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リョナゲ・製作所バトルロワイアル 本編投下スレ

[1]投稿者:289 投稿日:2008/12/14(Sun) 10:22 No.41  
本編はここに投下してください。
感想はここに書いてもいいし、別スレを立てて
そこに書いてもいいです。(スレの乱立は不可)
よろしくお願いします。
[2]投稿者:289◆J9f1Lk6o 投稿日:2008/12/14(Sun) 12:48 No.42  
とりあえず、OPを投下してみます。
問題がありそうなら破棄か修正をしますので、
よろしくお願いします。
[3]投稿者:289◆J9f1Lk6o 投稿日:2008/12/14(Sun) 12:49 No.43  
薄暗い部屋の中、彼らは目覚めた。
部屋の中には40人以上の人がいるはずだが、誰一人として現状を理解してないようだ。

(まあ、当然だけどね。)

彼ら一人ひとりの疑問や不安を浮かべた表情を眺めながら、男は笑う。

(さて、彼らには現状を理解させてあげないとね。)

男はそう考えると、腕を振るった。
途端、男の立つ場所に光が差す。
薄暗い部屋の中でようやく与えられた光源に、部屋にいる者たちの視線は自然とそちらを向く。
彼らの前に現れた男の姿は、20代前半で極彩色のやたらと派手な格好をした優男だった。
頭を疑うようないでたちの男に対して、呆気に取られる者、馬鹿にした表情を浮かべる者、
男の格好を羨ましそうに眺める者など、彼らは様々な反応を見せた。

「やあ、皆さん初めまして!僕はキング・リョーナ!君たちをここに招待した者だ!」

男の名乗りを聞いても反応するものはいない。
そのことに男は少し不満を感じたが、気を取り直して続ける。

「君たちを招待した目的はただ一つ!それは、ここにいる君たち全員でこれから殺し合いをしてもらうことだ!」

その言葉に部屋にいる者たちはざわめき始めた。
彼らの顔に浮かぶのは困惑、不安、怒り、侮蔑の表情。
反応を得られて気分を良くした男はさらに続ける。

「どうやら、君たちはいまいち状況を理解してないようだね。まあ、無理もないさ。
いきなり殺し合いをしろと言われても、悪い冗談にしか聞こえないだろうね。
そんなわけで、君たちに信じてもらえるように用意したのが今君たちの首に着けられている首輪さ。」

その言葉を聞き、彼らは自分たちにいつの間にか首輪が着けられているのに気づいた。

「その首輪には爆弾が仕掛けられていてね。僕の好きなときに爆破できるのさ。
もちろん首輪が爆発したら、君たちは首が吹っ飛んで死ぬだろうね。・・・こんな風にさ。」

そう言って、男が指を弾いた瞬間。

ピピピピピッ

どこからか電子音が鳴り響いた。
その電子音はどうやら一人の少女の首元から聞こえているようだった。
より正確にいうなら、少女の首に着けられている首輪から電子音は聞こえていた。

少女は自分の首輪から鳴り響く電子音に困惑していたが、ふと何かに気づいたのか、
顔面を蒼白にして、男に視線を向けた。

「あ…あの、これって…?」

それに対して、男は満面の笑みを浮かべて、

「爆発まで、あと10秒だよ。」
「!?…ひっ…い…いやあぁぁぁっ!?」

その言葉を聞いた少女は半狂乱となった。
意味不明の叫び声を上げながら男に詰め寄る。

「やっ…いやっ…!死にたくない!やだっ!助けてっ!止めてっ!これ止めてよぉっ!」
その少女の恐怖に錯乱した様子に男は、さらに嬉しそうに表情を歪ませる。
それを見て、少女は絶望した。
この男はどうあっても自分を助ける気など無いと悟ったのだ。
そして、電子音がピ―――ッと鳴り響いた直後、

ボンッ!

いまいち迫力の無い爆発音が響き、少女の首が吹っ飛んだ。

悲鳴があちこちで沸き起こった。
顔を蒼白にする者、腰が抜けて座り込む者、厳しい表情を浮かべる者など様々だった。
傍にいた男は血塗れとなっていたが、男は少女の血を浴びて嫌悪するどころかゲラゲラと笑っていた。
それを見たほとんどの者が思った。

(この男は危険だ。)

この男を何とかしなければ、取り返しのつかないことが起こってしまうに違いない。
だが、首輪がある以上は男には逆らえない。
おそらく男に襲い掛かると同時に首輪を爆破されて終わりだろう。
ほとんどの者がそう思い、男に対して慎重に対応しようと考えていた。

しかし、中には度を越した馬鹿もいたようだ。
薄暗いせいで姿は見えないが、数人の人影が男に対して向かっていくのが見える。
それを見て止めようとする者もいたようだが、彼らは止まらない。
すでに男と彼らの距離は5mほどまで詰められていた。

だが、それに対して男は何の反応も見せなかった。
それを見て、あわよくば彼らが男を何とかしてくれるのではないか、とわずかに期待した者も
いたかもしれない。

「がふっ!?」
「うあっ…!」

だが、男に向かっていった者たちは突然上から何かに押さえつけられたかのように凄まじい勢いで床に叩きつけられた。
彼らと部屋にいる者たちは、その現象に驚愕した。

「やれやれ、僕に逆らうなんて身の程知らずだなぁ。
まあ、これ以上殺し合いの参加者を減らしても僕が困るし、今回は特別に許してあげるよ。」

男はそう言うと、床に押さえつけられていた者たちの拘束を解いたようだ。
彼らは男に対して怒りの表情を向けていたが、さすがに頭が冷えたらしく先ほどのように
考え無しに襲いかかることはないようだった。

「さて邪魔が入ってちょっと白けちゃったけど、今から殺し合いのルールについて説明するから
よく聞いておいてね。」

そんな彼らを無視して、男は再び部屋にいる者たちに殺し合いの説明を始めた。

「まず、君たちは一人になるまで殺しあわなければいけない!
もし最後の一人になることができたら、一つだけ何でも願いを叶えてあげるからね!
それと、最後の一人になった人は元にいた場所に帰りたいなら僕が帰してあげるよ!
これは願いとは別だから安心してね。

それから、殺し合いのために君たちにそれぞれ素敵なアイテムをプレゼントしよう!
一人ひとりにこんな感じのデイパックを渡すから、中身を確認してね。
中には、食料、水、照明道具、殺し合うフィールドの地図、筆記道具とメモ用の紙、コンパス、
時計、ここにいる参加者全員の名前が書かれた名簿が入ってるよ。
それと、これ以外にもランダムな支給品がいくつか配られている!
武器はこのランダム支給品に含まれているよ。
まあ、中身は当たり外れが激しいから外れを引いちゃった人はご愁傷様ってことで諦めてね。
ああ、もちろん今持ってる武器や道具は没収させてもらうからそのつもりでね。

それと、もし24時間の間に誰も死ななかった場合は全員の首輪を爆破しちゃうからそのつもりでね〜。
それと、殺し合い開始から6時間後に僕からのありがたい放送がフィールドに流れるから聞き逃さないようにね。
放送の内容は死亡者の名前と残り人数、それから禁止エリアの発表だよ。
禁止エリアっていうのは文字通りそこに入るのが禁止されたエリアのことだよ。
その場所に足を踏み入れた場合、首輪が爆発しちゃうから気をつけてね。
ちなみに、参加者同士で手を組んだり、支給品を交換したりするのは自由だからね。
せいぜいお互いを利用して上手く生き残りなよ?

説明は以上!それじゃ、殺し合いのゲームを開始するよ!
皆をフィールドにワープさせてあげるね!」

その言葉と同時に、一瞬で部屋にいる者たちは男の前から消え失せた。
男の言葉通り、殺し合いのフィールドに送り込まれたのだ。


そして、バトルロワイアルが開始された。




【鈴木さん@左クリック押すな!! 死亡】
【残り42名】


※バトルロワイアルは朝6時に開始されました。
※キングに向かっていった参加者たちが誰なのか、何人なのかは不明です。
 (人数は少なくても二人です。)
※床に叩きつけられた参加者たちは大きなダメージは負っていません。


[4]投稿者:289◆J9f1Lk6o 投稿日:2008/12/14(Sun) 12:53 No.44  
以上です。
少しあっさりすぎたかもしれませんが、キングが只者では
ないことは参加者たちにアピールできたと思います。

問題がありそうなら、破棄もしくは修正をしますので
よろしくお願いします。
[5]投稿者:ロウ 投稿日:2008/12/14(Sun) 14:12 No.45  
とうとう企画が始まりましたね。

前の仮OPと比べるとかなりあっさりしてますねw
それでも、OPで必要そうな主催者の強さの誇示と見せしめが両方とも入っているので、OPはこれでもいいかなと思います。
ここからどう話が作られていくのか、読む側としても書く側としてもとても楽しみです。

他の方もOPがこれで問題ないようなら、私もぼちぼち予約しにきます(`・ω・)

[6]投稿者:289◆J9f1Lk6o 投稿日:2008/12/15(Mon) 23:07 No.50  
どうも、レスに気づいてなかった自分です。(´・ω・`)
いやはや、申し訳ないです。

OPがあまり長すぎたら後続の書き手の人たちが
書きづらいんじゃないかと思って、前よりあっさりめ
にさせていただきました。

特にこれといって問題がありそうには言われてないよう
なので、OPはこれで行かせてもらうことにします。
ちょっと判断が早いかもと思いますが、大きな問題が
起こりそうな書き方はしなかったつもりだし、たぶん
大丈夫ですよね。

というわけで、話を書きたい方はがんがん予約して
書いちゃってください。(`・ω・´)
[7]投稿者:289◆J9f1Lk6o 投稿日:2008/12/17(Wed) 00:30 No.51  
続いて、自分が投稿させていただきます。

何となく連続で投稿というのは気が引けますが、
よろしくお願いします。
[8]投稿者:「人外少女たち」 289◆J9f1Lk6o 投稿日:2008/12/17(Wed) 00:32 No.52  
【狐】

萩の狐は状況を理解できなかった。

気がつくとあの部屋にいて、自分以外にも部屋には大勢の人間や人間ではない者たちが
集められていた。

それだけでも意味不明なのに、見知らぬ派手な男に殺し合いをしろといわれ、
いつのまにか着けられていた首輪には爆弾が仕掛けられているという。
さらに男はその首輪の爆弾を爆発させて、部屋にいた少女の一人の首を吹き飛ばして殺してしまった。

それを見て、男の言っていることが冗談ではないことがやっと理解できた。
首輪がなければ男をどうにかすることができたかもしれないが、命を握られている以上は迂闊なことはできない。

さてどうしようか、と考えていると後ろから肩を叩かれた。
振り向くと、自分と同じ魔王三将軍の一人、八蜘蛛が立っていた。
どうやら自分以外にも知り合いがいたらしいと分かって、少しほっとする萩。

さっそく八蜘蛛にあの男をどうするか指示を仰いだ。
それというのも、自分は三将軍とはいえ三人の中では一番の格下であるからだ。
いわば八蜘蛛は上司なのだから、この場では八蜘蛛に従うべきだと判断したのである。
それに対して、八蜘蛛は男が説明している殺し合いのルールを聞きながら答える。

「あの男は今のところほっといて構わないわよ、萩。
首輪がある以上、ここでヤツを殺すことはできないわ。
まずはこの首輪を外す方法を考えましょう。」

八蜘蛛の言うことはもっともだった。素直に頷く萩。

「首輪さえ外せば、あんな男くらいどうとでもなるわ。
多少妙な力があるみたいだけど、所詮は人間よ。私たちの敵ではないわ。」

それには少し疑問を持ったが、とりあえず頷く。
八蜘蛛も男のあの力は見ていたようだが、特に動じている様子はない。
自分より実力のある八蜘蛛には自分の感じるような不安はないのだろうと萩は思った。
自分はあの男の人間離れした力を見て、自分ではあの男には勝てないと思ってしまったのだが、
それを八蜘蛛に言うのは曲がりなりにも魔王三将軍としてのプライドが許さなかったので黙っておいた。

そして、八蜘蛛はさらに続ける。

「まず貴女は首輪を外せる知識を持った人間以外はできるだけ殺しなさい。
首輪を外せそうな人間は脅すなり騙すなりして、私の元に連れてくるのよ。
それと、殺した人間の死体の場所は覚えておきなさいよ。
あとで私が養分にするから。」

そう八蜘蛛が告げた後、男の説明が終わったらしい。

その次の瞬間、周りが光に包まれた。




そして、気がつくと萩は森の中にいた。
どうやらここが殺し合いのフィールドらしい。

そして、先ほどの八蜘蛛の言葉を思い出す。
(この場で人間を殺すことが本当に必要なことなのかは分からないが、八蜘蛛の命令だ。従うほかない。)

ふと横を見ると、男の言っていた通りデイパックが落ちている。

さっそく中身を確かめてみる。
中には男の言ったとおりのものが入っていた。
地図を取り出して確認してみたが、森は多いらしく自分のいる場所は特定できなかった。

次に参加者名簿に目を通す。
八蜘蛛と自分がこの殺し合いに参加しているということは、もう一人の三将軍ロシナンテも参加しているのでは
ないかと思ったからだ。

あった。ロシナンテの名前がはっきりと書いてある。
これで魔王三将軍の全員がこの場に集められているということになる。

(あのキングと名乗った男・・・我々に気づかせることなく、三将軍全員をあの場に移動させたというのか?)

もしそうなら、戦慄せざるを得ないことだった。
八蜘蛛は首輪さえ外せば大丈夫だと自信満々に息巻いていたが、本当にそうなのだろうか?
自分たちが及びもつかない力をあの男は持っているのではないだろうか?
再び不安を覚える萩だったが、今考えても推測の域を出ない。考えるのは後回しとする。

最後に武器がないか確かめる。
自分には土と毒を操る魔法があるが、それだけで戦っていては消耗が激しいだろう。
素手でも戦えないことはないが、できれば武器が欲しい。
贅沢を言うなら小烏丸のような小刀が理想的だ。

だが、出てきたのは髪留めと酒の入ったビンと目薬3つだった。

(・・・これでどうしろと?)

確かにアタリハズレがあると聞いたが、ハズレにしても限度があるぞ。
殺し合いをしろと言っておきながら、殺しの役に立たないものばかりを支給するとは何を考えているのだ。
というか、なんで目薬が3つも入ってるんだ。1つで充分だろうが。

何が出てくるのか少しワクワクしていただけに、期待を裏切られて若干へこむ萩。
心の中でキングと名乗った男にグチグチと文句を垂れていたが、しばらくするとため息をついて立ち上がる。

(武器が無いなら仕方が無い。まずはどこかで武器を調達するか。)

地図を見たところ、ここには建物や町も存在するらしい。
ならば、そこにいけば武器になりそうなものくらいあるだろう。
ここが地図のどの辺の森なのかは分からないが、移動して建物などの目印を見つければ場所は特定できるだろう。
そう思って、森の中を歩き出した。

だが、萩の足はすぐに止まった。

その表情は引き締められている。
なぜなら、前方の木に誰かが隠れる影を捉えたからだ。

萩は影が隠れた木に向かって言い放つ。


「そこに潜んでいる者よ、姿を見せろ。見せぬのなら害意があると見なして攻撃させてもらう。」


[9]投稿者:「人外少女たち・2」 289◆J9f1Lk6o 投稿日:2008/12/17(Wed) 00:33 No.53  
【忌み子】

リゼはこの状況に怯えていた。
殺し合いをしろと言われ、目の前で人の首が飛ぶところを見たのだ。
普通の少女なら恐怖を感じて当然だろう。

だが、リゼは忌み子である。
人間とモンスターのハーフという生まれから、常に人に疎まれて生きてきた。
中にはいきなり殺そうと襲い掛かってくる人間もいた。

そうやって襲い掛かってくる人間からは大抵は逃げるのだが、何度か逃げ損ねてしまい、
仕方なく戦って殺してしまったこともある。
初めて人を殺したときはとても気持ちが悪くて何度も吐いたし、しばらくは悪夢にうなされ続けたが、
今のリゼは必要とあれば人を殺すこともできるし、それで再起不能なほど苦しむということもない。

つまり、リゼは今まで修羅場を潜って来た経験と、必要とあらば人を殺せる精神を持っていることから
普通の少女とは言いがたい存在である。

しかし、そんな彼女でもこんな殺し合いに放り込まれて恐怖を感じないほどには場慣れしていない。
加えて、リゼには恐怖を後押しする理由もあったのだ。

その理由とは、自分の頭の角である。

この角を見れば、自分が忌み子であることはすぐ分かるだろう。
もし殺し合いに乗らない人間がいたとしても、忌み子の自分を仲間に入れてくれる道理はない。
それどころか、その人間は邪悪な忌み子が他の参加者を殺さないようにと自分を殺しにかかってくるかもしれない。

結論として、リゼには殺し合いに乗る以外に生き残る道はないのだ。
少なくともリゼはそう思っていた。

だが、リゼは自分がこの殺し合いを生き残るのは無理だと分かっていた。
一対一の戦いなら自分はそうそう負けはしないだろう。
自分にはカラミティという強力な力がある。これを使えば、大抵のものは一撃で倒すことができるはずだ。

しかし、カラミティは一度で全ての力を使い切ってしまう。
つまり、一人しか殺せないのだ。
もし相手が二人以上いたら、その時点で自分の負けだ。残ったほうに殺されてしまう。

仲間がいなければ、自分は生き残れない。
しかし、忌み子の自分に仲間は作れない。

万事休すだ。忌み子の自分は死ぬしかないのだ。

そう思い、絶望して震えていた。
だが、ふと前方を見ると人影がこちらに歩いてくる。
それを見て、リゼの恐怖が膨れ上がる。

(死にたくない!殺されたくない!)

慌てて、近くの木に身を隠す。
見つからないように、必死に身体の震えを抑えようとする。
だが、震えは止まらない。
どうか見つからないようにと祈るが、忌み子の祈りが天に届くわけが無い。


「そこに潜んでいる者よ、姿を見せろ。見せぬのなら害意があると見なして攻撃させてもらう。」


心臓が跳ね上がった。

ばれている。自分がここに隠れているのがばれている。
声からしてどうやら女性のようだが、その落ち着いた声音と攻撃をするという言葉からそれなりに場慣れしていて
実力もあるのだろう。
いきなり攻撃をしてこないのは、普通の人間からすればありがたかったのかもしれないが、リゼにはまるで意味がない。
姿を見られたら、どちらにしろ攻撃されるからだ。

(どうすればいいの・・・!?どうすれば・・・!)

必死に考えるが、打開策は思いつかない。
そうこうしているうちに、女性が再び声を発する。

「もう一度言う。出てこないなら攻撃させてもらう。言っておくが、次はない。」

最後通告。

女性のその言葉を聞いて、リゼは覚悟を決めた。

(・・・殺すしかない。)

返り討ちにされるかもしれない。
だが、それは人間と戦いになったときにはいつものことだ。
相手はどうやら一人のようだし、やれないことはないはずだ。

(まず言われたとおりに出て行って、姿を見せる。相手は私の角を見て驚くはず。
そのときに隙ができる。そこにカラミティを撃てば・・・!)

戦術も決まった。
後はそれを実行するだけだ。

「待って・・・!今出て行くから・・・だから、何もしないで・・・!」

相手を油断させるためにいかにも怯えているといった声を出す。
(もっとも、半分は演技ではないが。)

そして、木陰から姿を現す。
それと同時にカラミティを叩き込もうと相手を見据え、


相手の姿に驚いて、リゼは隙だらけとなった。


なぜならリゼの目の前にいるのは、狐耳に六本の尻尾を持つ着物とスカートを着た少女だったからだ。


[10]投稿者:「人外少女たち・3」 289◆J9f1Lk6o 投稿日:2008/12/17(Wed) 00:34 No.54  
【狐と忌み子】

リゼの姿を確認した萩は、リゼの角を見て相手も自分と同じ魔族だと認識した。

「ふむ、どうやらお主も私と同じように人間ではないらしいな。」

その言葉を聞いて、リゼは我に返る。
慌てて、萩に聞き返す。

「じゃあ、貴女も・・・。」
「見ての通りだ。」

その言葉を受けて、リゼは理解する。

(やっぱり、この人も忌み子なんだ・・・。)

間違った理解を。
こうして、二人の少女はお互いの素性を誤認した。



この場に自分以外にも忌み子がいたことに驚きを隠せないリゼ。
そして、ふとリゼは思った。

同じ忌み子であるこの人なら、自分の仲間になってくれるのではないか?


萩は考えていた。
この状況で最初に出会ったのが、自分と同じ魔族だったのは運が良いと言えるだろう。
見たところ身体能力は低そうだが、魔力のほうはかなりのもののようだ。

一人で人間を殺していくのも骨だ。どうせだから、この子を仲間に誘ってみるか?


二人は同時に口を開く。

「あの・・・。」
「提案なのだが・・・。」


そして、ここに一組の人外パーティが結成された。



【C-2:X3Y2/森/1日目:朝】

【萩の狐@創作少女】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式
カザネの髪留め@まじはーど、銘酒「千夜一夜」@○○少女、
眼力拡大目薬×3@リョナラークエスト
[基本]:人間を殺す。(首輪を外せる人間は八蜘蛛の元に連れて行く。)
[思考・状況]
1.リゼと一緒に行動。
2.武器を調達する。
3.八蜘蛛、ロシナンテと合流する。

※リゼを自分と同じ魔族だと認識しました。
※門番が参加していることに気づいていません。


【リゼ@リョナラークエスト】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし(デイパックはまだ拾ってません。)
[基本]:生き残る。(できれば殺しはしたくないが必要なら躊躇わない。)
[思考・状況]
1.萩の狐と一緒に行動。

※萩の狐を自分と同じ忌み子だと認識しました。
※リョナたろう、オーガ、モヒカンが参加していることに気づいていません。



[11]投稿者:289◆J9f1Lk6o 投稿日:2008/12/17(Wed) 00:51 No.55  
こんな感じです。
自キャラを絡めた場合は筆が乗るけど、完全に人様の
キャラばかりのときは書けるかどうか…。(´・ω・`)

ともあれ、お粗末さまでした。
[12]投稿者:ロウ◆to.6KERY 投稿日:2008/12/19(Fri) 01:35 No.58  
予約したばかりですが、投下させていただきます。
登場人物が一人なので、かなり短いです…。

[13]投稿者:「一人の少女」 ロウ◆to.6KERY 投稿日:2008/12/19(Fri) 01:52 No.59  

少女――神代 伊予那が目を開けると、そこは木造の建物の床の上だった。

敵がいないか警戒しながら辺りを見渡す。
右、左、後ろと首を動かすたびに自慢のポニーテールが揺れた。


誰も、いないようだ。とりあえずホッと息をつく。
先ほど自分がいた部屋のざわめきとは対照的に、辺りは静まり返っている。
緊張が少しずつ解けていくのと同時に、一時的に外に押し出されていた記憶や恐怖がよみがえってくる。

そうだ。私はさっき、人が死ぬところを見たんだ。
この殺し合いの主催者に向かっていった女の子…
首輪が爆発して、首が飛んで、分かれた二つの傷口から赤い血がたくさん、たくさん…
「ぅ…おえぇ……」
突然の吐き気に、たまらず胃の中身を出してしまう。
思い出すんじゃなかった。後悔してもすでに遅かったけれど。

吐き気が治まるのを待って、今度は女の子のことを思い出さないようにして記憶をさかのぼる。

キング・リョーナと名乗る主催者は言っていた。これは殺し合いのゲームだと。
最後の一人になるまで殺し合い、その残った一人だけが帰ることができる。
でも、残った一人だけということは、それ以外の人はあんな風に死んじゃうってことで…
(私は今、そんな状況の中にいるってこと?)
そんなの嫌だ。誰か、誰か助けてくれる人はいないのだろうか?
(そうだ、名簿…)

すぐ横に置いてあったデイパックを開け、中身を見てみる。
男の人が言っていた通り、水、食料など、必要最低限の物は入っているようだ。
「…なんだろう、これ…」
何か液体の入ったビンを見つけた。SMドリンクと書かれたラベルがついている。
(細長いビンに入っていたから…栄養ドリンクかな?)
とりあえずデイパックの中に戻しておくことにした。

「…あった!」私は参加者名簿と書かれた紙を取り出す。
名簿の名前を一人ずつ見ていくと、自分の名前が確かに書かれていた。
神代 伊予那。やっぱり私はこの殺し合いの参加者なんだ。
そして私の名前のすぐ後に、とても見慣れた名前が書かれていた。

「桜もいる!」つい声に出してしまった。
美空 桜。私の友達の名だ。
桜はいつも私を守ってくれるし、私も桜を守りたいと思う、私たち二人はそんな関係だった。
化け物が出てきた廃病院でだって、桜は気丈な態度で私を守ってくれた。
…少し気丈すぎた気もしなくもないけど。

桜は、たとえこんな状況でも絶対に私の味方になってくれる。
それに桜だって、この殺し合いという状況にパニックになっているかもしれない。
まずは桜を探すことから始めよう。
今すぐ行動を開始しようと腰が上がりかけたが、
あることを思い出し、ピタリと腰を止める。

そういえばこの殺し合いの主催者は、支給品の中に武器も入っていると言っていた気がする。
武器も持たずに行動しようとしていた自分に多少呆れつつ、デイパックの中を探る。

デイパックの底で、手が冷たく硬い何かに触れた。
引き出してみると、それは黒くて重々しく、
よくドラマなんかに出てくるようなものだった。
「…これって、銃…だよね?」
もちろん銃なんて見るのは初めてだ。
それでもこの鉄の塊がこの状況において何をするためのものなのか、
嫌でも理解せざるを得なかった。

付いていた説明書によるとこの銃は扱いやすい部類で、
力のない者でも十分に使うことができる銃のようだった。
さらにデイパックの中にはこの銃の弾も入っていた。

力もいらず、相手を遠くから殺すことのできる武器。
非力な私にとっては、これ以上ないといっていいほどの当たり武器だ。
相手に向けて、引き金を引く。これだけだ。


(でも…私にはそんなことできないよ…)
いくらこんな状況とはいえ、人を殺すことがどれだけ悪いことか、
それくらいは理解しているつもりだ。

一応銃は持って歩くことにした。
もちろん襲ってくる人を殺すためではない。
あくまでも、追い払うためだ。


やり残したことがないことを確認して、
ドアをおそるおそる開けてみた。
今自分がいるここのほかにも、いくつも建物があるようだ。
どうやら、ここは商店街のようだった。しかも結構な広さがあるように見える。
心臓がドキドキと高鳴っているのが聞こえたが、意を決して外に出た。

(大丈夫、桜に会えればきっとなんとかなる)
呪文のようにそう頭で繰り返しながらも、
私は無意識に汗ばむほど強く銃を握り締めていた。

―君たちは一人になるまで殺しあわなければいけない―
ふと思い出した主催者の言葉が、やけに耳に残り続けていた。



【A-2:X4Y4/商店街/1日目:朝】
【神代 伊予那@一日巫女】
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM1934(弾数 7+1)
[道具]:デイパック、支給品一式 
   9mmショート弾30発
   SMドリンク@怪盗少女
[基本]:桜と生きて帰る
[思考・状況]
1 桜を探す
2 襲ってくる人は殺さず、銃で追い払う
3 殺し合いに乗ってない人は、できれば仲間にしたい

※名簿を「美空 桜」までしか見ていません。
[14]投稿者:「4つの瞳、3色の瞳」その1 14スレ目の74◇DGrecv3w 投稿日:2008/12/19(Fri) 03:51 No.61  
#魔法少女とオッドアイの彼女#

「私がもっと強ければ・・。」
手頃な瓦礫に座り込んでいる少女は一人悪態をつきながら、バッグの中に手を入れては中身を取り出している。
まずはパンや水、12個の数字が円を描くように書かれた小さな丸い物が出てきた。
それから、鉛筆やメモ帳、参加者名簿と書かれた名簿が出てくる。
「これは・・?」
少女は細長い棒のような物をくるくると回し、見つけた突起部分を何となく押してみる。
「わっ、ビックリした・・。」
突然、目に光が飛び込んできて思わず目を細める。
そして、もう一度突起部分を押してみる。
「消えた・・。多分、これがあの男の言っていた『照明道具』ね。」
あの男、キング・リョーナを止めなければ大変なことになる。
そう直感した少女はあの時、危険も顧みず飛び掛っていた。
首輪が反応してから爆発するまでには少しだけ時間がある。
それまでに倒せばいいし、最悪、あの男の至近距離で爆発すれば、あの男もただでは済むまい。
そう考えていたが、現実は違った。
倒すどころか近づくことすらできなかった。あのまま首輪を反応されていたら今頃・・。
「私は・・やはり・・。」
冷静になってあの時のことを思い返す。恐怖で全身が震える感覚を覚える。
少女は如何に自分が無力で無鉄砲で無茶だったかを悟り、落胆していた。

「あの・・溜め息ばっかついてるの、よくないですよ?」
「!?」
突然後ろから声をかけられ少女は足元に広げていた荷物を飛び越して振り返る。
(何で!?気配をまったく感じなかった!?)
少女は戸惑っていた。確かに注意力散漫な状態ではあったが周囲をまったく警戒していなかったワケではない。
それなのにこんな至近距離まで近づかれ、声をかけられるまで目の前の人物のことに気づけなかった。
人によっては、あの時既に自分は死んでいたかもしれない。
少女は突然現れた人物を警戒心を露わにして睨みつける。
「わわっ!ごめんなさいです!ビックリさせるつもりは・・あったような・・なかったような・・ですけど。」
「とにかく、ごめんなさいです!なぞ、反省してるです!」
「貴女・・・何者なの?」
「へっ?なぞは、”なぞ”ですよ。」
なぞと名乗った女性、言動からはとても気配を殺して近づくなんていう芸当ができるように思えない。
しかし彼女はついさっき、それをやってのけた。それもかなり高い練度でだ。
(私でも、あそこまで完璧に気配は消せないのに・・彼女はいったい?)
警戒の眼差しを向け続ける少女をよそに、不思議そうに首を傾げるなぞだった。
「・・あの、まだ怒ってるですか?なぞ、ちゃんと反省してるですぅ・・。」
「・・えっ?」
少女は自分が怒っていると思われていたことが意外だった。
彼女は自分が今し方やったことが、どれだけ凄いことなのか自覚していないのだろうか。
そしてあの時、本人にその気があれば私を殺せていたことも自覚していないのだろうか。
(何なの・・彼女・・。)
少女はじっと彼女の様子を観察する。
左右で瞳の色が違う彼女は、小動物みたいにその瞳をまん丸にしてうるうるとこちらを見つめている。
(・・・気のせい、なのかな?)
その様子を見ていると、とても危険な人物には思えない。
戦士としての自分に自信が無くなっていた少女は、自身の勘を疑いとりあえずは警戒を解くことにした。

