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リョナゲ・製作所バトルロワイアル 本編投下スレ その4

[1]投稿者:「夢」其の四◇ルシフェルのパーフェクト***教室  @間取り 投稿日:2009/07/05(Sun) 22:36 No.358  
 「はあ・・・・はあ・・・・」


 奈々はとっさには状況を把握できなかった。
 ルシフェルの振り下ろした刀が自分を二つに裂いたものだと思っていた。


 振り下ろされたルシフェルの刀は奈々の陰裂に少し食い込むような形で“止まって”いた。刃がその部分の、薄くて脆弱な皮膚に触れてはいるものの傷は1ミリたりとも刻まれてはいない。金属のひやりとした感触だけが僅かに伝わってくる。
 

「ふっ・・・ふうっ・・・」
 奈々の息が引きつる。もはや喉の痛みさえもすっかり忘れていた。
 その顔面はすでに、涙や鼻水によってぐしゃぐしゃになっている。

 なぜ?なぜ止めた?何のつもりで?もう分からない・・・何も・・・何も・・・?


ルシフェルの刀がすう、と手前に引かれる。刃が肌の上すれすれを滑る。肌を傷つけずに、鉄の感触だけを伝えながら。それでも奈々の心を刻むには十分だった。

「ひぃっ」

奈々は悲壮な悲鳴を上げた。

「やら・・・やらぁ・・・いらいことひないでぇ」

 ぷしゅっ

 膀胱筋が弛緩し、尿が一気に噴水のように溢れ出す。それは奈々の体や頭をつたい、重力のなされるがままになった髪の先から、雫となって地面へとぽたぽたと落ちる。

 
 移動していたルシフェルの刀の切っ先が、歳の割には幼く、陰毛の一つも生えていない奈々の陰裂のラインが消えるか消えないかの位置で、ピタリと止まった。
そして、そこでようやくつぷりと刀の切っ先が奈々の皮膚へと侵入する。びくんと奈々の体が反応するが、そのものは大した傷ではない。刀の進入は皮膚をわずかに通過したところで止められた。
 そしてその深さを保ったまま、刀は下へ――位置的には奈々の臍の方へと滑ってゆく。

 「いあ・・・がっ・・・」
 点では大した痛みではなくとも。線になればそれはたちまちに増加する。
 痛みとともに奈々のなめらかで白い皮膚に赤いラインが刻まれてゆく。
 刀は臍を超えた後、腹と胸の中心をすべり、鎖骨の合わせ目を少し通過したところで止められた。

 何?何を?・・・何をするつもり――
 それを考えた事を、考えてしまった事を後悔する。
 巨人の衣服のわき腹部分にあたる場所に貼り付けられた、やけに新鮮な“それ”に目がいく。

 「ああ・・・・・ひあああ・・・・!」それが意味する事実は何か。
 いっそ一撃で殺されていたほうがずっとマシだった。


 ルシフェルはたった今刻んだラインから、奈々の皮膚と肉の間へとずるりと刀を滑り込ませる。ねちょねちょと肉を引き剥がす嫌な音がする。

 「うぎ・・・がっ・・・!」

 最悪の予想が、現実のものとなる。

 刃が完全に皮膚の直下へともぐりこむ。外からでも刀の輪郭が見て取れる。
それが先程とは逆の、今度は上に向かってゆっくりと進み始めた・・・。
 線が、ついに面となる。


 「げあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 想像を絶する苦痛が奈々の脳を焼いた。思考が一気に四散する。

 刀は慎重に皮膚の下をすべり、奈々の薄い乳房を、滑らかな腹部の白い肌を、魚をおろすようにゆっくりと肉から剥がしとってゆく。丁寧に、間違ってもこの美しい品物に傷を付けないように。
 
 地獄の激痛は、ついに奈々の意識を奪う。しかしその次の瞬間には、その苦痛が反対に彼女の意識を覚醒させる。それが幾度となく繰り返された。

 体の前面の皮膚が左右ともに剥がし終わる。だらりと皮膚垂れ下がり、僅かな脂肪の乗った赤い肉をさらけだす。

 「ガハッ・・・カッ・・・いぎぃっ・・・!」赤熱した刃物で体を刻まれ続けるような恐ろしいほどの苦痛。しかしそれから逃れる術はない。

ルシフェルは、続けて背中側に取り掛かった。張りのある背中の筋肉から、そして控えめな尻の脂肪から、慎重に皮だけを分離させる。
背中をはがし終えると、次は性器に取り掛かる。ルシフェルはその図体に似合わぬ器用さで、ことに薄くて複雑なひだの一つ一つを丁寧に肉から剥離させてゆく。
奈々の誰にも触れされた事のない大切な部分は完全に破壊され、陰核がむき出しになり、かつて大陰唇を構成していただいだい色の脂肪と、あとは幾つかの穴が残されるのみの無残な姿となりはてた。
そして最後に、木の枝のように細い両の脚の、透き通るような肌を剥がし取られた。


 そしてついにねちょりと音をたてて、手の部分を除いて、人型をした皮膚が奈々の肉体から離れた。
 奈々に残された皮膚はもはや、頭部と、足の先を残すのみとなってしまった。

 「ギアエエエエエエエエエ!!!エゲッ・・・グギアエエエエアアアアアアア!!!」

 喉の奥から溢れ出す音はもはや人のものとは思えない。

 
 ルシフェルはというと、剥がし終えた皮膚を片手で掲げてぼんやりと眺めていた。
かとおもうと、おもむろに地面に転がしておいた斧を反対の手にとって、それを周囲の木々や色々なものにでたらめに叩きつけ始めた。
 それはおそらく喜悦を表す行動だと推測されるが、本当のところはよく分からない。
 
 やがてその奇妙なダンスを終えるとルシフェルは斧を捨て、自分に被せられた黄土の “衣服”を乱暴に掴んで、頭の部分だけをベリベリと引きちぎった。

 露になったその頭部は人間の、いや生物のものと考えることすらためらわれるものだった。
 その表面にボコボコと幾つかの歪な組織を認められるが、それらが何の役割を持った器官なのか、またそれらが果たして一般的な生物のそれと通じるところがある器官なのか、それを推測することは全くといっていいほど不可能だと思われた。

 そしてその頭部から、おぞましい呪文のような“声”が発せられた。その頭部のどこから発しているのか、それすら分からない。その鼓膜をヤスリで削るような不快な声を、他の何かで形容するのは極めて困難であろう。

 ルシフェルはその呪文をしばらくの間ぶつくさと呟いたあと、収穫した人皮をその辺の木に洗濯物のように引っ掛けておいて、再び奈々の元へと戻った。
 そして奈々の足と足の間のスペースにその頭部を潜らせた後に、頭部にある一部の器官から奇妙な液体を分泌させ始めた。
 その粘性の強い液体は、奈々の股目掛けて、ボタボタと垂らされ始めた。

