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リョナゲ製作所バトルロワイヤアル2 本編投下スレ その1

[1]投稿者:めら 投稿日:2011/01/29(Sat) 15:50 No.603  
ついにきました第二回バトルロワイアル!
じゃんじゃん投下してもりあげていきましょうね!
[2]投稿者:めら◆Dr17fBy6 投稿日:2011/01/29(Sat) 19:56 No.604  
キング・リョーナによって引き起こされた惨劇、『第50回バトルロワイヤル』。
それの再来ともいうべき悪夢が、今始まろうとしていた・・・









吾輩はヌコである。名前はまだない。
・・・などという事はない、吾輩の名はグレートヌコスである。
吾輩はリョナラーである。
気がついたら、我輩は嬲り甲斐のありそうな少女がひしめき合う素晴らしい空間に来ていた。
そうなれば、やることは一つ・・・

参加者をリョナるべし!
さっそく、まずはあの少女から頂かせてもらうぞぉっ!!




「ハッ」
褐色肌の少女は、薄暗い部屋で目覚めた。

彼女・・・サリアは困惑していた。
彼女は自宅兼仕事場であるギルドで昼寝をしていた筈だ。
それが何故このような場所にいるのか。

辺りを見渡す。顔見知りはいないようだ。
しかしそこら中には沢山の人がいた。そして皆が自らの置かれた状況を把握できていない様子だった。
ふと背後に気配を感じ、振り返るとそこにはー

「あんさんあんさん」
「へあぁ!?」
燃えている髪の少女。決して比喩表現ではない。髪が本当に燃えているのだ。
「あんさん、何て言うん?ウチ、火乃華て言うんやけど」
「あ、あぁ!あたしはサリアってんだ」
この馴れ馴れしい少女は火乃華というらしかった。
「でさせさ、ウチの髪の毛、どう思う?ボワっとしとるやろ〜」
「あー、だな!で、なんでボワってなってんだ?」
「ふっふっふっ、気になるやろ〜」
「気になるわ〜」
「気になるやろ〜」
「気になるわ〜」

・・・といった会話が結構続いた。どれくらい続いたか、本人達は覚えていない。

不毛なやりとりの途中、怒号が響き渡った。サリアはやり取りもそこそこに、慌ててそちらへ向かった



「おいコラァ!あの女は俺の獲物なんだよ!そこんとこわかれや」
「何を言うか貴様、あれは吾輩の獲物である!」
「あー?ボケた事ほざいてんじゃねーぞゴルァ!!」
「惚けているのは貴様の方であろう!!」
「チッ、まずはてめーからやらなきゃなんねーようだな」
「・・・吠えおったな、ゴミクズの分際で・・・」

どうやら先程の巨大ヌコ・・・グレートヌコスとモヒカン頭・・・モヒカンの二人がなにか言い争っているようだ。
獲物とか何とか言っているが、コカトリス(ニワトリみたいな化け物)やワイルドホッグ(巨大イノシシ)がいないため、何が獲物なのかサリアには分からなかった。

しかしその二人の間に呆れ顔で立ち尽くす青バンダナの女性を認めると、その女性が『獲物』なのだと理解した。


「おいお前、あんなカニバリスト共なんざほっといてちょっとこっちこいよ」
「ん、あぁ」
こうして青ターバンを呼びつけ、二人から引き離してやった。


助けた(?)所で、さっそく青ターバンから情報収集を試みるサリア。先ほどタメ口をきいた事を反省し(もっとも青ンダナの女性ことシルファは気にしていないが)、敬語で話しかける。
「よーし、そんじゃ自己紹介の方、頼みますわ。因みにあたしはサリアっていいます、宜しくおねがいしますぜ」
「あぁ、私はシルファってんだ、よろしくな」
「そんじゃ〜シルファさんよぉ、ここがどこだか分かりますかぃ?」
「いや、私はよくわからないな・・・」
「チッしかたねー、そんじゃこの中に知り合いとかは?」
「そうだな・・・いるかいないかよくわかんねーや、人いっぱいいるし」
「そうっすよねぇ〜」
「どうでもいいけどあんた、話し方がワルの敬語っぽいな」
「そうっすか?」
「どうでもいいけどさ、ウチの髪の秘密しりたくない?」

突然割り込んできた火乃華。シルファは軽くツッコミをいれつつ、彼女に話しかけた。

「いきなり髪って・・・まぁいいや、アンタ名前は?」
「ウチは火乃華いうねん」
「そっか、私はシルファってんだ。よろしくな」

3人の少女は、状況を把握しきれていないながらも和気あいあいと話していた。

この嵐の前の静けさともいうべき状況はしかし、ある男の一言により崩れ去った。

「ようこそ、我が居城へ」




尊大な雰囲気を持つこのこの男は、自らの一言で『我が居城』にいる『参加者ども』が黙ったことを確認すると、ある事を宣言した。


「俺はゴッド・リョーナ、この世界の神だ。
 お前たちは俺に招待された。それは何故か?それはこれから始めるあるゲームの参加者になってもらう為だ。無論、お前たちに拒否権などない。
 いきなりですまんが、ゲームの説明に入らせてもらおう。
 まずはゲームの概要、なにをするか、から説明させてもらおうと思う」

僅かな沈黙。そして、彼は極めて衝撃的な事を伝えた。


「お前たちには今から殺し合いをしてもらう!」




「「「・・・は?」」」
3人は、あまりに予想外かつ突飛な発言に間抜けな声を上げてしまった。
他の皆も、声こそ上げなかったが、誰もが同じことを思っただろう。

『何言ってんだ?コイツ』と。

しかし彼は、最も残酷かつ確実な方法で現実を知らしめる。

ピピピピピ・・・

ふと、参加者たちは火乃華の首についた輪状の何かから音がでている事に気がついた。
首輪から数秒出続ける音。突然、それが「ピーッ」という音にかわり、そして。


爆発した。


火乃華の身体から、なくてはならないモノが消失した。

ついさっきまで話していた、陽気すぎるくらいに陽気な少女。
こんな事になるなど、少なくとも二人は思っていなかった。

サリアとシルファの中で、とても抑えられそうにない感情がうねりをあげ、噴き出した。

「てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

怒りを爆発させ、猛然と神に向かっていく二人の少女。
しかし、二人の首から音がした。

それは二人の歩を止めるに十分だった。



「馬鹿なヤツらだ。俺に勝てるとでも思っているのか?
 いいか、俺は貴様らの首をいつでも爆破できる。それを忘れるなよ・・・?」

悔しさに歯噛みする二人。

この男に、神に命さえも握られている。
参加者は皆、その事を思い知らされた。


音を止め、ゴッド・リョーナは説明を再開する。

「・・・シルファさん」
「あぁ」

ゴッド・リョーナの話を聞きながら、二人の中で誓いがたてられた。

”必ず、この気違いな神を倒す。火乃華の敵を討つ”と。



そんな二人をよそに、説明が続けられる。

「ルールの説明をさせてもらおう!
 まず、君たちは一人になるまで殺しあわなければならない!
 もし12時間の間に誰も死ななかった場合、その場合は全員の首輪を爆破する!問答無用で、だ。大人しくしていれば生き延びることが出来るなどとは思わんことだ。
 一人死んだら、そこからまた初めから12時間がカウントされる。死者が出なかった場合は無論、同様の措置をとらせてもらう。
 生き残りが一人になった瞬間、ゲームは終了だ。最後の生き残りは勝者となり、ある特権を得る。それは『望みの願いを一つだけ叶えてもらえる』という至高の特権だ!
 それとは別に、望むなら『元いた場所への帰還』もさせてやろう!
 そう、生き残りさえすれば帰れるだけでなく望みを叶える事さえできるのだ。殺し合いというリスクにこれだけのリターンを用意してやったんだ、感謝しろよ?

 次はゲームの鍵を握る『支給品』についてだ。 
 今回のゲームでは、君たちにそれぞれアイテムを支給する。
 後ほど、お前たち一人ひとりにデイパックを渡しておく。
 中には、食料、水、照明道具、殺し合うフィールドの地図、筆記道具とメモ用の紙、コンパス、時計、ここにいる参加者全員の名前が書かれた名簿などといったものが入っている。
 要するに生き残るための必需品だ。
 これらを『基本支給品』と称する。
 それとは別に、ランダムな支給品がいくつか配られている!
 気づいているとは思うが、貴様らの武器や防具といった装備品は既に回収させてもらった。
 疑問に思った者もいるだろう、”丸腰でどうやって殺し合いするんだよ”、と。 
 その答えが、ついさっき言ったランダムな支給品だ。
 中には武器、防具、その他あると便利な物やガラクタなど実に様々な種類のものがいくつか入っている。
 これを『ランダム支給品』という。
 ランダムという性質上、中身は当たり外れが激しい。故に外れを引いてしまった者は潔く諦めるんだな。
 そう、つまりお前たちは生き残るための『基本支給品』、殺しあうための『ランダム支給品』、これら2種類の支給品を駆使して殺し合いをしてもらうという訳だ!

 放送についても説明しておこう。殺し合い開始から6時間後、またはその放送からさらに6時間後・・・つまり6時間周期で放送が流れる。
 放送の内容は死亡者の名前と残り人数、それから禁止エリアの発表だ。
 禁止エリアとは即ち『そこに入るのが禁止されたエリア』の事。
 その場所に足を踏み入れたら最後、その者の首輪を爆破させてもらう。
 追加された禁止エリアから脱出するのに間に合わなかった場合も、同様に首輪爆破とさせてもらうから覚悟しておけ。

 最後に補則をいくつか説明させてもらおう。
 参加者同士で手を組んだり、支給品を交換したりするのは自由とする。せいぜいお互いを利用して上手く生き残るがいい、ただし12時間で誰も死ななかった場合は・・・覚えているな?
 もう一つはモンスターの存在だ。フィールドには多種多様なモンスターが生息している。生き残りたくばモンスターにも気をつける事だ。
 警戒するのは勿論、モンスターの存在を逆に利用するのも一興かもしれん。どのように利用するかは語るまい。ない知恵をしぼるがいい。
 
 説明は以上だ!これよりゲームを開始する!」

そう高らかに宣言し、その言葉と同時に、一瞬で部屋にいる者たちは男の前から消え失せた。
男の言葉通り、殺し合いのフィールドに送り込まれたのだ。


そして、バトルロワイアルが開始された。







居城で一人、『神』ゴッド・リョーナはそこに残っていた。

神は見る。これより繰り広げられるであろう、殺戮の狂宴を。



「盛大に殺しあうがいい!俺の掌の中で踊り狂うがいい!フ、フハ、フハハ、フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ハァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
[3]投稿者:めら◆Dr17fBy6 投稿日:2011/01/29(Sat) 20:00 No.605  
すいません、題名忘れました!
題名は「オープニング(仮)」で

本採用なら、仮は取っていただいて
[4]投稿者:289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/01/29(Sat) 22:53 No.609  
投下する直前になって、バトロワが始まった時間を
指定していないことに気が付いた。

とりあえず、前回と同じ6:00からってことで
お願いします。(`・ω・´)

では、自分も投下しますねー。
[5]投稿者:「デイパックの中からこんにちは」  289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/01/29(Sat) 22:53 No.610  
F−2エリアの山道。
そこに、一人の少女が座り込んでいた。

その少女……早栗は、がたがたと震えていた。

(殺し合いって何……!?なんで、こんなことになってるの……!?
 なんで、私がこんなことに巻き込まれてるの……!?)

早栗を恐怖させているのは、もちろん、先ほどゴッド・リョーナと
名乗る男によって告げられた殺し合いをしてもらうという言葉、
そしていきなり首を爆破された少女の姿だった。


殺し合い。


現代の日本で生活する早栗にとっては、その言葉は漫画や映画くらいでしか
聞いたことの無い言葉だった。

その殺し合いに、いきなり自分が参加することになったのだ。

普通の中学生に過ぎない早栗が怯えて震え続けているのも、無理も無いことだろう。
だが、そんな早栗に近づく影が一つ。

「おーい、大丈夫ー?」
「!?……い……いやああぁぁぁぁっ!!?」

いきなり背後から声を掛けられた早栗は、恐怖のあまりその場から逃げ出そうとした。
だが、慌てたせいで足をもつれさせ、転んでしまった。

早栗はすぐに起き上がろうとするが、腰が抜けてしまって立つことができない。

「ひっ……!ひぁっ……たすっ……!たすけっ……!」

目を見開いて涙を流しながら、必死で這って逃げようとする。

「こらこら、落ち着きなってばー。
 別に取って喰おうって考えてるわけじゃないからさー」
「あひっ!!?ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃぃっ!!」

呆れたような声に、なぜか謝罪を繰り返す早栗。

「ごめんなさい、ごめんなさ……え?」

だが、掛けられた言葉の意味にようやく気が付いたのか、
早栗は謝罪の言葉を繰り返すのを止めて、顔を上げる。

そこにいたのは、早栗と同じくらいの歳の、明るい色合いの魔女のような服を
着た少女だった。

少女は優しそうな笑顔を浮かべつつも、眉を八の字にして早栗の前に立っていた。






ゴッド・リョーナの居城から転移させられたミタリカーネは
すぐさま名簿を確認することにした。
モヒカンとグレートヌコスがあの場にいたということは、
他にも知り合いがいるかもしれないと考えたからだ。

(……おー、いるいる。ルキ君にオーガさん、ベドちゃんにカレンちゃんか。
 なんか、あの組織の人たちばっかりだねぇ)

魔女はいないのかなぁ、と名簿の名前をを上から下まで眺めていたミタリカーネだったが、
ある名前を確認した瞬間、彼女の笑顔が固まる。


ルインザナン。


ありえない名前を見つけたミタリカーネは、彼女にしては珍しく混乱する。

(なんでルインちゃんの名前が……?
 あの子は悪魔に喰われて死んだはずじゃ……?)

自分と同じ魔女であり、死んだはずのルインザナンの名前が名簿に書かれている。
同名の別人かとも考えたが、あんな奇抜な名前の人物が二人も存在するとは考えにくい。

とすると、考えられることは一つしかない。

(この名簿は嘘んこだね。たぶん、死んだ人の名前を名簿に載せて
 ボクたちを混乱させるのが目的ってとこかな?)

ミタリカーネは、この名簿に書かれている情報……少なくとも、ルインザナンの
名前については嘘だと判断した。

ルインザナンの死は、ミタリカーネにとっては確固とした事実なのだ。
こんな紙切れに名前が書かれていた程度のことでは、その認識は覆らない。

(ルインちゃんの名前が嘘だってことは、他にも実際にはいない人の
 名前が名簿に書かれているかもしれないねぇ)

こんな大掛かりなことをするくらいだから、自分で言ったルールくらいは守ってくれるだろうと
思っていたが、どうやら考えが甘かったようだ。

こうなると、地図や6時間後の放送についても疑ってかかるべきかもしれない。

と、そこでミタリカーネはまだ自分が名簿以外の支給品について
確認していないことに気が付いた。

(まずは支給品を確認しなきゃねー)

さっそく、デイパックをごそごそと探ってみる。

ゴッド・リョーナが言っていた通り、基本支給品一式に加えて、
巨大な斧と包丁が入っていたが、生憎とミタリカーネには扱えそうになかった。

他に何かないか、とごそごそ探っていると、ぶにゅっとした感触を掴んだ。

引き上げてみると、それは何とも形容しがたいグロテスクな肉塊だった。


その肉塊は、仮面のように白くなめらかな、無数の赤い斑点のある顔を持っていた。

その肉塊は、上半身と下半身は真っ二つに分かれており、辛うじて腸によって
繋がっているが、その下半身も股間から真っ二つになっていた。

その肉塊は、左腕が切り落とされたように存在せず、片方しか存在しない右腕を
弱々しくミタリカーネに伸ばしていた。


「……なんぞ、コレ?」

よく分からないが、とりあえず友好の証として握手をしてみる。
肉塊はそれに反応してか、ミタリカーネの手を握り返してきた。

何となく意思の疎通ができたような気がして、嬉しくなるミタリカーネ。
そして、彼女はそのとき肉塊にくっついている紙に気が付いた。

手に取ってみると、次のようなことが書かれていた。


『支給品:那廻 恵理(くにかい えり)

 参加者の一人である那廻早栗の妹。人を見つけたら近寄ってきますが、
 特に危険ではないので、可愛がってやってください』


それを見たミタリカーネはいろいろと突っ込みを入れたくなったが、
聞いてくれる人がいないので、保留にすることにした。

「……とりあえず、那廻早栗って人に会ったら返してあげよっと」

肉塊改め、那廻恵理をデイパックに仕舞ったミタリカーネは立ち上がって歩き出す。


そして、しばらく歩いた所で、座り込んで震えている一人の少女と出会ったのだった。






「……あ……あの……貴女は、本当に殺し合いをするつもりがないんですよね……?」
「しつこいね、君。ボクが人を殺すような酷いヤツに見えるのかね?」
「え……!?いえ、そんなこと……!」
(……まぁ、実際は何度か殺したことはあるんだけどねー)

怯えていた早栗を何とか落ち着かせることに成功したミタリカーネは、
さっそく早栗と情報交換をすることにした。

「……んじゃ、落ち着いたところで、とりあえず自己紹介から始めよっか?
 ボクはミタリカーネ、魔術師だよ。君は?」

魔女だということは伏せておく。人々から怖れられている魔女だということを
知られると、また目の前の少女を怖がらせてしまうし、他の参加者に伝わったら
面倒なことになるからだ。

「ま……魔術師……?えっと、私は……那廻 早栗です……」
「……那廻早栗?」
「え……?そ……そうですけど、私の名前が何か……?」
「あー……まぁ、これを見てもらえば分かると思うよ」

不安そうに尋ねる早栗に、百聞は一見に如かずとばかりに、
ミタリカーネはデイパックを開き、中から那廻恵理を取り出した。

「ほい、君の妹。なんか、ボクの支給品に混ざっててさー……」
「ひっ……!?いやああぁぁぁぁああぁぁぁぁぁっ!!?」

いきなりデイパックからグロテスクな肉塊を取り出したミタリカーネを見て、
早栗は再び恐怖に悲鳴を上げ、全速力で逃げ去ってしまった。






「……あれ、なんで逃げるの?妹じゃないの?」

脱兎の如く逃げ去っていった早栗を見て、ミタリカーネはワケが分からないと
首を傾げる。

確かに、那廻恵理は他人が見れば逃げ出すような外見だろう。
だが、血を分けた姉であるはずの那廻早栗が、見慣れているはずの
那廻恵理を見て、悲鳴を上げて逃げ出してしまうのはおかしな話である。

しかし、先ほどの自分の考察を思い出し、ぽんと手を打つ。

「あー、そっか!つまり、あの紙に書かれていたことも嘘で、
 恵理ちゃんは早栗ちゃんの妹でも何でもないってことか!」

それなら、早栗が逃げ出したことも納得がいく。
自分と何の関係も無い、グロテスクな肉塊がデイパックから出てくれば、
逃げ出しても不思議ではない。

なるほどなるほどー、と納得するミタリカーネ。

「……って、納得してる場合じゃないっての。
 確か、このフィールドにはモンスターが生息してるって言ってたし、
 早栗ちゃんを保護してあげないと」

ミタリカーネは早栗の置いていったデイパックを引っ掴むと、
急いで早栗を追いかけ始めた。






【F−2/山道/1日目 6:30〜】

【ミタリカーネ@リョナラークエスト】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:ミタリカーネのデイパック(支給品一式、
 カロリーメイト(フルーツ味)×3、牛乳(200ml瓶)×2、
 那廻恵理@DEMONOPHOBIA、デバスター@ボーパルラビット、
 巨斧ブローバー@Tezcatlipoca)、
早栗のデイパック(中身不明)
[基本]:殺し合いをするつもりはない
[思考・状況]
1.早栗を追う

※早栗のデイパックの中身を確認していません。
※名簿のルインザナンの名前は嘘だと思っています。
※恵理は早栗の妹ではないと思っています。
※主催者から与えられる情報には嘘が含まれていると考えています。



【那廻恵理@DEMONOPHOBIA】
[状態]:左腕損失、上半身と下半身が腸で辛うじて繋がっている、
    下半身が股間から真っ二つ、
[装備]:無し
[道具]:無し
[基本]:?
[思考・状況]
1.(ミタリカーネのデイパックの中)
2.?



【那廻早栗@DEMONOPHOBIA】
[状態]:健康、恐怖
[装備]:無し
[道具]:無し
[基本]:生き残りたい
[思考・状況]
1.恐怖で錯乱中

※那廻恵理が自分の妹だと気が付いていません。






[6]投稿者:289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/01/29(Sat) 22:56 No.611  
とりあえず、軽く一話投下。

少し早栗たんの描写が足りなかったかなぁ。
まぁ、次以降に頑張るとしよう。
[7]投稿者:しるこ◆sYUFqCow 投稿日:2011/01/30(Sun) 01:23 No.612  
オープニング

暗闇の中で目が覚めた。
今まで何処に居たのか、何をしていたのかは、よく覚えていない。
少なくとも──
自分が今、見知らぬ場所に居て、「暗闇の中に埋もれている」幾人もまた、わたしと同じように、何故此処にいるのか、理解できないようだ。
わたしだって特別な才能を持って周りを見ているわけではない。
それはこの部屋に僅かな光源があり、深闇にはなりきっていないためである。
どうやら、この部屋は円柱型になっているようだ。部屋の隅にはいくつものオブジェが並べられている。
そのオブジェは、ガラス製の人間のようなもので、透明な筋肉の中に、赤と青の骨が僅かに光を放っていた。
その光があったために、辛うじて周りを視認する事ができたのである。


とにかく、ここでずっと留まっているわけにもいかない。
そう思い近くの影に話かけようとした時──
その心の隙間を埋めるように、部屋の中心が光を放った。
光の中は、この部屋の床よりも高くなっている。誰もがそこを見ただろう。少なくとも人間が注目する仕掛けだ。
その、光の台の上には一人の男が立っていた。見た感じの年齢は25歳前後だろうか。
背が高くて、好青年と言えばそうかも知れない。無機質と言えば、その例えもまた当てはまる。
男はゆっくりと、手を握り締めると、暗闇の中に向かって語りかける。
「お目覚めかな。諸君。突然だが、これから諸君には─」
先ほど閉じた手をゆっくりと開き、羽を広げるように、両手で天を仰ぐ。
「──殺し合いをしてもらう。」
暗闇の中にざわめきが起こる。
あまりにも馬鹿げている。誰が必要の無い殺し合いなどするのか。それも見知らぬ人間と。仮令、この暗闇の中に、わたしが怨む人間が居たとしても、決して殺すつもりはない。
しかし、男は、この空間の中で唯一の人間らしい人間だった。まだ信頼を保っている。男は残りの信用を消費しながら、続ける。
「申し送れた。俺の名前はゴッド・リョーナ。名前の通り、この世界の神だ。
 もう一度言うが、諸君には、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。そのためにお前達をここに集めた。」
もはや、この男の言う事に耳を傾ける事はない。この男は正気ではない。
だが、この男に近づこうとする者は居ない。それは、この男が適当な事を言っているとは思えないからだ。
台の光に照らされた面々は、服装や容姿、全てが別の文化を持っていた。中には、わたしが知っている人間とはかけ離れた者もいる。
ここに集めた?どうやって?世界中を探しても、こんな人間達を集める事は難しい。それほど彼らは変わっていた。
ここに居る全ての人間が、わたしを騙すために演技をしているのではないか。何のために?そんな理由のために、何十人も集める意味があるのか?
その考えは、唯一動いた一人の少女の叫びによって遮られた。
「ちょっと待ちや!あんた!」
少女は男を指差している。赤色をメインカラーとした服に赤髪。炎のようなツインテール(実際に燃えている)はわたしが知っている人間の姿とはいくらか離れている。
「何が殺し合いや!良い大人が妄想に取り付かれて、人様に迷惑をかけるんやない!」
その瞬間、男の口がピクリと動き、薄ら笑いが歪んだように見えた。
男は、少女の言葉を無視して、話を続ける。
「もう気付いた者も居るかも知れないが、諸君らには首輪を取り付けてある。
 これは俺が特別に用意した首輪だ。ルールに従わない者は、こうなる。
 よく拝んでおくと良い。ゴッド・リョーナからの餞だ…ッ」
確かに自分の首には金属の冷たさがあった。一体この首輪にはどんな効果があるというのか。
男は言い放つと、開かれていた手を握り締める。顔には噛み潰したような笑いが浮かんでいる。
ピピ…ピピ…
目覚まし時計のような音が辺りに響く。目覚まし時計…なんだか間抜けなように思える。が、それこそが人間を永遠の眠りに導く、悪魔の声であった。
その音は先ほどの少女の首輪から発せられていた。
「なんや…この音…?」
少女は自分の首輪を見ようと、手で掴み引っ張っているが、視界の隅に少し見えるだけで、なかなかよく分からない。
「その首輪には、爆弾が仕掛けてある。火乃華。お前は見せしめだ。潔く死ぬが良い。」
火乃華と呼ばれた少女は明らかに動揺している。余りにも突然の死の宣告。
普通だったら、この言葉を信じないだろう。だが、この男には彼女を信用させるに足る信用がある。
この男の完全に消え失せた信頼の中で、唯一の信用。この男が全ての人間を此処に集めたという事実。
男は嘘を言っていないという事実。それならば、この首輪も!
「ひ…!ィ…ッ!冗談やろ!こんなことって…」
火乃華はその言葉を信じまいと、嘘であろうと思いたがっている。しかし手は強く首輪を握り締め、瞳は怯えきり、視線は見えない首輪の方向に向かっていた。
ピピピピピピ…
首輪から発せられる音の感覚は段々と短くなってくる。それに比例するように男の笑みが段々と力を持っていく。
「ハハハハハ…!どうした?小娘!これでもまだ、俺が妄想に取り付かれていると言えるかな?」
ピ──────
首輪の音は完全に一つとなり、小刻みな連続した音から、一つの長い音へと変わっていた。
死が近づいている。誰もがそう実感した。怯える少女は気付かないようだが、少女の居る場所の床が段々と上がっていき、光を放ちはじめる。
晒し者。最も惨めな死に様だろう。もはや火乃華は歯を食いしばって、意味の分からない事を叫びながら、自らの首を引っ張っているだけだった。
「ヒイィ!死にたくない!わたし、まだ!あ、ギイィ………」
その瞬間、少女の首輪が火を放ち爆ぜた。火乃華の頭は部屋の中を飛び、鈍い音を立て壁にぶつかると、地面を転がり、止まった。
胴体の方は台座からずり落ちて、ひっくり返った首の断面から血を流していた。同時に緩んだ尿道から、排泄液が流れ出し、服を黒く染め、元々首のあった場所から、ぽたぽたと地面に水溜りを作っていくのだった。



それから、どれだけの時間が経っただろう。一同は少女の死に様を見つめていた。中には泣きじゃくる者も居た。ゴッド・リョーナに露骨に敵意をむき出す者も居た。
だが、流石に手を出す者は居ない。流石に、この状況で手を出すのは無謀だろう。
ゴッド・リョーナはもはや火乃華には興味が無いといった様子で、続きを話す。
「殺し合いのルールを説明する。さっきも言った通り、諸君には最後の一人が生き残るまで殺しあいをしてもらう。
 生き残った者には…よく聞くといい。生き残った者には『なんでも望みを叶えてやる!。』
 何でもだ。俺に不可能は無い。」
信じられるのか。願いを叶える。そんな事が、いかにも人間であるキング・リョーナは可能だというのか。参加者のほとんどは半信半疑だろう。
「信じるかどうかはお前達に任せる。どうせ生き残らなければ、ここから出る手段はない。おっと、まだ殺し合いは始まっていないぜ。」
男の視線は、わたしの後ろに向けられていた。
わたしの真後ろには、モヒカン姿の巨漢が立っていた。どうやら、わたしを狙っていたようだ。流石にお互い、警戒して距離を置く。
「殺し合いは、専用のバトルフィールドで行う。戦闘開始になったと同時に、諸君をフィールド内にランダムで転送しよう。
 そこから先は、生き残る事がルールだ。どんな手を使っても構わない。
 時間毎に禁止エリアを指定する。禁止エリアに入った人間の首輪は、即爆破する。
 このデイパックの中には、地図、参加者名簿、鉛筆、メモ用紙、目覚まし時計、食糧と飲料。それから、特殊な道具をランダムで支給させてもらう。」
そういうとリュックサックのようなものを高く掲げてみせる。
「武器を失って困惑している者もいるだろう。運が良ければ武器が入ってるかもしれない。
 入ってなかった時は…誰かを殺して奪い掴むんだな。」
そういうとまた、ニヤリと笑みを浮かべた
「信じられんかもしれんが、このバッグの中には、各自に支給した道具であれば、いくらでも入る。
 フィールドに転送する時、一緒に送る。後で確認してみるが良い。」
「まず無いと思うが…。12時間の間に一人も死なない場合、優勝者は無し。全員の首輪を即時爆破する。
 フィールド内には、モンスターを配置してある。獰猛な奴もいるが…。まぁ食われないおうに気をつけるんだな。
 殺された人間の報告、禁止エリアの指定は、時間毎に俺が直々に行う。
 説明は以上だ。」