「いや、もう怒ってないよ。・・ごめんね。」
少女は優しい口調で笑顔を見せる。
「なぞも謝るです。ごめんなさいです。えと・・」
なぞはぺこりとお辞儀をした後、首を傾げる。
「ミアよ。なぞ・・」
「”なぞちゃん”が、いいです。」
「・・・なぞちゃん。」
「うん、じゃあよろしくです。ミアちゃん。」
「えっ?よろしくって・・。」
少女、ミアは不思議に思って聞き返す。
「なぞ、ミアちゃんと一緒に行くです。ミアちゃんも、なぞと一緒に行くですよね?」
「えっ・・・う、うん、いいよ。」
「やたっ♪やっぱり皆仲良くするのが一番ですっ♪」
なぞは満面の笑みでぴょんぴょんと軽く飛び跳ねて喜びを表現する。
(やっぱり、気のせい・・だよね。)
その様子にミアは、彼女と初めて会った時に感じた感覚を忘れることにした。
「・・で、色々と広げて何やってたですか?」
なぞはミアに問いかける。
「持ち物の確認よ。とりあえず、何が入ってるのか分からないとどう動けばいいかも分からないしね。」
「ほほぉー、ミアちゃんはかしこいです。なぞ、ずっと誰か居ないかなって歩き回ってたですよ。」
「そうなの。・・・そうね、じゃあ一緒に見てみる?」
「うんうん!やるですぅ〜♪」
ミアの誘いに二つ返事で答えたなぞは足早にミアが座っていた傍の瓦礫に腰をかけて、背負っていたバッグをおろす。
(なぞちゃんって、子供みたい・・。)
そんななぞの様子にミアは少し呆れながらも、笑顔で自分が座っていた所に戻り腰をかける。
[15]投稿者:「4つの瞳、3色の瞳」その2 14スレ目の74◇DGrecv3w 投稿日:2008/12/19(Fri) 03:53 No.62  
#彼女と”何か”#

「何だろうこれ・・。」
今、ミアの手には不恰好な黒い塊があった。
重厚そうな見た目の割りには気味が悪いほどに軽く、微かにヘンな臭いがする。
「あーっ!それ知ってるです!」
ミアは隣で荷物を確認していた少女の言葉に驚いて振り向く。
「知ってるって、これが何だかわかるの?」
「うん♪ちょっと貸してです。」
言われるがまま、ミアはなぞに手渡す。
「えとっ、こうして・・こうやって・・・」
なぞは受け取った物を手早く持ち直し、右腕を前へと突き出す。
ミアは視線を突き出された右腕の方へと移す。
「こう、ですっ!」
なぞはそう言って右手を少しだけ動かした。
その次の瞬間。とても乾いた音がした。
(何この音と臭い・・。イヤな感じがする・・。)
音と供に、何かヘンな臭いがなぞの右手に握られた物から漂う。
ミアは少しだけ顔をしかめる。

(でも、なぞちゃんは本当にこれの使い方知ってるんだなぁ。・・・!?)
少しだけ感心しながら、なぞの方に視線を戻そうとした時に全身を違和感が襲う。
身の毛がよだつほどの凄まじい恐怖が私を貫き辺りの空間を凍りつかせる。
息が苦しくなり、身体の震えを抑えるので精一杯になる。
初めて魔物と戦った時にも似たような感覚を覚えたが、これはその時の比ではない。
「なぞ・・・ちゃん?」
そんな空間を作り出しているのが、さっきまで無邪気にはしゃいでいた彼女であること。
ミアにとってその事実が更なる困惑と恐怖を招いていた。
なぞはミアの声に気づいていないのか、さっきから力無く俯いたままだった。
「なぞ・・ちゃん!!」
ミアは息苦しさを必死に抑えて再び彼女の名を呼ぶ。
やっと気が付いたのか彼女がゆっくりと首を向ける。
「うっ!?」
目が合ったその瞬間、爆発しそうなぐらい心臓が跳ね上がった気がした。
早く離れないと殺される。私の中の戦士としての勘がそう告げている。
しかし、身体がまったく言うことを聞かない。
何かに魅入られたかのように視線を外すことができない。
(何て・・冷たくて・・恐ろしい目なの。人間のできる目じゃ・・ないよ。)
血の通わぬ死人のような目。
それでいて、圧倒的な殺意と狂気を撃ち付けてくる目。
とても、先ほどまで隣ではしゃいでいた少女の、生きている人間の目ではなかった。
「なぞちゃん!!」
「・・・・。」
私を見ている彼女の口元は、うっすら笑っているような・・。
「・・・なぞちゃん!!」
「・・はにゃっ!!?な、何ですかっ!?」
「えっ!?」
ミアは予想外の事態に驚きの声を上げずにはいられなかった。
ようやく言葉を発した彼女が、私の声に逆に驚いている。
それと同時に、さっきまで凍りついていた空気が一瞬で元の空気に戻っている。
彼女の発する気配も、今までの気配がウソのように、先ほどまでの無邪気な彼女の気配へと戻っていた。
「・・もう、そんな大きな声出さなくてもちゃんと返すですよ。」
彼女は頬を膨らませながら、右手に握っていた物をくるりと回してミアの方へと突き出した。
ミアは何がなんだかよく分からない表情を浮かべつつ素直に受け取る。
(さっきのはいったい?やはり、彼女・・何かある。)

「それで・・結局これはなんなの?」
「んっ?なぞ、知らないですよ?」
なぞは軽く首を傾げる。
「えっ?でもさっき知ってるって・・。」
「んーっと、なぞ、よく分からないけどああいうのの使い方知ってるです。」
あのイヤな感じのする道具の使い方だけは知っている。
そして、彼女が少しだけ見せたあの気配。これらの意味する所は・・。
「なぞちゃんは・・・」
(誰か来た!?)
ミアは言いかけた言葉を飲み込み、何者かの気配がする方へと注意を向け立ち上がる。
「おやぁ?大きな音がしたから来てみたら、いい女が二人もいやがるとは、俺はツイてるぜぇ!」
「・・・貴方は?」
卑下な声と供に現れた男は、ニタニタと気味の悪い笑顔を浮かべている。
(この男は・・危ない。)
ミアはそう直感し、なぞを守ろうと一歩前へと出ようとする。
「なぞちゃんは下がっ・・・」
そこまで言った時、後ろに彼女の気配がまったくないことに気づく。
(あれ?なぞちゃ・・・!?)
ミアは己の目を疑った。
彼女の気配がまったくないことに気づいたその直後、あの男の目の前に彼女の姿があったからだ。
そればかりか、体勢は完全に男に蹴りを放つ体勢だった。
この光景が真実ならば、彼女は一瞬の内に私を追い越しあの男に蹴りを入れようとしていたことになる。
そんなことが、ただの人間にできるのだろうか?
男も同じ気持ちだったに違いない。
「ひひひ、勇ましい女だな!よし、特別に犯してや・・っておまっ!?」
男は慌てて身を固めて衝撃に備えようとするが、もう間に合わない。
「ぐほっ!!や・・やりやが・・って、ちょまっ!!」
なぞの蹴りが見事に腹へと入り前屈みになった男は、その体勢のまま蹴りを放った主を睨みつけようとすぐに顔を上げる。
しかし、その時には既になぞは男に向けて踵を落としていた。
「コケコッコー!!」
後頭部に踵落としをきめられた男は、奇妙な叫び声を上げ地に崩れ落ちた。
(あの女・・このモヒカン様をコケにしやがって・・覚えて・・やがれ・・。)
薄れゆく意識の中で彼はなぞに対して復讐心を燃やすのであった。
[16]投稿者:「4つの瞳、3色の瞳」その3 14スレ目の74◇DGrecv3w 投稿日:2008/12/19(Fri) 03:56 No.63  
#二人と落書き#

「・・・あれっ?なぞ、何で此処にいるですか?」
「貴女・・・本当は・・・何者?」
ミアは目の前の光景を信じることができなかった。
自然と声が震え、たどたどしくなる。
「・・・えっ?」
ミアの声に気づいたなぞは振り返る。
「だから、なぞは”なぞ”です。」
なぞは笑顔で答える。しかし、ミアの表情は硬いままだった。
「本当に・・なぞちゃんは、なぞちゃん・・だよね?」
「ですっ!・・って、もしかしてミアちゃんは、なぞを信じてないですかぁ!?」
なぞはまたあの目でうるうるとミアの方をじぃっと見つめる。
ミアは困ったような顔で答える。
「信じてる、信じてるよ。・・うん。信じてる。」
(あの目、あの動き。そしてあの気配は・・・危険すぎる。私は、彼女を本当に信じていいのかな?)
口では信じていると言ってみたものの、ミアは戸惑っていた。
やはり、なぞの中に彼女自身も知らない”何か”がある。そして、それはとても危険なものだ。
もしその”何か”が暴れだしたら、少なくとも私には止めることができないだろう。
「・・・はぅわっ!!ひっ、人が倒れてるですぅ!!助けるですっ!!」
「えっ、それは・・貴女が・・」
「ミアちゃんも手伝って欲しいです!とりあえず、安全なとこへ運ぶですぅ!!」
「・・・まぁ、その人は気絶しているだけだから、そんなに慌てなくても大丈夫だよ。」
「ふにゃっ!?・・・あっ、ホントです。ちゃんと、息してるですぅ♪」
彼女は、自分の中にある”何か”が行ったことを見て慌てている。
今回は気絶していただけだから良かった物の、もし死んでいたら彼女はきっとショックで倒れていたかもしれない。
そしてそれがもし、知り合いだとしたら・・・。
(私は、彼女の傍に居ていいのだろうか?)
私が彼女の中にある”何か”に打ち勝つだけの力を持っていれば、こんなことで悩んだりはしないだろう。
しかし、恐らく私はあの”何か”に勝てない。
片鱗に軽く触れただけでも恐怖で身体が動かなくなるほどだ。
もし、まともにぶつかることになったら何もできないだろう。
そして、その結果悲しむのは彼女だ。
(私・・どうしたらいいの?)

「・・もうっ、人をビックリさせる悪い人にはお返ししちゃうです♪」
いつの間にか、なぞの右手には細長い黒い物が握られていた。
一人悩んでいたミアは、なぞの行動に気付き考えるのを一旦止める。
「なぞちゃん、それは?」
「んっ?なぞのバッグに入ってたです。『油性マジックドルバッキー』って書いてあるです。」
「へぇ・・。それで、何するの?」
だいたい予想は付いていたが、ミアは一応聞いてみた。
「ふっふっふっ・・。落書きするですっ♪」
悪戯な笑顔を浮かべて、なぞは答えた。
「きゅっきゅっきゅう〜♪『へーのつっぱりはーいらないー』ですぅ〜♪」
なぞはとても楽しそうに、意味の分からない鼻歌を口遊みながら気絶している男の顔に落書きをしている。
ミアはその様子みて、さっきまで自分が一人思いつめていたのが馬鹿馬鹿しく思えてきた。
(とりあえずは・・・今、できることをしましょう。)
再びあんなことを考える気にはなれなかったミアは、とりあえず自分の荷物の確認を終わらせることにした。
「これは・・。」
星が描かれているステッキがでてきた。
そのステッキから魔力を感じたミアは少しだけステッキに意識を集中させてみる。
(・・私には使えないみたいだけど、とても明るくて優しい”星”の力が眠ってるみたいね。)
こういう道具は須らく、相応しい持ち主という者が存在している。
恐らくこの道具の持ち主は、私と同じく平和を愛する者なのだろう。
私は、この道具の持ち主を探すことにした。
そして、最後にでてきた道具は。
「・・・楽器?」
確か、ギターという名前だった気がする。
少し形は違うが、旅の詩人とかがたまに持っていて美しい旋律を奏でていたのを覚えている。
弾いてみようかとも思ったが、残念ながら私はそのような才能は持ち合わせていない。
危険な物ではないのでとりあえず、バッグの中に戻しておくことにした。
(やっぱり、ロッドは無かった・・か。)
私が持ち物を確認していた最大の目的は、マジックロッドの確認だった。
なぞに持ち物確認を勧めたのも、実はそうした魂胆もあってのことだった。
しかし、彼女の持ち物にもそれらしき影は見当たらなかった。
彼女のバッグに入っていた物は、香ばしい香りに思わず食欲を掻き立てられる丸い物が2箱分に、動物を模った可愛いクッキーが4枚。
それから今、彼女が落書きに使っている物で、後はあの男の言っていた共通の支給品だけだった。
(マジックロッド・・・何処にあるんだろう。あれさえあれば・・或いは・・。)
彼女の中にある”何か”に立ち向かえる気がする。・・・でも、本当にそうだろうか?
私は考えるのを止めたはずの思考が、再び蘇り渦巻くのを感じていた。

「・・・さて、そろそろ行きましょう。なぞちゃん。」
ミアは相変わらず楽しそうに悪戯書きをしているなぞの方へ歩み寄る。
「えぇ〜、なぞ、もうちょっと書きたいですぅ〜。」
なぞは、不満げな顔でミアの方を見る。
「もうちょっと書きたいって・・・ぷっ。」
その様子を見て、ミアはなぞがどんな落書きをしたのかふと気になって男の顔を覗き込んだ。
そして、酷く滑稽な落書きに思わず噴出してしまった。
「ふふっ、ちょっとそれ、描きすぎだよなぞちゃん。」
「あっ♪やっと、ミアちゃんが笑ったです♪」
「えっ?」
なぞの意外な言葉に、ミアは戸惑う。
笑顔ならさっきから何度か見せている気がする。それなのに『やっと』とは噛み合わない。
そんなミアの様子に構わず、なぞは言葉を続ける。
「ミアちゃん、なぞと一緒に行くって言ってからずっと、怖い目をしてたです・・。なぞ、寂しかったです・・。」
なぞは悲しそうな顔をする。
「ミアちゃん、ホントはなぞと一緒に行きたくないんじゃないかなって・・・、悲しかったです・・。」
なぞは今にも泣き出しそうな顔になる。
ミアはなぞの言葉にハッとする。
(私が”何か”と向き合うことを迷っていたから、怯えていたから、彼女を傷つけてしまった。)
彼女を悲しませないためにと考えていたことが、彼女を悲しませることになっていた。
そして、彼女の方が悲しいはずなのに、それでも彼女は私のことを考えていた。
そんなことにも気付けなかった私が、とても恥ずかしい。
「・・・ごめんね。」
ミアは一言だけ返す。
(・・決めた。私はもう、怯えたりしない。彼女は、”彼女”だから。)
「私は、なぞちゃんと一緒に行くよ。」
彼女の中にある”何か”を何とかするために、具体的にどうするかはまだ思いつかない。
だから私は、彼女のために今できることをすることにした。
「ホントですか?」
「うん、ホントだよ。よろしくね、なぞちゃん!」
(もう彼女を悲しませない。彼女のために、私は彼女の中にある”何か”と向き合う。・・向き合って見せる!)
「・・・うん!よろしくです、ミアちゃん!」
二人は心からの笑顔で手を取りあった。

「・・でも、やっぱ、額に”NIKU”はないと思うよ。なぞちゃん。」
「ガァーン!です。あれはなぞ一番の、お気に入りポイントですぅ〜!」
「ふふふ♪」
「あははは♪」
手早く荷物をまとめた二人は、男の顔に施されたおしゃれメイクについて彼是と語り合いながらその場を後にした。
この狂気に満ちた大地で、二人は一時の平和を謳歌していた。
[17]投稿者:「4つの瞳、3色の瞳」その4 14スレ目の74◇DGrecv3w 投稿日:2008/12/19(Fri) 04:02 No.64  
現在状況
【B−4:X1Y4/廃墟内部/1日目:朝】

【ミア@マジックロッド】
[状態]:健康、魔力十分
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式
火薬鉄砲@現実世界←本物そっくりの発射音が鳴り火薬の臭いがするオモチャのリボルバー銃(残7発分)
参考資料 ttp://homepage1.nifty.com/nekocame/60s70s/gindama/kamikayaku.htm
マジックステッキ@魔法少女☆まゆこちゃん(明るくて優しい星の力を感じるステッキ)
クラシックギター@La fine di abisso(吟遊詩人が持ってそうな古い木製ギター)
[基本]:対主催、できれば誰も殺したくない
[思考・状況]
1.なぞちゃんと一緒に行動する
2.マジックロッドを探す
3.バトルロワイヤルを止めさせる方法を探す
4.マジックステッキの持ち主を探す

※記憶喪失になる前のなぞちゃんが持っていたであろう空気や能力の片鱗を感じました。
※彼女がそれによって傷つくようなことがないよう、何とかしようと思っています。

【なぞちゃん@アストラガロマンシー】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式
油性マジック『ドルバッキー(黒)』@現実世界←元ネタは油性マジックのマッキー(黒)、新品でペン先は太い
たこ焼きx2@まじはーど(とても食欲をそそる香ばしい香りのする1ケースに8個入りの食べ物)
クマさんクッキーx4@リョナラークエスト(可愛くて美味しそうな袋詰めクッキー)
[基本]:対主催、皆で仲良く脱出
[思考・状況]
1.ミアと一緒に行動する
2.一緒に行動してくれる人を探す

※自分自身に凄い戦闘能力が秘められていることに気づいていません。
 また、そうした能力が発揮されている間の記憶は”始めから無かった”かのような感じになっています。
※名前は知りませんが、使い方が分かる現実世界の物は多いようです。

【モヒカン@リョナラークエスト】
[状態]:後頭部&腹部殴打、気絶中(5分ぐらいは起きません)
※顔に油性マジックで滅茶苦茶落書きされているのにまだ気づいていません。
 また、落書きされているせいで顔は違う意味で酷くて思わず笑ってしまう物になっています。(ぉ
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式
※確認前に気絶したためランダム支給品は現時点では不明です。
[基本]:女見つけて痛めつけて犯る
[思考・状況]
1.なぞちゃんに復讐する
2.一緒にいた女を痛めつけて犯る

後書きという名の言い訳。
どうも、とりあえず掲示板で言っていた話を完成させたので投下させて頂きました。
全国のモッヒーファンの方すみませんです。
ミアはファンタジー世界の住人っぽい印象を受けたので、銃とか懐中電灯とか電子制御の時計を知らないという感じになってますです。
なぞちゃんの記憶喪失っぷりが、かなり自己流解釈になっててすみませんです。
[18]投稿者:旧778 投稿日:2008/12/19(Fri) 19:47 No.65  
<奇妙な隣人 リョナたろう >

「流石の俺でもあれは引くわ」

 丸太に腰掛け、自分の首に張り付いた首輪を指でそっと撫でつつ
この首輪が作動したあの瞬間―様々な体内の物質をまき散らかして死んだ少女―
を思い出す。普段なら少女を殺すことや痛めつけることに躊躇の無い彼でも、
あの理不尽な暴力を迎合する気持ちは起きなかった。
・・・あちら側の人間だったら大喜びで拍手をしていたかも知れないが
彼、リョナたろうはこの瞬間、あの男をオーガの晩飯にすることに決定した。

 もっとも、同情心というよりも自分自身を無理矢理こんな
場所に連れてきたこと、爆弾つきの首輪で脅したこと対する
復讐心からくるものの方が大きいのだが

 一方で彼自身の欲望もふつふつと沸いていた。

 暗くて分かりにくかったが、あの会場には多数の女性が集められていた
そして、彼の本能があの場には痛めつけがいのありそうな女性たちが
わんさか存在したことを嗅ぎ付けていた
 男は何と言っていた?殺し合え?最後に残った一人を帰してやる?
願ったり叶ったりだ。あの男の計画に乗る形になるのは癪だが、
この興奮は抑えられそうに無かった。

 (多分)相当腕の立つ人間が数人襲い掛かって傷一つ、いや
手を触れることすら出来なかったのだ。自分一人だけの力では
あの男をオーガのおやつにすることは難しい。何とか「腕の立つ」
協力者も欲しいところだ。

「つーか、ここはどこなんだ・・・?森か?」

 周囲は見渡す限り木、木、木である。
まるでドーラの森のようだが、親切な看板は用意されていない

「おいおい、このまま俺に野垂れ死に or
 爆死させる気じゃないだろうな・・・」

 独り言は虚しく木々の中に消えていく、再び森に静寂が戻る。
彼はがっくりと頭を垂らし、溜息をついた。

「・・・とにかく、歩き出さないと始まらないか
こんな森だ、どんな危険が待ち受けているか分からなからな
お前もそう思うだろ?」

 沈み込んだ空気に生じた僅かな綻びを見逃すほど
彼は甘い人間ではなかった
[19]投稿者:旧778◆R2RkOHq. 投稿日:2008/12/19(Fri) 19:55 No.66  
<奇妙な隣人 リザードマン >

 道に迷って彼らの領域に足を踏み入れた哀れな少女と
楽しい(被害者には最悪な)時間を過ごしていた彼に待ち受けていたのは
多数の人間がひしめく暗い部屋であった。楽しい時間を邪魔されたばかりか
太く、硬い鱗で覆われた首に、これまた邪魔臭い首輪をつけられ
彼は憤慨し、キング・リョーナを名乗る男を睨みつけていた。
だが、一人の少女が爆死すると彼はその視線を徐々に横にスライドさせていく、
野性の勘が、生存本能が、第六感が、あの男を危険と認識した。

 「弱肉強食」(ありゃ、敵わんな)

 こうなった以上、この男に従う他ないと感じた彼の視線に飛び込んできたのは
美味しそうな(色んな意味で)少女達の姿であった。多少暗いとはいえ、
森に住む彼にとって、顔の造詣を判別することくらいは朝飯前であった。
男は「殺し合え」と言っていたが、言われるまでもないことだった
彼は嬉々として目の前の少女に手を、舌を、尾を伸ばした。

 「満願全席」(いただきマッスル!)

 そして空振りに終わり今に至る。目の前には湖、背後には大きな森が
広がっており、少女どころか人間の気配も無い、ただ足元に転がっている
デイバックだけがその存在感を彼に誇示するのみであった。
彼は粗暴にそれを逆さにして地面に落とす。バサバサという音と共に
幾つかの雑貨が転がってくる、彼はおもむろにそれを・・・

口に運んだ

六食分のパンと甘いお菓子は彼の胃袋に納まり、
恐らく数時間後には消化されるであろう。

 「風味絶佳」(うめぇ!)

食欲を満たした彼は、続いて別の欲望も満たしたくなった。
睡眠はまだ不足していない・・・とすると
幸い、この殺し合いのフィールドにはそれを満たしてくれる
格好の材料が存在している。彼はニヤリと口元をゆるめた。

そして、そのまま背後の森へと足を踏み入れた瞬間に、
人の気配と、言葉を聞き取った。
[20]投稿者:旧778◆R2RkOHq. 投稿日:2008/12/19(Fri) 19:56 No.67  
<奇妙な隣人 出会い >

 相手が敵対的+弱い→殺す
 相手が敵対的+強い→逃げる
 相手が友好的+弱い→女なら痛めつけて殺す。
 相手が友好的+強い→男女問わず仲間にする

というリョナたろうのシミュレートをぶち壊して姿を現したのは
なんとも形容しがたい・・・鎧を着た、二足歩行の、言葉の通じない、トカゲであった。
狩りの最中に出会いそうな化け物を相手に、一瞬彼はたじろいた

「(あのキングってのはどこまで見境がないんだ?)」

一方でこのトカゲ・・・リザードマンも声の先にいた人物が女性でないことを
不満に思っていた。これで三度目のお預けである。

「(まぁ良い・・・先ずはこいつの力を見せてもらうとするか)」

リョナたろうは気付かれないようにサーチの呪文を詠唱する。
相手が友好的かどうかは分からないが、問答無用で
襲い掛かってこなかったため、詠唱の余裕は十分だった

「(スキャンできたな・・・戦闘力10か、
ゴミめ・・・って俺と大体同じかよ!)」

 一方リザードマンもリョナたろうの強さを伺っていた
本気を出せば勝てない相手ではないだろうと感じる一方で
生き延びたいならコイツを味方につけるべきだという声も響く。

「(逃げるか?それとも・・・)」

張り詰めた空気が一人と一匹の間で流れる。
あたかも、数時間そこで対峙し続けたように思える緊張は、
リザードマンの手によって破られた。

「友好条約!」
「!?」

リザードマンが両手をあげ、足を交互に上げ下ろしをして
ステップを刻む、まるで踊っているようだが、実に滑稽である

「何のつもりだ?」
「親愛朋友!」

訝しげな反応を示すと、なんとかコミュニケーションを取ろうと
理解不能な言語で喋りながら腕を大きく広げて見せたり
バタバタ動かしてみたり・・・奇怪だが、敵対的でないことは理解できた

「リゼがいれば何を言ってるかも分かるかもしれないが・・・
 そうだ、参加者リストを見れば分かるかもしれないな」

ふと、自分がまだ支給品を拾っていないことに気付くが、
周囲を見渡すとどこにも無い、不審に思っているとリザードマンが首を伸ばし、
木の枝に引っかかったデイバックを地面に落とした。

「あ、ああサンキュ・・・」

とてもじゃないが信用の出来る相手とは思えない(言葉も通じないし)
しかしながら、どこか親近感を感じるこの憎めない爬虫類?のこの行動が
願わくば自分の寝込みを襲うためではないことを祈りつつ、
リョナたろうは奇妙な隣人と共に、この殺し合いを始めることとなったのであった。


【C-3:X1Y4/森/1日目:朝】

【リザードマン@ボーパルラビット】
[状態]:健康
[装備]:鎧(初期支給品)
[道具]:デイパック、支給品一式(パンは完食)
スタープラム等(完食)
ファイト一発*2@Rクエ 手榴弾*1@えびげん
拡声器@バトロワ
[基本]:本能のままに
[思考・状況]
1.ル・・・リョナたろうと共に行動
2. 生存本能によって賢さブースト中
3. 愛嬌を振りまいて仲間を作る
4. でも女の子を襲うつもり

※食べられない物以外は胃の中に収まりました
※手榴弾、ファイト一発等の使い道は知りません

【リョナたろう@リョナラークエスト】
[状態]:健康
[装備]:鎖帷子(初期支給品)
[道具]:デイパック、支給品一式
(支給品の中身は未確認)
[基本]:主催者を倒す+女の子を襲う
[思考・状況]
1.リザードマンと共に行動
2. 主催者を倒すための仲間集めを考える
3. でも女の子を(ry
4.リゼがいるなら探さないとな・・・

※魔法は「サーチ」を選択させて頂きました
※特殊能力は次回以降決定下さい
[21]投稿者:那烙◆5YONRcvs 投稿日:2008/12/19(Fri) 21:25 No.68  
双子の序盤を投下させていただきます。
よろしくです。
[22]投稿者:2つの鐘は鳴らされた−暁− 那烙◆5YONRcvs 投稿日:2008/12/19(Fri) 21:26 No.69  
「…ぅ……」

重い瞼をゆっくりと開ける。
何回か瞬きをするのに比例して、意識が覚醒していく。

「…どこだ、ここ…」

自分は何故か気球の中で寝ていたらしい。
体を起こして辺りを見回せば、近くに海岸が見える。

気球から外に出てみれば、最高の景色。
紺碧の海、香る潮風、さざめく波の音。
旅行としては絶好の場所である。
…現在実行中の悪魔のゲームがなければ、の話だが。

自分は確か昨日、自室のベッドで眠りについていたはずだ。
それが起きてみたら何だ。
見知らぬ部屋に集められ、変な男にいきなり「殺し合いをしろ」と言われるなんて誰が想像できただろうか。

「つーかあいつ…何モンだ?」

考えなしに向かっていった自分もちょっとは悪いと思うが、いきなり押さえつけられるとは思わなかった。
あれは人間技じゃねぇだろ絶対。ひょっとすると宇宙人とか?いや、何のために?