 「あ・・・っがっ・・・・!??!げべっ・・・・ばっ・・・!!!」
 その液体が剥き出しの肉体に触れた瞬間、奈々の背筋が即座に収縮して、体全体が海老のように捩れた。それは反射というよりは、もはや痙攣に近かった。
 

 異界の魔物の体液は、大抵は毒であったり酸であったり、とにかく劇薬の類である事が多い。ルシフェルの垂らした正体不明の体液も、例にもれずその一種であった。
 しかし、それは毒のように命を蝕むようなものでもなく、酸のようにあらゆるものを腐食されるほどのものでもない。

 それはただ、刺激を与えるだけの液体だった。刺激といっても、それは青トウガラシを数百万倍にも濃縮したような強烈なものである。皮膚に触れればたちまち激しい痛みと炎症を伴い、痛みが退いた後にも100日ばかりは痒みが続き、もし目にでも入ろうものならたちどころに光を失うこととなるだろう。
 それが、その尋常ならざる苦痛を伴う液体が、皮膚を失った肉へと直接、次から次へととめどなく流され続ける。
液体はまず丸裸にされた奈々の肉芽を焼き、穴という穴へと侵入して尿道と膀胱を、膣と子宮を、肛門と直腸を、外から内から焦がし続ける。

「お・・・おげごっ・・・ばっ・・・・がぎぎげ・・・がげがっ・・・!?」

 ストロボのように意識の消滅と覚醒とが瞬時に繰り返される。もはや奈々は人として思考する権利すら奪われ、ただ炎熱のような激痛を味わうだけの人形と化した。

「あっ・・・!あべっ・・・ばっ・・・!げっ・・・げげっ・・・げっ・・・!!!」やがて彼女の咽は自らの叫び声によって完全に潰され、ひゅーひゅーと咽から空気の音が無為に漏れ出るのみとなった。

 続いてルシフェルは自分の両手に液体をたっぷりと塗りたくると、奈々の全身へと刷り込むように擦り付ける。この液体には血管を収縮させる効果もあり、皮膚を剥いだ事による全身からの出血はこれで止まった。
 たっぷりと劇薬を奈々の全身に塗りたくったルシフェルは、それで満足したようだった。

それから思い立ったように先程はがしたばかりの生皮を手に取ると、それにこびり付いた脂肪を刀の峰側でごりごりとこそぎ落とした。次に、先程奈々を恐怖へと陥れた人間の頭の形をした『容器』にたまった液体――おそらくこの哀れな犠牲者の脳髄を溶いたもの――をすくいとり、皮の裏側にべたべたと塗りたくった。いわゆる“なめし”の作業である。
あとは適当に広げて、そこらの木に楔のようなもので貼り付けて乾かすだけとなった。


もはやルシフェルに奈々を殺すつもりは毛頭なく、彼は皮が乾ききるまでの間、陸に打ち上げられたばかりの魚類のように全身を振るわせるY字型の肉塊をぼんやりと眺めていた。バックグラウンドミュージックのように、うざったらしい放送が空から響いてきた。

 
 奈々にはもはや思考する余裕すら残されてはいない。だが彼女の脳内ではかろうじて一つの単語だけが廻り続けていた・・・・・。

 オネエチャンタスケテオネエチャンタスケテオネエチャンタスケテオネエチャンタスケテオネエチャンタスケテオネエチャンタスケテオネエチャンタスケテオネエチャンタスケテオネエチャンタスケテオネエチャンタスケテオネエチャンタスケテオネエチャンタスケテオネエチャンタスケテオネエチャンタスケテオネエチャンタスケテオネエチャン……
[2]投稿者:「夢」其の五  @間取り 投稿日:2009/07/05(Sun) 22:37 No.359  
【E−4:X4Y2/森/1日目:昼】

【天崎奈々{あまさき なな}@BlankBlood】
[状態]:声帯が完全に麻痺、
アバラ三本骨折、歯を全て損失、頭と足先以外の部分の全ての皮膚を損失(ルシフェルの体液で止血)、両腕損失(根元を布で止血)、全身にルシフェルの体液による激痛、多量の失血(頭を下にしてあるので意識ははっきりしている)
木の枝に蔦でY字型に吊り下げられている。
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考・状況]
1.オネエチャンタスケテ

※当分の間は絶命する事はないと思われます(外的要因除く)。


【ルシフェル@デモノフォビア】
[状態]:軽い火傷
[装備]:ルシフェルの斧@デモノフォビア
ルシフェルの刀@デモノフォビア
早栗の生皮(わき腹につけた)
奈々の生皮(乾かし中)
[道具]:デイパック、支給品一式(奈々から奪った分)
バッハの肖像画@La fine di abisso(音楽室に飾ってありそうなヤツ)
弾丸x10@現実世界(拳銃系アイテムに装填可能、内1発は不発弾、但し撃ってみるまで分からない)
[基本]:とりあえずめについたらころす
[思考・状況]
1. 生皮が乾くまで待機
2.ころす
3.ころす

※もう奈々を殺す気はありません
※早栗を殺した位置からはかなり離れています

※ルシフェルの頭部についての補足。
見ただけで吐き気を催すような異様な形状をしています。実在する生物との共通点は一切見当たりません。
皮交換のとき以外は極力隠します。ハズカチイ
頭部から分泌するご都合主義的液体は、出すまでに時間がかかるうえ、粘性が高く、すぐ乾燥するので、撒き散らして目潰し等の武器には使えません(少なくとも相手を拘束しないと役に立たない)。

【C-3:X4Y1/平地/1日目:昼】

【天崎涼子@BlankBlood(仮)】
[状態]:健康
[装備]:アーシャの剣@SILENTDESIREシリーズ
[道具]:デイパック、支給品一式(伊織、萩の分も)
    エリーシアの剣@SILENTDESIREシリーズ(リゼ→萩→涼子)
    防犯用カラーボール(赤)x1@現実世界(1個使用)
    ライトノベル@一日巫女
    怪しい本@怪盗少女
    カザネの髪留め@まじはーど
    銘酒「千夜一夜」@○○少女、
    眼力拡大目薬×3@リョナラークエスト
[基本]:一人で行動したい。我が身に降りかかる火の粉は払う。結構気まぐれ。
    でも目の前で人が死ぬと後味が悪いから守る。
[思考・状況]
1.サーディの首飾りを探す、ついでにお宝も探す
2.サーディはたぶん守る
3.一段落ついたら、奈々を探してみる



【サーディ@アストラガロマンシー】
[状態]:体力消耗
[装備]:ルカの双刀@ボーパルラビット
    競技用ボウガン@現実世界(正式名:MC-1、矢2本、射程30m程度)
[道具]:デイパック、支給品一式(消耗品は略奪して多めに確保)
[基本]:嗜虐心を満たすために殺す(マーダー)
[思考・状況]
1.運命の首飾りを探す、持ち主を殺してでも奪い取る
2.入手後、涼子と殺し合う
3.その後は考えてない
[3]投稿者:あとがき  @間取り 投稿日:2009/07/05(Sun) 22:37 No.360  
すごく
ういてる
きがする
[4]投稿者:「お探し大作戦!?」 14スレ目の74◆DGrecv3w 投稿日:2009/07/06(Mon) 15:51 No.362  
「やーっと、着いたわぁー・・・。」