男は言い切ると、眼を瞑って大きく溜息をついた。それから、しばしの静寂…。
不安もあっただろう。期待しているものも居るのだろう。それらの思念が、部屋中に充満して、彼らを圧迫していた。
ゴッド・リョーナは、再度ゆっくりと両手を広げると、乗っている台座が発光し始める。
段々と光が強くなってくる。眩しい。眼を開けている事が出来ない。突然、強い風が吹き込んでくる。体が飛ばされそうになるほどの強烈な風だ。
轟音の中、何故か男の声だけがハッキリ聞こえる。

「さぁ!バトルロワイヤルの始まりだ!
 糞まみれになって、思う存分殺しあうが良い!」
[8]投稿者:しるこ◆sYUFqCow 投稿日:2011/01/30(Sun) 01:24 No.613  
アップしましたー
ルールとか間違ってるところあったら修整します故。
[9]投稿者:ぶーちゃん◆Ed9BXPOk 投稿日:2011/01/30(Sun) 18:37 No.621  
「デキる女とダメ男」

ラダは怒り心頭であった。
ゴッド・リョーナ、人の命をオモチャのように弄ぶ男。
かの男の手によって、幼い命を散らした少女の姿が脳裏に焼き付いて離れない。
彼女の断末魔が脳内にリフレインする度に、ゴッド・リョーナへの怒りがこみ上げてくる。
「旭光の戦士」として、魔王から世界を救った「旭光の四英雄」の一人として、あの男の暴挙を許すわけにはいかない。

「とはいえ、この装備ではな……」
ラダは空っぽになった剣の鞘をのぞき込みながらつぶやいた。
泥属性の魔法しか使えない、図体だけが取り柄の彼にとって、この武器没収というルールは過酷である。
頼みのデイパックの中身は、真鍮の短剣が一本、そして見慣れない機械が一つ、それに食糧が少しだけ。
真鍮は元々装飾用の金属で、短剣の威力は期待できない。木の枝を切り落とすぐらいが関の山だろう。
機械の方はラッパと拳銃の合いの子のような見た目をしているが、引き金を引いてもラッパから雑音が流れるだけだ。
とうてい、武器としては使えそうにないだろう。
もちろん、ラダは腕力には自信がある。無抵抗な人間の首の骨を折ることぐらいはたやすいだろう。
だが、彼は自分の身体を武器とするためのすべを全く知らない。
伊達を気取って剣術にこだわったツケが回ってきたかたちである。
とにかく、今彼はこの狂った殺し合いの参加者である。
参加者の中には、他人の命を奪うことに何の躊躇もない人間もいるかもしれない。
そして、そのような殺人鬼に、強力な得物が渡っていたとしたら……。
「うん、とりあえず近くに誰かいないか探すことにしよう!」
ラダはその懸念を、調子外れの大声で追い払った。

「ウィンドバレット!」
鉛のように重くなった空気の塊が、列を成して掌から放たれる。
音速を超えた無数の空気の弾丸は、小気味良い風切り音を発しながら、目の前の黒い影を穿つ。
「ガガ……ガガ……」
円筒形の胴体の中心を空気弾でえぐられたそれは、金切り声を上げて地面に落下する。
「モクヒョウ、カクニン、センメツ、センメツ」
しかし彼女を円上に取り囲むそのモンスターの円陣は、すぐさま別のモンスターによって埋められる。
「ちょっと! いい加減しつっこいのよ!!」
巨大な手斧を振りかざす円筒形のモンスターの斬撃を間一髪で交わし、掌を押し当てる。
至近距離からの空気の弾丸が金属の装甲板を引き裂いた。
帝国軍術師エイミィは、橋の上で立ち往生していた。
ゴッド・リョーナに転送された橋の上でデイパックの中身を確認していたところ、突然現れたモンスターに囲まれてしまったのだ。
このモンスター、一体一体は大したことないがとにかく数が多い。何かテレパシーのようなもので仲間を呼んでいるのか、
倒しても倒しても新しいモンスターが補充されるのだ。
「こいつらがいたら、国境警備も楽になるわねっと!!」
背後で続けざまに鳴る破裂音。すかさず右手を背後に向けると、空気の壁に手応えがあった。
軽い金属音を立てて地面に転がる鉛の塊。金属の弾を火薬で撃ち出す機械のようだ。
振り返ると、両脇に金属の筒を装備したモンスターがらんらんと輝く一つ目でこちらを見ている。
「ったく、厄介だわ……」
エイミィは姿勢を正すと、うつむいて呪力を練る。
彼女の足下から空気の壁が立ち上がり、魔力によって励起された大気が青緑色の光を放ちはじめる。
危険を察知したモンスターたちが一斉に襲いかかるが、巻き起こる空気の渦に阻まれ、攻撃はエイミィに届くことはない。
詠唱を終え、右手をモンスターの群れに向けて突き出す。
彼女の右手を濃い霧が包んだ。大気が極低温に冷やされ、凝結した水滴はやがて氷の粒へと成長する。
「アイシクルカノン!」
右手から放たれる、極低温の冷気。低温が生み出した気流の渦に、鋭利な氷塊が舞う、暴力的な空気の砲弾。
それは彼女の右手から、モンスターの群れの中心に向けて放たれた。
極低温はモンスターの電気回路を鈍らせ、燃料を凍り付かせる。空気弾のような派手な破壊はないものの、
巻き込まれたモンスターは次々にその機能を停止し、ガラガラとやかましい音を立てて石畳の上に転がっていく。
魔弾の軌跡が、さながら花道のようにモンスターの囲みを二分する。
今だ。エイミィが動いた。
全身の魔力を両脚に集める。駆け巡る魔力は瞬時に筋繊維を修復し、活性化した細胞が凄まじい代謝熱を吐き出す。
彼女の世界の女性であれば誰でも使える肉体強化の魔法だが、Sランク術師ともなるとその効果は著しい。
ギシギシときしみを上げながら彼女の両脚が収縮し、その次の瞬間、彼女は石畳の上を駆けだしていた。
「モクヒョウ、トウソウチュウ、センメツ、センメツ」
花道の両脇にいるモンスターが次々と攻撃を繰り出す。あるものは金属弾を撃ち、あるものは手斧を振りかざし、
あるものは彼女の進路に立ちふさがり両腕を広げる。
そのことごとくを、彼女は恐るべき身体能力を持ってかわし、弾き、いなした。
花道の終わりが近づいてきた。残っていたモンスターが一斉に集結し、再び
エイミィは徐々に歩幅を大きくする。もっと大きく、高く。限界まで歩幅を大きくし、両脚を地面につける。
前に進もうとするエネルギーに、踏ん張りが生み出した上方向への力を乗せるべく、深く深く腰を沈める。
常人なら骨が砕け、筋肉が破断するほどの衝撃が脚に伝わるが、損傷は魔力によってたちどころに修復されていく。
そして、筋収縮が生み出した爆発的な運動エネルギーが放出される。
エイミィの身体はモンスターの群れの上を舞う。とうてい人間に可能とは思えない動きに、一瞬モンスターたちが逡巡した。
静かな刹那が過ぎ去り、モンスターの囲みの外に着地するエイミィ。
背後から聞こえてくる風切り音。魔力を移動させる暇がない。着地の衝撃はまだ体内に残っている。今強化を解除すれば脚がはじけ飛ぶ。
防御が、間に合わない。

当てもなく歩き出したラダは、金属がきしみを上げる音を聞いた。
最近増えてきた工作機械のような連続的な音ではなく、断続的で不規則な音だった。
彼の「旭光の戦士」としての経験は、彼に近くで戦闘が行われていることを告げている。
注意深く辺りを見回すと、向こうに見える橋の上から立ち上る土煙。
あの橋の上で誰かが戦っている。彼は一も二もなく駆けだした。
右手には太い木の枝。そこら辺に生えていた木から、まっすぐで丈夫そうなやつを一本失敬したのだ。
ピンチに駆けつけるときに持っている得物が棒きれとははっきり言って決まらないが、と彼は思った。
そもそも今戦っている相手がピンチかどうかなど彼は知らないが、まぁ後のことは後で考えればいいのだ。

それは視認することも困難な無数の針だった。
先ほどの鉛弾のような破裂音もしない。おそらく空気か、何か別の仕掛けで発射されたものだろう。
日光を受け、雲霞をなして飛んでくる無数の針。もしかしたら毒か何かが仕込まれてるかも知れない。
「くぅっ……!!」
だが今のエイミィにそれをかわすことは出来ない。エイミィは目を固くつぶり、襲って来るであろう痛みに耐えられることを祈った。
痛みは襲ってこなかった。
[10]投稿者:ぶーちゃん◆Ed9BXPOk 投稿日:2011/01/30(Sun) 18:37 No.622  
モンスターに囲まれていたのは年の頃17,8の少女だった。戦闘能力は高いようで、華麗な身のこなしでモンスターをいなし、
モンスターの囲みを今まさに突破しようとしていた。
だがモンスターの頭上を飛び越え、着地で動けずにいるところを狙われた。
モンスターの内の何体かが振り返り、彼女に銃口を向けているのが見えた。
ここ一番、火事場の馬鹿力。ラダは全身の力を振り絞り、彼女とモンスターの間に割ってはいると、腰を落として防御の構えをとる。
鎧を着ていたこと、発射されたのが弾丸ではなく針だったことは幸運だった。
発射された数百本の針のほとんどは、ラダの着込んだ特注の鎧に弾かれ、砕け、地面に転がっていく。
わずかに露出した肌に刺さるものもあったが、大したダメージにはなっていない。
攻撃が止んだ。

「え……?」
「お嬢さん、大丈夫ですか?」
目を開いたエイミィの前にいたのは、恐ろしくがたいのいい男だった。
手には棒きれを持ち、豪華な装飾の施された鎧を着込んでいる。
彼が攻撃を身を盾にして受け止めてくれたのだろう。真新しい生傷がそこかしこに見える。
「私が来たからにはもう安心です。さぁ、ここは私に任せて逃げてください!」
言うと男は棒きれを構え、モンスターに向けて大見得を切る。
「モンスターども! か弱い女性に大挙して襲いかかるとは、畜生にも劣る! この『旭光の四英雄』が一人『旭光の戦士』、ラダ・グァラバグが、
 一匹残らず成敗してやるから覚悟しろ!!」
「借りるわね」
決めぜりふを長々と並べ、愉悦の表情を浮かべるラダの手から棒きれを奪い取るエイミィ。
「あ、お、おい! 君のような女性があんなモンスターに勝てるわけが……」
「あんたは『男らしく』そこで待ってなさい」
「ま、待ちたまえ!」
「あんたみたいな魔法を使えない『男』が、棒っ切れ一本で何とかできる相手じゃないのよ」

唖然とするラダを置いてモンスターに歩み寄りながら、エイミィは手にした棒きれの感覚を確かめる。
適度な握りやすさと軽さ。木製である以上耐久力や威力は期待できないが、手持ちの武器としては申し分ない。
何より、デイパックには自分が武器として使えそうなものが何一つ入っていないのだ。贅沢は言えない。
再び呪文を紡ぐエイミィ。右手から発せられた魔力が棒きれを包み込む。
魔力は電気に変換され、棒きれの先端から青白い放電となって長く伸びていく。放電で発生したオゾンの陽炎が周囲の景色をゆがめる。
もうすぐモンスターの間合いに入る。棒きれで武装した少女。連中は躊躇なく殺到するだろう。だが、襲ってくる敵は多ければ多いほどいい。
どうせ一回しか使えないのだ。この一太刀で、全てなぎ払ってやる。

「サンダーソード!!」
まとった放電によって一本の巨大な剣となった棒きれを横なぎに払うエイミィ。
高熱によって膨張した空気が凄まじい音を立てる。
実体のないエネルギーであるが故に、その剣には何の手応えもない。
その太刀筋にいるものは何もかも両断し、灼き殺す。
一斉にエイミィに殺到したモンスターたちは、その電撃の前になすすべなく破壊された。
体内の燃料と、火薬が爆ぜ、炎を巻き上げる。燃え上がった燃料は雨となって、電撃を免れたモンスターの上に降りかかり、焼き、溶かし、再び爆発が起こる。
その場にいた数十体のモンスターすべてが、彼女の放った一撃によってがらくたへと姿を変えた。

「ふぅ……」
消し炭になった棒きれをポイと放り投げると、ラダのところに歩み寄るエイミィ。
「あ……あ……」
自分より年下の、それも少女が、凄まじい威力の魔法を放ちモンスターを焼き払う。その光景はラダの思考を停止させるのに十分なものだった。
せっかく良いところを見せようと思ったのに、これではただの武器配達係ではないか。
「助かったわ。あんたがあの棒っ切れを持ってこなかったら、どうなってたか。
 あんた、男の割には肝が据わってるじゃない」
尻餅をつくラダに手をさしのべながらエイミィは言い放つ。その一言に我に返るラダ。
「は、はははは! 何のこれしき! か弱い女性に危機が迫っているなら、例え火の中水の中! 『旭光の戦士』はどこにでも駆けつけますとも!
 はは、ははははは!」
「そ、そう……私はエイミィ。帝国軍第四軍団団長よ」
気圧されるエイミィ。こんな妙なテンションの男に出会ったことは今まで一度もなかった。
「あら、ケガしてるじゃない。ちょっと待ってて、治療してあげる」
見ると、先ほどできたと思われる傷口が紫色に腫れ上がっている。やはり毒が塗られていたのだ。
ろくに防具を身につけていない自分があの攻撃を食らっていたらと、エイミィは内心ぞっとした。
「あ、いえいえ、それには及びません!」
ラダは治療魔法を使おうとするエイミィを掌で制止する。どうでもいいが、やたら声の大きい男だ。
「命はぐくむ泥濘よ、我の内なる障気を祓い清めよ!! はぁぁぁぁぁ!!!! ルグン!!!!」
ラダが大声を上げると、にわかにラダの身体が光に包まれる。光が消えたとき、傷口の腫れは完全に引いていた。
「……驚いた。あんた魔法が使えるのね。男なのに」
エイミィは驚愕した。それはいわゆる魔法と呼ばれる力で、エイミィのいた世界では女にしか使えない力である。
故に彼女の世界では、男性の地位は女性に大きく劣る。
もちろん彼女の世界でも、能力がある男はいる。歴史に登場する、高名な男性の学者・哲学者を数えるには両手の指では足りない。
だが、魔法を使える男は長い帝国の歴史を紐解いても一人もいない。
例え簡単な治癒魔法と言えど、魔法を使える男というのは、彼女にとって酷く新鮮に見えた。
「ええ、使えますとも! なんたって私は『旭光の戦士』ですからね!! ちなみに今の魔法はルグンと言いまして、
 体内の毒を浄化、解毒する魔法なのです! どうです、凄いでしょう!? はははははは!!!」
「はぁ……」

「なるほど、男の地位が低い世界……」
それからしばらくの間、二人はお互いの境遇について話し合った。
とは言え基本的には殺し合いの標的となる者同士、与えるのは最低限の情報にしたい、とエイミィは考え、事実そうなるように言葉を選んだ。
ラダは……あるいはラダもそう考えていたかも知れない。だが、目の前にある谷間を気づかれないように(本人はそう思っている)のぞき込んでは、
鼻の下を伸ばすこの男がそんなことを考えているとは、どうしてもエイミィは思えなかった。
「しかし魔法も使えず、身体能力も女性に劣るとは、あなたの世界の男どもは男の風上にも置けませんな!!!
 はははは……はは……」
自分がずいぶんと不味いことを言っているのに気づき、ラダは決まり悪そうに咳払いで場の空気を押し流した。
「とにかく、今は共に行動し、一刻も早くゴッド・リョーナを打倒すべきです!
 なに、私の剣術とあなたの魔法が合わされば百人力いや千人力!! ゴッド・リョーナなどものの数では……」
「そうね、私もあなたと行動することに異存はないわ」
この男は放っておくといつまでも喋る。そう思ったエイミィは強引にラダを遮った。
とりあえず、足手まといになることはないだろう。最悪弾避けにでも使えばいい。図体以外に取り柄のないこの男を屠るのも
それほど難しいことではない。そう判断しての返答だった。
「一緒に行きましょう。『旭光の戦士』さん?」


【E-7/橋の上/1日目 7:00】

【ラダ@TRAPART】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック
真鍮の短剣@DEMONOPHOBIA
拡声器@現実
食糧(パン×3、干し肉×3)
[基本]:エイミィを守りつつ、ゴッド・リョーナを倒す
[思考・状況]
1.ゴッド・リョーナの居場所を突き止めよう
2.エイミィとイイことができたらいいな!

【エイミィ@BASSARI】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:デイパック(中身不明・エイミィが使える武器は入っていない)
[基本]:どんなことをしてでも生き残りたい
[思考・状況]
1.必要ならラダを利用しよう
2.もう少し頼りになる仲間が欲しい

【登場モンスター】
ガーディアン・アドバンスド(マシンガン装備・ハチェット装備・マニピュレーター装備・ポイズンダート装備など多種):数十体→全機破壊
E-7エリア内のガーディアンは壊滅状態、修理・整備待ち
[11]投稿者:ぶーちゃん◆Ed9BXPOk 投稿日:2011/01/30(Sun) 18:38 No.623  
投稿しましたぶー
ルールとか多分大丈夫だと思うんだけど、もし不味かったら指摘してください
[12]投稿者:「彼女の武器」 麺◆dLYA3EmE 投稿日:2011/01/31(Mon) 00:49 No.626  
シュラルフィが目を覚ましたのは、森の中だった。
ゴッド・リョーナと名乗った男の話によれば、自分達は殺し合いに巻き込まれたらしい。
そしておそらくここは、そのフィールドの一部だろう。

何気なく、隣に落ちていたデイパックの中身を探る。
最初に出てきたのは名簿と地図。とりあえず広げてみる。
名簿に載っている名前の中で、知っているのはわずか2つ。
自分の名前、シュラルフィ。仲間の名前、ラダ。
一体どういう基準でこの二人なのかと苦笑しながら、今度は地図に目を通す。
地上だけでなく地下もあり、一見して複雑な地形。
現在地を知ろうにも、森は数か所あって特定できない。

結局、得られた情報はわずかだった。
次に彼女は、あの男がランダム云々と言っていたのを思い出し、それを確認しようとした。

その時である。森の中を歩く一人の少女を見つけたのは。

「・・・無防備ね。こっちに気づいてる様子もないし。」

青いワンピースと縞ニーソ。どう見ても戦い慣れているようには見えない。
しかし今は殺し合いの最中である。見た目に騙されるのは命取りだ。

「さて、どうしようかしら。」

こちらから声をかける手もある。逆に奇襲をかける事もできる。
しかし、声をかければ折角の先制攻撃の機会を失う事になるし、
友好的な相手に奇襲をかければ損をするのは自分だ。
そこで彼女は、どちらの場合にも対応できる方法を実行に移した。



「うふふっ、少しでも動いたら貫くわよ。」
「ひっ・・・」

シュラルフィは闇の魔力を集め、数本のトゲを作り上げた。
それらを少女に突き付けて、その動きを封じたのだ。

「さて、まずは質問に答えてもらおうかしら。」
「は、はい・・・」

こうなると、少女は相手の言葉に従うしかない。
なぜなら彼女は、こんな魔法を使う相手に対抗する術を持たないからだ。

「好きな食べ物は?」
「・・・へ、食べ物?」

最初の質問は、彼女にとって意外なものだった。

「答えなさい!」
「ひっ、チーズケーキ、かな・・・」
「そう。」

普通は名前とか職業からだろう、と思いながらも、とりあえず言われた通り答える。
ところが次の質問も、予想の斜め上を行っていた。

「スリーサイズは?」
「えっ!?・・・えと、測ったことないから・・・。」
「ふうん。」

酔っぱらいのオヤジかと突っ込みたくなるのを堪えて、答える。

「職業は?」
「あ、アップローダーの、管理人・・・」

やっとまともな質問が来た。が、詳しく説明しろと言われると面倒だとも思った。
だがそれは杞憂に終わった。

「年齢は?」
「次の誕生日にじゅうろくさい。」
「あっそ。」

自分で聞いておいてそんな興味の無さそうな相槌を打つなよと思ったが、
追及されたくもないので顔には出さない。

「で、この殺し合いに対する意気込みを聞かせてもらえる?」
「なっ・・・」

突然のこの質問。今までの適当なやり取りからは予想のできない一撃だ。
しかしこの状況では、答えざるを得ない。

「わ、私・・・そんな戦えるような力なんて無いし・・・
 もしあったとしても、人を殺すなんて、やだよっ!!!」
「そう・・・」

シュラルフィは目を閉じ、笑みを浮かべた。
そして目を開くと同時に、少女に対して冷たく言い放った。

「嘘ね。」



町で評判の占い師、その正体はかつての英雄、「旭光の予言者」。
しかし彼女は決して、未来を見ているのではない。
彼女の瞳に映っているのは、「今」である。

占いは当たるか否か。当たると思えば当たり、当たらないと思えば当たらない。
この主張はある意味で正しい。
一生のうちの一部を切り取れば、当たる部分もあり、当たらない部分もあるからだ。

そもそも運命とは本人の行動が生み出すものであり、
手相も星座も血液型も、本来何の関係もない事は、少し考えれば分かる。
それでも人が占いを求めるのは、己自身に自信が持てないから。

ならば占い師の成すべき事は一つ。その人の指針となる事。
即ち、相手の言葉に耳を傾け、心を読み取り、無意識のうちに己が定めた道を見出す。
そして、その背中をそっと押す。

そんな彼女だから、相手のわずかな目の動きも、声のトーンの変化も見逃さない。
それで二言三言話をすれば、簡単に相手の心を読めてしまうのだ。



「私に嘘は通用しないわ。正直に言いなさい。」
「で、でも・・・私に戦う力なんて・・・」

シュラルフィの追及を、何とか逃れようとする少女。
しかし、もはや逃げ場は無くなっている。

「そうね。貴女には確かに戦う力は無いわ。」
「え・・・」
「私が聞いてるのは・・・」


「人を殺すのは、嫌なの?」


少女は絶句した。
自身の内にある、強烈な衝動。
人の苦しむ姿が見たい。
大声で泣き叫ぶ姿が見たい。

人を、殺してみたい。



思えば、今の仕事に就いたのもそれが理由だった。
ファイルの削除。誰もが日常的に行う行為。
常識的に考えれば何の魅力もないそれを、彼女は想像力で補った。

何の前触れもなく削除される、違法ファイルの女の子。
用済みとなって捨てられる、旧バージョンのお姉様。
バックアップという娘と一緒に消去される、若奥様。
スレ違いで除去される、何の罪もない少女。

彼女らをデストロイする毎日は、確かに充実している。
しかし、何かが足りない。
以前から、そう思っていた・・・。



「あはは、バレちゃったかあ。」
「貴女・・・!!」

少女が突然、屈託のない笑顔を見せた。
驚いたのはシュラルフィだ。
彼女が魔法で生み出したトゲは、今にも少女の体を貫こうとしている。
それなのに何故、笑っていられるのか。

「・・・気でも触れたのかしら?」

あくまで平静を装って、シュラルフィは少女に問いかける。
しかし内心では、少女の予想外の反応に戸惑っていた。

「さあ、どうだろうねー。」
「ふざけないで。」

シュラルフィはトゲを動かして、少女の体を貫こうとする。
しかし、その少女の言葉に止められた。

「私を殺すと後悔するよ。・・・シュラルフィさん。」
[13]投稿者:「彼女の武器」その2 麺◆dLYA3EmE 投稿日:2011/01/31(Mon) 00:50 No.627  
まだ、名前は言っていない。
不用意に自分の情報を与えるのは危険だと、常に考えていたから間違いない。
ではなぜ、この少女は自分の名前を知っているのか。

「・・・あら、私も有名になったものね。」

何とか言葉を絞り出す。
しかし、そんな程度の話でない事は、相手の目を見れば彼女には明らかだった。

「えっとねえ、76、58、71。」
「なっ・・・!!!」
「スリーサイズだよ。さっき聞いてたじゃない。」

確かにそれはスリーサイズだ。ただし、シュラルフィの。
仲間ですら知らないはずの情報を、彼女は握っている。
しかも決して当てずっぽうではなく、確信を持って言っている。

「・・・貴女、何者なの?」
「ただの女の子だよ。全ての参加者を”知ってる”だけの。」

その一言の後、暫く沈黙が続く。



シュラルフィは考えた。

目の前の少女は、様々な情報を持っている。
自分やラダにとって、致命的なものもあるだろう。
いっそこの場で殺すのが、最も安全かもしれない。
人殺しを望んでいても、能力的にはただの少女であるのは間違いないのだ。
現在の状況を踏まえれば、生かすも殺すも自由にできる。

だが、参加者のほとんどを知らない彼女にとって、
全ての参加者を知っているという彼女の情報は魅力的だ。
特殊能力を持つ敵だと分かっていれば対策が立てられるし、
自分より強い敵でも弱点が分かれば勝てる可能性がある。



「教えなさい。さもなくば・・・」

シュラルフィは魔法のトゲを少女の喉元に突き付けて言った。
もし断ればそれまで。今すぐ殺してこの女の事は忘れる。
だがもし情報を得られるなら、生かしてやっても良い。

「・・・いいよ。教える。」
「ふふっ、良い心がけね。」

少女の答えにシュラルフィは笑みを浮かべた。

「ただし、一つだけ条件がある。」

条件と聞いてまた厳しい顔に戻る。
受け入れられない条件なら、やはり殺すしかない。

「・・・言ってみなさい。」

シュラルフィの問いに、少女が答えた。

「20分に、1人。」



「・・・分かったわ。」

シュラルフィが頷いた。

「契約成立ね♪ それじゃ、このトゲをどけてくれるかな?」
「ええ、良いわ。」

シュラルフィは、ずっと少女を拘束していた魔法を解除した。

確かに相手の命を握っている状況で、このような条件を出されるのは面白くない。
しかしシュラルフィにとって、この少女を殺して得られるものは何もないのだ。

それに、このような条件を出すのはむしろ当然の事。
相手にしてみれば、一気に全ての情報を与えた場合、その後すぐに殺される可能性がある。
そうでなくても利用価値がなくなって捨てられる事は目に見えている。
逆にこのような条件を出せば、少なくとも全員の情報を話すまでは殺されない。
しかもそれに加えて守ってもらえるという期待もできる。



トゲの恐怖から解放された少女は、安堵の表情で地面に座っていた。
そこに手を差し伸べるシュラルフィ。

「暫くの間、よろしくね。」
「うん、こちらこそー♪」

こうして、二人は歩き始めた。



「ところで、貴女の名前は?」
「20分後に。」
「・・・食えないオンナね。」





参戦が決まったのは、数週間前。
それから私は、あらゆる情報を集めた。
銃の使い方に、火の起こし方、食べられる野草と食べられない野草・・・
そして、他の参加者の情報。

これは私の特権。他の参加者には、決して真似できない。
デバイスが無ければ何も出来ない私に、残された唯一の武器、”情報”。
私はこの武器で、この殺し合いを戦い抜く。

最後の一人になろうなんて、思ってない。
主催者の情報は得られなかったけど、どうせ願いを叶える気なんて無いに決まってる。
だから、生きてここを出る方法は、一つしかない。

仲間を集めて、ゴッド・リョーナを・・・削除する。





【A−6/森/1日目 6:30〜】
【管理たん@その他】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック(支給品一式、食料、飲料)
    ランダム支給品不明
[基本]:主催者を削除する
[思考・状況]
1.仲間を集める
2.20分に1人、シュラルフィに情報を与える
3.20分後に名前を聞かれたら自己紹介


【A−6/森/1日目 6:30〜】
【シュラルフィ@TRAP ART】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック(支給品一式、食料、飲料)
    ランダム支給品不明
[基本]:謎
[思考・状況]
1.とりあえず情報を得る
2.ぶっちゃけ管理たんの名前は聞かなくても良いと思う
3.ラダを探す、かもしれない訳でもないのかなと思う



●あとがき
管理たんはこれぐらいやっても良いと思うんだ・・・。
シュラルフィは何気なく予知能力を無くしてみた。
リョナ的にもその方が便利そうなので、能力制限の一種という事で。
[14]投稿者:因縁の再会 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2011/02/01(Tue) 01:42 No.632  
「暑い………」

それは当然といえば当然だ、なんといっても砂漠のど真ん中なのだから。

「くそ、ついてない、何でこんなところに………あのやろうぜってぇーぶっ殺す」

魔女ルインザナンはやたらごつい自分のローブを睨みながらつぶやいた。
「あのやろう」というのはもちろん自分をこんなところに連れてきた張本人、ゴッド・リョーナのことだ。

(とにかくまずは支給品の確認をしてみるか………水も支給されているみたいだし)

ごそごそとデイパックの中をまさぐってみると、それらしきものに手が触れる。
出てきたのはビンに入った水だった。
のどの渇きが命じるままに、さっそく一口無遠慮に飲み………すぐに吹き出した。

「これ………海水だ!」

いまいましいビンを投げ捨てると、再びデイパックをあさる。
次に出てきたのはなにやらドロッとした緑色の液体だった。
どう考えても人間の飲み物じゃない。

(くそぉ………そうだ!確か食料もあるんだった、とにかくこのしょっぱい口の中が何とかなれば)

できれば果物の類がベストだ、水分補給もできて一石二鳥………

「……………豆?」

そう、豆一粒。
それが彼女の食料の全てだった。

「ハッ……ハハ、ハハハハハ………」

砂漠の空気より乾いた笑い声がしばらく続いたかと思うと、手のひらの上で唯一の食料が黒焦げになった。

(まぁ……いいや、武器も支給されてるはずだ、そっちがよければ食料なんて簡単に奪い取って………って、何にも入ってないじゃん!!)