「………あ、ヤベ」

暫くの間海岸をうろついていた明空だが、何かを思い出したように気球へと走りながら引き返していく。

頭の中に、先程の部屋の中での冥夜の言葉が思い出されたためだ。


男がルールの説明をしている時、唐突に隣にいた冥夜に引き寄せられた。

「うわっ…、ちょっと、何すんだよっ」

思わず小声で抗議する。
が、冥夜はそんな兄の様子に構うことなく、小さな声で、しかし有無を言わさないように話す。

「いいか、フィールドに飛ばされたら、まず一番目立たないような建物に向かえ」
「へ?何で?」
「いいから!分かったな!」

その言葉に首を傾げた途端、急に周りが光に包まれ、気付いたらこの場所にいたのだ。
結局冥夜がなぜあんなことを言ったのかは分からず仕舞いだったが、実行してみる価値は充分にあるだろう。
冥夜のことなのだから、きっと何か意味があるはず。

気球からデイパックを引っ張り出し、中から地図を探して砂浜に広げる。

「えーっと…目立たない、目立たないところは…っと」

【昏い街】。
…街って目立つし、そもそも建物じゃない気がする。
【廃虚】。
…これもちょっとなぁ。怖い。なんか出そうだし。

「……ん?」

地図とにらめっこしていると、とある一点で目が留まる。

…【古い木造校舎】。

姿形が、どことなくあの小学校に似ていた。
自分と冥夜の出身校である紫琉小学校。

「…ここでいいや」

木造だからきっと目立たない(と思う)し、見慣れない場所で動くよりはマシだろう。
地図をデイパックにしまい込み、明空は立ち上がった。


「あ、そういや武器持ってなかった」

デイパックを下ろし、中をガサゴソ探ってみる。
脳内ではお昼の御機嫌ような番組でサイコロを振る時のテーマが流れている。呑気である。

「…ツルハシ?」

デイパックから出てきたのは、工事現場などで使うような普通のツルハシだった。
武器としては申し分ない。

「ま、何とかなんだろ」

ツルハシをしっかりと握り、改めて木造校舎への道を歩く明空であった。



【A-1:X3Y3/海岸/1日目:朝】
【明空@La fine di abisso】
[状態]:正常
[装備]:ツルハシ@○○少女
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6/6・水6/6)
[基本]:主催者の打倒
[思考・状況]
1.古い木造校舎へ向かう。
2.冥夜を捜す。
[23]投稿者:2つの鐘は鳴らされた−黄昏− 那烙◆5YONRcvs 投稿日:2008/12/19(Fri) 21:27 No.70  
「…っ………」

目を開けた途端、眩しい光が目に入り、思わず顔を背ける。
体を起こしてみると、どうやら自分は橋の上にいるようだ。

現在位置を確認しようにも、ここでは逃げ場がない。
とりあえず目の前に見える橋の入り口まで移動する事にした。

入り口付近で腰を下ろしてデイパックから地図を取り出し、現在位置を確認する。
ついでに目立たないような建物があるかどうか探してみる。

明空に「目立たない建物に行け」と言ったのは、場所をある程度限定して明空を捜すためだった。
ああでも言わなければ合流するのに2、3日ぐらいはかかってしまうだろう。
ましてや明空は動き回るほうだ。
何回も入れ違いになるだろうことは容易く予想できる。

と、地図に見覚えのある建物が記されていることに気づく。

(…なぜ、小学校が?)

目が留まった先は、自分と明空が過ごした紫琉小学校。
それが、何故このフィールドにあるのか。
…よく見れば、地図には見知らぬ名前の建物がいくつもある。
「国立魔法研究所」なんて、現実には絶対ありえない名前だろう。

(…魔法を使う奴がいるのか…厄介だな)

このゲームの参加者の何人かに、魔法が使える者がいるということだろうか。
そうなれば、自分は圧倒的に不利だ。

念のため、支給品を確認してみる。
入っていたのは、ラベルの貼ってあるビンに入った赤い液体と、何の変哲もないハンドガンだった。

(武器が入っていただけマシか…)

銃なんて、せいぜいゲームセンターのガンシューティングで馴染みのある程度だ。
使い方を間違えれば、自分が怪我をしかねない。
鈍器代わりにしか使えないだろうが、素手よりはマシである。
ビンの液体も、もしかしたら毒かもしれない。

(…これに期待はしない方がいいだろうな)

ともすれば、戦力が必要になってくる。
こちらにも魔法を使える者がいたほうが生き残る可能性は上がる。
とすれば、力になれそうな者を探すべきだろう。

(つるむのは苦手だが…そんな事を言ってられるような状況では無いしな…)

小学校の周囲を見れば、木々で囲まれているようだ。
恐らく、ここが一番目立たない所なのだろう。

そうと決まれば行動するのは早い。
荷物をまとめ、木造校舎へと移動を始めた。


(しかし…あの男、何が目的なんだ?)

脳裏にあの部屋での出来事が思い出される。
部屋に集められた上に殺し合いをしろなど、とても常人の考えることではない。
しかもあの男に向かっていった明空を手も触れずに制するなど、少なくとも人間ではないだろう。

(…まぁ、とりあえずあいつをどうにかしなければならないだろうな…)

自分は明空と共に帰れればそれでいい。難しいことだとは分かっていても。
そんな思いを胸に秘めながら、冥夜は木造校舎へと向かっていった。



【B-5:X1Y4/橋/1日目:朝】
【冥夜@La fine di abisso】
[状態]:正常
[装備]:奈々の拳銃@BlankBlood(仮)、エリクシル@SILENT DESIREシリーズ
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6/6・水6/6)
[基本]:主催者の打倒
[思考・状況]
1.古い木造校舎へ向かう。
2.明空を捜す。
[24]投稿者:那烙◆5YONRcvs 投稿日:2008/12/19(Fri) 21:28 No.71  
と、いうわけで双子行動開始編でした。

明空は独り言無茶苦茶喋ったりちょろちょろ動き回るのに対して、
冥夜は頭の中で考えるだけで無駄な行動はしないタイプなので、
なんだか冥夜編のほうが短くなってしまいました。
経過時間はだいたい一緒のはずなんですが。
しかし冥夜は頭いいのに、書いてる自分が頭悪いので微妙な感じに…(^ω^;)

289様のOPでキング・リョーナに向かっていったうちの一人を勝手に明空と解釈しましたが、何か問題あれば内容変えます。
明空は真っ先に向かっていきそうだなーと思ったので…。

ちなみに開始場所と支給品はくじで決めました。

書き手用掲示板のほうにも書きましたが、これ以降私は予約してませんので、
どうぞお好きに双子をいじってやって下さいませ。
[25]投稿者:「こどくのワケアリ」 14スレ目の74◇DGrecv3w 投稿日:2008/12/19(Fri) 22:54 No.73  
・・・さっきから1つも納得のいく理由が見つからない。
確かに、私は毒虫で、人殺しで、あの場所に居てはいけない人間だったかもしれない。
しかし、私だって好きでこうなったワケじゃない。私にも言い分はある。
むしろ、私の言い分は普通なら通るはずだ。
結果的にあんなことになった責任は・・・確かにあるかもしれない。
だから私は、それに関しては反省しているし、それ相応の罰も受けるつもりだ。

しかしどうして、私がこんな目に遭わなくてはいけないのだろうか。
罰にしては余りにも理不尽だ。普通の殺人でもこんな理不尽な罰はない。
第一、あの男はあの出来事に関して明らかに何の関係もないし、そもそも私とは面識もないはずだ。
私に個人的な怨み辛みの類があるとは到底思えない。
流石の私でも、まったく会ったことの無い人間から怨みを買う真似はできない。

(とりあえず・・生き残ろう。)
あの場には私の他にも沢山の人物が居た。
こんなことに付き合う輩のことだ。恐らくは正真正銘の毒虫で、人殺しなのだろう。
私はそんな輩の手から身を守る道具が無いか、バッグの中身を漁ることにした。

「・・・何でクマ?」
パンや水等と言った物の中に混じって、明らかに場違いな物が出てきた。
よく和室や玄関に飾ってある鮭を銜えた熊の置物だ。
確か、私の家にもあったようななかったような・・・。
(・・・どうでもいいわね。)
兎に角、これは使い物にならない。
アタリかハズレかで言えば120%ハズレだろう。賭けてもいい。
気を取り直してバッグの中身を漁ってみる。

「ヘルメットだ・・。」
次に出てきたのは、工事現場なんかでよく見かける黄色いヘルメットだった。
(これはとりあえず、被っておこうかな。)
この先、突然頭上から何かが落ちてくる可能性はないとは言い切れない。
後ろから頭をガツンと殴られる可能性も否定できない。
見てくれは少々気になるが、命には代えられない。私はヘルメットを被っておくことにした。

「あらっ、銃だわ・・。」
最後に出てきたのは、ハリウッド映画の主役が持ってそうな大きくて重い拳銃だった。
これは間違いなくアタリ・・と言いたい所だが残念ながらそうでもない。
なぜなら、私は使い方が分からないからだ。
(フツー、こんなもんの使い方なんて知らないわよ・・。)
心の中でそう悪態をつくと、バッグにしまっておくことにした。
相手が正真正銘の人殺しばかりだとしたら、こんなものをちらつかせても効果はないだろう。
むしろ、相手を無駄に挑発することになってしまう。
使い方が分かればそれでも対抗ができるだろう。
しかし、私は分からない。つまり、自分を不利にするだけだ。

「でも、何も持ってないのも不安ね。」
そう感じた私は、辺りを見回してみる。
そして運良く、手頃な大きさの尖った石を見つけることができた。
(・・持ってないよりマシ、か。)
私はとりあえず、その石を拾ってポケットに入れておくことにした。

「塔と船が見えるわね。じゃあ・・、私はこの辺りに居るんだわ。」
地図で現在位置を確認してみる。詳しい場所は分からないが、大体の位置はつかめた。
「・・廃墟があるのね。」
私はその時、廃墟に行くことを考えた。
廃墟ならば身を隠しつつも、適度に周囲の警戒ができるだけの視界が確保できるはずだ。
それに、最悪の場合外へと逃げることもできる。
流石に廃墟を人殺しの集団に囲まれたら逃げ場がないが、そういう事態は考えにくい。
そもそも人殺しなんて皆、他人と一緒に行動するのが嫌いなはずだ。
私がそうなのだから、正真正銘の人殺しは絶対そうだと思う。

(問題はどうやって行くか・・だけど。)
内陸部を行くのは流石に危険だろう。
内陸部を行くと警戒しなくてはいけない範囲が広くなってしまう。
私にはそんな器用な真似できそうにない。
(海岸線沿いが無難・・・ね。)
流石の人殺しも海を泳いで私を殺しに来るような真似はしないだろう。
と言うことは、海側には注意を向ける必要は殆どない。内陸部にのみ注意を集中させればいい。
三方を囲まれたら逃げ場がないが、その時はもう海に飛び込んで泳げばいいだろう。
服を着たまま泳いだ経験はないが、大丈夫、多分泳げる。
私にはそれぐらいできるはずだ。できなくてはいけないんだ。

「・・行こう。何時までも此処に留まってるのは危険だもの。」
私はバッグを背負うと、海岸線沿いに廃墟を目指して歩き出した。


【E−5:X3Y1/塔と船が見える草原/1日目:朝】
【加賀 美奈{かが みな}@こどく】
[状態]:健康
[装備]:安全ヘルメット@現実世界
先の尖ってる石@バトロワ(道端に落ちていた物を拾った、手頃な大きさ。ポケットの中にしまっている。)
[道具]:デイパック、支給品一式
木彫りのクマ@現実世界(一般的なサイズの物)
AM500@怪盗少女(残弾1発、安全装置未解除)
※美奈は残弾数について確認していません。
[基本]:絶対死にたくない、元の世界へ帰る
[思考・状況]
1.生き残る方法を考える
2.廃墟へ向かう
3.他の参加者に会わないよう警戒する

後書きと言う名の言い訳。
精一杯加賀美奈らしい思考と、『こどく』風文体を目指してみましたが・・うーん。(^^;
[26]投稿者:「神谷カザネの絶望」その1 82@アスロマ◆fTYtC8Ig 投稿日:2008/12/21(Sun) 11:45 No.81   HomePage
二人の少女が森の中で会話をしている。
一人は金髪ロングでセーラー服を着た少女、
もう一人はピンクがかった髪に黒と白のドレスをまとっていた。
二人は地図を見ながら次の行き先について話しているようだ。

「で、これからこの商店街に向かおうと思うの。
 きっと、私の仲間も自分の世界に近い場所に行くと思うから。
 サーディも当然来るでしょ?」
「ええ、そうするわ」

金髪の少女がにこやかに話す。
それに対しサーディと呼ばれた少女も微笑んでこたえた。
ゲームが開始したのが2時間程前、
そして、二人が出会ったのはつい30分程前だった。
その割に、二人はずいぶんと打ち解けているように見える。

「いやー、でもサーディがシノブの変身道具を持っていて本当によかったよ」
「(よかったね、カザネ)」
「だよねー」
「?」
「ああ、何でもないよ。ちょっとアリアちゃんと話してただけだから」

彼女、神谷カザネは変身ヒロインで、彼女の中には宇宙人がいる。
その宇宙人、ショット=アリアは彼女の友人だ。
アリアのおかげで、カザネはこの「突然のゲーム」の中でもすぐに平静に戻ることができた。

カザネとサーディが打ち解けた理由は簡単だ、
きっかけはサーディが持っていたフィンガーグローブ。
それはカザネの友人で、同じく変身ヒロインであるシノブの変身道具だった。

カザネとサーディが出会ったとき、ショット=アリアがそのことに気づき、
その後しばらく自己紹介や交渉を行った結果、、
・二人の間に友好関係を気づき、キング打倒を目指すこと
・サーディが持っている変身道具(グローブ)をそれを扱える友人と合流したら渡すこと
を約束したのだ。

その際に、
「自分が変身ヒロインであること」「アリアという友達が自分の中にいること」
「友人(シノブ)も変身ヒロインであり、変身にはそのグローブが必要なこと」など、
カザネは自分のことについて誠実に話している。
きっと現実世界ではとても信じてもらえないような話だろう。
だが、さすが魔法のある世界の住人。サーディは素直にそれを受け入れていた。

「よーし、じゃあ商店街に向かって出発進行!!」
「うん、そうだね。出発しようか」
「(カザネ、あまり大声をださないで、
  敵が近くに潜んでいるかもしれないわ)」
「はいはい、わかりました。もー、アリアちゃんは心配性なんだから」

先頭をきってカザネは歩き出す。
手には支給品の武器を構え、とっさの準備も万全だ。
サーディも両手に二本の刀を構え、それに続く。



カザネは歩きながらふと思う。
”そういえば、どうしてサーディは支給品を二つ持っているんだろう”と、
刀が二本で一セットだったとしても、
サーディはシノブの変身グローブと合わせて二つの支給品を持っていることになる。

カザネはサーディへ振り返りながら尋ねる。
「そういえば、何でサーディは支給品を二つ…」
「(カザネ!危ない!!)」

不意の出来事だった。
カザネが振り向いた先に見たものは、
自分に斬りかかるサーディの姿だった。

「くうっ!」

カザネはとっさに後ろに飛び跳ねる。
しかし寸での所で間に合わず、肩から胸にかけて傷を負った。
傷口からセーラー服が赤く滲んでいく。
もし避けていなかったら肩口から真っ二つにされていただろう。

「痛っ!!」

カザネはバランスを崩して尻餅をつく。
其処へさらにサーディの容赦ない突きが迫る。

「くっ!!」

カザネは体を転がしてその突きを避ける。
そして何とか間合いをとった。

息を切らしつつカザネは問う。
「…どういうこと」
気が動転しているカザネを横目に、サーディがうそぶく。
「ふーん、今のを避けるんだ。思ったよりやるわね」
「どういうことよっ!!」
激昂するカザネの姿をみながらサーディは続ける。
「まず一つ目の質問に答えるわ。
 私が支給品を二つ持っているのは、…既に一人殺しているから」
「!!!」
「そして何故あなたを襲ったかは、
 ……ただ、あなたの苦痛にゆがむ顔が見たかったからよ」
サーディが微笑む、だがその笑顔は先ほど見せたものとはまるで違う、邪悪な笑みだった。
「そんな…、何で…、さっき約束したじゃない」
「そう、…それで?話は終わりかしら」
サーディが再び剣を構える。
「(カザネ、しっかりして!この子は今カザネを殺そうとしたのよ!)」
カザネは未だに事態を理解しきれない、しかしこのままではまずい!!

「くっ、変身っ!!」

バッ!

カザネは条件反射的に変身を行おうとした。
しかし、いつもなら溢れ出てくるはずの光が出てこない。
「…残念でした、あなた自分で言ってたわよね。“変身道具が無ければ変身できない”って」
カザネは苦い顔をする、今の自分は奥の手が封じられているのだ。
[27]投稿者:「神谷カザネの絶望」その2 82@アスロマ◆fTYtC8Ig 投稿日:2008/12/21(Sun) 11:47 No.82   HomePage
「…ならばっ」
カザネはサーディに背を向けると森の中を走る。
いくら相手が殺し合いに乗ったのだとしても、カザネは人を殺したくなかった。
変身ができない今。サーディを倒すことはできても取り押さえるのは困難だろう。
それならば逃げるのが最善の策だ。

「ふふふ…。逃がさないわよ」

ヒュンッ!

風をきる音がした。サーディが刀を投擲したのだ。
「あうぅっ!」
カザネの足に激痛が走る。
地を蹴り損ねたカザネは前のめりに地面へ倒れこんだ。
「うっ、うあぁぁぁぁあぁ!!」
サーディが投げた刀はカザネの右ふくらはぎを貫通し、スネへと抜けていた。
その現実をつきつけるように、刀身から赤い血が滴り落ちていく。
「(カザネッ、カザネッ、しっかりして!!)」
ショット=アリアの声を聞き、カザネはどうにかして痛みと動揺を押さえ込む。

焼け付く様な痛みの中、カザネは何とかサーディの方を向く。
サーディはカザネのその苦痛に悶える姿を見て小さく笑みを浮かべた。
「さあ、逃げられないわよ」
そしてもう一つの刀を構え、動けないカザネに向かってゆっくりと歩き始める。

「(カザネ、もうやるしかないよ。じゃないとカザネが殺されちゃうよ!)」
「そうみたいね…」
カザネは大きく一つ、息をつく。
「ありがとう、アリアちゃん」
覚悟は、決まった。

「動かないで!!」
カザネは崩れた体勢のままサーディに武器を向ける。
それを見てサーディは歩みを止めた。

その武器がカザネの支給品。
競技用ボウガン、MC-1であった。
競技用とはいえ、殺傷力は十二分。
鎧を着ているのならともかく、サーディの服ならば容易に致命傷を与えられるだろう。

「…サーディ、ここから離れて。もし一歩でも近づいたら、…容赦なく撃つわ」
それを聞いて、サーディが笑う。
「ふふふ…、じゃあ撃てば?」
一歩進む。
「こないで!」
もう一歩。
「こないでよ!」
そして、さらに一歩。
「こないでってば!!」

ダンッ!!

ボウガンから矢が射出される。
カザネはその瞬間、目をつむっていた。
覚悟をしたとはいえ、やはり人が死ぬ瞬間は見たくない。
ましてや、つい先ほどまで仲間と信じていた人間ならば。

ギィン!!

「…嘘」
距離は15m程だったと思う。
常人の反射神経ではとてもかわせない距離のはずだった。
そう、かわせないはずの距離だった。

「ふふふ…、やっぱり軽くていい剣ね」
ボウガンの矢はサーディに空中で叩き落とされていた。
「これなら首飾りが無くてもそこそこ戦えそうだわ」
サーディはカザネの驚く顔を見て邪悪に微笑む。

カザネは呆然とサーディをみつめていた。
「(カザネ、しっかりして!カザネ!)」
ショット=アリアが必死に呼びかける。
だが、たとえその呼びかけに応えられたとしても、
彼女が次弾を装填する暇は残されていなかった。

15mの距離はサーディにとっては一瞬だ、
弾ける様な速度でサーディはカザネに近づく。

ザシュアッッ

「あっ、がっ、あ、ああぁぁぁぁぁあ!!」
「(カザネーッッ!!!)」

あっという間に距離を詰められ、
カザネは利き腕である右手を串刺しにされた。

「あは、あははは、いい、その顔すごくいいわ…。
 さあ、殺してあげる。苦しんで、苦しんで、死になさい」
[28]投稿者:「神谷カザネの絶望」その3 82@アスロマ◆fTYtC8Ig 投稿日:2008/12/21(Sun) 11:51 No.83   HomePage

………
……


今、何回刺されたのだろうか。
自分の体に突き刺さる剣を見て
神谷カザネはぼんやりと思う。

時間の感覚も、痛みの感覚も、ひどく遠い。
アリアの声も段々と遠くなっていき、今ではもう聞こえない。
段々と自分の思考力が麻痺していくのを感じる。

ひどく寒い。
夢なのか幻覚なのか、親しい友人や親、アリア達の姿がカザネの目の前に浮かんでは消えていく。
…やがて目の前にピンク髪の少女が現れた。カザネはこの子は誰だろう、と虚ろ(うつろ)な頭で思う。
その少女は刀を大上段に構え、嬉しそうになにかを言う。
何をいっているのかは、もうカザネにはわからない。
(これは、夢…だよね。)
そして、少女の白刃が振り下ろされた。

カザネの夢は、二度と醒めなかった。



ズズッ、ズズッ、ズズッ

サーディがカザネの髪を掴み井戸の前まで引き摺っていく、
「よいしょっと」
そして、その体を深い井戸へと放り投げた。
かつてにこやかに話をしていた少女は、力なくその闇へと落ちていく。
「バイバイ、カザネ。先にいる風香と仲良くね」
そう言うと、サーディは井戸に背を向け歩き出した。
しかし、少し歩いたところで立ち止まり、また井戸へと戻る。

「いけない、忘れる所だったわ」
サーディは懐からグローブを取り出すとそれを宙に放った。

銀光一閃。

グローブは切り裂かれ、それぞれ真っ二つになる。
もはやこのグローブは変身道具としての機能をなさないだろう。

「ふふ…」

サーディは破れたグローブを掴み、井戸へと放り投げる。
グローブは井戸のへりで一度跳ね、そして底へと消えた。

「ふふふ…、あはは、あはははははははは」

静かな森の中、少女の笑い声だけが響き渡る。
悪夢の幕開け、少女にとっては宴(うたげ)の幕開けだった。


【C-1:X4Y4/井戸の近く/1日目:午前】

【サーディ@アストラガロマンシー】
[状態]:健康
[装備]:ルカの双刀@ボーパルラビット(サーディの支給品)
    競技用ボウガン@現実世界(正式名:MC-1、矢三本、射程30m程度)
[道具]:デイパック、支給品一式(消耗品は略奪して多めに確保)
[基本]:嗜虐心を満たすために殺す(マーダー)
[思考・状況]
1.一人でいて、「自分より弱い相手」もしくは「強くても油断している相手」を殺す。
2.二人以上でも、明らかに自分より能力が低く、
  全員を逃がさず殺せそうなら殺す。例:りよな+早栗で二人とも有用な武器が無いときなど
3.でも結局はその時の気分次第。
4.シノブに問い詰められてもシラをきる気満々。
  証拠は既に井戸の底。

※シノブが変身できることを知りました
※オープンフィンガーグローブ(シノブの変身アイテム)は
 刀でバラバラにされ、井戸に捨てられました。

【神谷カザネ@まじ☆はーど】
[状態]:死亡
[装備]:ボロボロのセーラー服
[道具]:
[基本]:
[思考・状況]
サーディに斬殺されました。
井戸に放り投げられました。

【風香@アストラガロマンシー】
[状態]:死亡
[装備]:
[道具]:
[基本]:
[思考・状況]
サーディに斬殺されていました。
井戸に放り投げられていました。


【神谷カザネ@まじ☆はーど 死亡、旧風香@アストラガロマンシー 死亡】
【残り40名】

[あとがき]
ムチャクチャ長くなりました。あとで修正したくなったらどうしよう。
それと、ななよんさんのwikiで神谷カザネの立ち絵を見ることをお勧めしておきます。
感情移入度が上がるはずです。
[29]投稿者:しまった! 82@アスロマ◆fTYtC8Ig 投稿日:2008/12/21(Sun) 13:01 No.84   HomePage
しまった、支給品は一つとは限らないのか!
「強力な武器は基本的に一つしか支給品には含まれていない」と、
カザネとサーディは認識していたと脳内保管してください。
まだミスあるかも…。読点(、)が二つついている箇所を
既に読み返して発見してしまったんだぜ。
[30]投稿者:「二人だけのバトルロワイヤル」 14スレ目の74◆DGrecv3w 投稿日:2008/12/21(Sun) 18:22 No.85  
とりあえず、問題はなさそうなので投下させていただきますね。(^^;

「戦士とは。他者を打ち滅ぼす。それこそが生甲斐であり、それだけが全てだ。」

―女性の声が辺りに響く。

「打ち滅ぼした者が強ければ強いほど、それは良き糧となり、素晴らしき美酒となる。」

―女性の言葉は続く。

「お前も、そうは思わんか?」

―女性の瞳に一人の人間が映る。

「・・蒼い髪の、人間よ。」

―女性は目の前の少女に問いかけた。

「・・・思わない。」

――青い髪の少女は答える。

「アタシは、戦士は他人を打ち滅ぼすことが全てだとは絶対に思わない。」

――青い髪の少女の言葉は続く。

「アタシの拳は、”悪”を倒し人を生かすためにある拳だ。」

――少女の瞳に赤いマントの女性が映る。

「だから、アタシは戦わない!・・アンタ、”悪”ではないから。」

青い髪の少女の答えに、赤いマントの女性は興味を惹かれ、再び問いかける。

「なんと、お前はこの、『炎のロシナンテ』が”悪”ではないと言うのか!・・・では、聞こう。”悪”とは何だ?」

赤いマントの女性、ロシナンテは少女に問いかける。
(・・さて、何と答えてくれるか。)

「”悪”とは・・・正直、アタシにもうまく言えない。」

少女は真剣な表情で答える。

「・・今、アンタのやっていることを”悪”だと言うのならば、世の中は、人間は全て”悪”だ。」
「ほう。」
「アンタは強くなるために他人を打ち滅ぼすと言った。そうしなければ、生きていられないと言った。」
「そうだ。私は戦士だ。戦士とは、他者を打ち滅ぼし強くなることでしか生きていけない。」
「・・少なくとも、アンタはそういうヤツなんだと思った。つまり、アンタは生きようとしているだけだ。」
「・・・よく分からんことを言うな、お前。私がただ生きようとしているだけ?どうしてそう分かる?」

ロシナンテは少女の言葉に怪訝な顔をする。
少しばかり面白そうだと思って付き合っていたが、もはや単なる逃げ口上にしか思えない。
中々の身のこなしで、良き糧となると思ったが相手にその気がないのでは意味がない。
(・・もうよい、さっさと打ち滅ぼしてしまおう。)

「アンタ、何で”魔法”を使わない。アタシを打ち滅ぼしたいだけならば、”魔法”を使えばいい。」
「!?」
「アンタは生きるためだけに戦っている。それを”悪”とするならば、生きようとしている者全て”悪”だ!」
「・・クククッ・・フウハッハッハー!!コレは意外だ!確かにその通りだ!!」

ロシナンテは高笑いをしながら言葉を続ける。

「そう、私はただお前を打ち滅ぼしたいワケではない。お前と対等に戦い、その上でお前を打ち滅ぼし、糧にしたいのだ!」
「お前からは”魔力”の気配を感じない。魔法の使えぬ者を魔法を使って打ち滅ぼしても意味がない!」
「・・・しかし、何故お前は私が魔法を使えると分かった?」
「・・アンタなら、分かるだろ。」
「そうか、やはりお前の中に”戦士”が居るのか!実に面白い!私はお前のような人間に会うのは初めてだ!」

ロシナンテは笑いが止まらなかった。
確かにこの少女から感じるぐらいの”戦士”の気配を持った強者はごまんといた。
そして、私はそれらを次々と打ち滅ぼしてきた。しかし、彼女はそれらと一味違う。
本来は強者でありながらその”戦士”を封じ込め、その状態で私が魔法を態と使っていないことを見抜いてきている。
そして、あろうことかそれを理由に戦うことを否定している。
もし、彼女が”戦士”を解き放てば、私でも勝てるかどうか分からない。
しかし、そんな強者を撃ち滅ぼしたのならば・・。
(さぞ、甘美な美酒であろうな・・。)
私はこの少女の中に眠る”戦士”を是が非でも打ち滅ぼしたくなった。

「・・よし、分かった。私がお前の言う”悪”になればいいのだな?」
「なっ。何、言ってるんだ!どうして、そこまでしてアタシを!?」

少女は慌てた表情で噛み付いてくる。
ロシナンテは少しだけ周りに意識を拡散させてみる。
(・・・よし、居た。)

「ならば、こうしよう。これで・・・」

私は態とゆっくり炎を放つ体勢を取る。
私の予想通り、彼女はこの行動の意味に気付き声を上げた。

「・・・まさか、アンタ!!」

私の予想した通り、彼女は血相を変えて一目散に走り出す。
私はニヤリと笑う。

「私はお前の言う・・・」
「くっ!!」
私はゆっくりと意識を集中させる。
標的は、偶然見つけた人間だ。

「伏せて!!」
「・・え、何っ?」

少女に突然呼び止められて、その人間は立ち止まる。

「”悪”だ!!」

私は笑いながら標的に向けて炎を放った。
少女はその人間に飛びつき、そのまま押し倒した。

「えっ?うわっ!!」
「ぐっ!!うわあああ!!」

背中に炎を受けた少女が苦痛の悲鳴をあげる。
やはり、魔法の使えない者が魔法を受けるとあんな反応になるのか。
威力は最低限まで落としていたはずだが、意外とダメージがあるようだ。
(ふむ。少しだけ、勿体無いことをしたな・・。)

「はぁっ・・はぁっ・・・くっ。」

少女は肩で大きく息をしながら、よろよろと立ち上がる。

「・・・逃げてくれ。」

少女が助けた人間に対してそう告げている。
助けられた人間は何かを言っている。

「・・いいから、・・・早く!」

その人間は、彼女の様子に戸惑いながらもその場を離れた。

「・・さぁ、これで私はお前の言う”悪”だ。」
「・・・そう・・だな。」

少女の身体から闘志がみなぎっているのを感じる。
色々と面倒だったがようやく、あの少女の中に眠る”戦士”と戦える。
あの少女の中に居る”戦士”を引きずり出せる。私は期待で胸が高鳴った。
(さぁ!早く!早く来い!お前の全てで、私を打ち滅ぼしに来い!!)

