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リョナゲ製作所バトルロワイアル 本編投下スレ その6

[1]投稿者:『放送が聞こえた気がするが気のせいだ』 その1 麺◆dLYA3EmE 投稿日:2010/04/30(Fri) 21:49 No.521  
死亡者を読み上げる下品な声。
その名前を聞いたナビィの手から、ショットガンが滑り落ちた・・・



「待てーっ!このエセメイドヲタ女ぁー!」
「待てと言われて待つ人がいるもんですか。」

店内をちょこまかと逃げ回るえびげんと、それを追いかける涼子。
既に5分近く経過しているが、どちらも諦める様子は無い。

「あ痛っ!」

アフロヘアが棚の角に引っ掛かり、涼子は思うように動くことが出来ない。
一方のえびげんは余裕の笑みを浮かべている。

「アハハッ!そんなんじゃいつまで経っても追いつけないわよ♪」
「うぐぅ〜っ、かくなる上は・・・」

涼子が急に動きを止めた。
それを見たえびげんが、ついに観念したかと思った矢先、

ガシャン!

えびげんの頭上で鏡が破裂した。
涼子の投げた商品の懐中時計が、鏡に命中したのだ。

「くっ、しまった!」

この店の天井には、所々に鏡が設置されている。
つい先程は、えびげんがこれを利用して涼子を追い詰めたのだが、まさか逆に利用されるとは思っていなかった。

「ふっ、防犯ミラーを笑う者、防犯ミラーに泣くのだっ!」
「うわ、それさっきの私のセリフ・・・なんて言ってる場合じゃないっ!」

頭上に無数の鏡の破片が降り注ぐ。
えびげんは咄嗟に側にあった洗面器でガードした。

「ふう、何とかやり過ごしたか・・・」
「隙ありーっ!」
「なっ!」

えびげんが鏡に気を取られている間に、涼子は数メートルの距離まで迫っていた。
しかもその手には、この店に置かれていた包丁が握られている。
このままでは殺られる、かと言って避けるにしても、鏡の破片が散乱していて足場が悪い。
絶体絶命のピンチに陥ったえびげんが取った行動は、

「攻撃は最大の防御!」

忍ばせておいたスペツナズナイフを取り出し、わずか0.1秒の早撃ちで刀身を射出した。

「その程度の攻撃、涼子さんには止まって見えるわっ!」

涼子が最小限の動きで攻撃を回避する。
しかし、それこそがえびげんの狙いだった。

「ふふっ、アフロって邪魔よねー♪」
「のわあぁっ!」

普段の髪型なら確実に回避できていただろう。しかし今の彼女はアフロヘア。
スペツナズナイフがアフロに突き刺さり、その衝撃で涼子はバランスを崩した。

「もう一度言うわ。防犯ミラーを笑う者、防犯ミラーに泣くのよ!」

涼子はそのまま、散乱した鏡の破片の上に倒れこんだ。
露出の多い服装の彼女にとって、これはかなり痛い。

「あだっ、がっ、いぃいっ!!」
「よし、今のうちに・・・」

痛がる涼子を尻目に、えびげんは落ちていたショットガンを拾い上げ、店の外に飛び出した。



「いつつっ、あのエセメイドヲタ女ぁー!」

涼子はとりあえず傷口にツバをつけて、えびげんを追って店の外に出た。
そして大声で叫ぶ。

「どこだーっ! 出て来ーい!」
「そんな大声出さなくても、すぐ近くにいるわよ。」

意外な返答に驚きながら、涼子は周囲を見回した。
しかし、えびげんの姿は見当たらない。

「という事は・・・上かっ!」
「ピンポーン。では正解者へのプレゼントでーす。」

ガンッ

涼子が上を見上げると、巨大な『まんゲフゲフや。』の看板が落ちてきた。
もちろん、えびげんの仕業だ。

「うわーっ! こんなのに潰されるのは嫌だあぁーっ!!」

ガシャーーン

大きな音を立てて看板が地面にぶつかる。普通の人間ならば大怪我は免れないだろう。
だが、涼子の場合は別だった。

「見切ったーっ!」

彼女は看板を回避し、さらにはそれを踏み台にして、屋根の上にいるえびげんに飛び掛かった。
常人では考えられない身体能力である。

「そんなっ!?」
「ふははははは! 涼子さんの底力、思い知ったか!!」
「・・・なーんちゃって♪」
「へ・・・?」

いつの間にか涼子に、ショットガンの銃口が向けられていた。
えびげんは、その行動を完全に予測していたのだ。
空中にいる以上、回避行動は取れない。引き金を引くよりも速く懐に飛び込むことも出来ない。
えびげんは自分の勝利を確信し、引き金を引いた。

ズドン!

ショットガンが火を噴く。その時涼子の体は・・・


その場所には無かった。

「な・・・何故っ!」
「説明しようっ! 涼子さんは空中でジャンプをする事で、二段ジャンプが出来るのだぁっ!」
「なにーっ、・・・ていうかそのまんまじゃない!」

涼子はえびげんの指の動きに全神経を集中させ、引き金を引くと同時に空高く飛び上がったのだ。
通常ならばその程度で銃撃が外れるわけがないのだが、えびげんにも油断があったのだろう。
銃弾は涼子の体に触れることも無く、どこか遠くへ飛んでいった。

「さあ、エセメイドヲタ女、覚悟しろー!」
「まさか避けられるとは思わなかったわ。でも・・・覚悟するのはあなたの方よ。」
「なっ・・・!」
「実は私も二段ジャンプが使えるのよ。だから・・・弱点もよく分かってる。」

えびげんはショットガンの銃口を涼子の着地点に向けた。

「弱点その1、高度が上がる分、無防備な落下時間が伸びる!」

さらに、引き金に指を掛けて狙いを定める。

「弱点その2、発動すると、一度着地するまで再使用できない!」

涼子も何とか回避しようとするが、この状況ではもはや不可能だ。

「ふふっ、今度こそ私の勝ちよ!!」

えびげんのショットガンが火を噴いた。



ガキイイイィン!!!

大きな金属音。

涼子の包丁が、弾丸を切り裂いた音だった。

「ふっ、またつまらぬものを斬ってしまった・・・」

無駄にポーズを決める涼子と、それを口をあんぐりとあけて見つめるえびげん。
暫しの静寂が訪れる。

しかし少し経って、えびげんがある事に気付いた。

「これ、散弾銃だから斬っても意味ないんだけど。」
「へ・・・」

どうやら、涼子は無我夢中だったために気付かなかったらしい。

「あべしっ!」

涼子はその場に倒れこんだ。あまりにも当然の結末であった。



【天崎涼子@BlankBlood 死亡】
[2]投稿者:『放送が聞こえた気がするが気のせいだ』 その2 麺◆dLYA3EmE 投稿日:2010/04/30(Fri) 21:51 No.522  
「って、勝手に殺すなー!!!」

えびげんがナビィの元に戻ろうとした時、背後から大声が聞こえた。
紛う事なき、涼子の声である。

「なっ、なんで撃たれたのに生きてるのよっ!」
「こまけぇこたぁいいんだよ!!」

死亡からの復活さえ正当化するマジックワード。
この言葉の前では、一切の論理が価値を失う。

「い、いや、そんな事あるはずない、何かトリックが・・・」

えびげんはうろたえながら、涼子の体を注視するが、どこにも銃弾の跡は見当たらない。

「ならばもう一発!」
「何発でも来いっ!」

えびげんはショットガンを構え、涼子に向かって発砲した。

ズドン!
ガキイイイィン!!!

先程と同じように、涼子の包丁が銃弾を切り裂く。
なぜ散弾を全て防げるのかは見当もつかなかったが、防がれているのは事実らしい。

「くっ、そんな幸運は何度も続かないわよ!」

さらにえびげんが引き金を引いた。

カチッ

(え・・・)

ショットガンは何の反応も示さない。いわゆる弾切れである。
普段ならば彼女がこんなミスを犯す事は無いだろう。
しかし、今回ばかりは銃が特殊すぎた。

(しまったああああぁぁっ、この銃、3発しか弾が入らないんだった!)
「えー、まじー、弾切れー? 弾切れが許されるのは小学生までだよねー。」

慌てるえびげんに対して涼子が憎まれ口を叩く。
しかしえびげんは反論すら出来なかった。

(とにかくリロードしないと・・・)

幸いにも、メイド服のポケットには数発の弾丸を潜ませてある。
戦闘中の再装填を想定しての備えだ。
えびげんは慣れた手つきで素早く3発の銃弾を装填した。
だが、涼子の速さはそれを上回っていた。

バシィ

涼子の蹴りが、えびげんの手からショットガンを弾き飛ばした。
そこからさらに、右手に持った包丁を突き出す。

「くらえ、涼子さん必殺の包丁スパイラル(今考えたー!)!!」



パーン

乾いた音。
包丁が刺さった音とは明らかに違う。
優位に立っていたはずの涼子は地面に倒れ、攻撃を受けたえびげんは無傷で立っていた。

「ふう、これは出来れば使いたくなかったなー。」
「イタタ・・・何、今の?」

えびげんの平手が、包丁を突き刺す直前の涼子にカウンターヒット。
しかもただの平手ではなく、メイド服で大幅に強化された一撃だ。
それを受けた涼子が数メートル吹き飛んだ事からも、その威力が伺える。
なんと拳銃をも上回る攻撃力で、射程が無いとはいえ十分に実戦で通用する。

「うわー、これはさすがに反則でしょー。」
「あら、今のはかなり弱い方なんだけど。」
「なんだってー!!!」

驚く涼子に対して、えびげんは得意げに説明する。

「両手で放てば威力は2倍!」
「2倍ぃっ!?」
「手をグーにすればさらに倍!」
「4倍ぃっ!?」
「ダッシュから放って3倍!」
「12倍ぃっ!?」

明らかにおかしな理屈だが、涼子は疑わずに計算している。
それを確認したえびげんは、最後の一言を言い放った。

「さらに・・・ピンチ補正で1.75倍!!」
「い、いぃっ!?」
(よし今だ、混乱してる。)

もちろん、えびげんは本気でこんな事を言っているわけではない。
武器を失った以上、素手で何とか対抗するしかないが、
単純に打ち合えばスピードで負けるのは明らかだ。
ならば、少しでも隙を作って先制の一撃に賭けるしかない。
そう判断して、ハッタリを使った作戦を考えたのだ。

「悪く思わないでよ。私だってこんな所で負ける訳にはいかないから。」

えびげんが混乱している涼子に突っ込んだ。

バキッ



すれ違う二人。
ダメージを受けたのは、えびげんの方だった。

「・・・あれ、21倍のパワーは?」

涼子が笑顔でえびげんに問いかける。

「そんなっ、今のわずかな時間で2ケタ×3ケタの掛け算を暗算したのっ!?」
「いや、そうじゃなくて・・・」

実際に計算する前に式変形をすると、より簡単な計算で解を求められる問題は多い。
1.75もその1つ。つまり、
12 × 1.75
= 12 × ( 2 − 0.25 )
= 12 × 2 − 12 × 0.25
= 12 × 2 − 12 ÷ 4
= 24 - 3
= 21
これなら暗算でも計算できる。

「そーゆーこと。」
「しまった、1.67とか適当な数字にしとくんだったああぁぁぁっ!」

後悔したが後の祭りである。
だが、ここでえびげんはある事に気が付いた。

「あれ・・・私、斬られたはずなのに・・・」

間違いなく腹の辺りに包丁が触れた感触はあった。
しかし、その部分を触ってみても、全く異常がない。
そして足元を見ると、金属の破片が散らばっていた。

「これは・・・まさか!」
「チェッ、バレたか。」

涼子が、柄だけになってしまった包丁を見せる。
日本刀ですらマシンガンの前には無力なのに、調理器具では銃弾に耐える強度があるはずもない。
ショットガンの弾を切り払えば、ボロボロになるのは必然だ。
加えて、えびげんのメイド服は特殊繊維で作られており、その強度は鎧をも上回る。
その結果、包丁の刃がバラバラに弾け飛ぶという珍事が起こったのだ。

「ふふっ、つまりこれで、お互いに武器は無し。同条件という事ね。」
「さーて、それはどうかなぁ〜」

えびげんの問いに涼子が勝ち誇ったような笑みを浮かべて答える。
涼子は今の一瞬で、自分と相手の戦闘能力を比較した。
パワーは相手の方が上だが、スピードでは自分のほうが圧倒的に上。
殴り合えば、勝てる。

「触れられないスピードに、パワーは無力だぁ!」

そう叫んでえびげんの懐に飛び込み、流れるような連続攻撃を叩き込む。
えびげんはガードするのに精一杯で、反撃のチャンスを見つけられない。

「これで、とどめだぁっ!」

涼子がひときわ大きく右腕を振りかぶる。

「・・・詰めが、甘い。」

だが、えびげんはその隙を見逃さなかった。

「さっき武器は無いって言ったけど、アレ、嘘なのよね。」

彼女の右手に握られていたのは、最後の一本のスペツナズナイフ。
この僅かな時間で取り出し、さらに射出するのは極めて難易度が高いが、彼女の能力なら問題ない。

「スペツナズナイフ、発射っ!」

バシッ

しかしそのナイフが射出される事は無かった。
涼子がそれより僅かに速く反応し、武器を取り上げたのだ。

「気付いてたよ。プロは一本しかないナイフを序盤で使っちゃうなんて事しないから。」

涼子はこのえびげんの行動を完全に読んでいた。
その上であえて、ナイフを取り出す隙を与えたのだ。
狙いはもちろん、武器を奪うこと。
かくしてその作戦は成功し、彼女の手の中にはナイフがある。

「え・・・これって・・・」

えびげんは気付いてしまった。
武器を持った涼子とこの至近距離で相対しているという、極めて危険な状況に。

ズブッ

「がっ、はっ・・・ぁ・・・」

涼子のナイフが、腹に深々と突き刺さった。
えびげんは気を失い、その場に倒れこんだ。
[3]投稿者:『放送が聞こえた気がするが気のせいだ』 その3 麺◆dLYA3EmE 投稿日:2010/04/30(Fri) 21:51 No.523  
えびげんを撃退した涼子。
しかし、また新たな敵が背後に迫っていた。

「・・・殺気!!」

気付いた時には既に遅かった。

バキッ

鋭い拳が涼子の背中を捉える。

「がぁっ・・・な、何が・・・」

バキッ

状況が飲み込めないまま、顔面に次の一撃を受ける。

「あ、あんたは・・・」
「・・・許さない!」

体勢を崩したところに、とどめの一撃が叩き込まれる。

グシャアッ

強烈な正拳が腹に突き刺さる。
涼子はその衝撃で吹き飛ばされ、十数メートル先のの壁に叩きつけられた。

「はぁ、はぁ・・・何なのよいきなり・・・って、聞くまでもないか。」
「えびげんさんは・・・殺させない!!」
「ああ、やっぱり。」

涼子は戦いの中で忘れていたが、えびげんには仲間がいた。
それが、今目の前にいる獣耳のモンスターっぽい奴、ナビィだ。
そんな相手がこの状況で飛び出してくる理由なんて、一つしかない。

(はぁー、つってもちょっとキツいかな・・・素手だと。)

えびげんから奪ったナイフは、まだ彼女の腹に刺さったままだ。
突然の襲撃を受けたために、つい手を放してしまったのだ。
ナイフさえあれば大抵の相手には負ける気がしないが、格闘術に関しては素人。
一方の相手は、さっきの三連続攻撃を見る限り、相当なレベルの技術を持っている。
たとえ身体能力で上回っていたとしても、勝ち目は薄い。

(でも・・・スピードなら私の方が、速い!)

ダッ

ナビィが涼子にとどめを刺そうと、大地を蹴った。
涼子もそれに呼応して、ナビィに向かって走り出す。
ナビィはその行動にやや驚きながらも、すぐにその狙いを直感した。

(右か・・・左か・・・)

少なくとも、このまま激突する事は考えにくい。また、そうなっても勝つ自信がある。
警戒すべきは、こちらの攻撃を左右に避けた上でのカウンターだ。
ナビィは、僅かな前兆も見逃さないように、涼子の身体の動きに神経を研ぎ澄ませた。

(見えたッ!)

涼子の右足が、ナビィから見て右側に流れた。それと同時に上半身も少し右に傾く。
それを見たナビィは、半歩右にずれて攻撃を仕掛けた。

「そこだぁっ!!」

スカッ

しかし、その場所に涼子の姿は無い。

「いやー、反応が良すぎるのも考えものだよねー。」

スピードを落とさずに左足を交差させて、右足を踏み出した方向とは逆に曲がる。
相手を避ける走りの高等技術だ。
極めれば、相手の目にはあたかも一瞬で視界から消えたように映るという。

「でもそんな体勢からじゃ、反撃は・・・」
「しなくていーよ。」

涼子の狙いはただ一つ。えびげんの腹に刺さっているナイフを奪い取る事。
そのためには別にここで攻撃する必要は無い。

「ナイフ、獲ったどぉー!!」

叫び声を上げてナイフに向かってダイブする。
しかし、ナビィも黙ってはいなかった。

ゴオオオォォッ

「うわぁちぃっ!」

突如上がった火柱が涼子を襲う。ナビィの魔法だ。

「もう・・・怒ったんだからっ!!!」
「・・・っ!!!」

炎で怯んだ涼子に、ナビィの必殺技が叩き込まれる。



「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」

倒れたえびげんの側に、息を切らしたナビィが立っている。

「逃げた、か・・・」

あの瞬間、ナビィの様子から命の危険を察知した涼子は、一瞬の判断でナイフを諦め、その場を去った。
ナビィにとっては、倒す事こそ出来なかったものの、えびげんを守れたという意味では十分な戦果だ。

「えびげんさん、大丈夫、だよね・・・」

彼女はいまだ気を失ったままだが、胸の動きから辛うじて呼吸は確認できる。
しかし、極めて危険な状態であることは、ナビィの目にも明らかだった。

「エマ、カナリア、明空、美奈、エリナ、なぞちゃん・・・うっ・・・」

この6時間で犠牲になった仲間達の名前。
皆、出会ってからそれ程長くは経っていないが、彼らが死んだ事は彼女に大きな衝撃を与えた。

「もう、嫌だよ・・・こんな思いは・・・」

涙を流し、呟く。
それとともに、残った仲間達―――えびげんや、行方の知れないクリス達は、
絶対に死なせないと、誓いを立てるナビィであった。



涼子は、万屋から離れた建物に、一時身を潜めていた。

「痛ッ・・・さすがにあれだけ喰らえばキツいかぁ。」

ガラスの破片に、平手、格闘技、炎。それに加えて以前に受けた腕の傷もある。
いくら涼子とはいえ、そろそろ休まないと厳しい。

しかし彼女には、ゆっくり休んでいられない理由があった。
それは、万屋に置いてきてしまった荷物。
中には全く役立ちそうに無いものもあったが、トレジャーハンターの彼女にとって実用性は二の次。
せっかく手に入れたものを手放すという行為そのものが、許せないのだ。

そして、もう一つの理由は、

「晩ご飯がたこ焼き一箱じゃ全然足りな〜い!」

せめて、荷物の中の食料を確保しなければ、気分的に飢え死にしてしまう。
さらに欲を言えば、デザートのゼリーも手に入れたい。

「ん・・・ゼリー・・・?」

ここで涼子は気付いた。隣の部屋から甘い匂いが漂っている事に。
誘われるままそこに入っていくと、そこは・・・

「お菓子屋さんだぁーっ!!」

この日一番の喜びの声を上げた涼子。
痛みも疲れも忘れて、大好物のゼリーに飛びついたのだった。





【A−2:X4Y3 / 商店街(万屋の前の道路) / 1日目:夜】


【ナビィ@リョナマナ】
[状態]:健康
[装備]:カッパの皿@ボーパルラビット
    スペツナズ・ナイフx1@現実
[道具]:デイパック、支給品一式(パン1食分消費)
    (以下、涼子の荷物)
    デイパック、支給品一式×4(食料のみ23食分)
    エリーシアの剣@SILENTDESIREシリーズ(真っ二つに折れている)
    防犯用カラーボール(赤)x1@現実世界
    ライトノベル@一日巫女
    怪しい本@怪盗少女
    カザネの髪留め@まじはーど
    銘酒「千夜一夜」@○○少女、
    眼力拡大目薬×3@リョナラークエスト
    油性マジック『ドルバッキー(黒)』@現実世界(新品、ペン先は太い)
    運命の首飾り@アストラガロマンシー
[基本]:対主催
[思考・状況]
1.えびげんは死なせない
2.クリス、ミア、初香を探す
3.キング・リョーナの行いをやめさせる

※モヒカンと涼子を危険人物と判断しました。
※参加者がそれぞれ別の世界から集められていることに気付きました。
※第2回放送を聞きましたが、死亡者にショックを受けて禁止エリアは頭に入っていないかもしれません。



【えびげん@えびげん】
[状態]:腹を刺されて気絶、命には別状無し
[装備]:ショットガン(残弾数3+11)@なよりよ
    スペツナズ・ナイフx1@現実(腹に刺さってる)
    メイド服@えびげん
[道具]:デイパック、支給品一式
    パンダのきぐるみ@現実世界
    豹柄ワンピース@現実世界
    ウェディングドレス(黒)@現実世界
    ビキニアーマー@現実世界(コスプレ用のため防御力皆無)
    コードレスアフロセットマシン@バトロワ(後3回使用可能、アフロ化と元の髪型に戻すことができる)
    コードレスアフロセットマシン専用充電器@バトロワ(使用には家庭用100V電源が必要、コード長1m)
    油性マジック『ドルバッキー(黒)』@バトロワ(おろしたて、ペン先極太)
[基本]:ハデ夫をぶちのめしたい
[思考・状況]
1.気絶中

※モヒカンと涼子を危険人物と判断しました。
※参加者がそれぞれ別の世界から集められていることに気付きました。
※第2回放送を聞いていません。



【A−2:X1Y3 / 商店街(お菓子屋) / 1日目:夜】


【天崎涼子@BlankBlood】
[状態]:疲労、左腕に中程度の切り傷(水とハンカチで処置済み)、
    殴られた痕、ガラスの破片による切り傷、火傷、
    アフロヘア、顔にちょびヒゲの落書き
[装備]:無し
[道具]:無し
[基本]:一人で行動したい。我が身に降りかかる火の粉は払う。結構気まぐれ。
    でも目の前で人が死ぬと後味が悪いから守る。
[思考・状況]
1.ゼリーを食う
2.万屋に戻って食料、もとい荷物を取り返す
3.そう言えば奈々はどうしてるだろう、と思っていないわけじゃないかもしれない。

※ナビィ、クリス、明空、伊予那、エリナ、えびげんをモンスター、もしくはモンスターの仲間だと思っています。
※第2回放送を聞いていません。
[4]投稿者:麺◆dLYA3EmE 投稿日:2010/04/30(Fri) 21:57 No.524  
【あとがき的な】

和解? 合流? 共闘?
私の辞書にそんな文字は(略)
まあ何となく戦わせてみたかったわけです。
えびげんさんのプログラムのテストに涼子さんが使われたという因縁?もある事ですし。

それにしても、涼子さんはいったい何種類の武器を使うことになるんだろう。
[5]投稿者:勇者降臨 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2010/05/17(Mon) 19:28 No.529  
癇に障る放送が終わると辺りは急に静けさを増した。
ついさっきまで窓をたたいていた雨はぴたりと止み、今は音もなく白い雪片が舞っている。
部屋にはまだ蒸し暑い空気が残っていたが、窓の隙間から冷やりとした外気が滑り込んできて急激に室温を下げる。

かすかな門番の寝息を背景に八蜘蛛は机に広げた地図から目を上げた。
もう一度さっきの放送の内容を頭の中で反芻して顔をしかめる。

ロシナンテが死んだ、どうやらそれは本当らしい。
別にその死を悼んでいるわけではない、ただ強い衝撃を受けていることは事実である。
ロシナンテは強かった、魔王三将軍筆頭の肩書きは伊達ではなく、あの凄まじい炎の前では自分の糸など何の役にも立たない。
相性の悪さを差し引いたとしても歴然とした力の差が自分とあいつの間にはあった。

しかし、そのロシナンテはあっけなく死んでいた。
しかも条件次第では魔王軍最強と目される門番まで、さっきの戦闘では壊滅的なダメージを負っている。
最初の放送を聞いていないので断定はできないが、この分では萩が生きている可能性は限りなく低そうだ。

殺し合いが始まって最初に出会った金髪の女、人の体を乗っ取る蛇のような化け物、巨大な怪物を操る老人、そして自分の理解を超えた恐るべき力を持った少女。
今一度、認識を改めなくてはならない。
自分はまだまだこの殺し合いのレベルを甘く見ていた………否、今も甘く見ているのかもしれない。
この先、ここまでの戦いを勝ち抜いてきた更なる猛者たちが立ちはだかってくるのかと考えると背筋に嫌な寒気が走る。

(とにかく、今は体力の回復を優先しないと)

ちらりと門番のほうを見やると、場違いなほど幸せそうな顔ですやすやと寝息を立てている。
一人で動き回るのは危険だが眠っている門番を起こすなどそれこそ自殺行為だ、問答無用で切り殺されかねない。
ここは多少の危険を冒しても一人で行くしかないだろう。
それに用はすぐに済む。

新たに二つ禁止エリアが書き込まれた地図をデイパックにしまうと、門番を起こさないよう注意しながら八蜘蛛は静かに動き出した。



「うっ……」

扉を開けると吹き込んできた冷気に思わずひるみ、再び体に震えが走る。
寒さのためばかりではない、最も恐ろしい男の存在を思い出したからだ。

(天候を操るなんて………どこまで出鱈目な力なの……)

キング・リョーナ
今この島にいるすべての参加者を集めた男。
あの男を何とかしなければたとえ生き残ったとしても……
それ以上は考えないことにした、とにかく今は目先の目的を果たすとしよう。

八蜘蛛が出てきたのは先ほどの戦場から程近い小さな民家だった。
あの戦闘のあと、今にも倒れそうな門番を引きずってこの家に入った、すると門番はすぐさまベッドで寝息を立て始め、それと同時に放送が始まって今にいたる。

放置されたままのレボワーカーには近づかないようにして、八蜘蛛はまず少しでも体力を回復するために、シノブの亡骸から養分を吸い取ろうと試みた。
しかし、もともと異常な速度で生命力を消費していたうえに、門番の“自虐無間”を受けたシノブの体からは全く養分を吸収することができなかった。

(まあいいわ、期待はしてなかったし)

建物の間の路地にはルカの入った繭が置いてあるが、今あれから養分を吸収したらそのまま殺してしまいかねない。

ひとまず養分の吸収をあきらめた八蜘蛛は、あたりに散乱したままになっていた門番のデイパックを漁り始めた。

「なにこれ………枕? まぁ、あいつらしいといえばらしいけど……」

それこそ門番を起こす秘密兵器なのだが八蜘蛛はそんなことを知る由もない。
他にもどこの国のものかわからない金や、魔力のこもった杖なども出てきたがどれも八蜘蛛には必要のないものばかりだ。

ちっ、と辺りをはばかることなく大きな舌打ちをひとつ、ここまでは当てがすべて外れてしまった。しかし、まだひとつあてが残っている。

「出てらっしゃい」

どこへともなく声をかけると、どこからともなく一匹の大きな蜘蛛が現れた。
八蜘蛛の手下のヨツメグモである。
その蜘蛛を手のひらに乗せると、八蜘蛛の顔に満足げな笑みが浮かんだ。

「よくやったわね、もどってなさい」

八蜘蛛の言葉とともにヨツメグモはどこかに消えていた。
そのとき再び背筋に震えが走った。

「……寒いのは苦手なのよね。さっさと済ませましょう」

どこまでも広がる鈍色の空を忌々しげに見上げると、まだ治りきらない足を引きずりながら、八蜘蛛は町の出口へと向かっていった。





ちらちらと粉雪が舞い散る中、もくもくと歩いている少女がひとり。
初香である。

初香は震えていた。
唇は紫色になり、肩を抱きながら震えていた。
それもそのはず、彼女の服装はTシャツ一枚にスカート、その上下着もはいていないというこの気温のもとでは厳しすぎるものだった。
しかも彼女は裸足だった。
さっきまで雨に打たれていた地面はぬかるんで、半凍りの泥が容赦なく足に噛み付き、もはや足の感覚がなくなっていた。

それでも初香は止まらなかった、なぜなら彼女には時間がなかったから。
先ほどの放送で運悪くD-5が禁止エリアに指定されてしまった。

不幸中の幸いだったのはD-5が禁止エリアになるのは四時間後だということだ。
それまでになんとしても豪華客船にたどり着き、首輪を解除するために必要な道具を集めなくてはならない。
もしできなければ、自分が見捨てた美奈に申し訳が立たない。

(美奈………)

放送が始まったとき、ほんの少しだけ期待していた。
もしかしたら、何か奇跡が起こって美奈は生き延びているかもしれない、と。
しかし希望はあっさりと砕かれてしまった、そんな都合のいい奇跡は起こらなかった。
美奈はたしかに死んだのだ。

それから初香はずっと歩き続けている。
今、初香は道沿いに廃墟を少し過ぎたあたりを歩いていた。
本来なら、豪華客船へは橋を渡っていったほうが近いのだが、その進路はとらなかった。
橋の手前で死体を見つけてしまったのである。

あたりにはすでに夜の帳が落ち始めている。
都会の夜闇とは全く違う、真の暗闇がもう間近に迫っていた。
厚い雲に覆われた空には月明かりもなく、懐中電灯も持っていない初香にはほとんど何も見えない。

(真っ暗になる前に早く行かないと、道に迷ったりしたらそれこそおしまいだ)



そのとき突然、右手の茂みの中から何者かが飛び出してきて、一筋の光が初香の顔をまっすぐ照らし出した。
[6]投稿者:勇者降臨 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2010/05/17(Mon) 19:30 No.530  
森の中で、ずっとへたり込んでいる少女が一人。
伊予那である

伊予那はずっと動けずにいた、あの放送で桜の名前を聞いたときからずっと……

(桜が……桜が……)

桜が助けに来てくれない理由は実に単純明快だった。
桜はもうこの世にいなかったのだ、助けに来ることができなかったのだ。
やっと一歩を踏み出した瞬間に深い落とし穴に落ちてしまったような感覚だった。

(わたし………どうしたら……)

右手に握っているものに目が吸い寄せられる。
さっきはすべてが夢だと思っていた、だから夢から覚めるためにこれを使おうとした。
でも今は、すべて現実だと判っている、だからこそ、この現実を終わらせるために、どこまでいっても絶望しかない現実を終わらせるために、これを使って……

(だめだよ、そんなの……だってエリナさんは私を守るために………)

いままで何度も危険な目にあった、そのたびに彼女が守ってくれた、そしてついには命を落としてしまった。
彼女が命がけで守ってくれたこの命を簡単に捨てるわけには行かない。

(わたし、守られてばっかりだ、桜にも、エリナさんにも)

しかし、自分が彼女たちに恩を返す機会は永遠に失われてしまった。
もう彼女たちは………いない。

(桜………)

そしてまた視線が右手に吸い寄せられる。

もう何度この堂々巡りを繰り返しただろう。
雪が降っていることにも、体が氷のように冷え切ってしまっていることにも気づかず、伊予那はただ座り込んでいた。

しかし、永遠に続くかと思われた思考の空回りは突然破られた。

「ふぁ………くしゅん!」

寒さに耐えかねた体がくしゃみをしたのである。

「あ、雪……」

いまさら雪が降っていたことに気づいて、そんな呟きがもれた。

(魂みたい)

突然ここにつれてこられて、わけもわからないまま理不尽に殺された人たちの魂が成仏できずに彷徨っている、伊予那にはそんな風に見えた。
そっと、一粒手にとってみると、信じられないほど冷たかった、まるで殺された人たちの無念がこもっているかのように。

(桜は……ちゃんと成仏できたかな………)

ひょっとすると桜も成仏できずに彷徨っているかもしれない、そんな風に考えるとやりきれなかった。

そのとき、伊予那のもとに天啓が降ってきた。

(もし桜が成仏できずに、今もこの世を彷徨っているとしたら………)

もしかしたらもう一度、桜と話ができるかもしれない。

伊予那は目を閉じて、全神経を集中させて、桜の気配を探ってみる、そして強く心の中で呼びかけてみた。
もう触れることもできないだろうけど、せめて一言「ありがとう」と伝えたかった、別れの言葉を告げたかった。

しかし、

「…………だめだ」

返ってくる声は、ひとつもなかった。

自分がもっとちゃんと巫女としての修行を積んでいれば、桜と最後の会話ができたかもしれないのに……
伊予那はいまさらそんなことを激しく後悔し、悔しさに打ち震えた。

あるいは、桜はちゃんと成仏できたのかもしれない。
それならば喜ぶべきことだが、やはりどこか残念だと思う気持ちを捨て切れなかった。

もしかしたら本当は死んでいないのでは? という考えは残念ながら思い浮かばなかった。

「行かないと」

ぼそりとつぶやくと、伊予那は再び立ち上がった。
何の希望も見えなかったけど、とにかくこの命を捨てるわけにはいかない。

(行かないと……でもどこへ? そうだ、アクアリウムだ)

エリナさんが目指していた場所、あそこへ行けば何かあるかもしれない。
デイパックの中から懐中電灯を取り出して明かりをつける。

(ここは、どこだっけ?)

確か廃墟の近くの森の中だったはずだ。
でも、気絶したり、呆然としていたりで方向感覚がおかしくなっている。
いったん廃墟まで戻ってから方向を確認したほうがいいかもしれない。

(確か北東のほうだったはず)

そう思って、来た道を戻り始め、森を抜けたとき、ぺちゃぺちゃと裸足で泥道を歩くような音が聞こえた。
あわててそちらのほうに懐中電灯を向けると、

「うっ!」

そこには、まだ小学生ぐらいの女の子がいた。
その少女はひどい格好だった。
雪が降っているというのに、真夏に着るような薄手の服を着ていて、その上靴も履いておらず、ところどころに包帯を巻いていたり、青あざがあったりと満身創痍のありさまだ。

(ああ、この子もきっと何度もひどい目にあったんだろうな)

「だれ!」

鋭く問いかけてきたが、その声には全く張りがなくから元気を振り絞っているのは明らかだ。

「大丈夫、なにもしないよ、わたしは神代伊予那」
「…………」

少女はまだ警戒してこちらを観察している。
やがてその目が伊予那の右手で留まった。
そこに握られていたのは、

「あ……大丈夫、何もしないから」

伊予那は敵意がないことを証明するために両手を挙げる。
銃を持っているほうが手を挙げているという、傍から見ればおかしな構図だ。

やがて伊予那の思いが伝わったのか、少女は

「登和田……初香」

と、小さく名乗った。

それから二人は一緒に行動することとなった。
初香は豪華客船に首輪を解除するための道具を探しに行きたいらしい。
伊予那はアクアリウムに向かう予定だったが、特に明確な目的があったわけではなかったので初香に付き合うことにした。
それに、初香はもうすぐ夜だというのに初香は懐中電灯も持っていなかった。

初香はまだ自分のことを完全に信用してくれてはいないようだった。
懐中電灯を持っている自分が先を歩くのはある意味当然かもしれないが、なんとなく背中を見せたくない、という感情が読み取れるのだ。



そうして道なりにしばらく行くと明かりが見えてきた。
懐中電灯の無機質な明かりではない、揺らめく炎の明かりだ。
[7]投稿者:勇者降臨 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2010/05/17(Mon) 19:30 No.531  
ぱちぱちと、子気味のいい音を立てて炎が踊る、それを見つめている少女が一人。
りよなである。

いや、見つめているという表現は正しくない、彼女は目が見えないのだから。
彼女は今日突然ここに連れてこられてから今までのことを反芻していたのである。
そして思い返せば思い返すほど、自分が犯した罪に恐れ慄いた。

どうかしていた………

なよりを生き返らせることが唯一絶対に正しいことだと思った、そしてそのためならどんなことをしても許されると思った。

「りよな、無事、ね…逃げて…」

あの言葉を聴いたとき、頬を思いっきりはたかれたような気がした。
搾り出すような、ルカの言葉の一語一語がゆがんだ妄想に憑つかれていた頭を揺さぶった。
あの苦しげで、慈愛に満ちた言葉が、どんな暴力や罵倒より痛く、胸に突き刺さった。

きっとああいうものなのだ、誰かを守りたいとか、助けたいと思う気持ちは。
なよりもきっと、そういう思いで今まで私に接してきてくれたに違いない。

(それなのに、わたしは………)

さっきの放送でルカの名前は呼ばれなかった。
でも、あのときのルカの声は、目の見えないりよなにもわかるほど弱りきっていた。
あの場をルカが逆転できたとは思えない。

「……リヨナ……お願い、考え直して……貴女の妹はそんなことを望んで……」

今度はエリーシアの言葉が、頭の中に響く。

もちろんなよりはこんなことを望んでいないだろう。
私がこんなことをしたと知ったら、きっとなよりは私を軽蔑する。
もう私を姉だと認めてくれないかも知れない。

心がどんどん冷え込んでくる。
ガチガチと震えて歯の根が合わない。
サラマンダーで焚き火の火をさらに大きくするが、心はいつまでたっても温まらない。

(生きたまま炎に焼かれるのは、どんなに苦しいんだろう)

恐る恐る、燃え盛る焚き火に手をかざしてみる。

「……!!」

しかし、あまりの熱さに一瞬で手を引っ込めてしまった。

「なより……エリーシアさん………ルカさん…………ごめんね、ごめんなさい、ごめんなさい………」

誰にも届かない贖罪の言葉を口にすると、光を失った瞳からとめどなく涙があふれてきた。

「……あ、あの」
「!!!」

あまりのことに飛び上がったりよなは、自分が使っていた杖を踏みつけて再びしりもちをついてしまった。
気づかないうちに自分のすぐそばに誰かがいたのだ。

「あ、大丈夫です! 私たち怪しいものじゃありません」

驚きのあまり腰が抜けてしまったりよなは、手探りで杖を探し当てると、それを支えにしてよろよろと立ち上がった。

「驚かせてしまってすいません。あ、これ落としましたよ」
「え?」

落とした?
一体何を?