いくらデイパックの中を覗いても、探っても、武器らしきものは何一つ入っていない。
本当は二番目に出てきた緑色の液体こそが彼女の支給品なのだが、彼女がそのことに気づく気配はない。

(大はずれってことか、ちくしょお……)

柄にもなく泣きそうになりながら一枚の紙切れを取り出す。
人名がずらりと並んでいる紙、おそらくこれが参加者名簿だろう。
ギラつく太陽の照り返しを手の影でさえぎりながら、一つずつ確認していくと、知っている名前もいくつかあった。

(ミタリー、カレンあたりとは合流したほうがいいな、ルキ、オーガ、グッチョリンはどっちでもいいや、間違っても出会いたくないのは本部の化け猫と東支部の変態)

四天王の中でも前髪とかグッチョリンU辺りなら話も通じただろうが、あの化け猫は問答無用で襲ってきかねない、変態のほうは言うまでもなく本能的に会いたくない。

次に取り出したのはこのフィールドの地図と思しき紙切れだ。
この地図が正しいとすれば、自分が今いる砂漠はそれほど広くないらしい。

(おっ、これはようやく私にもつきが回ってきたってことか)

そう思って荷物をまとめ、行動を起こそうとした瞬間、陽炎の向こうに見覚えのある特徴的なシルエットを見つけてしまった。

前言撤回、今日はとことんついてないみたいだ。



会いたくもないモヒカン頭の変態バカは、それこそあほのようにポカーンと口をあけて私を凝視している、キモイ。

「よりにもよって………な、ん、で、一番最初に会うのがおまえなんだよぉぉーーー!!」
「うおわぁーー!出たぁーーー!!」

奇声を上る変態に容赦なく電撃を放つ。
が、間一髪でかわしやがった……変態の分際で!

「なにが『出た!』だ!それはこっちの台詞だ!!」
「お、おま、おまえ……化けて出るほど俺のこと恨んでたのか、いや、確かにレムウィスの山ではおまえのことリョナろうとしたけど、あれは結局未遂だったわけだし」
「やかましい!人を勝手に殺すんじゃねぇ!」

続けて殺すつもりでさらに攻撃、しかしこれもぎりぎりかわされる………気にくわない!!

「ってか、何でこんなところにいるんだよ」
「はぁ!?テメェも何がなんだか分からんままここに連れて来られたんだろうが!」
「いやいや、そういうことじゃなくて、おまえは確か殺……」
「問答無用ぉぉぉーー!!」
「うごわぁーー!」

私のユピテルサンダーが三度までも避けられた…………何であたらない!!!

「上ぉぉ等ぉぉぉぉだこらぁ!!今度こそあのときの続きをやってやる!リョナりまくってあの世に送り返してやるぜぇぇ!!」
「身の程知らずの変態がぁ!死ぬのはテメェだぁ!」

私は丁度いいストレス発散用品を全力でつぶしにかかった。





「はぁ…はぁ……どうだ、思い知ったか………この、変態が!」
「ち、ちくしょぉ………やっぱ……強ぇ」

熱々の砂の上にひっくり返る変態と、汗だくで荒い息をはく私、こんなところで無駄にヒートアップするんじゃなかったと、いまさらながら後悔する。
しかし、私がここまで汗だくになったのは、何も砂漠の強烈な日差しのせいだけではない。

(この変態、いつの間にこんなに強くなりやがった)

思えば最初からおかしかった。
今までならこんなやつ、最初の一撃で戦闘不能にして一方的にぼこぼこにできたはずだ。
なのに今の戦闘ではユピテルサンダーをちょこまかかわすわ、メガバーン食らっても倒れないわ、一撃がやたら重いわ、五人に分身するという精神攻撃まで仕掛けてくるわで、こっちも油断してたら危ないところだった。

(今回はこの前みたいに魔法を封じられてたわけでもないのに、絶倫ドリンク飲んだってこんなに強くならねぇぞ普通、一体どんなドーピングしやがった)

まぁ、それは今いい、とにかく勝ったのだから。
これで水と食料と武器が調達できる。
とはいえ、武器に関しては期待できないかもしれない、さっきまでこのバカが振り回していたバカでかい斧は私には扱えそうにないだろうし。

「おい変態!私は今ヒジョーに虫の居所が悪いんだ、身ぐるみ全部置いて今すぐ私の前から消えるか、この場で私に跡形もなく消されるかどっちか選べ」
「くそ、分かったよ、消えりゃいいんだろ、消えりゃ」
「身ぐるみ全部置いて、だぞ」
「分かってるよ!うるせぇな!」
「って、それは脱がなくていいんだよボケがぁぁぁ!!」

真っ先に唯一身に着けているパンツを脱ごうとする正真正銘の変態に怒りのユピテルサンダーが直撃する、今度こそ死んだか。

「み、身ぐるみ全部って言ったじゃねぇか………」

チッ、生きてやがった。
しかし本当に何でいきなりこんなに強く………まてよ。

私はすぐさま今の状況を分析する。
1、 予想外に変態が奮戦してくれたおかげで現状私は疲労困憊だ。
2、 この殺し合いには本部の化け猫クラスのやつも参加している。
3、 今の変態は戦力としてはそこそこ優秀である。

……………いやいや!ありえない!!
いくら自分の命が危ないからって、この変態と組むなんて絶対ありえない!
そもそもあんな怪物級のやつがそうゴロゴロいるわけ………
いや、でも、あの化け猫ほど強くなくとも、もう一度目の前の変態ぐらいの実力のやつとやりあうことになったら私は勝てるか?
いやいや、でも、しかし、けれど………
私の頭の中で血みどろの葛藤が繰り広げられている間にも、変態はぶつぶつ悪態をつきながら歩き出してしまう。

決断するなら今しかない………

「おい、まて」
「あぁ?!今度は何だよ!」

私は大きく深呼吸すると、破れかぶれにこう言い放った。

「やっぱおまえ、私について来い」

………血反吐を吐きそうになった。

「はぁ?!何で俺がテメェについていかな……ぎゃほああぁぁぁ」
「二度言わせんな!!」

次に口にしたら最後、私は本当に血を吹いて倒れることになるだろう。

「いくぞ!」
(ちくしょぉぉぉ……このやろうぜってぇーリョナりまくって、犯しまくって、殺してやる!!)
「なんか言ったか?」
「なんでもねぇよ!!」



こうしてここに、相性最悪のリョナラーコンビが誕生した。





ちなみに………

「そうだ変態、飲みのもよこせ!もうのどの渇きが限界だ」

モヒカンのデイパックにはしること書かれた甘ったるい液体しか入っていなかった。





【B−3/砂漠/1日目 6:30〜】

【ルインザナン@リョナラークエスト】
[状態]:疲労(中)魔力残量(中)のどの渇き(大)
[装備]:無し
[道具]:ルインザナンのデイパック(支給品一式、
    ベドロウ汁@リョナラークエスト)
[基本]:キングリョーナを叩きのめす
[思考・状況]
1.とりあえずモヒカンと行動(できれば早く分かれたい)
2.砂漠から脱出
3.ミタリー、カレンと合流

※モヒカンがかなり際どいことを言ってましたが自分が死んでいることに気づいてません



【モヒカン@リョナラークエスト】
[状態]:疲労(中)魔力残量(少)
[装備]:ルシフェルの斧@DEMONOPHOBIA
[道具]:モヒカンのデイパック(支給品一式、
乾パン×4、しるこドリンク×3
    媚薬入り銃@悪の幹部候補生)
[基本]: 女見つけて痛めつけて犯る
[思考・状況]
1.とりあえずルインザナンと行動(できれば早くリョナりたい)
2.ルインザナンをリョナる

※ルインザナンが生きていることには引っかかってはいますが、聞いたらぶちのめされそうなので黙っておくことにしました。
※参加者目簿、地図は確認していません。
[15]投稿者:黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2011/02/01(Tue) 01:51 No.633  
第二回初投稿です。

本当はオーガ、ティム、トロアの話を書いていたんですが、
同時進行で考えていたこっちの話のほうが先にできてしまったので投稿しました。

オーガたちの話も出来次第投稿します。
こっちはいきなりハードな展開になりそうなので、
ワンクッションということで今回は軽めの話にしました。
ちょっと話の運びが強引だったかも……

そういえば、書いてる途中で気づいたんですが、
今回は基本支給品にコンパスが含まれてなかったんですね。
[16]投稿者:ぶーちゃん◆Ed9BXPOk 投稿日:2011/02/03(Thu) 20:06 No.641  
不毛な砂漠に少女が一人。短く切った緑色のぼさぼさ髪に、背中には自分の身体と同じぐらいの大きさの巨大なデイパックを背負っている。
ブラとショーツという出で立ちは、とても砂漠を旅する人間の格好とは思えない。
「なんで、わたしが、こんなこと……」
荒い砂が裸足に痛い。彼女は怨嗟の言葉を吐きながら重い足取りで砂漠を歩く。
考えてみればまだ朝の6時だというのに、太陽は高く昇り、じりじりと砂を焦がす。
彼女のその無防備な格好と砂漠の過酷な環境は、底なしの体力を消耗させるのに十分なものであった。
デイパックの中身は重く、肩紐が白い肌に食い込む。
だがこのデイパックの中身を捨てることはできない。彼女にとっては命を繋ぐデイパックなのだ。
椰子の木の陰が近くなる。見渡すとあちらこちらに生えている椰子の木。彼女は影から影へ、ひたすら南へと進んでいた。
もらった地図に間違いがなければ、このまま南に進み続ければ海にたどり着く。
やっと椰子の木の根元にたどり着いた。地下水でもあるのか、周囲には草が生え、砂からの照り返しも幾分か弱い。
椰子の木にもたれかかり、影の中に座り込むと、ほっと息が漏れる。
「殺し合いかぁ……」
漏れてきたのは息だけではなかった。

彼女の名前は石椛司(いしなぎ・つかさ)という。例に漏れず、このゲームの参加者である。
自分がどのようにしてこの世界に連れてこられたのかは、全く記憶にない。
気がついたらこの世界にいて、いきなり殺し合いをしろと命令され、そしてこの砂漠に放り出された。
立て続けに起こった理解できない出来事。砂漠の暑さも手伝って、頭の中がぐるぐる回る。
「どうしたらいいの……パパ、ママ……」
人殺しをするほどの覚悟も力も彼女は持っていない。かといって、甘んじて殺されるのも嫌だ。
両親の顔が浮かんでも消えていった。
「……悩んでても仕方ないか」
どうにかなるさと思考の黒雲を振り払う。この切り替えの速さと楽観的な思考は司の取り柄である。思考停止ともいう。
もう少し休憩したら、移動しよう。そう思ったときだった。
ガサッ
近くの茂みが動いた。

「えっ……」
茂みに視線を向けた彼女が見たものは、凄まじい勢いで飛び出してくる黒い影だった。
かわす暇もない。黒い影の体当たりを司はまともに食らってしまった。
「げほっ、げほっ……! ひゅーっ、ひゅーっ……」
みぞおちに衝撃が走り、肺の中の息が一気に押し出される。黒い影はそのまま彼女を地面に組み敷いた。
「あ……何……こいつ……化け物?」
やっとの事で息を吸い込んだ司は、片目を開けて黒い影を見る。
逆光になっていて顔はよく見えない。だがその輪郭は、明らかに人外のそれであった。
「ひっ?!」
ヌルヌルとした手が司の顔を撫でる。生臭い臭いが鼻を突いた。
風が吹き、椰子の木が揺れる。光が陰影のベールをはぎ取っていく。
それは砂漠には似つかわしくない、粘液で輝く緑色の肌をした生物だった。
「え……? か、カッパ……?」
頭に載った皿、緑色の肌、水かき、くちばし。それは昔聞いたおとぎ話に出てきた怪物の姿をしていた。
「げっげっげっげ」
奇妙な鳴き声を上げるカッパ。青臭い吐息に司は顔をしかめた。
「やだ、放して! 放してってば!」
両手を突き出してカッパを引き離そうとするが、粘液で手が滑って上手くいかない。
カッパの手は司の股へと伸び、彼女の大切な部分を覆っている布に手をかける。
「ひっ、やっ、やだーっ!!」
犯される。こんな化け物に。司は渾身の力を込めて全身をばたつかせる。
「やめて! おねがっ、がはっ?!」
カッパの拳がみぞおちにめり込む。先ほどの体当たりのダメージも完全には回復していない。司の目がうつろになって宙を泳ぐ。
「がっ、ぁっ……ゃ……」
カッパは司のショーツをはぎ取り、感触を確かめるように彼女の股間をまさぐる。
粘液にまみれた手がぴったりと閉じた割れ目をなで回す度、司の身体が硬直する。
大好きな両親のために大切に取っておいた貞操。こんな化け物にそれを奪われたと知ったら、両親はどんな顔をするだろう。
そう思うと、目頭が熱くなり、視界がかすむ。
「うえぇ……やだ、やだぁぁぁ……ぐすっ、やめてよぉ……」
カッパの手は彼女の秘裂をなぞり、そして……。
「ひゃうっ?! やだ、そこ、お尻……」
排泄にしか使ったことのない器官を触られ、素っ頓狂な声を出す司。
カッパは彼女の身体をひっくり返すと、軟らかな尻肉を手でかき分け、司のそこに口づけをする。
「んっ、やっ、やぁ……やめてよぉ……」
べちゃべちゃと音を立て、味見をするように司の肛門を舐め回す。
尻小玉。司の脳裏にそんな言葉がよぎった。
曰く、カッパは人の尻小玉を抜き取って食べるのだという。
それがどういう行為を意味するのかは、彼女にも容易に想像が付く。
「やだっ、やめっ、ひうっ?!」
カッパの舌がゆっくりと腸内に侵入すると、凄まじい異物感がこみ上げてくる。
括約筋に力を込め、舌の侵入を阻もうとするが、ぬめる細長い舌は難なく司の腸内に侵入した。
腸液と唾液が混じり合い、ぐちゅぐちゅと湿った音を響かせる。
「やめてぇ……ひろげないでぇ……」
自分の身体に尻小玉などというものが入っているかどうかは知らないが、おそらくこの化け物は司の腸内に腕を突き入れ、
容赦なくかき回すだろう。そんなことをされては無事では済まない。
「ぐっ、んっひ……なんとか、何とかしなくちゃ……」
情けない吐息を漏らしながら辺りを見回すと、自分のデイパックが目に入る。そうだ、これがあれば。
カッパが口を離し、じゅるり、と舌なめずりをする。チャンスは今しかない。
司はデイパックに手を伸ばす。幸い簡単にデイパックの紐を掴むことができた。片手で引き寄せ、中身を探る。
探しているのは武器ではない。だがこのカッパが自分の知っているようなカッパであれば、デイパックの中身は
彼に対しての有効な武器になるはずだ。
探しているものの手応えがあった。
「ま、待って! これ!!」
「げっ?」
司は肩をひねってカッパに中身を差し出した。
[17]投稿者:ぶーちゃん◆Ed9BXPOk 投稿日:2011/02/03(Thu) 20:06 No.642  

むしゃむしゃ、ぼりぼり。
小気味いい音を立ててカッパは最後のキュウリを胃の中に納めると、
膨れあがった腹を平手でぽんぽんと叩いた。
司のデイパックの中に入っていたのは、おびただしい量の夏野菜であった。
キュウリ、トマト、ナスといった野菜類だけが10キロである。
武器も何もなしに野菜だけ10キロ支給するという主催者の神経がよく分からないが、とにかくカッパ相手には役に立った。
司はカッパの方を見やる。心なしか先ほどより肌のつやが出て、目にも力がみなぎっているようだ。
(そっか、砂漠だから……)
水辺に住むカッパがいきなり砂漠の真ん中に放り出されたのだ。司が来なかったら、彼は一時間と持たなかったかも知れない。
彼も生き延びるのに必死だったのだ。だがそうとは言え、この緑色の化け物に同情するほど彼女は優しくはない。
「満足した?」
「げふー」
どうやら満足したようで、カッパの表情は緩みきっている。よく見ると少し愛嬌があるな、と司は思った。
その首には、彼女と同じように金属製の首輪がはまっている。おそらく彼は、主催者に「殺す側」を想定して
連れてこられたのだろう。だが、とりあえず今は襲ってくる気配はない。
「ねぇ、カッパ?」
「げ?」
間が持たない。そう判断した司は、自分から話題を切り出すことにした。
内心少し寂しかったというのもある。
「あなたも参加者なんだよね?」
「げっ」
カッパは頷く。何を言っているのかはよく分からないが、こちらの言葉は通じるようだ。
「じゃあさ、デイパック、カバン、持ってるでしょ? 中身見せてよ」
単純な好奇心からの要望。他意はなかった。
「げー?」
「げーじゃない! わたしだってキュウリあげたでしょ?」
「げ……げー」
仕方ない、といった調子で、カッパはデイパックを司に手渡す。大きなものは入っていないようだが、ずっしりと重い。
司はデイパックに手を突っ込み、中身を確かめる。ごつごつとした金属の触感。取り出そうとするが、何かに引っかかっているのか、
出てくる気配もない。中を覗こうとしても、デイパックの中は闇に満たされ、何も見えない。
「なんだろ、これ……」
「げー……」
カッパは肩をすくめた。カッパも中身が取り出せなかったようだ。
「こーいうときは、こーやって……」
司はデイパックを逆さまにして振り始めた。その時だった。
轟音が鳴り響いた。

「げほっ、げほっ……、な、何……?」
二人の視界を完全に奪うほどの、もうもうと上がる砂煙。その砂煙が収まると、二人は揃って目を丸くした。
「げーっ?!」
「こ、これって……」
それは巨大な金属の塊だった。両脇に幅広のキャタピラー、上部には巨大な砲塔が鎮座している。
今までテレビでしか見たことのない、いわゆる戦車という乗り物であった。
ふと気づいて手に持っているデイパックを見ると、デイパックは小さく萎み、もう中身は何も入っていない。
つまり、デイパックの中に、戦車がまるまる一両入っていたということになる。
「す……」
先に言葉を発したのは司の方だった。
「すごーい! すごいじゃないカッパ、あなたこんなもの貰ったの!! 私なんて野菜ばっかりなのに、
 いいないいなー!!」
ものすごいテンションでまくし立てる司。初めて生で見る戦車に興味津々といった様子だ。
「げー……?」
状況をやっと飲み込めたカッパが返事をしたころには、司は砲塔のてっぺんで四つん這いになり、入り口となるハッチを探していた。
この戦車がカッパの支給品であるということ考えはどこかに行ってしまったようだ。
「うっわー……本物の戦車だぁ……」
「げーっ!! げげーっ!!」
その戦車は自分のものだぞとでも言いたげな、カッパの抗議の声が聞こえる。
「何よー! ちょっとぐらい触っても良いでしょ?! 減るもんじゃなし!!」
その時だった。戦車を取り囲むように、無数の砂柱が立ち上がった。
「え……?」

突然轟音にたたき起こされ、甲高い声でギャーギャー騒がれたのでは溜まったものではない。
眠りを妨げられた彼らは、あちらこちらで砂から這い出してきた。
固い甲殻に覆われた身体、鋭いハサミ、高く天を突く尻尾。
サソリ。その生き物を人はこう呼ぶ。だがそのサソリは、靴で踏みつければ潰れてしまうような小さなものではなく、
逆に人間を踏み殺すこともできそうな、巨大なものであった。
それが合わせて5体。司とカッパを取り囲むように現れたのだ。
「「げげげーっ?!」」
二人の声が重なる。呆然とするカッパの耳に、司の声が響く。
「何やってんの! 早く! これに乗るのよ!」
「げ?」
戦車というものを初めて見るカッパにとっては、これが戦うための乗り物であると言うことは分からない。
そうであったとしても、頭の皿以外の武器を使う気にはなれなかったのだが。
二の足を踏むカッパに、司は更にまくし立てる。
「あんなのに一人で勝てるわけないでしょ!! これで何とかするから、早く!!」
「げー……」
カッパは渋々砲塔の上に飛び乗る。司はカッパを抱え上げると、強引に彼を砲塔の中に押し込む。
自分もすぐさまそれに続き、急いでハッチを閉める。サソリの尻尾が横なぎに彼女のいた空間をなぎ払ったのは、その直後のことだった。
「げー?」
操縦席に座る司の膝の上で、どうするのさ? とでも言うようにカッパが司を見る。当然、彼女も戦車の動かし方など知るよしもない。
知るよしもないが、どうにかするしかない。
彼女は操縦席をぐるりと見回す。車を運転する父親を助手席から見たことは何度もある。
戦車も車なんだから、似たような操作で動くだろう。というのが彼女が直感で導き出した答えだった。
視界の右端にキーが見えた。とりあえずこれだ。

ドドドッ
激しい振動が二人を揺さぶる。二人を取り囲むパネルに次々と灯がともり始めた。エンジンは掛かったようだ。
正面に表示されたディスプレイが鈍く光り、外の映像を映し始めた。サソリの姿は見えない。
驚いて逃げてしまったのか? そう思ったとき。
「げげーっ?!!!」
「いやあああぁぁぁぁ!!」
正面のディスプレイに大写しになるサソリの影。驚いた司が手元のレバーを思い切り引いた。
ディスプレイに映る景色がものすごい勢いで左に流れはじめ、横方向のGが二人を座席に押しつける。
旋回レバーを全開にしてしまった戦車の砲塔は、凄まじい勢いで右に旋回する。砲塔に今まさに飛びかかろうとしていた巨大サソリの内の一匹が、
強化合金製の砲身に頭を砕かれ、逆さまになって地面に転がる。
「うえぇぇ……ぎぼぢわるい゛……」
止めなければ。凄まじい横加速に顔を引きつらせながら、手探りで先ほどのレバーを探す。これだ。
「でっ?!」
急停止する砲塔。司は側頭部をパネルにしたたか打ち付けてしまい、司の視界に星が散る。
「うぅー、痛い……」
「げっげっげっ」
司の膝の上でカッパが笑う。
「笑うなー!」
司の叫び声も、エンジン音にかき消されてよく聞こえない。とりあえず、砲塔を旋回させるレバーは分かった。
まだくらくらする頭を抑えながら、司は再び操縦席を見回した。

1匹減って4匹になった巨大サソリは一旦距離を取り、おおよそ20メートルほどの位置で四方から戦車を取り囲んでいた。
次の攻撃のタイミングを見計らっているようだった。その時、戦車が土煙を上げ前進を始めた。
避けきれない。キチン質の甲殻がギシギシときしみを上げ、正面に陣取っていたサソリはキャタピラの下へと消えていく。
後に残ったのは肉片と体液と砂の混じり合った死体だけであった。
残った3匹のサソリはその巨体に似合わぬ猛スピードで戦車を追撃する。
サソリの方がわずかに速い。じりじりと距離が縮まっていく。
砲塔が180度旋回し、砲身がサソリを睨む。
だが、その砲身が火を噴くことはなかった。

「げっげっげっ!!」
「分かってる! 分かってるからちょっと黙ってて!」
司は操作パネルのボタンを手当たり次第に弄っていた。ワイパーが作動し、前照灯が点滅し、消化剤が車内を白く染める。
プラスチックのカバーが付いたスイッチを上げると、ディスプレイに映ったサソリに四角いマークが重なり、電子音が鳴り始める。
照準機のスイッチが入ったのだろう、ということを司の直感が告げた。
「あとは発射ボタン……えーと、えーと……」
迷っている暇はない。サソリは今にも車体に飛びかかろうという距離まで近づいている。
「げーっ!!」
カッパが目の前にあるボタンを叩く。凄まじい爆音が車内に鳴り響いた。

閃光、爆音、土煙。砲身から発射されたミサイルは弧を描きながらサソリの一団に命中し、粉々に吹き飛ばした。
破片と体液がそこら中に飛び散り、戦車を濡らす。
発進したときと同じように金属音を響かせ、車体が前につんのめると、キャタピラが砂を噛み、長いキャタピラ跡を残して戦車が急停止した。
「はは……はは……」
緊張の糸が切れた司の口から乾いた笑いが漏れる。
「勝っちゃった……わたし……あんな化け物相手に……」
ほんの数分前まで、彼女は何の力も持たない少女だった。今や彼女は常人には太刀打ちできない戦闘力を手にしている。
これなら、あるいはこの殺し合いの勝者になれるかもしれない。こみ上げる万能感。気持ちが浮き立ち、鼓動が速くなる。
「ねぇ、カッパ?」
「げ?」
「私たち、いいコンビになれると思わない?」
カッパは少しの間黙り込んだ。正直この乗り物はカッパの手には余る。彼女がいれば、この乗り物を武器として有効活用できるだろう。
生身で戦えば彼女を倒すのはたやすい。主導権はこちらにある。
「げっ!」
膝の上でカッパが頷く。
「そうと決まれば、出発しんこー!!」
司はアクセルを一気に踏み込み、エンジンが甲高いうなりを上げる。
急加速がカッパを座席に押しつけた。
「ぐえーっ?!」
果たして、主導権はどちらに渡るのか。戦車はもうもうと砂を巻き上げ、不毛の砂漠を南へと疾走していった。

「カッパが戦車(タンク)でやってくる!」


【C-2/砂漠/1日目 7:00〜】

【石椛 司@Nightmarish】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:司のデイパック(支給品一式、
夏野菜5kg)
[基本]:勝者として生き残る
[思考・状況]
1.砂漠を脱出する
2.強力な武器を入手してイケイケ状態。カッパの思惑には気づいていない


【カッパ@ボーパルラビット】
[状態]:健康
[装備]:戦車[TGシリーズ](損傷無し、燃料残り95%、誘導ミサイル×5、機関銃弾×400)
[道具]:カッパのデイパック(空)
[基本]:(゚Θ゚)
[思考・状況]
1.水場に行きたい(海水はダメ)
2.戦車を司より上手に扱える人間がいたら、司は切り捨てよう
3.司の尻小玉美味しそう(゚Θ゚)
[18]投稿者:ぶーちゃん◆Ed9BXPOk 投稿日:2011/02/03(Thu) 20:07 No.643  
投下ー
タイトルは最後の「カッパが戦車で……」です
[19]投稿者:「深紅の魔法剣士は苦労人」 289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/02/05(Sat) 21:45 No.646  

鬱蒼と生い茂る森の中……一人の少女が切り株に腰を下ろしていた。

艶やかな長い黒髪に紫のドレス、中二病っぽいオッドアイを
持つその少女は、ジトっとした不機嫌そうな表情をしていた。

しかし、少女は別に本当に不機嫌というわけではない。


単に眠いだけである。


「…………」

少女……ドロ・ベッシュは考えていた。

すなわち……『眠くてしょうがないので、このまま寝てしまおうか』と。


「……違う……」


そうではない。

確かに眠くて仕方が無いが、今考えるべきなのはそんなことではない。
誘惑してきた睡魔に珍しく抵抗しつつ、ドロは考える。

(……なんで、私はこんなところにいるんだっけ……?)

ようやく、今考えるべきことを思考の表側に引き上げたドロ。
そして、彼女はその疑問の答えを求めて、自分が覚えている限りの記憶を遡り始める。

(……確か、昨日は……いつものように、リタたちとブタ小屋に泊まったはず……)

そう、ドロは自分の雇い主であるリタ、ティム、キリエ、そして自分と同じように雇われた
傭兵であるブロンディとともにブタ小屋に泊まったはずだった。

しかし、いきなり聞こえてきた爆音と悲鳴に、ドロは目を覚ました。

目を覚ましたドロの目に飛び込んできたのは、血まみれの首無し死体。
それだけでも意味不明なのに、傍にいた変な男がワケの分からないゲームの
ルール説明を始め、それが終わったと思ったらこの森に転移させられたのだ。

「…………」

以上のことを思い出したドロは、ようやく現状を理解した。

(……夢だ、これ……)

理解してなかった。

「…………」

どうやら、眠りが浅いらしい。
夢を見るということは、眠りが浅い証拠である。

そう思ったドロは寝なおそうと考え、デイパックを枕にして、
こてんと横になる。

「……zzzz……」

そして、すやすやと寝息を立てて、寝始めたのだった。






森の中を枝を掻き分けながら進むのは、鎧に身を包んだ赤い髪の女性だった。

その女性……アーシャはその胸に怒りを抱いていた。

アーシャは、ゴッド・リョーナと名乗った男の行いが許せなかった。
何の罪も無い少女を殺し、大勢の人間を集めて殺し合いを強要する非道な行い。

(……殺し合いなんて……そんなこと、絶対に許さない!)

アーシャは今まで様々な事件を解決してきた。

その過程で、大勢のモンスターや悪人と出会い、それらを打ち倒してきた彼女だが、
あの男ほどの吐き気を催すような邪悪な存在に出会ったことなどなかった。

だが、怒りを抱きつつも、アーシャは冷静だった。

今回の事件を引き起こしたゴッド・リョーナ……あの男の力は底が知れない。

あの人数の参加者を一瞬であの場から転移させた正体不明の力から考えても、
いくらアーシャといえども、今回の事件を一人で解決することは不可能であろう。

まずは、仲間を探すべきだ。
幸い、ここには信頼できる仲間であるエリーシアとシルファの二人も来ているらしい。

彼女たちや他の参加者と力を合わせ、一刻も早くこの狂った殺し合いを止めさせる。

(ゴッド・リョーナ……貴方の思い通りにはさせないっ!)