えびげんは商店街の入口に立って大きく伸びをした。
それから首と両肩をゆっくり回して関節を軽く鳴らすと、大きな溜め息をついた。

「『着れそうな服を取って来い』って、言われてもねぇ・・・。」

重い足取りで商店街に踏み入ってまた溜め息をつく。

「私・・・服を選ぶのって初めてよ・・・?」

えびげんは物心付いた頃から兵器弄りが大好きで、兵器以外の事柄には全くといっていいほど興味がなかった。
なので、服は軍から支給された物か、身内や知人から貰った物を着ていて、自分で服を選んだ記憶はなかった。

「しかも他人の、あんな子の着る服を選ぶなんて・・・。」

えびげんは、あの子は自分と違って服に五月蝿いだろうと直感していた。
今まで他人から貰った物を特に考えもせず着ていた自分に、そんな彼女が満足するような物を選べるワケがない。
えびげんは彼女の顔を思い浮かべ大きく溜め息をつく。

「・・・もう、どうなっても知らないからねっ。」

えびげんはその場の勢いで服選びを承諾してしまったことを後悔しつつ、商店街の探索を開始した。

〜〜〜〜

(あぁー、面倒だなぁー・・・。)

えびげんはフラフラと商店街を歩きながら、何度目か分からない溜め息をつく。

(頑張ったら報酬がナイフからショットガンになるなら、意地でも探そうって気にもなるのになぁ・・・。)

確かにナイフだって報酬として魅力がないワケではないが、やはりショットガンの魅力には敵わなかった。
しかし、彼女の性格や現況を考えると、例えどんなに頑張っても報酬がショットガンに変わる可能性はないだろう。

(・・・”いんせんてぃぶ”の力って偉大なのねー・・・。)

えびげんは、頑張りに応じて追加報酬が出る制度の有難味を噛み締めながら探索を続けた。
それから暫くが立ち、えびげんはようやく服がありそうな建物を見つけた。
えびげんは建物の入口に立ち、傍らに立てかけてある看板の文字を目で追う。

「えーっと・・・『洋服屋、YOU FUCK』・・・・・・。」

えびげんは看板をつい音読してしまったことを激しく後悔し、その場に崩れ落ちた。
えびげんはフラリと起き上がると、湧き上がるやるせなさと悔しさを晴らすために看板を払うよう回し蹴りを浴びせた。

「・・・必ずぶちのめしてやるから、覚悟なさいっ! ハデ夫ぉぉぉっ!」

えびげんは断末魔の叫びとも思える音を響かせ、地面を勢いよく転がっていく看板を尻目に叫ぶ。
それから目の前のガラス張りの扉を蹴破って建物へと入った。

〜〜〜〜

「・・・と、どんな服を持っていったらいいのだろう。」

いくら追加報酬が期待できないとはいえ、もう一度行ってこいと言われるのだけは避けたい。
そう思ったえびげんは入口奥にあった”女性服売り場”と書かれた一角で佇み、首を捻った。

(うーん・・・やっぱり、動物の絵が入った服とか動物柄の服がいいのかな?)

えびげんは服装の参考にするため、前に一度だけ資料室で見た市民生活の記録映像を思い出していた。
そこでは女性は動物の柄や絵が入った服を、当たり前のように着ていた。
ただ、着ていた女性の年齢が少し高かった記憶もあるので、あの子にも当てはまるかの自信はない。
しかし、服装に関しての知識がないえびげんは、この記憶に賭けるしかなかった。

「・・・動物っぽいのといえば、これね。」

えびげんは豹柄のワンピースを手にとった。
えびげんは彼女の背丈を思い出し、少し大きいかもしれないが着れないワケではないと判断してデイパックへと入れた。
次の候補を選ぼうと思った矢先、隣に置いてあった白黒の服が目に留まる。
えびげんはその服を手にとって広げてみた。

「・・・パンダのきぐるみ・・・ねぇ・・・。」

その服は紛れもなく、子供向けのパンダのきぐるみだった。
ふさふさの布地は触ってて少し気持ち良いし、フードには耳のような物もついている。
なんとなく触り心地が気に入ったえびげんは、一応持っていくことにした。

(さて・・・豹にパンダと来たら・・・クマね。)

何故そういう結論へ辿りついたのか、えびげん自身にもよく分からなかった。
しかし、考えなおすのも面倒だと思ったえびげんは、クマの絵が入っている服を探した。

「・・・っと、あったあった♪」

えびげんはクマが鮭を咥えている絵が描かれたティーシャツと、赤いサスペンダースカートのセットをデイパックへと入れた。
えびげんが踵を返し、店を去ろうとした時、店内の吊り下げ広告が目に留まった。

「・・・『女の子に人気の2着はこちらです!』ですって?」

此処が普通の洋服屋ならば、その謳い文句を信じることもできただろう。
しかし、此処はあのハデ夫の用意した建物である。
正直、全く信用できない謳い文句だ。

(・・・でも、ちょっと気になるわね。)

広告の矢印が指している場所が出入り口に近い場所だったので、えびげんは去り際に横目で一瞥していくことにした。

「・・・・・・はっ?」

そこには極々普通のドレスとビキニのような軽装の鎧が置いてあるだけだった。
どんな突っ込みがいのある物が置いてあるのかと期待していたが、この2着はえびげんの期待に副える物ではなかった。
暫く唖然として佇んでいたえびげんは、首を激しく振って我に返ると大きな溜め息をついた。

「・・・一応、持っていこう。」

えびげんは全身の力が抜けていく感覚を覚えながら、その2着をデイパックに放り込んだ。

〜〜〜〜

それからえびげんは、もう一つの、本来の目的を果たすため商店街の探索を続けていた。

「・・・あったわっ!」

えびげんはようやく見つけた目的地へと駆け寄る。
そして、傍らに立てかけてある看板に目を通した。

(『ガンショップ、鴈爺さんと癌』・・・? 此処までくるともはや意味不明ね。・・・でも、まぁいいわ。)

相変わらずセンスのない看板を脇目に、えびげんは意気揚々と建物へと入った。

「・・・うわあああああぁぁああああーーっ!!」

えびげんが入るなり、その視界いっぱいに様々な銃器が広がった。
えびげんはその光景を見てつい、感情のままに叫んでしまった。

(模型だらけだけど・・・最高の空間だわぁぁーっ♪)

所狭しと並べられた銃器の殆どがひと目で模型と分かる物であった。
しかし、模型とは言え見た目は全て銃器である。
実際に触って撃つのと同じぐらい、飾って眺めているのも大好きなえびげんにとって、この空間はまさに楽園であった。

「きゃあああーっ! ボーチャードピストルよーっ! レプリカだけど触れるなんて夢みたいー♪」

えびげんは本来の目的も忘れ、目に付いた模型を手にとってはクルクルと回したり、構えてみたりして堪能していた。
その時である。
えびげんは一番奥にたった1丁、周りとは明らかに違う雰囲気を持った銃を見つけて立ち止まった。

「・・・これ・・・本物・・・じゃないの・・・!?」

えびげんは興奮で震える手をゆっくり伸ばし、その銃に触れてみた。
触れた指先から伝わってきたのは、今まで散々触ってきた模型の持つ暖かみではない。
本物の銃だけが持つことを許された、あの独特の冷たさだった。

(間違いない・・・本物の・・・ボルトアクション式小銃よ・・・!!)