「これ、なんなんですか? さっきこれから火を出してたみたいに見えたんですけど」

サラマンダーだ!

りよなは内心冷や汗をかいた。
自分の唯一の武器を取られてしまったのだから当然である。

何者かの手がそっと自分の手に触れて、りよなはびくりと震えた。
どうやらサラマンダーを返してもらえたらしい。

「ひょっとして君、目が見えないんじゃ」
「!!」

もうひとつ別の声がして、再び飛び上がりそうになった。

「え、目が……まさか誰かに」
「う、ううん、これは……生まれつき」

しどろもどろになりながら何とか返事をする。
ほっと、安堵のため息が聞こえた。

「あの、ひとり、ですか?」
「う、うん。仲間とはぐれちゃって……」

心の中で自分を責める、よくそんな事が言えたものだ、仲間は自分が殺したんじゃないか、と。

「よかったら一緒に行きませんか?」
「え? なんで?」
「なんでって、目が見えないのに一人なんて危ないでしょう」

りよなは驚愕した、この人は同じだ、ルカやエリーシアたちと。
この場において足手まといにしかならないであろう自分を、損得抜きで迎え入れてくれる、そんなひとだ。

「えーと……お名前は」
「籠野 りよな」
「籠野さんですね、わたしは神代 伊予那です」

伊予那と名乗った少女はかわいらしい声でたぶん年は自分と同じぐらいだろう。

「ぼくは登和田 初香。よろしく」
「よろしく」

初香と名乗った……おそらく少女は、どことなく大人びているがあどけなさも残る声で年はよくわからない。

「早速だけど、ぼくたちは今、豪華客船に向かってるんだ。そこにこの首輪をはずせる道具があるかもしれないと思って」
「豪華客船……」

そういえば、こんなことになってすっかり忘れていたが、自分はなよりとお母さんとお父さんと船に乗って旅行に行くことになっていたんだ。
こんなことに巻き込まれなければ今頃きっと、なよりと船の上で笑いあっていたに違いないのに……

「………………というわけで、できるだけ急いでいかないといけないんだ。……聞いてる?」
「え? う、うん」
「………」

しばらく気まずい沈黙が流れた。

「あれ、籠野さんそれは……」

沈黙を破ったのは伊予那だった。

「やっぱり、赤いお札だ!」

赤いお札?
さっき拾ったあれのことだろうか。

昏い街でルカを置いて逃げた後、森の中で見つけたものだ。
それが何かはわからなかった、お金にしてはサイズも手触りも違うし、封筒でもない。
何かはわからなかったが、なんとなく持っていったほうがいいと、そんな予感がした。
探してみると同じものが周りにも散らばっていて、全部で五枚あった。

なよりは知る由もないことだが、それはもともとリョナたろうに支給されたもので、リネルとの戦闘で置きっぱなしになっていたものの一部が風で飛ばされてきたのだった。

「これ、貸してもらっていいですか? 私、使い方がわかるんで」
「どうぞ……」

りよなはポケットにいれておいたお札を五枚とも伊予那に渡した。
お札というからには悪霊退散の効果でもあるのかもしれないが、りよなには必要のないものだ。

「ありがとうございます」
「それじゃ、そろそろ行こうか」

初香と名乗った少女は大して興味がなさそうだ。
幽霊とかの類は全く信じていないのかもしれない。

「あれ?」

初香の号令で一歩歩き出そうとしたとき、また伊予那が声を上げた。

「籠野さん、肩に何かついてますよ。なんだろ? これ? 蜘蛛の……糸?」



その瞬間、何かが起こった。
しかし、目の見えないりよなはもちろん、初香にも伊予那にも何が起こったのかわからなかった。
気がついたときには三人とも、蜘蛛の巣に絡めとられ身動きが取れないほどきつく縛り上げられていたのだった。
[8]投稿者:勇者降臨 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2010/05/17(Mon) 19:31 No.532  
八蜘蛛は大いに不満だった。
寒い中、痛む足を引きずって延々と歩き回らされたのだから当然だ。
しかし、その光景を見たとたんそんな不満は一瞬で吹き飛んだ。

八蜘蛛はりよなが逃げるとき、ひそかに手下のヨツメグモを放ち、蜘蛛の糸をつけておいたのだ。
その糸をたどって行き着いた先には、なんと三人もの活きのいい獲物がいた。
いずれも十代前半の瑞々しい少女、獲物としてはこの上ない上物だ。

気づかれないよう、気配を殺して忍び寄る。
ここで気づかれて逃げられてしまえば、この足で三人とも残らず捕まえるのは難しいだろう。

そして、三人のうち一人が糸に気づいた瞬間、足に糸を絡め一気に森の中まで引きずりこむと、あらかじめはってあった蜘蛛の巣に三人とも磔にしてやったのである。

「な、なにこれ!」
「蜘蛛の糸!? うぐぅ、切れない」

蜘蛛の糸は見ため以上に丈夫で、非力な少女たちでは絶対に抜け出すことはできない。
しかも彼女たちの武器は、最初の不意打ちを受けたときにすべて落としてしまい足元に散らばっていた。

「久しぶりね、確かりよなだったっけ? ま、どうでもいいわ」
「そ、その声は確か……」
「そ、あんたたちが助けたかわいそうな女の子よ」

クスクスと人を馬鹿にしたような忍び笑いがもれる。

「全く馬鹿よね、あんたたちも。本当に危険なのは誰か全くわかってないんだから」
「………ルカさんは、どうしたんですか」

りよなは震える声で問いかける。
それを聞いた八蜘蛛の顔に残忍な笑みが浮かぶ。

「ふふ、そんなに気になる? 自分が殺そうとした仲間のことが」

その言葉にりよなはびくりと大きく肩を震わせると、うつむいて黙ってしまった。

「え? ど、どういうことですか?」
「やっぱり知らなかったのね。ま、当然か。」

困惑する伊予那を前に八蜘蛛の笑みがさらに残忍さを増す。

「そいつはね、自分の仲間を殺そうとしたのよ。おっと、そういえばその前にも一人殺してるんだったっけ?」
「か、籠野さん、本当?」

りよなはうつむいたまま何も答えない、それが答えだった。

「そんな………」
「何でも優勝して殺された何とかってのを生き返らせてもらうんだっけ? 
おめでたいわね、あの男がそんな願いを叶えてくれるわけないでしょう」

そんなことはりよなにもわかっている、わかっていてもすがりつかずにはいられなかったのだ。

「そうそう、あいつはまだ生きてるわよ。あれは私の家畜にすることに決めたから」

その言葉にうつむいていたりよなが、見えない目を見開いて顔を上げた。

「か……ち…く………?」
「さて、おしゃべりはこのくらいにしましょうか、出でよ! わが眷属たち」

八蜘蛛はりよなの言葉を無視して手下を呼び出した。
その言葉を合図にどこからともなく現れた二匹の大きな蜘蛛が、初香と伊予那に向かっていく。
さすがの初香も人間の胴体ほどもある蜘蛛を前に真っ青になり、そして虫が大嫌いな伊予那はパニック状態に陥っていた。

「いや、いやいやぁ! 来ないで! 助けて! 桜、たすけてぇ!!」
「……桜?」

小さく八蜘蛛がつぶやいた。
伊予那はそれを聞き逃さなかった。

「桜を……知ってるの」
「ええ、知ってるわよ。そういえば、親友を助けないといけないとか言ってたっけ」
「ま、まさか桜もあなたが………」

伊予那は今、自分が体長五十センチはあろうかという蜘蛛に襲われていることも忘れて八蜘蛛の答えを待った。

「残念ながら違うわ。わたしはただ見てただけ」

八蜘蛛の答えは伊予那の予想とは違うものだったが、しかし、

「それにしても人間ってのはどいつもこいつも単純よねちょっとか弱いフリをすればコロッとだまされて私の身代わりになってくれるんだから特にあんたの友達は傑作だったわ

伊予那は震えていた、恐怖のためではない

単細胞が服着て歩いてるようなやつだったからあっさり私の言うことを信じて私を守るとかって言っておきながら最期は適うはずない化け物に挑みかかってあっさり犬死していった

そんなものは焼き尽くすほどの怒りが、伊予那の中で燃え上がっていた

剣で串刺しにされてもまだ健気に生きててねびくびく痙攣しながら必死に最後の一撃食らわしていかにもやりきったって顔して死んでたわよ馬鹿みたいでしょ自分が死んでも他人を守ろうなんてまさに馬鹿としか………」

「……らを…………」

「………?」

強い意志は力となって

「桜を馬鹿にするなああぁぁ!!」

眠っていた能力を呼び覚ました

こんな華奢な体のどこからそんな声が出るのかと思うくらいの怒声があたりに響く、八蜘蛛は伊予那の中に強い魔力のようなものを感じ取っていた。

(怒りで覚醒ってやつ、くだらない、そんなものでこの八蜘蛛さまが……)

そのとき地面に散乱していたお札がいっせいに中に舞い上がった。

「なっ!」

慌てて糸を放って撃墜しようとするが、お札は一枚一枚がまるで意思を持って動いているかのような動きで八蜘蛛を翻弄する。
そして一枚のお札が八蜘蛛をめがけて一直線に飛んできた。

万全の状態なら問題なく回避できたであろう、しかし治りきっていない足に痛みが走り、一瞬無防備になってしまった八蜘蛛の顔にべったりとお札が張り付く。

「くっ!この、離れなさい、離れ………」

次の瞬間、お札が真っ赤に燃え上がった。
耳をふさぎたくなるような絶叫があたりにこだまする。
それと同時に八蜘蛛を中心として張り巡らされていた蜘蛛の糸がお札の炎で焼ききれ、初香たちが解放される。

「このガキイィィ!」

八蜘蛛はついさっき使い方を覚えたばかりの拳銃を取り出し、その銃口を伊予那に向ける。
しかし、八蜘蛛が引き金を引こうとした瞬間、視界が炎にさえぎられた。
りよなが放ったサラマンダーの炎である。

「ちっ、行け!」

八蜘蛛が命じると、二匹のヨツメグモがまっすぐにりよなの元へと向かっていく、だがそれも、伊予那の銃を拾った初香の正確な射撃によって撃ち抜かれてしまった。

今度は銃口を初香に向けて引き金を絞る。
そのとき、背中でペシャッという嫌な音がした。
伊予なのお札が背中に張り付いたのである。

「くそっ! 取れろ! 取れろ!!」

銃を放り出して背中のお札をはがそうとするが、背中に張り付いたお札はなかなか取れない。
そしてお札が燃え上がると同時に、今度こそ的確に狙いを定めたりよなのサラマンダーが火を吹いた。

「ぎやあああぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁあああぁあぁぁ!!」

再びの絶叫とともに八蜘蛛が崩れ落ちる。

「や、やった………」

誰が言ったのかもわからない、しかし確かに勝った。
化け物に自分たちの力だけで勝ったのだ。
だが、

「図に乗るなよぉぉ、ガキ共がああぁぁ!」

一度は倒れた八蜘蛛が再び起き上がる。
八蜘蛛とて魔王三将軍の一人、いくら炎が弱点とはいえこの程度の攻撃で倒れはしない。
実力ならば圧倒的に八蜘蛛のほうが上、さっきは二匹だったヨツメグモも何匹でも召還できる。
今までは慢心と油断によってできた隙を的確に突かれて押されていただけだ。

「この八蜘蛛さまが……貴様らみたいなガキにそう何度も負けるか!」

(そうだ、わたしは魔王三将軍にひとり八蜘蛛、こんな年端も行かないガキに何度も負けてたまるか!)

………………何度も?

何度もとはどういう意味だ?
わたしは今まで人間の、しかもこんなガキに負けたことなど………

いや、あった。

あの時、異世界からやってきた勇者たちと、そうちょうど目の前にいるこいつらと同じぐらいの年の三人のガキだった、そいつらと戦って、わたしは………わたしは…………

  殺  さ  れ  た

目の前に立つ三人の少女たちの姿が、かつて自分を殺した三人の勇者たちの姿に重なっていく………



「図に乗るなよぉぉ、ガキ共がああぁぁ!」

怒声と共に立ち上がった八蜘蛛を見て、初香は驚きはしたものの恐怖は全く感じなかった。
それは伊予那とりよなも同じで、まるで自分ではない何者かが乗り移ったような感じだった。

「この八蜘蛛さまが……貴様らみたいなガキにそう何度も負けるか!」

三人は次の攻撃を警戒して身構えたが、八蜘蛛はそのままいっこうに攻撃を仕掛けてこない。
やがて怪訝な顔をしていた表情が、驚愕、そして恐怖へと変わっていき、

「ひっ!」

と、しゃっくりのような、短い悲鳴を上げるとぺたんと餅をついて後ずさりしはじめた。

死の恐怖、それは実際に体験したものにしかわからないが、あの豪胆なロシナンテですら錯乱させてしまうほどのものだ。
八蜘蛛にはとても耐えられるものではなかった。

恐怖に見開かれた目はまっすぐと三人を見つめている。
そして初香が一歩踏み出すと。

「あ……あぁぁ………く、来るな、来るなああぁぁぁ!!」

気が狂ったように叫びながら、まろぶようにして脱兎のごとく逃げ去ってしまった。



後に残された少女たちは、しばらく八蜘蛛が逃げ去った方向を呆然と眺めていた。
そして、つかの間の静寂を破ったのは小さな笑い声だった。
やがて三人は声を上げて笑いあった。

失って、傷ついて、守られて、ぼろぼろになりながらここまで来た三人の少女たちは今、自分たちの力だけで勝利を勝ち取ったのだ。

協力して勝ち取った勝利は心の壁を崩し、三人を強く結びつけた。

「そうだ、これ、返さないと」

そういって初香が銃を伊予那に差し出す。

「ううん、初香が持ってて私よりずっとうまいみたいだし、それに私はこれがあるから」

そういって残った三枚の赤お札を見せた。

「あの……初香」

りよながおずおずと口を開いた。

「なに? りよな」
「えーと、これから豪華客船に行くんだよね、その前に町によっていけないかな」
「町に?」
「うん、ここからそんなに離れてないはずだし、わたしどうしても謝らなきゃいけない人がいるの」

謝らなきゃいけない人というのはおそらく、さっきの話に出てきたルカという人のことだろう。
そのことについては何があったのか深く聞かないことにした、それにここからそう遠くない町となるとここから南南西に進んだところにある昏い街のことだろう。
それならたいしたタイムロスにはならない。

「それじゃあまずはそこへ行こう」
「あ、そのまえに」

伊予那が自分の靴を脱ぎだした。

「これ履いて」
「伊予那、でも……」
「いいから、ずっと裸足だったでしょ、ほら」
「それなら、わたしも」

と、りよなも靴を脱ぎ始めた。

「じゃあ、片方ずつ」

そうして、強引に片方ずつの靴を手渡された。

「ありがとう」

二人の靴はサイズが合わずぶかぶかだったが、とても暖かかった。



生還への道はいまだ見えない、しかしここに小さな希望の光が生まれた
[9]投稿者:勇者降臨 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2010/05/17(Mon) 19:32 No.533  
【C-3:X4Y3/昏い街付近 /1日目/夜】

【登和多 初香{とわだ はつか}@XENOPHOBIA】
[状態]:疲労 大、精神疲労 中
全身打撲、アバラ二本骨折、胸骨骨折
(怪我は魔法で緩和、傷薬と包帯で処置済み)
[装備]: クマさんティーシャツ&サスペンダースカート(赤)@現実世界
伊予那の靴右@一日巫女
りよなの靴左@なよりよ
ベレッタM1934@現実世界(残弾7+1、安全装置解除済み)
[道具]:オーガの首輪@バトロワ
9ミリショート弾×24@現実世界
[基本]:殺し合いからの脱出
[思考・状況]
1.昏い街に向かう
2.豪華客船に向かう
3.オーガの首輪を解除する
4.仲間と情報を集める



【神代 伊予那{かみしろ いよな}@一日巫女】
[状態]:右手に小程度の切り傷
[装備]:赤いお札×3@一日巫女
[道具]:デイパック、支給品一式(パン1食分消費)
SMドリンク@怪盗少女
[基本]:桜を信じて生きる
[思考・状況]
1.初香、りよなと昏い街に向かう
2.カザネの他にもエリナの知り合いが居たら全てを話すつもり


※お札を操る程度の能力に目覚めました
※ひょっとすると無念の思いを抱えた死者の魂と会話できるかもしれません



【篭野りよな@なよりよ】
[状態]:疲労、精神安定
[装備]:サラマンダー@デモノフォビア
    木の枝@バトロワ
[道具]:デイパック、支給品一式(食料9、水9)
[基本]:マーダー、なよりを生き返らせる
[思考・状況]
1.初香、伊予那と昏い街に向かう
2 .ルカに謝る


※トカレフTT-33@現実世界(弾数8+1発)はC-3:X3Y3に落ちたままになっています。



【C-3:X4Y1/廃墟付近 /1日目/夜】

【八蜘蛛@創作少女】
[状態]:錯乱、全身火傷、特に足にダメージ(養分吸収である程度回復)
[装備]: [道具]:デイパック、支給品一式×3(食料14、水14)
弾丸x1@現実世界(拳銃系アイテムに装填可能、内1発は不発弾)
モヒカンハンマー@リョナラークエスト
メイド3点セット@○○少女
バッハの肖像画@La fine di abisso
チョコレート@SILENTDESIREシリーズ
[基本]:ステルスマーダー
[思考・状況]
1.とにかく逃げる
2. ルシフェルを倒す(そのために実力のある参加者を味方につける)
3.エリーシアを殺す
4.人間を養分にする


※ロシナンテが死んだらしい事を知りました
※一回目の放送は聞いていません
※北に向かって逃げました
※ロカ・ルカ@ボーパルラビットは昏い街に置いたままです



【D-3:X3Y1/昏い街/1日目/夜】

【門番{かどの つがい}@創作少女】
[状態]:熟睡、体力激減、負傷、冷気による内臓損傷
[装備]:リザードマンの剣@ボーパルラビット
[道具]:なし
[基本]:キングを泣きながら土下座させる、そのための協力者を集める
[思考・状況]
1.熟睡中
2.とりあえず食事?
3.八蜘蛛を守る
4.キングを泣かすのに協力してくれる人を探す


※不眠マクラの効果に気づいていません
※ロシナンテが死んだらしい事を知りました
※一回目の放送は聞いていません
※デイパック、支給品一式×2(食料13、水11)
不眠マクラ@創作少女
SMドリンクの空き瓶@怪盗少女
あたりめ100gパックx4@現実世界
財布(中身は日本円で3万7564円)@BlankBlood
ソリッドシューター(残弾数1)@まじはーど
霊樹の杖@リョナラークエスト
は、昏い街の道端に落ちたままです
[10]投稿者:黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2010/05/17(Mon) 19:40 No.534  
まずは大変遅れてしまったことをお詫びします。
その上自分で16日までに、
と言いながら結局それも守れなかったことを重ね重ねお詫びします。
今後、二度とこのようなことがないようにします。
まことに申し訳ありませんでした。

前回は絶望色の濃い話だったので、
今回は希望を持たせて見ました。

さて、どうやってもう一度落とそうか……

それでは、お目汚し失礼いたしました。
[11]投稿者:『三者三様の危機  その1』  289◆SqVSQKtY 投稿日:2010/06/22(Tue) 19:49 No.537  

「そんな……!なぞちゃん……美奈ちゃん……!」
「アーシャ……エリー……!」

ミアとクリスは先ほどの放送による死者の発表を聞いて、放心していた。

ミアは、この殺し合い開始直後に出会ったパートナーであったなぞちゃんと、
先ほどまで脱出を共にすると誓った仲間である美奈までが死亡しており、
クリスはこの殺し合い以前からの親友であり、もっとも信頼を置いていた二人の
仲間が死亡してしまったのだから……。

(……なぞちゃん……!美奈ちゃん……!)

自分がもっとしっかりしていれば、とミアは思わずにはいられなかった。
なぞちゃんも美奈も、自分の行動次第では救うことができたかもしれないのだ。
それを思うと、ミアは後悔で胸がいっぱいになった。

(アーシャ……エリー……まさか、貴女たちが死ぬなんて……!)

クリスには信じられなかった。
今まであらゆる事件や困難をあの二人は解決してきたのだ。

時には自分も二人を助け、支えてきただけに、クリスはあの二人の力は充分理解していた。
その二人がいくらこの恐ろしい殺し合いの中とはいえ、こんなにもあっさりと……。

クリスの瞳に涙が滲む。

あの二人はもういないのだ。
それを思うと、クリスの胸が張り裂けそうだった。

(……いけない……!今は感傷に浸ってる場合じゃ……!)

クリスは萎えそうになる意志に渇を入れ、俯いているミアに声をかける。

「……ミア……さっきの放送を聞いたでしょ……?
 もう……一刻の猶予も無いわ……」

その言葉にミアはハッとクリスのほうに顔を向ける。

「美奈ちゃんが……死んでしまった……!
 それは……初香ちゃんにも……危機が迫っていると……いうこと……!
 早く、あの子を……助けに……行って……あげて……!」

クリスは必死の思いで、ミアへ懇願する。

そう、ここでクリスと初香が死亡してしまえば、全ての希望は絶たれてしまうのだ。
魔術知識と機械知識……首輪には両方のトラップが仕掛けられている。
そのトラップを解除するためには、クリスと初香、二人は欠かせない存在なのだ。

もはや、生存者はわずか14名。

その内、味方と呼べる存在はクリス、ミア、初香、えびげん、ナビィ、
後は廃墟で出会った伊予那の6人。

そして、殺し合いに乗った者がモヒカン男とエルフ男。
殺し合いに乗った者は最低でも2人。

つまり、14人の内8人は既知の人物であり、そのうち2人は殺し合いに乗っている。
まだ出会っていない者で殺し合いに乗っていない可能性のある人物は
6人しか存在しないのだ。
その6人の中に魔術知識、もしくは機械知識を持ち、さらに殺し合いに
乗っていない者が存在する確率など皆無に等しい。

参加者全員の命が助かるかどうかは、クリスと初香の生存にかかっているといっても
過言ではないのだ。

「……分かった……!すぐに帰ってくるから……!」

ミアの言葉に、クリスは微笑んで頷く。
そして、ミアは迷いを振り切るように全速力で国立魔法研究所へと走っていった。

それを見送ったクリスは「ふぅ……」と息を吐き、背中を木に寄りかからせる。

そろそろ限界だった。
全身から血が流れ、骨折した左腕は熱を持って痛み出している。
頭を打ったせいで意識も朦朧としており、もはや意識を保つのも限界だった。

(……ごめん……皆……。少しだけ……眠らせてもらうわね……)

クリスは心の中で仲間たちに謝罪しつつ、意識を失った。




雪の降る道中を寒さに耐えながら、ミアは必死で国立魔法研究所を目指して走った。
そして、研究所に辿り着いたミアは休む間も惜しんで初香を探し始めた。

「初香ちゃんっ!!初香ちゃん、どこなのっ!!?」

ミアは大声で初香に呼びかけ続ける。
だが、いくら探し続け、呼びかけても返事は無い。

そのことに、ミアは焦りを覚える。

まさか、初香はすでに殺人者の手に……?

(……落ち着いて……!冷静になるのよ……!)

そうだ、ここで冷静にならなくてどうする。
今、初香を助けることができるのは自分だけなのだ。

そう思い、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

そこで、はたと気がつく。

そうだ。
考えてみれば、ここには初香以外にもあのモヒカン男とエルフ男がいる
可能性もあるのだ。

彼らがここにいるのなら、あれだけミアが大声で初香の名を叫び続けていて、
気がつかないはずがない。

考えてみれば、迂闊だった。
もし、彼らが初香を捕まえていて、彼女を人質にしてミアの前へ現れたとしたら?

そのとき、ミアはオーガが初香を人質にしたときと同じように
彼らに手出しできなくなるだろう。

どうやら、思った以上に動揺していたらしい。
モヒカンたちの襲撃と放送、ほぼ同時に起こった衝撃的な出来事のせいで
ミアは完全に冷静さを失っていたようだ。

そのことに気がついたミアはいくらか冷静になることができた。
そして、続けてミアは思考する。

モヒカン男とエルフ男、彼らはまだこの研究所内にいるのか?

(……いや、それはないわね……。
 すでに、私が初香ちゃんを探し始めてから、それなりの時間が経過している……。
 彼らがここにいるなら、今までに何か仕掛けてきたはず……)

ということは、モヒカン男とエルフ男はこの研究所から移動したことになる。
そして、モヒカンとエルフがこの場にいないということは、彼らはクリスの元へと
向かっているか、もしくはここから移動した初香を追っていった可能性が高い。

と、そこでミアはもう一つ大事なことを思い出した。

(……そうだ……禁止エリア……!)

先ほどの放送で、このA−4エリアは次の禁止エリアに指定されていた。

モヒカン男とエルフ男は、このエリアが禁止エリアに指定されたことも
理由の一つとして、この場から移動したのだろう。

だとすると、初香がここにいないのも頷ける。
このエリアが禁止エリアに指定されたにもかかわらず、あの聡明な少女が
この場に留まるはずがないからだ。

ならば、初香は外に逃げたに違いない。

急がなければならない。
ミアは、ここで無駄に時間を費やしてしまった。
早く初香を見つけなければ、取り返しのつかないことになるかもしれない。

一瞬、もしモヒカン男たちがクリスのほうへと向かっていたら、と考えると
ミアは不安になったが、結局は初香を追うことにした。

クリスならきっと大丈夫だ。
彼女は自分よりずっとしっかりしているし、怪我をしていても殺人者から
身を隠すくらいはできるはずだ。
それに、向こう側には商店街があり、商店街にはえびげんとナビィがいる。
放送で明空と美奈が死亡したことを知れば、必ず助けに来てくれる。
そのときに、クリスのことも見つけてくれると信じるしかない。

(今、一番危険なのは初香ちゃんだ……!早く初香ちゃんを見つけないと……!)

ミアはそう判断し、研究所から移動することにした。

しかし、先ほどより冷静になったとはいえ、やはりミアにはまだ焦りがあったのだろう。
普段なら気づくはずの気配……自分を狙う殺気に気づくことができなかったのだから。

ミアが研究所の出口から外へと出た瞬間、

ヒュバッ!!

「!!」

風を切る音。
咄嗟にブロードソードを掲げて防御の体制を取ろうとするが、間に合わない。

バキィィッ!!

「ああぁぁぁっ!!?」

わき腹に鋭く加えられた衝撃に、ミアは吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。

「ぐっ……うぅっ……!」

ミアは呻きながらも身を起こし、自分に攻撃してきた相手を睨み付ける。

そこにいたのは、巨大な目玉を持つ粘液状の不定形生物……スライムだった。



[12]投稿者:『三者三様の危機  その2』  289◆SqVSQKtY 投稿日:2010/06/22(Tue) 19:49 No.538  

ボキィィッ!!

「…………――――っ!!?」

突然、右腕に加えられた激痛にクリスの意識は覚醒した。

と、同時に髪をつかまれ、顔を地面に叩きつけられる。

「……がっ……!げほっ……!」
「よう、魔術師の女。こんなところで暢気に居眠りかい?
 気楽なもんだな、オイ?」

クリスには何が起こったのか分からなかった。
自分を地面に叩きつけている相手の声も、聞き覚えはあっても
朦朧とした頭では思い出すことはできなかった。

「おら、寝てねーで起きろよ。」
「あっ……ぐぅっ……!」

だが、再び髪を引っ張られ、無理やり顔を上げさせられたことで、
声の主の顔を視界に収めることができた。

「……貴方……は……!」
「よう、久しぶりだな」

にやにやと笑みを浮かべながら、ダージュはクリスの髪を掴み上げ、
自分のほうを向かせる。

「……もう一人の女はどこだ?
 まさか、お前を見捨てて逃げたってわけでもないだろ?」
「……答える必要は……無いわ……!」

ダージュの問いに、クリスは吐き捨てるように告げる。
だが、そんなクリスにダージュは余裕の態度を崩さない。

「ま……あのガキどもを探しにあの研究所に戻ったってとこだろ。
 違うか?」
「……さぁ……どうかしら、ね……?」

クリスは惚けるように答える。

ベキィィッ!!

「!!?……うああああぁぁぁぁっっ!!??」

胸を思い切り蹴り飛ばされた。
掴み上げられていた髪が衝撃で何十本か引き抜かれ、頭部に痛みが走る。

「惚けても無駄だぜ。この状況であの女が満身創痍の仲間を放っていく
 理由なんて、それくらいしか思いつかねーからな」

ダージュはくくっと嗤いながら、苦痛の呻きを漏らしているクリスを
愉快そうに見下している。

激痛に苦しみながら、クリスは自分の身体状況を確認する。

まず、全身打撲に擦過傷。
これは気絶する前からの怪我であり、改めて確認するまでも無い。
左腕の骨折、これも同じだ。
だが、それに加えてどうやら右腕の骨折、さらに先ほどの蹴りによって
胸骨も骨折しているようだ。

(……これは……逃げるのは諦めたほうが良さそうね……)

確認するまでもなく、この状況では逃げることは無理だろう。
今の自分の怪我では、逃げるどころか歩くことすら困難だ。
こんな状態では、この男から逃れることは不可能に決まっている。

助けも期待はできないだろう。
この男の言葉から推測すると、ミアはあの後、この男とは出会っていないらしい。
ならば、ミアが初香を見つけ出し、怪我をした初香を連れてここまで戻ってくるのには
それなりに時間がかかるはずだ。
気絶してからそれほど時間が経ったとも思えないし、借りにミアがこの場に戻ってきた
としても、自分が人質に取られれば、ミアはこの男に手出しができなくなってしまう。

(……なら……戦うしかないわ……!)

魔力はまだ残っている。
相手の油断を誘い、隙を突いて魔法を叩き込むしかない。

だが、問題はある。
この男も魔法を使う以上、魔術師の怖さは知っているはず。
いくら満身創痍とはいえ、魔術師である自分を警戒していないはずがない。
そう易々と隙を見せるとは思えなかった。

だが、そんなクリスの考えとは裏腹に、ダージュはあっさりとクリスに背を向け、
独り言を呟き始めた。

「さて、どうするかね……コイツを人質に取れば、ナビィって女も、
 ガキどもを探しに行ったもう一人の女もあっさり殺せるかもしれねぇが……。
 だが、あの変態の仲間を殺したあのメイド……ヤツが厄介だな……。
 あんな遠距離からでも、あのボウガンみたいな武器が有効な以上、
 よほど気をつけなければ……」

ぶつぶつと呟いているダージュを、クリスは唖然として見つめていた。
だが、今がチャンスだということに気がつく。

どうやら、相手は完全に油断しているようだ。
なぜだが知らないが、相手は自分の反撃を全く考慮に入れていないらしい。
迂闊といえば、あまりにも迂闊な対応だった。

(……その油断が、命取りよ!)

クリスは相手に聞こえないように小声で呪文を唱え、右手に魔力を集中させる。

腕が折れている以上、まともな狙いはつけられないが、
少なくとも、相手に命中させることはできるはず。

完全に油断している今の状態なら、上手くやれば気絶させることもできるかもしれない。

「……はあぁぁぁっ!!」
「何っ!!?」

クリスが魔力を解き放つと同時に、ダージュは驚愕の声を上げて振り向く。
だが、もう遅い。
魔法は発動し、ダージュは成すすべもなく魔法を受けて倒れる。

……はずだった。

「……なっ……?」

だが、実際にはクリスの魔法は発動することなく、右手に溜めた魔力は霧散していった。

「……な……なんで……?」
「……なーんてなぁ?」

呆然とするクリスに対して、先ほど驚愕の表情を浮かべていたダージュは一転して、
嫌らしい笑みを浮かべながら、クリスを見下ろしていた。

「おいおい、俺が魔術師であるお前に対して何の対策もしてないとでも思ったのか?」

ダージュはそう言って、懐から五芒星の描かれた黒い護符を取り出す。

「……それは……!?」
「そう、元々のお前らの支給品さ。
 魔法を封じる護符……便利なもんだよなぁ?」

ダージュの笑みに、クリスは悔しそうに歯噛みする。

魔封じの呪印。
相手の魔法を封じることのできる護符。

クリスは研究所でこの護符について調べた結果、魔術師の魔法を封じる効果を
持つ道具だということを知ることができた。
だが、その効果を知りながらもクリスはそれを実戦で使うことを諦めていたのだ。

なぜなら……この魔封じの呪印、極端に有効範囲が狭いのだ。

まず、魔法を封じる場合……相手に接近する必要がある。
それも、相手のほとんどすぐそば……2メートルくらいまで護符を
近づける必要があるのだ。
大抵の場合、遠距離攻撃が得意な魔術師相手にそこまで近づく必要があるという時点で、
この道具は致命的な欠陥を備えていた。
しかも、もし相手が武器もしくは格闘技能を備えた魔術師だった場合、
護符を掲げて魔法を封印した瞬間、こちら側が逆に無防備になる。
そのときに反撃を受けて致命傷を負ってしまっては、魔法を封じた意味が無い。

さらに、例え魔法を封じることができたとしても、その後も問題があった。

なぜなら……魔封じの効果は、10メートルも護符から離れてしまえば
解除されてしまうのだ。

つまり、もし魔法を封じたとしても、逃げの手を打たれればおしまいなのだ。

はっきり言って、使いにくいことこの上ない代物だった。
魔封じの呪印は、ダージュの言うように決して便利な物ではないのだ。
その効力を発揮する場面は、かなり限られたものとなるだろう。

……例えば、捕らえた魔術師の反撃を防ぐために魔法を封じておく、など。

「……さて……不意打ちなんて舐めたマネしてくれたアンタにはオシオキが
 必要だなぁ?」
「……くっ……!」

ダージュが酷薄な笑みを浮かべながら、クリスへと迫る。
クリスは身を捩って何とか逃れようとするが、ダージュはそれを許さない。

「おらぁっ!!」

ベキィッ!!

「ああぁぁっ!!?」

ダージュに側頭部を蹴り飛ばされ、クリスは倒れる。
元々、頭部にダメージを負っていたクリスは一瞬意識が飛んでしまう。

「そらよっ!!」

ボキィィッ!!

「!?……がああぁぁぁっ!!?」

だが、次の瞬間には新たな激痛によって、クリスの意識は無理やり覚醒させられる。

ダージュが倒れたクリスの腹を思い切り蹴りつけたのだ。

「お?こりゃ、アバラが何本かイッちまったか?ははっ!」
「あ……ぐぅ……!あぁぁぁっ……!」

次々と加えられる新たな激痛に、クリスは何とか耐えようとする。
だが、剣士であるアーシャやエリーシアと違い、クリスは魔術師である。
生傷の絶えない彼女たちと比べれば、クリスは痛みというものに慣れていない。

あまりの激痛に、クリスは自分の心が折れかけていることを自覚する。

(駄目……!弱気になっては……!
 何とか、この状況を脱出する方法を考えないと……!)

だが、必死に自分を鼓舞しようとするクリスをあざ笑うように、
ダージュはクリスを痛めつける。

「おらぁっ!!」

ベキィッ!!

「がっ……はっ……!」
「うらっ!!」

バキィッ!!

「あ……がぁ……!」
「ははっ!おら、どうした!?」

グシャッ!!

「ひ……う……あぁ……」
「何だよ、オイ?元気が無くなってきたぞ?
 もっと良い声で鳴けよ!?」

ゴシャッ!!ベキッ!!ボキィィッ!!

「ぎぃぃあああぁぁぁぁぁっっ!!?」
「よしよし、いいぞ!その調子だ!
 あの女が帰ってくるまで、しっかりと楽しませてくれよ!?」

男の哄笑と女の悲痛な絶叫、人体を殴りつける鈍い音と枝を折るような乾いた音が
雪の積もる森の中に響き続けるが、その音を聞く者は当事者たち以外は誰もいなかった。



[13]投稿者:『三者三様の危機  その3』  289◆SqVSQKtY 投稿日:2010/06/22(Tue) 19:50 No.539  

「はああぁぁぁっ!!」

バシュッ!!

伸びてきた何本もの触手をミアはブロードソードで切り捨てる。

不意こそ突かれたミアだったが、その傷は浅かった。
直前に攻撃とは逆の方向に飛んでいたおかげで、ダメージを最小限に
抑えることができたのだ。

そして、お返しとばかりにミアはスライムに向けて、攻撃に出た。
次々と伸ばされる触手を切り飛ばし、スライムへと肉薄する。

狙うは、スライムの持つ巨大な目玉。
ミアは苦し紛れに伸ばされた触手を掻い潜り、スライムの目玉に
ブロードソードを思い切り突き立てた。

スライムはビクンと一瞬身体を震わせ、苦しそうに身体をぶよぶよと揺らす。

(……効いている……!)