打倒ゴッド・リョーナの決意を胸に森を進むアーシャ。
しかし、ふと自分が右手に持つ武器を見て、溜息を吐く。

彼女に支給された武器……それは、武器として使い物にならないほどに
ボロボロになった槍だった。

疑う余地も無く、大外れである。

(ついてないなぁ……まぁ、私には魔法もあるし、
 出会った人に武器を貸してもらえばいいかなぁ〜……)

アーシャは溜息を吐きつつも、茂みや枝を掻き分けて、森を進む。
そして、ようやく視界の開けたところに出ることができた。

ほっと一息ついたアーシャだが、目の前に広がる光景に顔を強張らせた。


アーシャの目にした光景……それは、倒れた少女に対して、
今にも襲い掛からんとしている巨大なコウモリの姿だった。


その巨大コウモリ……ライトバットは、大口を開けて少女に襲い掛かろうとする。

「……はあぁぁぁっ!!」

だが、ライトバットに向かってアーシャが槍を投擲したことで、
ライトバットは槍をかわし、少女から離れていった。

そして、標的をアーシャに変更したライトバットは口から電撃弾を吐き出した。
吐き出された電撃弾を、アーシャは前進しながら回避し、右手に魔力を集中させる。

再びライトバットの口から電撃弾が放たれるが、アーシャは今度は避けようとしない。

自分に向かって来る電撃弾に右手を向け、彼女は叫ぶ。

「フレイムバースト!!」

アーシャの手のひらから巨大な火球が放たれ、電撃弾を打ち破る。

そして、火球はそのままライトバットへと直撃し、大爆発を起こす。



ドゴオオォォォオオォォォォォンッ!!



「ギイィィィィィっ!!?」

ライトバットは哀れな悲鳴とともに、全身を焼かれて地に落ちた。






モンスターを倒したアーシャは戦闘態勢を解き、倒れている少女へと駆け寄った。

「大丈夫!?怪我は……って、アレ?」

良く見ると、その少女は眠っているだけだった。

長い黒髪に紫のドレスを着たその少女は、デイパックを枕にして、
とても気持ち良さそうに寝息を立てていた。

「……え……えーと……まぁ、無事だったんだし、いいか……」

アーシャは苦笑を浮かべつつも、このまま寝かせておくわけにもいかないと考えて、
少女を起こそうとする。

「ちょっと、君?こんなところで寝てたら危ないよ〜」

肩を揺すって起こそうとするが、少女はむずかるだけで一向に起きようとしない。
困り果てるアーシャだが、羽ばたく音が後ろから聞こえてきて、慌てて振り返る。

すると、先ほどの巨大コウモリが三匹、アーシャたちに向かって来ていた。

「……くっ……また……!」

アーシャは急いで魔力を集中させるが、一匹ならまだしも三匹を一度に倒すのは不可能だ。
そうすると敵の攻撃を避けながら戦うことになるが、それでは後ろで眠っている少女を
危険に晒してしまう。

(……武器さえあれば……!)

歯噛みしつつも必死で打開策を考えるアーシャ。

武器を持たない今のアーシャでは、あのモンスターたちを瞬殺することはできない。
ならば、後ろの少女を背負って逃げるか?

しかし、人一人を背負って、あのモンスターの放つ電撃弾を避けながら逃げられるとは思えない。

「ギイィィィアアアァァァッ!!」

焦るアーシャに向かって、巨大コウモリたちは一斉に電撃弾を放つ。

それを見て、仕方なくアーシャは電撃弾を相殺するために魔法を放とうとする。


だが、次の瞬間、三条の雷がアーシャの横合いを通過していった。



ビシャアアアァァァアアアァァァァンッ!!!



「ギャアアアァァァアアアァァァァッ!!!?」


強力な三条の雷は、電撃弾をかき消してモンスターたちを撃ち抜き、
彼らの息の根を止めた。






……シュウ、シュウ……。

黒焦げになった巨大コウモリたちを、アーシャは呆然と見つめていた。
だが、我に返り、視線を後ろに向ける。

すると、先ほどの少女……ドロが不機嫌そうな顔で巨大コウモリたちに手のひらを向けていた。

「……朝から、うるさすぎ……眠い……」

ドロはそう呟くと、くぁ……と欠伸をして目を擦る。
そして、アーシャに気が付くと、不機嫌そうな顔のまま首を傾げた。

「……誰……?」
「……えっ!?えーと、私は……」

いきなり問いかけられたアーシャは言葉に詰まりつつも、
自分の名前を名乗ろうとする。


「見ていたぞ、お前たちっ!!」


だが、いきなり聞こえてきた大声に、慌てて振り返るアーシャ。

すると、凄まじい勢いで空から何かが降ってくるのが見えた。



ずだんっ!!



振ってきたもの……それは、赤い帽子とマフラーをした少女だった。
少女は着地した態勢から身を起こし、アーシャとドロに向かって
びしっと指を突き出した。

「あの巨大コウモリを一瞬で倒すなんて、なかなかやるなっ!!
 でも、その程度であたしを倒せるなんて思うなよっ!!?
 この武道大会で優勝するのは……!!」

そこまで一気に捲し立てたところで、少女はアーシャとドロに向かって、
凄まじい速度で突っ込んできた。

「このあたしだぁぁぁぁーーーーーっ!!!」
「……なっ!?」

それを見たアーシャは慌ててドロを押し倒す。

間一髪、少女の蹴りはアーシャとドロの頭上を通過していった。

少女の外れた蹴りは近くの太い木にぶち当たり、凄まじい音を立てる。
その木の幹には、みしみしと深いヒビが入り、次の瞬間には音を立てて
ヘシ折れてしまった。

少女の蹴りの威力に驚愕しつつも、アーシャは少女に向かって、怒りの声をあげる。

「いきなり、何をするの!?まさか、貴女はあの男の言う通り、
 本当に殺し合いをするつもりなの!?」

アーシャの言葉に対して、少女は一瞬きょとんとした顔を浮かべたが、
すぐに不適な笑みを浮かべる。

「ふんっ!!ワケの分かんないこと言って、あたしを油断させようと
 したって無駄さっ!!お前たちは強いっ!!だけど、あたしはお前たちより、
 さらに強いっ!!それを今、証明してやるっ!!」

堂々と言い放った少女の言葉を聞いて、アーシャは絶句する。
数瞬の沈黙の後、アーシャは振り返ってドロに囁く。

「……えーと……この子、ひょっとして現状を理解してないんじゃ……?」

だが、ドロは首を傾げてぶつぶつ呟いている。

「……おかしい……ちゃんと寝たのに、まだ夢から覚めてない……」
「この子も理解してないっ!!?」

自分以外が現状を理解していなかったことに、アーシャは思わず絶望の悲鳴を上げていた。






【E−6/森/1日目 7:00〜】

【アーシャ・リュコリス@Silent Desire】
[状態]:健康、魔力消費(小)、精神疲労(小)
[装備]:無し
[道具]:アーシャのデイパック(支給品一式、
 おはぎ×10@まじ☆はーど外伝怪物傭兵物語
 500ml竹水筒(中身は水)@現実)
[基本]:主催者の打倒
[思考・状況]
1.アイを止める。
2.ドロとアイに現状を理解させる。

※「ボロボロの槍@ニエみこ」はアーシャたちの傍に落ちています。



【アイ・アンク・ロウ@ボーパルラビット】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:アイのデイパック(中身不明)
[基本]:武道大会(殺し合い)で優勝する
[思考・状況]
1.アーシャ、ドロと戦う。
2.強いヤツと戦いたい。

※殺し合いを武道大会だと勘違いしています。
※デイパックの中身を確認していません。
※アーシャ、ドロを強者と認識しました。



【ドロ・ベッシュ@Warlock!】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[装備]:無し
[道具]:ドロのデイパック(中身不明)
[基本]:寝る
[思考・状況]
1.とりあえず、もう一度寝る。
2.こいつらうるさい。

※殺し合いを夢だと思っています。
※デイパックの中身を確認していません。






[20]投稿者:289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/02/05(Sat) 21:50 No.647  
投下ー。
一人くらい殺そうかと思ったら、なぜかギャグ話に。

どうして こうなった。
[21]投稿者:「リョナラーの愛」 やさい◆QFebwi.A 投稿日:2011/02/07(Mon) 07:36 No.649  
「ぬぬ・・・」

キトリーは思わず顔をしかめた。大仰な武器を好む彼女のバッグの中の武器は、
小さなナイフ一本だけだったのだ。

あの男の言う事は信用できない。だけど確実に信用できる事がひとつ。
あいつは私達に殺し合いをさせるという事。
それなのに、いつもの武器は取り上げられ、期待していたバッグの中身の武器は短剣一本だけ。
おまけに転送された場所は見渡しのよい野原の上であった。

(もし辺りに敵がいたらやられていたかも。とりあえず向こうに見える森に隠れなきゃ。)

少し安堵した顔で、キトリーは森の方に歩き始めた。





生死を決する場だというのに、度重なる不運で叫びそうになるキトリー。
それをぐっと堪えて、今考えられる最善の策を実行する。
思えばキトリーが若くして賞金稼ぎを生業にできたのも、自分の運命に立ち向かい、
それを乗り越えてきたからではないだろうか。
そんなものにふて腐れている時間はキトリーには存在しない。
悪夢のような理不尽さや、どうしようもない偶然は、わたしを精神的にも肉体的にも強くしてくれる。
―――そう、不運こそ、わたしにとって最高の糧なのよ!

「・・・あっ、不運といえばもう一つあったわね。」

最後の方が言葉になっている事に気付いたキトリーはふっと我に返り、
バッグの中からアイスを取り出した。ただひとつのキトリーの食料。
鞄をいくら漁っても食料はこれしか見当たらなかった。
これを解ける前に食べることが、わたしに今出来るもう一つの「最善の策」。






「ぺろぺろ」

周りの気配を探りながらアイスを頬張るキトリー。たいぶ森に近づいた。
あそこならある程度の外からの目くらましにはなる。そこでこれからの計画を練ろう。
キトリーはひんやりとしたアイスのおかげか、だんだんと冷静さを取り戻しつつあった。

「ん?」

瞬間、舌に違和感があった。
ある予感が走り、反射的に口の中からアイスを引き抜く。

「これは・・・」
「あ・・・た・・・・・・り・・・?」

取り戻しつつあった平常心は吹き飛び、押し忍んできた感情が限界に達した。
渾身の力で当たりの棒をへし折る。

「ああああ!!もう!わたしの事こけにして!」

近くの樹にアイスの棒を力いっぱい叩きつけるキトリー。
顔は紅潮し、冷静さを失ったキトリーは大声で叫んでしまう。
その一部始終を見ていた樹の上の一匹のモモンガが、キトリーのことを笑っている。

「・・・!こいつ!」

キトリーはナイフを手にとり、モモンガに向けて放った。

「調子に乗るんじゃないっ!!」

ガン!

ナイフはモモンガを貫き樹の幹に刺さった。その衝撃でナイフがブルブルと震える。
そのナイフの振るえが収まると同時に、串刺しにされたモモンガも息絶えた。

「ハァハァ…乗るのは樹の上だけにしておくべきだったわね…」






イライライラ…
キトリーは森の境界付近でうろうろしていた。
先程殺めたモモンガの仲間たちが、森からキトリーのことを威嚇しているのだ。
「なに?あなたたち。こんな風になりたいの?」
キトリーはそう言うと、さっきのモモンガの死体を手に取り、呪文で火炎の渦を巻き起こした。
一瞬で炭化するモモンガの肉体。キトリーがそれを片手でグシャっと潰してみせると、
その音を聞いたモモンガ達は一斉に森の中に飛び立っていった。

「…はあ。」

こんな事に魔力を使ってしまった事に後悔するキトリー。モモンガ達は森の奥に引っ込んだが、
動物相手にムキになってしまった自分が情けなくなってくる。

「気持ちが落ち着かないわ…」
「できることなら、あの連中の殺しに混ざってスッキリしたいのだけど。」

そう。キトリーが森の前でうろついていたのにはもう一つ理由があった。



「いやー!!」

森の外で女の子が、丸い草のような化け物の群れに追われているのだ。

「離してよお!」

さらに先程のモモンガの仲間達が、女の子の顔面にくっついて視界を遮っている。
見るからに貧弱そうな体つきの少女。その華奢な身体を守っているのは白いひらひらした
チューブトップと、すらっとした細い足がむき出しのホットパンツだけであった。
その細い足を懸命に走らせ、女の子は今必死に化け物の群れから逃げている。
…しかし、その体力が尽きれば、あの女の子は化け物に食い殺されてしまうだろう。

「あの女の子の体力じゃ、逃げるのもせいぜい後3分が限界ね。」

もちろんキトリーの能力を用いれば、
あの女の子もろとも化け物の群れを全滅させることくらいたやすいだろう。
しかし、キトリーは戦いに参加しようとはしない。敵の能力も確かめずに、無意味な戦いは
避けるべきだと判断したからだ。ましてやあの女の子を助けてヒーロー気取りをしようなんて
考えは微塵もなかった。

「くっ……」

頭ではそう理解できるのだが、さっきから続いているイライラのせいで大暴れしたいという
欲求が、キトリーの判断を揺さぶる。

「我慢して、わたし。もう少し様子見よ…」




「…ひぃ!…ひぃ!」

動物の鳴き声のような悲鳴を上げ、開けぬ視界の中を走り回る女の子。
逃げる足は走りながらもガクカグに震え、
モモンガを顔から剥がそうとする手は虚しくも空を切っていた。


そうこうしている内に草の化け物が彼女に追いつく。
モモンガは巻き添えを嫌って顔からどいてくれたが、
むしろそのまま視界を遮っていてくれていた方がよかったかもしれない。

「…っ!!」

彼女の目の前には、大きく裂けた口から異臭を放つ草の化け物がいた。

「…や…あ…こ、こな…い、で…!」

目からはボロボロと涙が溢れ、死の緊張から激しい嘔吐感が彼女を襲う。

「…ぁ…!……!!」

もはや声にもできない彼女の叫び。身体の振るえは、まるで生まれたての子鹿のようだった。




「おしまいね…」

キトリーが彼女の死を確信した瞬間、その女の子はバッグから大きな剣を取り出した。

「…!あれはバスタードソード…?あの女の子の筋力で扱えるものだとは思えないけど…」

キトリーは、あの女の子にとっては剣をバッグから取り出す事でさえ困難であろうと思った。
しかし、その予想に反してその女の子はその剣を震える両手で握り、
刃の先端を地面に付けながらも敵の方に向けている。

「…うぐっ…あっ……ぁ…」

恐怖に巻かれながらも女の子は最後の勇気を振り絞り、死の淵から脱出しようとする。
その大きな刃を向けられた化け物達は驚き、後方に少し下がった。




「フフフ・・・面白くなってきたわね。」

キトリーはそう言うと、今度は女の子に聞こえる声で言った。

「敵が引いているわ。今よ、その剣で叩っ切ってあげなさい。」

「ひっ!えっ…!」

突然の人の声にビックリする女の子。しかし、人の声を聞いたことでだんだんと
今までの混乱から開放されていく。

「あ…あっちいけっ!」

女の子は剣を持ち上げ、化け物に向かってブンと振り下ろすが、やはり彼女の力では
バスタードソードなど上手に扱う事はできない。持ち上げるのが精一杯といった状態であった。

「このっ…!」

再び剣を振りかざす女の子。しかし、今度は振り上げ過ぎてしまったためバランスを崩し、
剣はあろうことか女の子側に倒れ掛かってきた。

「えっ…うあああ!」

「はあ…見ていられないわ。」

キトリーはため息をつくと女の子のところまで駆け寄り、女の子のバスタードソードを取り上げる。

「あっ…」

「いい?剣はこうやって…振るのよ!」

「!?ひいぃぃい!」



ザシュッ!



真っ二つにされる草の化け物。

「あははっ!逃がさないわよ!」

化け物達が逃げの姿勢に入る前に、キトリーの斬撃は次々と化け物達を捉えていく。
そのスピードにはキトリー自身も驚いていた。バスタードソードはキトリーの身長と同じくらいの長さだ。
重さもそれなりのものを覚悟していたが、異常に軽いのだ。おそらくは名工の作品であろう。

「うふふ…この剣、気に入ったわ!」

[22]投稿者:「リョナラーの愛」 やさい◆QFebwi.A 投稿日:2011/02/07(Mon) 07:36 No.650  

化け物の群れを一掃すると、キトリーはぺたんと座っている彼女の前まで行き、
手をさし伸ばした。

「助けてくれて…あ、ありがとうございます…キトリーさん…」



ドスッ!



「…!!?うぐっ!」

キトリーは彼女を立ち上がらせると、彼女のお腹を殴った。

「勘違いしないでね、殺し合いの場所なのよ。何であんたを助ける必要があるの?」



ゴス!ゴス!



「うげっ!あうっ!」

いたぶるようにキトリーはお腹を数発殴る。

「それと!何であなたがわたしの名前を知っているのよ!」



ゴスッ!



「うぐあっ!…えっと…それは…あなたをクァル…いえ、ゆ、有名だからですよ…!」

「はあ…」

まぬけすぎる返答にあきれるキトリー。腹を殴る手も止まってしまう。
その隙に女の子はキトリーを説得しようと弁解を続ける。

「そ、その剣もキトリーさんにプレゼントしますから…見逃してくださいよう…」

「そんなの、あなたにプレゼントされなくても、あなたを殺してから奪えばいいでしょう?」

キトリーはすこし馬鹿にされたような気がして、再びお腹を殴ろうとする。

「…!ま、待ってください!それに…」

「それに、なによ?」

「わたし…かわいいですよ?」



ゴスゴスゴス!



「うがっ!あっ!あっ!」

「わかったわ。あなた、死にたいのね。」

キトリーは置いてあったバスタードソードを拾い、彼女に向かって振りかぶる。

「あ…あ…ごめんなさい…!」

「さようなら。運が悪かったわね。」



ブン!



「いやあぁあああ!!しはん助けてぇ!!」



ぴたっ



振り下ろし気味だったキトリーは、その腕を止める。

「…師範?あなた、ここの参加者の中にあなたの師範がいるの?」

「えっ…その…わ、私の師範じゃないんですけど、呪術の師範の人となかよしで…」

「呪術?聞いた事ないわね。もう少し詳しく教えて頂戴。」




キトリーは女の子からその師範について話を聞く。参加者の中に仲間がいないキトリーにとって、
他の参加者の情報というものはとても貴重であった。

「ふうん。ちんすらって言うの。」

「はい…」

聞くところによると、ちんすらは植物を出したり、傷を治したりとよくわからない
魔法を使うらしい。そして、不死身であると。
それを聞いたキトリーにひとつのアイデアが浮かぶ。

「なるほどね。わかった。いいわ。あんたの事、今回は見逃してあげる。」

「えっ…!ほ、ほんとですか!やったー!」

「ただし、そのちんすらと掛け合ってわたしの部下になるように説得して。
ちんすらが見つかるまではあんたの事をわたしが守ってあげるから。」

えっ?という顔をする女の子。少しの間を置いた後、キトリーの顔から目をそらしながら尋ねた。

「…もし、しはんが嫌だって言ったら…?」

「ふふふ…そうね。あんたと二人で仲良く死んでもらうわ。」

女の子はちんすらが不死身というが、この殺し合いの性質上そんなことはありえないと
キトリーは考察する。おそらくは不死身に近いだけだ。このバスタードソードでめった切り
にしてしまえば、そのまま骸になるはず。

「うぅ…」

殺すと聞かされて寂しそうな声を出す女の子。しかし心の中では安堵していた。
しはんと逢えるかもという期待と、キトリーが守ってくれるという安心感。
それらの感覚は、今の彼女にとって心の寄り所であった。
女の子は考えるフリをした後、キトリーの提案に同意した。



「…そういえばあんたの名前、まだ聞いてなかったわね。」

ふとキトリーが女の子に尋ねる。

「あ、そうでした…私はとじかって言います。とじかちゃんて呼んでください!」

ちゃん付けで呼んでなんて慣れなれしいなと思いつつも、キトリーは返す。

「わたしはキトリー。キトリー=ブラックよ。知っていると思うけどね。」

「よろしくお願いします、キトリーさん!」




キトリーととじかは森の中へと入っていった。
とりあえずの急場を凌いだとじかの顔からは、不謹慎ながらも笑みがこぼれる。
しはんと合流できれば、かなり心強くなる。怪我を負っても呪術で治してくれるし、
食料が尽きても、木の実を作ってくれるだろう。
それと、単純に、しはんに逢いたかった。
ここは殺し合いの場。
もうしはんとは逢えないかもしれない。
そんなの寂しすぎるよ…
どうせ殺されるのなら、最後にもう一度…

(しはん、生きててね…)








―――同時刻、とある森の中。



「…とじかちゃんが…参加している…?」

ちんすらは樹の上で参加者名簿を確認していた。
樹に呪術で生やした木の葉で体を覆い、外からは上手くカモフージュしている。
そして獲物にできそうな少女の名前を探していたのだが、
とじかの名前を見つけた瞬間、彼女の顔が引きつる。

「そんな…」

リョナラーであるちんすらにとってこの殺し合いは最高の舞台であった。
弟子のガルーダでさえ、彼女の目には単なるオモチャとして映っていた。
しかし、とじかという存在は彼女にとってあまりにも特別なものであった。

「……」

ちんすらの脳裏に、一緒に過ごした日々の思い出が浮かぶ。
一緒に笑ったり励ましあったり、時にはリョナったりリョナられたり…

「…探さなきゃ。」

ちんすらは殺し合いよりも、とじかを見つける事を優先する。
とじかちゃんの能力では間違いなくこの殺し合いでは餌食だ。
そうなる前に一刻も早く見つけ出し、私が…


「…殺してあげる。」


もちろんとじかちゃんには生きて欲しい。
もしも、とじかちゃんと合流できたら、できる限り彼女の事を守るつもりだ。
しかし私の能力もたかが知れている。いよいよとなればとじかちゃんは殺されてしまうだろう。
そんな状況に陥ったら、とじかちゃんが誰かの手にかかる前に、
私の手で逝かせてあげたいのだ。
とじかちゃんの最期の瞬間は他の誰にも譲らない。
それが、リョナラーとしての愛の表現のしかた。

(とじかちゃん、生きててね…)












【D-5/草原 1日目 7:00〜】

【キトリー=ブラック@クァルラリル】
[状態]:元気
[装備]:ペセル用バスタードソード@クァルラリル
[道具]:折れたアイスの棒(当たり) @現実世界
    キトリーのデイバッグ
[基本]:最後まで生き残る
[思考・状況]
1.ちんすらを探し出し部下にする。
2.とじかを守る。

※デイパックの中身は確認しましたが、武器と食料以外の物が
 いくつか入っています。
※ペセルの事は名前は覚えていませんが、姿は覚えています。
※しかし、自分の使っている剣がペセルのものだと知りません。
※とじかと剣とナイフを交換しました。



【とじか@r-wiz/ギラギラとじか様】
[状態]:疲労(小)、精神疲労(小)
[装備]:短剣@現実世界
[道具]:とじかのデイバッグ
[基本]:生き残る
[思考・状況]
1.ちんすらと合流する

※デイバッグの中身を確認していません。
※キトリーと剣とナイフを交換しました。




【不明(いずれかの森の中) 1日目 7:00〜】

【ちんすら@よもまつ】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:ちんすらのデイバッグ
[基本]:かわいい子をリョナる
[思考・状況]
1.とじかと合流し、保護する。守りきれないと判断した場合、彼女を自分の手で殺す。
2.道中かわいい子がいたら、なんとかしてリョナってあげたい。

※デイバッグの中身を確認していません。
[23]投稿者:やさい◆QFebwi.A 投稿日:2011/02/07(Mon) 07:40 No.651  
初めまして!よろしくお願いしますm(_ _)m
名前は興ざめしてしまうので、偽名を使っています。許してください;(本名はEメール欄に書いてあります。)

何か問題があれば感想スレ等で連絡ください…

[24]投稿者:『呪いと恐怖と血と金に狂え  その1』  289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/02/11(Fri) 23:54 No.653  

早朝にも関わらず、どこか薄暗い不気味な場所……墓場に一人の青年が立っていた。
その青年は険しい表情で、つい先ほど目の前で起こったことを思い出していた。

(殺し合いだと……!?ふざけやがって……!)

青年……御朱 明澄(みあか あすみ)は激怒していた。

ゴッド・リョーナと名乗る男によって殺された名も知らぬ関西弁の少女。
彼女の最期は明澄の目に焼きついており、それは明澄のまっすぐな心に
怒りの炎を燃え上がらせていた。

(ゴッド・リョーナとかいったな……!アイツは必ずこの俺がぶっとばしてやるっ!)

明澄は拳を硬く握り締める。
外道の手によって散らされた尊い命を弔うため、そしてこの会場の参加者全てを
救うためにも、明澄はゴッド・リョーナの打倒を強く胸に誓った。

(……と、まずは支給品ってヤツを確認しないとな。
 殺し合いに乗るヤツなんていないって信じたいけど、
 さすがに武器も無しに歩き回るのは無用心だろ)

明澄はさっそく自分に支給されたデイパックの中身を確認する。


そして、中から出てきたのは……


「……これって……バール、だよな……?いや、違う……か……?」

明澄に支給された武器……それは、『バールのようなもの』だった。
もっと具体的に表現しろと言われても無理である。

それは『バールのようなもの』であって、『バールのようなもの』としか表現できない、
『バールのようなもの』以下でも、『バールのようなもの』以上でもない、
完全無欠に『バールのようなもの』でしかなかったのだから。

(……いや、しつこすぎだろ、その解説……)

地の文に突っ込みつつも、明澄はバールのようなものを構え、
二度三度と素振りをしてみた。

「……まぁ、刃物だと相手に怪我させちゃうしな。
 鈍器なら手加減も出来るし、ちょうどいいや」

明澄はそう思って納得すると、再びデイパックを漁る。

「他には……何だこりゃ?果物か?できれば、肉とか
 もっと食いでのあるものが良かったんだけどなぁ……」

食料は、五つのこけももだけだった。
飲料の類は、エリクシルと書かれた一本のドリンクしか見当たらず、
そのドリンクにしても『体力を完全に回復する』という説明書が
貼り付けられていたことを考えると、飲料としてではなく道具の
一種として支給されたものなのだろう。

武器の貧弱さを合わせて考えると、もしかしたら自分に支給された
デイパックは外れなのでは、と少しがっかりする明澄だが、
「まぁ別に殺し合いをするつもりじゃないしな」と気を取り直す。

……自分に支給されたバールのようなものが、ある世界では伝説の武具扱い
されている事実など、明澄は知る由もなかった。

数分後、デイパックの中身を確認し終えた明澄は立ち上がって歩き出した。

名簿を確認したところ、知り合いはいなかった。
ひょっとしたら、弟の桐夜も巻き込まれているのでは、と心配していたので、
いないのを確認して、内心ほっとしていた。

(こんなもんに巻き込まれるのは、俺一人で充分だ)

そして、明澄は地図を眺めながら自分の現在地を確認する。

(墓がたくさんあるってことは、俺の現在地はA−7か……。
 ここから近いのは首輪交換所か塔だけど……)

さてどちらにいくべきか、と考えていた明澄の後頭部にゴリッと硬い感触のものが
押し付けられた。

「……動かないで……」

突然の事態に硬直する明澄に対して、いつの間にか背後に忍び寄っていた何者かは
静かな声で警告した。






毒の沼が泡立つ物騒な場所……その傍の荒地に、三人の女性が腰を下ろしていた。

「……では、お互いに害意が無いことが分かったところで、
 支給品の確認をしましょうか」

そう言ったのは、三人の中で一番年長の女性……魔女のような帽子と服装を
身に纏った女性だった。

彼女の名は、イリア・アルベニス。
格好に違わぬ、強力な魔法の数々を操る魔法使いだ。

「はいです!イリアや美奈に何が支給されたのか、なぞは楽しみです!」

そう言って、目を輝かせているのはなぞちゃんと名乗った少女。
どことなく忍者を思わせる、露出の高い格好のその少女は、
天真爛漫で素直な性格の少女だった。
今でも、殺し合いの最中だということを理解してないかのごとく、
同行者である二人には何が支給されたのか、興味津々といった様子である。

「……ちょっとくらい緊張感ってものを持ってよね。
 今がどれだけ危険な状況か分かってるの?」

なぞちゃんの状況にそぐわぬ明るい様子に釘を刺すように言葉を向けたのは、
先ほど、なぞちゃんに美奈と呼ばれた少女。

彼女は、加賀 美奈(かが みな)。
清潔な白いインナーに若葉色の柔らかい上着とスカートを着た、
前述の二人に比べると至って普通の格好をした少女だった。

もっとも、格好については三人が三人とも、お互いの服装に
奇異の視線を向けていたのだが……。

「まぁまぁ、いいじゃないですか。
 それよりも、こんなに早いうちから殺し合いに
 乗っていない私たちが集まることができたのです。
 今はこの幸運を喜びましょう」

イリアはデイパックから自分の支給品を取り出しながら、笑う。

「……こんなことに巻き込まれてる時点で、
 幸運も何もないと思うんだけど……」

美奈は溜息を吐きつつも、イリアと同じように支給品を取り出し始める。
ちなみに、なぞちゃんは既に支給品を出し終えて、二人が支給品を取り出すのを
目を輝かせて眺めていた。






(……三人、か……厄介だな。殺し合い開始から
 まだほとんど時間も経っていないというのに……)

支給品を見せ合う三人の姿を岩影から監視するのは、黒いターバンを頭に巻き、
黒いローブを身に纏った女性。
黒ずくめの外見の中で、ターバンから僅かに覗く赤い髪が無機質な印象を
与える黒ずくめの容姿に、女性らしい華やかさを持たせていた。

黒ずくめの女性……エヌは、支給されたライフル銃を油断なく構えながら、
前方の三人の様子を伺う。

(……今なら不意を突ける。三人とも一気に殺してしまうか?)