えびげんは生唾を飲み込み、それを手元に引き寄せ構えてみる。
模型では味わえなかった重みを全身で受け、えびげんの心が狂喜乱舞する。
えびげんは体温がぐんぐん上昇していくのを感じながら、構えを解いた。

(しかもこれ・・・資料でしかみたことがない・・・三八式歩兵銃だわ・・・!!)

えびげんは意外な所で見つけた小銃の、内部構造が気になって仕方なくなった。
えびげんはその場で座り込むと、メイド服に常に忍ばせてある銃器整備道具を広げた。

「ふっふっふっ・・・さぁー・・・ぜーんぶ、見せてもらうわよぉー・・・。」

えびげんは小銃を目の前に横たわらせると、鼻息荒く分解しはじめた・・・。

【A−2:X4Y2 / 商店街 / 1日目:午前】

【えびげん@えびげん】
[状態]:健康
[装備]:三八式歩兵銃+スコープ(残弾5発、肩掛け用のベルト付き)@現実世界(現在分解中)
メイド服@えびげん
[道具]:デイパック、支給品一式
髪飾り@DEMONOPHOBIA
エルデクーヘンx3@創作少女
魔封じの呪印@リョナラークエスト
パンダのきぐるみ@現実世界
豹柄ワンピース@現実世界
クマさんティーシャツ&サスペンダースカート(赤)@現実世界
ウェディングドレス(黒)@現実世界
ビキニアーマー@現実世界(コスプレ用のため防御力皆無)
[基本]:ハデ夫をぶちのめしたい
[思考・状況]
1.小銃分解して内部構造とか色々と調べたい
2.お使いとかどうでもいい、今は小銃を分解したい
3.ショットガンは惜しいけど、今は小銃を分解したい
4.ハデ夫はぶちのめしたいけど、今は小z(ry

@後書き
あれ? 全然、ロワしてない・・・。orz
[5]投稿者:『リョナラーズバトル リョナラーにも被害者にもなる少女Ep1』19スレの1◆eFkq.CTY 投稿日:2009/07/20(Mon) 00:34 No.364  
〔Ep1 やっと起きた少年〕

「いつつ……一体何が起こりやがったんだ……?」

頭の中が打楽器を乱打したようにぐわんぐわんと響き、
突き刺すような痛みが襲う中、
リョナたろうはゆっくりと体を起こした。

「確か……薄手の服着た女と殺りあって……
飛び掛ったら横っ腹に強い衝撃が……あーその先はわかんねぇな……」

頭痛のせいか、考えが上手くまとまらない。

「しかし……何で俺は生きてんだ?」

戦闘の途中で気絶したんだから、
当然のことあの女に殺されてしまった筈。

だが、こうして俺は目を覚ました。
体にも少しばかりの痛みはあるようだが
致命的な傷はどこにも見当たらない。

「……つまりは見逃したってことか。
はっ! 何処まで甘ちゃんなんだかな……」

リョナたろうは吐き捨てるように
自分と戦った女、桜と、そして自分を嘲笑う。

殺し合いというゲームの中で、殺さずを通そうとする少女と
そんな少女に生かされてしまった自分を自嘲するかのように……

「まぁ何にせよ、生きてたんだ。
それだったらやることは一つだよなぁ?」

当初の目的、トカゲと一緒に行動して
リゼ達を探しながら、手頃な女をリョナってやることを……

「ってオイ。トカゲ何処行ったよ? ……いや、いるわ。
寝こけてやがるけど」

俺が気絶してたにも関わらず、視線の先のトカゲは
鼻ちょうちんを膨らませながらすやすやと寝入っていた。

「……ちっ、俺に女以外を叩き起こせってのか?
……いや、こいつもそれなりにダメージがあるみたいだから
このまま放っておくか」

普段、寝ている相手が女かリゼなら何の躊躇いもなく
殴って起こしたはずだが、今は自分の生死も大きく関わってくる
ゲームに身を投じている訳だから、必要な戦力を
無下に摘み取ることも避けたいところだ。

俺自身も少しばかりダメージがある。
叶う限りは動かずにいて体力の回復を図る方が得策だ。

「おk。多少ポリシーとは異なるがこれが一番だな。
さて……トカゲが寝てる内にこいつのデイパックから
ファイト一発を抜き取っておくか……」

はっきり言って、あの強壮剤を有効に扱えるのは俺や
東支部の連中だけだろうから、
くすねたとしてもこいつは怒りはしないだろう。

ごそごそ……

「あ? 何だ? ビンらしき感触なんてどこにもねーぞ?」

トカゲのすぐそばに落ちていたデイパックに
手を突っ込んでファイト一発を探すが、それらしきものはなく、
何か金属質の固いものの感触がちらついた。

不審に思ったリョナたろうは思い切ってその物体を取り出す。
すると、何やら金属質の箱に猫のひげが生えたようなものが顔を覗かせた。

「……こんなモン持ってたかこいつ……?
ってことはオイ? あの女デイパックをすり替えて行きやがったのかYO!?」

なんてこった! 唯一の回復アイテムが
こんな用途も分からない代物に変えられてしまうとは……

「ちっきしょう!!」

ムカっ腹の立ったリョナたろうは手に取った箱を乱暴に放り投げた。

がしゃっ! ピピピピピピ……!

「あ? 何だこの音……?」

放った箱の目盛りらしき箇所が急に光り出し、奇怪な音を鳴らす。

ざんっ! ざんっ!! ざんっ!!!

「!?」

急に辺りの木がへし折れん程の撓る音を放ち、
それは真っ直ぐこちらに物凄い速さで近づいてくる。

(……敵かっ!?)

リョナたろうは音の先に全神経を集中させ、
いつでも撃ち落とせるよう魔弾を撃ち出す準備を整えた。

ざんっ!!!

数メートル先の木の枝が激しく揺れ、
人影が天高く飛び上がって太陽と重なる。
そして寸分狂うことなくこちらに向かって下降をし始めた。

(今だ! 叩き落して……いっ!?)

人影はいきなり視界から消え去ってしまい、
撃ち出そうとした魔弾が手からすっぽ抜けてしまう。

どがぁっ!!