手ごたえを感じたミアはそのまま剣を捻り、スライムの傷口を拡げようとする。
だが、側面から加えられた衝撃に吹っ飛ばされる。

「きゃあぁぁぁっ!?」

悲鳴を上げて、地面を転がるミア。
受身を取り、慌てて体勢を立て直す。

見ると、スライムは触手を使って、自分の目玉からブロードソードを引き抜き、
ミアの手の届かないところに投げ捨てていた。

どうやら、スライムがミアに気取られないように背後から伸ばした触手に、
叩きつけられたようだ。

(くっ……!勝負を焦りすぎたみたい……!)

初香やクリス、殺人者の男二人のこともあり、
ミアは勝負を焦っていた。

そのことが油断へと繋がり、スライムをあそこまで追い詰めながらも
無様に反撃を食らうという失態を犯してしまった。

だが、後悔しても遅い。
スライムに対して一番有効と思われるブロードソードが手の届かない位置へと
投げ捨てられてしまった以上、他の武器で戦うしかない。

マジックロッドは駄目だ。
打撃武器がスライムに効くとは思えないし、まだ変身できるほど魔力は
回復していない。

だとすれば、リーチに不安があるが、スペツナズ・ナイフを使うしかない。
懐からスペツナズ・ナイフを取り出し、ミアは構える。

(……いざとなったら、魔法を使うしかないわね……)

できることなら魔力は温存しておきたいが、現状を考えるとそうもいかないだろう。
ミアは自分へと迫りくるスライムを睨み付けながら、そう考えていた。

そのとき……。

何者かが、こちらへと走ってくる音が聞こえた。
ミアが驚いてそちらを振り向くと、それは小さな少女のようだった。

(!?……まさか、初香ちゃん……!?)

ミアはそう思ったが、近づくにつれて姿がはっきりしてきたその姿は、
初香のものではなかった。

「ひっ……はっ……!はぁっ……はぁっ……ひぃっ……!」

ピンクの帽子に白いワイシャツ、黒のサスペンダースカートを着た幼い少女の姿。
顔を死の恐怖に歪ませ、錯乱したその少女は……。

魔王軍三将軍の一人、八蜘蛛だった。

「……ひっ……!?」

八蜘蛛はミアとスライムを見ると、引きつった声を漏らし、足を止める。
今の八蜘蛛は死の恐怖に囚われ、冷静な判断ができていなかった。

八蜘蛛は目の前の少女とモンスターが自分を殺しに来たのだと勘違いし、
攻撃を繰り出した。

「ああああぁぁぁぁっっ!!」

背中のキャノンから発射される糸。

「なっ……!?」

ミアはその糸に絡め取られ、地面に貼り付けられて膝を突く。
見ると、スライムのほうもミアと同じように糸に絡め取られ、身動きができずに
蠢いている。

八蜘蛛はそれを見て取ると、少しだけ余裕を取り戻したのか、
荒い息を吐きながらも周囲を見渡す。
そして、スライムの後方にブロードソードを見つけると、走り寄って
それを拾い上げる。

そして、血走った目でスライムを睨み付け、

「うああらぁあぁぁぁぁっっ!!」

ブロードソードを突き刺した。

スライムの中心部。

弱点となるコアに向けて。

スライムの身体がビクンと跳ね、その身体が萎むかのように急速に弾力を失い、
凹んでいく。
だが、八蜘蛛はそんなことにも気がつかず、狂ったようにスライムを滅多刺しにする。

「死ねっ!!死ねっ!!死ねっ!!死ねっ!!死ねえぇぇぇぇっ!!」

八蜘蛛は喉が枯れるかと思うほど、大声で絶叫しながらスライムを刺し続ける。

それを呆然と見つめるミア。
幼い少女にしか見えない八蜘蛛の凶行をミアは信じられない思いで眺めていた。

(……あんな、小さな子まで……こんな……!)

ミアは凄惨な光景を見つめながら、思う。

この殺し合いは、こんな幼い少女までをも狂気に染めてしまうのか。
あんなおぞましいほどの狂気に。

やがて、スライムを殺した八蜘蛛はギョロリとミアに視線を向ける。

その視線に、ミアは恐怖で凍りつく。

なぜなら、その顔は正しく魔物と呼ぶに相応しい、禍々しさに満ちた
狂相だったから。

ブロードソードを片手に、八蜘蛛はミアへと近づいてくる。
その口はぶつぶつと言葉を呟いていた。

「私は……死んでない……!私は……八蜘蛛……!
 私は……魔王軍三将軍……!私は……死んでない……!
 私は……生きている……!私は……死なない……!
 こんなところでは……絶対……死なない……!」

その言葉を聞いたミアは、やはりこの少女は錯乱していると確信したが、
少女の言葉の中のキーワードに疑問を覚えた。

「……魔王……三将軍……?貴女……人間じゃ、ないの……?」

その問いに、八蜘蛛はミアへと剣を振りかぶって答える。

「私は貴様ら人間などとは違う!!私は誇り高き魔王軍三将軍が一人、八蜘蛛!!
 こんなところで死ぬ存在ではない!!」

八蜘蛛は血走った目で口から泡を吹きながら続ける。

「貴様らクズは死ね!!一人残らず死んでしまえ!!
 私を生かすために死ね!!元々、人間など我ら魔族の糧となる存在なのだ!!
 ここで私の糧となり、死ぬのが貴様らクズの定めなのだ!!」

その言葉に、ミアは理解する。

この少女は……この魔物は、敵だと。

「……そう。なら、私は貴女を倒さないといけない」

ミアの言葉に、八蜘蛛の動きが止まる。
だが、すぐに嘲笑を浮かべる。

「私の糸に絡められた状態で何ができるというのよ、人間!!?
 戯言をほざいてないで、いさぎよく死になさい!!」

そして、八蜘蛛はブロードソードをミアに向けて振り下ろす。


ドスッ。


「……あ?」

……はずだった。

だが、八蜘蛛の胸に生えたナイフの刀身が八蜘蛛の動きを止めた。

「……こ……れ……?……え……?」
「……私は死ぬわけにはいかないわ。
 私は……私たちはこの殺し合いを止めなければいけないの。
 まゆこちゃん、なぞちゃん、明空、美奈ちゃん……すでに死んでしまった
 人たちのためにも、私たち生きている人間は前に進まなきゃいけないの!」

ミアは刀身を失ったスペツナズ・ナイフの柄を八蜘蛛に向けながら、
決意の言葉を口にする。

だが、その言葉は八蜘蛛の耳には届かない。
ただ彼女は己に起こった出来事が信じられず、自分の胸に刺さったナイフを
見つめながら、頭を振るう。

「……い……や……そん、な…………この私が……。
 八蜘蛛、様が……こんな、ところで…………」

カラン……、と八蜘蛛の手からブロードソードが落ちる。
そして、恐怖と絶望に顔を歪ませて八蜘蛛は倒れた。

ピクリとも動かなくなった八蜘蛛をしばし睨んでいたミアだが、
どうやら八蜘蛛が死亡したようだと判断し、ふぅと息を吐いて緊張を解く。

危ないところだった。
もし、ミアが八蜘蛛を魔物だと見抜くことができなければ、
ミアは八蜘蛛を殺し合いに巻き込まれたせいで狂気に染まった少女だと
勘違いしたままだっただろう。

そんな哀れな少女を、ミアが殺すことなどできるわけがない。
もし八蜘蛛が本当に殺し合いのせいで狂ってしまっただけの少女だったなら、
ミアは八蜘蛛を殺すことができず、そのまま殺されていたに違いない。

しかし、八蜘蛛を倒したからといって、もたもたしている時間はなかった。
早く八蜘蛛の糸の束縛を解かねば、いずれここは禁止エリアになり、
ミアは爆死してしまう。

「くっ……!このっ……!」

だが、八蜘蛛の糸はミアに絡みつき、ほとんど身動きが取れない。

スペツナズ・ナイフの刀身は飛ばしてしまったし、ブロードソードは
手の届く位置には無い。
何とかもがいて糸の束縛から逃れようとするが、強靭な蜘蛛の糸の前では、
ミアのもがきなど何の意味もなさなかった。

「……くっ……うぅっ……!私は……こんなところで死ぬわけには……!」

自分が死んでは、誰が初香を助けるのだ。

クリスと約束したのだ。

初香を助けると。すぐに帰ってくると。

「ぐっ……!あああぁぁぁぁっっ!!」

雪が降り続ける中、ミアは必死でもがく。
だが、無情にも八蜘蛛の糸はミアを逃さない。

それはあたかも八蜘蛛の呪いであるかのように、ミアを呪縛し続けるのだった。




【スライム@一日巫女  死亡】
【八蜘蛛@創作少女   死亡】
【残り12名】

【A−4:X2Y4 / 国立魔法研究所前の街道 / 1日目:夜】

【ミア@マジックロッド】
[状態]:八蜘蛛の糸に身体を絡め取られて行動不能、
    焦燥、魔力残量(小)、疲労(大)
[装備]:マジックロッド@マジックロッド
    スペツナズ・ナイフ(柄のみ)@現実
    四葉のクローバー@現実世界(頭に装備)
[道具]:なし
[基本]:対主催、できれば誰も殺したくない
[思考・状況]
1.八蜘蛛の糸から抜け出す
2.初香を探す
3.できるだけ早くクリスの元へ戻る
4.バトルロワイヤルを止めさせる方法を探す

※A−4エリアが禁止エリアになる前に八蜘蛛の糸から抜け出せなかった場合、爆死します。
※東支部で襲ってきたモヒカンが今回遭遇したモヒカンと同一人物だとは認識していません。
※オーガの持っていた肉が人肉だと気づいていません。
※参加者がそれぞれ別の世界から集められていることに気付きました。



【スライム@一日巫女】
[状態]:死亡
[装備]:なし(出来ない)
[道具]:なし(持てない)



【八蜘蛛@創作少女】
[状態]:死亡、胸にスペツナズ・ナイフの刀身が刺さっている
[装備]:ブロードソード@アストラガロマンシー
[道具]:デイパック、支給品一式×3(食料14、水14)
    弾丸x1@現実世界(拳銃系アイテムに装填可能、内1発は不発弾)
    モヒカンハンマー@リョナラークエスト
    メイド3点セット@○○少女
    バッハの肖像画@La fine di abisso
    チョコレート@SILENTDESIREシリーズ

※ロカ・ルカ@ボーパルラビットは昏い街に置いたままです





[14]投稿者:『三者三様の危機  その4』  289◆SqVSQKtY 投稿日:2010/06/22(Tue) 19:50 No.540  

ダージュの拷問のような暴力を1時間以上浴び続けたクリスはぼろぼろになっていた。
身体のあちこちが紫色に変色し、両手の爪は全て剥がされ、指も全てへし折られ、
目を覆うような有様だった。

「……ぁ……ぅ……」

呻くクリス。

「ふん……」

鼻を鳴らし、ダージュがクリスの前に屈みこむ。

「……っ!」

クリスはびくっと身体を震わせ、ダージュに怯えた目を向ける。
それに、ダージュはにやにやと笑みを浮かべながらクリスに告げる。

「安心しな。オシオキは終わりだ。
 まぁ、これで分かっただろ?俺に逆らっても痛い思いをするだけだってな。
 分かったら、下らないことは考えずに俺についてくるんだな」
「…………!」

クリスは表情に怯えを見せながらも、涙目できっとダージュを睨みつける。
それに、ダージュは面白くなさそうな顔をする。

「ちっ……まだ分からねぇのかよ?
 まぁいいさ、どうせあの女が帰ってくるまでの暇つぶしみたいなもんだったんだからな。
 しかし、これだけ待っても戻ってこないとなると、そっちは諦めるしかねぇな……」

ダージュは呟き、クリスの髪を引っ掴み、無理やり立たせる。
悲鳴を上げるクリスを無視して、ダージュはクリスを後ろに向かせて、
背中に槍を突きつける。

「ほら、歩けよ。
 お前のお仲間のナビィって女とメイド女のところへ
 連れてってやるからよ」
「…………くっ……うぅ…………!」

クリスは泣いていた。
それは、悔しさゆえの涙だった。
自分が仲間たちに対して人質に使われると分かっていても、
首輪解除の鍵を握る自分はここで死ぬわけにはいかないのだ。

クリスがここで死ぬことは、全ての希望が絶たれることを意味するのだから。

(アーシャ……エリー……ごめん……!
 貴女たちが死んでしまったのに……私は……!)

自分の不甲斐なさに、クリスは涙を流すしかなかった。




【A−3:X3Y4 / 森 / 1日目:夜】

【ダージュ@リョナマナ】
[状態]:疲労(小)、魔力消費(大)
[装備]:トルネード@創作少女
    デコイシールド@創作少女
[道具]:デイパック、支給品一式×5(食料21食分、水21食分)
    宝冠「フォクテイ」@創作少女
    火薬鉄砲@現実世界
   (本物そっくりの発射音が鳴り火薬の臭いがするオモチャのリボルバー【残り6発】)
    エリクシル@デモノフォビア
    赤い薬×3@デモノフォビア
    魔封じの呪印@リョナラークエスト
    髪飾り@DEMONOPHOBIA
    涼子のナイフ@BlankBlood
    エリクシル@SilentDesire
    火炎放射器(残燃料100%)@えびげん
    モップ@La fine di abisso
    白い三角巾@現実世界
    雑巾@La fine di abisso
    木彫りのクマ@現実世界(一般的なサイズのもの)
    人肉(2食分)@リョナラークエスト
    新鮮な人肉(当分は無くならない程度の量)
    クラシックギター@La fine di abisso(吟遊詩人が持ってそうな古い木製ギター)
    ノートパソコン&充電用コンセント
   (電池残量3時間分程度、OSはWin2kっぽい物)@現実世界
    AM500@怪盗少女(残弾0発)
    ミアたちが筆談に使っていたメモ用紙(支給品の一部)
[基本]リョナラー、オルナの関係者を殺す
[思考・状況]
1.モヒカンを利用して、ナビィに手傷を負わせる
2.クリスを人質にして、クリスの仲間を殺す
2.ナビィを弄り殺す
3.オルナの関係者を殺す(誰が関係者か分からないので皆殺し)



【クリステル・ジーメンス@SILENT DESIRE】
[状態]:魔封じ状態、
    両腕骨折、両手の指を全て骨折、
    両手の指の爪が全て剥がされている、
    全身に打撲と擦過傷(身体のあちこちが紫色に変色している)
    胸骨骨折、肋骨3本骨折、血まみれ、魔力残量(中)、疲労(特大)、
    精神疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:なし
[基本]:対主催
[思考・状況]
1.ひとまずはダージュに従う
2.怪我の治療
3.首輪を外す方法を考える(魔術トラップの解除法は会得済み)
4.首輪を解除するまでは絶対に死なない

※参加者がそれぞれ別の世界から集められていることに気付きました。
※銃の使い方を教わりました。
※頭を何度も殴られましたが、命にかかわるほどではありません。





一方、商店街の薬局前……。

運良く薬局を見つけ、その中で包帯を手に入れたナビィはえびげんに応急処置を施した。
未だ意識を取り戻さないえびげんを心配そうに見やりながら、ナビィは考える。

(クリスたちは心配だけど……怪我をしたえびげんさんを置いていくことは
 できないし……私、どうすれば……)

えびげんを背負って研究所のほうへ戻ることも考えたが、外は雪が降っている。
怪我を負って意識の無いえびげんの身体を冷やすのはまずいだろう。

(せめて、えびげんさんが目を覚ましてくれれば……)

悩むナビィ。
そこで、ふとナビィの耳がぴくっと動く。

「……この声は……?」

ナビィの耳が捉えたのは誰かの声だった。

いや……声というより、それは雄叫びだった。
それはナビィたちのいる場所に向かって、どんどん近づいてきた。

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉっっ!!」

近づいてくる雄叫びにナビィはぎょっとして、声の聞こえてくる方向に振り向く。


ガッシャアアァァァァァン!!!


と、同時に薬局のガラスをぶち破り、赤パンツ一丁の巨漢の変態がナビィの目の前に現れた。

「ようやく見つけたぜぇぇぇ……!!
 会いたかったぜぇ、メイド女ぁぁぁ……!!」

胸筋をぴくぴくさせながら仁王立ちしたモヒカンは、股間をいきり立たせながら
獰猛な笑みを浮かべる。

ナビィは呆気に取られた表情を浮かべるしかなかった。

だが、ようやく我に返り、この場でもっともふさわしいリアクションを取る。

「……へ……」

ナビィは真っ赤になって、顔を引きつらせる。

「変態だあぁぁぁぁーーーーーーーっっ!!?」

ナビィは涙目で叫び、えびげんを背負うと全速力でその場を逃げ出した。

それを見たモヒカンは当然ナビィを追いかける。

「待ちやがれえぇぇぇぇーーーーーっっ!!!」
「いやあぁぁぁぁーーーーーっ!!?
 来ないで来ないでぇぇぇぇーーーーっ!!
 誰か助けてえぇぇぇぇーーーーーっ!!」

瞳に涙を滲ませながら、死に物狂いで必死に逃げるナビィ。

「うひははははははぁぁぁーーーーっ!!!」

逃がすものかと笑いながら追いかけるモヒカン。

雪の降る中、ナビィとモヒカンの追いかけっこが始まったのだった。




【A−2:X3Y2 / 商店街(薬局前の道路) / 1日目:夜】

【ナビィ@リョナマナ】
[状態]:健康、混乱
[装備]:カッパの皿@ボーパルラビット
    スペツナズ・ナイフx1@現実
[道具]:デイパック、支給品一式×4(食料のみ28食分)
    エリーシアの剣@SILENTDESIREシリーズ(真っ二つに折れている)
    防犯用カラーボール(赤)x1@現実世界
    ライトノベル@一日巫女
    怪しい本@怪盗少女
    カザネの髪留め@まじはーど
    銘酒「千夜一夜」@○○少女、
    眼力拡大目薬×3@リョナラークエスト
    油性マジック『ドルバッキー(黒)』@現実世界(新品、ペン先は太い)
    運命の首飾り@アストラガロマンシー
[基本]:対主催
[思考・状況]
1.えびげんは死なせない
2.クリス、ミア、初香を探す
3.キング・リョーナの行いをやめさせる
4.変態(モヒカン)から逃げる

※モヒカンと涼子を危険人物と判断しました。
※参加者がそれぞれ別の世界から集められていることに気付きました。
※第2回放送を聞きましたが、死亡者にショックを受けて禁止エリアは頭に入っていないかもしれません。



【えびげん@えびげん】
[状態]:気絶、腹部に刺し傷(包帯で応急処置済み、命には別状無し)
[装備]:ショットガン(残弾数3+11)@なよりよ
    スペツナズ・ナイフx1@現実(腹に刺さってる)
    メイド服@えびげん
[道具]:デイパック、支給品一式
    パンダのきぐるみ@現実世界
    豹柄ワンピース@現実世界
    ウェディングドレス(黒)@現実世界
    ビキニアーマー@現実世界(コスプレ用のため防御力皆無)
    コードレスアフロセットマシン@バトロワ(後3回使用可能、アフロ化と元の髪型に戻すことができる)
    コードレスアフロセットマシン専用充電器@バトロワ(使用には家庭用100V電源が必要、コード長1m)
    油性マジック『ドルバッキー(黒)』@バトロワ(おろしたて、ペン先極太)
[基本]:ハデ夫をぶちのめしたい
[思考・状況]
1.気絶中

※モヒカンと涼子を危険人物と判断しました。
※参加者がそれぞれ別の世界から集められていることに気付きました。
※第2回放送を聞いていません。



【モヒカン@リョナラークエスト】
[状態]:顔面に落書き、おでこにたんこぶ、生傷多数
[装備]:ツルハシ@○○少女
[道具]:手製棍棒×5
    ≪以下、ディレイ・スペル付与支給品≫
    ○デイパック、支給品一式
    ○包丁@バトロワ
    ○ライター@バトロワ
    ○マタタビの匂い袋(鈴付き)@現実世界
    ○スペツナズ・ナイフx2@現実
    ○三八式歩兵銃+スコープ(残弾1発、肩掛け用のベルト付き)@現実世界
[基本]:女見つけて痛めつけて犯る
[思考・状況]
1.女を見つけたらヒャッハー
2.商店街へ向かう(途中でミアたちを見つけたら殺す)
3.初香、えびげん、ミア、美奈、クリスを殺す
4.ナビィとメイド女(えびげん)を追う

※東支部でのオーガ達との戦闘中の記憶が殆どありません
※これまでに受けた傷はダージュの魔法でかさぶた程度まで回復しました。






[15]投稿者:『蜘蛛の糸』 その一 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2010/07/25(Sun) 16:45 No.545  
にわかに外が騒がしくなってきた。

ゼリーを貪り食っていた涼子は、いったん食べるのをやめて窓の外を覗き見る。
そこには想像を絶する光景が広がっていた。

メイドを背負った猫耳少女が、パンツ一丁の変態に追いかけられている。

目の前で繰り広げられているあまりにシュールな鬼ごっこに、もはや笑いを通り越してあきれ返る涼子であった。

(いやー今日はメイドに変態と、いろんなものに会う日だねー)

追いかけられている二人は、さっき自分と殺し合いを演じた二人に間違いない。
これは借りを返すいいチャンスだが、問題は追いかけている変態のほうだ。
あれと係わり合いになるのは是が非でも遠慮したい。

(ま、ここはもう少し様子を見ますか)

涼子はとりあえずゼリーの続きを頬張りながら、この空前絶後の鬼ごっこを観戦することにした。





鬼ごっこはいつの間にかかくれんぼになっていた。

いくらナビィが身体能力でモヒカンに勝るとはいえ、えびげんを背負った状態ではさすがに逃げきれない。
そこで商店街の建物の多さを利用して隠れるという手を打ったわけだが………

「ヒャッハーーー! みぃつけたぜ〜〜!」
「ま、また!! なんで!?」

これも、あまりうまくいっているとは言い難かった。
というのも、どこに隠れても必ず見つかってしまうのだ。
なにやら股間を強調してレーダーがどうとか言っていたが、皆まで聞く前に逃げ出したのでどういうからくりなのかは未だにわからない。

見つかっては隠れを繰り返すうちに、もうとっくに日は暮れて、辺りは街灯の人工的な明かりに照らされていた。
最初の遭遇から大分時間がたって、ようやくパニック状態から抜け出しつつあるナビィは、今の状況が非常にまずいことに気づいていた。

自分たちはこんなところで時間を無駄にしている場合ではないのだ。
仲間の身に危機が迫っていることは明らかなのに、一刻も早く国立魔法研究所に戻らなくてはならないのに。

商店街の西入り口近くの雑貨屋に飛び込んで息を整えながらナビィは考える。
えびげんを背負ってここから国立魔法研究所まで戻るとなると、途中で必ずあいつに追いつかれてしまう、もちろん彼女を置いていくという選択肢はない、そうなると取れる手段は限られてくる。

あいつを巻くか、あいつを倒すか、二つに一つだ。
しかし、前者は不可能だということはもうわかった。
ならば倒すしかない。

背負っていたえびげんをそっと下ろすと、意を決して立ち上がる。
だがやはり怖いものは怖い。
あれには死とか、苦痛とか、そういうものとは違った生理的恐怖を起こさせる力がある。

(せめて武器、何か武器になるものを)

そう思ってデイパックの中を探ってみると、なにやら硬いものに触れた。

「え?」

出てきたのはナビィにとってもっとも扱いなれた武器、鉄製の鉤爪である。

「こんなもの、さっきはなかったのに………」

それは涼子が持っていたサーディの運命の首飾りが、ナビィの意思に応じて変化したものだった。
何はともあれ、武器は手に入れた。
今こそ、あの変態を倒すときだ。
勢いよく扉を開け放つと、ナビィは雪の舞い散る表通りへと飛び出した。

「お、何だ? 観念したか?」

変態はすぐ近くまで来ていた。
やはりここも探り当てられていたようだ。

(大丈夫だ、落ち着け)

ナビィは内心の怯えを悟られないように静かに息を吐くと、きっと相手をにらみつけて拳を構えた。
そのときになってナビィはようやく気づいた、モヒカンからかすかなマタタビの匂いが漂ってくることに。

(どういうこと? なんでこいつから明空に渡しておいたマタタビの匂いが……)

よくよく考えてみると、モヒカン頭にパンツ一丁の変態というのは、ミアたちを襲った危険人物の特徴にぴったり当てはまるではないか。
しかも、その危険人物は去り際に、必ず殺してやるという旨の捨て台詞を残していったという。

(まさか、こいつが明空と美奈を!)

さらに鋭く変態をにらむナビィ。
しかし、そんな彼女の決意は次の瞬間には揺ぐことになる。

変態が突然五人に増えた。

………悪夢だ。



(だ、だだ、だいじょうぶ、おち、落ち、落ちち着け!!)

全く説得力のない自己暗示を繰り返しながら、思わず腰が引けて後じさりしてしまう。
その間に変態軍団は手に手に棍棒を持って襲い掛かってくる。
くじけそうになる心を無理やりねじ伏せて、萎えかけた気力を奮い起こし、次々と迫り来る変態をリズムよくいなしていくうちに、ようやく平常心を取り戻してきた。

(こいつら、一体一体の動きが荒い)

変態たちは、数は増えても連携が取れていないし、動きに精彩を欠く、おそらく魔力が切れ掛かっていて分身をうまく制御できないのだろう。
これなら五対一でも十分勝機はある。
ナビィは一人連携の輪から外れて襲いかかってきた変態の首を掻き切り、さらに心臓に鉤爪を突き立てる、するとたちまちそいつは消え去った。

残りの変態たちは一斉にちっと舌打ちすると、二人組に分かれた。
どうやら挟み撃ちにする気らしい。
完全にはさまれる前に左右に分かれたペアのうち右の方に攻撃を仕掛ける。
させるか、とばかりに左の変態ペアが動き出すが、後方から響いた一発の銃声とともに二人の変態はまとめて消え去った。

雑貨屋の前には、先の戦闘で刺された腹部をかばいながらもショットガンを構えるえびげんの姿が。

(よかった、目が覚めたんだ)

本音を言えばもうちょっと早く目を覚ましてほしいところだったが、文句を言うのは後にしよう。
えびげんの方に気を取られた変態の一人に強烈なとび蹴りをかます、着地と同時に回転を加えた裏拳、そして鳩尾への突き。
この攻撃はギリギリでかわされてしまったが、ナビィの猛攻は止まらない。
まずローキックで体勢を崩してからの前蹴り、蹲りかけたところへ鉤爪による必殺のアッパーカット、さらにとどめの後ろ蹴り。

ナビィの蹴りをもろに食らった変態は勢いよく吹っ飛んで地面をゴロゴロと転がる。
終点はショットガンの銃口。

(あいつは本物だ)

ナビィの鉤爪からは血が滴っているし、大の字になって横たわる変態の右肩には浅く三連続の引っ掻き傷がついている。
致命傷になる攻撃はしっかり回避しているあたり、あの変態もなかなかのものだが、勝負ありだ、この状況からの逆転はあり得ない。

「ぐ、げっほっ、ちくしょう……」

眉間に銃口を突き付けられながらも悪態をつく変態にナビィが鋭く詰め寄った。

「答えて! 明空と美奈を殺したのはあなた?」

えびげんが「えっ?」と声を上げて銃を落としかけたが、あわてて銃口を向けなおす。

「へへへ、ああ、そうだよ。
てめぇらがのんきに遊んでるうちにぶっ殺してやったんだ」
「くっ!!」

一瞬頭にかっと血が上ったが、何とか自分を抑えつけて考える、腑に落ちないことが一つある。
こいつは確かにそこそこ強い、分身なんて厄介な力も持っている。
しかし、国立魔法研究所にはミアとクリスがいたのだ。
あの二人とて手練れの戦士、こいつ一人にやられるとは思えなかった。

(まさか………ほかに仲間がいる?)

この結論に辿り着くのがあと数秒早かったなら、こんな結末は変えられたかもしれない。
ナビィが商店街の入り口のところに人影を見つけた次の瞬間、雷鳴が鳴り響き、一筋の閃光がえびげんの胸を打ち抜いた。
[16]投稿者::『蜘蛛の糸』 その二 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2010/07/25(Sun) 16:48 No.546  
「かっ……は………?」

何が起こったのかわからないという顔でその場に崩れ落ちるえびげん。

「だから言ったんだ、この馬鹿が」
「おまえ……どうしてここに?」

変態は起き上がりながら、信じられないものを見る目で悠然と歩み寄ってくる男に問いかける。

「そろそろお前が敵と相打ちにでもなってくたばってる頃かと思って来てみたら、まだ生きてやがったから助けてやったんだよ」

どこか暗い雰囲気をまとったエルフ風の男、ダージュはめんどくさそうに答えた。

ナビィは慌ててえびげんのもとへ走る。
強力な電撃を受けたえびげんはまだ全身が痙攣していて、戦闘不能は明らかだ。

「おっと、待ちな」
「!!」

ダージュが左手で引きずっていたものを無造作に足元へ転がした。
ナビィはそれが人の形をしていることが分かって、慌てて足を止めた。
否、“人の形をしていることしか分からなかった”というべきか。

その人物は、体型からするとどうやら女性らしい。
彼女はぼろぼろのローブを着ていた。
あちこちが破れ、もとが何色だったのかも分からないぐらいに血と泥にまみれたローブを。
豊かなブロンドの髪は蓬々と乱れ、その顔を覆い隠してしまっている。
腕は内出血でどす黒く腫れ上がり、その先の指、爪が全て無い、は十本とも出鱈目な方向を指差していた。

「ったく、途中で倒れやがって、手間かけさせんじゃねぇよ」

ダージュは悪態をつきながら、つま先で彼女のわき腹を小突く、たったそれだけで体中の骨が悲鳴を上げる。
しかし、彼女自身は悲鳴を上げることすらできず、くぐもったうめき声が漏れるだけだった。

はらり、と顔を覆っていた髪が一筋、地面に落ちた。

その下から現れた……その顔は………

「ク…リス?………クリス!!」

あざだらけで、血まみれだったが、その顔は確かに見知った魔術師のものだった。
うっすらとまぶたが開き、その口元が震える。
ナビィの鋭敏な聴覚でもほとんど聞き取れない、虫の息づかいのような声で、その口元はこうつぶやいた。

ごめんなさい、と。

ああ、クリスは生きていた。
放送で明空と美奈の名前が呼ばれたときからずっと、その安否が気になっていた。
しかし今、彼女が生きているという事実は更なる災いの始まりを告げるものでしかない。

「さてと、言わなくてもわかると思うが、一応言っとくか」

ぴたりと、槍の穂先を心臓の真上にあてがって、

「動くな」

災いが始まった。
[17]投稿者:『蜘蛛の糸』 その三 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2010/07/25(Sun) 16:50 No.547  
「ヒャアーハッハッハーー!! 助かったぜぇ!」
「わかったか? こうやってスマートにやるんだよ。わかったら今度からは俺の言うことを聞くんだな」
「ああ、考えとくぜ!」

変態が蹴られた鳩尾をさすって立ち上がる、その顔に満面の笑みを浮かべながら。

「さっきはよくもやってくれたなぁ、おい」

その笑みは、先ほどまでこの男に感じていた恐怖とは別の恐怖でナビィの心を満たしていく。

「おい、そいつは俺の獲物だ。
 お前が殺したがってたのはそっちのメイド女だろう」
「わかってるよ、分け前は山分けだ」
「……分けてもらうほうのセリフかそれ?」

モヒカンはダージュの突っ込みは無視して足元で荒い息を繰り返すえびげんに視線を移す。

「さぁて、てめぇにはオーガを殺られた恨み、万倍にして返してやらねぇとなぁ」

そういって抵抗できないえびげんに馬乗りになると、目を閉じてなにやらうなりだした。
するとすぐ隣に分身が出現する、どうやら本当に魔力が限界らしく、現れた分身は一体だけで、その一体も今にも消えてしまいそうだった。

分身はすぐそばに転がっていたモヒカンのデイパックから一振りのつるはしを取り出すとえびげんの頭の方へと回りこむ。
そして本物はえびげんの手首を掴むと、手のひらを重ね合わせた状態で頭の上に固定する。

ナビィにはわかってしまったモヒカン達が何をするつもりなのか。
えびげんにもわかったらしく顔を真っ青にして必死に抵抗を試みる。
しかし、ダージュの電撃のダメージがまだ抜け切っていないえびげんの抵抗など、怪力のモヒカンの前では無意味に等しい。

ゆっくりと、恐怖を煽るようにゆっくりと、分身がつるはしを振りかぶる。

「な、何する気……やめて………やめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

緩慢に、だが正確に、えびげんの手のひらにつるはしの切っ先が打ち込まれた。

「あ゛ああぁぁぁぁぁぁぁ! ひっぐ、うぁ、うあああぁぁぁぁ!!」

両手を地面に縫い止められたえびげんは、必死で身をよじり、足をばたつかせて痛みから逃れようともがく。
だが、もがけばもがくほど突き刺さったつるはしが手のひらをえぐる。

「ああぁ………はぁ、はぁ、うぐ………くぅ」
「おいおいだらしねぇな、お楽しみはまだまだこれからだぜ」

モヒカンがえびげんの上から降りると、役目を終えた分身はついに形を保てなくなり消えていった。
残されたモヒカンは傍らに落ちていた棍棒を拾い上げると一片の容赦もなく、逃れるすべを持たないえびげんの鳩尾に叩き付ける。

「ぐげぇ、げほっ、がぁ」
「まだまだいくぜぇ」

下腹部を、

「ひぐぁ」

腕を、

「うぐぅ」

胸を、

「ひゅがっ」

脚を、

「ぎぎゃぁ」

余すところなく滅多打ちにする。
先に限界を迎えたのは棍棒のほうだった。
中ほどから折れた棍棒をたいした未練も無さそうに投げ捨てると、再びデイパックを漁り始める。

中から取り出したのはいかにもよく切れそうな一振りの包丁。
それを見せびらかすようにくるくると弄びながら、えびげんを縛めるつるはしに手をかける。
「ひっ」と、短い悲鳴。

「あ〜あ、こりゃもうダメだな」
「あぐっ! うぁぁ……」

穿った穴を広げるように、つるはしをぐりぐりと動かすモヒカン。

「手が使い物にならねぇんだから指なんてもういらねえよな?」
「へ?」

手に持った包丁をぴたりと左手小指の第二関節に突きつけながら、にんまりと笑ってえびげんの顔を覗き込む。

「あ……あぁ………、いや…いやぁぁ……やめ」

えびげんの哀願は途中で絶叫へと変わった。



ナビィの口の中には鉄の味が充満していた。
いつの間にか血が出るほどきつく、下唇を噛んでいた。

「おまえ、ナビィだよな?」

突然自分の名前を呼ばれてはっと我に返ると、ダージュを真っ向から睨み付ける。

「卑怯者! クリスを放して」

どす、と鈍い音がしてクリスがうめき声をあげる。

「ナビィだよなって聞いてんだ」
「そ、そうだよ」
「オルナとはどういう関係だった?」
「え、オルナを知ってるの?」

ダージュが無言で足を振り上げる。

「ま、待って! 言う! 言うから!」

ダージュの足が空中でぴたりと止まる。

「オ、オルナは一人ぼっちだった私を引き取って、ずっと育ててくれた。
 私がロアニーと戦う旅に出る時も……一緒に…ついてきて……くれて………」

不意にオルナと過ごした日々の思い出が頭をよぎって、それ以上言葉を紡げなくなった。
口を開けばとめどなく嗚咽があふれ出てきてしまいそうで。

「そうか……なるほどな、お前はオルナにとって家族みたいなもんだったってことか」

ダージュはいかにも満足げな表情でうなずいて、

そのままクリスの胸を踏みつぶした。

「なっ!!」

クリスの豊満な乳房の下で、折れた肋骨がバリバリと遠慮のない音を立てて砕ける。

「!!! がぁ………ああぁぁぁ…………ぁぁ……ごふっ」

口からは声にならない叫びと、真っ赤な鮮血があふれ出す。

「そういえばよ、ジイさんの話だとてめぇらは三人組だったって聞いてたんだけど、もう一人はどうした?」

ダージュは何事もなかったかのような口調で尋ねてくる。
その口調が今にも爆発しそうなナビィの心を逆さに撫で上げる。
ナビィはダージュに飛び掛かりそうになる体を押さえつけるのに必死だった。

「エマは……し、死んだ」

大切な仲間の死を口に出すと、高ぶっていた感情が少し落ち着いた……正確には沈み込んだ。

「あぁ?」

今度は露骨に不機嫌そうな顔で聞き返してくる。

「ほ、本当……さっきの………放送で……な、名前が………呼ばれて…………」

再び言葉が紡げなくなる、視界がにじんで前が見えなくなってくる。

「ちっ、そいつ“も”殺してやろうと思ってたんだが、まあいいか」

………そいつ“も”?

どういうこと?
私も殺すってこと?
それともほかの誰かを殺したってこと?
どうしてこいつはオルナのことを知っている?
どうしてオルナのことばかり聞いてくる?

……………まさか。

まさか……まさか…まさか、まさか、まさかまさかまさかマサカマサカ!!!