エヌは一瞬そう考えるが、すぐに頭を振るう。

(……いや、相手は全員が女性だ。危険が大きすぎる。
 少なくとも、物腰からして帽子の女は相当の実力者だ。
 もうしばらくは様子を伺うべきだな)

焦ることはない、と自分に言い聞かせ、エヌは相手に見つからないように
気配を殺し続ける。





[25]投稿者:『呪いと恐怖と血と金に狂え  その2』  289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/02/11(Fri) 23:54 No.654  

「……これで、全部ですか?」

イリアが二人に確認すると、二人は頷いた。

三人の前に並べられた支給品は、刀にナイフ、宝石に三つのカプセル。
他は全て、共通の支給品と食料、飲料のみだった。

「……信じ難いことですが、このカプセルを飲み込むと才能さえあれば、
 魔法が使えるようになるそうですよ。もっとも、本当かは分かりませんが……」

カプセルの説明書を読んでいたイリアは、疑わしそうに呟く。
努力して魔法を習得したイリアにとっては、こんなカプセルを飲み込んだだけで
魔法が使えるようになるとは信じられなかったのだ。

だが、それをあっさり信じた者がこの場にいた。

「魔法が使えるですか!?なぞ、魔法使いたいですっ!
 美奈、このカプセル、なぞに一つくださいですっ!」

そう言って、なぞちゃんは美奈の支給品であるカプセルを一つ手に取り、
そのまま飲み込んでしまった。

「あっ!?ちょっとっ!?もし毒だったらどうするのよっ!?」

慌てて、なぞちゃんの口を開かせてカプセルを吐き出させようとする美奈だが、
なぞちゃんは「むー、むー!」と抵抗する。

それを眺めながら、イリアはくすくすと笑う。

「大丈夫ですよ、美奈さん。殺し合いの主催者も、こんなつまらない嘘を
 ついて、命を落とすような事態は望まないはずです」
「で……でも、万が一ってことも……」
「もーっ!美奈は心配しすぎですっ!なぞを見るですっ!
 何とも無いですよっ!?」

胸を張るなぞちゃんは、確かにどこもおかしなところはなかった。
少なくとも、カプセルは毒ではないらしい。

美奈はほっとするが、何だか心配した自分が馬鹿みたいに思えて
憮然とした顔になる。

それを見て、さらにくすくすと笑うイリアを美奈は恨めしそうに睨む。
美奈は自分のデイパックに支給品を仕舞いつつ、イリアに尋ねる。

「……で、宝石のほうはどんな効果があるのよ?」
「えーとですね……」

説明書を読んでいたイリアの言葉を遮って、なぞちゃんのはしゃぐ声が響く。

「イリア!美奈!この宝石、すごいです!
 身に着けたら、すごい速さで動けるようになったです!」

はしゃぐなぞちゃんの声に二人が振り返ると、そこには鞘から抜いた刀を
凄まじい速度で振り回すなぞちゃんの姿があった。

「ちょ……ちょっと、危ないってばっ!?当たったらどうするのよ!?
 ていうか、アンタ、さっきから無用心すぎでしょっ!?」

怒る美奈を無視して、なぞちゃんはぶんぶんと楽しそうに刀を振り回している。
そんな二人を尻目に、イリアはなぞちゃんが身に着けている宝石の説明書を読んでいた。

(……魔性石……身に着けただけで、腕利きの戦士や魔術師と同等の能力を
 得ることができる……って、コレ、物凄い大当たりじゃないですか!?)

おそらく、今なぞちゃんが装備しているのは戦士系の魔性石だろう。
女性が振り回すにはいささか重量があるだろう刀を鞘つきにも関わらず、
あれだけの速度で振り回しているのだ。
魔性石の強力な効果に、イリアは舌を巻く思いだった。

「……ほら、危ないからもう刀は鞘に仕舞っときなさいよ」

美奈の言葉に、イリアはふと我に返り、顔を上げる。
見ると、なぞちゃんはまだ抜き身の刀を下げたまま、顔を俯かせている。

(……?)

その様子に、イリアは不審を覚える。

美奈に怒られたことで落ち込んでいるにしては、様子がおかしい。
今まで騒がしいほどにはしゃいでいたなぞちゃんが、いきなり水を打ったかのように
静かになってしまったのだ。

「……この刀……すごいです……」
「……え?」

なぞちゃんの呟きが聞き取れず、美奈は聞き返す。
美奈の言葉に、なぞちゃんは顔を上げた。

なぞちゃんは笑っていた。
だが、その顔は今までの天真爛漫な愛嬌のある笑顔と違って、
虚ろな瞳に狂気を宿した引き攣った笑顔だった。

美奈はそれを見て、悲鳴を上げる。

「ひっ!?ど……どうしたのよっ……!?」
「……この刀……すごく綺麗です……。
 なぞ……この刀がもっと綺麗になるところが見たいです……」

なぞちゃんの呟きを聞いて、イリアはようやくあることに思い当たり、はっとなる。

(まさか……あれは呪いの刀……!?)

イリアの推測を裏付けるかのように、なぞちゃんは刀を上段に掲げる。

「この刀を血で染め上げたら……もっと、綺麗になるですっ!!」

なぞちゃんはそう叫ぶと、なぞちゃんの変貌に驚いて棒立ちになっていた美奈に向かって
刀を振り下ろした。






「……ん?今、人の声が聞こえなかったか?」
「……聞こえた……あっちのほう……」
「んじゃ、そっちに行ってみようぜ」

明澄の言葉に、明澄の同行者……速水 レンカ(はやみ れんか)は頷く。




……数十分前、明澄の背後に忍び寄った人物はレンカだった。


レンカは、硬直した明澄に対して、拳銃を突きつけながら質問した。

「貴方は……殺し合いに乗ってるの?」
「……誰がこんなふざけたゲームなんかに乗るかよっ!
 俺はこんな殺し合いなんて、絶対に許さねぇっ!
 そして、あの女の子を殺したゴッド・リョーナの野郎を
 必ずぶっ飛ばしてやるっ!」

その言葉を聞いたレンカは銃を下ろして、明澄に謝罪をした。
そして、自分も殺し合いに乗っていないことを明澄に告げ、
明澄とともに行動することにしたのだ。




声が聞こえたほうへと向かっていた明澄とレンカだが、
レンカはぴくりと眉を動かし、そのまま立ち止まった。

「?……どうしたんだよ、レンカ?」
「……血……」
「……何だって?」
「……血の匂いがする……」
「っ!」

それを聞いた明澄は、駆け出そうとする。
だが、それをレンカが明澄の襟首を引っ掴んで止めた。

「ぐげっ!?」
「……あ……」

首を絞められて、潰れたカエルのような悲鳴を上げた明澄に、
レンカは申し訳無さそうな目を向けた。
明澄は当然の如く、レンカに対して怒りの声を上げる。

「何すんだよ、レンカっ!?」
「……ごめん……」
「こんなときに悪戯なんかしてんじゃねぇよっ!
 血の匂いがするってことは、怪我した人がいるってことだろっ!?
 急がないとっ……!」
「……あっ……!」

それを見て、レンカは慌てて、再び駆け出そうとする明澄に当身を喰らわした。

「がっ……!」

当身を喰らった明澄は低く呻いて、そのまま気絶してしまった。

「……あ」

それを見て、レンカは「しまった」という顔になる。

レンカは、明澄一人を先行させては危険だと思い、明澄を止めようとしただけなのだが、
口下手な性格が災いして、このような結果となってしまったのだ。

(……どうしよう……)

血の匂いのほうを放っておくわけにもいかないが、明澄をこのままにしておくのも危険だ。

(……うぅ〜……)

良い案が思いつかなかったレンカは仕方無く、気絶した明澄を背負って
現場へと向かうことにしたのだった。





[26]投稿者:『呪いと恐怖と血と金に狂え  その3』  289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/02/11(Fri) 23:55 No.655  

「あははははっ!!すごいですっ!!すごく綺麗ですっ!!
 美奈の血で赤く染まった刀がすごく綺麗ですぅぅぅぅっ!!」
「……うっ……ああぁぁぁ……」

天に向かって高らかに笑い声を上げるなぞちゃん。
そして、その傍で血を流して倒れている美奈。

突然の惨劇にイリアは混乱しつつも、素早く美奈をなぞちゃんから引き離し、
魔法で美奈の傷を治療し始める。

「……痛いぃっ……!痛いよぉっ……パパァ……!」
「大丈夫です、美奈さん……!すぐに傷を治しますから……!」

痛みに泣きじゃくる美奈を励ましながら、イリアは美奈の傷の治療を続ける。
だが、イリアは違和感に気が付く。

傷の治りが異常に遅いのだ。
美奈の傷は重傷ではあるが、イリアの魔力ならこのくらいの傷はすぐに塞がるはずだった。

だが、血こそ止まったものの、美奈の傷は未だじくじくと痛々しい痕を残している。

(……これは一体……?)

しかし、イリアにはそれについて考える時間は与えられなかった。

「もっと、この刀を綺麗にするですぅぅぅぅっ!!」

刀を構えたなぞちゃんが狂気の笑いを浮かべて迫ってきたからだ。
イリアは一瞬迷ったが、仕方無く美奈の前に立つと魔力を集中させる。

殺すつもりは無い。
なぞちゃんは、刀の呪いに囚われているだけなのだから。

殺さない程度に威力を弱めた電撃魔法によって、なぞちゃんを痺れさせ、
その隙に刀を取り上げれば良い。

イリアはそう考え、なぞちゃんに向かって威力を弱めたスパークを放つ。
なぞちゃんはそれに対して、構わず突っ込んでいく。

そして、なぞちゃんに電撃が直撃する。



 
……ことはなく、電撃はなぞちゃんの体をすり抜けていった。




「なっ!?」

イリアはその光景に驚愕する。

だが、なぞちゃんの体が実体を失ったかのように透けているのを見て、理解する。

(……これは……魔法っ……!!)

おそらく、先ほどなぞちゃんが飲んだマジックカプセルが原因だろう。

魔性石によって身体能力を強化したなぞちゃんは、よりにもよって
あらゆる攻撃を無効化する魔法……ミラージュを習得してしまったのだ。

本来なら、それはイリアにとって頼もしい仲間の誕生を意味したはずだった。

しかし、刀の呪いによって暴走した今のなぞちゃんは、イリアにとって
最悪の相性の敵だった。

ミアやレアほど身のこなしに長けていないイリアにとって、自分の魔法を無効化しつつ、
攻撃を仕掛けてくる腕利きの戦士など、悪夢以外の何者でもなかった。


なぞちゃんが振り下ろした刀は、イリアの華奢な身体を深々と切り裂いた。






「……あ……ぐぅっ……あぁぁぁぁぁっ!!」

イリアは肩口から腰までを切り裂かれて、激痛のあまり絶叫した。
その光景に、イリアの魔法によってある程度回復した美奈は蒼白になる。

「イリアさんっ!!?」
「……美奈、さんっ……!逃げてっ……くださいっ……!
 私が……時間を、稼ぎますからっ……!」
「えっ……!?で……でも……!?」
「……早くしなさいっ!!」
「ひっ!?は……はいっ!」

イリアの怒声に、美奈は怯えた声を上げ、そのまま走って逃げていった。

「あーっ!!美奈、逃げちゃダメですっ!!
 もっと、なぞと遊ぶですっ!!」
「……待ち、なさい……!美奈さんと遊ぶ……前にっ……!
 私のっ、相手を……してもらいますっ……!」
「イリアが遊んでくれるですかっ!?
 えへへ、ありがとうですっ!!なぞ、嬉しいですっ!!」

なぞちゃんは笑顔でお礼を言いつつ、イリアの右腕を切り飛ばした。

「!?……あああぁぁぁぁぁっ!!!」
「あは、良い声です♪この刀もイリアの血をたくさん浴びて嬉しそうです♪」

凄まじい激痛、そして血を失いすぎたことによって、イリアの意識は朦朧としていた。

(……くっ……駄目っ……!もっと時間を稼がないとっ……!
 美奈さんが、なぞちゃんの手の届かないところまで逃げるまで……!)

「えい♪」

自分を叱咤するイリアを無視するかのごとく、なぞちゃんは残った左腕も斬り飛ばす。

「ぎぃっ!?……あぎぃぃぁぁぁあああぁぁぁぁぁっ!!?」
「あははははっ!!刀もイリアも、なぞも真っ赤ですっ!!
 すごく綺麗ですぅぅぅぅぅっ!!」

なぞちゃんは笑いながら、イリアの身体を切り刻んでいく。

耳を、肩を、両足を、鼻を、身体のあらゆる部位を切り取られながら、
イリアは激痛に泣き叫ぶ。

「いぎぃぃぃぃぃ!!あぎああぁぁぁぁあああぁぁぁっ!!いぃぃうぅぅぁあぁぁぁぁっ!!」

四肢を失い、身体のあらゆる場所から血を流し、朱に染まったダルマと化したイリアは
芋虫のように無様に這い蹲ってなぞちゃんから逃れようとしている。

だが、そんなイリアを血塗れの笑顔で見つめながら、なぞちゃんはイリアの心臓に刀を突き立てた。

ずぶぅっ……!!

「……っ、がひゅっ……!!」

ごぼごぼ、と口から血の泡を吹きながら、イリアはようやく激痛から解放され、絶命した。






(……随分と残酷なことだな。あの少女、最初からこのつもりで
 集団に紛れ込んでいたのか?)

様子を伺っていたエヌはいきなり凶行に及んだ忍者服の少女に、驚きを隠せなかった。
だが、これはこれで都合が良いと、仲間割れに乗じて一網打尽を狙おうとした。

だが、少女の幻影魔法を見て、思い止まった。

(……もし、あの幻影魔法で私の攻撃を避けられたら、
 ヤツは標的を私に変更するかもしれない。
 ヤツが攻撃を無効化する以上、距離を詰めて来るヤツを
 止める手段は私には無い。
 そうなると、接近戦が不得手な私は苦戦を強いられる。
 最悪、やられてしまうかもしれない)

そう考えたエヌは、そのまま様子見に徹することにしたのだ。

そして、帽子の女が切りつけられ、若草色の服の少女が逃げ出したのを見て、
エヌは逃げ出した少女を追うことにした。

(帽子の女は、あの傷では放っておいても死ぬ。
 忍者服の少女は殺し合いに乗っているようだし、
 泳がせておけば、参加者を大量に始末してくれるだろう。
 私が今殺すべきなのは、逃げた少女だ)

エヌはそう考え、逃げた少女を追って行った。





[27]投稿者:『呪いと恐怖と血と金に狂え  その4』  289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/02/11(Fri) 23:56 No.656  

レンカはこちらへと向かって来る足音に、明澄を背から落とし、
拳銃を構えて、警戒する。

やがて、前方から切り裂かれた若草色の服を着た少女が現れた。
その少女の怯えた顔を確認して、恐らく殺し合いには乗っていないだろうと
レンカは警戒を緩める。

走ってきた少女はレンカを見ると、「ひっ」と悲鳴を上げる。

「あ……貴女、まさか、その男の人を……!?」
「……え……?……あ……」

少女の言葉を聞いたレンカは再び「しまった」という表情になる。
足元に男性が倒れていて、銃を持った人物がいたら、誰だって誤解するだろう。

「……い……いや……!殺さないで……!」
「えと……その……」

少女が怯えて後ずさりを始めたのを見て、レンカは誤解を解こうと口を開く。

だが、そのとき……

「……ん……んあ……?どこだ、ここ?
 ……おお、レンカじゃねぇか。お早う」
「……あ……お早う……」

気絶から目覚めた明澄はレンカに向かって挨拶し、レンカもそれに応える。

「……へ?」

それを見た美奈は呆気に取られる。

無理も無いだろう。
殺人者と死体だと思ったら、死体が起き上がってフレンドリーに
殺人者に挨拶をしたのだから。

「……って、そうだっ!レンカ、血の匂いはどうなったっ!?
 怪我人はいたのかっ!?ていうか、何で俺は気絶してたんだっ!?」

死体……もとい、明澄の言葉を聞いて、美奈は我に返る。

「そ……そうだっ!ねぇ、貴方たちっ!
 殺し合いに乗ってないなら、助けてよっ!
 イリアさんが、殺されそうなのよっ!」
「……っ!?」
「なっ……何だってっ!?」

美奈の言葉にレンカは表情を険しくし、明澄は驚愕した。






美奈を追っていたエヌは、美奈が他の参加者と合流したのを見て、
再び身を隠した。

(……ちっ……どうやら、ヤツらも殺し合いには乗っていないらしいな……)

エヌはなかなか思い通りに進まない事態に、舌打ちをする。

だが、まぁいい。
とりあえず、強敵と思われる帽子の女は死んだはずだ。
今はそれだけでも良しとしておこう。

エヌはそう考え、納得することにした。
そして、先ほどの現場へと走っていく三人を追いかけつつ、思う。

(私は、この殺し合いで優勝する……そして、大金を手に入れる……)

エヌの目的は優勝、そして優勝した願いによって大金を手に入れることだった。
そして、手に入れた金をいつも通り、ある人物へと渡す。

デイパックに入っていた大金、そしてゴッド・リョーナのものと思われるメモ書き。

『これは前金だ。優勝した暁には、さらに大量の金を用意しよう』

エヌはそれを見て、決意を固めた。
この殺し合いで優勝し、大金を手に入れることを。

(……傭兵のときと同じだ。人を殺して、金を手に入れる。
 大金を得られるなら、人の命を奪うことに躊躇など無い)

そう、大金を手に入れられるなら、同僚であるエイミィやオーグを殺すことも、
何とも思わない。


全ては、金のため。


大金を手に入れるためなら、エヌはいつでも鬼となるのだ。






【イリア・アルベニス@マジックロッド 死亡】
【残り60名】


【B−7/荒地/1日目 7:00〜】

【なぞちゃん@アストラガロマンシー】
[状態]:血塗れ、妖刀の呪い、身体能力・戦闘技術大幅上昇、
    魔力消費(小)、魔法ミラージュ習得
[装備]:呪われた妖刀@ニエみこ、
    魔性石(剣士)@魔性石
[道具]:なぞちゃんのデイパック
   (支給品一式、白米(500g)、日本酒(一升瓶) )
    イリアのデイパック
   (支給品一式、惨禍の魔女のナイフ@Rクエスト、
    乾パン(一食分)@現実、缶コーヒー×2@現実)
[基本]:妖刀を血で染める。
[思考・状況]
1.斬れる人を探す。



【イリア・アルベニス@マジックロッド】
[状態]:死亡、四肢・両耳・鼻切断、血まみれ
[装備]:無し(首輪あり)
[道具]:無し



【加賀 美奈@こどく】
[状態]:右肩口から腹部にかけて切り傷の痕、
    服が切り裂かれている
[装備]:無し
[道具]:美奈のデイパック
   (支給品一式、
    マジックカプセル×2(種類不明)@Rクエスト、
    干し肉×3、水入り皮袋(600ml/1000ml)
[基本]:死にたくない。
[思考・状況]
1.明澄とレンカに助けを求める。



【御朱 明澄@La fine di abisso】
[状態]:健康
[装備]:バールのようなもの@えびげん
[道具]:明澄のデイパック
   (支給品一式、エリクシル@SilentDesire、
    こけもも×5@えびげん)
[基本]:殺し合いには乗らない。主催者をぶっ飛ばす。
[思考・状況]
1.美奈の話を聞く。



【速水 レンカ@まじ☆はーど外伝 怪物傭兵物語】
[状態]:健康
[装備]:奈々の拳銃(8/8)@BlankBlood
    拳銃の弾(24)@現実
    パイナップル(手榴弾)×3@えびげん
[道具]:レンカのデイパック
   (支給品一式、カップ麺×5、
    やかん(空)、ロープ@ニエみこ)
[基本]:殺し合いには乗らない。困っている人は助ける。
[思考・状況]
1.美奈の話を聞く。



【エヌ@BASSARI】
[状態]:健康
[装備]:"セリス"(単発弾7/7)@まじ☆はーど外伝怪物傭兵物語、
    "セリス"用単発弾×20@まじ☆はーど外伝怪物傭兵物語、
    "セリス"用散弾×20@まじ☆はーど外伝怪物傭兵物語
[道具]:エヌのデイパック
   (支給品一式、コッペパン×5、水入りペットボトル(1000ml)、
    大金@BASSARI)
[基本]:優勝して、大金を手に入れる。
[思考・状況]
1.隙を見て、美奈、明澄、レンカを殺す。
2.なぞちゃんとはなるべく戦わない。






[28]投稿者:289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/02/12(Sat) 00:06 No.657  
ようやく一人殺したぜ(`・ω・´)

これで殺し合いが激化することを期待しつつ、
新しいネタを考えますん。
[29]投稿者:『がる子、受難 その1』 麺◆dLYA3EmE 投稿日:2011/02/12(Sat) 23:52 No.658  
よお、俺だ、強姦男だ。”ゴウカン オトコ”じゃねえぞ。”ゴウ カンオ”だ。
何、”ゴウ カンオ”って打ったら”強姦の”になったって? そんな時には辞書登録しろよ。
殺し合いがどうとか言ってたが、はっきり言ってガラじゃねえ。
「殺る前に犯る、犯らんなら殺らん。」これが俺のポリシーだ。
いい女が揃ってたからな、好きなように犯らせてもらうぜ!

とか言ってる間に獲物発見。相手はこっちに気づいてねえ。
見た目は中々上玉だ。薄幸そうな表情がそそられる。
歳は14か15ってとこか。まあ俺が何と言おうが登場人物は20歳以上だがな。
頭に着けた、デカいリボンが目につく。いつも思うんだが、ああいうのは邪魔じゃないんだろうか。
服は緑のセーラー服、だか何だか分からん妙な服。俺の地元じゃ見ない感じだな。
胸はあんまり無さそうだ。だが希少価値というほどでもない。普通だ。
下半身は、タイツの上に超ミニスカだろうか。マニア受けしそうな格好だ。

と、俺とした事が見入ってしまった。このままじゃ向こうからも丸見えだ。
素早く岩陰に隠れる俺。と言っても大きさ的に、体全部は隠せない。
そもそもここは道の真ん中だ。隠れる場所なんてほとんど無い。
だが、奴はしばらく気付かんだろう。さっきからデイパックの中身を探ってるからな。
道の真ん中でやるなんて無防備もいいとこだが、そんな所がまた萌える。

もう少し観察しようかと思ったが、あまり時間をかけると他の奴が来るかもしれねえ。
さあ、そろそろ仕掛けるか。ポケットの中に手を突っ込み、その中身を確認する。
入っているのは拳銃だ。安全装置も解除したぜ。
これさえあれば、この前みたいに返り討ちに会う事はない。
なんたってヤバいと思ったら引き金を引くだけなんだからな。
ん、この前っていつの事だ?・・・まあいいか。
俺は拳銃に手をかけたまま、隠れていた岩陰を飛び出した。



「やあ、お嬢ちゃん。」

優しい声と笑顔で声をかける。
何、襲い掛からないのか、だと!?
んな事したら走って逃げちまうだろ。

「え・・・きゃあっ!」

奴が俺の姿を見て、小さく悲鳴を上げる。
殺し合いなんて言われた上に、突然目の前に男が現れたんだ。驚くのも無理はない。
だが、これ以上悲鳴を上げられたら誰かに気付かれるかもしれん。
上手く警戒を解く必要がある。プロの腕の見せ所だ。

「ああ、驚かせてごめんね。僕は怪しいものじゃないよ。」

一旦立ち止まって、さらに優しく言葉をかける。
さっきの路上でデイパックを漁る行為を見る限り、奴はあんまり頭が良くない。
善良な市民を装っていれば、不審を抱かれることは無いはずだ。

「(人を見た目で判断しちゃだめだよね・・・)お、驚いちゃってごめんなさい。」

ほら、言った通りだろ。何か心の声が聞こえた気もするが気のせいだ。
白いマスクと黒い帽子。この格好のどこが悪い?
それはともかく、今の一言で警戒が緩和されたと判断した俺は、奴との距離を縮める。
もちろん拳銃を使って脅せば、もっと簡単に近付けるが、
拳銃を突き付けられた瞬間の怯えた顔は、出来るだけ近くで見たいからな。
普段は銃刀法のせいでそんな事できないから、尚更だ。

「いやいや、そんな事より君も、殺し合いに巻き込まれたんだよね。」

あえて殺し合いと言って、揺さぶってみる。
すると案の定、奴はその言葉に反応を見せた。

「う・・・うん・・・」

そう言って奴は目を伏せる。それにしても悲しい表情が似合うな。物凄くそそられる。
なんて事を考えながらも、俺はその隙を逃さず、腕一本の距離まで接近した。そして・・・

カチャッ

「じゃあ、これがどういう意味か、分かるな?」

そう言って奴の額に、右ポケットから取り出した拳銃を突き付けた。



「・・・あ、あの、何ですか、これ・・・?」


何・・・だと・・・
まさかこのご時世に拳銃を知らない無垢な少女が存在するとは・・・
これはもしかすると天然記念物級なんじゃないか?
だが残念なのは、怯えた表情をしてくれなかった事だ。

「ははは、知らなかったか。それじゃお嬢ちゃん、手を出してくれるかな。」

無垢な少女を汚すのは俺の得意分野だ。色んな意味で。
俺は奴の身体に銃の恐ろしさを教えてやる事にした。
何の疑いもなく差し出された、柔らかくて小さな手のひらに、冷たい銃口を突き付ける。
奴はこれから起こる事を想像すらしてないらしく、飴玉をもらう子供のような期待の眼差しで、拳銃を見つめている。

そして俺は、引き金を、引いた。



ズドン

弾丸が奴の手のひらに風穴を開ける。
その事実に奴が気付くまで、1秒とかからなかった。

「あああああああああああ!!!!!」

穴の開いた右手を押さえてのたうちまわる。さっきまでとのギャップが素晴らしい。
すぐに脅して犯るのも良いが、折角だからもう少し見ておこう。
手に穴が開いて泣き叫ぶ女なんて、そう見れるもんじゃないからな。

「うぐ・・・くぅっ・・・」

すると奴は、反抗的な目で俺を睨み付けてきた。こんな表情もできるのか。
というか意外と立ち直りが早かったな。少し残念だ。
だがどれだけ反抗しようとしても、こっちは拳銃を持っている。はっきり言って無駄な足掻きだ。
とはいえ、そういうのも某所ではお楽しみ要素の一つらしいからな。
ここは黙って、何をするのか観察することにする。

「(焦っちゃだめだ・・・ゆっくり落ち着いて・・・)」

何やら精神を集中させて、印を結んでいるようだ。お祓いだろうか。
まあ幽霊でも何でもない俺には効かんだろうがな。
というか実はこいつ、巫女か何かか?
それならあの奇妙な服も納得できる。しかも重要な萌え要素でもある。
・・・と、そんな事を考えていると、奴の術が完成したようだ。
[30]投稿者:『がる子、受難 その2』 麺◆dLYA3EmE 投稿日:2011/02/12(Sat) 23:53 No.659  
あ・・・ありのまま、今、起こった事を話すぜ!
『俺は奴がお祓いでもしたのかと思ったら、いつのまにか足元から草花が生えてきた。』
な・・・何を言ってるのか、わからねーと思うが、
俺も何をされたのかわからなかった・・・
頭がどうにかなりそうだった・・・
絡み付くとか毒を吐くとか、そんなもんじゃあ、断じてねえ。
もっと・・・何というか・・・


「お前、何がしたいんだ?」

俺はつい、思った事を口に出してしまった。
確かに、足元の草花は奴の術で生えてきたんだろう。
そのトリックは分からんが、状況から考えて間違いない。
だがその草花は、俺の動きを妨げるわけでもなく、ただそこに生えているだけ。
残念ながら状況は何一つ変わってない。

「うう・・・こんなときに余計な呪術を紡ぐなんて・・・なにやってるんだろ、私・・・」

どうやら奴もそれに気付いたらしく、後悔の表情が読み取れる。
ドジ巫女萌え。じゃなくて、現実は非情だ。
俺は改めて銃口を奴に向けた。

「い、いやああぁあああ!!!!!!」

さすがにさっきのは相当堪えているらしい。銃を向けただけでこの反応だ。
だが、まだ奴は銃の本当の恐ろしさを知らない。

ダダッ

いきなり俺に背を向けて走り出す。
そう、さっきはあえて、銃口を身体に当てた状態で発砲した。
おそらく奴は、スタンガンみたいな近接武器だと思ったはずだ。
だから距離を離せば大丈夫・・・そう思わせるのが俺の狙いだ。
逃げる女を背後から撃ち抜くなんて、そう経験できることじゃないからな。

ズドン

右太ももから血を噴き出して、奴はその場に倒れこんだ。
こっちに背を向けてうつぶせに倒れたもんだから、スカートの中が丸見えだ。
タイツ越しに見えるケツのラインがエロい。

「へっへっへっ、逃がしゃしねえよ。」
「うあああ・・・こないでぇ・・・」

懇願するような目で俺を見る。が、当然俺はそれを無視する。
この状況で見逃すなんて選択肢は、絶対にありえない。
そもそも来ないでと言われたら余計行きたくなる。それが人間ってもんだ。

「さあて、何からいこうかな・・・」

俺は既に、奴をどうやって責めるかしか考えていなかった。
セオリー通りにいくならまず上着を破る。あるいは脅して自ら脱いでもらってもいい。
しかし奴の胸は普通サイズ。残念ながら俺には珍しい物じゃない。
それよりむしろ、さっきから気になってるのは・・・下の方だ。
身体に密着したタイツ。マニアックなプレイを試したくなってくる。

「ひゃうぅっ!?」

挨拶代わりに股間に蹴りを入れる。なかなか良い鳴き声だ。
今まで以上の恐怖を感じた表情も、大事な部分を守ろうと閉じられる脚も、
一般人なら不憫に思うかもしれないが、俺に対しては興奮させる要素。

「動くなよ。もし動いたら・・・お前のここを吹っ飛ばすからなぁ。」
「ひいいいいいいいいいい!!!!!」

拳銃を股間に押し付けて、グリグリと弄ってやる。
銃に対する恐怖と、股間を責められる恐怖を、セットで味わわせる。
こういう時の女の悲鳴は、どれだけ聞いても飽きることは無い。
もっと聞いていたい。
だが、その一方で下半身が疼き始める。

「じゃあ入れてやるか・・・と、タイツが邪魔だな。」
「え、や、やめてええ!!」

俺は、奴のタイツに手をかけた。
そして、穴の部分を正確に探り当て、破る。

ビリッ

「うああああああ・・・!!」

タイツに空いた、小さな穴。その先にある、もっと小さな穴。
全体的に露出が少ない恰好だけに、その部分の穴は必然的に目立つ。
しかも、大事な所を守るはずの毛も、髪の毛と同じ赤茶色のが申し訳程度に生えてるだけ。
丸見えの割れ目が、俺を誘ってやがる。

もう我慢できねえ!