魔弾は向かいの木にぶつかって
一際大きい爆風を巻き起こしたが
リョナたろうは消えてしまった人影を追い、
辺りを見回していた。

ひた……

「ぐっ!?」

首元に何か尖ったものが張ってくる。

「……なんだ。男だったの……」

木の後ろから女の落胆の声がしてくる。
どうやら首に突きつけられたものは、
先程見失った人影の爪のようだ。

「だ、誰だてめぇ……!」
「……ふぅん。随分ふてぶてしい態度してるのね……
貴方の生殺与奪は今私が握っているというのに……」

ぞり……ぞりぞりぞり………

「ぎっ……!?」

頚動脈近くを爪で深く引っ掻かれる。

リョナたろうはその痛覚と状況から冷や汗が出てくる。
まるで、いつも痛めつけている相手と自分の立場が
全く逆になったように思えたからだ。

「くっ……!」

リョナたろうは生存を優先するため、
この場はあえて抵抗を止め、静止した。

この声の主は口調から俺と同じ人種と推測されるが、
駆け引きの様な言葉もちらついているので
交渉の余地はありそうだと判断したための行動だ。

「そう……大人しくしていれば、
男の貴方を殺そうなんてしないわ……」

すっ……

首元を這っていた爪が静かに離れていく。

「っだはぁ……! 危うく俺がリョナられるところだったぜ……
……アンタ、いったい何者……あ?」

リョナたろうは少し肩を落として安堵のため息を漏らすが、
すぐさま声の主の姿を確認しようと後ろを振り向いた。

しかし、声の主の姿を見た途端リョナたろうは言葉を失う。
なぜならそこに立っていたのは、
リゼと同じかそれより下くらいの歳の容姿をした少女だったからだ。

しかし、容姿とは裏腹に
赤く染め上がる際どいラインの布衣装に身を包み、
不敵に笑っている雰囲気は、先ほどリョナたろうが推測したとおり
このゲームに載っている人物と解釈が取れる。

「……俺に何の用だ? アンタの口振りじゃ男に用はないんだろ?」
「えぇ、確かに最優先の目的に男は必要ないんだけど……
貴方から情報を頂きたいのよ……」
「情報だと?」
「私が飛ばされた先からここまで、誰とも会わなかった。
だから、貴方が今までに会った獲物の情報をよこしなさい」
「……嫌だと言ったら?」
「殺すわ。拒否されたら何の進展もないものだからね」

殺すと口にした少女の瞳が、まるで小動物を狩る鷹のような瞳に変わる。
そして幼い体に不釣り合いなほどの威圧感が放たれ、
リョナたろうは気圧されてしまいそうになる。

(ち……! サーチしとくか……)

リョナたろうは今後のこの少女への対応の仕方も考慮し、
サーチで強さの確認を始めだした。

(……14〜18!?
どうなってんだこのガキ……尋常じゃねぇ強さじゃねぇか……!
しかもこの数値の変動数……今の状態がもし14だとして、
これ以上のパワーアップをされたら手がつけられなくなっちまう……!)

「どうしたの? このまま黙り続けているなら拒否とみなして殺すわよ?」
「……っ! 分かった。知ってる限りのことは教える」

とは言っても、気絶をしていたからその先のことなんて
話せたものではないが……
[6]投稿者:『リョナラーズバトル リョナラーにも被害者にもなる少女Ep2』19スレの1◆eFkq.CTY 投稿日:2009/07/20(Mon) 00:35 No.365  
〔Ep2 背後の野獣〕

「……みっともない話ね……
気絶した上に、相手に情けを掛けられるなんて……」
「るっせーな、仕方ねーだろ。
ありゃあの女の攻撃じゃなくて外部からだ」

情報を得ようと生かしたことにリネルは後悔を覚える。

(住む世界は違えど、私達ロアニーと志を近くに置く者が
娘一人にその体たらくとは嘆かわしい……)

リネルは心の中でリョナたろうを蔑みながら
深いため息をついた。

(……情報は得られない上に、とんだ無駄足を食ってしまったわ。
見返りがないと割に合わないわね……)

そして、ゆっくりとリョナたろうをを嘗め回すように見て、近寄っていく。

「何だよ?」
「言ったでしょ? 情報をよこさなかったら殺すって……
結局有効的な情報なんて何一つ持っていなかったんだもの、当然でしょう?」
「なっ……っざけんなてめぇ!!」

がっ!

「ぐっ!?」

リョナたろうが激昂して手に魔弾を作り出す瞬間、
リネルは手ににマナを付与させて相殺しながら手を掴んで制止した。

「男の精気は不純物が多いからあんまり美味しくないけどね……
貴方ははそこそこ顔立ちもいいから我慢して吸い取ってあげるわ」

ぬちゅ……

「むぐっ……!?」

リネルはリョナたろうに顔を近づけ、
頬を赤らめながら口唇を重ね合わせた。

じゅるっ……じゅぶ……くちっ………

唾液と唾液が重なり合う音が静寂の森の中に木霊し、
それは『周囲に眠る者』の本能的な目覚ましとなっていった。

手を震わせて抵抗しようとしていたリョナたろうだったが、
次第に瞳に光が薄れていき、抜け殻のようにだらんと垂れ下がっていく。

(ち、力が……入らねぇ……)

リネルは口腔から相手の精気を奪い取る術式を用いて、
リョナたろう……そしてこのゲームに参加している女性全てを
貪ろうとしていた。

(さぁ、もう少しでこの少年の命までもが私のものに……)

ずぼっ

「ひっ!?」

リネルは後方から、何か貫かれるような痛みを感じた。
その時反射的に上げてしまった声のせいで、
貪りつくそうとしていたリョナたろうの口唇を
離してしまった。

(一体何が……!?)

彼女自身も予期せぬ感覚に、痛みの発生源である背後を見てみると……

「熱烈歓迎(いただきマンモスー!)」
「って何なのよこいつはー!!?」

等身大のトカゲらしき化け物、リザードマンがリネルの菊門に向け
下半身の剛棒を突き立て、前後運動していた。

ぐいっ! ぐっ! ぐっ!!

「がっ!? いぎっ! あぐぅっ!!」

リザードマンは、リョナたろうと絡み合うリネルの姿と、
響き渡っていた官能的な音に興奮し、
隙を見て背後から覆い被さり本能のままに腰を打ち立たのだった。。

腸の中身を引きずり出されるような激痛に、
リネルはリョナたろうを捕まえていた手を解かしてしまった。

「う……て、てめぇ……!!」

どがぁっ!!