「まさか………おまえが、オルナを………」

答えは、すぐには返ってこなかった。
嘲笑うような、何かを期待するような、そんな冷笑を浮かべながら、返ってきた答えは………

「さぁ、どうだか?」

瞬間、今度こそナビィの体は暴発した、自制の鎖はバラバラにはじけ飛んだ。
目の前の男を殺すために、絶対的な殺意に突き動かされて、意味をなさない咆哮とともに、牙をむき出しにして飛び掛かった……………が。

「がはぁ!!」

その突進は突然空中に出現した岩の塊に押しつぶされて止まった。
あらかじめディレイスペルで仕掛けられていたストーンが発動したのだ。
普段のナビィなら鋭敏な感覚と反射神経で回避できたかもしれないが、怒りに我を忘れた今は、その発動を察知することもできず無様に直撃を食らってしまった。

しかし、今のナビィにはそんなことはどうでもいい。
痛みなど感じなかった。
依然、燃え上がる殺意が彼女の心と身体を支配している。
今の攻撃で受けたダメージは決して小さくはないが、それもどうでもいいことだ。

自分を押しつぶす岩石を跳ね除けようと全身に力をこめたそのとき、声を最後の一滴まで搾り出すような、もはや悲鳴とも呼べない苦痛の呻きが聞こえた。
その声に煮えたぎっていたナビィの心は急激に凍り付く。

恐る恐る顔を上げると、ダージュの靴がもうこれ以上痛めつけようの無であろうクリスの手を踏みにじっていた。
靴の動きに合わせて、折れた指が好き勝手に踊る、まるで伴奏のように搾り出される悲鳴………

「誰が動いていいつったんだよ? ええ!!」

更に激しく、踵で手の甲を踏みにじる。
その声は怒気をはらんでいたが、その目は「待ってました!」と言わんばかりに笑っていた。

「やめてぇ!! もうやめてよおおぉぉぉ!!」

もう叫ぶことしかできなかった、敵を倒すとか、仲間を助けるとか、立ち上がるとか、そういった気力はもう消え失せていた。

とうとうこらえ切れなくなった涙が止め処なくあふれ出す。
それは好き放題に仲間を蹂躙される怒りによるものか。
何もできない自分の無力を呪ったものか。
それとも、もっとも大切な二人の仲間の死を再確認した絶望のためか。
この先また独りで生きていかなくてはならないことに恐怖したためか。
あるいはそれら全てか。
もう何も分からない。

「くっくっくくくく、くははははは、はーーーはっはっはっはっ!
 なぁ! 見てるかーー! オールナーーー!! ひっはっはっはっは!!」

天に向かって吼えるように叫びながら、狂ったように笑い続けるダージュ。



別の方向から、別の悲鳴が上がる。

「へっへっへ、なかなかいい体してんじゃねぇか」

えびげんのメイド服は前半分が大きく切り裂かれていて、ほとんど下着姿になっていた。
破れた服の下からのぞく肢体は、なるほどなかなかに女性的ないい体をしていた。
たいていの男はその体に劣情を催すことだろう。
ただ一点、体中があざだらけであることをのぞけば………
しかし、この男にとってはそれも興奮を促す最高のスパイスに過ぎない。

真っ赤な雪の絨毯の上には切断された指が無造作に捨ててあった。
何本あるか数えるまでも無い、えびげんの手のひらにはもう一本も指が残っていないのだから。
しかし手のひらだけあれば十分、それだけでえびげんは動けない。

「よぉし、手始めに一発犯ってやるぜぇ!」

モヒカンのメガトンハンマーはすでに準備万端だ。
後は取り出してねじ込むだけでどんな女も文字通りの意味で昇天させることができる。

えびげんも見るのが初めてと言うわけではない、だがこれほどまでのものを見るのは初めてだった。
あまりの衝撃に声を出すこともできなくなった。
この男は本当に人類なのかと疑った。
そして、今からそれが自分のなかに………

それを意識したとたん歯の根があわなくなるほどの恐怖に震えた。
しかし、逃れることは叶わない。
モヒカンのものがゆっくりと下腹部に迫ってくる。



狂笑と叫喚が共鳴するこの地獄で、ナビィは涙を流しながらつぶやいた。

「たすけて………」

小さく、かすれた声でもういちど。

「だれか……たすけてよぉ………」

その声が聞き届けられたのかどうか、それは分からない。
しかし今、この地獄に天から一筋の希望が舞い降りた。
[18]投稿者:『蜘蛛の糸』 その四 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2010/07/25(Sun) 16:51 No.548  
「………なんだ、てめぇは?」

上からの奇襲を紙一重で回避したダージュがギロリと襲撃者をにらむ。

「………なんで……あなたが?」

ナビィはあまりに意外な人物の登場に目を丸くしていた。

「ふっふっふっ………」

街灯の光の中に大胆すぎる笑みが浮びあがる。

その人物は舞い落ちる雪と共に空からやってきた。
そして、悦に浸っていたダージュに一撃見舞うと、電光石火の早業で足蹴にされていたクリスを助け出したのだった。

まるで清流の流れのように、一筋の髪をなびかせながら、不敵な笑みを浮かべるその人物は………

「正義の使者、天崎涼子! 推して参上!!」



「ちっ!」

ダージュの舌打ち、それは突然の乱入者に対するものというよりも、自分自身の不甲斐なさに対するものだった。

(状況が状況とはいえ、いくらなんでも油断しすぎだ!)

あのとき、ダージュは涼子の不意打ちに全く気づいていなかった。
それでも攻撃を回避できたのは一重に攻撃のおとりになる盾、デコイシールドのおかげだ、これが無ければ今頃自分は間違いなく死んでいただろう。

「どうして?」

いまだ岩の下敷きになっているナビィが再度問いかける。

「どうして私達を助けてくれるの?」

問われた涼子はしばらく「う〜ん」と唸っていたが、やがて何かを思いついたように口を開いた。
その口から出てきた答えはナビィの予想をはるかに超えたものだった。

「知らないのか、“強敵”と書いて“とも”と読むのだよ。
 さっきこぶしで語り合った仲じゃないか!!」

ナビィは信じられない思いでその言葉を聞いていた。
まさかそんな理由でさっきまで殺しあっていた相手を助けてくれる人がいるなんて………

(この人……悪い人じゃなかったんだ………)

涼子の言葉に再び涙がこぼれそうになった。

しかし、実際のところ涼子はそんなお人好しではない、強敵云々のくだりは一度言ってみたかっただけだ。
本当の理由はもっと単純明快だった。

ただ単に“ムカついた”それだけの理由だった。

最初のうちこそ静観を決め込んでいた涼子だが、そのうちに状況は一方的ななぶり殺しになった。
しかも人質をとって、である。
道徳心の低めな涼子も、さすがに見ていて気分のいいものではない。
その上、いかにも変態風のモヒカン頭の方は明らかにメイドさんを犯すつもりだ。
いくらなんでも同じ女としてこの状況を黙って見ている気にはなれなかった。

そんな事情は露とも知らず、涼子の言葉を真に受けて感極まっているナビィを尻目に、興をそがれたダージュがあきれた口調で答えを返した。

「なるほど、お前が頭のおかしい女だってことはよくわかった」

ふぅ、とため息をひとつ

「………殺す」

その言葉が開戦の合図だった。

魔法の詠唱を始めたダージュの顔面めがけて、涼子が手首のスナップだけで持っていた武器を投擲する。
だが、その攻撃はカツン! と、子気味のいい音を立てて割り込んできたデコイシールドに阻まれた………涼子の狙い通りに。
今、ダージュの視界は自分の盾で完全にさえぎられている、その機を逃さず一気に間合いを詰めるべく涼子が地を蹴る。
ダージュもその音を聞き逃していなかった、さっきまで涼子が立っていた位置よりずっと手前に当たりをつけて、集めた魔力を開放する。

再びの雷鳴

多少のズレなど問題ではない、今放ったのはサンダーU、えびげんの胸を打ち抜いたときとはレベルが違う。
夜になって魔力の増幅されたダージュが使えば、人間など跡形も残らないだろう。

振り下ろされた雷槌が辺り一帯の大地を砕き、周辺の街灯が一斉にショートする。

しかし、ダージュは完全に見誤っていた、涼子の”速さ“を。
視界が開けたとき、ダージュの予想を裏切ってすでに涼子は目の前まで肉薄していた。
再びデコイシールドに救われる形で首への攻撃を回避、だが再び視界をふさがれたダージュは次の攻撃に対処できない。
盾の防御範囲から出た太腿に鋭い痛みが走る。

(この女! なんて速さだ!!)

夜の影響で身体能力も数段強化されているとはいえ、ダージュは本来魔術師だ。
参加者の中でもトップクラスの実力を持ち、しかも接近戦を得意とする涼子を相手に、この間合いでの切り結びはあまりに無謀。

「ちぃ!」

とっさの判断で地面にトルネードを突き刺し、巻き起こった暴風を利用して間合いを取る。
吹き飛ばされた涼子は空中でくるりと回って華麗に着地。
一方のダージュは足に受けた傷が痛みバランスを崩しての着地。

(くっ、傷自体は浅いが何か刺さってやがる。なんだこれは? ガラスの破片?)

ダージュの足に刺さっていたのは三角形に割れたガラスの破片だった。
どうやら最初に投げられたのも同じものだったようで、盾にも深々ときらめくガラス片が突き刺さっている。
大方どこかの窓ガラスを割って持ってきたのだろう。
まだまだストックがあるらしく、ズボンのポケットから新しく研ぎ澄まされた破片を取り出すと、それを影絵できつねを作るようにして三本の指でつまんで両手に構える。

「オイ! てめぇ待ちやがれ、これが見えねぇのか!!」

モヒカンの怒号が響く、そこには首筋に包丁を突き付けられたえびげんの姿が。
それを見た涼子はぴたりと動きを止め………なかった。

「この、涼子さんに人質なんて作戦が通用すると思ったら大間違いだ!」

そして、一切のためらいもなく言い切った。

もともとえびげんもナビィも、涼子にとってはついさっきまで殺しあっていた仲だ、大切な仲間でもなければ、守るべき存在でもない。
そんな二人を助けるのは言うなれば、ダージュとモヒカンをぶちのめすついでのようなものだ、命を懸けてまで助ける義理はない。

「それに……」

すっとナビィのほうに視線を移しながら、なおも涼子の言葉は続く。

「それにね、全員助けようとして、結局何もできなくて全滅じゃ何の意味もないでしょうが」

(!! そんなことは分かってる………分かってるけど…………!!)

分かってはいてもナビィには選べなかった、誰かを見捨てるという選択肢は。

(さっき誓ったばっかりなんだ、もう誰も死なせないって)

しかしその誓いは足枷にしかならなかった、今この場においては間違いなく涼子の選択のほうがよりよい選択だった。

人質は効かないと分かったモヒカンは、ただ舌打ちをしただけで、えびげんに対して特に危害を加えることなく戦闘に参加する。
モヒカンとしてはこんな形であっさりえびげんを殺す気は無かった、まだまだいたぶり足りないのである。

二対一、それでもその顔から不敵な笑みが消えることは無い。
再び、戦いの火蓋が切って落とされた。

(こんなことしてる場合じゃない!!)

ナビィはのしかかる岩を押しのけようと全身に力をこめる。
しかし、なぜか思うように体が動かない。

(動いて! 私の体!! あの人がくれた最後の希望なんだ!)

今この希望を掴み損ねれば、待っているのは真っ暗な絶望だけだ。
[19]投稿者:『蜘蛛の糸』 その五 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2010/07/25(Sun) 16:54 No.549  
ナビィが孤独な戦いを続ける中、こちらの戦いも激しさを増していた。

「くらえ! 北狐百裂拳!」

あたたたた!! と、ふざけた掛け声と共に繰り出される洒落にならない連続攻撃の前に、ダージュとモヒカンは圧倒されていた。

モヒカンの大振りな攻撃はあっさりかわされ、ダージュの素人同然の槍捌きはするとぬけられ、そこに次から次へと涼子の攻撃が撃ち込まれる。
ガラス片による攻撃は殺傷力が低く、致命傷になるような傷を受けることはなかったが、それでも浅い傷はどんどん増えていく。
このまま持久戦になればどちらが先に倒れるかは明白だ。

しかし、彼らが劣勢を強いられている最大の理由は別のところにあった。

「おい! 分身は使えねぇのか!!」
「ムチャ言うな、もう打ち止めだ!」
「チッ、役立たずが」
「テメェも魔法使えねぇんだろうがぁ!!」

そう、彼らにはもう魔力が残っていないのだ。
モヒカンは正真正銘の残量ゼロ、ダージュの方はせいぜい中級魔法一発分といったところだ。
サンダーUを易々と避けられた以上、中途半端な攻撃は確実にかわされるだろう。
使うならディレイスペルでの不意打ちしかないが、素早く立ち回る涼子に設置型のディレイスペルを一発で当てるのは至難の業だ。

(回復アイテムはあるにはあるんだが……)

国立魔法研究所での戦利品の中に、何かの薬と思われる液体入りの小瓶が五つあった。
その中で正体のわかっているものが一つだけある。
研究所で見つけた「魔力の回復に効果の高い薬草・薬品」という本に載っていた“エリクシル”という薬だ。
本によると体力、魔力の回復に非常に高い効果があるらしい。
しかも、何の因果か開発者名は“クリステル・ジーメンス”とあった。

これを使えば形勢逆転できるのだが………

(そんな隙はねぇよな)

今、ダージュのデイパックの中はガラクタであふれかえっていた。
涼子の圧倒的速さを考えると、おそらく目的のものを見つけ出す前に首が飛ぶことになるだろう。

「もーらったぁぁ!」
「!!」

ダージュが思考の海に沈んでいたのはほんの一瞬、その一瞬の隙を突いて涼子がガラス片を振るう。
この武器で致命傷を狙うなら、頚動脈や大腿動脈といった主要な血管を狙うほか無い、しかし涼子の狙いはそのどちらでもなかった。
狙うはダージュのデイパックの肩紐。

「よっしゃぁーー! とったどーーー!!」
「しまった!」

鮮やかな手並みでデイパックを強奪した涼子は、遠慮なくその場で中身をぶちまけた。

「おー、いろいろ入ってるねぇ。でもあんまりお金になりそうなものは………って、これは! 涼子さんのナイフじゃないか!!」

雑多なガラクタの山から一振りのナイフを手に取ると、手の中で二、三度くるくると回して握り心地を確かめる。

「んー、やっぱり手になじむ感じがしますなぁ」

さらにヒュンヒュンと音を立てて何度か空を切ると「よーし」と一言。
その顔には余裕の笑みが浮かんでいた。

「おい! やべぇぞ!! どうすんだ!」
「どうするつったて………」

今まで持ちこたえられたのは涼子がまともな得物を持っていなかったからだ。
もしちゃんとした得物を持っていたら………考えたくもない。



自分のナイフを取り戻した涼子はまるで水を得た魚のようだった。
圧倒的スピードに、脆いガラスにはなかった重さと切れ味が加わったことで、モヒカンの棍棒はあっという間に輪切りにされ、ダージュの盾は随分と風通しがよくなっていた。

(やばすぎだろ、この女!!)

こうなってしまってはもはや太刀打ちできない、逃げたほうが懸命だ。
だが、敵は逃げる暇も与えてくれない。

涼子はダージュの突きをひょいっと避けて、右手に持ったナイフによる回転を加えた一撃が見舞われる。
盾が自動的にその攻撃を防ごうと突き出される。
しかし、予想よりはるかに強い衝撃がダージュの手からデコイシールドを弾き飛ばした。
涼子の右手にナイフはなかった、今の攻撃は回転を加えた裏拳だ。
そして、消えたナイフは左手に………

(いっ、いつの間に持ち替えやがった!)

そのまま勢いを殺さず涼子はさらに半回転。
きらりと光る刃がダージュの首へと吸い込まれていく………



飛びのいたダージュはカクリと地面に片膝を突いてしまった。
恐る恐る自分の首を確認してみる。
血が出ていた。
しかし、その量はごく僅かだ。
どうやら太い血管は切られていないらしい。

そのことを確認したとたんにどっと冷や汗がふきだした。
思い出したように止まっていた心臓が勢いよく脈打ちだす。

ダージュはさっき間違いなく自分は死んだと思った。
そして今は生きていたことに対する安堵よりも、どうして自分は生きているんだという疑問のほうが強かった。
涼子の方も同じだったらしくキョトンとした顔をしている。

「ありゃ? 今のはいったと思ったんだけどな、やっぱ怪我が効いてるのかな? っていうか痛ってぇぇ、右手超痛て〜〜〜」

盾を殴り飛ばしたのがよっぽど痛かったらしく、右手をぶらぶらと振りながら飛び跳ねている。

もう一度首の傷を確認してみる。
すると指先が硬いものに触れた。

首輪………よく確かめると僅かに傷がついている。
どうやらこれにあたって刃先が微妙にそれたらしい。

(こんなもんに救われるとは………)

なにやら情けない気分になってきたダージュだが感傷に浸っている暇はない、右手の痛みから回復した涼子がすでに戦闘態勢を取っている。

「おい、大丈夫か? 逃げるぞ! あいつはやばすぎる!!」
「待て待て〜い、この涼子さんが逃がすと思うか?」
(その通りだ、身体能力はあいつのほうが確実に上、走ったって逃げ切れるもんじゃねぇ)

何か手はないのか?
そう思って周りを見渡したときダージュはとんでもないことに気づいた。
自分が今膝をついているのはさっき涼子がデイパックの中身をぶちまけた場所だ。
あたりにはいろいろなものが散乱している……エリクシルも………

(いや、ダメだ! 飲んでる間に今度こそ首を持っていかれちまう)

モヒカンをおとりにする………のは無理だろう。
おとりになれといってなるやつじゃないし、そもそも分身のできないこいつでは時間稼ぎになるかはなはだ怪しい。

涼子はすでに勝ちを確信した顔でゆっくり間合いをつめてくる。
どっちが悪者か分かったものじゃない。

(考えろ! 考えろ!! なにかの肉、モップ、ギター、布切れ、王冠、異世界の武器………何か使えるものはないのか?)

そのときダージュは視界の隅にあるものを捉えた。
それは逆転への飛躍を可能にする奇跡のアイテム。

「くっそがぁ!」

やけくそ気味に投げつけられたのは何の変哲もない、鮭を咥えた木彫りの熊。
涼子はそれを余裕でキャッチ。

「こんな熊さんでこの涼子さんが倒せると思ったか!」

「はっはっは」と、笑いかけたそのとき、さっきまで焦っていたはずのダージュは必死で笑いをこらえるような微妙な表情をしていた。

(あ、やば………)

そう思って放り捨てたときにはすでに手遅れ。
熊に仕組まれたディレイスペルが発動して、それを中心にあたりの空気が急激に冷やされていく。
[20]投稿者:『蜘蛛の糸』 その六 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2010/07/25(Sun) 16:55 No.550  
「ぐああああああぁぁぁぁぁ………!!」

あまりの激痛に視界は激しく明滅を繰り返し、気が遠のいていく。
今にも崩れ落ちそうになる体を何とか支える。

左腕が、凍り付いていた。
思わず凍った腕を逆の手で掴んでしまう、するとべたりと手の皮が張り付いてしまい、慌てて引き剥がす。
右手の手のひらはずるずるに剥けてしまっていた。

後一瞬熊を投げ捨てるのが遅れていたら、左腕どころか全身が凍り付いて、涼子はたちまち氷像になっていただろう。
むしろ左腕だけで済んで喜ぶべきなのかもしれない。

しかし、氷の浸食は今も広がり続けていた。
最初に凍りついたのは肘より先だったが、今や二の腕まで凍り始めている。

涼子はいつの間にか落としてしまったナイフを拾うと、歯を食いしばって氷と肉の境目に刃を突き立てた。
たったそれだけで、二十年近く使い続けた左腕はぽっきりと折れ、地面に落ちて砕け散った。

「くっくっく、勝負の明暗を分けるのは一瞬の油断だよなぁ」

油断、確かに自分は油断しやすい性質だ。
そのせいで窮地に陥ることも珍しくなかったし、奈々にもよく「油断しすぎ………」と、じと目で注意されたものだ。
だが持ち前の身体能力でどんな危機も乗り切ってきた、しかし今回は………

(これはちょっと洒落にならないよ………)

ダージュはぶちまけられたガラクタのなかから小瓶を拾い上げると、その中身を一思いに飲み干した。

「おお! これはすごい、魔力がみなぎってくる感じだ」

それだけではない、体中に刻まれた無数の傷もいつの間にかふさがっている。

ほんの一瞬の油断、愛嬌ある熊の置物という緊張感を感じさせないアイテムがその一瞬を致命的なものに変えた。
明らかに緊張感を感じさせる形をした火薬鉄砲や、何が包まれているか分からない雑巾などでは決してこの隙は生まれなかっただろう。

「やるじゃねぇかおい! なぁ、俺にもなんかくれよ、さすがにきついぜ」
「あん? そうだな、これでも飲んでろ」

モヒカンは疑いもせずに投げ渡された赤い液体を飲み干す。
正直なところあの赤い液体の正体は謎だ。
毒薬かもしれないが、まあ知ったことじゃない。

「ふー、ちょっとはましになったな」

どうやら中身は回復アイテムだったようだ。
と、いうことは後二つも回復アイテムということか。

「さてと、散々好き勝手やってくれた礼をしないとな」
「ぐぅ………くっ……この……涼子…さん……が………この程度……で……負けると………でも…………」
「無理すんじゃねぇよ、かわいい笑顔が引きつってるぜぇ!!」
(くそっ、あのモヒカン絶対殺す)

と、心の中で息巻いてみたものの、気を張っていないと今にも失神してしまいそうなほどの痛みが全身を駆け巡っている。
切断面が凍っていて出血していないのがせめてもの幸いだが、隻腕でこのまま戦い続けるのは無理だ。
正直ここは逃げるしかない。

そのとき、ダージュたちの後方でゴトン、と物音がして全員の注意がそちらに向いた。
ナビィがようやく岩の下から這い出した音だった。

(チャンス!)

くるりと身を翻し、気を失ったままのクリスを残った腕で担ぎ上げると、一目散に商店街の出口へと向かう。

(悪いね猫耳少女、私にはこれが限界だ。後は自力で何とかしてくれ!)
「逃がすか!」

ダージュの詠唱と共に、虚空から無尽蔵の水が噴出す。
それは商店街の道幅いっぱいを占領するほどの津波となって涼子に追いすがる。

(津波?! ここでつかまったら死ぬ!!)

出口まで後十メートル。
欠けてバランスが悪くなった体を酷使して、全力ダッシュで脱兎のごとく逃げる。

かくして津波が去った後、そこには誰の姿もなかった。





【A−3:X2Y3 / 商店街西出口付近/ 1日目:夜】


【天崎涼子@BlankBlood】
[状態]:疲労大、左腕切断(表面が凍っているため出血は無し)、
    殴られた痕、ガラスの破片による切り傷、火傷、
    アフロヘア、顔にちょびヒゲの落書き
[装備]:涼子のナイフ@BlankBlood

[道具]:ガラスの破片×2@バトロワ
ゼリーの詰め合わせ×4@バトロワ
[基本]:一人で行動したい。我が身に降りかかる火の粉は払う。結構気まぐれ。
    でも目の前で人が死ぬと後味が悪いから守る。
[思考・状況]
1.とにかく逃げる
2.何処かで怪我の手当てと休憩
3.モヒカンとダージュは今度会ったら殺す
4.そう言えば奈々はどうしてるだろう、と思っていないわけじゃないかもしれない。

※ナビィ、クリス、明空、伊予那、エリナ、えびげんをモンスター、もしくはモンスターの仲間だと思っていましたが、乗りかかった船なので一応クリス、ナビィ、えびげんは信用しとく。
※第2回放送を聞いていません。


【クリステル・ジーメンス@SILENT DESIRE】
[状態]:
気絶、両腕骨折、両手の指を全て骨折、
    両手の指の爪が全て剥がされている、
    全身に打撲と擦過傷(身体のあちこちが紫色に変色している)
    胸骨骨折、肋骨6本骨折、血まみれ、魔力残量(中)、疲労(特大)、
    精神疲労(特大)
[装備]:なし
[道具]:なし
[基本]:対主催
[思考・状況]
1.気絶中
2.怪我の治療
3.首輪を外す方法を考える(魔術トラップの解除法は会得済み)
4.首輪を解除するまでは絶対に死なない

※参加者がそれぞれ別の世界から集められていることに気付きました。
※銃の使い方を教わりました。
※頭を何度も殴られましたが、命にかかわるほどではありません

[21]投稿者:『蜘蛛の糸』 その七 黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2010/07/25(Sun) 16:56 No.551  
あの女……引っ掻き回すだけ引っ掻き回してとんずらとは………なめやがって」

街灯の光を失った商店街

「この盾も便利だったのに、もう使いもんにならねぇな」

夜の闇はますます深まる

「あー、今度会ったらたっぷりと礼をしてやらねぇと」

この世に現れた地獄の底で

「お前もそう思うだろ? …………なぁ?」

ナビィは人生最後になるであろう絶望をかみ締めていた。

岩の下から這い出したナビィに自由は待っていなかった、そのときようやく悟った、自分はもう終わっていたんだと。
岩の戒めがなくなっても、その両足は動かなかった、それどころか何も感じなかった。

折れていたのだ、背骨が。

今度こそ全ての希望を失ったナビィは殴られることも、蹴られることもなかった。
ただ延々とえびげんが犯され続けるところを見せられただけだった。
生まれて初めて見る性交、そこには艶など微塵もなく、あるのはただ恐怖と苦痛のみ。

しかし、今はそれさえも消え失せて本当に何もない。
えびげんは今も犯され続けている、だがもう抵抗することも、悲鳴を上げることもない。
激しすぎる抽送に千切れてしまった手を庇うこともない。
「やめてください………お願いします………もうやめて………」と繰り返し哀願していたのは一体どれほど前のことだろう。

何の反応も返さない人形になってしまったえびげんにモヒカンもいい加減飽きてきたようだ。
おそらく終わりは近い。

突き上げられるたびに首はガクガクと不安定に揺れ動き、すっかり虚ろになってしまった目はもう何も映していない………目前に迫る“死”さえも………

「さて、向こうもそろそろ終わりみたいだし、こっちも始めるとするか」

やっと自分の番が来たか………
自分もあんなふうに犯されるのだろうか? 
自分は希望の糸を掴み損ねたのだ、もう逃げることも、戦うこともできない、早く終わってしまいたい。
もし地獄に落ちてもここよりひどいことはないだろう。

槍の穂先で強引に口をこじ開けられる、そんなことしなくても、もう抵抗なんてしないのに………
ゆっくり、ゆっくり、周りを傷つけないように、口の中を、食道を、槍の先端が通り過ぎていく。
さすがに吐きそうになったが、それはナビィ自身の意思ではない。
おそらく自分はこのまま縦に貫かれて死ぬんだろう………

「おい、もっと抵抗したらどうだ」
「……………」
「おいおいおいおい! 冗談じゃねぇぞ!! もっと泣けよ!! 叫べよ!! このままぶっ殺したって面白くねぇだろうがよぉ!!!」
「……………………」
「ああそうかい、それなら意地でも鳴かせてやろうじゃねぇか………そうだな……こんなのはどうだ? 見てたと思うがこの槍は結構強力な魔法の槍でな、強烈な風を発生させれるんだ」

それがどうした。

「もしよぉ、テメェの体の中で竜巻が発生したら………どうなるかな?」
「!!!」

さすがのナビィも青ざめた。
竜巻? 冗談じゃない!

「そうだよ……そういう顔できんじゃねぇか」

慌てて口に突っ込まれた槍を引き抜こうとする。

「いいぞ、いいぞ、もっと必死で抵抗しろ! まぁ無意味なんだがよぉ!!」
「ん! んむぐぅ!!」
「そんなんでいいのか? ほら……3」
「ん、んんーー?!」
「………2!」
「むぐ! んんむぅぅ!!」
「…………1!!」
「んぐんーー!! んむ! ぐむうぅ、ううぅ!!!」
「……………0!!!」

ボンッ!

「げぼっ!! が、げぇぇぇぇ、ごがあああぁあぁぁ!!」

断末魔の叫びと共に風と大量の血が口から噴き出す。
爆心地となった胃は風圧のため一瞬で破裂し、腹腔内では他の内臓がぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。
捩れ、千切れ、ナビィの腹部は激しく波打っていた。
そのうち必死で槍を引き抜こうとしていた手は痙攣し始め、力を失ってだらりと垂れ下がる。

「げっ……ぁぁぁ……が………げ…………ぇ」
「まだくたばるなよ」

今度は口に突き刺した槍を縦に、横に、奥に、手前に、乱暴に突きまくる。
やがて、引き抜かれた槍には何かが纏わりついていた。

(なに………? これ…………?)

ダージュがナビィの頭頂とあごに手を添えて強引に口を閉じさせる。
ぶちぶちと音を立てて、嫌な食感とともに、鉄の味に満たされていた口の中に苦い味が広がる。

「ほら、お前の内臓だろ。遠慮せずに食えよ」

そのまま無理やり自分の内臓を咀嚼されられる。

(わ……わた…し、じぶんの……ないぞう………たべ……たべて…………)

ナビィの意識はついに狂気に飲みこまれた。



「気に食わなねぇな………」

最大の目的を果たしたばかりだというのに、ダージュはすこぶる不機嫌だった。

「くっそが!!」

足元に横たわるナビィの死体を思いっきり蹴りつける。

「いやー、しかしテメェも顔に似合わずえぐいことするなー」

いい物を見た、というニヤニヤ顔でモヒカンが近寄ってくる。
そばには、穴という穴をモヒカンのサイズに広げられて、赤と白に染め上げられたえびげんの死体も転がっていた。

「で、何がそんなに気に食わねぇんだ?」
「………笑ってやがる」

ナビィの顔を指差しながらダージュははっきりと答える。

「生かしておいたほうがよかったのかもしれん。四肢を切り飛ばして、猿轡かまして、自殺できないようにしてから置き去りにして、孤独な人生続けさせてやったほうがより絶望的だった。それを殺しちまったから仲間のところにいけると思って笑ってやがるんだ」
「俺には気が狂って笑ってるようにしか見えねぇが………」
「ならテメェの目が節穴なんだ」
「そうかい」

どうでもいい、と言いたげな口調でモヒカンは答える。

「行くぞ、さっきの青髪の女も、魔術師の女も、ほかの逃がしちまったやつらも、一人残らず見つけ出して、片っ端から地獄に叩き落してやる」

ダージュは一枚の血で汚れた紙を広げた。
そこにはこう書いてあった。

(………脱出するには……船しかない……もう……)

地図上で船があるのは一箇所だけ。
ここに行けば逃がしたやつらのうち何人かに会うことができるだろう。



ダージュの後姿を見ながらモヒカンはほくそ笑んでいた。

(こいつは思った以上に使えるやつだな)

夜になってからのダージュの魔力は目を見張るものがある。
しかもこの狂気をうまく利用すればリョナりたい放題のパラダイスも夢じゃない。

この二人の共闘関係は今しばらく続くことになりそうだ。

[22]投稿者:『蜘蛛の糸』 その八 黒猫◇ZeGoU3RI 投稿日:2010/07/25(Sun) 16:57 No.552  
【えびげん@えびげん 死亡】
【ナビィ@リョナマナ 死亡】
【残り10名】



【A−3:X1Y3/商店街 / 1日目:夜中】

【ダージュ@リョナマナ】
[状態]:疲労(小)、魔力消費(微)
[装備]:トルネード@創作少女
[道具]:デイパック、支給品一式×5(食料21食分、水21食分)
    火薬鉄砲@現実世界
   (本物そっくりの発射音が鳴り火薬の臭いがするオモチャのリボルバー【残り6発】)
    エリクシル@デモノフォビア
    赤い薬×2@デモノフォビア
    魔封じの呪印@リョナラークエスト
    火炎放射器(残燃料100%)@えびげん
    AM500@怪盗少女(残弾0発)
    ミアたちが筆談に使っていたメモ用紙(支給品の一部)
[基本]リョナラー、オルナの関係者を殺す
[思考・状況]
1.豪華客船へ向かう
2.ナビィの仲間を殺す
3.オルナの関係者を殺す(誰が関係者か分からないので皆殺し)

※デコイシールド@創作少女 は涼子に壊されました。
※今回の戦闘を反省しいくつかの支給品を置いていくことにしました。
 置いていったものは以下の通りです。
 宝冠「フォクテイ」@創作少女
 髪飾り@DEMONOPHOBIA
 モップ@La fine di abisso
 白い三角巾@現実世界
 雑巾@La fine di abisso
 人肉(2食分)@リョナラークエスト
 新鮮な人肉(当分は無くならない程度の量)
 クラシックギター@La fine di abisso(吟遊詩人が持ってそうな古い木製ギター)     
 ノートパソコン&充電用コンセント 
 (電池残量3時間分程度、OSはWin2kっぽい物)@現実世界



【モヒカン@リョナラークエスト】
[状態]:顔面に落書き、おでこにたんこぶ、
    疲労(中)、魔力ゼロ、切り傷多数
[装備]:ツルハシ@○○少女
[道具]:手製棍棒×3
    眼力拡大目薬×3@リョナラークエスト
    スペツナズ・ナイフ×1@現実世界
    ショットガン(残弾数2+11)@なよりよ
    ≪以下、ディレイ・スペル付与支給品≫
    ○デイパック、支給品一式
    ○包丁@バトロワ
    ○ライター@バトロワ
    ○マタタビの匂い袋(鈴付き)@現実世界
    ○スペツナズ・ナイフ×2@現実
    ○三八式歩兵銃+スコープ(残弾1発、肩掛け用のベルト付き)@現実世界
[基本]:女見つけて痛めつけて犯る
[思考・状況]
1.女を見つけたらヒャッハー
2.豪華客船に向かう
3.初香、ミア、美奈、クリスを殺す

※東支部でのオーガ達との戦闘中の記憶が殆どありません



【ナビィ@リョナマナ】
[状態]:死亡、口から内臓が飛び出している
[装備]:運命の首飾り@アストラガロマンシー
    カッパの皿@ボーパルラビット
    スペツナズ・ナイフx1@現実
[道具]:デイパック、支給品一式×4(食料のみ28食分)
    エリーシアの剣@SILENTDESIREシリーズ(真っ二つに折れている)
    防犯用カラーボール(赤)x1@現実世界
    ライトノベル@一日巫女
    怪しい本@怪盗少女
    カザネの髪留め@まじはーど
    銘酒「千夜一夜」@○○少女、
    油性マジック『ドルバッキー(黒)』@現実世界(新品、ペン先は太い)



【えびげん@えびげん】
[状態]:死亡、全裸、手首から先なし、
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式
    パンダのきぐるみ@現実世界
    豹柄ワンピース@現実世界
    ウェディングドレス(黒)@現実世界
    ビキニアーマー@現実世界(コスプレ用のため防御力皆無)
    コードレスアフロセットマシン@バトロワ(後3回使用可能、アフロ化と元の髪型に戻
    すことができる)
    コードレスアフロセットマシン専用充電器@バトロワ(使用には家庭用100V電源が
    必要、コード長1m)
    油性マジック『ドルバッキー(黒)』@バトロワ(おろしたて、ペン先極太)

[23]投稿者:黒猫◆ZeGoU3RI 投稿日:2010/07/26(Mon) 01:13 No.553  
毎度毎度、期限ぎりぎりの投稿になり、
申し訳ありません。
自分の遅筆はどうやっても治せないようです。
[24]投稿者:289◆SqVSQKtY 投稿日:2010/09/24(Fri) 18:31 No.558  
さすがにそろそろ終わらせないといけないと思って、
書いてはみましたが、さすがに超展開な気が……。

というわけで反対意見あれば、どしどし意見ください。
自分でもちょっといきなりすぎる感はあるので、
感想を頂ければ嬉しいと思います。(`・ω・´)
[25]投稿者:289◆SqVSQKtY 投稿日:2010/10/03(Sun) 21:18 No.561  
よっしゃ、修正バージョン投下するぜぇ。(`・ω・´)
[26]投稿者:『反撃の狼煙は立つのか? その1』 289◆SqVSQKtY 投稿日:2010/10/03(Sun) 21:19 No.562  

「すぴー……すぴー……」

門番は民家のベッドで寝息を立てて寝ていた。

「……ん〜……」

門番は一瞬むずかったかと思うと、寝返りを打つ。

ドシィィィンッ!!