「アンタ・・・そこまでして・・・。」

少女は俯きながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。

「・・いや。・・・分かった。」

少女は俯いたまま、私の正面で立ち止まる。

「アンタは、”悪”だ。アタシは、”悪”を許さない!!」

少女は顔を上げ私を見た。
その瞳は、激しい怒りと、そして悲しみの色を持って私を捉えていた。

「フウハッハッハー!それでいい!お前!!そういえば、まだ名を聞いてなかったな!」

「・・・川澄、シノブ。」

「シノブ、か!」

シノブと名乗った少女はゆっくりと構える。
私の本分は炎を使った遠距離戦闘なのだが、彼女は魔法が使えない以上、それはできない。
それに、私はどうしても、彼女と同じ土俵に立って打ち滅ぼしたい。
それほどまでに、彼女は私にとって魅力的な存在に映っていた。

「・・・ハッ!」

ロシナンテは再び炎を撃ち出す。
シノブはまったく動じなかった。彼女の真意が読めていたからだった。
ロシナンテの炎は彼女達の周りを包み込む。

「フウハッハッハー!これで、私とお前の戦いに水を差せる者は居ない!」
「・・・だな。」
「さぁ!私とお前、どちらかが相手の糧となるまで戦おうぞ!!」

―――此処に、二人だけのバトルロワイヤルが始まった。

【E−2:X1Y1/リザードマンの村敷地内/1日目:朝】

【ロシナンテ@幻想少女】
[状態]:健康、魔力十分
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式
※他の支給品についてはまだ不明です。
[基本]:強者と戦い打ち滅ぼす
[思考・状況]
1.川澄シノブを正々堂々打ち滅ぼす

※川澄シノブに憑いているスピリット=カーマインの存在を感じ取っています。
 しかし、あくまで川澄シノブの中に眠る”戦士としての本性”のような物と思っています。
※川澄シノブが素手で戦う限り、彼女も素手で戦います。
※炎の壁を維持するため、意識を集中させています。

【川澄シノブ{かわすみ しのぶ}&スピリット=カーマイン@まじはーど】
[状態]:背中に軽い火傷、軽い肉体疲労(魔力十分)
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式
※他の支給品についてはまだ不明です。
[基本]:対主催、”悪”は許さない、『罪を憎んで人を憎まず』精神全開中
[思考・状況]
1.ロシナンテを倒す
2.バトルロワイヤルを止めさせる方法を探す
3.なるべく大勢と脱出する

※二人を中心に半径15メートルほどの円状にロシナンテの炎が壁を作っています。
 ロシナンテの意思で解除されるか、ロシナンテが炎の壁を維持できなくなる程に消耗するまで消えません。
 ”魔法の炎”に耐性のある者以外はとても近づく事はできません。高さは大体10メートルぐらいです。

※川澄シノブに助けられた人間の正体は任せます。
[31]投稿者:「心に剣を・1」 WIN 投稿日:2008/12/21(Sun) 21:21 No.86  
 「ぜえ・・・はあっ・・・!!!」
白昼にも関わらず薄暗い森の中を、少女が駆ける。
 学生を思わせる容貌に、ヘアピンで左にまとめられた髪。
その少女、邦廻早栗は木の根につまづき枝にその柔肌を切り裂かれながらも、死に物狂いで走り続ける。
 もうどこを走っているのかさえ分からない、呼吸もめちゃくちゃで・・・もはや自分が走っているのかどうかさえ・・・。
だがしかし、足を止めることはけっしてできない。
 だって、そんなことをしたが最後“アレ”においつかれてしまう。
“アレ”が手にしている“アレ”で“アレ”されてしまうに違いない。

 まるで雷が落ちた時のような音をたてながら木々を無造作に折り裂き、その巨大な影は早栗に迫る。
 死人のような黄土色をした、まるで暴力そのものを練って固めたような巨人。
 その右腕に握りしめられた巨斧が、まるで小枝を折るように周囲の木々を薙ぎ払ってゆく。
 もしそれが木でなく人だったとしたら?
 その結果を想像することは紙を裂くより容易だ。

 「ひっ・・・ぜひっ・・・ひいいいいぃぃぃ!!!こないでぇええ・・・ひっ・・・ひっ・・・ひゃあっ!?」

 突然、早栗の視界が揺れた。
 きっと悪意のあるものがそこに“それ”を用意したに違いない・・・。
 そう思えるほど見事に、早栗のつま先が地面とそこから飛び出した木の根との間へとはまりこんで―――彼女の額が地面と激突した。

 陸に打ち上げられた魚が何とか水場へと戻ろうとするかのように、早栗は起き上がろうともがく。
 だが、平静を欠いた精神が肉体の自由を奪う。四肢の動作の統制がとれないまま、彼女は生まれたての仔馬のように、地べたを無様に転げまわった。
 「ひうっ・・・あひいいいい」
 そしてそれを嘲笑うかのように・・・黄土の巨体が早栗に迫る。
 仔鹿ににじり寄る猛獣のように・・・。


その時、巨人の左背後の闇から小さな影が飛び出した。その手に握りしめられた大きな刀が巨人の脚の腱を裂く。

 突然の襲撃に、巨人は体勢を大きく崩す。
 その隙を逃さず、小さな影は四方八方から巨人に無数の斬撃を浴びせかける。
 

 しかし・・・。
 「浅い・・・!」

 支給された武器は大きな刀。
 重量で叩き切る事を目的としたのであろうその武器は、その影――ロカ・ルカの腕力では扱いきれない。もっと軽い武器であったなら―――。
 かなりの手数を加えた筈だったが、巨人にダメージのある様子はない。見た目通り・・・否それ以上にタフな相手のようだ。

 巨木の様にそびえ立つ、そのおぞましい黄土色の巨体をルカは仰いだ。その職ゆえに、数多の魔物を相手してきた。そのルカの直感が告げていた。

「こいつは・・・“ヤバ”いわね」

 万全の状態でも手ごわいであろう相手を、不得手な獲物と―――視界の隅で尻餅をついている少女を再び見やる―――他人を守りながら戦うなど・・・。そんな真似をするのは馬鹿か、あるいはよっぽどの戦闘狂いくらいのものであろう。

 (ここでこいつと戦うのはあまりにも無謀・・・だったら!)
 ルカが巨人に対して背を向けた。その無防備な背中に巨斧が振り下ろされる。

「あ・・・危ないっ!!!」
 早栗が叫んだ。


 だがそこにはすでにルカの姿はなく、空を裂いた巨斧は大地を揺るがす轟音と共に地に叩きつけられる。
 (今だ!!!)
 巨斧の一撃をかわしたルカは、ましらの如き俊敏さで傍らの木を駆け上り、その頂端から巨人の振り下ろされた腕へと全体重と、そして渾身の力を込めて刀を突き降ろした。
 「やああああああっ!!!」


[32]投稿者:「心に剣を・2」 WIN 投稿日:2008/12/21(Sun) 21:24 No.87  
   ずぶり。

 乾いた肉と、その下の大地を貫く確かな手応えが、ルカの腕へと伝わった。
 (やった・・・!)
 咄嗟にひねり出した策としては、思っていた以上にうまく事が運んだ。
 だが、その結果とは裏腹に、ルカは目の前の敵の異様さを再確認していた。

 静かすぎる―――。

 彼女は数多の妖や獣達を葬ってきた。その多くは、これほどの手傷を受ければその苦痛に身もだえし、咆哮したものだったが・・・。
 間違えて、朽木を貫いてしまったのではないかと錯覚するほどだった。巨人は、キョトンとしていた。まるで反応が見られない。

 「こいつ・・・」
 巨人の無防備な首筋を刺し貫くという選択肢もあった。その判断を取り下げたのは・・・正解だったのかもしれない。

 ともかく、こうしてはいられない。先程襲われていた少女の元へと駆け寄り、手を差し伸べる。

 「立って!逃げるよ!」

 「あ・・・は、はい」
 早栗が応じて、わたわたのろのろと手を伸ばす
じれったい。
 強引に手首を掴んで引き上げようとした・・・が、重い。どうやら腰を抜かしてしまっているようだ。
 巨人が、腕と共に大地へと深々と突き刺さった刀の柄にもう一方の手をかけた。・・・もはや一刻の猶予もない。

 (仕方ない・・・!)

 かがみこんで、早栗の腹部を自分の背に乗せるように・・・一気に担ぎあげる。
 「ぐっ・・・」
 相手は少女とはいえ、自分より身長は高い。力のないルカにはかなりの負担である。ルカの苦労を知ってか知らずか、早栗は「ひえええ」などと素っ頓狂な声を上げている。

 苦痛など意に介してはいられない。体力には自信があったはずだ。できる限りの力をもって、ルカはその場から走り去る事に専念した。






 巨人が刀を引き抜いたときには、もはや獲物は影も形も見当たらなかった。黄土の巨人はやや不愉快な気分で、自分を大地へとつなぎ止めていたその邪魔なピンを眺めた。濡れたような刃を持つ、細長い鉄塊。「彼」に与えられた本能が、直ちにそれの用途と使い方を導き出す。

 これは“イイ”ものだ。
 巨人が―――斧の時の鈍重さとは段違いの疾さでその鉄塊を一振りした。周囲の木々が、一つの線を基準としてズルリと滑り・・・次々と地面へと重なり落ちた。その断面には、斧のような不細工な千切れ方はなく、細かな年輪すらはっきりと見て取れる美麗さがあった。

 やはり、これは“イイ”ものだ。
 これがあればもっともっと素敵なコロシ方ができそうだ。

 巨人の中に“言葉”という概念はない。だが一つの“情念”が確かに彼の中に渦巻いている。
 “ころすころスコロせコロセ殺す殺したい”
 その巨体をもってすら溢れ出んばかりのその“情念”に操られるかのように。黄土の巨人『ルシフェル』は新たな獲物を求めて動き出した。
 
[33]投稿者:「心に剣を・3」 WIN 投稿日:2008/12/21(Sun) 21:29 No.88  
 意識を集中し、周囲の気配を探る。あのおぞましい殺気はもはやない。
 ルカは安堵の息をついた。
 「ふぅ、・・・どうやら撒いたみたいね・・・」
 早栗が、心配そうな、また申し訳なさそうな顔でルカを見ている。それに応じて、手振りで“大丈夫だ”と返す。
 「災難だったわね。怪我は?」
 「あ・・・だ・・・大丈夫です。その・・・ありがとうございます。その、えっと・・・」
 「ロカ・ルカよ。ルカって呼んでくれていいわ」

 「あ、はい。ありがとうございます、ルカ・・・さん」


 さんをつけてくれなくてもよかったのにな、と比較的フレンドリーさを好むルカは思ったが、あえて口に出すことはしなかった。

 「あの・・・ルカさん・・・は?」
 そんな早栗の問いに何が?と聞き返そうとしたところで、ああそうか、と思い当たる。
 「私だったらへっちゃらだよ。こういう仕事なの。なれてるの」
 あれほどのバケモノを相手にすることはさすがに稀なことだが。

 「まあ、開始早々武器をなくしちゃったのはいたかっ・・・た・・けど・・・」
 そこまで言ったところで、ルカはしまったと思った。
 早栗はたちまち顔面蒼白になる。
 「ごごごごごめんなさい!わわ・・わ・・・私のせいで・・・」

 「いやいや・・・あなたのせいじゃないから」

 (そう、違う・・・。悪いのは全部・・・。)
 「悪いのは全部あのキング・・・なんとかってヤツよ!あの・・・」

 思い出すたびにルカの胸のどす黒い感情が増幅されてゆく。
 ルカは聖職者である。神学に対する取り組みこそやや怠慢であるとはいえ、神の為に剣を取り、その身を捧げ戦っている。「人の命をゲームのように弄ぶ」という行為は、神への・・・ひいては自分の天職に対する冒涜に等しい。

 「あんなヤツ、神様に舌を捩じ切られてしまえばいいんだわ」
 軽いジョークを飛ばしてみたつもりだったが、赤黒い感情は薄れない。

 「えっと・・・その・・・」
 早栗の泣きそうな声で、ルカは我に返る。

 「おっと・・・ごめん」
 ルカは考える。そうだ、憎むより前にすべきことがある。あの大勢が集められていた広間には、この少女の他にも明らかに戦闘に関して素人であろう人々はいた。
 この少女に関しても、もしあの場に自分がいなかったらどうなったろう。このいかにもひ弱そうな少女は、抵抗する手段すらなく、あの怪物に殺されていただろう。
 我が身は神の為に在り。我が剣は力を持たぬ民草の為に在り・・・。

 ルカは煮えたぎる憎悪を一旦鞘におさめ、生存者を捜すことを決意した。
 だがその前に・・・。

 (まずはあのバケモノから離れなきゃ・・・。私の体内時計が狂ってなければ、今は昼頃。太陽の位置から考えると、あいつからはおよそ北の方角に逃げてきたことになるわね・・・)

 天にそびえ立つような巨木が二人の眼前にある。何かあった時は、丁度いい目印になるかもしれない。

 「あなた、名前は?」
 ルカが聞いた。
 「え?あ、私は・・・邦廻早栗・・・です」
 「そう・・・いい名前ね」
 異国のセンスなのでルカにはよく分からないが。

 (考えてみたら、なぜ言葉が通じるのかしら?・・・まあどうだっていいことか・・・むしろ都合がいい)

 「サクリ、私についてきて。大丈夫、私が守ってあげるから」
 「あ、はい。ありがとうございます」
 どうしても敬語調になる。そういう性質の子なのだろう。

 出発しようとしたところで、ルカはもうひとつ大事な事を思い出した。
 「そういえば・・・!あいつから逃げる途中で結構荷物を落としちゃった。サクリ、荷物は?」
 「え・・・!そ、その・・・・えっと・・・」
 早栗は分かりやすいくらいうろたえている。いい予感がしない。
 「その・・・その・・・いきなり襲われたから・・・その・・・」

 「・・・落としちゃったのか」

 「じゃなくって・・・その・・・」
 「・・・置いてきちゃった?」
 「・・・・・・・はい」
 (悪い予感的中。それと・・・まさかとは思うけど・・・)
 「・・・全部?」
 「・・・・・・・・ごめんなさい」

 はぁ、と溜め息をつく。思ったよりそそっかしい子のようだ、とルカは思った。
 とにかく、荷物がないと色々と困る。食事とか、水とか・・・アレとか。

 (とにかく北へ行こう。他の人と合流できれば何とかなるかもしれない。武器の事も・・・)
 「じゃあ行こう?もう歩けるよね」
 「あ、はい。だいじょうぶです」


 邦廻早栗は他人に依存していなければ生きてゆけない少女だ。それが生来のものなのか、甘やかされて育てられたせいなのかは分からないが。
 (すごかったなあ、このルカって女の子。さっきの動き、全然見えなかった)
 早栗は目の前の奇妙な格好をした少女を、テレビのヒーローでも見るような眼差しで見た。
 (この子についていけば・・・私・・・生き残れるの・・・かも・・・)
 選択の余地は元から無い。他人の力がなければ、早栗が生き残れる事は・・・まずないだろう。歩き出したルカに、早栗も続いた。


 歩きながらルカは考える。
 (さっきのバケモノはあの広間にはいなかった・・・。アレ以外にもあんなバケモノが用意されていないとは・・・言い切れないわね)
 果たしてそれらの相手に対して、自分にどこまで立ち向かえるものか・・・。考えていても仕方がない、自分のできる事をしなければ・・・。
 ルカは、今は手元にないが・・・心に秘めた双剣を握りしめた。



【E−3:X2Y2/巨木周辺/1日目:昼前】
【ロカ・ルカ@ボーパルラビット】
[状態]:疲労
[装備]:なし(戦闘で喪失)
[道具]:デイパック、支給品一式 ※ルシフェルから逃走中に一部喪失。亡くしたものは今後の書き手様の判断におまかせ
[基本]:生存者の救出、保護、最小限の犠牲で脱出
[思考・状況]
1.ルシフェルからできるだけ遠ざかるため、大木を迂回して北へ
2.他の戦闘能力の無さそうな生存者を捜す

【邦廻早栗@デモノフォビア】
[状態]:健康
[装備]:(現時点で判明していません)
[道具]:なし(ルシフェルに襲撃されて全部置いてきた)
[基本]:自分の生存を最優先
[思考・状況]
1.こわいよう
2.これからどうしよう
3.どうしたらいいのかわかんないよう
4.とりあえず私を助けてくれた女の子についていこう・・・



【ルシフェル@デモノフォビア】
[状態]:軽傷?
[装備]:ルシフェルの斧、ルカが落としていったルシフェルの刀(両方@デモノフォビア)
[道具]:あっても使わないような・・・
[基本]:とりあえずめについたらころす
[思考・状況]
1. ころす
2.ころす
3.ころす
[34]投稿者:病弱少年と食人鬼、魔法少女と妖精少女(1) 289◆J9f1Lk6o 投稿日:2008/12/24(Wed) 14:49 No.94  

ルーファスは気がつくと建物の中にいた。周りを見回すと剣や斧、槍などの武器が
大量にたてかけられていた。

(どうやら、ここは武器庫みたいだな。)

飛ばされた場所が武器庫というのは運がいいのかもしれない。
ルーファスはそう思い、自分でも扱えそうな比較的軽そうな剣を手に取った。

しかし、違和感を感じる。

(軽すぎる・・・。)

いくら軽そうな剣を選んだからといっても、これは異常だ。
ふとある可能性に思い当たり、剣を壁に思い切り叩きつけてみる。

バキィッ!

剣は乾いた音を立て、あっさり折れてしまった。

(やっぱり、レプリカか・・・。)

どうやら、簡単に武器をくれるほど甘くはないようだ。
武器が手に入ったという喜びを裏切られて少し落胆したが、自分の傍に
デイパックが落ちていることに気づいた。
さっそく手に取って、中身を確かめてみる。

そして、剣が出てきたのを見てルーファスは安堵した。
先ほど期待を裏切られた分、喜びもひとしおだ。

剣は刀身が透き通っていて、冷気を発している。
ただの剣ではないらしい。

(魔剣か何かかな・・・?)

姉の友人のクリステルならもっと詳しいことが分かるのかもしれないが、
こういった魔力を持つ武器や道具に明るくないルーファスにはそれ以上の
ことは分からなかった。

(とにかく、これで自衛くらいはできるな。)

そして、他に何か役立ちそうなものがないか調べてみる。

出てきたのは皮製の袋に包まれた肉だった。

(食料か・・・。)

肉ならパンよりは精がつくかもしれない。
しかし、何となくこの肉からは嫌な感じがする。
できることなら、あまり食べたくないとルーファスは思った。

他にも何か無いか調べてみたが、冷気を発する剣とこの肉以外は、あの男の言っていた
通常の支給品だけのようだった。

「まあ、武器が手に入ったんだから贅沢は言えないか・・・。」

そう言って、納得するルーファス。
次に知り合いがいないか名簿を確かめてみた。

「アーシャさん!?姉さんに、クリスさんまで・・・!?」

まさか姉たちがいるとは思っていなかったルーファスは驚愕する。
だが、これは嬉しい誤算だ。
あの3人がいるなら、この状況も何とかなるかもしれない。
彼女たちなら、こんな殺し合いなどに屈せずに必ずあの男に立ち向かうはずだ。
そして、必ずあの男の非道な企みを打ち砕いてくれるに違いない。

やることは決まった。まずは彼女たちと合流しよう。

方針を決めたルーファスは武器庫から出ることにした。
しかし、デイパックを背負ったと同時に、出入り口の扉のノブが回った。

誰か来たのだ。

「!」

慌ててドアから離れ、冷気の剣を構えるルーファス。
そんなルーファスを無視するように、ガチャっと音を立てて扉が開く。








まゆこは気がつくと森の前に立っていた。

周りを見回すと、デイパックが落ちていた。
それを見て、薄暗い部屋での男の言葉を思い出す。

殺し合いをしてもらうという言葉を。
その言葉を思い出したまゆこは、同時に首を吹き飛ばされた少女の姿を思い出し、
人が死んだということに恐怖を感じ、反射的に口元を抑えた。

「なんで、あの男の人は殺し合いなんてひどいことをさせるのかな・・・?」

まゆこには、あの男の考えていることが分からなかった。
まゆこは困っている人を放っておけないような優しい性格の持ち主である。
そんなまゆこには、殺し合いなんて馬鹿げたことを考える人間が存在することが悲しかった。

「こんなの間違ってるよ・・・あの男の人を止めないと・・・!」

平和を守るために魔法少女となって魔物たちと戦う道を選んだまゆこは、この殺し合いと
いう狂気のフィールドで、殺し合いを阻止するという決意を固めた。

そうして方針を決めたはいいが、今の自分には変身するためのマジカルステッキがない。
あれがなければ自分はただの子供と変わらない、まずはステッキを探す必要がある。
まゆこは、さっそく落ちているデイパックの中身を確認することにした。
ひょっとしたら、この中に自分のステッキがあるかもしれないからだ。

そして、最初に出てきたのは盾だった。
身を守るために役立つかもしれないが、まゆこの腕力では満足に扱えないだろう。
そう判断したまゆこはひとまず盾をしまう。

次に出てきたのは、2丁拳銃が彫られた写真入りのロケットだった。
手に持って祈ってみたり、ぶんぶん振り回してみたりしたが、何にも起こらないので
これは外れアイテムなのだろうと判断して、これもデイパックにしまう。

最後に出てきたのは綺麗な冠だった。
まゆこはとりあえず頭に冠ってみた。

(なんか、お姫様になった気分・・・。)

ふと、状況にそぐわないお気楽な思いを抱くまゆこ。
そんな自分がなんとなく恥ずかしくなって、誰もいないのだが誤魔化すように
照れ笑いを浮かべてしまう。

デイパックに入っていたアイテムはこれで全部のようだった。
自分のステッキが無かったことに若干の落胆を感じたが、元からそれほど期待は
してなかったのだ。

次に、参加者名簿を確認してみる。どうやら知り合いはいないようだ。
それについては少し心細かったが、同時に安心もした。
こんな場所に自分の知り合いなどいてほしくはない。

名簿を確認し終えたまゆこは、デイパックを背負って立ち上がる。

まずは信頼できる人を探そう。
そう思って、まゆこは歩き出した。


だが、その歩みはすぐに止められた。
なぜなら、彼女に向かって物凄い勢いで何かが飛んでくるのが見えたから。


[35]投稿者:病弱少年と食人鬼、魔法少女と妖精少女(2) 289◆J9f1Lk6o 投稿日:2008/12/24(Wed) 14:50 No.95  

オーガは気がつくと、見慣れた建物の前に立っていた。

「ここは・・・東支部じゃねぇか。」

そう、目の前にあるのはオーガの所属する組織、リョナラー連合の東支部だった。
先ほど殺し合いをしてもらうと言われ、次の瞬間には目の前に東支部。

(今までのは、白昼夢か何かか?)

オーガはそう思ったが、自分の傍にデイパックがあるのに気がついて舌打ちをする。

やはり、先ほどまでの出来事は現実だったのだ。
だが、それなら東支部が目の前にあるのは何故なのか?

オーガはその疑問を解消するために、まずデイパックから地図を取り出して確認することにした。
そして、地図に書かれている施設の名前の中に東支部の名前を見つけることができた。
しかし、その周りの地形は自分の記憶と食い違っている。

「ということは、この地図はデタラメってことか・・・?」

オーガは支給された地図を疑ったが、すぐに考え直す。
殺し合いでデタラメの地図などわざわざ配る必要はないはずだ。
そこで、オーガはもう一つの可能性を考えた。

この東支部は殺し合いのためにそっくりに建てられた偽者なのではないか?

そう考えれば、東支部の周りの地形が自分の記憶と食い違うことも説明がつく。

「ずいぶんとヒマなことをするんだな、あの男は。」

オーガは東支部もどきを建てる労力を考えて、その無駄な行為に呆れた。

もっとも、殺し合いなんて馬鹿げたことを考える人間だ。
頭のネジが何本か吹っ飛んでいてもおかしくはない。

次に、支給品を確認してみる。
自分には武器は必要ない(というより扱えない)が、何か役立つ道具があるかもしれない。

そして、出てきたのは円盤状の投具で外側が鋭い刃となっている武器だった。
いわゆるチャクラムのようだが、中心に穴が無いところを見ると違うものなのかもしれない。
試しに近くの木に投げてみると、円盤は鋭く回転しながら飛んでいき、直径2cmほどの枝を
あっさり切断し、ブーメランのようにオーガの手元に戻ってきた。
オーガは戻ってきた円盤をキャッチしつつ、考える。

(俺の腕じゃ動く標的には当たらないだろうが、けん制くらいには使えるか・・・。)

そう思い、円盤を懐に潜ませておく。

次に出てきたのは、赤い色のポーション3個だった。
ファイト一発や絶倫ドリンクの類だろうか?
どんな効果があるのか分からないので、これを使うのは保留にしておこう。
そう思い、デイパックにしまっておいた。

支給品について確認したオーガは改めて目の前の東支部もどきに目を向ける。

「さて、とりあえず中に入るか。東支部そっくりに作ってあるなら、武器庫や店も
あるかもしれないしな。」

何も無い可能性のほうが高いかもしれないが、何かあったら儲けものだ。

(ついでに自分の部屋に行って、非常用の人肉が無いか確かめるか・・・。)

そう考えた後、すぐに空腹を感じてオーガは溜息を吐く。

オーガはカニバリストである。
彼が食するのは人肉のみで、人肉以外を食することができない。
他のものを食べると胃が受け付けずに吐き出してしまうほどで、それはもはや体質といっても
過言ではないくらいのものとなっている。(なぜか飲み物の類は全然平気なのだが。)

したがって、支給された食料では彼の腹を満たすことはできない。
つまり、オーガはこの殺し合いが始まった時点で、他の参加者たちとは食料という点で
大きなハンデを背負っていることになるのだ。

(何とかして、人肉を手に入れないとな・・・。)

オーガは別に殺し合いに乗るつもりはないが、どうしても食料が手に入らないなら
適当な人間を殺してその死体を喰らうつもりだった。

餓死するくらいなら、殺して喰らう。
今までもそうしてきたし、これからも改めるつもりなどない。

今さら躊躇や感傷など微塵もなかった。
オーガは冷めた思いでいつも通りの結論を下し、東支部に足を踏み入れた。


・・・バキィッ・・・!


そして、入ってすぐに奥から何かが砕ける音が微かに響いてきた。
オーガは一瞬で思考を切り替え、警戒態勢を取る。

(音が響いたのは武器庫のほうか・・・誰かが戦闘でもしているのか・・・?)

だが、先ほどの音の後は何も聞こえてこない。
不気味なほどに静かだった。
警戒しつつも、武器庫へと歩みを進めるオーガ。

そして、武器庫の扉の前に立つ。
中からは人の気配がする。
気配からして、どうやら一人のようだ。

(さて、どうするか・・・。)

誰かいないか、声をかけてみるか?
殺し合いに乗っていない人間なら、協力体制を築くのも悪くはない。

(いや・・・。)

オーガは考え直す。
今の自分には食料・・・人肉が無い。
まだ東支部の中を探索はしていないが、おそらく見つかる可能性は低いだろう。

ならば、扉の先にいる人間を殺して、早いうちに食料を調達しておくべきではないか?

そう考えたが、扉の先の人間が腕の立つ相手だった場合は面倒なことになる。
殺し合いの開始早々、無駄な怪我は負いたくない。
だが、食料の調達は必要だ。

悩んだ末に、オーガはまずは扉を開けて、相手が弱そうなら襲いかかり、
相手が強そうなら仲間に誘うことにした。
ただし、仲間になったとしても同行はしない。
仲間が一緒にいては人肉を手に入れることが難しくなるので、適当な理由をつけて
別行動をさせてもらおう。

そこまで考えた後、ようやくオーガは扉を開けた。








プラムは気がつくと平原にいた。

なぜ自分がここにいるのかは分からなかったが、
先ほどの暗い部屋にいた男の言葉を思い出そうとする。

だが、プラムは男の長ったらしい説明など全然聞いてなかったので、
ほとんど何も思い出せなかった。

そして、かろうじて思い出せたことはあの男が今からゲームを始めると
言っていたことだった。

ということは、今はゲームの真っ最中なのだろう。

ゲームは楽しいことだとプラムは知っていた。
そして、男の言葉によると自分は今から他の人と「ゲーム」をするらしい。

それを理解したプラムは嬉しそうに笑った。
あの部屋には人がたくさんいた。その全員が自分と「ゲーム」をしてくれるのだ。
きっと楽しいに違いない。

早く「ゲーム」がしたいとプラムは思い、他の人を探すために移動をしようとしたところで
男の言葉をもう一つ思い出した。

たしか、あの男は自分に素敵なアイテムをプレゼントすると言っていたはずだ。

キョロキョロと自分の周りを見回すと、デイパックが落ちているのを見つける。
さっそくデイパックを開けて、口を逆さまにして中身をドサドサ落とす。

絵や文字の書かれた紙、不味そうなパンなどが出てきたが、プラムは当然のように無視した。

彼女の目を引いたのは、人間の皮を剥いだような等身大の人形と綺麗な装飾が施された杖だった。

プラムは一目で人形と杖を気に入った。
楽しそうに杖を右手に、人形の手を左手に持つと、そのまま宙に浮き、
凄まじい速度で平原を飛んでいく。

彼女の頭を占めるのは、「ゲーム」をしたいという思いのみ。
早く人に会って、その人と「ゲーム」をしてもらうのだ。

そんな無邪気な思いを抱きながら空を疾走する彼女の目の前に森が見えてきた。
よく見ると、その森の前に一人の少女がいる。

プラムは満面の笑みを浮かべる。

「見つケタ!」

そして、プラムはその少女に物凄い勢いで突っ込んでいった。


[36]投稿者:病弱少年と食人鬼、魔法少女と妖精少女(3) 289◆J9f1Lk6o 投稿日:2008/12/24(Wed) 14:51 No.96  

扉を開けて進入してきたのは、ガラの悪そうな男だった。
ルーファスは男を見て警戒するが、男が武器の類を持っていないことに気づき、
少し安心する。

(どこかのゴロツキかな・・・いや、人を見た目で判断しちゃ駄目だ。
とにかく話しかけてみよう。)

そう思って、ルーファスは男に声をかける。

「あの、貴方は・・・。」

だが、男はルーファスが言葉を発するのを無視して、一足飛びに間合いを詰めて来た。

「なっ!?」

驚いて後ろに下がろうとするが、男はそれを許さずにルーファスに拳を振るった。
慌てて剣を掲げて防御する。

だが、男はそれを見ると拳をわざと空振らせて身体を回転させ、
遠心力を加えた蹴りを剣の鍔に叩きつけてきた。
予想していたよりもはるかに重い衝撃を受けて、ルーファスの剣は弾き飛ばされてしまう。
剣はカランカランと音を立てて、手の届かないところまで床を滑っていってしまった。

「くっ・・・がふっ!?」

ルーファスは剣を拾いに行こうとしたが、男が放った蹴りに吹っ飛ばされる。
背中から倒れたおかげでデイパックがクッションとなったのは不幸中の幸いだったが、
腹を蹴られた痛みと苦しさで身体が上手く動かなかった。
男が近づいてくるのを見てルーファスは焦る。
このままでは起き上がる前にこの男にトドメを刺されてしまう。

(くそっ・・・ここまでなのか・・・!?アーシャさん、姉さん・・・!)