ズブリ

おれは素早くパンツを脱ぎ、パンパンに膨れ上がった肉棒を、一気にその中へと押し込んだ。
何かを突き破るような感触とともに、俺の息子が根元まで飲み込まれる。

「あぐぅぃぃいいぃぃ!!」

一瞬遅れて、奴の大きな悲鳴が響き渡る。
前戯もなしにいきなり突っ込んだんだ。そりゃあ痛いに決まってる。
しかも、あれが処女膜を破る感触だったとすれば・・・想像するだけで涎が出る。

「ぐ・・・うあ・・・ぎぃ・・・」

どうやら、あまりのショックで放心状態になったようだ。いきなり全部は急ぎ過ぎたか。
だが、こういう事はよくある事。
そんな時に使う魔法の言葉も、俺は知っている。

「中に出すぞ。」

耳元で一言。
たったこれだけの言葉だが、女にとっては一番キツい言葉だ。
自分の体内に、見知らぬ男の精子が放出される。
その精子が、女として最も大事な部分を汚していく。
そして最悪の場合、その男の子供を妊娠する。
これは知識とか信念とかじゃなく、本能の問題だ。
だから大抵の女は、この言葉一つで顔色が変わる。
どうやら奴も例外ではなかったらしい。

「まってまってぇ!!やめてええええ!!それだけはあ!!!!」

今まで銃に怯えて固まってた奴が、突然俺を振りほどこうと暴れ始める。
そうか、銃で撃たれるよりも嫌なのか、中に出されるのが。

「中に出すぞ!」
「ゆるしてえええ!おねがいぃ!!!ああああああ!!!」

そうと分かれば話は早い。繰り返して反応を楽しませてもらう。
もちろん、許してやる気なんて微塵もないがな。

「中に!中に出すぞ!中にィィィィィ!!!!」
「いやぁあぁぁぁぁああああぁぁああああああぁあぁあぁあああぁあぁぁ!!!!!」

とはいえ俺も我慢の限界だ。
全身の筋肉を使い、力任せに先端を突き入れた。

ドクン!ドクン!ドクン!

俺は、勢い良く熱いものをぶちまけた。



だが・・・それが奴の中だったのか、それは分からない。



そうだよな・・・初めから分かってたことだ。
60人も参加してるんだ。
あんだけ大きな悲鳴を上げられれば、誰かに聞かれるのは当たり前。
俺としたことが・・・やっちまったな。

側方から受けた衝撃で、俺は遥か遠くまで吹き飛ばされ、
地面に頭を打ち付けて、そのまま気を失った。
[31]投稿者:『がる子、受難 その3』 麺◆dLYA3EmE 投稿日:2011/02/12(Sat) 23:54 No.660  
「え・・・何・・・?」

ガルーダは、まだ状況を飲み込めないでいた。
つい先程まで、知らない男に知らない武器で脅されて・・・それ以降は思い出したくない。
だが今は、その男の姿は見当たらず、代わりに現れたのは青い髪の女性。
そしてその手には・・・鉄でできた靴が握られていた。

一体何が起こったのかは分からないままだが、
この女性があの男から助けてくれたんだろう、とは思う。

「(だったらお礼を言わなきゃ・・・)あ、あの、ありがとうございました。」
「ん、まあ、気にすんな。この武器を試してみたかったってのもあるからな。」

勇気を出して女性に声をかけると、簡単な返事が返ってきた。
たったこれだけの事だが、ガルーダはとても安心できた。
だが、同時に一つの疑問が浮かんできた。

「武器って・・・それですか?」
「ん?どっからどう見たって武器だろ?」

どっからどう見たって靴だ。と、ガルーダは思う。

「(でも、見た目で判断しちゃだめだよね・・・)そ、そうですね。」

ついさっき、見た目で判断しなかったために酷い目にあった、というのは考えないことにした。

「というか、その傷大丈夫なのか?」
「え・・・痛っ!!」

ガルーダは女性に指摘されて、初めて自分の右手と右足と股間から、血が流れていることに気づいた。
するとどういうわけか、さっきまでは感じなかった痛みが襲ってくる。

「おいおい・・・とりあえず応急処置ができる物を・・・」

そういって女性は自分のデイパックの中身を探り始める。
だが、それをガルーダが制止した。

「大丈夫です・・・私、呪術師ですから!」
「え・・・?」

きょとんとした顔をする女性を尻目に、ガルーダは精神を集中させる。
活性印、再生印、殺痛印・・・慣れた動作で印を結び、その力を掌に込める。

「な、何ぃ!!!」

女性が驚くのも無理はない。
ガルーダの手が眩しく光り始め、その手で拭った傷口が、ゆっくりと再生を始めたのだ。



「ほら、もう何ともないですよ。」

しばらくして、ガルーダが右手を見せびらかす。
さっきまで血を流していたのが嘘のように、どこにも傷は見当たらない。

「・・・テメー、一体何者だ?」
「だから、呪術師ですよ。ラフローグ式呪術の。・・・もしかして知りませんか?」
「知らん。」

あまり即答されるとショックが大きい。
だが、今の呪術界の状況を考えると仕方ないかとも思う。

「(そういえば、師範もラフローグの呪術を皆に広めろって言ってたよね。)」

ガルーダは、呪術のこと、ラフローグのこと、自分のことなど、掻い摘んで説明することにした。



「・・・へえ、生命や自然を育む呪術か。」

女性の常識からすれば、呪術という言葉はともかく、回復術自体はそれほど珍しい物ではない。
だが、多少の時間がかかったとはいえ、あれだけの傷を完全治療できる術師は少ない。
彼女自身も、一応学んではいるものの、とても実用レベルではなかった。
それだけに、何の力も持たないと思われた目の前の少女が、そんな秘術を身に付けていることには驚かされた。
だが、だとすれば妙な点が一つあった。

「なんであんな男にやられたんだ?」
「そ、それは・・・」

ガルーダは実力はともかく、名目上は伝承者なんていう最高位の術師。
このような疑問を持たれるのは当然のことだ。
それに対してまず思い当たるのは見たこともない武器。
近くからでも遠くからでも攻撃できて、しかもものっすごく痛い。
だが、それでも男に隙が無いわけではなかった。
敗北を決定づけたのは、あの時・・・

「紡ぐ呪術を間違えちゃって・・・」
「間違えたあ!?」
「は・・・はい・・・」

あの武器で掌に穴を開けられた時、彼女はある呪術を紡いだ。
日天緑撥陣。足元に植物を発生させる呪術だ。
熟練した術師なら森をも創造できる、ラフローグ式呪術の初歩にして奥の深い呪術だが、
ガルーダの力ではせいぜい道端の草花程度。
そんなものであの男を止められるとは考えていなかった。
彼女が紡ごうとしたのは土天帰化掌。微生物により物質を腐食させ、土に戻す呪術。
あの武器を腐食させて、無力化しようと考えたのだった。

「なんでそんな大事なときに間違えんだ!」
「き・・・緊張しちゃって・・・」

急に厳しい口調に変わった女性に驚きながら、ガルーダはありのままを告げる。
こういう事は、今までにもよくあった。
師範との練習の時には、10回に1回・・・いや、5回に1回ぐらいしか失敗しないのに、
いざ実践となると、何故かうまくいかない。
そのせいで、腐ったり溶かされたり・・・

「うぅっ・・・」

忘れていた死の苦しみを思い出してしまう。
彼女の体には、ラフローグ式呪術の秘奥義、輪廻転生がかけられている。
死の瞬間、実体を空に消し去り、無想の内に肉体を再生する・・・とかいう秘術だ。
だが、死の瞬間に痛みは感じるし、その記憶は復活しても残ったまま。
脳天気な性格で嫌なことをすぐに忘れることができる彼女でも、
死の苦しみだけは心の奥底にずっと残っていて、こうやって時々沸き上がってくる。

今にも嘔吐しそうになるガルーダ。
そんな彼女に、女性が声をかけた。

「・・・緊張しない方法、教えてやろうか?」

意外な言葉だった。しかし、この一言にガルーダが反応しないはずがない。

「そんな方法あるんですか!?」
「まあ、正確には緊張しても失敗しない方法だけどな。」

緊張しても失敗しない方法。魅力的な響きだ。
もしそれを身につけられれば、苦しみを味わわずに済むかもしれない。
一縷の望みを託して、ガルーダは女性の言葉に耳を傾けた。

「要は逆転の発想だ。いざという時緊張して失敗するなら、普段から緊張に慣れとけばいい。」
「えっと・・・それはどういう・・・」
「そうだな、実際にやってみせた方が早いか。手を出してみな。」

言われた通りに右手を差し出すガルーダ。

しかし彼女は忘れていた。ついさっき似たような状況で何が起こったのかを。



ボキッ

鈍い音がする。
女性は、ガルーダの右腕を両手で掴むと、力任せに折り曲げた。

「うあああああ!!いたい、いたいよぉお!!!」
「そりゃそうだ。骨を折ったんだからな。」

鋭い痛みに悲鳴をあげるガルーダ。
彼女には何が起きているのか理解できなかった。
そんな彼女に対して、女性が告げる。

「回復しろ。」
「・・・え・・・?」

相手の意図が全く理解できず、ガルーダは混乱し始めた。
しかしそんな彼女に対して、女性は手を休めない。

「そうだな、足も折っとくか。」

グキッ

「いあああああぁぁ!!!!!」

女性の蹴りが命中し、ガルーダの左足の骨が砕ける。
立っていられなくなり、その場に倒れこむ。

「さあ、さっさと回復しやがれ!」

またもや意味の分からない女性の指示。
いや、意味は分かるが目的が分からない。

「テメーがッ!」

ゴキッ

「回復するまで!」

バコッ

「殴るのを!」

ベキッ

「やめないッ!」

ドガッ

みるみるうちに、ガルーダの身体がボロボロになっていく。
腕と足に加えて肋骨も数本折れ、至る所に打撲の痕、歯も欠けている。
明らかにさっきよりも酷い状態だ。

「うあ・・あ・・・・あが・・・が・・・」
「さあっ、早く回復しねーと、死ぬぞ。」

自分で半殺しにしておいて、よくそんな事が言える。
ただ回復しないと死ぬのは事実だ。
訳が分からないまま、ガルーダはとりあえず言われた通りにすることにした。

「うぅ・・・嫌な予感・・・」

ガルーダは以前にも、このような状況に陥ったことがある。
まさに絶体絶命、紡ぐべき呪術は生命力を高める星天輝功。
しかしあの時は・・・

「(ううん、大丈夫、大丈夫よね。)」

必死に嫌な思い出を振り払って、心を落ち着かせた。

「よし・・・いくよ・・・!」



「何だ、やれば出来るじゃねーか。」

ガルーダの傷は、それなりの時間がかかったものの、しっかりと完治していた。
元気を取り戻した彼女が、女性に抗議する。

「いきなり何するんですか!!!失敗したら私死んじゃう所でしたよ!」

だがそれに対して女性は、驚くべきことを言い放つ。

「そうしないと、特訓にならないだろ?」

女性の言い分はこうだ。
生きるか死ぬかという状況になれば、人は誰だって緊張する。
そんな時重要になるのは、緊張感の中でいかに普段の実力を発揮できるか。
そのためには、普段から緊張に慣れておけば良い。
つまり、普段から生きるか死ぬかの特訓をしていれば良い。

「というわけで、特訓再開だ!」
「えええええええーーーっっっ・・・!!!!!」



ガルーダの受難は、まだ始まったばかりである。





【D−3/道/1日目 6:30〜】

【ガルーダ@よもまつ】
[状態]:健康(傷は完治したはず。でも股間は見てない。あと本人は忘れてるけどタイツの股間部分に穴)
[装備]:なし
[道具]:ガルーダのデイパック
    支給品一式、食料、飲料(詳細不明)
    ランダム支給品不明(本人は確認済み)
[基本]:自分もふくめ、敵味方誰も殺したくない。
[思考・状況]
1.一刻も早く特訓から逃げ出したい。
2.でも逃げたら本当に殺されそう。
3.ぷれーやーの神様さん助けて!


【オーグ@BASSARI】
[状態]:健康
[装備]:アイアングリーブ(武器)@Warlock!
[道具]:オーグのデイパック
    支給品一式、食料、飲料(詳細不明)
    その他
[基本]:弱者を痛めつける奴は許さない。弱者は鍛えて強くする。
[思考・状況]
1.ガルーダを鍛える。
2.とにかく鍛える。
3.実はその後の事はあまり考えてない。


【強姦男@一日巫女】
[状態]:気絶(はるか遠くまで吹き飛ばされた。でもたぶん生きてる。)
[装備]:拳銃@XENOPHOBIA(残弾数7/9)
[道具]:強姦男のデイパック
    支給品一式、食料、飲料(詳細不明)
    その他
[基本]:殺る前に犯る、犯らんなら殺らん。
[思考・状況]
1.気絶中。
2.起きたら女を探して犯る。
3.自分を吹っ飛ばした奴にリベンジとかは考えてないと思う。
[32]投稿者:麺◆dLYA3EmE 投稿日:2011/02/12(Sat) 23:58 No.661  
なんか自分のキャラ以上にオリキャラ化してる人がいる気がしないわけでもない
[33]投稿者:「優雅な朝食」 黒猫◇ZeGoU3RI 投稿日:2011/03/08(Tue) 05:04 No.665  
突然、訳の分からない場所で、訳の分からないやつに、訳の分からないことを言われたと思ったら、訳の分からないままに少女の首が飛び、訳の分からないままこの森に飛ばされた。

オーガは今、呆然と森の中に突っ立っていた。
訳の分からないことばかりである。
しかし、彼には今、それらの疑問を考える余裕もなかった。
もっと差し迫った危機に直面していたからだ。

「腹……減ったなぁ………」

そう、餓えである。
彼にとってこれ以上に深刻な危機はない、今はまだ大丈夫だがこのまま空腹が続けば正常な判断力を失い、見境なく食料を確保しようとしてしまうかもしれない。
しかも、彼の食料とは人肉だ。
皆が疑心暗鬼になっているであろうこの状況で、人を襲っているところを誰かに見られでもしたら、まずいことになるのは目に見えている。

「そういえば、この中に食料が入ってるって話だったが……」

まさか人肉が入っていることはないだろう、でも万が一………
そんな希望を抱きながらデイパックの中を探ってみると。

「なんだコレ?」

出てきたのは小瓶、中身は塩のようだ。
他にも胡椒に砂糖、酢のようにメジャーなものを始め、料理に疎いオーガは聞いたこともないような瓶詰めされたスパイスやハーブなどが次々に出てくる。

「ふざけやがって、全部調味料ばっかりじゃねぇか!」

苛立たしげにデイパックをひっくり返すと、透明な容器に入った水が五本も六本もゴロゴロと出てきた。

「水は好きなだけ飲めってか………とことん人をおちょくってやがるな」

青筋を浮かばせて裂けた口元を引きつらせていたオーガだったが、一つため息をつくと、水だけデイパックの中にしまってさっさと行動を開始しようとした。
そのとき、水と一緒に転がり出てきたものに目が留まる。

「これは、短剣とロープか……使えねぇな」

おそらくこれがあの男の言っていた支給品だろう。
しかし、短剣を振り回すぐらいなら素手で戦うほうが自分には向いてるし、ロープも何かしら使い道があるかもしれないが、あくまで補助的なものだろう。

(とにかくまずは食料の確保、殺し合いだの何だのはそのあとだ)

そう思って動き出した彼の耳が、かすかな足音を捉えた。





「はぁ〜〜……」

と、無気力なため息を吐きながら森の中を歩む少女が一人。
彼女はティム、見た目はどこからどう見てもセーラー服の似合う女子中学生だが、その正体は日夜危険なダンジョンに挑む立派な冒険者だ。

(面倒くさいことになったなぁ)

あのゴッド・リョーナとか名乗る男は、どう考えても自分の勝てるレベルの相手ではない。
やばい敵にはけむりだま、ダンジョンのお約束だ。

(とにかく仲間と合流して、戦闘はそっちに任せよう)

実をいうと、デイパックから出てきた支給品はなかなかの“当たり”だったのだが、やはり一人でうろつくのは心もとない。
参加者名簿によると、リタ、ブロンディ、ドロが何処かにいるはずだ。
リタはともかく、他の二人と合流できれば戦闘はかなり楽になるだろう。

(これ以上の面倒はごめんだし、早いとこ………)

………殺気!
弛緩した体に緊張が走り、すぐさま武器を構えて殺気の元を探る。

「おっと、さすがにこれだけ近づけばばれるか」

声はほんの数メートル先の木陰から聞こえた、それとともに今まで抑えられていた殺気が爆発的に膨らんでいく。
獣のような殺気を放ちながら現れたのは口の裂けた大男だった。

(うわー、面倒なことになった)

相手は明らかに戦る気満々だ、おそらく話は通じない。
できれば一人での戦闘は避けたかったのだが、こうなってしまった以上は仕方がない。
目の前の大男は強そうだが勝機はある、大方支給品ははずれだったのだろう相手は丸腰だった。
対して、こっちには武器も防具もある、そこそこの斧にそこそこの盾、目の前の男に比べれば大当たりだ。

不意の攻撃に備え左の盾を前面に、いつでも打ち込めるように右の斧を高く構え、じりじりと間合を詰めていく。
一方、オーガは腕をだらっと垂らしたまま、二三度首を鳴らしているだけで構えも取らない。

(子供だと思ってなめてるな……でも、今がチャンスだ!)

あと一歩、あと一歩でこちらの攻撃が届く……
瞬間、敵が動いた、一瞬体勢を低くするとすさまじい勢いで一気に間合いを詰めてきたのである。
しかし、どう考えても素手で戦うには間合いが広すぎる、こっちの攻撃の方が、速い!

「もらったー?」

振り下ろされた斧が的確に相手の肩口に突き刺さる……筈だった。
だが実際には斧は振り下ろされることすらなかった。
相手が動いた、と判断した時にはもう完全に間合いを詰められていて、こちらが動いた時にはすでに凄まじい力で右腕を掴まれていた。
あまりのことに勝利の確信とともに叫んだ雄叫びが疑問形になってしまう。

ティムの混乱をよそに敵は次のアクションを起こす、なんと首に右腕をまわして抱きついてきたのである。

「なっ!?」

実際には身長差のせいで抱きつくというよりは覆いかぶさるような形になっているが、戦士とはいえ多感な少女であるティムは異性に抱きつかれて一瞬だが完全に思考が飛んでしまう。
しかしそれも一瞬のこと、ティムの意識はすぐに現実に引き戻されることになる。

右肩に感じた灼熱の痛みによって……

「がっ、ぎぃあああぁああぁああぁぁあっっうああああぁああぁ!!!!」

最初は何をされているのかも分からなかった、相手の両手はふさがっているはずなのだ、武器もなしにどうやったらこんな激痛を与えられるというのか。
しかし、相手が顔をうずめている自分の右肩あたりから、何かをむしり取るような音が聞こえたとき、ようやく人間にはもう一つ有効な武器があることを思い出した。

歯だ。
多くの生物が持つもっとも原子的な武器。
自分は今この男に喰われているのだ。

「はな、せっ!はなせぇぇぇ!!」

必死の抵抗を試みるもできることは限られている。
武器を持った右腕はがっちりと抑え込まれているし、首をホールドされていて後ろに下がることもできない、蹴りを放つには近すぎる、唯一できることといえば盾で相手の体を押し返すことぐらいだが、腕力の差を考えれば無駄な努力なのは明らかだ。

ティムが抵抗できないのをいいことにオーガは悠々と咀嚼を続ける、そして………

バリッ!ボキボキ!メキ!

「ぎぃいいいいいいいいい!!」

ついにその恐るべき顎はティムの肩の骨までも噛み砕いてしまった。

「が……あぁ………!」

ドスッと、重い音を立てて取り落とした斧が地面へと突き刺さる。
それと同時にようやく解放されたティムはよろけるように距離を取る。

本当なら今すぐにでも傷口を抑えてのた打ち回りたかったが、自分の右肩がどうなっているのか、どうしても確認する勇気がなかった。
右腕はもう動かない、武器も落としてしまった、もはや勝ち目はゼロである。

ティムは右肩から注意をそらすようにオーガに意識を向ける。
オーガはまだガリガリと何かをしがんでいたが、やがてガムのように吐き出されたのは食いちぎられた血まみれの服と、粉々になった骨のかけらだった。

「お前なかなか美味いじゃねぇか」

そう言ってペロリと長い舌で口の周りの血を舐めとる。
たったそれだけの動作で全身に寒気が走った。
それは相手に恐怖を与えるためのやすい演出ではない、純粋に血の味を、人の肉の味を楽しんでいる、だからこそ恐ろしい。
初めて見たときこの男を獣のようだと感じたが、この男は正真正銘の獣だった。

(逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!逃げろ!!)

でもどうやって?
立っているのがやっとなぐらいに震えているこの足でどうやってこの男から逃げ切る?
いや、それ以前にこの男に背中を向けることなど考えられない、そんなことをすればあっという間もなく殺される。

そんなティムの心のうちを知ってか知らずか、オーガは悠然と一歩を踏み出す。
目をそらすこともできず、つられたようにティムは一歩下がる
が、こわばった足はうまく動かず、無様にしりもちをついて転んでしまった。
依然、悠々と歩を進めるオーガ、情けなく後ずさりするティム、二人の距離はゆっくりと縮まっていく。

やがて張り詰めていた緊張の糸がぷつりと切れ、後先を考えずに背を向けて逃げ出そうとした瞬間、オーガがティムに飛び掛る。
ティムは背を向けるよりも早く地面に押し倒され、完全にマウントを取られてしまった。
無意味とは分かっていても全身をよじって最後の抵抗を試みる。

「どけっ!はなれろぉ!!」
「逃がすかよ、久々の上物なんだ」

ゆがんだ血まみれの笑みの奥に、血まみれの牙が鈍く光る。
先ほどの痛みを思い出して、ティムの口から思わず「ひっ」と声が漏れる。

「んん?……ああ、そうか、そりゃそうだよな………」
「え?」
「悪い悪い、ちゃんと殺してからじゃないと痛いよな」
「い……いや…だ………」
「悪かったな、さっきは腹が減りすぎてて我慢できなかったんだ」

その両手が、ゆっくりと首へとのびる。

「まあ安心しな、俺は女をいたぶるような趣味はないからよ」

その両手に触れられたら最後、自分はあっという間に絞め殺されてしまうだろう、いや、もっと単純に首の骨を折られてしまうのかもしれない。

「やぁ……だれか………たすけ……」

どちらにせよ、死はもうほんの数センチにまで迫っていた。
と、そのとき。

「そこで何してるの!!」
[34]投稿者:「優雅な朝食」 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2011/03/08(Tue) 05:06 No.666  
「ああ?」

声の主はまるで子供に注意する母親のように鋭くこちらを睨みつけていた。
少女だ、またしても。
まあ、それはいいとしよう、問題はその格好だ。
こんな森の中には似つかわしくない、というより厨房以外どこにいても場違い極まりない完全無欠のコック姿だ。
しかも右手には年季の入った鍋まで持っている、ふたは持っていないようだが………
いや、まて、そんなことも今は重要じゃない、あまりに予想外すぎる格好に少々頭が混乱しているようだ。
そう、今重要なのは人を襲っているところを第三者に見られたということだ。

(ちっ、面倒なことになった)

こんな場面を見られた以上あのコックを生かしておくわけにはいかない、このことを言いふらされでもしたら後々厄介なことになるだろう。
幸い相手はあの鍋以外に武器らしきものは持っていない。
まさか古武術を体得し、何十人もの敵を一人でなぎ倒していく戦闘コック……なんてことはないだろう………たぶん。
だが、油断しないに越したことはない、相手が素手だからと油断したためにあっさりやられたやつが足元にいるのだから。

「助けて!!お願い、助けて!!」

いや、やっぱり先にこいつに止めをさすべきか、こいつに逃げられても結果は同じだ。
コック少女はちらりと足元の少女に眼をやって相変わらず鋭い目つきでこう言い放った。

「生肉なんて食べて!おなか痛くなったらどうするの!」
「「は?」」

足元の少女と声がハモった、おそらく心の中も同じだろう、なに言ってんだこいつ。

「ちゃんと火を通してから食べないと!それにちゃんと料理したほうが何倍も美味しいに決まってるんだから!」
「…………人肉は……新鮮なうちに生で食うに限る」

カニバリストの自分がいうのもなんだが、かなり非常識な説教をされて、こっちも訳の分からない反論を返してしまった。

「そうだとしても、お行儀悪いにもほどがあるよ!」

コック少女はズンズンと歩みよってくると、「どいて!」といって俺を突き飛ばし、しゃがみこんでさっきまで馬乗りになっていた少女を観察し始めた。
ってか!俺はなにやってんだ!!こいつが敵だったらさっきので死んでたぞ!

「う〜ん、ちょっと小柄だね、でもそこそこ……いや、やっぱり剥いてみないとわかんないな」
「あ、あの……なに言って………うわぁ!!」

皆まで言う前にコック少女が慣れた手つきでびりびりと服を破り始めた。
俺に殺されかけたとき以上に激しい抵抗をみせる少女だったが、コック少女の鮮やかな手並みの前にあっという間に全裸に剥かれてしまった。

「思った通り!小さい割にはよく鍛えてて肉付きがいいね!」

そんなことをいいながらペタペタと少女の全身を弄っていくコック少女。
片方しか動かない手は下を隠すことで精一杯なので、少女はされるがままになっていた。

「やっ!みるな!さわるなぁ!!ひゃう!」
「でもやっぱり胸はちっちゃいなぁ……バターの変わりに胸の脂肪を使うと美味しいんだけど……まぁ、無いわけじゃないしこれでもいけるか」
「うっ……ううぅぅっうぅ………」

無遠慮に小さな胸を揉みしだかれてついにその口から嗚咽が漏れ始める。
一通り少女の体を吟味し終えたコック少女は、呆然と成り行きを見守っていた俺のほうを振り返ると不敵な笑みを浮かべながらこういった。

「今からわたしがあなたに料理の素晴らしさを教えてあげるからね」
「お、おい!おま……」
「ねぇ、なんか縛るものもってない?」
「え?ああ、ロープならあるけど」

コック少女に言われるがままにロープを差し出してしまった、さっきからペースを握られっぱなしだ。

「ありがと!代わりにこれあげる、ちゃんと口の周りふいといたほうがいいよ」

コック少女が差し出したのは一枚の紙ナプキン、どう考えてもつりあわない。
しかし、文句を言う前にコック少女は俺が渡したロープで丸裸になった少女を木に縛り付けていた。

「よし、準備オッケー、次は……」

コック少女のデイパックの中から次々とビン詰された調味料が出てくる、間違いなくさっき俺が捨てたものだ。
いかにも楽しそうに準備を進めていく彼女を見ていると、なんだかだんだんこの少女の作る料理とやらが気になってきた。

「おい、料理っていっても肉だけじゃ作れないだろ、これもやるよ」
「わぁ!いいの!ちょうど包丁代わりになるもの探の!それにこれだけ水があればスープが作れるよ!!」

踊りださんばかりに喜ぶコック少女、なんだかこっちまで楽しくなってきた。
ふふふんふんふふふんっと、どこかで聞いたことのあるような陽気な鼻歌を歌いながら軽やかな足取りで食材のもとへと向かうコック少女。

「ね、ねぇ、ちょっとまっ……」
「あ、こんなところに丁度いい手斧が落ちてる、ねえ!これも借りていい?」
「そいつは俺のじゃねぇよ、そいつのだ」
「あ、そうなの、じゃあちょっと借りるね!」
「いや、そうじゃなくて……待って!おねが……」

「それじゃお料理スタート!」



「では最初に人もも肉の骨付きステーキを作ります、もも肉は太ももの付け根から十センチぐらいのところで切り落としましょう」
「じょ。冗談でしょ……お願い!!まっ……」

ザシュ!

「いぎゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
「肉の鮮度を保つために傷口は余ったロープで止血しておくといいでしょう」
「ひぐっ!……イタィィ………足がぁぁぁ!」
「切り取ったもも肉は二センチくらいの輪切りにします」
「何でわざわざ説明するんだ?って言うか誰に向かって説明してんだ?」
「あ、気にしないで癖みたいなもんだから!」

ダン!ダン!

「輪切りにしたもも肉は両面とも塩コショウで味付けしておきます」
「次にバターの代わりに胸の脂肪を使って肉を焼きます、まず胸の皮を剥きましょう」
「え?」
「このときあまり力を入れずに軽く切っ先を乳首に突き刺して、滑らせるように上下左右、丁度乳首で交差する十文字になるように切込みを入れます」

ツプッ

「つッ!」

ツツツ……

「くぅぅぅ………!」
「では、指で皮をつまんで中心から剥いていきましょう」
「ひっ!やだぁ!!」

ペリ、ペリリリ……

「ひいいぃいぃいいい!!」
「うまいこと剥けるもんだな」
「練習すれば誰でもできるようになりますよ」

ペリペリ……

「ひぎああああぁぁぁ!!!」
「露出した脂肪をナイフでこそぎ取ります」
「もぉやめてぇぇ……やめてよぉぉ………」

ゾリッ、ゾリッ……

「うぐっ!うぁぁ………」
「それでは、火をおこしてフライパン……今回はお鍋で代用しますが、を熱しましょう」
「火をおこすってお前、そんな原始人みたいな方法じゃ………」

ボッ

「早っ!!」
「三分しかないからね、急がないと」
「三分?」
「いやいや、こっちの話!気にしないで!」
「いたぃ……だれかぁ………」
「気を取り直して、先ほどの脂肪を熱したフライパンに満遍なくひいて、お肉を焼きます」

ジュワアアァァァ!!

「程よく焼けたら、ひっくり返して裏面も焼きます」
「おお!いいにおいがしてきたな」
「このときあまり焼きすぎずに、中に少し赤みが残るぐらいに焼くのがポイントです」

ジュウウウゥゥ……

「出来上がったら仕上げにブラックペッパーをふって、お皿……今回は大きめの葉っぱに盛り付けて出来上がりです」
「これは……美味そうだ………」
「はい!人もも肉の骨付きステーキ完成です!」



「どうぞ、召し上がれ!ナイフもフォークもないけどね」

出来上がったのはいい具合に焼き色のついたステーキ、これは期待できそうだ。

「では早速……」

食べやすい大きさにちぎって一欠けら口に含んだ………瞬間、世界が変わった。

「どう?」
「……………うまい」

信じられない、味付けは塩と胡椒だけのはずなのに。

「なんだ……これ、なんていうか……こう………シンプルなのに…味に深みがあって……こう………」

ああ!もどかしい!俺の語彙力ではこの味は表現しきれない!!

「口に入れた瞬間にとろけるような……でも、いつまでの咀嚼していたくなるような………」
「えへへ、ありがと」

食べている俺よりも、さらに幸せそうな笑顔を浮かべるコック少女。

「いやー、うちのトカゲさんたちはいつも美味しそうに食べてくれるんだけど、言葉が分からないから感想聞けなくて困ってたんだよ、ふふ、どう!お料理の素晴らしさ分かってくれた?」
「………そうだな」

これは認めざるを得ないだろう。
うちの支部にもこんなシェフがほしいもんだ。
いや、むしろ嫁にほしいぐらいだ。

「よーし、それじゃ次も張り切って作るから待っててねー」
「あ、そうだ!お前、名前はなんていうんだ?」
「わたし?わたしはミミ!」
「そうか、俺はオーガだ、よろしくなミミ」
「よろしくね!オーガさん!」

その後も、ミミの作る料理はどれもこれも絶品だった。
人骨スープに、腸詰、耳軟骨のから揚げ、肝臓のバターソテー、子宮の煮付け、こんな美味いものを知らずに生きてきたとは、なんとももったいないことをしてきた。
心のそこから思う、こいつとはうまくやっていけそうだ。



「も…ぉ………やだ………」

骨は抜き取られてスープの出汁にされた、腕はミンチにされて腸詰にされた、耳はそぎ落とされて油で揚げられた、肝臓はバターでいためられて、子宮は煮物にされて、卵巣は酢漬けにされて、目玉は隠し味にされて………
もう、どこが残っていて、どこが残っていないのかも分からない。

それでも生きている。
死ぬと鮮度が落ちるから、そんな理由でまだ生かされている。

あの男はまだ、生きたままでは痛いから先に殺してやろうというぐらいの慈悲はあった。
少なくとも自分を人間として扱ってくれた。
でも、あの女は自分のことを完全に食材としか見ていない。
食材が悲鳴を上げようが、のた打ち回ろうがそんなことは眼中にないのだ。
自分にとって最大の不幸はあの男に出会ってしまったことではない、殺される前にあの女が現れたことだ。

「…ぅ……ぅぁぁ………ぅぅ………」

ほらまた、あの女がこっちに来る。
鼻歌を歌いながら、満面の笑みを浮かべて。
今度はどこを切り取られるのだろう?
ほとんど聞こえなくなった耳が、かすかに「舌」という単語を捉えた。

「ぁぁぅ………ぃぁぁ……ぁっ……」

もういやだ

もういやだもういやだもういやだもういやだもういやだもういやだモウイヤモウイヤダダモウイヤダころしてモウイヤダころしてもういやだコロシテもういやだコロシテモウイヤダコロシテモウイヤダコロシテモウイヤダコロシテコロシテコロシテコロシテコロシテ
[35]投稿者:「優雅な朝食」 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2011/03/08(Tue) 05:07 No.667  
【ティム@warlock 死亡】
【残り59名】


【B−5/森/1日目 6:30〜】

【オーガ@リョナラークエスト】
[状態]:満腹、健康
[装備]:なし
[道具]:オーガのデイパック
   (支給品一式、ミネラルウォーター2ℓ×3、ロープ@ニエみこ、ミミ特製人肉の燻製×
    5@バトロワ 、ウイスキー700ml)
[基本]:主催者の打倒
[思考・状況]
1.ミミと行動
2.仲間との合流



【トロア・ミミニッツ@ボーパルラビット】
[状態]:健康、上機嫌
[装備]:リザードマンの斧
[道具]:ミミのデイパック
   (支給品一式、鉄鍋@SKPer、護身用短剣@魔性石、大量の調味料、チーズバーガー       
セット、ばってら×3@warlock)
[基本]:料理を作りたい、食べてもらいたい
[思考・状況]
1.オーガと行動
2.食材、調理器具がほしい



【ティム@warlock】
[状態]:死亡、左足・右足大腿骨・腕・両耳・右目・子宮・右肺・心臓喪失、小腸一部喪失、  
右肩骨まで損傷、血まみれ
[装備]:無し(首輪あり)
[道具]:無し

※ティムのデイパック(支給品一式のみ)はB−5の森に放置されています
[36]投稿者:黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2011/03/08(Tue) 05:14 No.668  
ただいま脱稿。
もう自分でもあきれますね、この遅筆は。

とりあえず二人目の死者を。
前回はオーガが折角のカニバリストなのに
一回も生きてる人間の食事シーンがなかったので、
一度食べさせてみたかった。
そして、人肉料理ドンと来いのシェフがいたので
もうこれは絡ませるしかないと思ってやりました。

誰もが一度は考えましたよね?

ではお目汚し失礼しました。
[37]投稿者:『アグリさん登場』 289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/03/13(Sun) 19:36 No.671  

エリーシアが転移させられたのは、見晴らしの良い平原だった。

(……まずは、支給品の確認ね)

エリーシアは傍に転がっていたデイパックを拾い上げて、中身の確認を始める。

そして、出てきたのは、二つのパンと水の入った皮袋、三つの兎の耳らしきものに
簡素な作りの剣が一振り、そしてアイアングリーブが一足だった。

(他に入っているのは、基本の支給品だけのようね……。
 まぁ、とりあえずは武器が確保できて一安心ね)

そう思って、エリーシアは支給品の剣を手に持つ。

すると、いきなりその剣は淡い光を放ち始める。

「!?」

驚くエリーシアを他所に、剣はその形状を変化させていき、
あっという間に頼りない作りだった粗末な剣は、作りのしっかりした、
思わずエリーシアも見惚れてしまうほどの強力な騎士剣へと変化したのだった。

「これは一体……?」

目の前でいきなり変化した剣に、エリーシアは戸惑った声を上げる。
そのとき、ふとエリーシアは傍に置いておいたアイアングリーブの中に
紙が入っているのに気が付いた。

手に取ってみると、それはエリーシアに支給されたこの剣の説明書だった。


『支給品:アテトナの剣

 持つ者の生命力と魂でその形状を変える剣。

 こう書くとなんかすごそうな武器に思えるが、
 よほど生命力と魂の双方が優れていないと
 銅製の剣以下の粗悪品にしかならない。

 ダンジョンを探索すれば腐るほど大量に見つかるので、
 武器屋ではおまけでもらえたりもする』


(…………)

その説明書を読んで、エリーシアは剣の形状がいきなり変化した理由を理解し、
同時にこの支給品がどちらかというとハズレの類の代物だということも理解した。

(……いえ……)

あながちそうともいえない、とエリーシアは考え直す。

幸いにも、エリーシアの生命力と魂はこの剣のお眼鏡に叶ったらしく、
強力な騎士剣に変化してくれた。
つまり、この剣はエリーシアにとってはアタリの支給品だったということになるだろう。

ともあれ、これなら武器については全く心配は無い。
次に、エリーシアは放置していたアイアングリーブを手に取り、足に履こうとする。

だが、なぜか足が入らなかった。

「……あら?……んっ……しょっ……!このっ……!」

エリーシアは何度もアイアングリーブに足を突っ込もうとするが、
何度やっても一向に足は入らない。

「……何よ、コレ?サイズ的には問題無いはずなのに、何で……?」

一向にアイアングリーブを装備できず、いい加減イラついてきたエリーシアだったが、
ふとデイパックの中を見ると、先ほどのアテトナの剣の説明書にもう一枚紙が重なっている
ことに気が付いた。

手に取って読んでみると、次のようなことが書かれていた。


『アイアングリーブ(盾)

 これは盾です。
 足に装備しないでください』


「……意味が分からないのだけど……」

半眼になって呟くエリーシアだったが、このアイアングリーブに足が入らない以上、
いろいろと納得できないことはあっても、疑問は棚上げしておくしかない。

溜息を吐いてエリーシアは立ち上がり、デイパックから名簿を取り出す。

知り合いは、アーシャとシルファの二人。
まずは彼女たちと合流しよう。

そう考え、エリーシアは歩き出した。




そして、歩き始めて数十分ほど経ったころ、不意に誰かの悲鳴が聞こえてきた。

「っ!」

悲鳴は近くから聞こえてきた。
おそらく少女……しかも、それは苦痛に泣き叫ぶ悲鳴だ。

エリーシアはそれを理解すると同時に、すぐに悲鳴の元に向かって走り出していた。








「げふぁっ!!ぎぃぃぃっ!!あぐぁあぁぁっ!!」

ガルーダはオーグの拳の雨を浴び、身体中をぐしゃぐしゃに潰され、
骨をバキバキにブチ折られていた。

「よし、回復しろ」
「う……あぁ……あぁぁぁ……!」

オーグはあっけらかんとした口調でガルーダに命令するが、
ガルーダは虚ろな目で身体を痙攣させるだけだった。

オーグの特訓という名の拷問はすでに30分以上続いており、
ガルーダの精神はすでに限界に近づいていたのだ。


だが、そんなガルーダの背をオーグは全力で踏みつけた。


ボキイイィィィイイイィィィッ!!


「!!?……がああぁぁぁぁあああぁぁぁぁっ!!?」
「早く回復しろっ!!もたもたしてたら死ぬぞっ!!」

叱咤するオーグに対し、背骨を踏み砕かれたガルーダは
『死にそうなのは貴女のせいです』と言ってやりたかったが、
すでに喋るだけの力も残っていないので、それは叶わなかった。

「……ちっ、甘ったれやがって……!根性のねぇヤツだな……!」

一向に回復する様子の無いガルーダを見て、オーグは苛立たしげに呟く。
そして、『ならば、もっと痛めつけて甘えを吹き飛ばしてやるまで』と
オーグはガルーダに向かって再び拳を振り上げる。

が、オーグのその拳はガルーダには振り下ろされなかった。


バキイィィイィィッ!!


「はっ!不意打ちなんかかましやがって……!
 堂々と正面から来いよ、臆病者がっ!!」

自分に向かって飛んできた鉄塊……アイアングリーブ(盾)を拳で
弾き飛ばし、オーグはアイアングリーブ(盾)を投げつけてきた相手に
向かって吼える。

「……生憎だけど、か弱い少女を痛めつけるような輩に
 戦いの礼を尽くしてやるつもりは無いわ」

オーグの凶暴な視線を真っ向から見据えて立つのは、騎士エリーシア。

「痛めつけるだぁっ!!?何言ってやがるっ!!?
 オレはコイツを鍛えてやってたんだぜっ!!?
 襲われて痛い目に遭っても冷静に対応できるようになぁっ!!」

この言葉は、オーグにとって嘘を一切含まない本気の発言だった。
しかし、オーグの言葉を聞いたエリーシアは不快そうに顔を歪め、吐き捨てる。

「……こんな非道なことをしておいて、
 よくもそんな下らない言い訳を口にできたものね……!」

エリーシアはオーグの足元に倒れている少女に視線を向ける。

少女は身体中が腫れ上がるほどに全身を殴られ、腕や足の関節が変な方向に曲がっていた。
さらに背骨まで真っ二つに砕かれており、どう見ても助かる傷ではなかった。

目の前の女はこれだけの非道な行いをしでかしたのだ。
オーグの言葉は、エリーシアには悪人の戯言にしか聞こえなかった。

エリーシアはアテトナの剣を構えると、オーグを鋭い目で見据える。

「……殺し合いに乗った輩に容赦はしないわ。貴女は私がここで止める」
「あぁ?オレが殺し合いに乗ってるだぁ?
 ワケ分かんねぇことばっか言う女だなぁ、オイ!?」

エリーシアの対応は至極当然のものだったが、
オーグには殺人者呼ばわりされる覚えなど無い。

「……まぁいいさ!!
 やるってんなら相手になるぜ、勘違い女っ!!
 オレが殺し合いになんて乗ってないことを
 オレの拳を通して教えてやるぜっ!!」

オーグはそう叫ぶと、右手にアイアングリーブ(武器)を、
そして左手にはエリーシアが先ほどオーグに投げつけた
アイアングリーブ(盾)を持ち、戦闘態勢を取る。

アイアングリーブ二足を両手に構える女という
世にも滑稽な姿を見て、エリーシアは呆気に取られるが、
ぶんぶんと首を振って、騎士剣を構えなおす。

「……馬鹿の相手をしているヒマは無いの。
 悪いけど、速攻で終わらせてもらうわよ」

脱力しそうになる身体に活を入れ、エリーシアはオーグと対峙する。

アレスティア王国軍4番隊副隊長と、帝国軍第二軍団軍団長の戦いが
今まさに始まろうとしていた。








「……ぐ……うぅっ……」

エリーシアとオーグが戦いを始めたまさにそのとき、
オーグにはるか遠くまで殴り飛ばされた強姦男は
目を覚ましていた。

「……何とか……生きてるみてぇだな……。
 っていうか、アレからどうなった……?」

身体中の痛みに顔を顰めつつ、強姦男は身を起こす。

そして、状況を理解するために辺りを見回そうとしたとき……。




「うおりゃあああぁぁぁああぁぁぁっ!!」

ずがあああぁぁああああぁぁぁぁああああぁぁぁんっ!!!




遠くのほうで凄まじい怒号と振動が響き渡った。

「な……何だっ!!?」

強姦男は驚いて、音の聞こえてきた方向に目を向けるが、
ここからでは遠すぎて、何が起こっているのか分からなかった。

「……何だかよく分からんが、ここからは離れたほうが良さそうだな」

そう呟くと、強姦男はデイパックを背負ってスタコラと逃げ出したのだった。








【D−3/道/1日目 7:00〜】

【エリーシア・モントール@SilentDesire】
[状態]:健康
[装備]:アテトナの剣@TRAP ART
[道具]:エリーシアのデイパック(支給品一式、
    コッペパン×2、皮袋(水 500ml/500ml)
    俊足兎の耳×3@Rクエスト)    
[基本]:ゴッド・リョーナの打倒
[思考・状況]
1.オーグを倒す

※エリーシアの持つアテトナの剣は『強力な騎士剣』に変形しています。
※オーグは殺し合いに乗っていると思っています。
※ガルーダはもう助からないと思っています。



【オーグ@BASSARI】
[状態]:健康
[装備]:アイアングリーブ(武器)@Warlock!
    アイアングリーブ(盾)@Warlock!
[道具]:オーグのデイパック
    支給品一式、食料、飲料(詳細不明)
    その他
[基本]:弱者を痛めつける奴は許さない。弱者は鍛えて強くする。
[思考・状況]
1.エリーシアを倒す
2.ガルーダを鍛える



【ガルーダ@よもまつ】
[状態]:気絶、全身打撲、全身骨折、背骨真っ二つ、
    タイツの股間部分に穴
[装備]:なし
[道具]:ガルーダのデイパック
    支給品一式、食料、飲料(詳細不明)
    ランダム支給品不明(本人は確認済み)
[基本]:自分もふくめ、敵味方誰も殺したくない。
[思考・状況]
1.(気絶中)
2.一刻も早く特訓から逃げ出したい。
3.でも逃げたら本当に殺されそう。
4.ぷれーやーの神様さん助けて!

※重傷ですが、生命力がゴキブリ並みなので命に別状はありません。



【強姦男@一日巫女】
[状態]:頭にたんこぶ、ダメージ(中)
[装備]:拳銃@XENOPHOBIA(残弾数7/9)
[道具]:強姦男のデイパック
    支給品一式、食料、飲料(詳細不明)
    その他
[基本]:殺る前に犯る、犯らんなら殺らん。
[思考・状況]
1.とりあえずここから離れる

※エリーシアたちの場所とは逆方向に向かいました。






[38]投稿者:289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/03/13(Sun) 19:39 No.672  
3人目(管理たん入れたら4人目)の作者さんの登場である。
[39]投稿者:289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/03/13(Sun) 20:14 No.673  
おっと、今気づいたが、
ティムが持ってた盾について
状態表で触れられてないようだ。

黒猫さん、お時間あるときに
盾についての詳細をお願いします(`・ω・´)
[40]投稿者:「優雅な朝食」状態表(修正) 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2011/03/14(Mon) 01:41 No.674  
【ティム@warlock 死亡】
【残り59名】


【B−5/森/1日目 6:30〜】

【オーガ@リョナラークエスト】
[状態]:健康、満腹
[装備]:なし
[道具]:オーガのデイパック
   (支給品一式、ミネラルウォーター2ℓ×3、ロープ@ニエみこ、ミミ特製人肉の燻製×
    5@バトロワ 、ウイスキー700ml)
[基本]:主催者の打倒
[思考・状況]
1.ミミと行動
2.仲間との合流



【トロア・ミミニッツ@ボーパルラビット】
[状態]:健康、上機嫌
[装備]:リザードマンの斧、ラウンドシールド@アストラガロマンシー
[道具]:ミミのデイパック
   (支給品一式、鉄鍋@SKPer、護身用短剣@魔性石、大量の調味料、チーズバーガー
    セット、ばってら×3@warlock)
[基本]:料理を作りたい、食べてもらいたい
[思考・状況]
1.オーガと行動
2.食材、調理器具がほしい



【ティム@warlock】
[状態]:死亡、左足・右足大腿骨・腕・両耳・右目・子宮・右肺・心臓喪失、小腸一部喪失、  
右肩骨まで損傷、血まみれ
[装備]:無し(首輪あり)
[道具]:無し

※ティムのデイパック(支給品一式のみ)はB−5の森に放置されています
[41]投稿者:『変態紳士と筆談少女 その1』  289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/03/26(Sat) 18:15 No.681  

ルキが転移した先は列車の中だった。

先頭車両の座席の一つに、いつの間にか腰を下ろしていたことに
気が付くと、すぐに先ほどの出来事を思い出す。

(……殺し合い……とか言ってやがったな……)

あの部屋にいた大勢の人物を拉致した張本人である
ゴッド・リョーナと名乗った男。
彼は、ルキの目の前で炎のような髪をした少女の首を吹き飛ばし、
殺害した。

あの残虐な行為によって、ルキはこの殺し合いが冗談ではないことを
嫌でも理解せざるを得なかった。

少女の首が吹き飛び、血が飛び散る光景。

昔のルキならば、少女の無惨な死に様に喜びと快感を抱いたかもしれない。
だが、今のルキには少女の死は不快と悲しみしかもたらさなかった。

女性の苦しむ姿にリゼの死に様を重ねてしまうようになって以来、
彼はリョナラーではなくなってしまったのだから。

ルキは犠牲となった少女に黙祷を捧げると、傍らに置かれていたデイパックを
開いて中身を確かめた。

(……くそ……!やっぱり、魔剣も角も入ってないか……!)

リゼの形見である、魔剣ネフェリーゼとリゼの角。
参加者を集めたあの部屋で気が付いた時点で、
ルキはその二つが奪われていることに気が付いていた。

そして、一縷の望みにかけて開いたデイパックの中には
魔剣も角も見当たらなかった。

つまり、魔剣ネフェリーゼとリゼの角は今、あのゴッド・リョーナと
名乗るいけ好かない男の手の中にあることになる。

(……ヤツを殺す理由が一つ増えたな)

理由その1。
自分をこんなふざけた殺し合いに巻き込んだこと。

理由その2。
自分の目の前で、あの少女を無惨に殺害したこと。

そして何より、理由その3。
大切なリゼの形見を、自分から奪い取ったこと。

「一つでも殺される理由としては充分だってのに、
 三つも同時に揃えやがるとは、よっぽど俺に殺されたいらしいな。
 自殺願望でもあるんですか、コノヤロー」

ルキはくっくっくっと低い笑い声を漏らす。

ルキの胸中はゴッド・リョーナに対する怒りで満ちていた。

あの男をこのまま生かしておくつもりなど、毛頭無い。
ルキはゴッド・リョーナをあの少女とは比べ物にならないほど、
情け容赦無しに惨たらしく殺害してやることを誓った。

(無様に泣き叫んで後悔しながら死んでいくがいいぜ、下種野郎)

ゴッド・リョーナを想像の中で十数回ほど無惨に殺し、
ある程度溜飲を下げた後、ようやくデイパックの中身を確認し始めた。

先ほどは魔剣と角のことしか頭に無かったので、
何が入っているのかをちゃんと確認していなかったのだ。

まず出てきたのは斧、そしてロッドだった。

斧のほうは特に変哲の無い、戦闘用の片手斧のようだ。
なかなか頑丈な作りのようで、ルキが魔剣ネフェリーゼの前に使っていた
鉄の長剣に比べると、こちらのほうが武器として数段優秀だろう。

ロッドのほうは強力な魔力を感じるが、残念ながらルキには扱えないようだ。
魔術師ではないからなのか、それとも特殊な才能が必要なのかは分からないが、
少なくとも、ルキにとってはこのロッドは鈍器にするくらいしか使い道が無い。

「おk、せっかくだから俺はこの斧を選ぶぜ」

ルキは迷わず、斧を武器として選択する。
ロッドのほうは扱える者に出会ったときに、交渉の材料として使えば良い。

そして、一通り支給品を確認したところで、異変が起きる。


がたんっ!


「!?……何だっ!?」

いきなり列車が大きく揺れたことで、ルキは驚いて腰を浮かす。


そして、次の瞬間、駅構内にアナウンスが鳴り響いた。

『ヒャッハー!!D駅から発車しますぜ、ヒャッハー!!
 乗車する方は閉まるドアに挟まってリョナられやがれ、コノヤロー!!』


どこか聞き覚えのある喋り方をする、甲高い声のアナウンスに、
ルキは唖然とする。

「……何してはるんですか、モヒカンさん……?」

いや違う、落ち着け。
これはモヒカンではない。

少なくとも、モヒカンはこんな声では無い。
アイツの声は、もっと汚くて耳障りな声だ。

ていうか、駅ってことは馬車なのか、これ?
いや、こんなでかい馬車(?)を動かせる馬なんているはずが無い。

いや待て、竜ならどうだ?
レムウィスやギルドランくらい巨大な竜なら
これくらいの大きさはいけるかもしれない。

しかし、そもそもこの馬車(?)を引いている動物自体が見当たらない。
だとすると、魔法が動力源となっている可能性が……。


と、そこまで考えて、ルキは思考を中断した。

「……まぁいいや、頭脳労働は俺の専門じゃねぇし、
 深く考えるのはよそう。

 とりあえず、この暫定馬車は殺し合いを円滑に進めるために、
 あの男が用意したものだと考えるのが自然だな。

 地図を見た限りじゃ、それなりに広い島を殺し合いの舞台に
 使ってるようだし、移動手段が徒歩だけじゃ殺し合いが
 停滞するかもしれないって考えたんだろ。

 つーわけで、考察終わり」

そして、ルキは座席に乱暴に座り、斧とデイパックを傍らに置き、
足を組んで、腕組みしつつ目を閉じる。

そして、そのまま寝息を立て始めてしまった。



[42]投稿者:『変態紳士と筆談少女 その2』  289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/03/26(Sat) 18:16 No.682  

そんなルキを貫通扉越しに注視する小さな影が一つ。

「…………」

その影はルキが完全に寝入っていると判断すると、
貫通扉を開けて、そろそろと忍び足でルキに近づく。

そして、そのままルキの傍に置かれたデイパックに手を伸ばし……。

と、そこでその手を横から伸びたルキの手が捕まえた。

「ほい、そこまで」
「!?」

影が動揺する。

そんな影に、ルキはにやりと笑いながら告げる。

「はっ、あっさり引っかかりやがって。
 いくら移動中の馬車(暫定)の中だからって、
 殺し合いの真っ只中で、無警戒に居眠りなんて
 するわけねぇだろうが?」
「……っ!」
「……で、何か言い訳でもあるか、コソ泥少女?」

その言葉を聞いて、影……少女は悔しそうにルキを睨みつける。

にやにやと馬鹿にしたように笑うルキを恨めしそうに睨むのは、
13〜15くらいの紫髪に明るい橙色の瞳を持つ少女だった。

「…………」
「ほーう、ダンマリですか?こりゃオシオキが必要ですね、オイ?
 というわけで、俺の独断と性的欲求により、オシオキは尻叩きに
 決定……って、うぉわっ!!?」

今にも少女の尻に手を伸ばそうとしていたルキは、次の瞬間には
少女が腕を振るった勢いで、思いっきり投げ飛ばされていた。

投げ飛ばされつつも、受身を取ったルキの目には今までとは違って、
ふざけた雰囲気は欠片も見られなかった。

少年とはいえ男を、小柄な少女が片腕の力だけで投げ飛ばしたのだ。
少女が見た目通りのか弱い存在ではないことは明白だった。

「……てめぇ、ただのガキじゃねぇな?」
「…………」
「ちっ、またダンマリかよ……。
 ……ああ、そういえば大事なことを一つ聞き忘れてたぜ」

ルキは目を細めて少女を見据える。

「おい、ガキ。てめぇはこの殺し合いに……って、いや、ちょっとぉっ!!?」

言葉の途中で、ルキは慌てて少女に向かって駆け出す。

なぜなら、少女がルキのデイパックから支給された骨付き肉を取り出し、
凄まじい勢いで平らげ始めたからだ。

「待てこらぁっ!!そりゃ俺のだろうが、このクソガキっ!!
 てめえ、人がせっかくシリアスに決めてんのに、そのスルーっぷりは
 何なのっ!!?空気読めない子なのっ!!?」