そして、そのままベッドから落っこちて、シノブとの戦いでできた傷を
激しく打ち付けてしまった。

「あんぎゃああぁぁぁぁっ!!?」

門番、できそこないの恐竜のような悲鳴を上げながら飛び起きる。

「い……いったあぁ〜……!」

涙目になりながら傷口をさする門番。

門番がシノブから受けたダメージは損傷が内臓にまで至っている。
本来なら激痛で睡眠を取ることもままならないはずなのだが、そこは我らが門番である。

魔物としての生命力と、そして何より眠ることに関してはの○太にも負けない、
数秒で眠りに落ちる特殊技能により、彼女はあっさりと眠りに落ちた。

しかし、いくら門番とはいえ、寝てる間に激痛を与えられて寝ていられるわけもなかった。

この激痛が他者から与えられたものならば、門番はその身の程知らずを八つ裂きにするだけの話だが、
今回はただの自業自得である。

怒りをぶつける相手のいなかった門番は不機嫌そうに唸りながら、辺りを見回す。

「……って、あれ?やくもんは?」

八蜘蛛の姿が見えないことに首をかしげる門番。

シノブとの戦いの後、すぐに気絶してしまい、八蜘蛛によってこの民家のベッドまで運ばれた門番には
八蜘蛛が初香たちを探しに行ったということなど分かるはずもない。

「……も〜……どこ行っちゃったんだよ、やくもん……」

門番は顔を顰めながらも、身を起こす。

「……まだ眠いけど……さっきみたいなことがあったら困るし、しょうがないか……」

この殺し合いの場所において、八蜘蛛を一人にすることは危険だ。
いくら彼女が魔王軍三将軍の一人とはいえ、この場には彼女に匹敵する猛者が大勢いるのだ。

魔族を守護する者として、八蜘蛛を危険に晒すことは門番にはできなかった。

「近くにいれば良いんだけど……とりあえず、町の中を探してみようかな……」

門番はそう呟き、八蜘蛛に当てた書置きを残して、眠気と痛みを堪えながら
民家から足を踏み出した。




外に出た門番を迎えたのは、シノブの死体と八蜘蛛が作り出したであろう繭だった。
シノブの死体を複雑な思いで見やりながら、門番は繭のほうに視線を向ける。

「これって、やくもんの繭だよね……ってことは中に人間が入ってるのかな?」

門番は繭を少し裂いて中身を確かめてみる。
すると、中には神官の格好をした満身創痍の小柄な少女が入っていた。

「あーらら……死にかけじゃん……これじゃ、大して養分にならないんじゃないの?」

門番はそう呟きながら、裂いた繭を閉じる。
そして、辺りに散らばっていた支給品をデイパックにかき集めて、デイパックを背負った。

「さて……ん?」

そこで、門番は気づく。
どこかから何かを叩く音がすることに。

きょろきょろと辺りを見回す門番。
すると、その音は放置されたレボスレイブの中から聞こえてくることに気がついた。

近づいて確かめてみると、手のひらに乗るくらいの小さな少女がレボスレイブのキャノピーを
叩いていることが分かった。

何かを訴えるようにキャノピーを叩く少女……バクを見ながら、門番は考える。

(……ひょっとして、出してほしいのかな?)

そう思い、リザードマンの剣をキャノピーのガラスに思いっきり叩き付けた。


バリィィィンッ!!


盛大な音と共に、レボスレイブのキャノピーのガラスが粉々に砕かれた。

「……っ!!?」

門番のいきなりの凶行に、バクは引きつった顔で全速力で後ずさる。
そんなバクに対して、門番は言う。

「ほら、これで出られるっしょ?
 私に感謝するんだぞ、妖精さん」

門番は脱力系の笑顔でにへらと笑いながら、恩を売りつける。
もちろん、涙目でがたがた震えているバクの様子には微塵も気づかない。

「……あ、そうだ。妖精さん、君、やくもん知らない?
 ちっちゃな女の子の格好してるんだけど……」

門番の問いかけに、バクは必死でぶんぶんと首を横に振るう。
門番は残念そうな顔をしながら呟く。

「そっかー……まぁ、しょうがないか。
 んじゃ、出してあげたお礼にやくもんを一緒に探してくれない?」

門番の言葉に、バクはしばし考えた後、首を縦に振る。
バクはキング・リョーナによって支給品として動くように命令されており、
基本的に持主の言葉には絶対服従である。

ゴートが死亡した以上、その後にバクを最初に見つけた門番がバクの所有者となるのが妥当なはずだ。

バクはそう判断し、門番の命令に従うことを決めた。
(……というか、バクは元々は門番の支給品なのだが……)




「いないねー、やくもん」

門番がだるそうに呟きながら、いくつめになるか分からない民家の扉を閉めた。

「それにしても、この町って死体ばっかりだねぇ……どんだけ、皆ここで戦ってんのさ?」

門番は周りに転がっている少年少女と化け物の死体に呆れた目を向けながら言う。

ちなみに、門番、彼らの支給品は回収済みである。
さらにラーニングの極意を読んで、ちゃっかりとラーニングも習得していた。
意外にも抜け目の無い門番だった。

「……もう探す場所もこの屋敷だけだし……この町にはもういないのかもしれないねー」

門番はそう言いつつ、だとすると探すのは骨が折れそうだとげんなりする。

この屋敷にいてくれ、やくもん!と願いながら、門番は屋敷の扉を開けた。




「……おらん……ホントどこ行ったの、やくもん……」

門番はくたびれた身体を壁に預けて、ため息を吐く。

「こりゃ冗談抜きに、外に出て行ったっぽいなぁ……。
 あんまり行きたくないけど、外まで探しに行ったほうがいいかなぁ……」

しかし、そこで門番はふと気づく。

「……って待てよ?普通、どっか行くんだったら書置きくらい残すよね?
 それが無かったってことは、すぐに帰ってくるつもりだったってことじゃ……」

そして、それにも関わらず八蜘蛛が帰っていないということは、八蜘蛛に何かあったということになる。
強敵と出会って戦闘中、怪我をして動けない、拉致もしくは監禁されている、あるいは……。

「……やべぇ……」

最悪の事態を想像して、青くなる門番。

シノブとのやり取りからして、八蜘蛛は他の参加者たちに恨みを買っている可能性が高い。
だとすると、八蜘蛛に恨みを持つ参加者、もしくはその参加者から八蜘蛛のことを聞いた参加者に
八蜘蛛がやられてしまったということは充分にあり得る話だった。

「い……急がないと……!」

焦る門番だが、ふとその門番の袖をバクがくいくいと引っ張っていた。

「……?」

門番が疑問の目を向けると、バクが棚に向かって指を向けた。

「何……って、ん……?風……?」

バクの示す棚の裏側から風が吹き込んでいるのだ。
それに気づいた門番は、棚を動かしてみた。

すると、そこには先へと続く通路が現れた。

「!……これって、隠し通路!?」

門番の言葉に、バクは頷く。

「よくやった、妖精さん!
 もしかしたら、ここにやくもんがいるかも……!」

門番はさっそく隠し通路の奥へと進んでいった。



[27]投稿者:『反撃の狼煙は立つのか? その2』 289◆SqVSQKtY 投稿日:2010/10/03(Sun) 21:21 No.563  

「暗いなー……妖精さん、ちょっと光ってくれない?」

門番の言葉に『無茶言うな』という目を向けるバク。

「だって、暗いんだもん……まったく、殺し合いさせるヤツらも
 明かり付ける道具くらい持たせてくれたっていいのにさぁ……」

ぶつぶつと文句を呟く門番。
『いや、懐中電灯はどうした』と心の中で突っ込むバクだが、
伝える手段が無いのでとりあえず冷めた目を門番に向けておく。

「あ、明かりが見えてきたよ、妖精さん」

明かりを見つけた門番はほっとした様子で、明かりの元へと駆けていく。
その門番の後ろにバクも続いていった。




「……なんか広いところに出たねぇ……どこだろ、ここ?」

門番は呟きつつ、きょろきょろと辺りを見回す。
だが、バクはその場所を見て、驚きで固まっていた。

なぜなら、バクはこの場所に見覚えがあったからだ。
この場所は、あの殺し合いの場所から決してたどり着くことができるはずのない場所だった。

『……なぜ、ここに……?』

バクはあり得ない出来事に混乱する。

「……ん?何、あれ?」

しかし、門番の言葉でバクは我に返った。
視線を向けると、そこには無機質な視線を向ける小さな少女たちの姿があった。

彼女たちの名は『レミングス』……この殺し合いの主催者であるキングが作り出した
人造生命体であり、キングの忠実な下僕だった。




門番とバクが見つけた隠し通路……そこは、驚いたことに参加者たちが最初に集められた
部屋へと続いていたのだ。

キング・リョーナが何を思って、わざわざ殺し合いのフィールドと自分の居城を繋ぐ通路を
作ったのかは分からない。

もしかしたら、彼は参加者の誰かがその隠し通路を見つけて、自分の元へとたどり着いたら
面白いと考えたのかもしれない。

もしくは、ただの偶然……彼が次元に干渉し、様々な世界を繋げて殺し合いのフィールドを
作ったときに、たまたま自分の居城へと繋がる通路ができてしまっただけなのかもしれない。

だが、確実に言えることは……。


これは殺し合いの参加者たちにとって、千載一遇のチャンスだった。




「ぐがー……むにゃむにゃ……」

だらしないいびきを上げて、グースカと眠っている男がいた。

彼の名はキング・リョーナ……この殺し合いの主催者である。

彼は第二回放送の後、放送で参加者たちに告げた通り、惰眠を貪っていた。
パジャマ姿でだらしなく眠りこけているキング・リョーナの傍には一人のレミングスの姿があり、
彼女の前には、門番とバクが立っていた。

「こんな小さな子に見張りを任せて寝てるなんて余裕だねぇ、この人……。
 殺し合いに巻き込まれてるって自覚ないのかねぇ、全く……」

困ったもんだと言わんばかりにやれやれと頭を振る門番。
突っ込みどころしかない門番の言葉に冷たい目を向けつつも、バクはさてどうするかと考えていた。

門番にキングのことを教えるか、それとも黙っておくべきか。

バクは好きでこの殺し合いの手助けをしているわけではなく、キングに脅される形で
嫌々手助けをさせられているだけである。

そんなバクとしては、殺し合いの参加者たちと同じようにキングに一矢報いたいという思いも
もちろんある。
この殺し合いゲームを破綻させ、キングを倒すことができるのなら、それはバクとしても
望むところだった。

だが、現時点ではキングの居場所を見つけただけである。
殺し合いの打破を目指すためには、まだまだ問題は山積みだった。

具体的には、以下。

【1】眠っているとはいえ、門番一人でキングが倒せるとは思えない。
   (しかも、今の門番は負傷中&ノーマル状態である)

【2】門番はキングが殺し合いの主催者だということを知らない。
   (そして、喋れないバクにそれを伝える手段は無い)

【3】キングの傍仕えのレミングスが監視している。

【4】そもそも、首輪の問題が解決していない。


結論、現時点ではキングを倒すのは無理。
大人しくここから去るべきだと、バクは判断した。

幸い、レミングスたちは門番やバクに対して何らかの行動を起こすつもりは無いらしい。
こちらから何もしなければ、キングを起こしたり襲ってきたりはしないようだ。

バクはさっさと門番にここから出るように促そうと、門番のほうに視線を向け……。

門番がいなくなっていることにようやく気がついた。

「……!?」

まずい。
バクは思った。

門番が何か問題を起こした場合、レミングスたちがどう動くか分からない。

慌ててバクはキングの寝室を飛び出し、門番を探しに行く。
だが、部屋を出たところですぐに門番の姿を見つけることができた。

「あ、妖精さんゴメンね、追いてっちゃって。一人で寂しかった?」

門番の的外れなセリフに脱力しつつも、バクはほっとする。
だが、門番が腕いっぱいに抱えている武器や道具、そして門番の後ろで
ジト目を向けているレミングスを見て、青ざめる。

「いやー、参ったよ、妖精さん。どうやらここにも、やくもんいないみたいなんだよねぇ。
 でも役立ちそうな道具たくさん見つけたし、とりあえず良しとしとこっか!
 なんか『支給品予備』とかよく分かんないこと書いてあったけど、別に問題無いよね?」

笑いながら言う門番に、バクは頭を抱えたくなった。
いくら何でも、キングの私物を盗んでタダで済むはずがない。

バクは懇願するような視線をレミングスに向ける。
レミングスはしばらくジト目を向け続けていたが、やがて溜息をつくとその場から
立ち去っていく。

そんなレミングスに、バクは困惑する。
だが、レミングスが立ち去り際に振り向き、バクに向けてぐっと親指を立てた。

それを見て、バクは理解する。
どうやら、見なかったことにしてくれるらしい。

バクはレミングスに感謝の視線を向けると同時に、キングはレミングスたちに
あまり敬われていないらしいことを悟った。

とりあえず、忠実な下僕という言葉は訂正しておこうとバクは思った。



[28]投稿者:『反撃の狼煙は立つのか? その3』 289◆SqVSQKtY 投稿日:2010/10/03(Sun) 21:21 No.564  

一方、地上のほうでは、ようやく昏い街に辿り着いた
伊予那、りよな、初香の姿があった。

「さて……まずはルカさんを探さないとね」
「……ルカさん……無事なのかな……」
「大丈夫、きっとルカさんは無事だよ、りよなちゃん」

不安そうなりよなを伊予那が肩を抱いて元気付ける。
そのとき、初香が疑問の声を上げる。

「……?あれ、何だろ?」
「どうしたの、初香ちゃん?」
「ほら、あれ……ロボットみたいだけど……」

初香の指差す咆哮に目を向けた伊予那は、キャノピーのガラスが砕けたレボワーカーを見つける。

「……確かに、ロボットだね……」
「……ロボットまであるなんてね……魔法や化け物に比べれば
 まだ現実的かもしれないけど……」

そう言いつつも、初香は考えていた。

(あれを動かすことができれば、あの化け物を倒すことができるかも……)

美奈を殺したスライム状の化け物。
銃弾の効かなかったあの化け物も、あのロボットならば倒せるかもしれない。

(あの化け物を倒せたなら、少しでもボクの失ったものを取り戻せるかもしれない……)

そう思った初香は、伊予那たちに言う。

「……悪いけど、ルカさんを探すのは伊予那とりよなに任せてもいいかな?
 ボクはあのロボットが使えないか確かめてみるよ」
「うん、分かった」
「気をつけてね、初香ちゃん……」

伊予那とりよなは初香の言葉に頷いて、ルカを探しに行く。

それを見送ると、初香はさっそくレボワーカーへと歩み寄る。

(いきなり動き出すことはなさそうだね……罠では無さそうだけど……)

考えこむ初香だが、近くに少女の死体があるのを見つけて警戒心を強める。
それと同時に、まさかこの少女がルカなのでは、と最悪の想像が初香の頭に浮かぶ。

「……ん?何やってんの、君?」

だが、いきなり聞こえた声に初香の身体がぎくりと強張る。
ゆっくりと振り向くと、そこには締りの無い顔の少女が宙に浮いた妖精のような少女を
従えて立っていた。

「……貴女は……?」
「私?私は門番(かどの つがい)って言うの。
 気軽に門番って読んでくれていーよー」
「……門番さん、ね。ボクは初香。登和多 初香だよ」
「初香だね。よろしくー」

門番はにへらと初香に笑いかける。
殺し合いの場だというのに緊張感の欠片も持たない様子の門番に、
初香は呆れた目を向けつつも、気づかれないように懐の銃に手を伸ばす。

「……それで、門番さんとその妖精さんはこの殺し合いについてどう思ってるのかな?」
「ん?そうだなー、とりあえず二度寝の邪魔をしてくれたキングってヤツは
 ボコろうと思ってるけど?……あと、妖精さんはよく分かんないや」
「……分からない?」
「……そういや、妖精さんって何者なの?よく見ると首輪もしてないし、
 殺し合いの参加者じゃないよね?」

今更な質問にバクは呆れつつも、門番のデイパックから自身の説明書を取り出して、
門番に渡す。

門番は説明書を読みながら「ふむふむ」と頷き、読み終わった説明書を初香に渡す。

「……ふーん……夢の精霊バク、ね……。
 なるほど、その子も支給品ってことか……」

初香は納得する。

「……ともかく、貴女たちは殺し合いをする気は無いってことだよね?」
「んー、襲われたならともかく、自分から殺すつもりは無いねぇ」

門番の言葉を聞いても、初香はしばらく疑うように門番を見ていたが、
やがて軽く息を吐いて銃から手を離した。

「……分かった、信じるよ。もしボクを殺すつもりなら、
 声をかけずに不意打ちしてくるはずだしね」
「……疑り深い子だなー。そんなんじゃロクな大人にならないよ?」
「大きなお世話だよ……そうだ、門番さん。いくつか聞きたいことがあるんだけど?」
「んー?何?」
「まず……この人を殺したのは誰か、知ってたら教えて欲しいんだけど……」
「……あー……」

その言葉に、門番は気まずそうに視線を泳がせる。
それを見た初香は訝しげな視線を門番に向ける。

「……どうしたのさ?何か知ってるの?」
「あ、いや……知らないよ?私、何も知らないよ?」

門番はあさっての方向を向きながら言う。
その様子に、初香は門番に対する信用度を下げる。

(……何か隠してるね……まぁ、見た目通りの分かりやすい性格みたいだし、
 騙される危険は少ないかな……)

初香はそう思い、今は無理に聞き出す必要は無いと結論付ける。

「……まぁいいや。もう一つ質問なんだけど、この近くで女の子を見なかった?
 神官って言ってたから、それっぽい格好をしてると思うんだけど……」

初香の言葉を聞いた門番の表情が固まる。
それを見た初香は門番に問いかける。

「……何か知ってるんだね?」
「……あー……その女の子って、君の仲間……?」
「……ボクの仲間っていうか、ボクの仲間の仲間かな」
「……んー、そっか……」

門番が気まずそうにぼりぼりと頭を掻くのを見て、初香はジト目で門番を見る。

「な……何よぉ、その目は……?」
「……何か知ってるんだよね?話してくれるかな?」
「……え……えーと、その……」
「…………」
「そ……そんな目で見ないでよぉ……あの神官の子はシノブと違って、
 私が殺したわけじゃ……って、あ……!」

その言葉を聞いた初香は、素早く門番に向かって銃を構える。
反射的に武器を構える門番だが、

バンッ!

「うひゃっ!?」

初香の威嚇射撃を受けて、あっさり武器を捨てて両手を上げる。

「……詳しく話してもらうよ?」
「……いや、その……えっと……」
「言っておくけど、拒否権は無いから。……それと、バク。動いたら撃つよ」

初香の警告に、眠りの魔法をかけようとしていたバクは固まる。
そのとき、銃声を聞きつけたのか、慌てて伊予那とりよながやってくるのが見えた。

「初香ちゃん、大丈夫っ!?」
「何があったのっ!?」
「大丈夫だよ、二人とも……それよりも、この人に気をつけて。
 どうやら、シノブって人を殺してるみたいだから」
「!?……シノブって、エリナさんの……!?」

伊予那は初香の言葉を聞いて、門番をきっと睨みつける。
門番はその視線にたじろぐ。
そんな門番を冷たく見据えながら、初香は門番に言い放つ。

「さあ、門番さん?知ってることを全部話してもらうよ?」
「……うぅぅ……は……話すから、撃たないでね……?」

そして、門番は初香たちに自分が知っている限りの情報を包み隠さず全て話すことになったのだった。



[29]投稿者:『反撃の狼煙は立つのか? その4』 289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/10/03(Sun) 21:22 No.565  
門番のもたらした情報は初香たちを驚愕させるものばかりだった。


門番が殺し合い開始から第一放送が終了するまで眠り続けていたこと。

門番はエリーシアやクリスの仲間であるアーシャやエリナの仲間であるシノブと
僅かな時間とはいえ、一緒に行動していたこと。

門番の仲間であり魔王軍三将軍の一人である八蜘蛛がシノブと敵対し、
門番は八蜘蛛の側に付いてシノブと戦い、シノブを殺したこと。

門番の仲間の八蜘蛛とは、初香たちを襲ったあの蜘蛛を操る少女と
同一人物らしいということ。

りよなの仲間のルカは、満身創痍の状態で八蜘蛛の繭の中に捕らえられているということ。

門番が殺し合いの主催者であるキングの居場所を見つけており、しかもそのことに
本人は気づいていないらしいということ。


「……嘘は言ってないんだろうね?」
「ぜ……全部、本当だってばっ!?信じてよぉっ!?」

必死に訴える門番に、初香は疑惑に満ちた目を向けていたが、
内心ではおそらく嘘ではないだろうと思っていた。

嘘ならもっとマシなことを言うだろうし、何より思ったことがすぐ顔に出る門番が
自分を騙して筋道の立った嘘をつけるとは思えなかったからだ。

「……とりあえず、門番さん。荷物を全部こっちに渡してもらおうか?」
「えっ!?そんな殺生な……!」
「撃たれたいの?」
「渡します」

門番はあっさり持っていたデイパックを初香たちのほうに放る。

「……この中に傷を回復できるものは?」

初香の言葉に、門番は必死に記憶を探りながら答える。

「え……えーと……たしか、さっきの部屋で拾ったエリクシルって薬と
 ラクリマって宝石が怪我を回復できるって説明書に……」
「伊予那。中身を確かめて」
「う……うん……!」

伊予那がデイパックから一つ一つ支給品を取り出していく。
門番の言葉通り、今までに門番が集めた大量の支給品が出てくる。

そして、初香はその中に確かにエリクシルが混ざっていることを確認する。
美奈が持っていたものと同じものだし、疑う必要も無いだろう。
クリスから教えてもらったエリクシルの効果なら、満身創痍のルカを回復させることも
可能なはずだ。

だが、念のために初香は伊予那に空のペットボトルを一つ取り出させる。
そして、初香はペットボトルにエリクシルを一口分入れて門番に投げるように
伊予那に指示する。

ペットボトルを渡された門番は疑問符を浮かべつつ、初香に聞く。

「えーと……どゆこと、これ?」
「飲んで見せて」
「?……う……うん……」

初香に言われたとおり、門番はペットボトルに入ったエリクシルを飲み干す。
すると門番の傷が僅かに回復したのが見て取れた。

その結果に初香は満足げに頷く。

「大丈夫そうだね……伊予那、繭を開いてルカさんにエリクシルを飲ませてあげて」
「うんっ!」

初香の言葉に頷き、伊予那は繭を開いて中にいるルカの口にエリクシルを流し込んだ。
すると、ルカの傷がみるみる塞がり、青白かった肌に血色が戻っていく。

「良かった……もう大丈夫そうだよ……」

伊予那の言葉に、りよなは安堵した表情を浮かべる。
初香はそれを見届けると、改めて門番に向き直る。

「さて……それで、貴女をどうするかだけど……」
「こ……殺さないでね……?」
「それは安心してくれていいよ。……バク」

いきなり呼びかけられて、バクはびくりと身体を硬直させる。

「門番さんを眠らせてくれるかな?
 その間に、門番さんを拘束させてもらうからさ」

初香の言葉に、バクは迷うような目を門番に向ける。
門番は諦めたように笑って、

「……いいよ。やっちゃって、バクちゃん。
 断ったらロクなことにならないだろうし……」

一応の主人の許しを得たバクは、ならばと門番に眠りの魔法をかける。
すると、門番はあっさりと眠りに落ちてしまった。

初香たちは民家からロープを見つけてきて、手早く門番とバクを拘束した。

そして、門番のデイパックの中にレボワーカーのマニュアルを見つけた初香は
それを十数分で読破し、レボワーカーの扱い方をあっさりマスターした。

(予定外に時間がかかっちゃったけど、このレボワーカーがあれば
 まだ豪華客船を探索する時間は作れるはず……)

初香は伊予那とりよなにここで待っているように告げる。
伊予那とりよなは最初は反対したが、初香にレボワーカーが一人乗りなことと、
レボワーカー無しでは豪華客船に辿り着いたとしても探索の時間が取れないことを
説明されて、渋々納得した。

初香はレボワーカーの試運転を数分で終えると、心配そうな伊予那とりよなを
安心させるように笑う。

「ボクなら大丈夫だよ、二人とも。
 それよりも、門番さんとバクをちゃんと見張っててよ?
 それからルカさんが起きたら、ちゃんと事情を説明しといてね」
「うん……気をつけてね、初香ちゃん……」

伊予那とりよなに見送られて、初香はレボワーカーを操り、豪華客船へと向かった。




【D-3:X3Y1/昏い街/1日目/夜中】

【門番{かどの つがい}@創作少女】
[状態]:ロープで拘束、ラーニング習得、熟睡中、疲労 中、負傷 小、
冷気による内臓損傷 小
[装備]:バク(ロープで門番と一緒に拘束)
[道具]:無し
[基本]:キングを泣きながら土下座させる、そのための協力者を集める
[思考・状況]
1.熟睡中
2.八蜘蛛を守る
3.キングを泣かすのに協力してくれる人を探す

※支給品予備置き場から以下のアイテムを入手しました。
 ・エリクシル@SilentDesire ※ルカに使用しました。
 ・ミラクルベル@リョナラークエスト
 ・魔力の薬×5@創作少女
 ・ラクリマ(青)×5@リョナマナ
 ・ラクリマ(水)×5@リョナマナ ※初香に3つ使用しました
 ・銘刀「大文字」@怪盗少女
 ・ハグロの刀×2@過ぎた玩具は必要ない
※『ラーニング』を習得しました。
※食事を済ませました。
※不眠マクラの効果に気づいていません。
※ロシナンテが死んだらしい事を知りました。
※一回目の放送は聞いていません。



【登和多 初香{とわだ はつか}@XENOPHOBIA】
[状態]:疲労 中、精神疲労 小、
[装備]:レボワーカー@まじはーど
(キャノピーのガラス損傷、本体の損傷度0%、ソリッドシューター[弾数1]装備)
ベレッタM1934@現実世界(残弾6+1、安全装置解除済み)
クマさんティーシャツ&サスペンダースカート(赤)@現実世界
[道具]:オーガの首輪@バトロワ
9ミリショート弾×24@現実世界
レボワーカーのマニュアル@まじはーど
[基本]:殺し合いからの脱出
[思考・状況]
1.豪華客船に向かう
2.オーガの首輪を解除する
3.仲間と情報を集める

※キングが昏い街の屋敷の地下(隠し通路経由)にいることを知りました。
※靴は新しいものを街で手に入れました。
※ラクリマ(水)×3によって、傷を回復しました。



【神代 伊予那{かみしろ いよな}@一日巫女】
[状態]:右手に小程度の切り傷
[装備]:トカレフTT-33@現実世界(弾数8+1発)
赤いお札×3@一日巫女
[道具]:デイパック、支給品一式(パン1食分消費)
SMドリンク@怪盗少女
門番のデイパック
(支給品一式×2、食料12、水10、
 ミラクルベル@リョナラークエスト
 魔力の薬×5@創作少女
 ラクリマ(青)×5@リョナマナ
 ラクリマ(水)×2@リョナマナ
 銘刀「大文字」@怪盗少女
 ハグロの刀×2@過ぎた玩具は必要ない
 リザードマンの剣@ボーパルラビット
 霊樹の杖@リョナラークエスト
 青銅の大剣@バトロワ、南部@まじはーど
 弓@バトロワ
 弓矢(25本)@ボーパルラビット
 不眠マクラ@創作少女
 ラーニングの極意@リョナラークエスト
 大福x8@現実世界
 あたりめ100gパックx4@現実世界
 財布(中身は日本円で3万7564円)@BlankBlood
 猫じゃらしx3@現実世界)
[基本]:桜を信じて生きる
[思考・状況]
1.初香が戻るのを待つ
2.門番とバクを見張る
3.カザネの他にもエリナの知り合いが居たら全てを話すつもり

※キングが昏い街の屋敷の地下(隠し通路経由)にいることを知りました。
※お札を操る程度の能力に目覚めました
※ひょっとすると無念の思いを抱えた死者の魂と会話できるかもしれません
※初香から靴を返してもらいました。



【篭野りよな@なよりよ】
[状態]:疲労 小
[装備]:サラマンダー@デモノフォビア
    木の枝@バトロワ
[道具]:デイパック、支給品一式(食料9、水9)
[基本]:殺し合いからの脱出、罪を償う
[思考・状況]
1.初香が戻るのを待つ
2.門番とバクを見張る
3.ルカに謝る

※キングが昏い街の屋敷の地下(隠し通路経由)にいることを知りました。
※初香から靴を返してもらいました。



【ロカ・ルカ@ボーパルラビット】
[状態]:気絶中
[装備]:なし
[道具]:なし
[基本]:生存者の救出、保護、最小限の犠牲で脱出
[思考・状況]
1.気絶中

※エリクシルによって、怪我と体力が完全に回復しました。






[30]投稿者:『マジックロッド』  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/10/16(Sat) 20:30 No.568  

マジックロッドは考える。

「ぐっ……うぅぅっ……!あぁぁっ……!」

八蜘蛛の糸に絡められ、もがいているミアを眺めながら考える。

『自分が力を貸すべきか、否か』

マジックロッドは考え続ける。




マジックロッドには意思がある。

マジックロッドは遺跡でミアと出会ったときから、ミアを自身の所有者と認めて
力を貸し与えていた。
ある洞窟で、ミアがドラゴンとの戦闘で危機に陥ったときに
ミアを転移させて命を救ったのも、他ならぬマジックロッドだった。
(もっとも、それは未来の……しかもミアが殺し合いに
 巻き込まれなかった場合の話なのだが……)

しかし、マジックロッドは全面的にミアを助けるつもりはなかった。
マジックロッドは、ミアには出来る限り自身の力のみで危機を乗り越えてもらおうと
考えていたのだ。

『自分が過剰に力を貸し与えてしまうと、この少女の成長を妨げてしまう』

マジックロッドはそう考え、静観していた。

……だが、ここに至ってはさすがにそうも言っていられなくなってきた。


ミアが八蜘蛛の糸に捕えられてから、すでにかなりの時間が経っている。

ミアは必死で糸の拘束から抜け出そうとしているが、おそらくこの場が禁止エリアに
なる前に抜け出すことは不可能だろう。

「あぁぁぁっ……!ぐぅぅっ……!あぁぁっ……!」

焦燥に満たされたミアの顔を眺めながら、マジックロッドは『仕方が無い』と判断する。

せっかくの逸材をこのまま見殺しにするわけにいかない。

マジックロッドは、ミアを助けることに決めた。
そして、マジックロッドは淡く輝きだす。




「……え……?マジックロッドが……?」

八蜘蛛の糸から抜け出そうと必死でもがいていたミアは、
マジックロッドが光りだしていることに気が付く。

「……な……何……?一体……?」

ミアは困惑するが、マジックロッドは輝き続ける。
……ただ、輝き続けるだけだった。

「……マ……マジックロッド……?」

ミアはマジックロッドに対して、戸惑った声を向ける。

だが、マジックロッドは答えない。
……マジックロッドは輝き続けるだけだった。




ミアが困惑しているのと同様に、マジックロッドも困惑していた。

『なぜ、転移できない?』

そう、マジックロッドは先ほどからミアを転移させようとしていた。
……だが、何度試みてもミアを転移させることができないのだ。

そして、幾度か転移を失敗した後、マジックロッドは失敗の原因に思い当たる。

制限だ。
それしか考えられなかった。

何ということか。
力の制限は参加者だけでなく、支給品にまで及んでいたのだ。

自分の力が及ばないと理解したマジックロッドは、初めて焦りを覚える。

まずい。これではミアを助けることができない。
このままでは、ミアが爆死してしまう。

マジックロッドはもはや出し惜しみすることなく、全力で力を発揮する。
だが、それでも転移は発動しない。

ミアの転移を必死で試みながら、マジックロッドは後悔していた。

あの男……キング・リョーナを甘く見すぎていた。

この殺し合いに巻き込まれてからも、マジックロッドは特に危機感を感じていなかった。
自分の力があれば、ミアをこの殺し合いから生還させることは造作も無いと考えていたのだ。

すぐにミアと再会できたことも、マジックロッドを油断させていた。
ミアの手を離れていたときは若干の不安もあったが、ミアの手に自分が戻った以上は、
万が一にもミアが殺されることは無いだろう。

マジックロッドはそう考え、楽観視していたのだ。
そして……ここに至って、マジックロッドの楽観はミアを致命的な危機に追い込んでしまった。

マジックロッドは必死で考える。

どうすれば、この状況を打開できるか?
どうすれば、ミアを助けることができるのか?

マジックロッドは焦燥に駆られつつも、考え続けていた。

だが、そんなマジックロッドの頭を冷やす声がかけられる。




「……大丈夫だよ、マジックロッド……」

ミアはマジックロッドの輝く様子を見て、自然とマジックロッドにそう話しかけていた。

マジックロッドの輝きがどこか不安そうに見えたから。
……マジックロッドが、自分を心配してくれているように思えたから。

「……私は、こんなところでは死なないから……。
 必ず……初香ちゃんやクリス、それに他の殺し合いに
 巻き込まれた人たちを助けるから……」

そして、ミアはマジックロッドを……自分の相棒を鼓舞するように宣言する。

「……私は必ず……貴方と一緒に、キングを倒すんだから……!」

ミアはそう言って、マジックロッドに笑いかける。
その顔には、すでに焦りは見えなかった。

なぜなら、ミアは思い出したからだ。
いつもミアに力を貸してくれて、ミアと一緒に戦ってきた相棒が
すぐ傍にいてくれたことに……。

ミアの言葉に、マジックロッドの輝きが収まる。

だが、次の瞬間にはマジックロッドは先ほどとは比較にならないほどの
強烈な光を放ち始めた。

「えっ……!?マ……マジックロッド……!?」

突然、強烈な光を放ち始めたマジックロッドに、ミアは驚きの声を上げる。

しかし、その声を無視するようにマジックロッドの光はさらに強くなっていった。




『死なせるものか』

マジックロッドはかつて無いほどに強く、そう思った。

ミアは死なせない。
必ず、この場から救い出してみせる。

もう、余裕綽々の高みの見物は終わりだ。
自分の持つ全ての力を、ミアに貸してやろう。

この殺し合いを、叩き潰してやる。
それがミアの……自分の相棒の望みなのだから。

『見せてやる、真の力を』

マジックロッドは自身の全ての力を解放する。
それは先ほどとは違い、強い思いを伴った力だった。

マジックロッドの掛け値無しの全力の力は、彼に掛けられた制限を打ち破った。


そして……次の瞬間には、ミアの姿はその場から消え去っていた。




気が付くと、ミアは見覚えのある場所にいた。

そこは、ミアのこの殺し合いのスタート地点……廃墟だった。
ミアは状況が理解できず、座り込んで呆然としていた。

だが、傍で明滅するマジックロッドに気が付き、全てを理解する。

「……また助けてもらっちゃったね、マジックロッド」

ミアのその言葉に答えるように、一際強く光るマジックロッド。

「……ありがとう、マジックロッド」

ミアはそう言って笑うが、すぐに気を引き締めて立ち上がる。

「……行こう、マジックロッド。初香ちゃんを探さなきゃ」

ミアは再び歩き出す。
八蜘蛛の糸に拘束され、遅れた時間を取り戻すように。

そして、ミアの手には力強く輝くマジックロッドが握られていた。




【B−4:X2Y3/廃墟/1日目:夜中】

【ミア@マジックロッド】
[状態]:魔力残量(小)、疲労(大)
[装備]:マジックロッド@マジックロッド(制限解除、ミアを全力で援護)
    四葉のクローバー@現実世界(頭に装備)
[道具]:なし
[基本]:対主催、できれば誰も殺したくない
[思考・状況]
1.初香を探す
2.できるだけ早くクリスの元へ戻る
3.バトルロワイヤルを止めさせる方法を探す

※マジックロッドの制限が解除されました。
※マジックロッドは以降、ミアを全力で援護します。
※東支部で襲ってきたモヒカンが今回遭遇したモヒカンと同一人物だとは認識していません。
※オーガの持っていた肉が人肉だと気づいていません。
※参加者がそれぞれ別の世界から集められていることに気付きました。






[31]投稿者:「はい、皆さん集合してくださーい」  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/11/07(Sun) 03:49 No.571  

雪が降りしきる闇の中、クリスを背負った涼子が息を切らしながら
走っていた。

「ぜぇ……ぜぇ……!」

必死に走る涼子を後ろから追いかける影が二つ。

「待ちやがれ、コラアァァァっ!!」
「はっ、逃げても無駄だぜ!?諦めて大人しくしろよ、オイ!?」

影の正体は語るまでも無いだろうが、モヒカンとダージュである。

涼子はクリスを背負って戦いの場から逃走した後、すぐに薬局で自分とクリスの傷を処置した。

しかし、その後に間髪入れずモヒカンとダージュが追ってきたのだ。
正直なところ、彼らがすぐに追いかけてきたことは涼子にとっては予想外だった。

丸腰だったとはいえ、自分と互角に渡り合ったあの獣耳の少女……ナビィの実力からすれば、
たとえ2対1といえど、あの男たちに引けを取りはしないだろうと涼子は思っていた。
最低でも、それなりのダメージは与えてくれるだろうと期待していたのだが……。

(……どう見ても、完っ璧にノーダメージじゃない、あの二人っ!!?
 何やってんのさ、あのケモ耳っ!!ちゃんと仕事しろ、コラァっ!!)

心中でナビィに罵詈雑言を浴びせながら、涼子は右腕のみでクリスを抱えて、
ひたすらに走り続ける。

いくら涼子といえど、左腕を失った状態であの二人を相手にするのはかなり厳しい。
今の涼子にできるのは、ただ逃げ回ることだけなのだ。

(ええい、チキショーっ!!こんなことなら助けなきゃ良かったっ!!
 左腕は痛いし、走りっぱなしでしんどいし、背中のは重いし……!!)

クリスを捨てていこうかとも考えたが、さすがに満身創痍の怪我人を放り出すような
非人道的なマネはできないし、ここまでやっておいて、今更見捨てるのも気に入らない。

都合良くそこらへんに奈々がいて追っ手を撃ち殺してくれないだろうかと情けない期待を抱くが、
すでに死んでいる奈々は涼子の期待に答えてくれない。

(奈々ぁぁぁーーー!!大好きなお姉ちゃんのピンチだぞ、奈々ぁぁぁぁーーー!!
 どこぞをほっつき歩いてないで、颯爽と現れて後ろの馬鹿二人を撃ち殺さんかあぁぁぁーーー!!)