だが、不意に男の動きが止まる。その視線はルーファスから外れている。
怪訝に思ったルーファスは男の視線を辿ってみる。

男の視線の先にあるのは、先ほど蹴られたときにルーファスのデイパックから
飛び出したらしい皮製の袋に包まれた肉だった。

それをルーファスが確認するのと同時に男がルーファスに問いかけてきた。

「おい、ガキ。その肉は何だ?なぜお前がそれを持っている?」
「・・・これは僕の支給品だ。それがどうかしたのか?」

ルーファスは男を睨み付けながら答える。

ルーファスは普段は礼儀正しい少年だが、いきなり襲い掛かってきた男に対して
礼を尽くしてやるつもりはない。

「・・・支給品・・・なるほどな・・・。」

男は納得したように呟く。
そして、

「悪かったな、いきなり襲い掛かって。」
「・・・は?」

いきなり謝罪の言葉を向けた男に対して、ルーファスは思わず疑問の声を上げてしまった。
それに構わず、男は続ける。

「いや、実はな。ここは俺の所属している組織の支部で、関係者以外は立ち入ることを
禁止されてんだよ。」
「・・・それで、勝手に進入していた僕を攻撃したって言いたいのか?
そんなことが信じられるわけないだろ。」

ルーファスは男に対する敵意を収めない。
いきなり襲い掛かられたのだから無理もないだろう。

「あの男が殺し合いをしろって言ってたのを聞いてなかったのか?
それとも、あの場にいなかったとでも?」

ルーファスは男に疑問を投げかける。
あの男の話を聞いていれば、自分が例えそのような秘匿性の高い場所にいたとしても
いきなり襲い掛かってくることはないのではないか?
ルーファスはそう問いかけているのだ。

それに対して、男は平然と答える。

「あの男の言うことは聞いてたし、あの場にもいたさ。
だが、その後に気がついたら見覚えのある場所に立ってたんだ。
さっきの殺し合いやら何やらは夢だったと思っても仕方がないだろ?」
「・・・それは・・・。」

確かにそうかもしれない。
むしろ、あんな非常識な出来事は夢だと思うほうが正常だろう。

「・・・分かりましたよ。貴方は僕を殺すつもりで襲い掛かったわけじゃなく、
状況を理解していなかったせいで誤って襲ってしまった。そういうことですね?」
「ああ、そういうわけだ。悪かったな。」
「いえ、確かにこんな状況ですし・・・。」

ルーファスは男にそう言ったが、そのときにふと気づいた。

(・・・ちょっと待てよ。この人、デイパックを持ってるよな。
これを見ておきながら、それでも夢だと思ったのか?)

そう思った途端にルーファスは再びこの男が疑わしくなった。
やはり、この男は殺し合いに乗っているのではないか?

しかし、だとしたらこの男が何の目的で自分を騙しているのかが分からない。

先ほどの戦闘を見る限り、男は戦い慣れているようだった。
少なくとも自分では到底相手にならないことは確かだろう。
騙してまで不意打ちをかける意味などない。
自分の持っている情報が目的というのもあり得ない。
それなら最初から襲い掛かっては来ないはずだ。

つまり、この男には自分を騙す必要など無いはずなのだ。

(・・・僕の考えすぎかな・・・?)

ルーファスは男が殺し合いに乗っているという考えに自信が無くなってきた。
男の行動に不審な点があるのは確かだが、こんな状況だ。
この男も混乱しているだけなのかもしれない。

ルーファスが思考の渦に嵌っていると、件の男が声をかけてきた。

「ところで、一つ頼みがあるんだが・・・。」
「?・・・何ですか?」

ルーファスが聞き返すと、男は頼みの内容を口にする。

「その肉と俺の持っているパンを交換してくれないか?」
「・・・はあ・・・構いませんけど・・・。」

ふと、男がこの肉を知っているような口振りだったのを思い出す。

(ひょっとして、元々この人のものだったのかな?)

ともあれ、この肉に嫌なものを感じていたルーファスは特に惜しむ気持ちもなく
男のパンの半分と肉を交換することにした。








まゆこは必死で森の中を走っていた。
後ろを振り向くと、自分に襲い掛かってきたあの少女が木々の間を縦横無尽に
飛び回りながら風の刃を放ってくる。

まゆこは慌てて身を屈めるのと同時に、

ブゥンッ!!

鋭く空を裂く音が頭上から聞こえる。
そして、前方でスパンという小気味良い音がした。
視線をそちらに向けると、まゆこの胴ほどもある太い枝が真っ二つにされていた。

それを見て青ざめるまゆこ。
森の中に逃げ込んだのは、平原よりは障害物の多い森のほうが逃げ切れると
踏んだからだったが、あの少女の小回りの良さと風の刃の威力を見ると、
そんな思惑は全く意味が無かったように思える。
むしろ、木々を避けて走る必要がある分、自分に不利な要素を増やしてしまった気がしてきた。

再び後ろを振り向くと、笑顔を浮かべた少女が楽しそうに笑っている。

「すごーイ!ネエ、今ノギリギリで避けルの、もう一回ヤッテよ!」

少女の嬉しそうな様子に、まゆこはほとんど悲鳴のような声を上げる。

「何で!?何で君はあの男の人の言う通りにするの!?」

まゆこの必死の叫びに少女はキョトンとした表情を浮かべた。

「?・・・だッテ、あのオニイちゃんは「ゲーム」をスルって言ったンダよ?
「ゲーム」って楽しコトなンデショ?アナタは「ゲーム」嫌いナノ?」

心底不思議そうな顔をする少女を見て、まゆこはぞっとした。

この少女には悪意など欠片も無いのだ。
ただ楽しいからという理由で、まゆこを追いかけ、死ぬかもしれない攻撃を放ち、
まゆこの逃げる様を見て楽しそうに笑うのだ。

この少女はどこまでも無邪気だった。
それゆえに、まゆこはこの少女が先ほどよりも恐ろしく見えた。

だが、同時にこの少女は説得すれば攻撃を止めてくれるのではないかと思えた。

この少女は無知と無邪気さゆえに殺し合いに乗ってしまった。
だが、それはいけないことだと、楽しくないことだと理解させてあげれば、
こんな凶行に及ぶことも無くなるかもしれない。

そんな希望を抱いて、まゆこは少女に言葉を向ける。

「ねえ、聞いて!あの男の人は悪い人なの!あの人はたしかにゲームをするって
言ってたけど、こんなのはゲームじゃない!殺し合いをゲームなんて言って、
それで人を襲うのはすごく悪いことなんだよ!?絶対にやっちゃいけないことなんだよ!?」

まゆこは必死の思いで少女を説得する。

だが、少女はムっと不機嫌そうな表情を浮かべ、

「あンタの言ってるコト全然ワカンなイ!あたしは今スゴク楽しかったモン!
なのに、そんなコト言うヒトなんて嫌いダー!」

そう言って、カマイタチを放つ少女。
慌ててまゆこは避けようとするが、間に合わない。

風の刃がまゆこの右腕を切り裂いた。

「痛っ!」

激痛が走り、まゆこはたまらず切り裂かれた箇所を押さえる。
あまりの痛みに涙が滲むが、説得が失敗した今、立ち止まっていては
今のようにカマイタチで切り裂かれてしまう。
そう思い、まゆこは踵を返して走り出した。

だが、少女は不思議そうに首を傾げていて追いかけてこない。

「アレェ?なんデ、バラバラにならナイの?」

そんな声を背に、まゆこは死に物狂いで走る。

まゆこが冷静な状態なら、自分の胴ほどもある太い枝を切り裂くようなカマイタチを
腕に受けておきながら、自分の腕が切断されることも無く切り裂かれるだけに
留まっていることに疑問を抱いたかもしれない。

だが、今のまゆこには少女の言葉を気にしている余裕など無い。
今のまゆこは右腕の激痛と少女への恐怖で冷静な思考など望めない状態なのだから。


やがて少女が見えなくなるところまで来ると、目の前に西洋風の建物を見つけた。
後ろから声が聞こえてくる。あの少女も考えるのを止めて追いかけて来たらしい。

まゆこは迷わず目の前の建物に逃げ込んだ。


[37]投稿者:病弱少年と食人鬼、魔法少女と妖精少女(4) 289◆J9f1Lk6o 投稿日:2008/12/24(Wed) 14:52 No.97  

(・・・さて、これでしばらくは食料の心配は無くなったわけだが・・・。)

オーガは思う。まさか、自分の非常用の人肉が支給されているとは思っても見なかった。

(まあ、何にせよこのガキを殺す必要は無くなったわけだ・・・今のところはな。)

ふと少年を見ると、彼は先ほど交換したパンをデイパックにしまっているところだった。
この少年も、まさか自分にたまたま支給されていた肉のおかげで命を拾ったとは夢にも思うまい。

(運が良かったな、お互いに。)

オーガとて、できるなら人は殺したくない。
曲がりなりにも、オーガはこの殺し合いを主催したあの男に反逆するつもりなのだ。
もし人を殺すところを見られでもしたら、仲間を作るうえで支障が出てしまう。
それに、ゲームに乗っていないものはたとえ子供といえど貴重だ。
生かしておけば何かの役に立つかもしれないし、連れて歩けば非常食にもなる。
殺さないで済むならそれに越したことは無い。

少年がパンをデイパックに詰め終わったのを見て、声をかける。

「それで、お前はどうする気だ?見たところゲームには乗ってないようだが、
このゲームをぶち壊す手立てはあるのか?」

オーガの言葉に、少年は淀み無く答える。

「僕の姉や知り合いがこのゲームに参加しています。
三人ともすごく強いし、こんな殺し合いに乗るような人たちじゃありません。
僕はとりあえず彼女たちと合流しようと思っています。」
「なるほど、腕が立って殺し合いに乗るような輩でもない、か・・・。」

悪くない。オーガはそう思った。
この少年はなかなか良い人脈を持っていたようだ。
殺さなくて本当に良かったと思う。

だが、それだけでは足りない。オーガはさらに問いかける。

「それで、首輪のほうはどうする?いくら腕の立つ人間を集めたところで
コイツを何とかしない限り、俺たちに勝ちの目は出てこないぞ。」

そんなオーガの言葉に、少年は少し考える素振りを見せた後、やや自信なさげに答える。

「もしかしたらですけど・・・クリスさんならこの首輪を外せるかも・・・。」

少年の話によると、クリスという女性は様々な魔法に精通している魔導師で、この首輪が
魔法に関係したものなら外せるかもしれないというのだ。

(・・・予想外に役に立つじゃねーか、コイツ。)

オーガは腕の立つ人間と首輪を外せる知識を持っているかもしれない人間の両方の人脈を
一度に手に入れることができたわけだ。
もしかしたら、この少年の知り合いと合流することができればそれで全て解決してしまう
かもしれない。

(順調すぎて怖いくらいだな・・・。)

オーガがそんな感想を抱いていると、今度は少年が問いかけてきた。

「そういえば、貴方のほうには知り合いはいなかったんですか?」
「・・・そう言えば、まだ確かめてなかったな。」

オーガはこのゲームに知り合いがいるという可能性について考えてなかったので、
名簿については確認していなかった。
自分のデイパックから名簿を取り出しつつ、オーガは考える。

正直なところ、自分の知り合いはいないほうが嬉しい。
もちろん知り合いがこんな殺し合いのゲームにいてほしくないという思いもあるが、
オーガの最大の懸念はそれよりも別のことにあった。

その懸念とは、オーガの知り合いはほとんどがリョナラーだということである。
人を痛めつけて楽しむようなヤツらが、こんな殺し合いの場に放り込まれたらどう動くか?
当然、嬉々として出会った相手を嬲り殺すことだろう。

笑いながらいたいけな少女をリンチにかける知り合いたちの姿を思い出し、オーガはゲンナリする。
対主催として動こうとしているオーガにとって、そんな知り合いたちはどう考えても邪魔でしかない。

(いるなよ・・・絶対にいるなよ・・・。)

だが、オーガの祈りも虚しく名簿には彼の知り合いが三人も書かれていた。

リョナたろう、モヒカン、リゼ。

ガックリと肩を落とすオーガ。

(・・・いや待て。落ち着け、俺。このメンツなら、まだマシなほうだ。)

オーガは、この状況であの三人がどう動くか考える。

まず、リョナたろう。
確かにヤツはリョナラーだが、この状況で見境無しに女に襲い掛かるほど馬鹿ではない。
ヤツも自分同様、猫を被って本性を隠しつつ、仲間や情報を集めるはずだ。
コイツは合流しても問題ないだろう。

次に、モヒカン。
コイツにだけは間違っても出会うわけにはいかない。
本能の赴くままに行動して、悪評を買いまくるに決まってる。
合流したとしても、こっちに女がいたら問答無用で襲い掛かる可能性もある。
こんなのと知り合いだと知れたら、自分の信用は地に落ちる。

最後に、リゼ。
このガキも扱いが難しい。なんせ、コイツは忌み子なのだ。
忌み子が仲間を作れるわけがないし、情報を得ることも難しいだろう。
合流はできればしたくない。忌み子の知り合いなんて信用に傷をつけるだけだ。
適当なところに隠れていてくれれば、それが一番だと思う。

オーガがそこまで考えたところで、少年が再度問いかけてきた。

「あの、落ち込んでるみたいですけど・・・どっちなんですか?」

いたことに落ち込んでるのか、いなかったことに落ち込んでるのか。
そんな少年に対して、オーガは答える。

「ああ、いや・・・微妙な知り合いしかいなかっただけだ。」

といっても、自分にはそもそも微妙な知り合いしかいないのだが。

「そうですか。じゃあ、そろそろ詳しい情報を交換しませんか?
まだ名前も名乗り合って・・・。」
「待て。」

少年の言葉を遮り、オーガは扉のほうに鋭い視線を向ける。
少年はそんなオーガに怪訝な表情を向けるが、扉の向こうから誰かが走ってくる音を
耳にして、顔を強張らせる。

誰かいる。しかも、こちらに来ようとしている。

少年は慌てて冷気の剣を構えようとして、ふと思いつき、

「あの、剣は貴方が持つほうが・・・。」
「いらん。俺は素手のほうが戦いやすい。」

にべも無く、切って捨てるオーガ。
仕方なく剣を構える少年。

そして、扉を開けて入ってきたのは・・・。


「!・・・た・・・助けて・・・!」

右腕から血を流して荒い息を吐く涙目の少女だった。








【A-5:X2Y4/リョナラー連合東支部/1日目:朝】

【ルーファス@SILENT DESIREシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:アイスソード@創作少女
[道具]:デイパック、支給品一式(食料9食分)
[基本]:主催者の打倒
[思考・状況]
1.目の前の少女(まゆこ)の話を聞く
2.オーガと一緒に行動(完全には信用していない)
3.アーシャ、エリーシア、クリスを探す

※オーガの名前を聞いていません。


【オーガ@リョナラークエスト】
[状態]:健康、若干空腹
[装備]:カッパの皿@ボーパルラビット
[道具]:デイパック、支給品一式(食料3食分)
赤い薬×3@デモノフォビア、人肉(2食分)@リョナラークエスト
[基本]:主催者の打倒
[思考・状況]
1.目の前の少女(まゆこ)の話を聞く
2.ルーファスと一緒に行動(状況によっては殺して喰らう)
3.ルーファスの知り合いを探す
4.モヒカン、リゼとは合流したくない(出会ったら諦めて一緒に行動)

※ルーファスの名前を聞いていません。
※クリスの大まかな情報を得ました。


【まゆこ@魔法少女☆まゆこちゃん】
[状態]:右腕に裂傷、全力疾走による疲労
[装備]:宝冠「フォクテイ」@創作少女
[道具]:デイパック、支給品一式
デコイシールド@創作少女、写真入りロケット@まじはーど
[基本]:殺し合いを止める
[思考・状況]
1.目の前の二人に助けを求める
2.信頼できそうな人を探す
3.プラムから逃げる

※プラムを危険人物だと認識しました。
※宝冠「フォクテイ」の効果でプラムのカマイタチのダメージは
 軽減されています。




【B-5:X2Y1/森/1日目:朝】

【トゥイーティ・プラム@ボーパルラビット】
[状態]:健康
[装備]:人体模型@La fine di abisso、マジックロッド@マジックロッド
[道具]:なし(デイパックは置いてきた)
[基本]:他の人と「ゲーム」をして遊ぶ
[思考・状況]
1.まゆこを追いかける
2.バラバラにならなかったまゆこに興味津々

※プラムの置いてきたデイパックと支給品はB-4:X4Y2の辺りに散乱しています。


[38]投稿者:「涼子さん、御守をするの巻」 14スレ目の74◆DGrecv3w 投稿日:2008/12/25(Thu) 23:29 No.99  
「ブ〜キブキブキ武器がない♪ってね。」

何処かで聞いたことがあるような旋律で、自虐的な歌を歌う女性。
青いアンダーテールの彼女、天崎涼子{あまさき りょうこ}はそうでもしていないと頭が痛くて死にそうだった。

「涼子さーん!まってよー!」

酷く間延びした声が涼子の後ろから聞こえる。
その声の主こそ、彼女の頭痛の原因だった。

「・・・だぁー!!もう!どーしてこの涼子さんがガキの御守なんて・・」
「ガキじゃないよ、神代伊織だよ。神様の『神』に、鈴木史朗の『代』に・・」
「・・伊太利の『伊』に、織姫の『織』でしょ。」
「そうそう♪伊織ちゃんって呼んでくださいね♪涼子さん。」

何故か巫女服を着ている少女、神代伊織は笑顔で涼子を見る。
(ううー・・くらくらしてきた・・・。)

あの時ふと、この建物の中を探検しようと考えたのが運の尽きだった。
(古い建物=お宝放置されてるかも=奈々居ない=お宝独り占め=うはおk・・って、今思えば。)

「・・・流石に、短絡的すぎたわねー。」
「えっ?何か言いましたか?」
「いーえ!なんにも!さっ、さっさと誰か見つけるよ!」

涼子が伊織と行動を供にしている理由。
それは、この建物の中で一人彷徨っていた彼女と出くわした時にまで遡る。

〜〜〜〜
【C−2:X2Y4/古い木造校舎内部/1日目:朝】

「・・O.K.当てが外れた。というわけで、さっさとでよーっと。」
お宝目当てで建物の中に入って見たはいいが、よく分からないガラクタだらけでそれらしき影は見えなかった。
せめて武器になりそうな物でもあればよかったのだが、それすらも今の所、絶望的だ。
私は仕方ないので探検を打ち切ることにした。

「・・誰っ!!」
「えっ!?」

ドアの向こうに、人の気配を感じた私は叫ぶ。
ドアの向こう側に居る者は、一瞬動きを止めた。
(さーて、鬼が出るか蛇が出るか・・・・まぁ、ヘビは出て欲しくないけどね。)
相手が逃げるのであれば、それはよし。
向かってくるのであれば、蹴り倒すか逃げる。
私は一応、身構えた。
ほんの少しの間の後、ゆっくりとドアが開いた。
(今のお気持ちはぁ〜・・・さぁ!どっち!!)

――結論から言えば、どっちでもなかった。

「わぁー!!ひとだー!!よかったぁー!!」
「・・はぁっ?」

開いたドアの先から現れたのは、巫女服に身を包み、狐っぽいお面を頭に乗せた少女だった。
少女は笑顔でこちらに走り寄ってくる。
そのあまりの予想外な出来事に、私は脱力せずにはいられなかった。

「・・・誰よ?あーた。」
「えっ?私?」
「んだ。あーただよ。あーた。」
「神代伊織だよ。神様の『神』に、鈴木史朗の『代』に、伊太利の『伊』に、織姫の『織』って書くんだよ。」
「・・・ふーん。」

神代伊織と名乗った巫女服の少女がどんなヤツか、私には一瞬にして分かった。
(・・・バカっ子だわ。)
正直、ヘビが出てきてくれた方がまだマシだった。

「じゃ。私はこれで。」
「えっ!?」

私は軽く手を上げて挨拶を済ませると、そそくさと彼女の脇を通り過ぎようとした。

「まっ!待って!お願い!!」

そう叫んだ彼女は、こともあろうに私の自慢のアンダーテイルを引っ張ってきた。
私は危うく首を傷めそうになった。

「あだっ!!おいコラ!それは引っ張る所じゃない!!」
「あっ!ご、ごめんなさい!!でも、待って!お願いだから!」
「いーやーだ!涼子さんは忙しいのだ!」

彼女、見かけの割りに意外と強情だ。
引っ張るのは止めたとはいえ、しっかりとアンダーテールを握ってる辺りから、窺い知ることができる。
(ano,ミス。あの、涼子さんが、何か悪いこと・・・・あっ、しましたかそうでしたか。)
思い当たる節はいっぱいあるようなないような・・。
兎に角、よりによってとても厄介な相手と出会ってしまったものだ。

「此処まで一人だったんでしょ?」
「・・・うん。」
「じゃ、また一人でいいじゃない。私は、一人でいいし。」
「一人はヤダよ!一人に・・しないで。」

彼女は今にも泣きそうな顔で私を見つめる。
どうにも、このままでは離してくれそうにない。

「じゃあ、他の人探せばいいじゃなーい!兎に角、私はおたかr・・・武器探しで忙しいのよ!」
「あっ・・武器なら、あるよ。」
「えっ?」

まさか、食いついてくるとは思わなかった。

「ほらっ・・私、こういうの、持ってても使えないし・・・。」

彼女はそういいながら、背負っていたバッグを目の前に据えると、中に手を突っ込んだ。
そして、出てきたものは確かに武器だった。
その内1つは、それなりの長さの剣だった。
片手で振り回すのは勿論、両手でしっかり握っても良さそうだ。
しかし、私はあまり長い得物は好みではない。
(・・うほっ、いい短剣。)
もう1つは、とても私好みな形の短剣だった。

「じゃ。その短剣を・・」
「あげません。」
「・・いいから、ソイツをコッチにYO☆KO☆SE!」
「イヤです!!一緒に来てくれると約束してくれるまであげられません!」

この女、物でこの涼子さんを釣るつもりだ。
そんなエサには釣られ・・・

「・・・あーもう。じゃあ、他に誰か見つけるまでなら一緒に行ってやんよ。それでいいでしょ?」
「ホント!?・・え、えっと、じゃあ。誰か見つかったらこれあげますね、涼子さん♪」
「なんと!オヌシ、今くれないと申すか。」
「はい!だって涼子さん、今あげちゃったらそのまま私を一人にしちゃいそうですし。」
「・・うぐぅ。」

〜〜〜〜

なんだろう、この女。バカだと思ってたんだが、意外と腹黒い。
いつの間にか、私はこの巫女服少女の御守をすることになってしまっていた。
今にして思えばあの時、無理矢理奪って逃げてもよかったのだ。
それなのに、『ちょっとだけなら付き合ってもいいや。』なんて気まぐれを起こしてしまったのがいけなかった。
(涼子さんイッショーの不覚!・・・って、何度目だっけな?『イッショーの不覚』って言うの。)

「涼子さーん!早く探しに行きましょうよー!」

いつの間にか涼子を追い越した伊織は大声で彼女を急かす。

「わーたから、あんまり騒がないの。」
「・・・あっ!私、男の人怖いから、女の人を探して欲しいな。」
「なんですとー!?・・・涼子さん、泣きたい。」
「何かいいました?涼子さん。」
「いーえ、なんでもありませーん!」
(誰でもいいから、早くコレの御守代わってー!)

涼子の受難はもう暫く続きそうだった。

【C−2:X2Y4/古い木造校舎の校門付近/1日目:午前】

【天崎涼子{あまさき りょうこ}@BlankBlood(仮)】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式
防犯用カラーボール(赤)x2@現実世界
ライトノベル@一日巫女
怪しい本@怪盗少女
[基本]:一人で行動したい。我が身に降りかかる火の粉は払う。結構気まぐれ。
[思考・状況]
1.武器を探す、ついでにお宝も探す
2.仕方ないので神代伊織をテキトーなヤツと引き合わせる
3.とりあえず、奈々を探してみる

※神代伊織をテキトーな人物に引き合わせたら鉄の短剣を受け取る約束をしています。

【神代伊織{かみしろ いおり}@こどく】
[状態]:健康
[装備]:なぞちゃんのお面@アストラガロマンシー
[道具]:デイパック、支給品一式
アーシャの剣@SILENTDESIREシリーズ
鉄の短剣@リョナラークエスト
[基本]:とりあえず同性と一緒に行動したい。できれば大人数で行動したい。
[思考・状況]
1.天崎涼子についていく
2.他に一緒に来てくれそうな人を探す

※天崎涼子が誰か一緒について来てくれる女性に引き合わせてくれたら鉄の短剣をあげる約束をしています。

@後書き
とりあえず、問題なさそうでしたので投下させていただきますね。(^^;
涼子さんの口調とか性格とかかなり脳内補完しちゃってます。
ファンの皆様大変申し訳ありません。orz
そして、やはり自分が明らかに書きすぎですね・・。
暇人ですみません。(´・ω・`;)
[39]投稿者:「鈴の音の奇跡」その1  289◇J9f1Lk6o 投稿日:2009/01/01(Thu) 16:01 No.104  

八蜘蛛が転移されたのは、街と塔が見える位置の街道だった。
まずは現在地を確かめるために近くに転がっていたデイパックから地図を取り出す。
街は二つあるようだったが、塔の近くにあるのは昏い街という名前のほうらしい。

(まずは街に行くべきね。)

首輪を外すために必要な物があるかもしれないし、そうでなくても何か役に立つ物くらいはあるはずだ。
わざわざ街が殺し合いのフィールドに設置されているのだから、それくらいは期待できるはずだ。

そこまで考えて、次に八蜘蛛は支給品を確認してみる。
しかし、基本支給品以外に出てきたのは手の平に収まるくらいの小さな鈴とチョコレートだけだった。
これにはさすがに苦い顔をする八蜘蛛。

(ちっ、運がないわね。まあいいわ、だったら他の参加者から奪うだけのことよ。)

八蜘蛛は幼い外見に似合わない酷薄な笑みを浮かべる。

最後に参加者名簿を確かめて、自分と萩、ロシナンテと門番の名前があることを確認した。
もっとも、門番については八蜘蛛の知っている門番かは分からなかったが。

一通りデイパックの中身を調べ終えると、八蜘蛛はデイパックを肩にかけて歩き出す。
デイパックはできるなら背負いたいところだが、リュックに擬態させた背中のキャノンがあるせいで
背負うことができないのだ。

(デイパックを持っているのにリュックを背負ってるのは少し不自然・・・擬態がいつも通りに通じるとは
思わないほうがいいかもしれないわね・・・。)

いきなり擬態を見破られることはないだろうが、この状況ではちょっとしたことでも警戒されてしまうかもしれない。
もし他の参加者に出会ったときは、最初のうちは無害な少女を装って相手の警戒を解くことに専念するとしよう。
もちろん、最終的には人間全員を養分として美味しく頂くつもりだ。

(利用できる参加者に出会ったら、無力を装って守ってもらう。役に立たなくなったら、不意を突いて養分にする。)

八蜘蛛はこれを基本方針として動くことに決める。

(人数の多いうちはせいぜい他の者を利用させてもらうわ。できるだけ頭が悪くて利用しやすそうな参加者に
会えればいいのだけれど・・・。)

ともあれ、まずは街に向かうとしよう。
そう考えて歩く八蜘蛛だったが、不意に殺気を感じる。
殺気の出所に目を向けると、長い金髪をなびかせた女がこちらを睨み付けていた。
女は長刀を携え、鎧に身を包んでいる。
その物腰から、金髪の女がかなりの実力者であることを八蜘蛛は見て取った。

(いきなり殺気を向けてくるということは・・・この女、殺し合いに乗っているの?)