ルキが自分の食料を食い尽くされるのを阻止しようと少女をデイパックから
引き剥がそうとする。

だが、少女の力は尋常ではなく、ルキが力いっぱい少女を引っ張っても、
少女はびくともしない。

「……っ!!……こっ……のっ……!!」

とうとう、ルキはキレた。

こうなったら、手段は選ぶまい。
力押しでは駄目だと判断したルキは、少女の背後に回り込み……。


そのまま、少女の胸を両手で鷲掴みにした。


「……っ!!?」

いきなり胸を触られ、少女は身体をびくっと震わせて硬直する。
その隙に、ルキはデイパックを引っ手繰る。

「ふっ……甘いぜ、コソ泥が。
 たとえ、胸を触られようが、尻を揉まれようが、
 無視して喰い続けるのが食の道ってもんだろうが?」
「……っ……!」

少女は顔を真っ赤にして、ルキに殴りかかってきた。

だが、怒りで単調になった動きでは、曲がりなりにも
戦闘の達人であるルキは捉えられない。

ルキは最小限の動きで少女の拳をひょいと避けて、
ついでに足払いをかけてやる。

足払いを掛けられた少女はそのまま転倒し、座席に頭をぶつけてしまった。

「〜〜〜〜〜〜……っ!!」

頭を押さえて痛がる少女の耳に、ルキの呟く声が聞こえた。

「……ふむ、白か。瑞々しい肌の眩しさも相まって、
 なかなか素晴らしい光景だな」
「っ!!?」

その言葉に、こけた拍子に自分のスカートがまくれ上がっていたことに
ようやく気が付き、慌てて麗しい三角巾を汚す下卑た視線をスカートで遮る。

「ああん、いけず」
「……っ!!」

悲しそうに呟くルキに、殺気に近い怒りをぶつける涙目の少女。

「何だよ、その目?元々はお前が俺のデイパックを
 奪おうとしたのが悪いんだろうが?」
「……だ……だからって、あんな……!」
「お、やっと喋った」
「……っ……!」

ルキの言葉に、少女は再び口を噤んでしまう。

「またダンマリかよ……何なら、これで筆談でもするか、オイ?」

そう言って、ルキはデイパックから小さな黒板を取り出し、
少女に放った。

「……あっ……!?」

少女は驚いた顔をしつつも、黒板を受け取る。
そして、付属のチョークを取り出し、凄まじい速さで黒板に走らせ、
ルキに黒板を突きつけた。

『何でわたしの黒板を持ってるの!?』
「……マジで筆談すんのかよ……って、いや、ちょっと待て。
 その黒板、お前のなのか?」
『間違いなくわたしのだ、この変態!
 コソ泥とか人に言っときながら、自分がコソ泥じゃないか!
 死ね!早く死ね!今すぐ死ね、変態!』
「……筆談になった途端、ムカつくくらい流暢ですね、君。
 骨付き肉の代金代わりに、君の貞操を奪っちゃいますよ?」

手をわきわきさせ始めたルキに、少女はびくっと身体を震わせ、
ズザザザッ!と10メートルほど後退した。

「はいはい、冗談ですよー?
 本気にしちゃ駄目ですよー?
 ていうか、殺し合いの最中だってのに、
 さっきから何やってんだよ、俺ら」

さすがに馬鹿らしくなってきたルキは、デイパックと斧を背負うと、
少女に背を向けた。

「骨付き肉の代金は、お触りとパンチラでチャラにしといてやるよ。
 その黒板は俺に支給されたもんだが、お前のらしいからオマケで
 くれてやるよ」

この少女は今までの様子からすると、殺し合いには乗っていないだろう。
そして、自分を片手で投げ飛ばすほどの怪力を持っていることから、
あっさり殺されるような弱い存在でもない。

ならば、放っておいても問題は無いだろう。
友好的な出会いだったなら同行することも考えたが、
向こうの心情を考えると、それは不可能だろう。

ルキがそこまで考えたところで、列車が停車する。


そして、車内に先ほどと同じ声のアナウンスが聞こえてきた。

『ヒャッハー!!F駅に到着しましたぜ、ヒャッハー!!
 降車する方はお降りするときに、うっかりこけてリョナられやがれ、
 コノヤロー!!ちなみに、停車時間は5分だぜ、ヒャッハー!!』

癇に障るアナウンスとともに、出入り口の扉が開く。


それを確認すると、ルキはさっさと列車から降りる。

「ま、せいぜい死なないようにな」

ルキは去り際に少女に言葉を向けると、置いてあった配布用の時刻表を
10枚ほど掴み取って、駅を出て行った。



[43]投稿者:『変態紳士と筆談少女 その3』  289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/03/26(Sat) 18:17 No.683  

駅の外に出ると、一面が雪景色だった。

「おいおい……いきなり気温が激変してんだけど、どういうことだ?
 まさか、これもあのゴッド・リョーナとかいうヤツの力だってのか?
 空間転移に高性能馬車、それに天候操作も可能ですよってか、オイ?」

どうやら思った以上に相手はやばそうだ、とルキは現状の深刻さを
ようやく理解し始める。

と、そこでようやくルキは傍らの存在に目をやった。

「……で、何でついてきてんの、お前?」
「…………」

ルキの視線の先には、先ほどの少女がいた。
少女はルキを睨みつけながらも、黒板をルキに突きつける。

『確認しておきたいことがあります』
「言ってみろ。ていうか、書いてみろ」

ルキの言葉に少女は頷くと、黒板に黒板消しとチョークを走らせ、
再び書いた文字をルキに見せる。

『わたしが最初にあなたを見つけたとき、
 あなたは殺気に満ちた笑いを浮かべていました。
 それで、わたしはあなたが殺し合いに
 乗っていると思いました』
「……あー……」

ルキはそれを見て、思い出す。

ゴッド・リョーナに対しての怒りを燃やしていたとき、
そういえばそんな笑いを浮かべていたかもしれない。

『でも、それだけじゃ確信が持てなかった。
 だから、わたしはあなたの荷物を奪って、反応を見ようと思いました。
 もし殺し合いに乗っていないなら、荷物を盗もうとしただけでは
 殺しはしないと思ったから』
「ほほう。それで、何故いきなり俺の食料を食い始めたんですか?」

ルキの突っ込みに、少女はきっぱりと黒板を突きつけた。

『わたしの大好物だったからです』
「……さいで」

悪びれない少女の様子に、ルキはどうでも良くなって、
少女に続きを促す。

「……で、結局、お前は俺のことをどう判断したんだ?」
『結論としては、あなたは殺し合いに乗っていないと判断しました』
「おk、その通りだ。
 俺は殺し合いには乗っていない」

きっぱりと言い切るルキに少女は冷ややかな目で、
黒板を裏返して突きつける。

『だが、貴様は軽蔑すべき変態だ』
「おk、その通りだ。
 おれは尊敬されるべき、変態という名の紳士だぜ。
 え?何、惚れた?一晩ベッドで『突き』合う?」
「…………」

汚物を見るような目を向ける少女に対して、ルキは構わずに問いかける。

「……で、誤解が解けたところで、殺し合いに乗ってない者同士、
 一緒に行動しましょうってことか?」
『嫌です。変態と一緒に歩きたくないです。貞操の危機です』
「あっそ。まぁ、予想はしてたがね」

要するに、この少女は誤解を解きに来ただけなのだ。

もしかしたら、ルキはデイパックを盗もうとした少女のことを
殺し合いに乗っていると誤解したかもしれない。

もしそうだとすると、ルキが他の参加者に少女が殺し合いに乗っていると
触れ回るのでは、と少女は危惧したのだろう。

「安心しな。お前が殺し合いに乗ってないことくらい分かってるさ。
 他の参加者に誤解を広めるようなことはしねぇよ」
『それはどうも。では、さようなら』

用は果たした、とばかりに足早に去ろうとする少女。

だが、ルキはそれを呼び止めた。

「なぁ、名前くらい教えてくれよ」
「…………」
「露骨に嫌そうな顔すんなよ。
 ぶっちゃけ、お互いに困るだろ?
 他の参加者との情報交換のときとかさ。
 俺はルキ、お前は?」
「……ヘイゼル……」

ぽつり、と少女……ヘイゼルは呟いた。

名前くらいは自分の口で告げないと失礼だと思ったのか、
寒さで手が悴んで文字を書くのが辛くなったからかは分からないが、
少女は最後だけは自分の口でしっかりと言葉を紡いだのだった。






 
[44]投稿者:『変態紳士と筆談少女 その4』  289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/03/26(Sat) 18:18 No.684  
ヘイゼルと分かれたルキは、東にあるはずの町を目指していた。
ちなみに、ヘイゼルは意地でもルキと同行したくなかったのか、
ルキとは逆方向の何も無い西のほうへと歩いていってしまった。

「やれやれ……ちょっとからかいすぎたかねぇ……」

ヘイゼルの胸の感触とスカートの中の桃源郷を思い出しながら、
ルキはぼやいていた。

「……あ、そういや名簿を見てなかったな。
 ヘイゼルが偽名じゃないか、一応は確認しとくか」


そして、名簿を取り出して確認し……。




ルキは雪の中に突っ伏した。




が、すぐに起き上がる。

雪だらけになったルキの表情は凄まじい憤怒と殺意に満ちていた。

「……あの野郎っ……!!」

ゴッド・リョーナを殺す理由がまた一つ増えた、とルキは心の中で吐き捨てる。

名簿には、ルキの知り合いが7人も書かれていたのだ。


オーガ、モヒカン、ベドロゥ、カレン、
ルインザナン、ミタリカーネ、グレートヌコス。


ミタリカーネ以外は不安しか感じない顔ぶれだった。

ともあれ、知り合いについて考えないわけにもいかず、
ルキは名簿に書かれた7人について考えを巡らす。


まず、オーガ、モヒカン、ベドロゥ。

ルキの元同僚であり、今でも大切な仲間の三人だ。
だが、オーガは人肉しか食せないカニバリストであり、
モヒカンとベドロゥはリョナラーだ。
仲間がいる以上、殺し合いには乗らないだろうが、
彼らは他者……特に女性を害する可能性が極めて高い。

すぐにでも合流して、説得する必要があるだろう。
この三人は自分の言葉なら、考えを改めてくれるはずだ。
……少なくとも、この殺し合いの間くらいは。そう信じたい。


次に、カレン。

ルキの姉であり、痛みを至高の快楽と考える生粋のリョナラー。
自身が傷つくことすら快楽と感じる彼女は嬉々として、
この殺し合いに乗ることだろう。

彼女も早急に説得する必要があるが、果たして姉は
自分の言葉を受け入れてくれるだろうか?

『えー?良いじゃん、ルキ君ー?殺し合いしようよー?』

……嫌な幻聴が聞こえた気がするが、あえて無視することにした。


そして、ルインザナン。

死んだはずの人物だが、名簿に名前が書かれているところを
見ると、どうやら生きていたらしい。
魔女であり、リョナラーでもある彼女はどう動くか分からないが、
殺し合いに乗る可能性も無いとはいえないだろう。

傍若無人な彼女には、自分の説得が通じる可能性は低い気がする。
彼女のことはミタリカーネに任せたほうが良さそうだ。


それから、グレートヌコス。

ルキの兄であるレイジと同じ、リョナラー連合四天王の一人。
ルキ程度ではどう足掻いても太刀打ちできない並外れた実力の持主だ。
例に漏れずリョナラーであり、確実に殺し合いに乗っているだろう。

説得が通じる可能性は皆無であり、下手をすれば襲い掛かってくる可能性もある。
……気は引けるが、人数を集めて殺してしまうしか道は無いかもしれない。


最後に、ミタリカーネ。

ルインザナンと同じく、強大な力を持つ魔女の一人。
名簿に書かれているルキの知り合いの中では、唯一の不安要素ゼロの人物だ。
彼女だけは自分と同様に、殺し合いの打破に向けて動いてくれるだろう。

彼女と合流できれば、心強い。



知り合いのスタンスとそれに対しての対応を一通り考えたルキだったが、
あることに気が付き、顔が強張る。


「……やっべぇ……ヘイゼルにコイツらの情報、全く伝えてねぇ……」


すでにヘイゼルと分かれて、30分以上の時間が経過していた。








【F−5/道/1日目 7:00〜】

【ルキ@Rクエスト】
[状態]:健康
[装備]:タバルジン@Tezcatlipoca
[道具]:ルキのデイパック(支給品一式、
    マジックロッド@マジックロッド、
    チョコレート×2@SilentDesire、
    ペットボトル(水 1000ml/1000ml)
    駅の時刻表×10)
[基本]:対主催、ゴッド・リョーナを殺す
[思考・状況]
1.知り合いが殺し合いに乗っている場合は止めるように説得する
2.ヘイゼルが心配

※魔剣ネフェリーゼとリゼの角はゴッド・リョーナが
 所持していると考えています。
※骨付き肉@Twilight Dragon はヘイゼルに全部食べられました。



【F−4/道/1日目 7:00〜】

【ヘイゼル@Twilight Dragon】
[状態]:健康
[装備]:ミニ黒板@Twilight Dragon
[道具]:ヘイゼルのデイパック(中身不明)
[基本]:対主催
[思考・状況]
1.一人は寂しいから仲間になってくれる人を探す(ただし、変態は除外)



※【駅の時刻表】

 [列車1(西)]
 B駅→D駅 … ○:55 → ○:05
 D駅→F駅 … ○:10 → ○:20
 F駅→D駅 … ○:25 → ○:35
 D駅→B駅 … ○:40 → ○:50

 [列車2(東)]
 B駅→D駅 … ○:25 → ○:35
 D駅→F駅 … ○:40 → ○:50
 F駅→D駅 … ○:55 → ○:05
 D駅→B駅 … ○:10 → ○:20








[45]投稿者:289◇SqVSQKtY 投稿日:2011/03/26(Sat) 18:30 No.685  
投下ー。

ヘイゼルのキャラ間違ってないだろかと、ちょい不安。

ルキはいつも通りだ、問題ない。
[46]投稿者:『REBOOT』 その1 麺◆dLYA3EmE 投稿日:2011/03/28(Mon) 00:05 No.688  
「ねーねー、殺し合おうよー♪」

首を吹き飛ばされた少女、殺し合いの宣言。
ある者は怯え、ある者は怒り、ある者はそれに乗じて自らの欲望を満たそうとする。
おそらく彼女だけであろう。純粋な「喜び」を感じたのは。

「うーん、寝ちゃってるのかなぁ?」

彼女の名はカレン。リョナラー連合南支部の構成員だ。
痛みを至上の快楽と捉える彼女は、殺し合い、切り刻み合いを何よりも好む。
そんな彼女に、バトルロワイアルという殺し合いの場が提供された。
手当たり次第に殺そうとするのは当然だ。

だが、目の前にいる相手は、そう簡単に動きそうにはなかった。

「起きてよー、殺し合おうよー、切り刻み合おうよー・・・ねこさん!」



QWERTY2003> !CAUTION!
QWERTY2003> shutdown caused by unknown event
QWERTY2003> start syscheck

ねこさんと呼ばれたモノは、科学技術と魔法技術の粋を集めた警備用機械、QWERTY2003だ。
狂いやすいという欠点があるものの、拡張性が高く、軍民を問わず非常に多くの場所で用いられた。
しかし、それは既に過去の話。
より低コストで高性能な新型機が登場した今では、その役目を終えようとしている。

QWERTY2003> checking files...
QWERTY2003> q:\bin ... [OK]
QWERTY2003> q:\boot ... [OK]
QWERTY2003> q:\dev ... [OK]
QWERTY2003> q:\lib ... [OK]
QWERTY2003> q:\mnt ... [OK]
QWERTY2003> q:\usr ... [OK]

そんな彼も、この殺し合いの参加者である。
旧式とはいえ、一般人と比べれば圧倒的な力があり、しかも余計な感情を持たない彼は、
この場において最も危険な存在である。

・・・はずだった。
現実は、フィールドに転移させられた衝撃で電源が切れてしまい、
30分経っても動かなかったので、主催者による「超法規的措置」でただいま再起動中である。

QWERTY2003> checking devices...
QWERTY2003> HEAD: CANON ... [OK]
QWERTY2003> ARM: CATCHER ... [OK]
QWERTY2003> LEG: WHEEL ... [OK]
QWERTY2003> WEP1: BLADE ... [OK]
QWERTY2003> WEP2: BLADE ... [OK]
QWERTY2003> WEP3: NONE ... [SKIPPED]
QWERTY2003> WEP4: NONE ... [SKIPPED]
QWERTY2003> WEP5: NONE ... [SKIPPED]
QWERTY2003> WEP6: NONE ... [SKIPPED]
QWERTY2003> succesfully finished

どうやら、急に電源が切れたことによる影響は無いらしい。
狂いやすい彼にとっては、奇跡と言っても良いかもしれない。

QWERTY2003> login
QWERTY2003> user: god
QWERTY2003> password: ********
god@QWERTY2003> This is QWERTY2003 system.
god@QWERTY2003> All rights reserved by Shirco.
god@QWERTY2003> input seculity level ...
god@QWERTY2003>
god@QWERTY2003> input timeout
god@QWERTY2003> level HIGHEST: automatically selected
god@QWERTY2003> seculity service start!

少し遅れてしまったが、彼のバトルロワイヤルが、今始まる。

「さて・・・せっかく再起動させてやったんだ。存分に俺を楽しませてくれよ。」



キュピーン

QWERTY2003の目が輝く。

「わーい、起きたー♪」

彼が最初に見たものは、一人の少女だった。
この無邪気に喜ぶ少女にどう対応すべきか。
彼はまず全身のセンサーを使って現在の状況を分析した。

god@QWERTY2003> gps: ERROR
god@QWERTY2003> temperature: 28.4F / -2.0℃
god@QWERTY2003> weather: sunny
god@QWERTY2003> ground: snow
god@QWERTY2003> person: unknown

GPSによる位置情報の取得には失敗。衛星との通信が上手くいかない。
気温は摂氏マイナス2度。低温により7%程度の性能低下は避けられないが、大きな問題にはならない。
また、今は晴れているので、気温はすぐに上がるだろう。
問題は地面が雪に覆われている事である。
雪上での行動は想定されていないため、足元のタイヤはスタッドレスではなくスリップの危険性が高い。
魔法技術による体制安定機構により転倒だけは回避できるが、移動能力は大幅に低下する。
そして、目の前にいる人間の顔は、彼のブラックリストにもホワイトリストにも含まれない。
つまり、この人間は彼が知らない人物だ。

これらの情報から導き出した答えは・・・

god@QWERTY2003> FINISH HER!

すぐに殺害するのが安全かつ確実。
危険人物であれば隙を見せれば破壊される可能性があり、雪上では逃げるのもままならない。

この間、わずか2秒。
そこからブレードを相手の頭上に動かして振り下ろすまで1秒。
一般人なら回避するのは不可能だ。
目の前の相手もその例に漏れず、一歩も動かない。

しかし彼女は動けなかったのではない。

「虐めてくれるのー?わーい♪」

痛みという快楽を求めて、「動かなかった」のだ。



グシャアッ


QWERTY2003のブレードが、カレンの肩から下腹部までを切り裂き、
鮮血が雪原を真っ赤に染める。

「あっ、あ・・・あれ・・・?」

足元がふらつき、目が霞む。
多少のダメージは全く気にしない彼女でも、
ここまで深い傷と出血は、さすがに辛いようだ。

ドサッ

立っていられなくなって、雪の中に倒れこむ。
その冷たさを身に感じながら、彼女の意識は薄れていった。
[47]投稿者:『REBOOT』 その2 麺◆dLYA3EmE 投稿日:2011/03/28(Mon) 00:06 No.689  
god@QWERTY2003> scan...
god@QWERTY2003> vitality: 4%
god@QWERTY2003> status: impending death
god@QWERTY2003> risk: very low

目の前の少女の生命力は低下し、このまま放置すれば間もなく死に至るだろう。
万一生き続けたとしても、戦闘可能な状態まで回復するには数週間かかる。
そう予測したQWERTY2003は、彼女に対する警戒を解いた。
警備ロボットである彼にとって、攻撃行動を行う目的はあくまで警備上のリスクの回避だ。
相手の戦闘能力を奪うことが出来れば、生死はそれほど問題ではない。

彼は少女に背を向けて、スリップしないよう慎重に移動を始めた。
現在地が分からない以上、無闇な移動はエネルギーの無駄になる可能性もあるが、
それよりも移動が不自由な雪上にいるというリスクを回避するのが優先だ。
気温が摂氏0度を上回り雪が溶け始めると、スリップの危険が大幅に増す。
それまでに、洞窟なり建物なり雪の無い場所を探し当てる必要があった。

しかし、彼は気付いていなかった。
彼はそもそも屋内や洞窟内など天井が低い場所での活動を前提として製造されている。
そのため、前方へのセンサー感度が非常に高く、物陰に隠れている相手さえ発見できる一方で、
屋外での活動では必須となる上空向けのセンサーは搭載されていないのだ。
すなわち、頭上は彼にとっての死角。
そしてこの時、彼の頭上には彼のものと全く同じブレードが、浮かんでいたのである。


ガシャアアアアン

QWERTY2003の頭に、巨大な刃が振り下ろされた。
驚いた彼が後ろを振り返ると、そこには倒れたはずの少女が立っていた。
服が破れていることから先ほど切り裂いたことは間違いないが、
その身体には少しの傷も残っていなかった。

god@QWERTY2003> scan...
god@QWERTY2003> vitality: 100%
god@QWERTY2003> status: health
god@QWERTY2003> risk: ... ERROR!!!

彼の思考回路は混乱し始めた。
現在の状況だけを見れば、相手は最初と全く同じ状態だ。
その上で相手が危険人物であることが確実になったのだから、情報が増えた分適切な判断が容易になる。
しかし、試験的に導入された調査データの履歴を元にした状態判定と行動選択のアルゴリズムが、
異常な入力により停止してしまい判断が下せなくなった。

そんな彼を尻目に、カレンが呟く。

「えへへへ、ルキ君に勧められた魔法が役立っちゃった♪」

彼女が覚えていた魔法はフルヒーリング。
最大SP低下というリスクから要らない子扱いの魔法だが、回復力は申し分ない。
気を失う直前にこの魔法を使ったことで、彼女の受けた傷は完全に回復した。
さらに彼女は、攻撃を受ける瞬間にラーニングを発動していた。
これにより、相手と全く同じ技で反撃することができたのだ。

god@QWERTY2003> change algorithm: SIMPLE
god@QWERTY2003> ... done
god@QWERTY2003> select action
god@QWERTY2003> ESCAPE!

QWERTY2003は履歴ベースの判断を諦め、旧式の単純なアルゴリズムに切り替えた。
その判断結果は、逃走。
相手の状態とこちらの状態を比較して不利と考えたからだ。

しかし旧式のアルゴリズムはより性能の低いハードウェアでも実用的な時間で動作するよう設計されている。
特に0.1秒の遅れでも致命的となりうる戦闘中の行動判断ならギリギリのチューニングが施される。
その際に有益かつ広く用いられている方法は、入力の変数を減らすこと。
すなわち判断材料を影響の大きい物のみに絞ることで、計算時間を削減するという手法だ。
彼の用いたアルゴリズムでも、当然のようにこの方法が採られていた。

要するに、彼は忘れていたのだ。
ここが雪上だということを。

キュルルルルルルルルル・・・

彼のタイヤが激しく空回りする。
体制安定機構により倒れることはないが、移動することはできない。
それでも旧式アルゴリズムは逃走の指示を出し続けるため、彼は完全にその場で停止してしまった。

その隙を、カレンが見逃すはずはない。

ゴゴゴゴゴ・・・

彼女の念動の力により、周囲の地面が持ち上がる。
本来は岩の塊を相手にぶつける技だが、雪原で出来上がるのは当然、巨大な雪玉。
しかし彼女は気にせずに、それをいつものように投げつけた。

ドシャッ

動けないQWERTY2003に、雪玉が命中。

god@QWERTY2003> ERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERROR
god@QWERTY2003> ERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERROR
god@QWERTY2003> ERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERROR

すると、彼の身体から白い煙が吹き上がった。

god@QWERTY2003> ERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERROR
god@QWERTY2003> ERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERROR
god@QWERTY2003> ERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERROR

雪が溶けると水になる。水は電気製品の大敵だ。
そして彼の表面温度は、雪玉を溶かすに十分だった。

god@QWERTY2003> ERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERROR
god@QWERTY2003> ERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERROR
god@QWERTY2003> ERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERROR

無論、ある程度の防水処理はされている。
しかし低温下での動作は想定外であった。

god@QWERTY2003> ERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERROR
god@QWERTY2003> ERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERROR
god@QWERTY2003> ERRORERRORERROR......

ドンッ!

彼の首のあたりで小さな爆発が起こり、頭が地面に転げ落ちた。
再起動からわずか2分。あまりにあっけない最期だった。

「えー!?もう死んじゃったのーっ?」

カレンが心底不満そうに声をかけるが、QWERTY2003には届かない。
しかたなく彼女は、次の遊び相手を探すため、その場を後にした。



「・・・と、行ったか。」

雪原に放置されたQWERTY2003の元に一人の男がやってきた。
彼は悪の幹部候補生ゼッケン番号1番、通称一号。外での名前はカブト。
カレンとQWERTY2003の戦いは、ずっと近くの物陰から観察していた。
最初は女が切り裂かれるのを見られて喜んでいたが、
一瞬にして傷を治療して反撃したことで、彼女の危険性を認識し、近付かないと心に決めた。
その一方で、彼が興味を持ったのはロボットの方。
武器開発や機械いじりが好きな彼にとって、それは最高の遊び道具だ。
そして今、機能を停止したそのロボットが目の前に転がっている。

「・・・さて、やるか。」

彼はデイパックの中から支給品の工具セットを取り出し、作業に取り掛かった。



【G−5/雪原/1日目 6:30〜】

【カレン@Rクエスト】
[状態]:健康、最大SP-3
[装備]:なし
[道具]:カレンのデイパック(中身不明、たぶん使える武器なし)
[基本]:人を見つけたら殺し合う
[思考・状況]
1.他の参加者を探して
2.殺し合うー♪
3.切り刻み合うー♪

※魔法:フルヒーリング
※ラーニング:ブレード(QWERTY2003)


【一号@悪の幹部候補生】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:一号のデイパック
    支給品一式
    工具セット@SKPer
[基本]:生き残る
[思考・状況]
1.QWERTY2003をいじる
2.どういじるかは次の執筆者にお任せ


【QWERTY2003@クァルラリル】
[状態]:故障(死亡扱い)

※デイパック(中身不明)と首輪は付近に落ちてます。一号はまだ気付いてません。
※修理されて再起動することがあっても首輪が外れてるので死亡扱いです。
※というか首輪ってどこに付けてたんでしょう。
[48]投稿者:麺◆dLYA3EmE 投稿日:2011/03/28(Mon) 00:10 No.690  
3人(?)目の犠牲者(?)を。
設定を根本的に間違ってる気がしなくもないですが(汗)
[49]投稿者:『三人の人間』◆gBrxZQCE 投稿日:2011/04/28(Thu) 14:59 No.693  
「……で? ここ何処よ?」
……あ、デイパックだか何だか有るんだっけ。探そう、良し。
「…………あ。あれだ」
即発見でやったねラッキー♪
「さー中身はー?」ゴソゴソ
……
【煙草×12】
【ライター(油量満杯)】
【木刀】
……え、微妙。
いやいやまだ有る筈……。ガサゴソ
「あ、
【乾パン×3】
有った。……とりあえず妹探すかなー」
の前にニコチン補給〜♪
見つかる危険性高まるけどまーいっか。奈々が来るかもしれんし。まあその前に森だから見つけられない気がしますがそんな些細な事はどうでもよいのであった、まる
「ふー、このデイパックはアタリだったな。そんじゃまヨッコラセックス、と。……」テレテレ

あと四回投下します。
[50]投稿者:『三人の人間』◆gBrxZQCE 投稿日:2011/04/28(Thu) 14:59 No.694  
「……あー、何処?」
……そっか、神だか何だかほざいてた大馬鹿野郎に何かされたのかなー、きっと。とりあえず近くにデイパックが有る筈だから……わあ、私運良い。真横だよ。万歳。
……大きいな、このデイパック。まあとりあえずは中身を見なきゃ……。ゴソゴソ
【P-99(サイレンサー付)】
【P-99用弾丸50発】
【ドラグノフ(弾2発装填済)】
【空き缶(5)】
……え、何この素敵仕様。最高だね。やっほう。……でもなー、【ドラグノフ】かー。確かに威力、射程は申し分無いけど……弾丸数、発砲音の問題が有るから…………。とりあえず暫くは【99】で頑張ろうか。
持ち運びはデイパックに入れて持ち運べば良いかな。
……さーてとりあえずあの愚姉を見つけようかー。サバイバル慣れしてるとは言え一応心配だしねー。
……面倒くさい。やっぱり止めよ――ん? 何か嫌な臭い……煙草か! 誰だ吸ってんの!
[51]投稿者:『三人の人間』◆gBrxZQCE 投稿日:2011/04/28(Thu) 15:00 No.695  
「……中身がホント微妙すぎて泣けるね」
【??用の弾、10(ドラグノフ用の弾、10)】
【打ち上げ花火、二個】
【ライター、油残量・少】
【AK-47】
【AK-47用弾丸20】
【MK-30(50発装填済)】
……とりあえずはまあこの【AK】で頑張るか。
撃ち方位分かるんだよ銃(ガン)オタ舐めんなはっはー!
「……俺、空しいのは分かるが、落ち着こうぜ……」
とりあえずは2〜4人でパーティー組んで、最後のほうになったら死ぬかねー。どーせ自殺未遂の身体だ。……あ、でも死んだアイツ(火乃華)は違うか。もくとー。
「…………あーあ、暇だ」
……お、こっちからニコチン臭が……。クンカクンカ
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