期待に答えてくれない奈々に理不尽な怒りをぶつける涼子。
しかし、ほっつき歩いているどころかバラバラになって地面に転がっている奈々には無理な相談である。

(ええい、もういいっ!!愚妹に頼るなど涼子さんらしくなかったわっ!!
 この程度のピンチ、一人で切り抜けて見せようではないかっ!!)

涼子は心の中で『奈々の薄情モン!!』と最後に罵った後、奥歯を噛み締めて叫ぶ。

「加速装置っ!!」

次の瞬間、涼子の走る速度は倍近くとなり、みるみるモヒカンとダージュを引き離していく。

「なっ……!?」
「嘘だろ、オイっ!?」

驚愕するモヒカンとダージュ。

無理も無い反応である。
重傷の身で延々と走り続けていた涼子がここに至って、あり得ないほどの加速を見せたのだ。

「はははははっ!!あばよ、とっつあぁぁぁぁんっ!!」

涼子は馬鹿笑いをしつつ、凄まじい速度で走り抜けていった。




『突然ですが、雑学のお時間です。

 人間は追い詰められると身体のリミッターを外し、
 身体能力を限界まで引き出して、危機から逃れようとすることがあります。

 そして当然、普段は抑制している身体能力を全開で酷使するわけですから、
 後々代償を支払うことになっちゃうわけです。

 とても身体に悪いので、皆さんは身体のリミッターの外しすぎには注意しましょうね♪』




数十分後、そこには真っ白になって倒れる涼子さんの姿がっ!!


ざんねん!!りょうこさんの ぼうけんは ここでおわってしまった!!




「こらあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁっ!!
 涼子さんを しんのゆうしゃ にするんじゃねえぇぇえぇぇぇぇぇっ!!」


がばっと起き上がって、天に向かって咆哮する涼子さん。

えびげんさんに次いで、地の文に突っ込んだ二人目の参加者である。
実にめでたいことだ。

涼子さんは抗議の咆哮を終えると、力尽きたようにがくっと頭を地に突っ伏した。




【涼子さん@ぶらんくぶらっど 死亡】




「だから、涼子さんは死んでねええぇぇぇええぇぇぇぇっ!!」


再び、がばっと起き上がって涼子さんは抗議の咆哮を上げる。
しかし、すぐに力が抜けて地面にぱたっとする涼子さん。

「……あ、いかん。やっぱ死ぬかも」

おやすみ、涼子さん。

(……おやすみ〜……)

そして、今度こそ死亡……ではなく気絶する涼子さん。

降りしきる雪は涼子さんとクリスの身体に容赦無く降り積もっていくのだった。





[32]投稿者:「はい、皆さん集合してくださーい」 その2  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/11/07(Sun) 03:50 No.572  

一方、ここは昏い街。

伊予那たちは寒さと雪から身を守るために、適当な民家に移動して
暖を取っていた。

「……初香ちゃん……大丈夫かな……」
「うん……ちょっと遅いよね……何かあったのかな……」

豪華客船の探索に向かった初香を心配するりよなと伊予那。

「いやいや。探索に向かったんだし、もうちょい時間はかかると思うよ。
 あの子、子供とは思えないくらいしっかりしてたし、心配すること無いって!」
「……そう、でしょうか……?」
「そうそう、あの子なら大丈夫だよ!私が保証するから元気出しなよっ!」
「……はい……ありがとうございます……」

励まされたりよなは、礼を言う。

「いいってことよ」

それに満足げに頷く、門番。
ちなみに、縛られたままである。

「……って、何で貴女がりよなちゃんを励ましてるんですかっ!?
 貴女、シノブさんを殺した悪い人でしょっ!?」

何かがおかしいことにようやく気づいた伊予那が、門番に突っ込みを入れる。

「いや、だから、私だって殺したくて殺したわけじゃないんだってば。
 シノブの様子がおかしかったってことは、この子が説明してくれたじゃないさ」

怒鳴られた門番は身を竦めつつ、助けを求めるように視線を神官服の少女……ルカに向ける。

ルカはすでに目を覚ましていた。
初香が豪華客船に向かって十数分後、ルカは目を覚ましたのだ。
そして、伊予那やりよなに事情を説明してもらって、今に至る。

「……確かに……」

助けを求められたルカは、門番に冷めた視線を返しつつ答える。

「……確かに、シノブの様子がおかしかったのは認めるわ。
 たぶん、この殺し合いで仲間をたくさん失ったせいだったんだろうけど……。
 でも、だからって、それでアンタが信用できるって話にはならないわよ。
 アンタ、あの女の子……八蜘蛛の仲間なんでしょ?」
「うぐっ……!」

ルカの言葉に、門番は何も言い返せなかった。

「アンタが八蜘蛛と無関係だったなら信用しても良かったんだけど……。
 アイツの仲間じゃ警戒しないわけにもいかないわ」
「うぅぅ〜……やくもんのあほ〜……」

門番は涙目になって八蜘蛛にグチグチと文句を垂れ始めるが、ルカと伊予那は無視を決め込んだ。

「門番さん、泣かないでください。
 皆さんもすぐに門番さんが悪い人じゃないって分かってくれますよ」
「うぅぅ……ありがと、りよな……」

唯一、りよなだけは門番を慰めていた。

りよなは他の二人のように、門番に敵愾心や警戒心を持っていなかった。
門番がそれほど悪い人物には思えなかったというのもあるが、門番がシノブを殺したということを
同じ人殺しである自分が責めるのは筋違いだという思いがりよなの中で強かったということが
大きな理由だった。

りよなは門番がシノブを殺したことを伊予那に責められているのを聞いていて、
他人事とは思えなかったのだ。

(……エリーシアさんを殺した私だって、門番さんと同じ……。
 ……ううん、違う……門番さんは身を守るために戦っただけだけど、
 私は優勝するためにエリーシアさんを殺したんだ……同じなわけが、無い……)

責められるべきは門番ではなく自分のはずだ、とりよなは考えていた。
だからこそ、りよなだけは門番に対して普通に接していた。

伊予那やルカもそれが分かるからこそ、門番に対して強くは出れなかった。
敵意や警戒心を持ちつつも、拘束だけに留めて様子を見るしかなかったのだ。

伊予那は門番やりよなに聞こえないように、小声でルカに話しかける。

(……どうするんですか、あの人……?)
(……そうね……ずっとこのままってわけにもいかないしね……。
 追い出しても、一時しのぎにしかならないし……いっそ殺すか……)
(こ……殺すのは、ちょっと……)
(……もしくは、仲間にするか……)
(!?……あ……あの人をですか……!?)
(……そりゃ、私だって危険だとは思うけど……)

ルカとしても、門番の扱いには悩んでいるのだ。

伊予那たちから聞いた話では、門番は殺し合いに乗っている八蜘蛛の仲間であり、
人を殺している。
これだけ聞くと完全に危険人物であり、ルカの基準からすれば、即ズピャッである。

だが、同時に門番はエリーシアの親友であるアーシャの仲間でもあり、さらにシノブとも
元々は仲間だったという。
シノブを殺したのも、不幸にも八蜘蛛とシノブが敵対関係となり、古くからの仲間である
八蜘蛛のほうに門番が付いた結果だというから、半分以上は八蜘蛛のせいだとも言える。

実際に話をしてみた印象としては、特に問題のある人物とは思えない。
りよなとのやり取りも穏便そのもの、むしろ微笑ましさを感じるくらいだった。

(……でも、それだって演技の可能性も……いや、演技じゃなかったとしても、
 そもそも門番は八蜘蛛と合流したら、必ず八蜘蛛の側に付くはず……。
 やっぱり、殺したほうが……でも、りよなが……それに、門番自身は別に……
 いや、だからそれは演技かもしれなくて…………ああ、もうっ……!)

思考がまとまらず、迷ってばかりの自分にルカは苛立つ。

ルカはこの殺し合いの中で、エリーシアを殺人鬼と間違え、さらにりよなと八蜘蛛にも
あっさりと騙されている。
その経験から、ルカは自分の判断に自信を持てなくなっていたのだ。

(……私らしくない……!いつもなら、びしっと決めて、ズピャッてするのに……!)

それはそれで問題があると思うのだが、ルカは特に自分の思考に疑問を持たなかった。

ふと、そこでルカは気が付く。
街の入り口に何者かの影があることに。

すでに時刻は夜を回っており、影の正体が何者なのかは暗くてよく分からない。
ルカはすぐさま気を引き締め、伊予那からもらったハグロの刀を握る。

「……誰か来たわ。私が安全かどうか確認してくるから、
 ここから出ちゃ駄目よ、二人とも」

伊予那とりよなに警戒を促してから、ルカは扉を開ける。

「……ルカさん……」

不安そうなりよなに、ルカは後ろを向いて笑いかける。

「大丈夫よ、りよな。今は怪我も完全に治ったし、ちゃんとした
 武器もあるんだから、そう簡単にやられたりしないわ」

そう言って、ルカは外へと出て行く。



影は周囲を警戒しているようだ。

立ち居振る舞いから、それなりに戦いの心得があるようだが、
ルカほどの実力があるようには見えない。

ルカは気づかれないように、影の背後へと回る。
そして、刀をす……っと、影の首に突きつける。

「……っ!?」
「……動かないで」

身体を強張らせる影に対して、ルカは警告する。

「……いくつか質問をするから、正直に答えて」
「…………」
「まず、一つ目の質問だけど……アンタは殺し合いに……」

そして、影に対するルカの尋問が始まった。





[33]投稿者:「はい、皆さん集合してくださーい」 その3  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/11/07(Sun) 03:51 No.573  

豪華客船へと辿り着いた初香は時計を確認する。

(……後、一時間弱か……時間も無いし、急がないと……)

そして、初香は豪華客船の甲板に着くと、レボスレイブから降りて、
単身で豪華客船の中へと入っていく。
さすがにレボスレイブに乗ったままでは、船の中には入ることはできないからだ。

(……禁止エリア間近の場所に参加者がいる可能性は低いはず……。
 もし何かいたとしても、銃だってあるし、大丈夫……)

そう思いつつも、初香はたった一人で夜の船の中にいるという現状に怯えを感じていた。
暗闇の中を懐中電灯を頼りに進む初香の足が震えているのは、決して寒さのせいだけではなかった。

(……大丈夫……何もいるはずない……いるはずない……!)

自分に言い聞かせるように頭の中で『何もいるはずない』と繰り返す初香だが、
頭の中に浮かぶのは、国立魔法研究所で襲ってきた化け物の姿。

美奈を殺したあの化け物がこの暗闇の中、自分の背後や天井、もしくはそこの物陰から
現れて襲い掛かってくるのではないか、という考えがどうしても離れなかった。


ガタッ。


「ひっ!?」

後ろから聞こえた物音に初香はびくっと身体を震わせ、慌てて振り返って懐中電灯の明りを向ける。

だが、そこにあったのは、ただの本棚だった。
中を見ると、本が倒れている。
おそらく、そのときの音が先ほどの物音の正体だろう。

「……な……何だよ、もう……!脅かさないでよね……!」

涙目で文句を言う初香。
こんな下らないことで、大げさに怯えている自分が情けなくて、自然と探索の手が乱暴になる。

「……どこにあるんだよっ……!時間が無いってのにっ……!」

初香は八つ当たり気味に家捜しを続けるが、一向に見つからない。

そうこうしているうちに、時間が迫ってきた。
エリアからの脱出を考慮すると、もう猶予は十分もないだろう。

(……こうなったら、もう諦めるしか……!)

諦めかける初香だが、そのとき、ようやく工具箱らしき箱を見つける。

箱を開けてみると、様々な工具が大量に納められていた。

(……よしっ……!これで、首輪も何とかなる……!)

初香は顔を輝かせて、工具箱を持っていこうとするが、十歳の子供である彼女には
工具がぎっしりと詰まった工具箱は持っていくには重すぎた。

仕方無しに、初香は工具箱から金槌などの必要無い工具を取り出して、その場に捨てていく。
そして、重量の軽くなった工具箱をデイパックに無理やり押し込んだ。

時計を見ると、すでに猶予は五分と少し。

(……急がないと……!)

初香は急いで船から脱出すると、レボスレイブに乗り込み、昏い街へと引き返していった。






「……初香ちゃんが、禁止エリアにっ!?」

ルカたちから事情を聞いた影……ミアは、初香が首輪解除のための道具を探すために
単身で豪華客船に向かったことを聞き、思わず叫んでいた。

ルカはミアの名前を聞いて、ミアが初香の仲間だということに気が付いた。
そして、本人かどうか確かめるためにいくつか質問してみた結果、ミア本人に間違いないと確信し、
ミアを信用することにしたのだ。

「……そんな……!もう、時間が無いっていうのに……!」
「いやー、大丈夫だと思うよ?あの子、ゴーレムみたいなのを
 自由に操ってたし、アレがあれば滅多なことは起こんないはずだよ」
「……ゴーレム……モンスターの……?」

門番の言葉に、ミアは首を傾げる。

「……簡単に言うと、馬みたいに搭乗可能で何でも言うことを聞く、巨大な人型の支給品らしいわ。
 私は気絶してたから見てないけど、それだけ強力な支給品があればその子も大丈夫なはずよ。
 それに、禁止エリアに指定されたエリアに参加者がいつまでもうろついている可能性も低いしね」

ルカの説明にミアはようやく納得するが、それでも一抹の不安は残る。

「……あと、十分でD-5エリアは禁止エリアになりますけど……。
 初香ちゃん、本当に大丈夫でしょうか……?」

伊予那の言葉に、全員が沈黙する。
元々、ぎりぎりの時間に出発したことを考えれば、この時間になっても初香が帰って来ないことは
あり得ないことではないのだが、状況が状況だけに初香の身が危ぶまれていた。

そのとき、微かに『ガシャン、ガシャン……』という機械音が近づいてくるのが聞こえた。

「!……初香ちゃんだっ!」

伊予那の言葉に、全員の表情が明るくなる。

ミアは警戒も忘れて、外へと飛び出していく。
慌ててルカが追いかけ、それに伊予那も続いていく。

外に出たミアは、巨大なモンスターに乗った初香の姿を見つけて、安堵する。

「初香ちゃんっ!」
「……えっ……!?ミア……!?」

自分を出迎えた人物の中に、ミアがいたことに初香は驚く。
それと同時に、研究所の仲間に出会ったことで、初香は自分が美奈を見殺しにしたことを思い出す。

「良かった、貴女が無事で……美奈ちゃんが放送で名前を呼ばれたから、心配してたの……」

ミアの言葉に、初香の身体が強張る。
ミアは初香の無事を喜んでいるが、初香にはミアが自分を責めているように聞こえてしまう。

もちろん、ミアは事情を知らないのだから、それは初香の罪悪感による思い込みなのだが。

「?……初香ちゃん?」

様子のおかしい初香を、ミアが心配そうに呼びかける。

「……大丈夫、だよ……何でも無いから……」

のろのろとレボスレイブから降りた初香は、ミアと目を合わせないようにしている。
その様子に伊予那とルカは怪訝な表情を浮かべる。

「……あの……僕、く……コレを何とかしないといけないから……。
 悪いけど、今は……」

初香のどこか怯えたような様子に、ミアはしばらく黙っていたが……。

ミアは、いきなり初香を抱きしめた。

「……っ!?」

抱きしめられた初香は混乱する。

「ミ……ミア……?」
「……大丈夫だよ、初香ちゃん。
 何があったのかは分からないけど、私は初香ちゃんの味方だよ。
 もちろん、クリスもナビィもえびげんさんもね。
 だから……そんなに怯えなくても、大丈夫だよ」

ミアの言葉に、初香は震える。

味方。

簡単に言ってくれる。
自分は、その味方を……美奈を見殺しにしたというのに……。

伊予那やりよなと出会ったことで、今まで考えないでいられた、仲間を見殺しにしたという事実。

その事実は、今ミアと出会ったことで、初香の心を苛んでいた。

「……僕は……僕なんか……」

顔を俯かせる初香を、ミアはさらに強く抱きしめる。

「……ねぇ、初香ちゃん。
 初香ちゃんは責められるようなことは何もしてないよ?
 それどころか、今までずっと頑張ってきたじゃない?
 初香ちゃんはまだ子供なのに、いろんなことを考えて、
 皆を引っ張っていって……ずっと頑張ってたじゃない?」
「……でも……僕は……」


……美奈を、見殺しにした。

ミアは、知らないから、そんなことが言えるんだ。
自分が、何をしたか知らないから、そんなことが……。


「……きっと……」

しかし、ミアは続ける。

もういい。何も聞きたくない。
お願いだから……。

「……ミア……もう……」
「……美奈ちゃんだって……」
「……っ!」

美奈の名前を聞いた初香はびくりと震える。

「……美奈ちゃんだって……きっと、そう思ってるから……」
「……あ……」


その言葉と、震えているミアの様子に気が付いた初香はようやく気が付く。


ミアは、自分が美奈を見捨てたことに気が付いているということを。


「……ミ、ア……」
「……初香ちゃんは、悪くないから……。
 だから……そんなに、自分を責めないで……」
「……う……」



(……ああ、そうか)


初香は思う。


(……僕は……)


ミアの胸に顔を埋めながら、思う。


(……誰かに……)


……誰かに、そう言ってもらいたかったんだ。


「……う……あ……」


あれは仕方の無いことだったって。


自分は悪くなかったんだって。


誰かに……許してもらいたかったんだ。


「……うああああぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁっ……!!」


それに気が付いた初香は、泣いた。

優しく抱きしめてくれるミアの胸の中で、泣き続けた。





[34]投稿者:「はい、皆さん集合してくださーい」 その4  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/11/07(Sun) 03:51 No.574  

ミアは、初香に何があったのかを、完全に理解していたわけではない。

ただ、初香の様子と、放送で美奈だけ名前を呼ばれた事実から、
おそらく、初香が美奈の死に、何らかの責任と罪悪感を感じているのだろうと
いうことを推測しただけだ。

もしかしたら、初香は恐怖から美奈を見捨てるような行動を取ってしまったのかもしれないとも思った。

だが、そうだとしても、それは初香のせいではないとミアは思う。


恐怖に駆られて、仲間を見捨てて逃げ出した。

言葉にすると、許されない罪のように思える。
だが、逃げ出した当人も、そうしたくてしたわけではないのだ。

本当は助けたかったのだろう。
逃げ出したくなどなかったのだろう。

だが、恐怖がそうさせてしまった。
初香は、恐怖に負けてしまったのだ。

恐怖に打ち克つことは、難しい。
まして、初香はまだ子供なのだ。


確かに、初香は美奈を見捨てるという罪を犯した。

許さない、という者もいるかもしれない。
許されるべきではない、という者もいるかもしれない。

……だが、ミアは初香を許した。

何も悪くは無い、と。

それは、もしかしたら間違っているのかもしれない。
だが、少なくとも……一人の少女の心を救ったことは確かだった。






初香は泣き続けた後、そのまま眠ってしまった。

今までずっと動き通しだったのだ。
緊張の糸が切れて、疲れが出てしまったのだろう。

初香をベッドまで運ぶと、ミアとルカたちはようやく詳しい情報交換に入る。


そして、情報交換をした結果、現在の生き残りは12名。


その中で、対主催はクリス、伊予那、りよな、ルカ、初香、ミア、えびげん、ナビィ。

殺し合いに乗った者は、モヒカン男とエルフ男。

グレーゾーンは、門番。

そして、残りの1名は……。

「……おそらく、『天崎涼子』という人ね」
「……残りの参加者の名前から知ってる名前を除くと、そうなりますね。
 もちろん、初香ちゃんたちを襲ったモヒカンの人たちやスライムが
 『天崎涼子』じゃなければですけど……」
「……それはさすがに無いと思うよ、りよなちゃん……」
「……ていうか、私、その天崎涼子の妹の奈々って子に会って、
 容姿を聞いてるから、絶対にそれはあり得ないわよ」

ミア、りよな、伊予那、ルカは残りの参加者について話し合い、その正体が天崎涼子だと
いうことを確信した。

そして、ルカから天崎涼子の容姿を聞いた伊予那は驚愕する。
ルカから聞いた天崎涼子の容姿は、伊予那たちを襲った桃色の髪の少女の仲間と
同じ容姿だったからだ。

「……ということは、天崎涼子は殺し合いに乗っている可能性が高いわね」

複雑そうな顔で呟くルカ。

奈々を守れなかったルカとしては、奈々の姉である涼子は守り抜きたいと考えていたのだが、
当の涼子が殺し合いに乗っているとなれば、話が違ってくる。

もし主催を打倒する上での障害となるなら、モヒカン男やエルフ男(残った名前から推測して、
おそらくモヒカンとダージュだろう)と同じように、天崎涼子も倒す必要がある。

「……情報交換も終わったことだし、私はクリスを迎えに行くわ。
 私が戻ってくるまで、初香ちゃんのことはお願いね」

ミアはルカたちにそう告げると、立ち上がって外に出て行こうとする。

しかし、それをルカが引き止める。

「待って、ミア。貴女、かなり疲れが溜まってるでしょ?
 クリスさんは私が迎えに行くから、貴女は休んでてちょうだい」
「え……でも、私……」
「それに初香の目が覚めたとき、貴女が傍にいたほうがいいでしょ?」
「それは……」

迷うミアだが、結局はルカの言葉に甘えることにした。

いくらマジックロッドの制限が無くなったとはいえ、今のミアはかなり消耗しているのだ。
そんな状態で、もしモヒカンやダージュに遭遇したら、簡単にやられてしまうに違いない。

それよりは、怪我も疲労も無いルカに行ってもらったほうが良いだろう。
だが、それでも不安は残る。

ルカ一人で大丈夫なのか?
あの二人と遭遇した場合、いくらルカでも危険なのではないか?

「大丈夫よ。一人で行くつもりはないから」

不安そうな表情の面々に対して、ルカは事も無げにそう告げる。
それに対して、全員が怪訝な顔をする。

この場に、ミアとルカ以外に戦力になるものはいないはずだ。
一体誰を連れて行くつもりなのか……。

「……というわけで、行くわよ、門番」
「……へ?」

いきなり名前を呼ばれた門番は間の抜けた声を出す。

「ちょっ……ルカさんっ!?」

伊予那は驚いて抗議の声を上げる。

「言いたいことは分かるわよ、伊予那。
 でも、いつまでも門番の扱いについて迷ってても仕方ないでしょ。
 だから、とりあえず自由にして、一緒に行動してみるわ。
 怪しい素振りを見せたら、ちゃんと始末しとくから安心しなさい」
「し……始末って……」

ルカの過激な物言いに冷や汗を流す門番。
そんな門番に、ルカは笑みを向けつつ言う。

「始末されたくなかったら、信用されるように行動することね。
 期待してるわよ、門番?」
「……まぁ、自由にしてくれるっていうなら、願っても無いことだけどね」

拘束を解かれた門番は、返してもらった銘刀「大文字」を腰に差し、大きく伸びをする。

「……しっかし……やくもんも死んじゃったみたいだし、魔王軍三将軍は全滅か……。
 将軍が全滅して、門番だけ生き残っちゃってどうするってのさ……」
「…………」
「あ……いや、別にミアを責めてるわけじゃないけどさ……。
 ていうか、ぶっちゃけ殺されてもしょうがないことは散々やってきてたと思うしね……」

俯いたミアに気づいて、頭をぽりぽり掻きながら門番はフォローする。

「…………」

その様子を見て、ルカは考えていた。

門番は殺し合いに乗った八蜘蛛を守るために、シノブを殺した。
りよなは殺された妹を生き返らせるために、エリーシアを殺した。
ミアは自分を殺そうとした八蜘蛛を、返り討ちにした。
初香は先ほどの様子を考えると、おそらく美奈という参加者を見殺しにしたのだろう。

この殺し合いの場では、多かれ少なかれ、ほとんどの者が罪を犯している。

人によっては、ミアや初香のことは罪とは思わないかもしれない。
だが、人によっては、エリナが命をかけて守ったことによって生き残ることができた伊予那の
ことも罪人だというものもいるかもしれないのだ。

さらに言うなら、ルカ自身も罪無き人々を守るために、多くの命を手にかけてきた。
そして、この場では守れるはずの命をことごとく、その手から零している。


つまり……考え方によっては、全ての者が罪を背負っている。

少々極端かもしれないが、全員が全員、止むに止まれぬ事情や譲れぬ思いがあって、
罪を犯してきたことは確かなのだ。

(……だからこそ、柔軟な考えを持って、見極めないといけない……)

ルカはそう考え、門番の罪を自分の目でしっかりと見極め、彼女をどうするか、
結論を出そうと思ったのだ。


今までのルカなら、罪を犯した者は容赦無く切り捨てていただろう。
だが、この殺し合いの中での経験が、ルカの考え方を変えていた。

ルカは悪に対しての冷徹な容赦の無さを持ち、それゆえに視野の狭いところがあった。
しかし、この殺し合いで出会った参加者たちは、罪人でありながらその罪に苦しんでいた。

ルカが今まで出会ってきた罪人の中には、彼女たちのように己の罪に苦しむ者などいなかった。
分かりやすい悪人ばかりで、全員が罪の意識など感じていなかった。

(……でも、あの子たちは……)

りよな、シノブ、初香……彼女たちは本当なら、罪を犯すことなく、一生を心穏やかに暮らすことの
できる善良な人間だったはずだ。


だが、妹を失ったりよなはエリーシアを殺し、参加者全員を殺そうとした。

仲間を失ったシノブは悪だけでなく、悪に負けた者まで殺そうとした。

初香は美奈を見捨てて逃げ出し、そのことに苦しみ、怯えていた。


こんなことは、絶対におかしい。
彼女たちが、こんなことになって良いはずがなかった。

助けなければいけない。
そして、罪を償わせてあげなければいけない。

(……ここから無事に脱出できたら、しっかりと話を聞いてあげないとね)

自分は見習いとはいえ神官なのだ。
罪人の懺悔くらい、いくらでも聞いてやるつもりだった。

(……『罪を憎んで人を憎まず』か……先人はやっぱり偉大ね……)

ルカは、今まで表面だけしか理解していなかった言葉の中身を、やっと理解できたような気がした。





[35]投稿者:「はい、皆さん集合してくださーい」 その5  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/11/07(Sun) 03:52 No.575  

「……ようやく見つけたぜ。手こずらせやがって……」

ダージュは目の前に倒れている涼子に対して、忌々しげに吐き捨てる。

「へへ、コイツを見つけることができたのは俺様のおかげだな!
 感謝しろよ、オイ!?」
「……正確には、あの目薬のおかげだろうが」

ダージュとモヒカンは、見失った涼子を見つけるために眼力拡大目薬を使って、
視力を強化していた。
その結果、雪に埋もれた涼子を何とか見つけ出すことができたのだ。

「よっしゃ!とりあえず、叩き起こそうぜ!
 それから、たっぷりと拷問だ!」
「くくく、そうだな……散々走り回らされたんだ。
 報いはしっかりと受けてもらわないとなぁ?」

モヒカンのハイテンションな言葉に、ダージュは酷薄な笑みを浮かべる。

「んじゃ、まずは……」

モヒカンが涼子のアフロを引っ掴んで叩き起こそうとする。

「!?……避けろ、変態っ!!」

ダージュの警告に、モヒカンは素早くバックステップで後退する。
次の瞬間、モヒカンのいた場所に鋭い斬撃が走った。

「て……てめぇ……!?」
「……あーあ……外しちゃったか……」

跳ね起きた涼子は、いつの間にか手にナイフを握っていた。

「……不意打ちとは、舐めたマネしてくれるじゃねぇか」
「いや、別に狙ったわけじゃなくて、たった今気が付いただけなんだけどね」

ダージュの言葉に答える涼子は、しかし今にも倒れそうな風体だった。

今の涼子は、疲労と激痛で意識を保っているのすら難しい。
そもそも、この寒さの中でこの重傷、死んでいないのが不思議なくらいなのだ。

(……こりゃ、もう駄目かも分からんね……)

涼子は軽く絶望しつつ、襲撃者の二人を観察する。

エルフ男は先ほど使っていた槍ではなく、サーディの持っていた双刀を構えていた。
ということは、恐らく涼子の荷物を回収したのだろう。
もう一本をどこで手に入れたのかは知らないが、よく見るとここはあのときサーディと
共に戦った場所に近いようだ。
なら、道中でたまたま手に入れたのかもしれない。

あの双刀の恐ろしさは、殺人マシーンのような少女との戦いでしっかりと涼子の心に刻まれている。
たとえ扱う者がヘボでも、今の涼子にはかなりの脅威だ。

モヒカン男はエルフ男から貰ったのだろう、あの風を巻き起こす槍をこちらに向けて、威嚇している。
あの槍も、なかなか厄介な曲者だ。
巻き起こる風は間合いを詰めにくくし、それはリーチの長い槍に対して致命的となる。

エルフ男よりも武器の扱いに長けているモヒカン男の手に渡ったとなれば、
先ほどよりも苦戦することになるだろう。

(……しゃーない……せめて、一人くらいは道連れに……)

覚悟を決めようとした涼子だが、そのとき背後から何者かが走ってくる気配に気づく。

(……挟み打ちかね……?全く……どんだけ涼子さんを虐めれば気が済むのさ……。
 仕舞いにゃ泣くぞ、コンチクショー……)

ぐちぐちと心中でぼやく涼子さん。
いっそ、このまま気絶してやろうかと考える。

「……待ちなさいっ!!」
「!?……何だ、てめぇはっ!?」

だが、駆けつけた何者かは涼子を庇うように涼子の前に立った。

どうやら味方らしいが、すでに限界に達しており、視界がぼやけている涼子には
駆けつけた人物が誰なのか分からなかった。

(……ひょっとして、奈々かな……?うん、小っちゃいし、奈々だなコレは……。
 ……ったく、ようやく到着ですか……遅すぎるっての……)

「……遅いぞ、奈々ぁ……涼子さんを殺す気ですかっての……。
 ……んじゃ、悪いけど……」

……後は任せたぞ、妹よ……。

そう呟き、涼子は意識を失って倒れた。






涼子の危機に駆けつけた人物……ルカは涼子の呟きを聞いて、確信する。

(……やっぱり、彼女が天崎涼子に間違いないわね……。
 それと、そこに倒れているのは、たぶんクリスさんね……)

天崎涼子はクリスを庇うように、モヒカン男とエルフ男の前に立ちはだかっていた。
ということは、天崎涼子は殺し合いには乗っていないということになる。

伊予那の話とは食い違うが、もしかしたら何か誤解があったのかもしれない。
その点については、涼子と話し合う必要があるだろうが、まずは現状の打破が最優先だ。

「ちっ……!ナビィのときといい、次から次へと邪魔ばかり入りやがる……!
 まぁいい、まとめて始末してやるさ……!」

そう言うと、エルフ男は双刀を構える。
それを見て、ルカは目を細める。

(……私の双刀……)

エルフ男が構えているのは、確かにルカの双刀だった。

(……こんなヤツに……!)

ルカは自分の双刀がこんな男の殺人の道具に使われていることに憤り、
ぎりっと歯を鳴らす。

そのとき、後ろから足音が近づいてくる。
どうやら、ようやく門番が駆けつけたらしい。

門番はルカの傍に駆け寄りながら、文句を言う。

「ルカったら速すぎだってばー。もうちょっとゆっくり行こうよー。
 ……あれ?コイツら、誰?ひょっとして、敵?」
「……敵よ。門番、アンタも手伝いなさい」
「任された」

すぐさま、銘刀「大文字」を構える門番。
ルカもハグロの刀を両手に構え、鋭い目でモヒカンとダージュを見据える。

「へっ!俺たちと戦う気か、お前ら!?
 身の程ってモンを知っといたほうがいいぜっ!」
「油断するな、変態。ここまで生き残っている以上、
 コイツらもそれなりの実力者のはずだ」

モヒカンに忠告しつつ、ダージュはルカの双刀を構え直す。
モヒカンもにやつきながら、トルネードを構えて戦闘態勢を取る。


こうして、ルカ&門番VSダージュ&モヒカン戦が開始された。





[36]投稿者:「はい、皆さん集合してくださーい」 状態表  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/11/07(Sun) 03:53 No.576  

【C−3:X3Y2 / 森 / 1日目:真夜中】

【ダージュ@リョナマナ】
[状態]:眼力ドーピング、疲労(小)、魔力消費(微)
[装備]:ルカの双刀@ボーパルラビット
[道具]:デイパック、支給品一式×5(食料21食分、水21食分)
    火薬鉄砲@現実世界
   (本物そっくりの発射音が鳴り火薬の臭いがするオモチャのリボルバー【残り6発】)
    エリクシル@デモノフォビア
    赤い薬×2@デモノフォビア
運命の首飾り@アストラガロマンシー
    魔封じの呪印@リョナラークエスト
    火炎放射器(残燃料100%)@えびげん
    カッパの皿@ボーパルラビット
    スペツナズ・ナイフx1@現実
    防犯用カラーボール(赤)x1@現実世界
[基本]リョナラー、オルナの関係者を殺す
[思考・状況]
1.ルカ、門番、涼子、クリスを殺す。
2.豪華客船付近へ向かう。
3.ナビィの仲間を殺す。
4.オルナの関係者を殺す。(誰が関係者か分からないので皆殺し)

※道中でルカの双刀@ボーパルラビットを回収しました。
※眼力拡大目薬により、視力が強化されています。



【モヒカン@リョナラークエスト】
[状態]:眼力ドーピング、顔面に落書き、おでこにたんこぶ、
疲労(中)、魔力(小)、切り傷多数
[装備]:トルネード@創作少女
[道具]:手製棍棒×3
ツルハシ@○○少女
    眼力拡大目薬×1@リョナラークエスト
    スペツナズ・ナイフ×1@現実世界
    ショットガン(残弾数2+11)@なよりよ
    デイパック、支給品一式
    包丁@バトロワ
    ライター@バトロワ
    マタタビの匂い袋(鈴付き)@現実世界
    スペツナズ・ナイフ×2@現実
    三八式歩兵銃+スコープ(残弾1発、肩掛け用のベルト付き)@現実世界
[基本]:女見つけて痛めつけて犯る
[思考・状況]
1.女を見つけたらヒャッハー!
2.豪華客船付近に向かう。
3.初香、ミア、美奈、クリスを殺す。

※東支部でのオーガ達との戦闘中の記憶が殆どありません。
※モヒカンの支給品のディレイスペルはダージュが解除しました。
※眼力拡大目薬により、視力が強化されています。



【ロカ・ルカ@ボーパルラビット】
[状態]:健康
[装備]:ハグロの刀×2@過ぎた玩具は必要ない
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6/6、水6/6)
ミラクルベル@リョナラークエスト
ラクリマ(青)×5@リョナマナ
[基本]:生存者の救出、保護、最小限の犠牲で脱出
[思考・状況]
1.モヒカンとダージュを倒す。
2.涼子とクリスを助ける。



【門番{かどの つがい}@創作少女】
[状態]:健康、ラーニング習得
[装備]:銘刀「大文字」@怪盗少女
不眠マクラ@創作少女
[道具]:無し
[基本]:キングを泣きながら土下座させる、そのための協力者を集める
[思考・状況]
1.とりあえずはルカたちに協力する。
2.キングを泣かすのに協力してくれる人を探す。

※傷はラクリマ(水)×2によって全快しました。
※不眠マクラはバクに無理やり持たされました。
※魔王軍三将軍が全滅したことを知りました。
※不眠マクラの効果に気づいていません。



【天崎涼子@BlankBlood】
[状態]:気絶、疲労大、左腕切断(表面が凍っているため出血は無し)、
    殴られた痕、ガラスの破片による切り傷、火傷、
    アフロヘア、顔にちょびヒゲの落書き
[装備]:涼子のナイフ@BlankBlood
[道具]:ガラスの破片×2@バトロワ
ゼリーの詰め合わせ×4@バトロワ
[基本]:一人で行動したい。我が身に降りかかる火の粉は払う。結構気まぐれ。
    でも目の前で人が死ぬと後味が悪いから守る。
[思考・状況]
1.気絶中

※ナビィ、クリス、明空、伊予那、エリナ、えびげんをモンスター、もしくはモンスターの仲間だと
 思っていましたが、乗りかかった船なので一応クリス、ナビィ、えびげんは信用しとく。
※第2回放送を聞いていません。



【クリステル・ジーメンス@SILENT DESIRE】
[状態]:気絶、両腕骨折、両手の指を全て骨折、
    両手の指の爪が全て剥がされている、
    全身に打撲と擦過傷(身体のあちこちが紫色に変色している)
    胸骨骨折、肋骨6本骨折、血まみれ、魔力残量(中)、疲労(特大)、
    精神疲労(特大)
[装備]:無し
[道具]:無し
[基本]:対主催
[思考・状況]
1.気絶中
2.怪我の治療
3.首輪を外す方法を考える(魔術トラップの解除法は会得済み)
4.首輪を解除するまでは絶対に死なない

※参加者がそれぞれ別の世界から集められていることに気付きました。
※銃の使い方を教わりました。




【D−3:X3Y1 / 昏い街 / 1日目:真夜中】

【ミア@マジックロッド】
[状態]:魔力残量(小)、疲労(大)
[装備]:マジックロッド@マジックロッド(制限解除、ミアを全力で援護)
    四葉のクローバー@現実世界(頭に装備)
[道具]:なし
[基本]:対主催、できれば誰も殺したくない
[思考・状況]
1.ルカと門番が戻るのを待つ。
2.バトルロワイヤルを止めさせる方法を探す