だとしたら、出会った相手としては最悪だ。
この女はかなりの腕の持ち主のようだし、距離を取った戦法を得意とする自分と獲物が長刀の女とでは相性も悪い。
自分が負けるとは思わないが、無傷で勝てるほど甘い相手ではないだろう。

(とにかく、まずは交渉を試みてみましょうかね。)

八蜘蛛は、消耗を避けるために戦闘はできるだけ避けるつもりだった。
それに、参加者を利用するつもりの八蜘蛛としては、自分から相手に襲い掛かったという事実を作ることも出来る限り避けたい。
何らかの形でそれが他の参加者に知られても困るし、実力を隠しておきたいという思いもある。
もしこの女が殺し合いに乗っているとしても、相手から襲い掛かってきてもらったほうが八蜘蛛にとっては都合が良いのだ。

「あの・・・私は武器なんて持ってないし、殺し合いをする気もありません。どうか武器を収めていただけないでしょうか?」

僅かに怯えた表情を浮かばせて、金髪の女に訴える。
自分の振る舞いに虫唾が走るのを感じつつも、八蜘蛛は思う。

(これでこの女が襲い掛かってくるなら、適当に撒いて悪評を振りまけばいいわ。・・・まあ、悪評って言うか事実だけど。)

そう考え、金髪の女の対応を待つ八蜘蛛。
そして、金髪の女は襲い掛かることも武器を収めることもせずに八蜘蛛に対して話しかけてきた。

「一つ、聞いていいかしら。」
「・・・何ですか?」

聞き返す八蜘蛛。

「貴女・・・ここに来る前の部屋で、人間を殺すとか言ってなかったかしら?」
「!?」

思わず表情を強張らせてしまい、その失態に内心で舌打ちをする。
すぐに取り繕うように言葉を被せる。

「・・・何のことですか?」
「とぼけても無駄よ。今の貴女の反応で確信したわ。」

先ほどよりも鋭い視線で八蜘蛛を射抜いてくる金髪の女。

(・・・どうやら、誤魔化せそうにないわね。)

苦々しい思いを抱きながらも、それを認める八蜘蛛。

まさか、萩との会話を聞かれていたとは思わなかった。
他の参加者たちに聞かれないように、彼らの注意が最も自分たちから逸れるタイミング・・・キング・リョーナと名乗った男が
殺し合いの説明をしている最中に、萩に作戦を伝えたというのに。

(この女、あの状況の中で私たちの不穏な様子に気づいたとでもいうの?・・・いや、理由なんてどうでもいいわ。)

そう、この女は殺さねばならない。
自分の本性を知ってしまったのだから。

(話を聞いていなければ、今すぐには死ななくても済んだのにね!運の悪いヤツ!)

金髪の女を殺すと決めた後の八蜘蛛の行動は素早かった。
不意を突く形で、擬態していた背中のキャノンから糸を吐き出す八蜘蛛。

だが、女はすでにそこにはいなかった。

「なっ・・・!?」

あの女、どこに!?
そう思った直後、わずかに、だが恐ろしいほどに研ぎ澄まされた殺気を右側から感じた。
その瞬間、八蜘蛛は殺気と反対側に身体を投げ出していた。

直後に、先ほど立っていた場所に無数の剣閃が走り、完全には避け切れなかった八蜘蛛の身体を浅く切り裂いていく。

いつの間にか、金髪の女は八蜘蛛の右側へ移動していた。
その剣筋をほとんど捉えられなかった八蜘蛛は女のあまりの技量の高さに青ざめる。

八蜘蛛はここに至って、ようやく自分の目算の甘さを悟った。

(じ・・・冗談じゃないわ!何なのよ、この女は!?)

腕が立つ?かなりの実力者?
ふざけるな。この女はそんな言葉で足りるような器ではない。

この女は、達人だ。
戦いの道を究めた、勇者や英雄と呼ばれる類の人間なのだ。

(完全に見誤った・・・!この八蜘蛛様ともあろうものが・・・!)

やばい、やばすぎる。
この女と戦っては駄目だ。
今すぐ逃げなければ、殺されてしまう。

金髪の女が想像をはるかに上回る強さの持ち主だったことに、完全にパニックになってしまった八蜘蛛。
もはや、八蜘蛛の中でこの女と戦うという選択肢は存在していなかった。

しかし、このとき八蜘蛛が冷静さを失わなければ、金髪の女・・・エリーシアと互角に戦うこともできたはずなのだ。

エリーシアの剣技に圧倒された八蜘蛛だが、八蜘蛛にしても魔王軍三将軍の一人。
自分が得意とする中距離、遠距離の間合いを保つようにして戦うことができれば、エリーシアに引けを取らない程度の
戦いはできるのだ。

だが、八蜘蛛は戦いのペースを完全にエリーシアに奪われてしまった。
見くびっていた相手に思いも寄らない先制パンチを喰らわされて、心理戦で敗北してしまったのだ。
相手に有利な間合いの中でこんな状態になってしまっては、もうどうにもならない。


背を向けて逃げようとした八蜘蛛を


エリーシアは容赦なく刃で貫いた。




倒れた八蜘蛛を見下ろすエリーシア。

(まだ息はあるみたいだけど・・・この様子ではすぐに死ぬでしょうね。)

そう考えたエリーシアだったが、すぐに頭を振って考え直す。

(いえ、この娘は魔物・・・なら、万が一ということもあるかもしれない。)

確実に殺しておくべきだと判断したエリーシアは、相手の心臓に刃を突き立てようと長刀を頭上に掲げ、


パァーーーーンッ!!


突如響いた発砲音とともに、わき腹から血を流して膝をついた。



[40]投稿者:「鈴の音の奇跡」その2  289◇J9f1Lk6o 投稿日:2009/01/01(Thu) 16:02 No.105  

(あああ、撃っちゃった・・・!撃っちゃったよぉ・・・!)

セーラー服を着たボブカットの少女・・・鈴音は、銃で人を撃ってしまったことにショックを受けていた。

だが、仕方が無かったのだと鈴音は思う。こうしなければ、あの少女は殺されてしまっただろうから。




鈴音が鬱蒼とした森からようやく抜け出ることができたと喜んだのも、つかの間。
目に飛び込んできたのは、ピンクの帽子を被った少女が刀を持った金髪の女性に今にも殺されそうな光景だった。

慌てて、自分に支給されていた銃を金髪の女性に向けて、

「その女の子から離れてください!」

そう言おうとした。
だが、緊張と恐怖からか実際に出た声は、

「そ・・・・その・・・、離れ・・・・は・・・は・・・!」

このような意味を成さないかすれた声だった。
もちろん、女性には聞こえないだろう。

必死に声を出そうとしているうちに、女性が刀を頭上に掲げてしまう。

「!!」

殺される!
あの女の子が殺されてしまう!

そんな焦りからか、引き金に掛かった指に力が入ってしまったらしい。

鈴音の意思を無視して、鈴音の構えた銃は火を噴いた。

パァーーーーンッ!!

銃声とともに、女性はわき腹から血を流して膝をついた。




そして、今に至る。

鈴音は正直なところ、泣きたかった。
なんでこんなところに居合わせてしまったんだろう。
こんなところに居合わせなければ、自分は銃なんかで人を撃たなくても済んだのに。

しかし、居合わせた以上はこのまま逃げるわけにもいかない。
あんな幼い少女を殺そうとしたのだから、あの金髪の女性は殺し合いに乗っているのだろう。
だとしたら、自分があの少女を守らないといけない。
銃弾は女性のわき腹を抉ったようだが、位置からして致命傷ではなさそうだ。
だったら、金髪の女性はまたあの少女を殺そうとするかもしれない。

しかし、足が動かない。
人を撃った動揺、金髪の女性への恐怖、倒れたまま動かない少女への不安などが混ざり合って
鈴音の足をその場に縫い付けていた。

(早く、早くしないとあの子が殺される!)

そう思い、焦る鈴音。

しかし、女性はこちらに一瞬視線を向けると、すぐに走り去ってしまった。

予想外の女性の行動に戸惑う鈴音。
走り去る女性の後ろ姿を眺めながら、いくらか冷静になった鈴音は思う。

(ああ・・・よく考えたら、銃持った相手から逃げるのって当たり前だよね・・・。)

金髪の女性の行動が当然のものだということを理解して、納得する鈴音。

(・・・そうだ、あの女の子を助けなきゃ!)

慌てて、倒れている少女のもとへと向かう鈴音。

だが、少女はすでに虫の息だった。
愛らしい顔はぞっとするほど青ざめており、虚ろな目で浅い呼吸を繰り返している。
手足は痙攣しており、触ってみるとこれが人の肌かと疑うほどに冷たかった。
何よりも、刀で貫かれた胸からは見たこともないほど大量の血があふれ出ている。

医学的な知識に関しては素人の鈴音から見ても、この少女がもう助からないことは明らかだった。

「あ・・・あ・・・!」

少女の無残な有様は、圧倒的な存在感で鈴音に死というものを叩きつけてきた。

それでも、鈴音は諦めなかった。
急いで少女のデイパックから傷の手当に使えそうな物を探し始める。

自分の支給品には傷の手当に役立つ物は無かった。
ならば、頼みの綱はこの少女の支給品しかない。

(お願い、何か傷の手当をできるものが出てきて・・・!)

だが、出てきたのは小さな鈴とチョコレートだった。
愕然とする鈴音。

もう駄目だ。この子は死ぬ。
まだこんな子供なのに、こんな酷い死に方で死んでしまうんだ。

目の前の少女が死んでしまうという事実に絶望した鈴音は、自然に手から力が抜けて持っていた鈴を落としてしまう。
そして、偶然にも鈴音の手から滑り落ちた鈴は、死に掛けている少女の傍へと転がっていった。


そのとき、鈴が光を放った。


「え・・・?」

呆けたように声を漏らし、顔を上げる鈴音。
すると、目の前で信じられない光景が起こっていた。

なんと、少女の傷が鈴の光を浴びることでみるみる塞がっていくのだ。
それどころか、少女の青白い顔が血色を取り戻していき、呼吸も落ち着いたものに戻っていく。

そして、ものの数秒で死に瀕していた少女は傷一つ無い健康体へと回復していた。
それと同時に鈴は砕け散り、塵となって空気中に消えていった。

目の前で起こった奇跡のような光景に、鈴音の思考は追いつかなかった。
そもそも、殺し合いをしているという現状すら満足に理解できていないのだ。
オカルトが好きなだけの極めて常識的な思考の持ち主である鈴音は、今までに起こった異常な状況を
理解するだけのキャパシティを持ち合わせていなかった。


それゆえに・・・


鈴音は今の現象について、考えることを放棄した。


「良かった・・・この子、もう大丈夫そう・・・あ、でもこんなところに寝かせてたら可哀想だよね。
あっちに街が見えるし、あそこまで運んで、ベッドに寝かせてあげよう。」

少女が助かるという結果だけを重視し、そのことを素直に喜ぶことにしたのだ。

鈴音は気絶した少女を背負って、昏い街へと歩を進めるのだった。




エリーシアは先ほどの場所から遠ざかりつつも考えていた。

(途中から出てきて、私を攻撃したあの娘は・・・今思うと、殺し合いには乗ってなかったのかもね。)

あのときは新手が来たのかと思い、見たことのない武器で攻撃をしてきた少女を警戒して、撤退という手を選んだ。

だが、よく考えてみるとエリーシアが戦っていたのは、外見だけ見れば子供といってもいいくらいの幼い少女なのだ。
まさか、そんな少女が悪魔のような考えを持った魔物だとは思うまい。

つまり、途中から出てきたあの少女はエリーシアを殺人鬼と誤認して、あの魔物を守ろうとしたのだ。

(失敗したわね・・・今から戻って誤解を解くにしても、難しいでしょうし・・・。)

エリーシアは考える。

(恐らく、あの魔物はすでに死んでいるでしょうね。それも、あの娘の目の前で・・・。)

そして、それを成したのはエリーシアだ。

あの少女がエリーシアに抱く印象は最悪だろう。
誤解を解くどころか、激昂して攻撃してきてもおかしくはない。

エリーシアは溜息を吐いた。

(まったく・・・面倒なことになっちゃったわね。)

ともあれ、それをいつまでも気にしている暇はない。
エリーシアは、この殺し合いに自分の弟・・・ルーファスも呼び出されていることを名簿で確認している。

ルーファスは戦う術を持ったエリーシアと違って、13歳の普通の少年なのだ。
このような殺し合いに放り込まれて、いつまでも生き延びていられるとは思えなかった。

(早く合流して、私が守ってあげないと・・・。)

先ほどの魔物にしても、もしルーファスが出会っていたら簡単に殺されていただろう。
それを思うと、あの魔物は殺しておいて良かったと思う。

(ルーファスのためにも、危険な参加者はできるだけ減らしておくべき・・・。
たとえ、そのせいで他の参加者に誤解を与えるとしても、それは些細なことだわ。)

エリーシアはそう考えていた。
弟に対する心配から、エリーシアは彼女自身が思っている以上に焦っていた。

一人の少女に殺人鬼と誤認されたことを些細な問題として済ましてしまう。

そんなエリーシアの考え方は、近い将来に彼女の首を絞めることになるかもしれない。
さらに、エリーシアは彼女が殺したと思っている魔物・・・八蜘蛛が生きていることを知らない。

状況は何一つとして、エリーシアの都合の良い方向には向かっていないのだ。






【D-3:X4Y3/街道/1日目:朝】

【八蜘蛛@創作少女】
[状態]:気絶
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式
チョコレート@SILENTDESIREシリーズ
[基本]:ステルスマーダー
[思考・状況]
1.エリーシアを殺す。
2.人間を養分にする。
3.萩、ロシナンテと合流する。
4.門番が自分の知っている門番か確かめる。

※八蜘蛛の傷を治した鈴は、ミラクルベル@リョナラークエストです。


【榊 鈴音@鈴の音】
[状態]:健康
[装備]:南部(残弾4)@まじはーど
[道具]:デイパック、支給品一式
不明支給品0〜2種(鈴音が傷の手当には使えないと判断する外見のもの。)
[基本]:何とか殺し合いから脱出したい。
[思考・状況]
1.この女の子(八蜘蛛)を街まで運んで休ませる。
2.殺し合いに乗ってない人を探して、一緒に行動する。

※エリーシアを危険人物と認識しました。




【D-4:X1Y4/街道/1日目:朝】

【エリーシア@SILENTDESIREシリーズ】
[状態]:わき腹に銃傷(行動に支障なし)
[装備]:日本刀@BlankBlood
エリーシアの鎧(自前装備)@SILENTDESIREシリーズ
[道具]:デイパック、支給品一式
不明支給品0〜2種
[基本]:ルーファスを探す。
[思考・状況]
1.危険そうな参加者は殺す。
2.傷の手当をする。
3.あの少女(鈴音)の誤解は解けるなら解きたい。

※八蜘蛛は死亡したと思っています。




[41]投稿者:289◇J9f1Lk6o 投稿日:2009/01/01(Thu) 16:15 No.106  
どうも、明けましておめでとうございます。
新年早々からロワ話を書き込んでいる289です。
ヒマ人ですみません。(´・ω・`)

関係ないけど、この話は途中でタイトルを修正しました。
鈴音とミラクルベルという二つの素材をまったく意図せず
組み合わせていた自分は、すごいアホですね。(^ω^;)
[42]投稿者:「森中、奈々、遭遇」 14スレ目の74◇DGrecv3w 投稿日:2009/01/01(Thu) 17:38 No.108  
・・よし、自分も投下します。(^^

#盲目な姉#

「此処は・・・。」

このざわめき、この匂い、この感覚。

「森の・・中なの・・?」

私の世界には、姿がない。
花も、草も、木も、私の世界ではその姿をなくす。
土も、空も、星でさえも、私の世界には姿を現してくれない。
まるで私だけが世界の外へと放り出されたように、私の世界には姿がない。
――ただ一人、彼女を除いて。

「なより・・・。」

私は彼女の名を呟く。
何時も私の手を引いてくれる彼女。
何時も私に色々な匂いや音を教えてくれる彼女。
何時も私の世界と外の世界を繋いでくれる彼女。
しかしその彼女は今、私の傍に居ない。

「怖い・・・。」

彼女の居ない私は、世界の外へ放り出されたままだった。
ただ独り、姿のない世界を彷徨うのはとても心細くて怖かった。

「・・・でも。」

しかし、その恐怖よりも私にとって怖いものが1つある。
あの男、キング・リョーナの狂った”ゲーム”に巻き込まれた。
それが夢ではないことは、いつの間にか背中に背負わされた物の重みから分かる。
彼女もまた、あの男の手によって何処かに連れて来られているに違いない。
(なよりもきっと、巻き込まれてる・・。それなら、私は。)

「なよりを・・助けないと。」

私は彼女の手を引いてやれない。
私は彼女に色々な匂いや音を教えられない。
私は彼女と外の世界を繋いでやれない。
だから私は彼女に謝る。何度も何度も謝る。
――それぐらいしか、できないから。

『お姉ちゃんは悪くないよ。私、お姉ちゃんが大好きだから。』

私が謝る度、姿のない私の世界で姿のある彼女は笑顔で答えてくれた。
その笑顔の、とても可愛くて明るくて愛しいこと。
私はその笑顔を守るためならば、この命なんて消えてしまってもいいと思っている。
(なよりだけでも・・・助けないと!)

私は手探りで杖の代わりになりそうな物を探す。
すると、都合よく手頃なサイズの木の枝が手に触れた。
多分、あの男が嗜虐心を満たすための計らいなのかもしれない。
(・・・今はそんなことどうでもいい。兎に角、なよりを助けないと!)
私は木の枝を杖の代わりにして立ち上がった。
彼女のため、恐怖を押し殺して姿のない世界を進むことにした。

その矢先、近くに人の気配を感じた。
恐ろしく冷たいロボットみたいな感じを受けるが、問答無用で襲い掛かってくる様子はない。
そして、何となくだが悪人という感じもしない。私は思い切って、尋ねてみることにした。

「あの・・・妹を知りませんか?」

#無口な妹#

「森の中・・。」
気付けば私は森の中にいた。私は正直、森が嫌いだ。
というより、草木が生い茂っている場所は基本的に嫌いだ。
(虫多いし・・。)
一々反応するのが面倒なだけで、私は虫が大嫌いだ。見たくもない。
(・・・本当はそこまで嫌いというわけでもなかったんだけど。)
しかし、私が無反応なのが面白かったのか、かまってほしかったのか。
何処かの精神年齢の低い彼女に散々虫を嗾けられ、それ以来大嫌いになった。
(ヘビでも捕まえておこうかな?・・・その辺に居ればだけど。)

私はそんなことを頭の片隅で考えながら、バッグの中身を確認しはじめた。
今の私には、あのバカな彼女に積年の恨みを果たす前にやらなくてはいけないことがあった。
(こんな虫の多い場所に放り込んだあの男、絶対許さない。)
なんとしてもあの男を見つけ出し、蹴りの一発でもくれてやらないと気が済みそうにない。
そのためにも、何か武器が欲しい所だ。
できれば銃があればうれしい。しかし、私の願いは通じなかった。

「・・・弾だけって。」

反応するのは面倒なのに、これには反応せずに居られなかった。
弾丸だけ入れるとは、あの男は意外と芸が細かい。よほど私に蹴られたいようだ。

「んっ、バッカ・・・だっけ?」

次に出てきた肖像画は、確かそんな名前の有名人だった気がする。
使い物にならないことに変わりはないので、正式名称を思い出すのはまた今度にしておく。
そして最後に、ジッポライターが出てきた。
試しに1度火をつけてみた所、ガスはまだ十分あるらしい。赤く綺麗な炎を上げていた。
私は一応、ポケットに入れておくことにした。
(武器はない・・か。とりあえず此処をでよう。・・虫嫌いだし。)

私は何となく出口と思った方角へと走り出す。
彼女に声をかけられたのはその道中だった。

『あの・・・妹を知りませんか?』

#姉の気持ち、妹の気持ち#

りよなに声をかけられ、奈々は一旦立ち止まる。

「・・・知らない。」

奈々はそっけなく一言返す。

「そう・・ですか。」

りよなは悲しそうな声で答える。
奈々はりよなのその様子に、ほんの少しだけ興味を持った。
『妹を知らないか』と言うことは、彼女は誰かの”姉”なのだろう。
考えてみたら、私の姉以外の”姉”と話すのはとても久しい。
しかも今目の前に居る”姉”は、私の知っている姉像とはかけ離れた”姉”だ。
奈々は少しだけ立ち入ってみることにした。

「探してるの?」
「はい。」
「・・・何で?」
「私の・・大切な妹だから・・。」

りよなにとって、それは当たり前の答えだった。
しかし、奈々にとっては予想もしていない答えだった。
(大切な・・妹・・・。)
私の知る限り、こんな状況でも妹を大切だと屈託無く答える”姉”は初めてだ。
それほどまでに彼女は妹を愛しているのだろう。どこかの誰かとは大違いだ。
(あんなヤツ・・・アンダーテール{しっぽ}を引っ張られてしまえばいい。)
私の姉は、多分私を探そうなんて考えていないだろう。益してや、大切だなんて答えるわけがない。
私は少しだけその妹が羨ましく思えた。

「・・・妹の名前は?」
「えっ・・・なより、です。」

りよなは彼女が妹の名前を尋ねてきたことが意外だった。
いざ話しかけてみたら予想通り、冷たいロボットみたいな感じの人だったからだ。
今までの経験上、この手の人間はあれ以上は立ち入ってこないと思っていた。
(もしかしたら、意外と暖かい人なの・・・かな?)
私はとりあえず質問に答えることにした。
あの男の言う支給品には確か、参加者全員の名前が書かれている名簿があったはずだ。
従って、名前だけは言わずともいずれ知られてしまうだろう。
それならばこの場で彼女に名前を伝えても、妹にとってマイナスにはならないはずだ。

「んっ。何処かで会ったら・・伝えとく。じゃ。」

奈々は『なより』という人物に、何となく会ってみたくなっていた。
りよなは『お願いします』と軽く頭を下げて奈々を見送る。
そうして、二人は別れた。

(・・・あっ。名前。)
奈々はふと、彼女の名前を聞くのを忘れていたことを思い出す。
しかし、すぐに名簿の存在に気付き走りながら名簿を調べてみる。
(籠野・・りよな・・。)
奈々は元々、こういうことには淡白な性格だ。
本来ならば、このタイミングで別れた相手の名前なんて思い出すわけがない。
奈々が思い出した本当の理由は・・・彼女自身にもよく分からなかった。
(・・・ちょっと、気になるな。でもまぁ、いっか。)

奈々は一人、何だか胸の奥にもやもやした物を抱えつつも森の出口を目指して走っていた。

【E−4:X2Y2/森の中/1日目:朝】

【天崎奈々{あまさき なな}@BlankBlood(仮)】
[状態]:健康
[装備]:ライター@○○少女(ガス十分、スカートの右ポケットに入れてある)
[道具]:デイパック、支給品一式
バッハの肖像画@La fine di abisso(音楽室に飾ってありそうなヤツ)
弾丸x10@現実世界(拳銃系アイテムに装填可能、内1発は不発弾、但し撃ってみるまで分からない)
[基本]:一人でいたい、我が身に降りかかる火の粉は払う、面倒くさがり、でも意外と気まぐれ
[思考・状況]
1.武器を探す
2.キング・リョーナに一発蹴りを入れる方法を考える
3.何となく籠野なよりを探してみる
4.仕方ないので涼子も探してみる(できれば積年の恨みもさりげなく晴らしてみる予定)

※籠野りよなと別れたものの、ほんのちょっとだけ気にかけてます
 籠野なよりにあったら姉が心配していたと伝えるつもりではいます
※籠野りよなと別れた場所から勘で西へと向かっていますが、北か南へ進路変更する可能性は高いです 

【篭野りよな{かごの りよな}@なよりよ】
[状態]:健康
[装備]:木の枝@バトロワ(杖代わりにしている)
[道具]:デイパック、支給品一式
リザードマンの剣@ボーパルラビット(本人は入っていることに気付いていない)
[基本]:対主催、なよりだけでも脱出させる
[思考・状況]
1.籠野なよりを探す
2.脱出方法を考える

※籠野りよなが巻き込まれていることは確認していませんが、巻き込まれていると直感しています
※落ち着いて考えられそうな場所を探しています

@後書き
りよなは生まれつき目が見えないということにしてしまいました。
違っていたらすみません。(−−;
奈々を書くのは意外と難しかったです。
ちなみに、彼女の『引っ張られてしまえ』と『尻尾をぐいっと』は同タイミングでおきていたことを補足させていただきます。(ぉ
[43]投稿者:ロウ◆to.6KERY 投稿日:2009/01/01(Thu) 19:21 No.109  
「利用する者 される者」


顔に風が当たるのを感じて目を開けたとき、
籠野 なよりは開けた平地に一人で立ち尽くしていた。

状況を把握しようと周りを見渡してみるが、
先ほどの部屋でなよりの周りにいた人たちの姿はどこにもなく、
今なよりの目の届くところには人っ子一人見当たらない。
代わりに足元に落ちていたデイパックと、近くに佇む廃墟を見つけた。

「……お姉ちゃん…」
一人の寂しさと恐怖からか、なよりは自然と姉のことを思い出す。
ふと自分が今殺し合いの舞台で無防備に立ち尽くしていることに気付き、
慌ててデイパックを掴んで廃墟へと向かった。
そのデイパックは予想以上に重く、か弱いなよりには持って歩くだけでも一苦労だった。

廃墟に着くやいなやなよりは外壁にもたれかかってデイパックを開け、中身を漁った。
もちろん、名簿を見るためだ。

「うそ…お姉ちゃんもいる…!」
参加者名簿には、自分と姉、籠野 りよなの名前が並んで載っていた。
頭の隅でわずかにしていた「最悪の予想」が当たってしまった。
姉の名前と自分の名前を確認した後、なよりは名簿を放り出してデイパックを漁り始めた。
今度は、支給品の確認のためだ。

姉は絶対に自分が見つけなくてはいけない。
盲目の姉に、自分の身が守れるはずがないのだ。

(待ってて、お姉ちゃん…。私が絶対に守ってあげるからね…!)
デイパックを中身を漁りながら、そう決心する。
しかしそんな決心とは裏腹になよりの支給品は、果物ナイフと望遠鏡という
どちらも戦いにはあまり向かないものだった。
望遠鏡はデイパックの重量をいたずらに上げるだけで、とても役に立ちそうにない。
果物ナイフも刃が小さすぎて、威嚇程度にしか使えそうになかった。
(こんなんじゃ…自分の身すら守れないよ…)
なよりはがっくりと肩を落とし、うなだれた。

「…そこにいるのは誰だ…?」
不意に声が聞こえ、うなだれた頭を上げて周りを見渡す。
声が聞こえてきたのは、安全だと思っていた壁側からだった。
視線を二階に移すと、窓が見えた。
声はそこから聞こえているようだ。
「だ…誰!?」

「…質問しているのはこちらの方なのだがな…。まあいい。
 これだけは答えてもらいたい。お前はこのゲームに乗っている者か?」

「…私は乗ってないよ!」
相手の姿は見えなかったが、なよりは首を横に大きく振りながら答えた。
「そうか…ならば、私と同じだな。
 私もこのゲームに乗る気などない」

「そう…ですか」
とりあえず胸を撫で下ろす。
まだ本当に殺し合いに乗っていない人かどうかは分からないが、
ひとまず襲ってくる気配はないようだ。

「えと…私は籠野 なよりです。
 貴方は誰ですか?
 まず、姿を見せてくれませんか?」
短い沈黙の後、返答が帰ってくる。
「…分かった。」

そしてなよりは驚きの声を上げることになる。
降りてくる者が、人間だとばかり思っていたからだ。


――――――――――――――――――――――――


「…………!!」
なよりが、降りてきた「それ」から距離を取るのも仕方のないことだった。
「それ」には手足がなく、布に包まれた頭と胴体のみで浮いている、
なよりが考えている人間とは程遠いものだったからだ。

「…ふん。思ったとおりの反応だな」
見越していたように、「それ」は言う。
「だが、先ほども言ったように私はこのゲームには乗っていない。
 それだけは信じてくれ。」
「…………」
なよりは警戒の体制を解く気はないようだ。
座り込んだまま自分のデイパックを握り締めて「それ」を睨み付けている。

「…ふう。…仕方がない」
ふいに、なよりの足元に拳銃が投げ込まれた。
「なより…と言ったか。私の名はリース。
 私がお前の敵ではない印に、それをやろう」

「…………」
なよりは投げ込まれた拳銃とリースを交互に見ていた。
「…信じてくれないか?」

しばらくの沈黙の後、なよりが立ち上がって拳銃を拾いながら言った。
「…分かった。…信じる。
 …えと…」
「リースだ」
「リース…リースね。
 でも、この銃本当に私が貰ってもいいの?」
「ああ。どうせ私には扱えないものだ」

なよりは少しだけ申し訳なさそうに拳銃を仕舞い、
それから一瞬躊躇ったようだが、先ほどの果物ナイフを取り出してリースに差し出した。
「じゃあ、代わりに…これあげる。
 これならなんとか使える…かな?」
「…まあ、危険が迫ったときにでも使うとしよう」
リースは果物ナイフを受け取り、マントの中に仕舞った。


「でも、これから…」
なよりが言いかけた瞬間、廃墟の方から一発の銃声がなより達の耳に届いた。

「今のって…」
「…どうやら、このゲームに乗った輩が少なからずいるようだな。
 今は戦いは避けたほうがいいだろう」
「…そうだね」
リースの冷静さに、なよりは頼もしさと同時に不気味さも感じたが、
リースの意見に従って二人は銃声がした方向と反対―先ほどなよりが来た方向に行くことにした。


(…お姉ちゃん…お願いだから無事でいて…)
殺し合いの場で一人の少女が愛しい姉の無事を願った。
その願いが叶うのか、それとも無残に壊されてしまうのかは、
まだ誰にも分からない。









…これで第一の「利用できる参加者を見つける」という目的はひとまず達成された。
一か八か、武器を相手に渡すという策が功を奏したようだ。
だが、まだだ。この小娘だけでは私の目的に辿り着くには力不足だ。

私の目的…そう、最後まで生き残ることだ。
時間が足りなかったが…ゲームとやらの説明をされてから、
私はこのゲームに対する様々な考えを脳内で張り巡らせた。

私が参加者として名簿に名を連ねたこと。
そして私だけでなくルシフェルも参加していたこと。

この二つから推測できることは一つ。
あの男…キング・リョーナと名乗った男は
おそらく私を封印した忌々しい影人の内の一人か、
もしくは影人がこのゲームの進行役として作り出した人形か、そのどちらかだ。
影人クラスの者でないと私やルシフェルを気付かない内に自在に転移させるなどということは出来ない筈だ。
このゲームも奴らの余興の一つだと考えれば、その推測にも納得がいく。