「げぅっ!?」

途中で中断され、辛くも命と意識を取り留めたリョナたろうは
リネルの腹を足蹴にして遠ざける。

「解放拒絶!(放さねぇぜ!)」
「なっ……!? このトカゲぇ……!!」

リネルと一緒に後ろへ下げられたリザードマンだったが、
踏みとどまり、彼女を羽場い絞めにしたまま
彼女を突き上げ続けた。

まるで張り付けられたかのように辱められるリネル。
腕を塞がれていて、先程のようにマナを付与させることも出来ない上に
範囲攻撃である炎、冷気、雷の魔術も至近距離ゆえに
自分まで巻き添えになってしまうから迂闊に発動できない。

「う……くっ………!」

流石に限界近くまで精気を吸われていたリョナたろうは、
リザードマンがリネルを抑えているうちに
その場から離れだした。

(ちくしょう……願ってもないリョナタイムだが……
このままここにいたら本当に死んじまう………)

千鳥足になりながらも生存の為に足を引き摺りながら撤退する。
デイパックを担ぐ気力もなく、丸腰の状態で……
[7]投稿者:『リョナラーズバトル リョナラーにも被害者にもなる少女Ep3』19スレの1◆eFkq.CTY 投稿日:2009/07/20(Mon) 00:36 No.366  
〔Ep3 凍結する爬虫類〕

ぐりっ! ぎちっぎちっ!
「ひぎっ!? あうっ! ぐっ!!」

リョナたろうがその場を離れた後も
リザードマンによるリネルへの蹂躙は続けられていた。

齢500歳という歳であったとしても、
身体的な構成は少女のそれで止まってしまっているため、
リザードマンの行為一つ一つに対し、痛み以外の何ものも感じはしない。

そして、尻を格下の野獣に穢されているという事実が
彼女のプライドをズタズタにしていた。

(許せない……許さない……! 絶対に……殺してやる………!!)

ひいぃぃぃぃん……

感情が昂ぶり、リネルの殺意が頂点に達すると
彼女の瞳が緋色に染まっていく……

ぶちぶちぃっ! どがぁっ!!!

「ぎゃあぁぁっ!?」

禍々しいマナがリネルを包み込んだ次の瞬間、
羽場い絞めになっていたリネルの腕が
リザードマンの腕の靭帯を引き千切り、
振り向きながら目にも映らない速さで蹴りを繰り出し、
リザードマンを向かいの木々まで吹き飛ばした。

激しい打ち身にリザードマンはギャーギャーと喚くが
それよりも苦しい現実が迫っていた。

「さぁ……主導権は私にある……!!」

その言葉と同時にリネルの体に出来た全ての傷は消え去り、
ゆっくりとリザードマンに向けて手を翳した。

「……爬虫類は確か、変温動物だから
体が低音に蝕まれれば動けなくなるないし、簡単に死んじゃうのよね……」

リネルが怒りに顔を引きつらせながらそう呟くと
翳した手に濃縮されたマナが渦を巻き始める。

「ぎゃ……ぎゃぁ……?」

その光景が危険と感じたリザードマンは悪足掻きとばかりに
ウルウル目で助けてくれと愛嬌を振ろうとする。

しかし、相手が悪かった。
リネルは相手のその表情に好虐心を覚える上に、激しく辱められた。
何より命乞いというマネがもっとも嫌いなものだったからだ。

「ブリザード……!!(3倍濃縮)」

ぴき……ぴきぴきぺきぱきぃっ!!!

マナは猛吹雪に変換され、
周囲の森ごとリザードマンを氷の塊へと変えていく。

彼女の持つ能力、エンペラー1は
かなりの回復力をもつヒール、身体能力を全て倍にし、
同時に3種の広範囲魔法打ち出すもの。

通常ならば相手の弱点を突きやすくするために
3種の魔法を打ち出すが、相手が冷気に弱いということは
初めから分かっていたのでブリザードを3回分放出した。

「木々と共に永遠の眠りにつきなさい……異形の野獣よ……」

青白く冴え渡る死の森となった場所に埋もれるように、
氷の塊となったリザードマンが取り残された。

誰も寄り付くことのない空間、ゲームの終了時間を迎えても
決して溶けることのない氷の世界に……

「畜生には勿体無さ過ぎる墓場ね……」

傷は癒えたが、その幼い体に刻まれた破弧の感触を思い出す度、
憤りと悔やみと、リザードマンの最期を脳裏に焼き付けるようにして
新たな獲物を求めて、その場をまた猛烈なスピードで南下し始めた。

そして間一髪、ブリザードの猛威から逃れたリョナたろうは
湖へ向かう森の中を
朦朧とする意識の中歩み続けていた。

(ちくしょう……俺は……リョナラーだぞ……
その俺が、何であんな小娘に良いようにされて殺されかけ、
今……こうして逃げ帰ってるんだ……)

先程出会った少女を殺したいほど憎むが、
逃げ帰るしか出来ない自分のことも呪ってしまう。

そして……

どさっ!

意識が保てなくなり、その場に倒れこんで気絶してしまう。
死にはしないだろうが、この状態ではゲームの参加者としては
死んだも同然である。

そんな二人にノイズのような音が頭の中に木霊し、
あの男の声が聞こえてくるが、
その情報は片方の意識には届かないようだ……

【C-3:X1Y4/森/1日目:昼】

【リネル@リョナマナ】
[状態]:健康、憤怒、エンペラー1状態 魔力消費中
[装備]:血染めの布巻き エルブンマント(通常服装)
[道具]:デイパック、支給品一式、地図
怪盗の心得@創作少女
[基本]:リョナラー、ナビィ達か女性を探す
[思考・状況]
1.ナビィ達を殺す
2.女性を殺す
3.キング・リョーナには叶えてもらう望みもあるがぶっとばしたい
4.実は生娘、しかし、後ろの初めては奪われてしまった。

※エンペラー1は今日、あと1回しか使えません。身体能力2倍状態はあと2時間続きます。

【リョナたろう@リョナラークエスト】
[状態]:気絶、瀕死、魔力消費中
[装備]:リョナたろうの鎖帷子@リョナラークエスト
[道具]:なし(抗争の際に外れ、瀕死の状態から持ち運び不可能)
[基本]:主催者を倒す+女の子を襲う
[思考・状況]
1.気絶中
2.リザードマンを見捨ててその場を離れた。
3.オーガ、モヒカン、リゼを探す
4. 主催者を倒すための仲間集めを考える
5. 女の子を襲う
6.リネルを絶対にリョナって殺す。

※リョナたろうの使える魔法は「サーチ」です。
※必殺は「魔弾の力」です。
※桜を爆破の能力、もしくは道具を持つマーダーと認識しました
※リネルの脅威を目の当たりにしました。

