「ぐ……あ……あぎぃぃぃぁぁあぁぁァァァァァッ!!?」
そして、焼き尽くされた悪魔が感じる痛みは、悪魔と精神の大半を共有していた サーディにもフィードバックした。
耐えがたい激痛を悪魔と共有してしまったサーディはあまりの痛みにのた打ち回る。 暴れるサーディを抑えきれず、エリナは振り払われて倒れてしまう。
「ぐっ……ぐぅぅぅっ……!このガキィィィ……!」
サーディは激痛に身を捩りつつも、伊予那を鬼の形相で睨みつける。
「ひっ……!あ……あぁ……!」
サーディの鬼気迫る迫力に、伊予那は恐怖に慄く。
サーディの内に棲む悪魔は強大だった。 いくら伊予那のお札の力が強力とはいえ、それだけで倒されてしまうほど 軟弱な存在ではなかったのだ。
「殺してやる……!!お前は四肢を引き千切って内臓を抉りだして目を繰り抜いて 切り刻んで切り刻んで砕いて砕いて、ひたすら苦しめて殺してやるわ……!!」 「い……いやあぁぁぁぁっ!!」
伊予那は恐怖に耐えきれず、逃げだした。 だが、サーディには逃がすつもりなど微塵も無い。
決して足が速いとは言えない伊予那に、サーディはあっさりと追いついて伊予那の背中に 鋭い蹴りを叩き入れた。
「ああぅっ!!」 「ふふ……逃がさないわよ……!まずは左手の指から一本ずつ斬り落としてあげるわ……!」
狂笑を浮かべるサーディ。 伊予那は目に涙を浮かべて歯をガチガチと鳴らす。
「ほぅら……まずは小指から少しずつ切り取って……!」 「……やらせないと……言ったでしょう……!」 「……ふん、まだ動く力があったのね……!」
声のしたほうにサーディが視線をやると、そこには満身創痍でありながらも 眼光鋭くサーディを睨みつけるエリナの姿。 その左手には3枚のお札を握りしめ、サーディへ一歩、一歩と近付いてきている。
「くっ……!」
それを見て、サーディは顔を引き攣らせて後ずさる。
お札1枚ですら、あれほどの激痛だったのだ。 それなのに、もし3枚ものお札をこの身に受けたとしたら……
当然、悪魔は消滅。サーディも痛みに耐えきれずショック死するか、 もしくは激痛のあまり精神崩壊といったところだろう。
「……カザネの仇よ……!」
エリナは胸から夥しい量の血を未だ流し続けている。 右手首は斬り飛ばされており、出血多量のせいか顔色は青白い。
今にも倒れて死んでしまってもおかしくない様相。 だが、それにも関らずエリナはサーディを倒すために、サーディに向かって 走り出した。
「ちっ……いい加減しつこいのよ、アンタはっ!!」
サーディは首飾りからナイフを無数に生み出し、エリナに撃ち出した。 だが、エリナは怯まないどころか速度を上げた。
(今更、怖気づくわけにはいかない……!私はもう……!)
決意を固めるエリナ。そんなエリナに、ナイフは容赦なく襲いかかった。
ザクザクザクザクッ!!
身体に数え切れないほどのナイフが刺さるが、エリナは痛みを無視して走る。
ザクッ!!
足に刺さった。一瞬よろけたが、大丈夫だ。 この程度ならば、まだ我慢できる。
問題無い。まだ走れる。
ジュグッ!!
目に刺さった。凄まじい激痛に足が止まりそうになる。 だが、無理やり体勢を整えて走り続ける。
問題無い。まだ片方は見える。
ゴシュッ!!
喉に刺さった。 ゴボっと喉から血が溢れてきて、吐血する。
問題無い。まだ肺の酸素は残ってる。
ザシュッ!!
心臓に刺さった。 身体がびくりと痙攣し、血液を身体に送ることができなくなる。 これでは身体に酸素を供給できず、もうほとんど動くことができない。
問題無い。もう充分近付いた。
……後は左手をヤツに叩きつけるだけだ。
数え切れないほどのナイフを受けながら、死なないどころか怯みすらしないエリナが サーディには信じられなかった。
あり得ない。絶対にあり得ない。 まるで不死身の化け物が迫ってきているように感じられ、サーディは恐怖で錯乱した。
「ひっ……!寄るな……寄るなあぁぁぁっ!!」
絶叫して刀を振り回すサーディ。
もう遅いわ、とエリナは言おうとしたが、喉がゴボゴボとなるだけだった。
構わず、エリナはサーディに左手に握ったお札を叩きつけた。
ゴジュアアアアアァァァァァァァァァァッ!!!
(ガアアアァアッァァァァアアーーーーー!!!) 「ひぎいぃぃぃぃあgぁdjgぁかあぽあああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!」
サーディの喉から人間が出すとは思えないような絶叫が迸る。
先ほどとは比べ物にならない、まるで灼熱の業火に焼かれ続けるような激痛。 それは人間に、いや生物に耐えられるようなものでは無かった。
その瞬間、悪魔はその存在を消し去られ、サーディの精神はバラバラに破壊された。
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