仮にその推測が合っているとすれば、これは私にとってはまたとないチャンスだ。
男は言った。このゲームで生き残れば願いを一つだけ叶える、と。
人間ならば富、名声、地位…願いなどいくらでもあるだろう。
だが、私の願いは唯一つ。

―「記憶を除く全てを、法を破る前まで戻す」―

同じ過ちを繰り返さぬよう記憶は残したままで、
「影人の法を破り、罪として存在の格を落とされ、力を奪われたこと」全てを「無かったこと」とするのだ。


もう一度私が「私」を取り戻すには、この願いしかない。

巡ってきたこの最大のチャンスを、絶対に逃すわけにはいかない。
私の持てる知恵全てを使い、どんな手段を使ってでも生き残らなければならない。

考えろ。
力をほとんど使えないこの状況で、どうすれば生き残れるのかを。

考えろ。
これからどのような事態が予想されるのかを。

考えろ。
私はこれからどのように行動すればいいのかを。


考えろ。
私が考えなくてはならないことは、まだまだたくさんある筈だ――










【B-4:X2Y3/廃墟の外壁付近/1日目:朝】
【籠野 なより@なよりよ】
[状態]:健康
[装備]:ハンドガン(残弾6)@なよりよ
[道具]:デイパック、支給品一式 
   リョナレスの望遠鏡@怪盗少女
[基本]:お姉ちゃんと元の世界に帰る
[思考・状況]
1 お姉ちゃんを探す
2 リースと行動
3 出来ればもっと仲間が欲しい


【リース@DEMONOPHOBIA】
[状態]:健康
[装備]:果物ナイフ
[道具]:デイパック、支給品一式 
   ???
[基本]:最後まで生き残る
[思考・状況]
1 なよりと行動
2 利用出来る者は仲間にする
3 今は戦闘はなるべく避けたい

※キング・リョーナを「影人か影人の人形」と推測しています。


※銃声はなぞちゃんが撃った火薬鉄砲の音です。
※リースの残りの支給品は次の書き手の人に任せます。
[44]投稿者:ロウ◆to.6KERY 投稿日:2009/01/01(Thu) 19:33 No.110  
明けましておめでとうございます。

やはり策士型を書くのは(´・ω・`)ムズカシス
まだ書かれていない人物が減ってきましたね。

ワアイ、家の娘が出てきたよー
最終的に養分にする気満々の八蜘蛛と\(^o^)/
これからどうなっていくのか楽しみです。
[45]投稿者:「始闘−タクティクス−」 14スレ目の74◇DGrecv3w 投稿日:2009/01/07(Wed) 23:00 No.120  
「(・・どうやら、ここまでは成功のようだね。)」
「(そう、思いたいわ。)」

―黒いセミロングの女性は、一人その場で佇んでいた。―
事情を知らない者が今の彼女を見たら、必ずこう思うだろう。
しかし彼女はその時、会話をしていた。
会話の相手は、彼女の心に棲む・・・能天気な宇宙人。

「(エリねえは心配性だなー。大丈夫だって、アタシが言うんだから信じなさいよー!)」
「(貴女が言うから、信用できないのよ。イリス。)」

エリねえと呼ばれた女性、エリナはさらりと切り返す。

「(なんだとー!アタシ、泣いちゃうぞー!)」

ワケあって彼女に憑いた能天気な宇宙人、イリスはえーんえーんと態とらしい泣き真似をする。

「(・・・食料と、水はとりあえずOKね。時計も・・動いてるわ。)」
「(あ゙っ!無視するなんてひどーい!エリねえのバカぁ〜!)」

喚き散らす彼女をよそに、エリナは手早く自分の荷物を確認する。

「(・・って、エリナ。それ。)」
「(・・・嫌な予感がするのね?)」

まず出てきた物。イリスが早速反応を示すのだから、何らかの”力”が宿った物なのだろう。
それもこの反応では、少なくともあまり褒められた代物ではなさそうだ。

(・・見た目は、悪魔的デザインの単なる首飾りね。)

「(どうやら、持ってるだけで呪われたりするという感じの代物ではないね。・・使ってみる?)」
「(そうね・・。)」

もし、この首飾りが災厄を呼び起こす類の物でも、今ならば犠牲者は私一人だ。
彼女達を巻き込む心配はない。
それに、この状況ではできる限り効果の分からない品物は持ち歩きたくない。
エリナは首飾りに意識を集中させてみた。

「わっ・・。」

思わず声が漏れる。
エリナが意識を集中した途端、首飾りだった物が赤と青のサイコロに変わったのだ。

(もう少し、試してみよう・・。)

エリナはまた少し意識を集中させる。
すると今度は、自らが変身後に用いる武器に似たような形に変わった。

「(キミの意志に応じて形を変化させる首飾り・・ねぇ。キミに似合いそうだ。)」
「(・・かもね。)」

本来ならエリナは、状況に応じて戦い方を柔軟に変えてゆける万能型の戦士に変身することができる。
そういう意味では、自らの意思で様々な形に変化するこの首飾りはとても助かる道具であった。

「(・・・でも、できれば使いたくはないわね。)」
「(ほほぉー、それまた何で?)」
「(嫌な感じが、するのよ・・。)」

エリナはこの首飾りから、何故かとても禍々しき物を感じていた。

「(・・・キミらしくない。キミは感覚で物事を決めるタイプじゃなかろうに。)」

イリスは急に声のトーンを低くし、エリナに反論した。

「(確かにらしくない、わね。)」
「(じゃあ、聞かせてよ。何で?)」

こういう時、イリスはエリナのことを本当に心配している。
エリナにもそれが分かっている。だからこそ、今一度この髪飾りについて真剣に考えている。

「(そうね・・まず、私は殺し合いになんて乗るつもりはないわ。)」
「(そして、これが普段は首飾りの形をしているから。と言うのも考えているわ。)」
「(ほぉー。)」
「(・・これが、武器に変わるなんて誰が想像できて?貴女にでさえ分からなかったのに。)」
「(頻繁に使っていたら、いざという時に既にバレているかもしれないわ。)」
「(なるほど、確かにそれは一理ある。・・・OK、エリナ。任せるよ。)」

イリスもエリナの気持ちは分かっていた。
それに、エリナがそんな気持ちだけで判断しないことも分かっていた。
しかし、状況が状況なだけにどうにも確かめておきたかったのだ。

「(・・まったく、どっちが心配性よ。)」
「(あちゃっ!バレてた?たはははー・・)」

エリナとイリスの会話は何時もこんな感じだった。
一見、折り合いの悪そうなこの組み合わせは実は見事なまでに調和がとれていた。

その後、ハロゲンライトと巫女服が出てきた。
この二つはどちらも特に何事もなさそうだったので、手早く調べてバッグへと戻す。

「(巫女服って、カザネちゃんにあげたら喜びそうだね♪)」
「(そうね。多分、貰って30秒で着替えるわ。)」
「(だぁね、『かーわいー!!vvvv』とか言って飛び跳ねる姿が目に浮かぶよ。)」
「(・・そうね。)」

エリナは実の妹のように面倒を見ている少女が、巫女服ではしゃぎ回っている姿を想像してみた。
こんな状況じゃなかったら、素直に笑えただろう。エリナはそう思った。

「(さて・・じゃあ向かいますか。)」
「(そうね。場所は・・アクアリウムね。カザネなら迷わず此処を選ぶと思うわ。)」


・・・・エリナはあの場所でのルール説明が終わる少し前、カザネとその友人、シノブに出会っていた。

(こんな広くて暗い場所で、それも、対して周りを見回す時間も無かったのに出会えた?)

カザネとシノブは素直に喜んでいたが、エリナだけは違和感を感じていた。

(・・・これは、偶然なんかではないわ。)

もしこの場で出会えなかったら、私達はお互いの存在に気付いて作戦を考える前に全滅していたかもしれない。
彼にとっては恐らくはそうなった方が嬉しいはずなのだから、出会えないようにしてあっても不思議ではない。
しかし、私達はこの場所で出会えた。

(彼は、私がこの場で作戦を立てるであろうことも計算している・・。)

そう考えるのが妥当だった。
そしてこの首輪にあると言う盗聴機能で私達の作戦を聞き取り、先手を打ってくる可能性は高い。

私がこの場で作戦を考えるのならば、まず合流方法を考える。
そして彼は望めるのならば、私達にも殺し合いをさせようと考えている。
自分で言うのも何だが、彼女達に比べれば私は常に冷静さを保っていられるだけの度胸はあると思う。
彼もそれは承知済みだろう。それならば、彼がとりそうな対抗策は・・。

(・・私の指定する合流場所付近に私を配置して、その付近に殺人狂を配置しておくこと、ね。)

こうすれば、私は合流地点近くで死ぬ可能性が高くなり、
後で合流してくるであろう二人に私が死んだことを見せやすい。
私が死んだことを知れば、あの二人は取り乱し殺し合いに乗ってしまうかもしれない。

より確実さを重視するならば、私と殺人狂の配置をずばり合流場所することだ。
しかし、彼は私と殺人狂の配置をずばり合流場所にすることはまずない。
彼の言動から察するに、彼は態と『自分の思い通りにならないかもしれない状況』を作る。
そして、それを『結局自分の思い通りにする』ことで快感を得るタイプの人物だ。
彼は合流地点から態と少しずらすことにより、『思い通りにならないかもしれない状況』を作ろうとするはずだ。

(・・そのまま、思い通りにならなくしてあげるわ!)

私に付け入る隙があるとすれば、彼のそういう部分だ。
そこで私とイリスはスタート地点に飛ばされる間際、ある作戦に出ていた。

「二人とも、笠原町に近い施設を目指して。」
「(アリアちゃん、マインちゃん。地図の中央から一番近い施設に誘導して。周りにバレないようにね。)」

・・・そして、結果。
私は笠原町に近い見た目の町が近くに見える草原に居た。
彼が私の予想通りの行動を取っていたのならば、ここまでは私の作戦通りだ。

「(・・まぁ、『”テレパス”の会話内容は聞き取れない』という前提条件があってこそだけど。)」
「(・・・そう、ね。)」

彼、キング・リョーナは私達の素性を知っている。二人はそう考えていた。
確かに、殺し合いに直接的に使えそうな道具や武器がゲーム開始前に没収されるのは分かる。
しかし、私の首に提げてあったロケットまでもが没収されている。
あんな物、殺し合いの場ではまったく使い物にならないはずだ。
普通に考えれば態々没収するほどの物ではないと判断するだろう。

それなのに没収されていると言うことは、彼に私達の素性は割れていると見た方が懸命だ。
素性が割れているのであれば、当然”テレパス”についても知っているはずだ。
”テレパス”の会話内容が盗聴されている可能性も十分にありえる。

(満たすべき条件は、それだけじゃないわ・・・。)

更に言えばあの場のざわめき具合からして、恐らくは私と同じように巻き込まれた者なのだろう。
それならば、全員が殺し合いに乗るような殺人狂ではないはずだ。
道中出会う人物全員から命を狙われるようなことはない、合流を目標に行動するぐらいの余裕はあるはずだ。
この作戦はそういう仮定の上に成り立っている。
もし他の者が全員殺人狂であるのならば、私達は適当な場所に配置され合流を考える余裕もなく各個撃破されるだろう。
結局の所、今の私には自ら立案した作戦を信じ、二人の少女の無事を祈ることしかできないのだ。

(・・・カザネ、無事でいて。)

「(・・・エリナ、やめといた方がいい。付け入る隙を与えることになるぞ。)」
「(・・・分かっているわ。)」

しかし、イリスの不安は拭われなかった。
エリナは本人が思っている以上にカザネに肩入れしているのだ。
イリスが本当に懸念しているのはそこだった。

(分かってないよキミは・・。そういうトコだけは、バカ正直過ぎる。)

ご丁寧に変身道具を没収するようなヤツのことだから、彼女のこの弱点を見逃すはずがない。
もう既に手を打たれている可能性は高い。そうなれば恐らく彼女は・・・。

(・・・アタシはキミの行動を助けることはできても、キミの行動を止めることはできないんだぞ。)

イリスは不安を掻き消すように、明るい声で寡黙な宿主に出発を促した。
エリナはその声に少し呆れながらも何も言わず歩き出す。
目的地で二人の少女と無事出会えることを祈りながら――

【A−3:X2Y2/町近くの草原/1日目:朝】

【富永エリナ{とみなが えりな}&アール=イリス@まじはーど】
[状態]:健康
[装備]:運命の首飾り@アストラガロマンシー(首から提げて、服の中にしまっている)
[道具]:デイパック、支給品一式
ハロゲンライト(懐中電灯型)@現実世界(電池残量十分)
巫女服@一日巫女
[基本]:対主催
[思考・状況]
1.アクアリウムに向かう
2.あの男を倒す方法を考える

@後書き
頑張ってみましたが・・やはり頭の悪い自分にはこの辺りが限界でした。(^^;
[46]投稿者:「連合東支部――激闘の幕開け 1」  麺◆dLYA3EmE 投稿日:2009/01/07(Wed) 23:52 No.121  
「共鳴が強まってる・・・近いわね。」
ミアが、星の描かれたステッキを手に呟いた。


今から30分ほど前の事。彼女は不思議な少女、なぞと出会った。
それから襲ってきた男の顔を面白く変えた後、とりあえずその場を後にした。
とは言え二人とも、特に行くあてもなく、探すべき仲間もいなかった。
「これからどうする?」
「なぞは、ミアちゃんについていくです!」
「え、えーっと・・・」
何の進展もない会話が続いていたが、しばらくして彼女は、
荷物の中のステッキから、微弱な魔力が発せられている事に気付いた。
「どうしたんですかぁー?」
隣を歩くなぞが、不思議そうに顔を近づける。
「このステッキ、何かと共鳴しているみたい。もしかしたら持ち主かも。」

もし、本当にこのステッキの持ち主だとしたら・・・
感じられる魔力の波動からして、優しい人物であることは間違いない。
しかも、ハッキリとは分からないが、ステッキに秘められた魔力はかなり強いらしい。
これを扱えるとするならば、かなりの実力者であろう。
そんな人と合流することが出来れば、非常に心強い。

「なぞちゃん、このステッキの持ち主を探さない?」

こうして彼女らは、ステッキが指し示す方向、北東に向かって歩き始めた。




「・・・お願い・・・助けて・・・!」
扉を開けて飛び込んできた少女が、右腕から血を、眼から涙を流しながら、
二人の男に懇願していた。
「ど、どうしたの急に!?それにその傷・・・」
少年がそれに応える。

彼の名はルーファス。
冷気の剣を構えているが、剣の腕には全く自信がない。
だが、隣にいる青年は、少なくとも自分よりは圧倒的に強い。
大抵の相手になら負けない、と思う。

「あ・・・あれ・・・」
少女が怯えながら扉の外を指差す。
彼らがそちらに視線を移した瞬間、その扉から風の刃が飛び込んできた。
「うわっ!」
「チッ!」
「きゃあっ!」
間一髪避ける三人。その背後で切り裂かれるレプリカの武器。

「みーつケタ☆」

扉の外では、緑の髪に緑の服を着た少女が、宙に浮いてこちらに満面の笑みを向けていた。

「何あれ、空飛ぶ人間!?」
「ん?ありゃ精霊か?」
「あ、あの子がさっきから、追いかけてくるの!!」
見た目はただの少女。そんなに恐ろしい感じはしないが
今の攻撃を見ると、危険な相手であることに変わりはない。

「アハハ、よけてよけてー!!」
そう言いながら、今度はカマイタチを連射してきた。
どうやら当てようとしている訳ではなく、適当に撃っているようだ。
よく見ていればルーファスの運動神経でも十分避けることが出来た。
だが、飾ってある剣や鎧は避けることを知らない。
「うわっ!!」
転がってきた槍に足を取られる。今攻撃されたら間違いなくバラバラだった。
「くっ、このままじゃマズイ、外に出ろ!!」
青年の叫び声を合図に、三人は入り口から飛び出した。

「こんどはお外でアソブんだねー♪」
やはり少女は攻撃の手を休めようとはしない。
「急げ!向こうの建物に逃げ込むんだ!!」
青年を先頭に、隣の大きな建物に向かって走る。
しかし半分ほど来たところで、後ろを走る少女が転倒する音が聞こえた。
「バラバラになっチャえー!」
「ひ、い、いやあああぁぁぁぁ!!!!」
倒れて動けない少女に、カマイタチが襲い掛かる。
前を走る青年も気付いたようだが間に合わない。
自分が助けなければ!

(姉さん、力を貸して!!)
冷気の剣を振り上げ、彼女の所に駆けつける。
「やあああっっっ!!!」

ガキィィン

カマイタチに冷気の剣を叩きつけ、弾き飛ばした。
普通の剣であれば風の流れを変えることなど出来ないが、
魔力を持った剣だからこそ出来る芸当である。
もっとも、彼自身はそれを期待した訳ではなく、ただがむしゃらに取った行動である。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
やはり慣れない事をするのは負担が大きい。
しかし、相手の少女はこれ位で諦めてはくれない。
「おニイちゃんすごーい☆ でも、あたしも負けナイよ!!」
上段、中断、下段の三連射。この状況で避けるのは難しい。
たとえ避けたとしても、後ろの少女に当たってしまう。

まず上段を振り下ろしで弾く。
ガキィィン
そこから返す刃で中段を弾く。
ガキィィン
そしてさらに下段を・・・しかし、
「くっ、間に合わない!!!」
辛うじて剣には当てたが、わずかに方向を変えただけだった。
「うぁっ!痛っ!」
風の刃が右足首をかすめる。破けた服の間から血が吹き出た。

「惜しイなぁ、もうチョットだっタのに。次はどうカナ?」
少女はまた攻撃態勢に入る。今度は耐えられるだろうか?
一瞬たじろいだ所に、背後から青年の声が聞こえた。

「おいガキ、あと一回だけ耐えろ!」




ステッキから感じる魔力を辿ってきたミアとなぞは、森に入っていた。
細い道をミアが前に立って歩いていたが、ふと、後ろになぞの気配が無くなった事に気付いた。
「なぞちゃん!?」
慌てて後ろを振り返るミア。するとなぞは、道端に座り込んでいた。
疲れたのかな?と思い、「どうしたの?」と声をかける。
しかし、返事は無い。

一抹の不安がよぎる。
本人は気付いていないらしいが、なぞの中には恐ろしい”何か”が潜んでいる。
ミアは二度、それを目にしたが、その時も彼女はこちらの呼びかけに応えなかった。
もしかしたら、また・・・

だが、その不安はすぐに吹き飛ばされた。
「あったです!」
いつも通りの、明るい声。
「あれ、ミアちゃん、顔色が悪いですよ。」
「だ、大丈夫。」
その声に安堵し、ミアが尋ねる。
「それより、何があったの?」
「ジャーン! これです!」
彼女の手には、なんと四葉のクローバーが、しかも二本も握られていた。
幼いころ、両親とともに何時間も探した記憶が蘇る。

「すごーい、なぞちゃんよく見つけたね!」
「二本あるから、片方はミアちゃんにあげるです。」
「え、いいの?」
「いいです。ミアちゃん、ちょっとしゃがむです。」
言われるままに、その場にしゃがんだミアの髪に、
なぞは、手にしたクローバーを器用に編みこむ。
「似合うですよ、ミアちゃん。」
「そ、そうかな・・・」
「なぞもつけるです。」
そう言って、なぞは自分の髪の結び目に、もう一本のクローバーを挿した。
「ふふ、これでミアちゃんとおそろいです!」
「なぞちゃん・・・」

彼女と一緒にいると、なんだか暖かい気持ちになる。
こんな恐ろしい所でも、彼女と一緒なら頑張れる。
ミアは、そう思った。




彼の勘が告げていた。
「ヤツは、ヤバいな・・・」

彼、オーガは、目の前で人が死んでも、特に何とも思わない。
むしろ労せずして食料が確保できたと、喜ぶことさえある。
しかも今手に入ろうとしている食料の片方は、彼が最も好む、若い女性の肉である。

だがそれは、あくまで、自分が相手をやり過ごすことが出来ればの話である。
目の前にある建物は、外見は間違いなく見慣れた東支部である。
しかし、内装まで同じという保証はない。
仮に二人が殺られている間に建物に飛び込んだとして、身を隠せる場所が無かったら・・・
足の速さは少なくとも一般人より上だが、さすがに空から追いかけられると厳しい。

「やるしかねーな。」
彼はそう判断して、少年に声をかけた。

ガキィィン

一発目の攻撃を、少年が弾く。
その間に彼は、攻撃の主の死角に回り込む。

これまでの動きを見る限り、相手は遠距離攻撃を中心とするタイプだ。
肉体を使った近距離戦を得意とする彼なら、接近さえ出来れば勝機はある。
しかし問題は、彼女が宙に浮いている事。
いくら彼の身体能力が高いといっても、ジャンプ力だけで接近戦を挑むのは無謀である。
ならば作戦は一つ。地面に落とせば良い。
幸いにも、彼女の意識は目の前の少年に集中しており、
それ以外の方向は全くと言って良いほど警戒していない。
このチャンスを逃せば、次は無いだろう。
宙に浮く相手の背後に回り込み、飛び掛かる。
そして渾身の一撃で地面に叩き落す。
常人にはほぼ不可能な技だが、彼の能力ならば十分である。

ガキィィン、ガキィィン

二発目、三発目の攻撃を、少年は見事に弾ききった。
同時に青年が跳躍し、右腕を振り上げる。
作戦成功・・・そう思ったのも束の間だった。

「次はおジちゃん?いいヨ☆」

彼の行動は、ギリギリの所で気付かれてしまった。
少女は彼に向けてカマイタチを放つ。
直撃こそ免れたものの、左手に激痛が走る。
「うぁっ!」
そこに目を向けると、手首から先が無くなっていた。
「イキなり当タっちゃったノ?つマんないナー」
「ぐっ・・・てめえ!」
それでも彼は諦めない。
その驚異の運動能力で、空中で体を回転させ、そのまま少女に殴りかかった。
だが、そもそも気付かれた時点で彼の負けである。

スカッ

少し上昇した少女にあっさりと回避され、そのまま地面に落下してしまった。
「く・・・くそ・・・」
「死んジャえ!!!」
左手の傷と落下の痛みで動けない彼に向かって、少女がエネルギーを溜める。
もう終わりか、と思われたその時・・・

パンッ!

森の中から乾いた音が鳴り響いた。
[47]投稿者:「連合東支部――激闘の幕開け 2」  麺◆dLYA3EmE 投稿日:2009/01/07(Wed) 23:53 No.122  
ミア達がステッキの持ち主の方向を目指していると、突然、大きな建物が見えた。
きっとあそこに隠れているのだろう、と思って近づくと、
三人の人間が、宙に浮く少女と戦っているのが見えた。
青年が少女に飛び掛かるが、回避されて逆に窮地に陥る。
(助けないと!!)
そう思った彼女は、バッグの中から黒い塊を取り出し、
さっきなぞが見せてくれたように、引き金を引いた。

パンッ!

音に驚いた少女は、攻撃の手を止めた。

「待ちなさい!!」
ミアが叫ぶ。
「私達が来たからには、絶対に犠牲は出させない!」

少女はしばらくポカンとしていたが、すぐに笑顔に戻った。
「友達いっぱい、ウレシイな〜」
カマイタチが彼女達に襲い掛かる。
「ミアちゃん、来るですよ!」
「任せて・・・シールド!!!」
ミアはそれを、得意の魔法で受け止める。
もちろん出来るならば魔力は節約したい所だが、この状況でそう言ってはいられない。

「行くわよ!・・・セイント!!!」
ミアの魔法が命中する。少女にとっては始めてのダメージだ。
「あぅ・・・ヤったなぁー、今度はアタシの番!」
少女はミアに向かってカマイタチを連射する。
数発ならば避ける事も可能だが、これだけ数が多いと難しい。
その激しい攻撃に対し、シールドでひたすら耐えるミア。

だが、そもそもシールドの効果は、ダメージの軽減のみである。
「ぎあっ!!、くうぅ!」
シールドの上から体力がどんどん削られる。
これでシールドが無かったら・・・そう思うとぞっとする。
ダメージに耐えながら、彼女の視線は少女が手に持つロッドに向けられていた。
(あれは、マジックロッド! あれさえ手に入れば・・・)

彼女は今の状態でも、戦士としてある程度の実力を持ち、経験も積んでいる。
だが、彼女の真の実力は、今はプラムの手にあるマジックロッドによって開放される。
魔法戦士に”変身”し、戦闘力は2倍に跳ね上がるのだ。

しかし、少女の予想以上に激しい攻撃のため、近づく事すら出来ない。
仕方なく彼女は、マジックロッドを諦め、時間稼ぎに集中した。
「・・・リカバー!」
受けたダメージが回復する。
シールドだけならばすぐに体力が尽きてしまうが、これで魔力が尽きるまでは耐えられる。
その間に、なぞちゃんが・・・

「へぇ〜、おネエちゃんカイフクも出来ルんだぁ。これでズっと遊べルね♪」
ミアが考えている間も、少女は攻撃の手を休めない。
「がはっ!、がふっ!・・・リカバー、リカバー、リカバー・・・がああぁぁ!!」
徐々に押されるミア、魔力も既に底をつきかけていた。

そんな時である。
まばゆい、それでいて優しい光が辺りを包んだ。

「え、何? ドウしたの?」
少女が驚いて背後に目をやる。
「ふふ、まさか、こんな事になるなんてね・・・」
一方のミアは、小さく笑みを浮かべた。

彼女はここにたどり着いた時点で、マジックステッキの持ち主を見分けていた。
そこで、なぞにステッキを渡すように頼んで、自分は相手の注意を引き付けた。
マジックロッドを諦め、時間稼ぎに専念したのもそのためである。

そしてその作戦は成功し、予想以上の成果となって表れた。

「な、何が起こったんだ!?」
「強化魔法!?それにしては・・・」
「わぁー、すごいです!」
その場にいた全員が驚きの表情を見せる。
当然だ、何しろステッキを持ってきたミアにとっても意外だったのだから。

まさか彼女が自分と同じ変身ヒロインで、ステッキが変身道具だったとは。




「ナニ?何なの?アタラシイお友達?」
少女が攻撃の手を止め、好奇の眼差しを向ける。

光の中から現れたのは、白と青の衣装をまとい、
マジックステッキを手に持った、魔法少女・まゆこの姿であった。

「ねえキミ、痛い目にあいたくなかったらもうやめて。」
まゆこは少女に語りかける。
「ナニ言ってルの? こんなに楽しいノニやめるわけナイじゃない。」
少女は全く気にせず、まゆこに向かってカマイタチを飛ばす。
「・・・えいっ!」
彼女がステッキを一振りすると、魔法陣が現れ、攻撃を受け止めた。
そこからすぐに反撃に移る。
「今度はこっちの番よ!」
少女の周囲に、星型の魔力弾をばら撒く。
少女は回避行動を取るが、何発かは避け切れずに当たってしまった。
「ひぃっ・・・イタイ・・・」
「もう一度言うわ。ここから去りなさい!」

彼女の動きが止まった。そして表情から笑みが消えた。
「イタかった・・・イマのは、痛かっタよぅ・・・」
(これで諦めてくれるといいんだけど・・・)
しかしその願いも空しく、しばらくの沈黙の後、少女は怒りをあらわにした。
「モウおネエちゃんなんてキライだ!死ンじゃえーーーー!!!」
まゆこを、今までにないほど大量のカマイタチが襲う。
完全に期待を裏切られた彼女だったが、全く想定外の事でもなかった。
「やぁっ!」
冷静にマジックステッキの一振りで、全ての弾を消し去った。

「これで分かった? やめるなら今のうち・・・って、あれ?」
まゆこは一瞬、目を疑った。
目の前にいたはずの少女が、いつのまにか彼女の視界から消えていたのだ。
その瞬間、真上からギロチンのような刃が振ってきた。
「きゃあっ!!」
なんとか避けるまゆこ。あとコンマ1秒遅れたら当たっていた。
だがこの時少女はすでに、まゆこの背後にいた。

確かに純粋な魔力、特に潜在能力という点では、まゆこの能力は極めて高い。
おそらくは変身後のミアに、勝るとも劣らないだろう。
だが、彼女には大きな弱点が二つある。
まずはスピード。
魔力で多少補われるとはいえ、元々の能力が低ければ、変身しても低いままである。
そして経験。
彼女が魔法少女になってから戦った相手といえば、触手の化け物ただ一体である。
今のように素早い相手との戦いは、全く経験していない。

「わぁっ! うぅっ! ひぃっ!」
回避だけならギリギリできるが、避けるのに精一杯でとても反撃は出来ない。
そうしているうちに、体力も落ち、反応も鈍ってくる。
(な、何とかしないと・・・)
そう思った矢先、
「きゃああああぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
彼女の背中に、巨大なカマイタチが命中した。
全身の力が抜け、そのまま地面に倒れこむ。

「オイ、シャレになんねーぞ・・・」
「そんな事って・・・」
自分達よりずっと大きな力を持つ、まゆこが敗れた。
他に、あの少女と戦える者は、もういない。
辺りに絶望感が漂う。

「アハハ、ハハ、アハハハハハ・・・・」
そんな人間達を尻目に、少女は戦意を失ったまゆこの身体に、二発、三発と風の刃を撃ち込む。

誰もが、まゆこの生存を絶望視していた。
唯一人、彼女の一番近くにいたなぞを除いては。

「あのぅ・・・ぜんぜん怪我してないと思うですよ。」
なぞの言葉がまゆこに届く。それを聞いてまゆこも気付いた。
「あ、ほんとだ。痛くない。」
背中をさすってみる。服は破れているが、体には傷一つ無いようだ。
少し身体を動かしてみる。動き回った分の疲労はあるが、特に異常は無さそうだ。
・・・少女が手加減したのだろうか。
だが、その驚いた表情を見る限り、その可能性は無さそうだ。

「なんで?ナンデ?何で効かなイの!?バラバラになっテよ!!!!!」
やや錯乱しながら、フルパワーでカマイタチを飛ばす。
が、まゆこは今度は、避けようとも防ごうともせず、身体で受け止めた。
やはり全くダメージは無い。

秘密は、彼女が何気なく被った宝冠「フォクテイ」にあった。
その宝冠の風耐性と、変身による魔法防御力アップが重なり、
今の彼女は風による攻撃をほとんど受け付けなくなっている。
無論、周りの人だけでなく彼女自身もそれに気付いてはいないが。

「なんかよく分からないけど・・・大木は壊せても、たった一人の人間は壊せないようね!」
まゆこが少女に向かって言い放つ。既に彼女は勝利を確信していた。
相手の、おそらく唯一の攻撃手段が通用しないと分かった以上、少なくとも負ける事は無い。
勝ち誇るまゆこに対して、相手の少女は静かに呟いた。

「ぜんぜん切れナイなんて、おネエちゃん、ツマンナイ・・・」
少女は落胆したような表情を見せる。
まゆこは、これでこの子も「ゲーム」をやめるだろう、と思った。
だが、次の少女の行動は、彼女の期待をまたあっさりと裏切った。

「やっぱりコッチのおネエちゃんとアーソボ!」
「えっ!!」
少女は、まゆこを翻弄したスピードで、今度は再びミアに向かっていった。
意外な行動に、まゆこの反応が一瞬遅れた。
いや、反応していたとしても、まゆこのスピードではプラムに追いつけただろうか。
魔力を使い果たしたミアに、プラムの容赦ない攻撃が襲い掛かった。
「行ケー!」

バシィッ!