【リザードマン@ボーパルラビット】
[状態]:死亡/凍死
[装備]:リザードマンの鎧@ボーパルラビット
[道具]:デイパック、支給品一式
※地図C-3:X1Y4/森はその半分以上が氷の世界に閉ざされ
数十分いれば確実に凍死してしまう場所になりました。
※リザードマンやリョナたろうのデイパック、首輪探知機は
凍らされなかったのでこの場所に置いてあります。
※結局女の子をいただけたのは1度きりとなりました。
[8]投稿者:19スレの1◆eFkq.CTY 投稿日:2009/07/20(Mon) 00:37 No.367  
あとがき
投稿が遅れてしまい大変申し訳ありません。
リョナラーどうしのバトルってむつかしいですね……
[9]投稿者:「第1回定時放送:キング様アワーズ、略してキンアワ♪」14スレ目の74◇DGrecv3w 投稿日:2009/07/20(Mon) 01:49 No.369  
参加者達の頭上から、砂嵐のような音が聞こえだす。
初めは激しかったその音は次第に小さくなり、代わりに誰もが聞き覚えのある声が聞こえだした。

「あ゛ーあ゛ー、てすてす。・・・ふぅ、ようやく繋がった。ったく、そろそろコレ買い換えないといけないなぁ。」

人をバカにしたような、間の抜けた高い声、キング・リョーナの物だ。

「はぁーいみんなぁー♪ キング様の第1回、素敵な定時放送の時間だよぉー♪」

キングは一度間を置いて、参加者達の反応を一瞥して言葉を続ける。

「じゃあ、まずは初めての禁止エリアを発表するよ! 初めてだから、オニャノコ達がメモの準備ができてから話すYO!」

キングは女性の参加者達の様子を一瞥してから再び口を開く。

「2時間後の禁止エリアはC−2、4時間後の禁止エリアはB−1だよぉーん♪ オニャノコ達は絶対入っちゃダメだかんねっ!」

そして、一呼吸置いた後、キングは続ける。

「さて、次はー、みんな気になる死亡者の発表ー♪」

キングの後ろで、打楽器の音が滅茶苦茶に鳴り響いた。

「じゃ、名前を読みあげていくよー♪ 合掌の準備はいいかなー?
 ひとーり、オルナ。
 ふたーり、篭野なより。
 さんにーん、神代伊織。
 よにーん、神谷カザネ。
 ごにーん、鬼龍院美咲。
 ろっくにーん、那廻早栗。
 ななにーん、トゥイーティ・プラム。
 はっちにーん、萩の狐。
 きゅーにーん、風香。
 じゅーにーん、御朱冥夜。
 じゅーいちにーん、リザードマン。
 じゅーににーん、リース。
 じゅーさーんにーん、ルーファス・モントール。
・・・以上だよーん、ツーワケで、はいっ、がっしょぉー・・・チーン・・・○ッ♪」

直後、キングの下品な笑い声と、厚い壁を叩いているような鈍い音が何度も聞える。
キングは暫く笑った後、一度大きく息を吸って続きを話す。

「ちなみに、今回のベストオブリョナエンドはぁー・・・教えてあげないよっ、じゃんっ! 僕はもう一回見てヌくけどねー♪」

キングは暫し優越感に浸ってから、咳払いをする。

「あ、後ね。僕の故郷はそろそろ夏なんで、それっぽく気温とか湿度とか上げてくんでよろしくっ。」

キングのその言葉を最後に、再び砂嵐のような音が参加者の頭上に響き、次第に聞えなくなっていく。

「――っと、忘れてた!」

砂嵐のような音が消えかかった頃、突然ブツリという大きな音と供に慌てた様子のキングの声が響いた。

「4時間後から2時間ほど、フィールド上に夏の風物詩、にわか雨を降らせるよ! ・・・って、予告したらにわか雨じゃないじゃんっ!」

キングは自分の台詞に自分で突っ込みを入れ笑い出した。
キングの笑い声は少しずつ遠のいていき、最後には完全に聞えなくなった・・・。

【残り38名】

@後書き
とりあえず、投下しておきます。
気温とか雨とか、勝手に追加してしまってすいません。><
[10]投稿者:289◇J9f1Lk6o 投稿日:2009/07/20(Mon) 02:10 No.372  
≪会いたい  前編≫

「くっ……」

炎を操る女との戦いに敗れ、重傷を負った美咲は全身を苛む痛みを意志の力で無理やりねじ伏せつつ、よろよろと立ちあがった。

(不覚を取った、この傷じゃ満足に歩くこともできない……)

少し身体を動かすだけで全身を針で刺されるような痛みが走り、顔を顰める美咲。

(このダメージはやばい……こんな状態でもし殺し合いに乗ったヤツに出会ったら……)

おそらく殺されるだろう。
全身に火傷を負って息も絶え絶えの今の美咲では、戦闘能力を持たない一般人にすらやられてしまうかもしれない。
こうなってしまっては、回復するまで殺人者と出会わないことを祈るしかないだろう。


今の思考に引っ掛かりを覚える。


待て。よく考えると、すぐ近くに殺し合いに乗った者がいたじゃないか。
そう、そいつは人間に化けているモンスターで……。


そこまで考えたところで、美咲はいきなり背後から何者かに抱きつかれて地面に押し倒された。

「っ……!」

火傷を負った身体が地面に強く叩きつけられ、激痛が走る。

「っ……っ……!」

何とか逃れようともがくが、怪我のせいで上手くいかない。
しかも相手は組み伏せるのに慣れているようで、力の入りにくい状態で拘束されている。

「よう、随分と派手にやられたなぁ?」

うつ伏せに押し倒されているせいで、相手の顔は分からない。
だが、聞き覚えのある声で嫌らしく耳元に囁かれれば、嫌でも相手の正体は分かる。

(……スライム……!)



火事に巻き込まれたり、やたら強気で自分勝手なガキに振り回されたり、
危険そうな発火能力者の女に出会ってしまったりと、どうなることかと思っていたが、
ようやく俺にも運が向いてきたようだ。

俺のことをスライム扱いし、生意気な態度がいちいち癇に障る鬼龍院美咲というガキ。

今そいつは全身に火傷を負い、焼けてボロボロになった服が申し訳程度に肌を隠しているといった状態で俺に押し倒されている。

美咲は何とか俺の拘束から逃れようと必死でもがいているが、さすがにダメージが大きいのだろう。
対して力を入れてもいない俺の拘束からすら、逃れることはできないようだ。

今までの態度が態度だっただけに、実に胸のすく思いだ。
美咲は未成熟ながらも均整の取れた肢体の持ち主のようだ。
幼いとはいえその身体にべったりと張りつかせている俺の股間がギンギンに滾り始める。
美咲のサラサラと綺麗なロングヘアから香る匂いと小さな背中から伝わってくる弱々しい抵抗が俺の興奮にさらに油を注いでくれる。

初対面であっさり俺を返り討ちにしてくれた少女は、今は俺に組み伏せられているのだ。
しかも、どうやらさっきの戦いで喉をやられたらしく声が出ないらしい。
ということは、コイツは悲鳴を上げて助けを呼ぶこともできない。
なすがままに犯されるしかないってわけだ。
まあ、女の悲痛な声を聞けないのは残念だが、そこは我慢するとしよう。