※東支部で襲ってきたモヒカンが今回遭遇したモヒカンと同一人物だとは認識していません。
※オーガの持っていた肉が人肉だと気づいていません。
※参加者がそれぞれ別の世界から集められていることに気付きました。



【登和多 初香{とわだ はつか}@XENOPHOBIA】
[状態]:疲労 中、眠り
[装備]:ベレッタM1934@現実世界(残弾6+1、安全装置解除済み)
クマさんティーシャツ&サスペンダースカート(赤)@現実世界
[道具]:デイパック、支給品一式(パン1食分消費)
SMドリンク@怪盗少女
オーガの首輪@バトロワ
9ミリショート弾×24@現実世界
レボワーカーのマニュアル@まじはーど
[基本]:殺し合いからの脱出
[思考・状況]
1.睡眠中
2.オーガの首輪を解除する
3.仲間と情報を集める

※レボワーカー@まじはーど
(キャノピーのガラス損傷、本体の損傷度0%、ソリッドシューター[弾数1]装備)
 は外に置いてあります。
※キングが昏い街の屋敷の地下(隠し通路経由)にいることを知りました。



【神代 伊予那{かみしろ いよな}@一日巫女】
[状態]:右手に小程度の切り傷
[装備]:トカレフTT-33@現実世界(弾数8+1発)
赤いお札×3@一日巫女
バク@リョナラークエスト
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6/6、水4/6)
魔力の薬×5@創作少女
リザードマンの剣@ボーパルラビット
霊樹の杖@リョナラークエスト
青銅の大剣@バトロワ、南部@まじはーど
弓@バトロワ
弓矢(25本)@ボーパルラビット
ラーニングの極意@リョナラークエスト
大福x8@現実世界
あたりめ100gパックx4@現実世界
財布(中身は日本円で3万7564円)@BlankBlood
猫じゃらしx3@現実世界)
[基本]:桜を信じて生きる
[思考・状況]
1.ルカと門番が戻るのを待つ。
2.バクを見張る。
3.カザネの他にもエリナの知り合いが居たら全てを話すつもり。

※キングが昏い街の屋敷の地下(隠し通路経由)にいることを知りました。
※お札を操る程度の能力に目覚めました
※ひょっとすると無念の思いを抱えた死者の魂と会話できるかもしれません



【篭野りよな@なよりよ】
[状態]:疲労 小
[装備]:サラマンダー@デモノフォビア
    木の枝@バトロワ
[道具]:デイパック、支給品一式(食料9、水9)
[基本]:殺し合いからの脱出、罪を償う
[思考・状況]
1.ルカと門番が戻るのを待つ。

※キングが昏い街の屋敷の地下(隠し通路経由)にいることを知りました。






[37]投稿者:「燃える少女たち  その1」  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/12/18(Sat) 20:45 No.577  

対峙する四人。
緊張感が場を包み込み、今にも弾けそうな中、ルカは考える。

(……クリスさんや天崎涼子を巻き込むわけにはいかないわ)

特にクリスは首輪を解除する上で必須となる人物。
まかり間違っても、今から起こるであろう戦いに巻き込み、
命を散らせていい存在ではない。

「……門番、場所を変えるわよ。
 戦いながらコイツらを上手く誘導するわ」
「おっけー」

頷く門番を尻目に、ルカはハグロの刀を構えて突っ込んでいく。
迎え撃つは、醜い笑いを浮かべるパンツ一丁の巨漢。

「いいねぇ……活きの良い獲物は大好物だぜぇっ!!」

モヒカンが操る風の槍が、ルカが振るう刀と交差する。
ルカを援護しようと距離を詰める門番を、ダージュが放った火球がけん制する。

戦いの火蓋は切って落とされた。






「……ん……」

幾ばくかの時間が経った後……涼子は、意識を取り戻した。

「……う……奈、々……」

呻きつつも身を起こす涼子。
意識を失う前に見た妹の姿を涼子は探すが、奈々の姿は見当たらない。

「……夢……?いや、違う……。
 きっと、奈々はあの男たちと戦ってるんだ……」

涼子は考える。
おそらく、奈々は自分たちが戦いに巻き込まれないように上手くあの男たちを
この場から引き離してくれたのだ。

「……だったら、現状じゃ足手まといにしかならない私は、
 とっととこの場を離れるべきだね」

涼子はそう判断し、傍で気絶していたクリスを背負うと南へ向かって歩き出す。

「……くっそ……身体が凍えて、足が動かん……」

遅々として進まない歩みにイラつきながら、冷え切った身体に活を入れて、涼子は歩く。

目指すは昏い街……そこまで行けば、休息が取れるだろうし、傷の手当てもできる。
他の参加者もいるかもしれないが、現状ではそこまで気を回す余裕も無い。
願わくば、昏い街にいる参加者が友好的な人物であることを祈るばかりだ。

涼子は後ろを振り返り、敵を引き付けているであろう妹のことを思う。

(……奈々……後でちゃんと追いついてきなよ……)

そして、再び前を向いて歩き出す。

妹がすでに死んでいるなどとは露ほども思わず、涼子は街へと歩みを進めていった。






(……上手く誘導されたか……)

ルカたちと戦っているうちに、いつの間にか涼子たちから引き離されていることに
気が付いたダージュは舌打ちする。

(……まあ、いい。コイツらを殺した後でも、あの死に損ないどもを殺すのは充分間に合うさ)

そして、ダージュはモヒカンを援護するべく、カッパの皿を飛ばす。

モヒカンを追い詰めていたルカは飛んできた円盤を、舌打ちしつつかわす。
その隙を突こうとモヒカンがトルネードを突き出すが、門番の刀によって弾かれる。

「ちっ……!!うざってぇんだよっ!!獲物は大人しく嬲り殺しにされやがれっ!!」
「お断りよっ!!」

モヒカンの怒声に、ルカは言葉と刀を返す。
その攻撃を槍で防ぎつつ、イリュージョンの分身をルカに襲わせる。
だが、分身は門番の刀の一閃によりあっさりと消え失せる。

「くそがっ!!」

怒り狂うモヒカン。

その様子を見ながら、ダージュは考えていた。

(……埒があかねぇな……)

先ほどから、戦いはずっとこの調子だ。
ルカと門番の猛攻にモヒカンが追い詰められたところを、ダージュの援護が飛ぶ。
ダージュの援護をルカ、もしくは門番が回避したところにモヒカンが追撃をかける。
だが、その追撃を手の空いたどちらかが防ぐ。

戦いは互角。
このままでは、いつまで経っても勝負がつかない。

(……いや、違うな。魔力を消耗する分、こちらのほうが不利だ。
 長期戦は避けて、早々に勝負をつけるべきだが……)

ダージュはそう考えつつ、ふと背中のデイパックに入っていたあるものに思い当たる。

(……そうだ、ちょうと良いものがあるじゃねぇか。
 おあつらえ向きに、周りは森……雪が降っているのがちと不安だが、
 説明書に書いてあった威力なら、この程度は問題にならないはずだ)

それに、もし失敗したとしても、モヒカンをオトリにして逃げれば良い。
ダージュはほくそ笑み、さっそく作戦を開始することにした。






「このっ……!!いい加減、しつけぇんだよ、てめぇらっ!!」
「それはこっちのセリフよっ!!」

モヒカンの怒号に、ルカも怒りの声を返す。
ただのちんぴらかと思えば、予想外の実力を持ち、分身の魔法まで使ってくる
モヒカンにルカは辟易していた。

加えて、後ろの耳の長い男から飛んでくる的確な援護攻撃。
それは、はっきり言って、目の前の男以上にやっかいなものだった。
少しでも気を緩めると、すぐさま飛んでくる死角からの攻撃に、ルカたちは
常時警戒を持たざるを得ない。

そのせいで、ルカと門番の動きは自然と守勢に傾き、どうしてもモヒカンに
決定打を与えることができなくなる。

(……でも、こいつらはいつまでも魔法を使い続けることはできない……!
 必ず限界が来るはず……!)

それまで粘り続け、力を使い果たしたところを叩けば良い。
ルカは気を引き締め、長期戦の構えでモヒカンたちの攻撃を防ぎ続ける。

「おい、変態っ!!下がれっ!!」

だが、突然聞こえてきた長耳男の声にルカは戸惑う。
それは目の前の変態も同じようで、後ろへと怒鳴り返す。

「はぁっ!?何言ってやがるっ!!
 まさか、逃げるってんじゃ……!!」
「いいから、下がりやがれっ!
 ……まぁ、死にたいってんなら、話は別だがな」

その言葉に舌打ちしつつ、下がるモヒカン。
慌てて追いかけようとするルカと門番に、ダージュの魔法が飛ぶ。

紙一重で避けるルカと門番。

体勢を立て直したときには、すでにモヒカンはダージュの傍まで下がっており、
ダージュの手には見たことの無い道具が構えられていた。

(……あの道具は、一体……?)

ルカと門番は何が起きても対応できるように、警戒する。


だが、その警戒は無駄に終わる。


ダージュは嗤いながら、その道具……火炎放射器の引き金を引く。

「……ファイヤーっ!!」

その瞬間、凄まじい勢いの炎が火炎放射器から吐き出され、
ルカと門番は周りの木々ごと炎に包まれた。



[38]投稿者:「燃える少女たち  その2」  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/12/18(Sat) 20:46 No.578  

「あああああぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁっ!!!?」

炎に包まれ、絶叫を上げて地面を転げまわるルカと門番。
灼熱の業火に身を焼かれ、地獄の苦しみにのた打ち回る二人の少女。

「ひゃははははははっ!!燃えろ燃えろおぉぉぉっ!!!
 そして、無様にのた打ち回って苦しみやがれオラアアァァァっ!!!」

ダージュはゲラゲラと嗤う。
それに呼応するように、モヒカンも大声で嗤う。

「ヒャーーーハッハッハァァァっ!!!すげぇっ!!すげえぜ、オイっ!!?
 この俺様と互角に戦ってやがった女どもが、炎に焼かれて転げまわってやがるっ!!
 愉快すぎて笑いが止まらねぇぜ、オイっ!!」

モヒカンはそう言いながら、嗤う。
少女たちが苦しみ転げまわる姿を見て、股間を隆起させ、心底楽しそうに嗤う。

「おい、そいつを俺に貸しやがれっ!!あの女どもに、さっきまでの
 礼をたっぷりと返してやるぜっ!!」

モヒカンはそう言って、ダージュの火炎放射器を奪う。

「ヒャッハーっ!!汚物は消毒だーっ!!」

そして、その銃口をルカたちに向けて、引き金を引く。

火炎放射器からは勢い良く、火炎が吐き出され、ルカと門番の小さな身体を焼き焦がす。

「いぎあああぁあぁぁぁぁああぁぁぁぁぁっ!!!?」
「や……やめっ……い゛や゛ああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁっ!!!?」

あまりの痛みに泣き叫ぶルカと門番。
必死で炎から逃げ出そうとする二人だが、もちろんモヒカンに逃がすつもりなどない。

「おらおら、逃がすと思うのかよっ!!?まだまだてめぇらにはたっぷりと
 俺様の炎をお見舞いしてやるからなぁっ!!?」

転がり、這いずり回りながら逃げようとする少女たちを、炎は無慈悲に追いかける。

少女の絶叫と男たちの嗤い声が森の中に響き続ける。

しかし、しばらくすると、モヒカンの持つ火炎放射器の炎が弱まり始め、
とうとう炎を吐き出さなくなってしまった。

「……あ?何だ、オイ?壊れちまったか?」

モヒカンは首を傾げ、かちかちと引き金を引くが何も起こらない。

「おそらく、燃料切れだろ。調子に乗りすぎたな」

ダージュの言葉に、モヒカンは舌打ちする。

「ちっ……まぁいい、充分楽しめたことだし、こいつはもう用済みだ」

そう言って、火炎放射器を投げ捨てるモヒカン。

「よし、じゃあさっそく戻って、あのアフロ女を嬲り殺しにしようぜ」
「ああ……まぁ、もしかしたら、すでに凍死してるかもしれないけどな」

そして、男二人は嗤いながらその場を去る。






燃え続ける森の中に残されたのは、二人の少女の焼死体と役目を終えた火炎放射器のみ。

「……ぅ……ぁ……」

だが、しばらくすると驚いたことに焼死体のうちの一つが呻き声を上げた。

「……わ、たし……なんで……生きて……?」

身を起こした少女……ルカは、戸惑った声を上げる。
だが、傍で粉々になっている鈴の欠片を見つけて、理解する。

(……この鈴……たしか、瀕死の重傷を負った持主の傷を治す道具だったわね……)

どうやら、自分は運よく助かったらしい。
そう理解したルカは、辺りを見回す。

すると、すぐに炭化した門番の死体を見つける。

(……私……また……)

またしても仲間が死に、自分だけが生き残ってしまった。

だが、今はそれを後悔している暇は無い。
あの男たちは、今はクリスたちの元に向かっているはずだ。

ルカは急いで立ち上がろうとするが、痛みに呻いて膝を突く。

ミラクルベルはルカの傷を完全に治した。
だが、そのときにはまだルカは炎に焼かれている最中だったので、
治った直後に再び火傷を負ってしまったのだ。

だが、そんなことは知らないルカは、傷を完全に治してくれないサービスの悪さに
心の中で文句を洩らしつつ、痛みを堪えて立ち上がる。


「早く、クリスさんと天崎涼子を助けに行かないと……!」

だが、そこでルカは気が付く。

ルカたちの支給品は全て燃やし尽くされ、三本の刀も高熱を浴び続けたせいで
溶解して使い物にならなくなっていることに。
加えて、ルカの着ていた神官服と帽子も燃え付きていることに。

つまり……今のルカは、完全無欠に全裸だった。

「……っ!……かっ……関係無いわっ……!
 た……たとえ、武器が無くてもっ……!裸でもっ……!
 クリスさんたちを放っておくわけにはっ……!」

自分に言い聞かせるように呟きながら、ルカは涼子たちの元へと走る。

モヒカン男たちに出会ったときのことは、考えないことにした。






【門番@創作少女  死亡】
【残り9名】


【C−3:X3Y2 / 森 / 1日目:真夜中】

【ダージュ@リョナマナ】
[状態]:疲労(小)、魔力消費(中)
[装備]:ルカの双刀@ボーパルラビット
[道具]:デイパック、支給品一式×5(食料21食分、水21食分)
    火薬鉄砲@現実世界
   (本物そっくりの発射音が鳴り火薬の臭いがするオモチャのリボルバー【残り6発】)
    エリクシル@デモノフォビア
    赤い薬×2@デモノフォビア
    運命の首飾り@アストラガロマンシー
    魔封じの呪印@リョナラークエスト
    カッパの皿@ボーパルラビット
    スペツナズ・ナイフx1@現実
    防犯用カラーボール(赤)x1@現実世界
[基本]リョナラー、オルナの関係者を殺す
[思考・状況]
1.涼子、クリスを殺す。
2.豪華客船付近へ向かう。
3.ナビィの仲間を殺す。
4.オルナの関係者を殺す。(誰が関係者か分からないので皆殺し)



【モヒカン@リョナラークエスト】
[状態]:顔面に落書き、疲労(中)、魔力消費(大)、切り傷多数
[装備]:トルネード@創作少女
[道具]:手製棍棒×3
    ツルハシ@○○少女
    眼力拡大目薬×1@リョナラークエスト
    スペツナズ・ナイフ×1@現実世界
    ショットガン(残弾数2+11)@なよりよ
    デイパック、支給品一式
    包丁@バトロワ
    ライター@バトロワ
    マタタビの匂い袋(鈴付き)@現実世界
    スペツナズ・ナイフ×2@現実
    三八式歩兵銃+スコープ(残弾1発、肩掛け用のベルト付き)@現実世界
[基本]:女見つけて痛めつけて犯る
[思考・状況]
1.女を見つけたらヒャッハー!
2.豪華客船付近に向かう。
3.初香、ミア、美奈、クリスを殺す。

※東支部でのオーガ達との戦闘中の記憶が殆どありません。



【ロカ・ルカ@ボーパルラビット】
[状態]:疲労(中)、中度の火傷、全裸
[装備]:無し
[道具]:無し
[基本]:生存者の救出、保護、最小限の犠牲で脱出
[思考・状況]
1.モヒカンとダージュを倒す。
2.涼子とクリスを助ける。



【門番{かどの つがい}@創作少女】
[状態]:死亡
[装備]:無し
[道具]:無し



【天崎涼子@BlankBlood】
[状態]:疲労大、左腕切断(表面が凍っているため出血は無し)、
    殴られた痕、ガラスの破片による切り傷、火傷、
    アフロヘア、顔にちょびヒゲの落書き
[装備]:涼子のナイフ@BlankBlood
[道具]:ガラスの破片×2@バトロワ
    ゼリーの詰め合わせ×4@バトロワ
[基本]:一人で行動したい。我が身に降りかかる火の粉は払う。結構気まぐれ。
    でも目の前で人が死ぬと後味が悪いから守る。
[思考・状況]
1.昏い街へ向かう

※ナビィ、クリス、明空、伊予那、エリナ、えびげんをモンスター、もしくはモンスターの仲間だと
 思っていましたが、乗りかかった船なので一応クリス、ナビィ、えびげんは信用しとく。
※第2回放送を聞いていません。
※奈々がモヒカンとダージュの足どめをしてくれていると思っています。



【クリステル・ジーメンス@SILENT DESIRE】
[状態]:気絶、両腕骨折、両手の指を全て骨折、
    両手の指の爪が全て剥がされている、
    全身に打撲と擦過傷(身体のあちこちが紫色に変色している)
    胸骨骨折、肋骨6本骨折、血まみれ、魔力残量(中)、疲労(特大)、
    精神疲労(特大)
[装備]:無し
[道具]:無し
[基本]:対主催
[思考・状況]
1.気絶中
2.怪我の治療
3.首輪を外す方法を考える(魔術トラップの解除法は会得済み)
4.首輪を解除するまでは絶対に死なない

※参加者がそれぞれ別の世界から集められていることに気付きました。
※銃の使い方を教わりました。






[39]投稿者:289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/12/18(Sat) 20:48 No.579  
とうとう生き残りも一桁まで来たぜぇ〜!(`・ω・´)
いよいよクライマックス、ロワも佳境です。
[40]投稿者:「崩壊する精神  その1」  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/12/19(Sun) 20:13 No.580  

「……大丈夫かな、ルカさんたち……」
「……きっと、大丈夫だよ……」

初香が眠っているベッドの傍で、伊予那とりよなはルカたちのことを心配していた。

すでに彼女たちが出て行ってから、かなりの時間が経っている。
ミアから聞いたクリスの居場所を考えれば、まだ帰って来なくても別段おかしいことは無い。

だが、時間が経てば経つほど少女たちの不安は煽られていた。

もしかしたら、あの二人も死んでしまうのでは?
そう、死んでしまった桜やなよりのように……。

この一日でたくさんの人の死を見てきた二人は、その考えを杞憂と笑うことはできない。
むしろ、この場においては一度分かれてしまえば、再び会えるとは限らないのだ。

もしかしたら、もう二度と会えないかもしれない。
そんな考えが頭から離れない。

ルカたちが向かった場所は、殺人者たちが近くにいるのだ。
戦闘になっているかもしれないし、怪我をしているかもしれない。
それこそ、命にかかわるような……。

「……ん……」

そのとき、聞こえてきた初香の声に、伊予那とりよなははっとする。
目が覚めた初香は身を起こし、寝起きの目を瞬かせて伊予那とりよなを視界に収める。

「伊予那、りよな……?」
「……おはよう、初香ちゃん。よく眠れた?」

伊予那は笑顔で初香に水の入ったペットボトルを渡す。
本当なら暖かい飲み物が良かったのだが、ここにはコンロも茶葉も無かった。
仕方が無いことだが、伊予那はそのことを申し訳なく思った。

初香は伊予那に礼を言って、水をこくこくと喉に流し込む。
冷たい水が胃へと流れ込み、寝起きでぼやけていた頭をすっきりさせる。

ふう、と一息ついた初香はなぜ自分が寝ているのかを思い出そうとする。

「……えっと……僕は……」

そして、ミアの胸で泣きじゃくり、そのまま泣き疲れて眠ってしまったことを思い出した。

「……!」

初香の顔が赤くなる。

失態だった。
いくら精神的に弱っていたとはいえ、人の目のあるところで、あんな小さな子供のように
恥も外聞も無く泣き喚くなんて……。

(……いや……)

違う、そうじゃない。

あれが、本当の自分だ。
登和多初香という、10歳の子供のありのままの姿だ。

(……今更、何を取り繕おうとしているんだか……)

この期に及んで、天才の矜持を捨てきれない自分に苦笑する。

それでも、泣いているところを見られた恥ずかしさのため、初香は俯きながら二人に問う。

「……えっと……あれから、どうなったの?」

初香の問いかけを受けて、伊予那とりよなは初香に現状の説明を始めた。








ミアは、初香たちがいる部屋の扉の外で見張りをしていた。

いつまた、殺人者たちが襲ってくるか分からない。
ルカたちが戻るまで、自分があの三人を守らねばならないのだ。

幸い、伊予那から貰った魔力の薬で、魔力は全快している。
今の自分なら、一人でも何とか殺人者たちを撃退できるはずだ。

「!……あれは……?」

ふと、ミアは街の入り口から何者かが侵入してくるのが見えた。

侵入者は二人。
一人は青い髪の女性で、左腕を失っており、身体中に痛々しい傷が刻まれている。

もう一人は、その女性に背負われている、やはり傷だらけの女性。
こちらは、青い髪の女性以上に悲惨な有様だった。

身体中に青痣を作り、あちこちの骨が折れているのが、遠目からも分かる。
まるで拷問でも受けたかのような、殺すのではなく痛めつけることを目的とした傷だった。

そして、ミアは背負われているほうの女性に見覚えがあった。

「……クリスっ!!?」

ミアは驚きの声を上げる。

(……一体、どういうこと……!?何で、クリスがここに……!?)

ミアは考える。
あの青い髪の女性は特徴から考えて、おそらく天崎涼子だろう。

天崎涼子は殺し合いに乗っている可能性が高いという話だった。
だが、クリスを背負っていることから考えると、その話にも疑問が出てくる。

加えて、彼女はかなりの重傷だ。
たとえ、敵意があったとしても、あれだけの重傷を負った人物に危害を加えるというのは
ミアにとってはあまり取りたい選択ではない。

(……伊予那ちゃんたちに事情を話して、私だけで話を付けてくるべきね)

もし、本当に天崎涼子が殺し合いに乗っていたとしたら……いくら満身創痍とはいえ、
伊予那たちを天崎涼子の前に連れて行くのは危険だ。

敵意が無いと判断した時点で、お互いを引き合わせればいいだろう。

そう判断したミアは他の三人に事情を説明するため、部屋の中に入っていった。








涼子はようやく昏い街へと辿り着くことができた。

「……さて……まず、傷の手当てだけど……」

涼子はとりあえず、適当な民家の中に入ることにした。

だが、涼子がその民家の扉を空ける前に扉が開いて、中からゆっくりと一人の少女が出てきた。

「…………」

涼子はクリスを地面に下ろし、ゆっくりとナイフを構える。

「……待って。私は貴女に危害を加えるつもりは無いわ。
 ただ、少しだけ話を聞かせて欲しいの」

扉からでてきた少女……ミアは、警戒する涼子に落ち着くように言葉をかける。

「……話、ね……とりあえず、襲ってくるつもりはないわけ?」
「ええ。安心して」

ミアの言葉を聞いた涼子はひとまず構えを解く。
まだ警戒は解かないが、重傷人二人に対して、わざわざ騙して不意を付く必要も無いだろう。

そう判断して、涼子はミアに促す。

「……で?聞きたいことってのは何なのさ?」
「ええ、実は……」




パァァーーーーーーーンッ!!




「……がっ……はっ……!?」

だが、次の瞬間、ミアの胸を黒点が穿つ。
そして、ミアは口から血を吐いて倒れた。

「っ!!」


銃撃。


涼子は一瞬で理解し、すぐにミアが撃たれた位置から射線を割り出し、死角へと逃げ込む。
さすがに、クリスまで運ぶ余裕は無かった。

(……ったく……!次から次へと……!)

だが、涼子の不運は終わらない。

「ミアさんっ!!大丈夫ですかっ!!?」
「何があったの、ミアっ!!?」

ミアが出てきた民家の扉から二人の少女……初香と伊予那が現れる。

「!?……ミアっ!?」

倒れているミアを見た初香は悲鳴を上げる。
慌てて駆け寄ろうとする初香を見て、涼子は思わず叫ぶ。

「動くなっ!!じっとしてろっ!!」
「っ……!!」

涼子の言葉に、初香はびくっと身体を震わせて足を止める。
そして、怯えた目で涼子を見る。

「……あ……貴女が……!?貴女が、ミアを……!?」

その言葉を聞いた涼子は舌打ちする。
どうやら、あの少女が自分に撃たれたと勘違いしたらしい。

見ると、少女たちは銃を持っている。
今の状況では、勘違いで撃たれたとしてもおかしくはない。

(……どんだけ、状況悪くなんのよ……!!)

神様は、余程自分のことが嫌いらしい。

涼子は天に向かってツバを吐きたい気分だった。







[41]投稿者:「崩壊する精神  その2」  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/12/19(Sun) 20:14 No.581  

伊予那は、涼子と倒れているミアを目の前にして、呆然としていた。
そして、呆然としている伊予那の耳に、震える初香の声が響く。

「……あ……貴女が……!?貴女が、ミアを……!?」

その言葉を聞いて、伊予那の胸に抑え切れない怒りが湧いてくる。

(……この人……やっぱり、殺し合いに乗ってたんだ……!)

サーディと共に行動していた涼子に対する伊予那の不信感は大きい。

何せ、エリナが死んだのは半分は涼子のせいだといっても過言では無いのだ。
ここで、さらにミアまで殺されてしまったとなれば、疑いが確信へと変わるのは
無理もなかった。

「……貴女っ……!よくもっ……!」

気が付くと、伊予那は手に持っていた銃を涼子に向けていた。








「っ!!」

状況の打開を考えていた涼子だが、銃を持った少女の一人が
銃口を向けてきたことに気が付く。

よく見ると、サーディと共に戦ったモンスターの仲間の一人だということに
気が付いた涼子は、咄嗟に持っていたナイフをその少女に投げ放つ。


ドスッ。


「……え……?」

間の抜けた少女の声。
次いで、少女は力が抜けて倒れる。

その光景に、もう一人の銃を持った少女は目を見開く。

「……伊予那……?」

震える少女の声。

それを聞いた涼子は我に返る。

(!……し……しまった……!?)

何てことをしてしまったのだ。

冷静に考えれば、この状況での最善手は誤解を解いて、この少女たちと共に
襲撃者を倒すことだったのは、考えるまでもない。
最悪のコンディションに加え、まともな武器がナイフ一本の今の涼子では、
この少女たちに勝つことすら難しいのだから。

それなのに、銃を向けられたことで身体が反射的に動いてしまった。

疲労と怪我のために思考力が落ちていたとはいえ、大失態だった。

(……仕方無いっ……!)

こうなったら、この少女たちも襲撃者も殺してしまうしか無い。

(動揺している今がチャンス……!一瞬で決める……!)

子供を殺すのは気が引けるが、かかっているのは自分の命だ。
それに、誤解したとはいえ、銃を向けたのはあの少女たちだ。
殺されても文句を言われる筋合いなど無いはずだ。

涼子は懐から取り出したガラス片をもう一人の少女に向かって投げつける。

狙いは頚動脈。
そこを切り裂けば、自分の勝ちだ。

後は、殺した少女たちの武器を奪って、ミアという少女を殺した襲撃者と戦えば良い。

(……悪く思わないでよ……!)

ガラス片が少女の首筋に迫る。
そして、ガラス片は少女の頚動脈を切り裂き、鮮血を噴出させる。




……ことは、なかった。




「……!?」

気が付くと、涼子の前には桃色の髪の少女が立っていた。
その少女は手に持ったロッドを一閃して、涼子の投げたガラス片を弾き飛ばしたのだ。

「……天崎、涼子……!!貴女……やっぱり、殺し合いに……!!」

桃色の髪の少女……マジックロッドによって変身したミアは、涼子を睨みつける。

ああ、終わったな。涼子はそう思った。

(……もう疲れたよ、パトラッシュ……)

涼子は覚悟を決めた。
だが、いつまで経っても、攻撃は来なかった。

「……?」
「……ぐっ……!うぅっ……!」

よく見ると、ミアは苦しそうに胸を抑えている。
どうやら即死を免れたとはいえ、撃たれた傷は重傷らしい。

(……チャンスっ!!)

このまま、ミアを殺す。

涼子は一気に距離を詰め、ミアの首に手を伸ばす。

「……っ!!」

ミアは慌てて迎撃しようとするが、間に合わない。
初香も銃を構えるが、涼子はそれを見越して、ミアが盾になるように距離を詰めている。

(よしっ!!殺っ……!!)

だが、ミアの顔を見て、涼子は違和感を覚える。

ミアの目は自分を見ていなかった。
その目は驚きに見開かれ、涼子の肩口から先を見ていた。

そして、ミアの瞳に反射して写る、醜い男のにやけた顔……。

(……―――――ッ!?……しまっ……!?)

バァンっ!!

次の瞬間、涼子は腹に大穴を開けて倒れた。







[42]投稿者:「崩壊する精神  その3」  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/12/19(Sun) 20:15 No.582  

崩れ落ちる涼子の身体がミアに覆い被さる。

「ぐっ……!」

ミアはそれを跳ね除けようとするが、いくら変身しているとはいえ、撃たれて重傷を負ったミアに
人間一人を跳ね除ける力は出せない。

そのまま、涼子の身体に押し倒され、ミアは地面に倒れてしまう。

「いよぉ、久しぶりだなぁ〜!!」

そんなミアにニヤニヤといやらしい笑いを浮かべながら、ショットガンを構えたモヒカンが現れる。

「……ひっ……!?」

モヒカンの姿を見た初香が怯えた声を上げる。

「ひひひ、よう、お嬢ちゃん?約束どおり殺しに来てやったぜ?」
「……う……あ……あぁっ……!」

モヒカンに手酷く痛めつけられた初香は、未だにモヒカンに対する恐怖を払拭できていなかった。
銃を構えるが、ガチガチと震える手では銃口の狙いは定まらない。

「んん〜〜?何だ、オイ?ちゃんと狙わねぇと当たらねぇぜ?」
「……初香ちゃんっ!!逃げてっ!!」
「うるせぇよ」

バァンっ!!

ショットガンの銃撃を受けたミアは胸から血を吹いて倒れる。


「ミアっ!?……あっ……あああぁぁぁっ……!!」

半ば自棄になって、初香は銃を撃とうとする。

「おせぇっ!!」

だが、モヒカンがショットガンの引き金を引くほうが早い。




カチッ。




「……あ?」

しかし、モヒカンのショットガンは銃口から火を噴かず、軽い音を立てただけだった。

モヒカンは銃についての知識を持っていない。
ただ、今までの戦いから、銃は矢よりも威力の高い『魔法の道具』だと考えていた。

そして、頭の悪いモヒカンは『弾切れ』という概念など考え付きもしなかった。
『魔法の道具』なのだから、無制限に撃てるものだと思い込んでいた。

つまり、ショットガンに装填されていた弾はえびげんから奪ったときに残っていた二発のみ。
涼子とミアに撃った二発で終わりだったのだ。

そして、弾が出なかったという事実に一瞬、思考が空白になったモヒカンの隙を突くように、
初香の銃が火を噴いた。


パァンっ!!


「がっ…!?て……てめぇっ……!!」

初香の銃撃は、モヒカンの胸を撃ち抜く。
憤怒の表情で初香に迫ろうとするモヒカン。

「ひっ……ああああぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁっ!!!!」

パン、パンパン、パンパンパァンっ!!!

自分へと迫ってくるモヒカンに恐怖した初香は、狂ったように銃を乱射する。
その狙いは出鱈目だったが、モヒカンが初香に近づいて距離を詰めていたこともあり、
初香の銃撃は全弾がモヒカンに命中し、彼に対して致命傷を与えた。

「がっ……あっ……!!」

初香の銃撃は、モヒカンの胸に七つの穴を空けた。

「ちっ……畜生っ……!!この、俺がっ……こんな、ガキにっ……!!」

モヒカンは初香を呪い殺すかのような恨みのこもった目で睨みつけながら、倒れる。

「…………」

そして、彼はそのまま動かなくなった。

「はっ……はっ……はぁっ……はぁっ……!」

初香は動かなくなったモヒカンを見て、弾切れになった銃をカチカチと鳴らしながら、
ずるずると壁を擦るようにして、腰を抜かす。

「……あ……あぁ……!」

殺した。

殺してしまった。

自分の手で、撃ち殺してしまった。

「……僕がっ……殺しっ……!」

初香は胃からこみ上がってくるものを感じ、口を手で覆う。

「うっ……えっ……!うえぇっ……!」


気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。

胃がムカムカする。


『何人殺したって人殺しを躊躇するヤツはいるし、
 逆に一人も殺してないやつでも、全く躊躇しないヤツもいる』


身体が冷たい。

汗が止まらない。


「うぁっ……あぁぁっ……!!」


嫌だ。


『お前はどう考えても、前者のタイプだ。
 確かに一度殺しをすれば、ある程度は慣れるかもしれないが、
 そんな程度じゃ最初から殺しを躊躇しないヤツに通じるわけがない。
 逆に、人を殺したことによる精神的なダメージのほうがこの場では問題になる』


「僕っ……僕は、殺しっ……殺す、つもりなんてっ……!!」


嫌だ、嫌だ、嫌だ。


『お前の場合、殺しをすることによって得られるメリットよりも
 デメリットのほうが大きい』


こんなの、嫌だ。


『切羽詰まった状況で仕方なく殺すならともかく、こんな気絶しているだけの
 人間をわざわざ殺す意味なんか無いんだよ』


「うああァあぁぁぁあああぁぁぁああぁぁぁぁーーーーーっ!!!」







[43]投稿者:「崩壊する精神  その4」  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/12/19(Sun) 20:15 No.583  

りよなは、先ほど階下から聞こえた初香の絶叫に、気が気ではなかった。

「伊予那ちゃん……!初香ちゃん、ミアさんっ……!」

銃声が聞こえた後、伊予那と初香はりよなに部屋で待っているように言って、
ミアの元へと向かっていった。

目の見えない自分が足手まといなことは分かっていたので、大人しく待っているつもりだった。
だが、初香の声を聞いて、そんな考えは吹き飛んだ。

何かあったのだ。

初香の身に、何かとても恐ろしいことが起きたのだ。

「早く……行かなきゃ……!」

だが、焦っていたせいか、階段を下りている途中で、足を踏み外してしまった。

「きゃっ……!?」

りよなは悲鳴を上げて、階段を転げ落ちる。

身体のあちこちを打ち付けたりよなは、痛みに呻きながらも、この民家に入ってきたときの
記憶を頼りに、出口の扉へと向かう。

そして、やっと扉に辿り着いたりよなは、初香の名前を呼ぶ。

「……初香ちゃんっ!!初香ちゃん、どこっ!!」

りよなの必死の呼びかけ。
だが、返事は無い。

焦りが胸中を満たし、再度りよなは初香の名を呼ぼうとするが、

「……りよな……?」

聞こえてきた呟きに、りよなは安堵する。

初香の声だ。
無事だったのだ。

「初香ちゃん……!!良かった、無事だったのね……!!」

ほっとして、初香に呼びかけるりよな。

「……良くないよ……」
「……え……?」

だが、返ってきた返事は初香のものとは思えないほど、暗く淀んだ声だった。

「……初香、ちゃん……?」
「……りよな……伊予那が、死んだ……」
「……え……!?」
「……伊予那だけじゃない……ミアも……天崎涼子も……」
「……そ……そんなっ……!?初香ちゃん、一体何が……!?」
「……それと……モヒカン男も……」

そこで、初香は一旦言葉を切る。
初香の様子が尋常ではないことに気が付いたりよなは、初香の肩を掴む。

「……初香ちゃん……どうしたの……!?ひょっとして、どこか怪我を……!?」
「……ねぇ……りよな……君は、何で……?」
「……え……?」

りよなは初香の声に不穏なものを感じ、初香の肩を掴む力が弱まる。

「……君は……何で……」








「 人 を 殺 し た の に 、 そ ん な に 普 通 に 振 舞 え る の ? 」


初香の言葉に、りよなは固まる。


「……え……」

「……僕は……あの、モヒカン男を殺して……すごく気持ち悪くなって……
 頭がおかしくなりそうだったのに……」

「は……初香、ちゃん……?」

「……君は……エリーシアさんを……仲間だった人を、殺したんだよね……?」

「……そ……それ、は……」


りよなは、初香の言葉に震えが止まらない。

このタイミングで、仲間を殺したことを糾弾されるとは思わなかったのだ。
だが、考えてみれば、今の初香の反応こそが普通なのだ。

りよなは、エリーシアを殺した。
しかも、自分の妹を生き返らせるというエゴのために。

それは、許されざることだ。

『馬鹿なことをしてしまった、今は反省している』

それだけで許されるような軽い罪ではないのだ。

「初、香……ちゃん……私、は……」

りよなは頭の中の考えがまとまらないまま、言葉を紡ごうとする。
だが、そのとき、りよなは気が付く。
初香もまた、自分と同じように肩を震わせていることに。

「……おかしいよ……君、絶対におかしいよ……。
 なんでさ……なんで、そんな……」

初香の震えが強くなる。

そして、初香は絶叫する。


「なんで、人を殺しておいてっ!!僕たちと普通に話せるんだよっ!!?
 こんなっ……こんなことっ……しておいてっ……!!
 おかしいだろ、絶対っ!!?何なんだよ、君はっ!!?」
「ひっ……!?」

いきなり叫びだした初香に、りよなは怯えて後ずさる。

「……何だよ、その態度……?もしかして、僕が怖いの……?
 僕が人を殺したから……?同じ人殺しなのに……?」

「は……初香、ちゃ……」

「……そうだろうね……僕だって、君が怖いよ……。
 だって、理解できないもの……人を殺しておいて、
 そんな普通の態度が取れる君が……いや、君だけじゃない……。

 ここにいる人、全員が怖い……。
 
 なんで、あのモヒカン男たちは、嬉しそうに人を殺そうとできるの……?
 
