ちは・・・そう、裏返しなのよ・・・」
「何の?」
「・・・す・・・き・・・だって気持ちの・・・」
「ん、よく聞こえないよ」
「いいの。聞こえなくて」
「・・・けち」
「そう、私、けちなの」
そう言って彼女はまた笑う。
[2] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/12 02:00 (Sat) No.161
以前とは比べものにならないくらい豊かな表\情をするレイを見て、
シンジはついつぶやいてしまう。
「僕は・・・父さんが憎い・・・憎いよ・・・」
もはやぶつけるすべのない感情。
だが、そのつぶやきを聞きつけたレイは、とても悲しそうな顔をした。
「でも、碇司令のおかげで今の私があるの。
碇君やアスカさんや、そしてみんなと知り合えたのは司令のおかげ……
だからそんなこと言わないで。
本来なら私は存在することさえ許されなかった。
だけど今、こうして碇君と話をすることができるわ。
それは碇司令のおかげなのよ」
「・・・そうだけど、だけど、このままじゃ綾波は・・・」
「私は大丈夫。碇君がいれば何も怖くない。
それに碇君にはアスカさんがいるわ。
彼女があなたの心を癒してくれる。
でも忘れないで。
アスカさんの心にも傷はたくさんあるの。
碇君が傷つけたのもあるのよ。
だから優しくしてあげて。
大事にしてあげて・・・」
「・・・うん。
・・・なんだか僕が励まされちゃってるね・・・」
「・・・・・・」
レイの返事はなく、かわりに聞こえてきたのは可愛い寝息。
その無防備な寝顔に、シンジは思わず頬をゆるめた。
モニター越しに見える綾波の寝顔・・・なんだかちょっと笑ってる・・・
目を覚ますまでここで見守っていよう。
そばにいよう。
後悔の無いように。
今、僕が出来ることの全て。
そして、チルドレンの、最後の一週間が始まった。
[3] 投稿者:管理人 投稿日時:2021/6/12 02:02 (Sat) No.162
三作目はこの作品。
かつてWeb上でエヴァSS/FFを読んだ方々であれば、少なくとも名前を聞いたことはあるであろうこの作品。
私的にはエヴァ関連二次創作のある種頂点であり代名詞とも思っている作品です。
パソ\コン通信「NIFTY-SERVE」初出と聞いていますが、作者はDARUさん。Web上ではHP名「CREATER\'S GUILD」での公開だったと思います。
所謂エヴァ的な世界感は薄く日常劇に終始し、あくまでも淡々と、そして切なく描かれるチルドレン3人の
姿、脇を占める旧NERVの面々、それらすべてのキャラクターの優しさが胸にせまる作品です。
引用したのはラスト前々回の一部分。
本当はこの直後のシーンこそが「名場面」だとは思いますが、
今、改めて読んでもあまりに優しく、哀しく、美しいその部分を引用するのはやめておきました。
お手元に保存してある方はこの機会に、もし未読の方は幸いにも以下のリンクで読めるようです。
http://www.asahi-net.or.jp/~tm3r-nd/
そもそもは「SS/FFなんて紛い物」という偏見が有った私が、この作品を読んで号泣し、以降数年に渡って
SS/FF漁りを始めるきっかけになった思い出深い回です。
以来ずっと再読出来ず、今回漸く二十\年近く振りに再読出来ました。
「哀しいのはチルドレン」
私にとっての「エヴァ」は作中に出てくるこの言葉と共にあるような気がします。