何者かが、その攻撃をさえぎる。
「なぞ・・・ちゃん・・・?」

辺りの空気が変わった。
[48]投稿者:「連合東支部――激闘の幕開け 3」  麺◆dLYA3EmE 投稿日:2009/01/07(Wed) 23:58 No.123  
風を操る少女、トゥイーティ・プラム。
彼女は森に住み、物心ついた時には既に、
人間をみつけては「遊び」と称して追いかけまわす日々だった。
いや、そもそも”物心ついた時”がいつなのかもハッキリしない。
1ヶ月前か、1年前か、10年前か。
ともかく彼女は毎日、誰かと遊んで楽しく過ごしている。

自分の攻撃から逃げ惑う人は、面白い人、好きな人。
より長く逃げ続ける人は、もっと面白い人、すごく好きな人。
時には逆に襲い掛かってくる人もいるが、そんな時は本気を出して、返り討ち。
どうしても勝てなさそうなら最後の手段、飛んで逃げる。
彼女に追いつける人間はいなかったし、たまには逃げる振りして迷わせるのも悪くない。
彼女にとって人間は、「遊び相手」でしかない。

未だかつて、それ以外の感情を持ったことは無かった。

その彼女が、生まれて初めて、人間に対して怯えている。
目の前にたたずむ相手に、恐怖を感じている。

「な、何コレ、い、いや!!」

目の前の少女が自分の攻撃を受け止めた時、周囲の空気が変わった。
身の毛がよだつほどの恐怖、
全身が硬直するような威圧感、
全てを凍りつかせる殺気、
それら全て、プラムと対峙する少女、なぞから発せられていた。

プラムだけではない。その場にいる誰もが硬直し、何一つ言葉も発せられなかった。
なぞはそのまま、プラムに向かって歩き始める。

「や、やめて、コナイデーーー!!!」
彼女は叫んだ瞬間に、腹部に強烈な痛みを感じた。

「うぐぅっ!・・・げほっ、げほっ」
一瞬で自分の目の前まで移動してきた少女の膝が、
腹に食い込んでいるのを視認したのは、その後だった。

「がああぁっ!!」
次は顔面に衝撃。
左手で強引に髪を掴み、顔に強烈な右ストレートを叩き込まれた。

「うあぁっ!!」
後頭部に痛みが走る。
踵落としで地面に向かって一直線だ。

「ぎゃん!」
顎から強烈に大地に叩き付けられた。
そこにとどめの一撃が飛んでくる。

「ひぎいいいいいぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」
落下の衝撃を生かした踏み付けが、背骨にクリーンヒット。
骨が砕ける音が聞こえ、途端に意識が薄れてくる。

「うぁ、い、イヤ・・・・」

この一撃でプラムは、全く動かなくなった。




戦いは終わった。
生き残った者達を静寂が包む。

しかし、その少女の発する”気”は、何一つ変わってはいなかった。

「と、とにかく、勝った、勝ったんだよ、ね・・・あ、ありが、とう」
どうにかこの重い空気を吹き飛ばそうと、まゆこがなぞに話しかける。
暫く地に伏したプラムを見つめていたなぞが、その言葉に反応を示し、まゆこ目を向けた。

「ひっ・・・」
あまりの恐怖に、彼女は言葉を失った。
その目は、もはや人間のものとは思えない、恐ろしい輝きを放っていた。
それでも何とか笑顔を作ってなぞと向き合う。
が、次の瞬間。
――目障りだ――

「うええぇっ!!!」
なぞの放った正拳が、まゆこの急所を的確に捉え、大きく吹き飛ばす。

「はぅ・・・うぅ・・・」
そのまま建物の壁に激突し、気絶してしまった。
ぐったりと倒れこむまゆこ。同時に変身が解け、元の服に戻る。

(元に戻らない!?・・・なぞちゃん!!!)
ミアは驚きを隠せない。
前回は、相手の男を倒した時点で、元の明るい彼女に戻った。
しかし今回は、攻撃してきた相手だけでなく、他の人にまで危害を加えている。
(と、止めなきゃ・・・でも・・・)
変身さえすれば、彼女を止められるかもしれない。
そのために必要な道具、マジックロッドも目の前に転がっている。
だが彼女には、変身できるだけの魔力は残っていなかった。

その間にもなぞは、次の獲物を探していた。残っている人間は三人。
ミアと、手首を失った青年、それから足首を怪我した少年。
ふと、少年の手にある冷気を発する剣が目に入る。
――良いもの、見つけた――
彼女は悪魔のような笑みを浮かべて、少年の懐に飛び込んだ。
「いっ・・・ぐあああぁぁぁっっ!!」
一瞬で少年の右腕が捻りあげられ、有り得ない方向に曲がった。
彼の手から滑り落ちた冷気の剣を、なぞが拾い上げる。

(なぞちゃん!!)
ミアは思わず走り出した。
自分に何が出来るかは分からない。それでもじっとしてはいられない。

「う、腕がぁっ・・・」
あまりの痛みに右肩を押さえてうずくまる彼に、なぞは手にした剣を振り上げた。
――死ね――
そのまま振り下ろそうとした瞬間、背後から腕を掴まれる。

「お願い、なぞちゃん・・・元に戻って!」
ミアは必死で、なぞにしがみついた。
しかし力の差は明らかである。簡単に振りほどかれ、逆に片手で首を掴んで持ち上げられた。
――邪魔を、するな――
剣がミアの胸に突きつけられる。
(っ・・・なぞ・・・ちゃん・・・)

その時、ミアの髪に編みこまれた四葉のクローバーが、なぞの目に飛び込んだ。
――うっ、くっ・・・――
彼女の頭の中に、数分前の記憶が蘇る。



道端に、たくさんのクローバーが群生していた。
そのちょうど真ん中にひときわ目立つ、四葉のクローバー。
”四葉のクローバーを見つけると、願いが叶う”
そんな話を思い出し、喜んで摘み取った。

ふと、彼女の頭に名案が浮かぶ。
(ミアちゃんにも、プレゼントしよう)
これだけのクローバーが生えているのだから、もう一本ぐらいあっても不思議ではない。
彼女はその場に座り込んで、もう一本の四葉のクローバーを探した。

「あったです!」
ラッキーだった。もう一本も、案外簡単に見つかった。
それを、ミアの髪に丁寧に編みこむ。
同じように、自分の髪にも挿し込む。
おそろいの髪飾りを手に入れた二人は、仲良く笑いあった。



「ぅぅぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!」
なぞが、野獣のような呻き声をあげる。
明るい彼女からは想像も出来ないような恐ろしい声。
しかしそれは、どこか哀しい声だった。

「ミア・・・ちゃん・・・」
なぞが目の前の少女の名を呼ぶ。
同時にミアを掴んでいた手の力が弱まり、彼女は地面に崩れ落ちた。

「なぞちゃん・・・良かった・・・元に戻って・・・」
多少首が痛むが、そんな事は関係ない。
出会って少ししか経っていないが、すでに彼女はミアにとって、かけがえのない存在なのだ。
元に戻って、本当に良かった。
安堵した彼女は、立ち尽くしているなぞに向かって、優しく手を差し伸べる。


しかし、その手が握り返されることは、無かった。

「がああぁっ!」
ミアが数メートル弾き飛ばされる。
なぞは、その少女に冷たい視線を投げかけて、一人森の中へ消えていった。




「なーんだ、結局殺さねえのか。」
東支部の建物の二階で、男が呟いた。
彼はずっと、戦いをここの窓から眺めていた。
「信じてる相手に殺られるなんてサイコーのシチュなのに、ホント残念だな〜。」
部下のレミングスが持ってきたコーヒーを受け取り、考える。
「にしても、まさかあんな力を隠し持ってるとはな・・・ゲームバランスが崩れる前に、殺すか?」
何となくレミングスの胸を指一本で貫いた。
「まあいいか。アイツのリョナり方も嫌いじゃないし、どーせ僕には勝てないんだ。」
そう言って彼はコーヒーを口に含むと、何処かに消えた。




ミアは呆然として、地面に座り込んでいた。
彼女を止める事が出来なかった無力感、
大切な友達と離れてしまった喪失感、
この先起こることに対する不安感。
様々な感情が、ミアの中で渦巻いていた。

そんな彼女に、声をかける者がいた。

「おネエ・・・ちゃん・・・ア・・・ソ・・・ボ・・・」

振り返るとそこには、カマイタチで彼女達を苦しめた少女の姿。
しかし目には生気が無く、骨を砕かれた身体は不自然に歪み、
空に浮かぶこともできずフラフラとゾンビのように歩いてくる。
そしておそらく最後の力で、風の刃を作り出そうとする。
もはやミアには、それを避けるだけの体力も、残ってはいなかった。

ザクッ

切断音が響く。


オーガの投げた円盤が、プラムの首を切り落とす音だった。
[49]投稿者:「連合東支部――激闘の幕開け 4」  麺◆dLYA3EmE 投稿日:2009/01/07(Wed) 23:59 No.124  
「ふう、これで終わりました。」
ルーファスがオーガの腕に包帯を巻き終え、告げる。

ミア、まゆこ、オーガ、ルーファスの4人は、一度武器庫に戻って、怪我の治療と休憩、そして今後の相談をする事にした。
ミアの回復魔法とルーファスの応急処置の技術により、全員ダメージは受けているものの、大事には至っていない。

互いに簡単な自己紹介を済ませた後、誰にともなくルーファスが尋ねる。
「これから、どうしますか?」
しばしの沈黙が続く。
他の誰かを探すにしても、外に出れば、何が起こるか分からない。
今の状態でプラムのような相手に出会ってしまったら・・・勝ち目は無いだろう。
かと言って室内も安全とは言えないし、助けが来るという見込みも無い。
誰一人、打開策を発見できずにいた。

そんな中で、最も年下のまゆこが呟く。
「なんか、お腹すいちゃった・・・」
太陽の位置からして、まだ昼には早いと思われるが、あれ程の戦いの後である。
「とりあえず、みんな疲れてるし、食事にしましょうか・・・」
ミアの言葉に、皆が同意した。

各々が、自分のデイパックから食料を取り出す。
だがオーガだけは、扉の方へ歩き出した。
「あの、どこへ行くんですか?」
声をかけたルーファスに、オーガは答えた。
「ん、ちょっと用を足すだけだ。お前らだけで食っててくれ。」




扉がしっかり閉まったのを確認して、オーガは歩き出した。

目の前に首を切られた少女の死体が、全裸で放置されている。
彼女の服は、オーガの提案で、包帯代わりに使うことになった。
もちろん敵とはいえ年端も行かない少女の身包みを剥がすという行為に、3人は反対したが、
他に包帯代わりになるものが見つからなかったので、やむなく同意せざるをえなかった。

少女の他の所持品は、オモチャのような杖と、人体模型のみだった。
デイパックはどこかに置いてきたらしい。
彼には二つともつまらないものに思えたが、
杖の方はミアが真っ先に回収していたので、何かすごい物かもしれない。
一方の人体模型は、誰も興味を示さず、未だに死体の隣に転がっている。

オーガはその少女を見て、食欲がそそられるのを感じながらも、その横を通り過ぎた。

女の肉は彼の好物である。しかし、今の彼には食べられない理由があった。
まず、彼女が人間であるという確証がない事。
彼が食べられるのは人間の肉のみである。
目の前の死体は、一応人間の形をしているが、生前は空を飛んでいた。
変身する魔法少女なんかが実在する以上、空を飛ぶ人間がいても不思議ではないのだが、
もしかすると精霊や忌み子、あるいは人間の姿をしたモンスターかもしれない。
そんなものを食べた日には、腹の中のものを全て吐き出してしまう。

そしてもう一つの理由は、他の3人の信頼を得るためである。
人食いを受け入れるような連中は、リョナラー連合ぐらいのものだ。
普通の人間ならば恐怖して、近付こうとはしない。
彼らには、カニバリストであることを知られてはならないのだ。
もしここで少女を食えば、死体が無くなった事に違和感を感じる者もいるだろう。
いや、それなら他のモンスターか何かの仕業に出来るからまだ良い。
最悪なのは、飲み込めずに吐き出してしまった場合だ。
人間の歯型がついた死体の隣に嘔吐物があれば、真っ先に自分が疑われる。

仕方なく彼は、別の食料を探す。
デイパックの中にはルーファスと交換した人肉があるが、
量はそれ程多くないので、出来れば非常用に確保しておきたい。

彼は、近くの地面から、人間の手を拾い上げた。
少女との戦いで切り取られた、彼自身の左手。
それを彼は、苦々しく見つめる。

彼にとって片手を失ったのは、非常に痛い。
彼が最も得意とする技は、顎の力を生かした噛み付き攻撃である。
しかし相手に噛み付くためには、まず動きを封じなければならない。
本来なら両手で押さえる所が片手になると、戦闘力の大幅な低下は免れない。

チッと舌打ちして、その肉塊に齧り付く。
さすがの彼も、自分の肉体を口に運ぶのは、これが初めてだった。
そして彼は、これが最初で最後になるように願いながら、それを味わった。







★現在の状況

【A-5:X2Y4/リョナラー連合東支部/1日目:午前】

【ミア@マジックロッド】
[状態]:戦闘と絞首等による疲労
    戦闘と他の人の回復による魔力消耗
[装備]:マジックロッド@マジックロッド
    四葉のクローバー@現実世界(頭に装備)
[道具]:デイパック、支給品一式(食料5食分)
    火薬鉄砲@現実世界←本物そっくりの発射音が鳴り火薬の臭いがするオモチャのリボルバー銃(残6発分)
     参考資料 ttp://homepage1.nifty.com/nekocame/60s70s/gindama/kamikayaku.htm
    クラシックギター@La fine di abisso(吟遊詩人が持ってそうな古い木製ギター)
[基本]:対主催、できれば誰も殺したくない
[思考・状況]
1.体力と魔力の回復
2.なぞちゃんを探す
3.巻き込まれた人を守る
4.バトルロワイヤルを止めさせる方法を探す

※早めの昼食を済ませました。
※まゆこ、オーガ、ルーファスと自己紹介しました。
※まゆこがマジックステッキで変身できる事を知りました。
※自分が変身できる事は、まだ知られていません。
※なぞちゃん捜索を最優先します。他の人に拒否されたら単独行動して探すかも。



【まゆこ@魔法少女☆まゆこちゃん】
[状態]:全身打撲(魔法で多少回復)
    戦闘と変身解除による疲労、魔力消耗
    (右腕の怪我は変身時のお約束で完治しました。たぶん)
[装備]:マジックステッキ@魔法少女☆まゆこちゃん
    宝冠「フォクテイ」@創作少女
[道具]:デイパック、支給品一式(食料5食分)
    デコイシールド@創作少女
    写真入りロケット@まじはーど
[基本]:殺し合いを止める
[思考・状況]
1.体力と魔力の回復
2.皆についていく
3.いざとなったら変身して戦う
4.でも自分より強い相手(なぞちゃんとか)には会いたくない

※早めの昼食を済ませました。
※ミア、オーガ、ルーファスと自己紹介しました。
※宝冠「フォクテイ」の効果で風によるダメージは、通常時:軽減、変身時:無効となっています。



【オーガ@リョナラークエスト】
[状態]:左手首から先が消失(魔法で応急処置・プラムの服で止血)
    戦闘による疲労
[装備]:カッパの皿@ボーパルラビット
[道具]:デイパック、支給品一式(食料3食分)
    赤い薬×3@デモノフォビア
    人肉(2食分)@リョナラークエスト
[基本]:主催者の打倒
[思考・状況]
1.疲労の回復
2.皆と一緒に行動(左手が無いので単独行動は危険と判断)
3.ルーファスの知り合いを探す
4.モヒカン、リゼとは合流したくない(出会ったら諦めて一緒に行動)
5.厳しい戦いになりそうな相手(なぞちゃんとか)には会いたくない

※切れた左手を昼食に自分で食べました。
※ミア、まゆこ、ルーファスと自己紹介しました。
※「変身」という概念と、まゆこがマジックステッキで変身できる事を知りました。
※クリスの大まかな情報を得ました。
※怪我により戦闘力が強めの一般人レベル(強さ6〜7ぐらい?)まで落ちています。



【ルーファス@SILENT DESIREシリーズ】
[状態]:右足首に裂傷(魔法で少し回復・プラムの服で止血)
    右腕負傷(骨折とか脱臼とか適当に)
    戦闘による疲労
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式(食料8食分)
    プラムの服の残り@ボーパルラビット(包帯代わりに使用)
[基本]:主催者の打倒
[思考・状況]
1.疲労の回復
2.皆と一緒に行動
3.アーシャ、エリーシア、クリスを探す
4.自分達に襲い掛かるような相手(なぞちゃんとか)には会いたくない

※早めの昼食を済ませました。
※ミア、まゆこ、オーガと自己紹介しました。
※「変身」という概念と、まゆこがマジックステッキで変身できる事を知りました。



【トゥイーティ・プラム@ボーパルラビット】
[状態]:死亡(斬首)
[装備]:なし(全裸)
[道具]:人体模型@La fine di abisso

※首と体はA-5:X2Y4に放置されています。
※置いてきたデイパックと支給品はB-4:X4Y2の辺りに散乱しています。
※装備していたマジックロッドはミアに奪われました。
※装備していた人体模型@La fine di abissoは死体の隣に転がっています。
※服はオーガとルーファスの包帯代わりになり、残りはルーファスに奪われました。




【A-5:X2Y4から少し移動(正確には不明)/森?/1日目:午前】

【なぞちゃん@アストラガロマンシー】
[状態]:健康、記憶が回復
[装備]:アイスソード@創作少女
    四葉のクローバー@現実世界(頭に装備)
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6食分)
    油性マジック『ドルバッキー(黒)』@現実世界←元ネタは油性マジックのマッキー(黒)、新品でペン先は太い
    たこ焼きx2@まじはーど(とても食欲をそそる香ばしい香りのする1ケースに8個入りの食べ物)
    クマさんクッキーx4@リョナラークエスト(可愛くて美味しそうな袋詰めクッキー)
[基本]:記憶回復によりマーダーに変化
    (記憶喪失時は対主催、皆で仲良く脱出)
[思考・状況]
1.ゲームに参加
2.ミアとの遭遇は避けたい

※現在地については次を書かれる方に任せます。
※記憶の回復により、戦闘力が大幅に上がっています(強さ16以上)。
※使い方が分かる現実世界の物は多いようです。
[50]投稿者:麺◆dLYA3EmE 投稿日:2009/01/08(Thu) 00:13 No.125  
どうも、バトロワ初参戦です。というかいきなり書き過ぎました。
なぞちゃん記憶喪失前の設定は飛躍しすぎてしまいましたがどうかご勘弁を(汗)
あと、プラムに愛のあるリョナラーの方すんません。

ちなみにリースとなよりは真東とか真北に向かったという事で。
[51]投稿者:「真紅の剣士x金色の銃士」その1 14スレ目の74◆DGrecv3w 投稿日:2009/01/10(Sat) 02:18 No.140  
「彼女、無事だといいな・・。」

森の中で一人、呟いている女性が居た。
機動性に優れた軽鎧に身を包んだ赤い髪の女性、アーシャ・リュコリスはある女性の身を案じていた。

あの時、私はあの男の凶行を止めさせようと第一歩を踏み出したばかりだった。
私の脇を払いのけるように走りぬけ、男の元へと向かった人がいたのだ。
私はその出来事に出鼻を挫かれるような形となり、一瞬行動が遅れた。
そして次の瞬間、私は彼の信じられない力を目の当たりにしていたのだ。

(悔しいけど、私一人じゃ立ち向かえそうにない・・。)

私は拳を強く握り唇をきつく締め、あの場であの男に立ち向かうことを諦めたのだ。
今にして思えば、あの人物は冷静さを欠いた私に身をもって警告をしてくれたのかもしれない。
すれ違いざまの微かな残り香や気配から、あの人物が女性であることは分かっている。
私は名前も顔も知らない彼女の身を案じていた。

(・・って、案じてばかりじゃダメだよね。よし、頑張ろう!)

彼女のためにも、私は何とかしてこの狂ったゲームを止めさせねばならない。
私はとりあえず切り株に腰掛け、今後の行動を考えるためにバッグの中身を確認してみることにした。

「十字架だ・・。」
首から提げられるような細い鎖の付いた十字架が出てきた。
(何か縁起が良さそうだから、持っておこうかな。)
私は何となく首に提げ、服の中に十字架をしまっておいた。

「そういえば、参加者名簿が入ってるとか言ってたっけ・・。」
そう思ってバッグから名簿を探そうとした矢先のことだった。

「このぉぉー!!離しなさいよー!!」

突然、北の方から叫び声がした。声質から言って若い女性のようだ。

(何だろう?兎に角、行ってみよう!)

私は素早く立ち上がり、声がした方向へ走り出した。

「なっ!?」
「蔓の分際で生意気よ!!離しなさい!!コラー!!」

森を抜けた私の目に飛び込んできた物は、
生きているかのようにうねる蔓の群れと、その群れに罵声を浴びせる少女の姿だった。
修道着に身を包んだ彼女は小太刀を振り回して抵抗しているが、ずりずりと草むらの奥へと引きずり込まれていた。

「今助ける!・・くっ!!」

私は彼女の元へと駆け寄ろうと草むらへと踏み入れたが、そこで別の蔓の群れに行く手を塞がれてしまった。
恐らくこの蔓は、この草むら一帯を支配している魔物の物なのだろう。
一刻も早く助けなくては彼女の生命に関わる。引きずり込まれている先には恐らく本体があるはずだからだ。

(・・こんな所で、足止めを食ってる暇なんてない!)

「邪魔をしないで!ファイアボール!」

私は火球を前方へと打ち出す。読み通り、蔓はあっという間に燃え尽きた。

「くっ、数が多すぎる!!」

燃え尽きた蔓を埋めるように次々と新しい蔓が行く手を塞ぐ。
このままでは下手に前進したら最期、辿り付く前に私も餌食になってしまうかもしれない。

「それなら!バードショット!」

私は前方に沢山の小さな火球をばら撒く。やはり、炎への耐性は低いらしい。
小さな火球でも蔓の群れを一度に燃やし尽くすには十分な威力だった。

(これなら行ける!・・・今助けるからね!)

私は彼女の後を追ってバードショットを撃ちながら前進した。

「・・・居た!」
「えぇい!!・・痛っ!!」

やっとの思いで彼女の元へと辿りついた時、彼女は手にしていた小太刀を蔓に叩き落とされている所だった。

「その子を離しなさい!ファイアボール!」

私は彼女に絡みついている蔓に向けて火球を打ち出す。
そして、縛めが解かれて地面に尻餅をつく彼女に駆け寄った。

「大丈夫?怪我はなかった?」
「いたたた・・・・えっ?うん、大丈夫。」

外から見た感じでは大きな怪我はないようだ。
彼女はふらりと立ち上がり、叩き落とされた小太刀の方へと歩きだした。
その時、別の蔓が彼女を狙って伸びているのが見えた。

「危ない!」

私は咄嗟に彼女に飛び掛って抱き込むと、そのまま蔓の攻撃を転がってかわす。
その先にあった彼女の小太刀を拾い、振り上げて向かってきた蔓を斬り落とした。

「ふぅー、危機一髪って感じだったね。・・・あっ、これ。大事な物なんでしょ?」

私は彼女を降ろして、小太刀を差し出した。

「あっ・・ありがとう。」

彼女は何故か一瞬躊躇った様子を見せたが、小太刀を受け取った。

「・・お姉ちゃん。」
「アーシャでいいよ。えっと・・」
「エルでいい。・・アーシャお姉ちゃんは、その・・。」

エルと名乗った彼女は、伏せ目がちに問いかけてようとしてきた。
私には何を聞こうとしているのか、すぐに分かった。

「・・私は、こんなの間違ってると思ってるよ。だから、安心して。エル。」
「・・・分かった。」

私の答えに安心したのか、彼女は笑顔で答えた。
こんないたいけな少女まで狂った”ゲーム”に巻き込むなんて、あの男はやはり危険だ。
何とかして止めさせなければと、私は改めて胸に誓っていた。

「誓いを立ててる途中、悪いんだけど・・。」
「んっ?」
「あたし達、囲まれちゃってるよ。」
「・・・そうだね。」

よく見ると燃え尽きた蔓や斬り裂かれた蔓が再生している。
私を警戒しているのか、はたまた仲間の蔓の再生を待っているのか。
蔓の群れは私達を囲んでじりじりと距離を詰めてきていた。

「うーん、一難去ってまた一難って奴だね・・。」
「お姉ちゃん・・。」
「大丈夫!エルは私が守ってみせるよ!」

不安そうな目で私を見る彼女に対して、私は胸を張って明るく答えてみせた。
その時、首元のアクセサリーの存在に気付き私はあることを思いつく。

「・・・はい、これあげるよ。」
「!?・・これは?」
「お守りだよ。」

彼女はサイズは合ってないが修道着に身を包んでいる。
十字架のアクセサリーは今の彼女にぴったりなアイテムのはずだ。

「・・いらない。あたし、神様信じてないもん。」

修道着姿の彼女は、私の意に反して背信的発言をする。
しかし、私にはその様子は照れているようにしか見えなかった。

「そんな格好してそんなこと言っちゃダメでしょ〜・・。兎に角、持ってて!」
「ちょ、ちょっと!」

私は有無を言わさず彼女の首に十字架を提げた。
彼女は観念したのか、恨めしそうな目で私をじーっと見つめるだけだった。

「・・来るよ!お姉ちゃん!」

突然、彼女が血相を変えて叫ぶ。
その次の瞬間、私は嫌な気配を足元から感じ彼女を抱き抱えて素早く飛びのいた。
少し遅れていつの間にか地中を移動していた蔓が、私の足元から飛び出してきた。
そして、その攻撃を皮切りに周囲を固めていた蔓が一斉に襲い掛かってきた。

「このぉ!ファイアボール!」
彼女を抱きかかえたまま、右腕で地面から突き出してきた蔓に火球を放つ。
火球は蔓に命中し、焼き尽くした。

「・・お姉ちゃん、魔法使えるの?」
「えっ?・・うん、使えるよ。」
「そう・・。」

彼女は魔法を見たことがないのか、驚いたような表情で私を見ていた。
しかし、ファイアボールは魔法の中でも基本的な魔法だ。
魔法の存在を知っているならば、何処かで見ていても不思議ではないはずだ。

(・・・とりあえず、今はこの場を何とかしよう。)

私は彼女の反応に若干の違和感を抱きつつもこの場を切り抜ける方法を考える。

(考える・・って言ってもこういう時はやっぱり、集中砲火しかないよね。)

敵に周囲を囲まれた場合、敵陣の最も薄い場所に火力を集中して突破するのは常套手段だ。
この蔓を操る魔物がこの草むらのどの辺りまで支配しているのか分からない以上、来た道を引き返えすのが確実そうだ。

(だけど、この状況じゃちょっと厳しいかも・・。)

私は此処に至るまでに魔力を少し使いすぎている。
彼女を抱いて走る分、集中砲火で脱出するにはかなりの魔力を消費するだろう。
下手をすると抜けきる前に魔力が底を尽きる可能性もある。
彼女が持っている小太刀が使えれば何とかできるかもしれないが、それでは彼女を抱き抱えて行けない。
彼女を守りながらでは、流石に小太刀があっても此処を突破する自信はない。

(かと言ってこのまま、攻撃を避け続けるにも限界があるし・・どうする!私!)

「・・・これ持って、あたしを置いて行ってもいいよ。」
「!?」

私の葛藤を見抜いたのか、彼女は自ら犠牲となる道を選び小太刀を手渡そうとしてきた。
私だけでも逃がそうというつもりなのだろう、その気持ちは本当に嬉しかった。

(・・だけど、それなら尚更、見捨ててなんか行けない!)

私はそんな優しい心を持った人を見捨ててまで生き延びたくはない。
彼女には本当に悪いが、これだけは譲れない。

「そんなことしないよ!エルは、私の命に代えても・・守ってみせる!」
「・・・。」
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