 なんで、えびげんさんは、人を撃ち殺しておいて、その後、笑えるの……?

 なんで、りよなは、エリーシアさんを殺しておいて、普通に振舞えるの……?

 なんで、僕は……」

そこまで一気に喋った後、初香の声は震え始める。

「僕……僕、はっ……あ、あぁぁ、あぁ……!」

「……初……香、ちゃ……ん……」

りよなは、初香のただならぬ様子に、恐怖していた。

「どうやら、壊れちまったようだな」
「……っ!?」

いきなり聞こえてきた第三者の声に、りよなは驚く。

「ひっ……!?うわああぁぁぁぁああぁぁぁぁっ!!?」

初香が絶叫と共に逃げ出す音が聞こえた。
そのことに、無意識に安堵した自分に気づかず、りよなは新たな人物に警戒を抱く。

「だ……誰っ……!?」
「……ん?お前、ひょっとして、目が見えないのか?」
「…………」
「……ふん、まぁいい。それより、あのガキだ。
 お前も、アイツに何があったのか気になるだろ?」

その言葉に、りよなは目を見開く。

「は……初香ちゃんに……何があったんですか……?」

「あのガキは、死に触れすぎたのさ」

「……死に……?」

「そうさ。人が死ぬことに慣れていないヤツが、立て続けに人の死を目の当たりにし、
 本人も何度も殺されそうになって、トドメに自分が人殺しになっちまったんだ。
 頭がおかしくなっちまっても、仕方ねぇだろ?」

「……それ、は……」

そうかもしれない、とりよなは思う。

(……でも……だったら、私は……?)

自分はどうなのか、とりよなは考える。


りよなも、妹のなよりを失い、エリーシアを殺し、人の死に触れてきた。

だが、りよなは初香のようにおかしくはなっていない。


『なんで、人を殺しておいてっ!!僕たちと普通に話せるんだよっ!!?
 こんなっ……こんなことっ……しておいてっ……!!
 おかしいだろ、絶対っ!!?何なんだよ、君はっ!!?』


初香の言葉が思い出される。

(……まさか……私は……本当に……?)

自分は、おかしいのだろうか?

人を殺しておいて……あれだけ、人の死に触れておいて、狂わない自分は、最初から……?


「……おいおい、お前、何か勘違いしてないか?」

「……え……?」


男の言葉に、りよなは視線を上げる。

そんなりよなの、光を写さない瞳を覗き込み、男は嗤いながら告げる。


「お前も、あのガキと同じだよ。

 ここで、人の死に触れすぎて、気づかないうちに
 狂っちまってたんだよ。

 だから、人を殺しても何とも思わない。

 反省してるって?
 馬鹿言え、そりゃ誤魔化しだ。

 思い出せよ、人を殺したときの感覚を?

 お前、何か感じたか?
 そのとき、少しでも後悔したか?

 してないだろ?」


「……わ……私、は……!!」


りよなは震える。


違う、そうじゃない。

私は……私は、エリーシアさんを殺したことを、後悔して……。

いや、本当にそうだっただろうか?


初香ちゃんは、私のことをおかしいと言った。

この男は、私を狂っていると言った。


分からない、分からない。


一体、私は一体、わたしはいったい……。


「誤魔化してんじゃねぇよ。
 今更、何を言い訳してやがる。

 お前は、自分の意思で、目的を持って、殺したんだろ?

 目を見りゃ分かる。
 お前は、あのガキとは違う。

 お前は狂っちゃいるが、冷静に狂ってる。

 今まで、アイツらと共に行動していたのは、
 無意識にそうしたほうが目的を達成しやすいと思ったからだ。

 だがな……もう、誤魔化しは必要ないだろ?

 後、生き残ってんのは、あのガキと、俺と、お前くらいだ。

 ……ああ、そういや、外に死に損ないが一匹転がってたか。
 まあ、それはどうでもいいさ。

 ……で?どうする?

 俺に黙って殺されるか?それとも……


 俺『たち』を殺して、優勝するか?」


「…………」


りよなは答えない。

だが……。



りよなは、立ち上がっていた。

そして、手にはサラマンダー。



妹を守るために手にし、

妹を生き返らせるために人を殺したときに使った武器。



そして、サラマンダーを握った、りよなの目は。








エリーシアを殺したときと、同じ目をしていた。








「……そうこなくっちゃなぁ……!」


男……ダージュは心底愉快そうに嗤う。

そして、双刀を構え、りよなと対峙する。

「……さぁ、来いよ……!!
 お前の狂気を、俺に見せてみろ……!!
 俺はそれをねじ伏せて、お前を惨たらしく殺してやる……!!」

「…………」


狂気を孕んだ二人の戦いが今、始まろうとしていた。







[44]投稿者:「崩壊する精神  その5」  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/12/19(Sun) 20:16 No.584  

「……ぐ……うぅ……!」

少女が苦痛に満ちた声を上げる。
そんな少女の様子を悲しむかのように、少女の手に持つロッドが青く明滅する。

「……マジック……ロッド……ごめん、ね……。
 せっかく、守って……くれたの、に……」

少女……ミアは生きていた。

一度目の銃撃……ダージュによる三八式歩兵銃の遠距離射撃は、
不意を突かれたせいで防ぐことは叶わなかったが、ミアを変身させることによって
何とかミアの命を繋ぎ止めた。

そして、モヒカンのショットガンによる銃撃はマジックロッドが全力で防御の結界を
張ったことで、威力の大半を殺すことに成功した。

だが、元々、一度目の銃撃が致命傷だったのだ。
変身によって、無理やりミアの命を繋ぎ止めていたが、ミアの魔力には限りがある。

いつまでも、変身状態を保ってはいられないのだ。

「……せ……め、て……彼女、だけでも……!」

ミアは最期の力で地面を這って、近づく。

……瀕死の重傷を負ったクリスの元へと。

「……クリ、ス……ごめんね……遅くなって……!
 貴女だけは……せめて……貴女、だけ、は……!」

ミアは震える手に魔力を込めて、クリスに回復魔法をかける。

変身によって魔力が増したミアの、ありったけの魔力を込めた回復魔法を
浴びたクリスの身体は、みるみる傷が癒されていく。

「…………」

それを確認したミアは、力尽きる。

力を失った手から、マジックロッドが零れ落ちる。

殺し合いに抗い続け、人を救おうとした少女は、最期まで人を救おうとして、
その命を散らしたのだった。








「はぁっ……!はぁっ……!」

ルカは走り続けていた。

雪の降る道は、火傷を負い、一糸纏わぬ身には辛かった。
寒気が傷を刺激し、裸足で走り続けたことで、すでに足の感覚は無くなりかけている。

「!……ようやく、見えてきたわっ……!」

目の前には、昏い街。

クリスたちを置いてきたはずの場所には、誰もいなかった。
そのことから考えて、意識を取り戻した天崎涼子がクリスを連れて、
どこかに逃げていったと考えるのが自然だろう。

そして、普通に考えれば、逃げる場所は彼女たちが倒れていた場所から
一番近い、昏い街だ。

だが、そうなると、あの殺人者の男たちも自分と同じように考えて、
天崎涼子たちを追って、昏い街へと向かった可能性が高くなる。

「……急がないと……!」

ルカは走る。

仲間たちの身を守るために、走り続ける。

……すでに、その仲間たちの半数が殺され、
半数が狂気に犯されてしまったことも知らずに……。








【天崎涼子  @BlankBlood      死亡】
【神代 伊予那@一日巫女       死亡】
【モヒカン  @リョナラークエスト  死亡】
【ミア    @マジックロッド    死亡】
【残り 5名】



【D−3:X3Y1 / 昏い街 / 1日目:真夜中】

【ダージュ@リョナマナ】
[状態]:疲労(小)、魔力消費(中)
[装備]:ルカの双刀@ボーパルラビット
[道具]:デイパック、支給品一式×5(食料21食分、水21食分)
    火薬鉄砲@現実世界
   (本物そっくりの発射音が鳴り火薬の臭いがするオモチャのリボルバー【残り6発】)
    エリクシル@デモノフォビア
    赤い薬×2@デモノフォビア
    運命の首飾り@アストラガロマンシー
    魔封じの呪印@リョナラークエスト
    カッパの皿@ボーパルラビット
    スペツナズ・ナイフx1@現実
    防犯用カラーボール(赤)x1@現実世界
[基本]リョナラー、オルナの関係者を殺す
[思考・状況]
1.りよなを殺す。
2.クリスを殺す。
3.ナビィの仲間を殺す。
4.オルナの関係者を殺す。(誰が関係者か分からないので皆殺し)



【クリステル・ジーメンス@SILENT DESIRE】
[状態]:気絶、疲労(大)、精神疲労(大)、魔力残量(中)、
    両手の指の爪が全て剥がされている(傷は塞がっている)
    胸骨にヒビ、肋骨の何本かにヒビ、血まみれ
[装備]:無し
[道具]:無し
[基本]:対主催
[思考・状況]
1.気絶中
2.怪我の治療
3.首輪を外す方法を考える(魔術トラップの解除法は会得済み)
4.首輪を解除するまでは絶対に死なない

※参加者がそれぞれ別の世界から集められていることに気付きました。
※銃の使い方を教わりました。



【登和多 初香{とわだ はつか}@XENOPHOBIA】
[状態]:疲労(大)、精神疲労(特大)、錯乱
[装備]:ベレッタM1934@現実世界(残弾0+0、安全装置解除済み)
    クマさんティーシャツ&サスペンダースカート(赤)@現実世界
[道具]:デイパック、支給品一式(パン1食分消費)
    SMドリンク@怪盗少女
    オーガの首輪@バトロワ
    9ミリショート弾×24@現実世界
    レボワーカーのマニュアル@まじはーど
    工具@バトロワ
[基本]:殺し合いからの脱出
[思考・状況]
1.みんなおかしい、絶対におかしい。

※人を殺したことに怯えています。
 ただし、何らかの要因で落ち着きを取り戻すかもしれません。
※レボワーカー@まじはーど
(キャノピーのガラス損傷、本体の損傷度0%、ソリッドシューター[弾数1]装備)
 は外に置いてあります。
※キングが昏い街の屋敷の地下(隠し通路経由)にいることを知りました。



【篭野りよな@なよりよ】
[状態]:健康、狂気?
[装備]:サラマンダー@デモノフォビア
    バク@リョナラークエスト
    木の枝@バトロワ
[道具]:デイパック、支給品一式(食料9、水9)
[基本]:殺し合いで優勝する?なよりを生き返らせる?
[思考・状況]
1.ダージュを殺す?

※ダージュの言う通り、本当に狂っているかは不明です。
 ダージュの言葉に惑わされただけかもしれません。
※キングが昏い街の屋敷の地下(隠し通路経由)にいることを知りました。



【ロカ・ルカ@ボーパルラビット】
[状態]:疲労(中)、中度の火傷、全裸
[装備]:無し
[道具]:無し
[基本]:生存者の救出、保護、最小限の犠牲で脱出
[思考・状況]
1.モヒカンとダージュを倒す。
2.皆を助ける。



【神代 伊予那{かみしろ いよな}@一日巫女】
[状態]:死亡
[装備]:トカレフTT-33@現実世界(弾数8+1発)
    赤いお札×3@一日巫女
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6/6、水4/6)
    リザードマンの剣@ボーパルラビット
    霊樹の杖@リョナラークエスト
    青銅の大剣@バトロワ、南部@まじはーど
    弓@バトロワ
    弓矢(25本)@ボーパルラビット
    ラーニングの極意@リョナラークエスト
    大福x8@現実世界
    あたりめ100gパックx4@現実世界
    財布(中身は日本円で3万7564円)@BlankBlood
    猫じゃらしx3@現実世界)

※涼子のナイフ@BlankBlood が胸に刺さっています。



【ミア@マジックロッド】
[状態]:死亡
[装備]:マジックロッド@マジックロッド(制限解除、ミアを全力で援護)
    四葉のクローバー@現実世界(頭に装備)
[道具]:無し



【モヒカン@リョナラークエスト】
[状態]:死亡
[装備]:ショットガン(残弾数0+11)@なよりよ
[道具]:トルネード@創作少女
    手製棍棒×3
    ツルハシ@○○少女
    眼力拡大目薬×1@リョナラークエスト
    デイパック、支給品一式
    包丁@バトロワ
    ライター@バトロワ
    マタタビの匂い袋(鈴付き)@現実世界
    スペツナズ・ナイフ×3@現実



【天崎涼子@BlankBlood】
[状態]:死亡、
    左腕切断、アフロヘア、
    顔にちょびヒゲの落書き
[装備]:無し
[道具]:ガラスの破片×1@バトロワ
    ゼリーの詰め合わせ×4@バトロワ








[45]投稿者:289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/12/19(Sun) 20:28 No.585  
さて……これからどうしようか……。

ぶっちゃけ、もう対主催側は実質的に詰んでるようなもんですが。
ここから逆転できるのかな?
[46]投稿者:「第3回キンアワ〜お目覚めのキングさま編〜」289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/12/23(Thu) 10:16 No.586  

生き残りが少なくなった殺し合いのフィールドに
もはやお馴染みとなった声が響き始める。

「ふぁあぁぁ〜〜……じゃあ、第3回放送始めま〜す……」

欠伸交じりのキングの声。

「……って、あれ?もうこんだけしかいないのかぁ〜」

キングは今になって、ようやく生き残りの人数を確認し、僅かに驚く。

「……まぁいいや、まずは死者の発表からだよー!
 
 スライム
 八蜘蛛
 えびげん
 ナビィ
 門番
 神代伊予那
 天崎涼子
 モヒカン
 ミア

 ……以上、9名!
 人数が少なくなってた割には、たくさん死んじゃったねぇー?
 そんなに自分が生き残りたかったのかなー?」

 げらげらと嗤うキングの声が閑散としたフィールドに響き渡る。
 
「禁止エリアは2時間後が……やっぱり、D−3かな!
 4時間後は、C−3でよろしくぅっ!

 ……さて……そろそろ、このゲームも終わりかな?
 頑張って優勝目指してくださいねー、生き残りの皆さん!」

その言葉を最後に、キングの声は聞こえなくなった。






【残り 5名】






[47]投稿者:「さあ、始めようか  その1」  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/12/25(Sat) 18:56 No.587  

「……う……うぅ……」

頭に霞がかったような気分を感じつつ、クリスの意識は覚醒した。

「……こ……こ、は……?
 ……そうだ、ナビィとえびげんさんはっ!?」

目を覚ましたクリスは、自分が気絶する前の状況を思い出し、
真っ先に仲間の安否を確認しようと辺りを見回す。

だが、辺りの風景は街ではあっても、クリスが気絶する前の街の風景とは
似ても似つかなかった。

「……一体、何が……?」

と、そこでクリスは視界の端に写る見知った姿に気が付く。

「!?……ミアっ!?」

ミアが倒れていた。
それも、胸から夥しい血を流しながら。

「しっかりしてっ!!ミアっ!!」

クリスは必死で呼びかけるが、ミアからの返事は無い。
脈を確認するが、すでにミアの心臓の鼓動は止まっていた。

そして、近くには廃墟で別れた少女、伊予那が胸にナイフを生やした姿で倒れており、
その傍には見知らぬ青い髪の女性、さらには敵であるモヒカン男まで血塗れになって
倒れていた。

「……そんな……何が起こっているの……!?」
「……うわああぁぁぁぁああぁぁぁぁっ!!?」

悲嘆にくれていたクリスの耳に少女の悲鳴が響く。

「……っ!?」

警戒し、いつでも魔法を撃てる体勢を取るクリス。

悲鳴の主は、すぐに近くの民家からクリスの前に飛び出してきた。
そして、クリスがいるのにも気が付かず、クリスの横を必死の形相で走り抜けていく。

「なっ……初香ちゃんっ……!?」

少女の姿を見たクリスは驚愕する。

走り抜けていった少女は、初香の姿だった。

恐怖に歪んだ表情はあの冷静で聡明な少女とは思えないものだったが、
間違いなくクリスの仲間であり、首輪を外して共に主催者を打倒すると誓った
仲間の少女の一人だった。

「くっ……!初香ちゃん、待ってっ……!」

クリスは立ち上がり、初香を追いかけようと立ち上がる。
そして、そのときになって、クリスはやっと自分の怪我が完全とは言わないまでも
治療されていることに気が付いた。

(!…ミア……)

クリスはすぐに悟る。
自分の傷を治してくれたのは、自分の傍で力尽きているミアだということを。

(……ありがとう、ミア……それから、ごめんね……。
 力を貸すこともできずに、貴女を死なせてしまって……)

クリスはミアに一瞬だけ黙祷を捧げると、ミアの傍に転がっていたマジックロッドを
拾い上げる。

(……ミア……貴女のロッド、使わせてもらうわね……。
 安心して、貴女の遺志は私が継ぐわ……。
 必ず、皆と一緒にこの殺し合いから脱出してみせるから……!)

クリスはミアに黙祷を捧げると、すぐに初香を追いかけようと走り出す。

……が、すぐにクリスは立ち止まることになった。

「……な……!?あれは……!?」

クリスが見たのは、殺し合い開始直後に見た、ゴーレムのような魔物の姿。
そして、その魔物に搭乗した初香の姿。

「……はは……あはは……!そうだよ……これがあったじゃないか……!
 これがあれば……!これさえあれば、僕は……誰にも殺されない……!」

レボワーカーに搭乗した初香は引きつった笑いを浮かべながら、
自分に言い聞かせるように呟いている。

そして、初香はクリスの姿に気が付くと、ひっと怯えた声をあげる。

その様子を見たクリスは、先ほどの初香の様子と合わせて、
初香が錯乱していることを確信する。
初香に対して聞きたいことは山ほどあったが、今は初香を落ち着かせるほうが先だと
クリスは判断し、初香に話しかける。

「初香ちゃん、落ち着いて……大丈夫よ、私は……」
「……あ……あぁ……!来るな……来るなあぁぁぁっ!!」

ドゴオオオォォォッ!!

「くっ……!?」

クリスは初香を刺激しないように優しく話しかけたが、初香は絶叫して
レボワーカーによる攻撃をクリスに仕掛けてきた。

クリスは初撃こそ何とかかわしたものの、続けて振るわれたレボワーカーの巨腕を
くらって吹っ飛ばされる。

悲鳴を上げて地面に叩きつけられるクリス。
だが、彼女に大きなダメージは無い。

直前で、リフレクトによる防御が間に合ったからだ。
しかし、ミアの魔法で治療されたとはいえ、元々ダメージを負っているクリスは
身体に伝わった凄まじい衝撃に、呻く。

「……嫌だ……嫌だ……!死にたくない……!
 殺したくない……!怖い……怖い……怖い……!」

初香は見開いた目に涙を浮かべ、歯をガチガチと鳴らしている。

(……可哀想に……よっぽど怖い目にあったのね……)

その怯えきった様子を見て、クリスは初香に憐憫の情を覚える。
だが、すぐに表情を引き締めると初香に対して真っ直ぐに視線を向ける。

「……大丈夫よ、初香ちゃん……貴女は必ず私が助けてあげるから……」

決意の言葉とともに、クリスはミアの形見であるマジックロッドを構える。

(……アーシャ、エリー……そして、ミア……力を貸して……!)

今は亡き仲間の遺志をその細い腕に抱き、クリスは初香を救うために初香と対峙する。







[48]投稿者:「さあ、始めようか  その2」  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/12/25(Sat) 18:56 No.588  

一方、民家では盲目の少女と狂気のエルフが対峙していた。

「どうした?来ないならこっちから行くぜ?」

ダージュのその言葉を受けてか、それとも隙を見出したか、
りよなはサラマンダーで攻撃を仕掛けた。

ごばぅっ!!

だが、サラマンダーから放たれた炎はダージュに向かわず、
彼のわずかに左側へと向かい、民家を燃え上がらせた。

「はっ!どこを狙ってやがる!?」

嘲笑とともに、ダージュはルカの双刀を振り被り、りよなへと接近する。

だが、その動きはりよなが再び放った炎によって阻まれる。

「ちっ!」

舌打ちとともに後退するダージュ。

(先ほどの攻撃は、最初とは違って目が見えないとは思えないほど正確だった……。
 おそらく、俺の声から位置を割り出して攻撃しているんだろう……)

だが、それならば声を出さなければいいだけだ。
ダージュはほくそ笑み、音を立てずにりよなの背後へと動き、りよなを切り刻もうとする。

だが、りよなはいきなり背後に振り向き、サラマンダーに炎を吐き出させる。

「っ!?」

慌てて、炎を避けるダージュ。

(……何故だっ!?何故、俺の位置が分かったっ!?)

ダージュはりよなから距離を取り、警戒態勢を取る。
だが、りよなはそんなダージュなどお構い無しに周囲にめちゃくちゃに炎を放ち始める。

「!……ちっ!」

ダージュは炎に巻き込まれないように、さらにりよなから距離を取る。
りよなはダージュが自分から離れたことにも気が付かないのか、周囲に炎をばらまき続けている。

それを見て、ダージュは理解する。

(違うな……こいつは俺の位置が分かったんじゃない……。
 単に、周りをデタラメに攻撃してるだけだ……)

つまり、先ほどの攻撃はダージュのいた場所を狙い澄ましたかのように見えただけで、
実際はまぐれ当たりのようなものでしかなかったわけだ。

(……くくく……だったら、距離を取って魔法で始末するだけだ……)

ダージュはサラマンダーの攻撃がいつ来ても避けれるように警戒しつつ、魔法を詠唱する。
そして、右手に雷球を作り出し、りよなに向かって放とうとする。

……だが、その目論見は失敗に終わる。

「……ぐっ……?な……んだ……これ、は……?」

ダージュは呻いて、膝を突く。
いきなり強烈な眠気がダージュを襲ったせいだ。

(……これは……眠りの魔法か……!?)

重くなる目蓋を無理やりこじ開けて周囲を見回すと、そこには小さな精霊バクの姿。

(……く、そ……油断した……!)

この強烈な眠気にはいつまでも耐えられそうに無い。
仕方無く、この場から逃走しようとするダージュだが、
そこで初めて、自分が入ってきた入り口の扉が燃え上がっていることに気が付く。

(っ!?……ま……まさか、このガキ……!あのめちゃくちゃな攻撃はわざと……!?)

ダージュはりよなに驚愕の目を向ける。

りよなはいつの間にか炎の乱射を止め、肩にバクを乗せて悠然と立っていた。

(……はっ……!してやられたってわけかよ……!)

ダージュはぎりっと歯を鳴らしつつ、りよなを睨む。

全て、りよなの作戦通りだったのだ。
めちゃくちゃに炎を放って油断を誘ったのは、バクの存在を隠して眠りの魔法を
成功させるための布石。

ダージュはまんまとりよなの作戦に引っかかったのだ。
この眠気では立ち上がってりよなを斬りつけることも、魔法でりよなの命を奪うことも不可能だ。

ダージュは、勝負に負けたのだ。

「……最後に、何か言い残すことはありますか?」

りよなの声が冷たく響く。
それに、ダージュは答えない。

「……何も無いようですね。では……」

さようなら。

りよなは別れの言葉とともに、ダージュに炎を放った。







[49]投稿者:「さあ、始めようか  その3」  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/12/25(Sat) 18:57 No.589  

初香の操るレボワーカーが振るう豪腕をかわしながら、殺人者はひたすらに
レボワーカーの足を攻撃していた。

『足さえ止めてしまえば問題ない。その後、じっくりと嬲り殺してやる』

「うぅぅ……!こ……このっ……!」

初香は殺人者の狙いに気づき、何とか殺人者を捕らえようとするが、
元々戦闘経験の無い初香では、戦い慣れた殺人者の動きを捕らえることはできない。

そして、とうとう足に限界が来たのか、レボワーカーの足がバキンと音を立て、
バランスを崩して倒れる。

「!?……う……うわぁっ!?」

初香はレボワーカーが倒れた衝撃で身体を強く撃ちつけ、悲鳴を上げる。

「……うぅぅ……!」

痛みに呻く初香の耳に、自分に近づいてくる足音が聞こえる。

「……ひっ……!?」

足音を聞いた初香の恐怖が膨れ上がる。

『さあ、殺してやる。恐怖に泣き叫び、苦痛に狂いながら死んでいけ』

(……殺される、殺される、殺されるっ……!
 早くっ……早く、起き上がらないとっ……!)

自分に向かって近づいてくる殺人者の気配に、初香の恐怖は膨れ上がり、正気をかき乱す。

「くそっ……!動けっ!動いてよぉっ!!早く動けよぉぉっ!!」

初香は動かないレボワーカーと近づいてくる足音に焦り、怒声を上げる。

(……このままじゃ殺されるっ……何とかしないとっ……!!)

必死で打開策を探し、頭を回転させる初香。

(!……そうだ、あれならっ……!?)

ある物に思い当たった初香は、すぐにレボワーカーの腕が動くかを確かめる。
駆動音とともに左腕が動くのを確認した初香は、笑みを浮かべる。

(……よし、いけるっ……!これで、殺されないで済むっ……!
 殺人者を、倒せるっ……!)

初香は引きつった笑みでレボワーカーの左腕を操る。

そして、自分を殺そうとしている殺人者を倒すために、レボワーカーに
取り付けておいたソリッドシューターを握らせる。

ソリッドシューターを取り出したレボワーカーを見て、警戒を強める殺人者。
だが、殺人者はいきなり呆然とした様子になり、隙だらけとなる。

それを好機と見た初香は、殺人者にソリッドシューターを向ける。

(……死ねっ!!殺人者めっ!!)

恐怖に取り付かれた初香は、思い込みと聞こえもしない幻聴に惑わされ、引き金を引いた。

轟音が響き、ソリッドシューターの弾丸は殺人者に……研究所で脱出の誓いを交わした
最後の生き残りに向かって放たれた。








クリスは初香を止めるには、まずモンスターを止める必要があると考え、
モンスターの足に向かって、何度も魔法を打ち込んでいた。

胴体は狙えない。
間違って初香を傷つけてしまう危険があるからだ。

(……それにしても、見た目通り頑丈なモンスターね。
 あれだけ魔法を打ち込んだっていうのに、まだ動いていられるなんて……)

だが、クリスがそう考えた直後に、件のモンスターの足が異音とともに砕ける。
そして、自らの体重を支え切れなくなったモンスターはその巨体を沈ませた。

(よし……!これで、初香ちゃんを説得することができるわ……!)

少し乱暴だったかもしれないが、胴体を攻撃する危険を考えれば、仕方の無いことだろう。
クリスはすぐに初香の傍に近寄ろうとするが、モンスターの左腕が動き、武器らしきものを
取り出し始めた。

「……っ!」

クリスは警戒して、足を止める。
だが、その直後にどこからともなく耳障りな男の声が聞こえてきた。

(……放送っ……!)

こんなときに、と思いつつも、放送を聞き逃すわけにもいかず、
クリスはモンスターの動きと放送の両方に注意を向けるしかなかった。

「……八蜘蛛、えびげん、ナビィ、門番……」
「……っ!」

だが、死者の発表でえびげんとナビィの名前を聞いたクリスの注意が一瞬、
モンスターから離れる。

その隙を突くように、モンスターが取り出した武器をクリスに向ける。

「っ!?……しまっ……!」

絞り込まれる引き金。

リフレクトは間に合わない。

クリスは回避の姿勢を取るが、あの武器は形状からして、銃と同じ性質のものだろう。
しかも、あの大きさからして、本来は城攻めに使用する攻城兵器のようなものだと推測される。

だとすると、その威力と速度は相当なもののはずだ。
この距離での回避は不可能、喰らったら人間の身体など跡形も残らないだろう。


「危なああぁぁぁぁぁいっ!!」


だが、諦めかけたクリスの耳に、少女の必死の叫びが聞こえた。
それと同時に、強烈な衝撃を受けてクリスは弾き飛ばされる。

クリスが視線を向けると、そこには身体のあちこちに火傷をした全裸の少女。
少女はクリスの視線に気が付くと、笑みを浮かべ……。



ガアアアアアァァァァァァァアアアアアァァァァァァンッ!!!!



次の瞬間には、響いた轟音と共に少女の身体は粉微塵となり、
凄まじい血飛沫を辺りに撒き散らした。







[50]投稿者:「さあ、始めようか  その4」  289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/12/25(Sat) 18:58 No.590  

ごばぅっ!!


「ぐっ、おおおぉぉぉぉぉっ!!?」
「っ……!」

ダージュの絶叫と、微かなりよなの苦鳴。

狙いが逸れたりよなの炎は、ダージュの左半身を焼き焦がすだけに終わっていた。

りよなの狙いが逸れた原因は、りよなの右肩に刺さったスペツナズ・ナイフの刃。
ダージュが懐から取り出し、その刃をりよなに向かって放ったのだ。

だが、眠気のせいで心臓を狙った刃は、狙いが外れて右肩を傷つけるのみに終わった。
それでも、炎の狙いを逸らすことには成功し、ダージュは窮地から命を拾ったのだった。

「……往生際が……悪いですよ……!」
「……はっ……!てめぇのようなガキにっ……簡単に殺されてやるかよっ……!」

苛立ったりよなの様子に嘲笑を返しつつも、ダージュはすでに覚悟を決めていた。

(……仕留められなかったか……万事休す、だな……)

スペツナズ・ナイフで仕留められなかった時点で、ダージュの手は尽きた。
左半身のダメージにより眠気は吹っ飛んだが、今度はダメージのせいで動けそうにない。

デイパックから回復薬を取り出す暇は無いし、あったとしてもバクの魔法で眠らされるだけだろう。

いわゆる、詰みというヤツだ。

(……ま、そこそこ楽しめたし、よしとしとくか。
 それに、死ねばオルナをあの世で嬲り殺しにできるしな。
 ……ああ、殺すのは無理か。じゃあ、永遠に嬲り続けるとするか)

そこまで考えたところで、「何だ、死ぬのもそんなに悪くないじゃねぇか」とくっくっと笑う。
そんなダージュにりよなは怪訝な顔をしたが、すぐに無表情に戻り、サラマンダーを突きつける。

「……もう、末世の言葉は聞きません。今すぐに……」

りよながサラマンダーの炎を放とうとする。



ガアアアアアァァァァァァァアアアアアァァァァァァンッ!!!!



だが、そのとき凄まじい轟音が響き渡った。


「!?……何」

が起こったの、と続けようとしたりよなだったが、次の瞬間には民家の壁が粉々に吹き飛び、
さらにりよなとバクの身体が粉々に弾け飛んで、血風と化す。

そして、吹き飛んだ壁とりよなの直線上の壁も粉々に吹き飛び、辺りに盛大に破片と埃を
撒き散らした。



「……なっ……?」

ダージュはその光景を目の当たりにして、唖然とする。

「……何が……起こり、やがった……?」


ダージュのその問いに答えるものは、いない。

ダージュはよろよろと立ち上がり、壁が吹き飛んでできた大穴へと目を向ける。


吹き飛んだ壁の先には、自分と同じように呆然とした顔で座り込む
魔術師の女性の姿が遠目に確認できた。


そして、その傍には鉄の塊のようなモンスターの身体の中で、
やはり呆然としている小さな少女の姿。


(……何が起こったかは、分からねぇが……)


ダージュはデイパックから赤い薬を二つとも取り出し、一気に飲み干す。


(……俺はまだ生きていて、目の前には獲物がいる……)


傷が癒えたダージュは、落とした双刀を拾い上げ、両手に握り締める。


(……なら、やることは一つ……)


あの女どもを殺す。

最大限の恐怖と苦痛を与え、惨たらしく殺す。




さあ、始めようか。


最後の、殺し合いを。








【ロカ・ルカ@ボーパルラビット 死亡】
【篭野りよな@なよりよ     死亡】

【残り 3名】


【D−3:X3Y1 / 昏い街 / 1日目:深夜】

【ダージュ@リョナマナ】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(中)、左半身に火傷(中)
[装備]:ルカの双刀@ボーパルラビット
[道具]:デイパック、支給品一式×5(食料21食分、水21食分)
    火薬鉄砲@現実世界
   (本物そっくりの発射音が鳴り火薬の臭いがするオモチャのリボルバー【残り6発】)
    エリクシル@デモノフォビア
    運命の首飾り@アストラガロマンシー
    魔封じの呪印@リョナラークエスト
    カッパの皿@ボーパルラビット
    防犯用カラーボール(赤)x1@現実世界
[基本]リョナラー、オルナの関係者を殺す
[思考・状況]
1.クリス、初香を殺す



【クリステル・ジーメンス@SILENT DESIRE】
[状態]:放心中、疲労(大)、精神疲労(大)、魔力残量(小)、
    両手の指の爪が全て剥がされている(傷は塞がっている)
    胸骨にヒビ、肋骨の何本かにヒビ、血まみれ
[装備]:マジックロッド@マジックロッド(制限解除)
[道具]:無し
[基本]:対主催
[思考・状況]
1.放心中
2.初香を助ける
2.首輪を外す方法を考える(魔術トラップの解除法は会得済み)
3.首輪を解除するまでは絶対に死なない

※参加者がそれぞれ別の世界から集められていることに気付きました。
※銃の使い方を教わりました。



【登和多 初香{とわだ はつか}@XENOPHOBIA】
[状態]:疲労(特大)、精神疲労(特大)、放心
[装備]:ベレッタM1934@現実世界(残弾7+1、安全装置解除済み)
    クマさんティーシャツ&サスペンダースカート(赤)@現実世界
    レボワーカー@まじはーど
    (キャノピーのガラス損傷、本体の損傷度20%(右脚部破損))
[道具]:デイパック、支給品一式(パン1食分消費)
    SMドリンク@怪盗少女
    オーガの首輪@バトロワ
    9ミリショート弾×16@現実世界
    レボワーカーのマニュアル@まじはーど
    工具@バトロワ
[基本]:殺し合いからの脱出
[思考・状況]
1.放心中

※人を殺したことに怯えています。
 ただし、何らかの要因で落ち着きを取り戻すかもしれません。
※キングが昏い街の屋敷の地下(隠し通路経由)にいることを知りました。



【篭野りよな@なよりよ】
[状態]:死亡(死体は跡形も無く吹き飛んだ)
[装備]:無し
[道具]:無し
[基本]:殺し合いで優勝する?なよりを生き返らせる?
[思考・状況]

※りよなの所持品は全て跡形も無く吹き飛びました。



【ロカ・ルカ@ボーパルラビット】
[状態]:死亡(死体は跡形も無く吹き飛んだ)
[装備]:無し
[道具]:無し
[基本]:生存者の救出、保護、最小限の犠牲で脱出
[思考・状況]
1.モヒカンとダージュを倒す。
2.皆を助ける。



※三人の近くには、以下の死体とアイテムが転がっています。

【神代 伊予那{かみしろ いよな}@一日巫女】
[道具]:トカレフTT-33@現実世界(弾数8+1発)
    赤いお札×3@一日巫女
    デイパック、支給品一式(食料6/6、水4/6)
    リザードマンの剣@ボーパルラビット
    霊樹の杖@リョナラークエスト
    青銅の大剣@バトロワ、南部@まじはーど
    弓@バトロワ
    弓矢(25本)@ボーパルラビット
    ラーニングの極意@リョナラークエスト
    大福x8@現実世界
    あたりめ100gパックx4@現実世界
    財布(中身は日本円で3万7564円)@BlankBlood
    猫じゃらしx3@現実世界)
    涼子のナイフ@BlankBlood(胸に刺さっている)



【モヒカン@リョナラークエスト】
[道具]:ショットガン(残弾数0+11)@なよりよ
    トルネード@創作少女
    手製棍棒×3
    ツルハシ@○○少女
    眼力拡大目薬×1@リョナラークエスト
    デイパック、支給品一式
    包丁@バトロワ
    ライター@バトロワ
    マタタビの匂い袋(鈴付き)@現実世界
    スペツナズ・ナイフ×3@現実



【天崎涼子@BlankBlood】
[道具]:ガラスの破片×1@バトロワ
    ゼリーの詰め合わせ×4@バトロワ








[51]投稿者:289◇SqVSQKtY 投稿日:2010/12/25(Sat) 18:59 No.591  
さらにやばいことにしちゃったぜ。(`・ω・´)

さあ、ここから逆転できるのか!?w
おなまえ
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