くくく……この生意気な顔が男に犯されたらどんな風に歪むのか楽しみだぜ……。






シノブたちは戻ってきたロシナンテに何があったのか話を聞いていた。
その結果、モモンガだけでなく偶然出会った参加者とも戦っていたことに驚いていた。

「鎖の呪具を持つ魔の眷属……それだけ聞くと、ロシナンテの仲間みたいだな」
「いや、あのようなヤツは私は見たことがない。おそらく、魔王軍とは関係の無い者なのだろう」

シノブの言葉をロシナンテは頭を振って否定する。
しかし、ロシナンテの言葉に三人は疑問の声を上げる。

「……魔王?」
「?……どうした?」

何が疑問なのか、とロシナンテは聞き返す。

「魔王って……何ですか?」
「……何を言っている?私は炎のロシナンテ。魔王軍三将軍の一人だ。」

ロシナンテからすれば、自分の名を名乗ったことで自分が魔王軍三将軍であることはすでに明かしたつもりだった。
まさか、今更自分の所属が魔王軍であるということについて突っ込まれるとは思っていなかったのだ。

(鈍い奴らだな……それとも、私の名すら届かぬ辺境の出身か?
どちらにせよ、私が魔王軍だということに気がついていなかったのならここで奴らが牙を剥いてくる可能性もあるが……)

そこまで考えたところで、ロシナンテはニィッと唇を釣り上げる。

(それならそれで望むところ……この赤髪の剣士と今すぐに戦えるのならば、それは望外の喜びというものだ。
あちらから襲ってくるのならば、シノブにも文句は言えまい。)

そして、ロシナンテは不敵な笑みを浮かべてアーシャへと期待の視線を向ける。


だが、三人から返ってきた反応は困惑だった。


「魔王と呼ばれるような存在が現れたっていう話は聞いたことないですけど……」
「まあ、人間じゃないとは思ってたけど……でも、魔王ってまさかアーク=サデストのことじゃないよな?」
「え?お姉ちゃん、人間じゃないの?」

アーシャ、シノブ、エルフィーネがそれぞれ疑問の声を上げる。
ロシナンテは三人の反応に戸惑った声を上げる。

「……魔王を知らないというのか?」

あれだけ、人間たちが被害を被っているというのに?
ロシナンテは彼女たちの言葉が信じられなかった。

「聞いたこと無いけど……(リト、知ってるか?)」
(いえ、魔王なんて私も聞いたことがないです。
彼女が別の惑星の人間という可能性も考えられますが……でも、それにしたって……)

スピリット=カーマインの言葉に、シノブもどういうことなのかと首を傾げて考える。
アーシャとエルフィーネも似たり寄ったりの反応である。
それを見て、ロシナンテは彼女たちが冗談を言ってるわけではなく、本当に魔王を知らないらしいことが分かった。

(……魔王の存在すら知らない?馬鹿な、それではまるで……)


まるで、別の世界の人間のようではないか。


(馬鹿な、そんなわけが……いや、待て!)

そうだ、思い出した。

かつて、自分と戦ったあの勇者ども。
ヤツらも別の世界から召喚された存在だったはずだ。
ヤツらが異界の者だというのなら、この三人もヤツらと同じように異界からこの世界に召喚された存在なのかもしれない。

だが、一体誰がこの三人を召喚したというのだ?

しかし、そこでロシナンテはこの三人を召喚した可能性の高い人物に思い当る。

(……そうか、あの男か!)

キング・リョーナと名乗っていた男。
自分たちを殺し合いに放りこんだ男が、殺し合いのためにこの三人を召喚したと考えるのが一番妥当な考えだろう。

いや、待て。
そうだとすると、異界の存在はこの三人だけではないのではないか?

もし……もし、あのキング・リョーナという男がここにいる全ての参加者を殺し合いのために召喚したのだとしたら?

そう、つまりはロシナンテ自身もここに殺し合いのために召喚されていたのだとしたら……。


ここは、ロシナンテの住む世界では無いことになる。


いきなり、足元の地面が消えたような錯覚に襲われる。
今まで自分が別の世界にいるなどとは微塵も思ってなかっただけに、ショックが大きかった。

(あの男、強者だとは思っていたが……まさか、ここまでの規格外とはな。
いや、まだそうと決まったわけではないな。シノブたちにも確認を取ってみるとしよう)

そう思い、ロシナンテは口を開こうとしたところで……。


ロシナンテはふと、今までの思考の中に引っ掛かりを覚えた。


待て。
勇者と戦った?

では、私は勇者を倒したのか?

いや、違う。
そんな記憶は無い。

では、決着が着かなかったのか?

いや、それも違う。
決着は着いた……はず……。




……そうだ、思い出した。
あの戦いの……私の最後の記憶にあるのは……。






勇者たちの剣に身体を貫かれ、倒れる自分の姿。






「……馬鹿なっ!!?」


いきなり叫び声を上げたロシナンテにシノブたちは驚く。

「どうしたんだよ、ロシナン……お、おい!?どうした、大丈夫か!?」

ロシナンテの蒼白な顔を見て、シノブは心配そうに声をかける。
だが、ロシナンテはそれに気付かずに身体を震わせて何事かを呟いている。

「馬鹿なっ……馬鹿なっ……!?私は……私は死んでいたというのか……!?
では、ここにいる私は何だっ!?何がどうなっているというんだっ!?」

それを聞いたシノブたちは、ロシナンテの様子が異常なことに気付く。
慌てて、シノブが駆け寄って声をかける。

「お……おいっ!落ち着け、ロシナンテ!本当にどうしたんだよっ!?」

シノブに続いて、アーシャも駆け寄って声をかける。

「ロシナンテさん、しっかりしてください!貴女は死んでなんていません!
ちゃんと生きています!正気に戻ってください!」
「私は……私は一体……」

ロシナンテの言葉を聞いて、幻惑の魔法でもかけられたのかと思ったアーシャは気付けのための言葉をかけるが、ロシナンテには届いている様子は無い。

その後、必死で呼び掛けるシノブやアーシャの声もロシナンテには届かなかった。
そのため、シノブたちはロシナンテを落ち着かせるためにこの場で休息を取るしかなかった。



[11]投稿者:289◆J9f1Lk6o 投稿日:2009/07/20(Mon) 02:11 No.373  
≪会いたい  中編≫

美咲は必死で抵抗していた。
すぐに殺されるのだと思っていたが、あろうことか強姦男が自分の服を脱がしにかかったからだ。

おそらく自分を溶かして食うつもりなのだ。
その光景を想像し、さすがに顔色を青くする美咲。

(冗談じゃない!こんなヤツに食われてたまるか!)

それに、いくらスライムといえど男の姿をした者に自分の裸体を晒すなど恥辱以外の何者でもない。
一方のスライム……もとい、強姦男は美咲の抵抗が予想外に激しいことに苛立っていた。

(ちっ……こりゃ、もう少し痛めつけて抵抗力を奪わないと駄目だな。)

そう思って、強姦男は周りに視線を走らせる。
すると、先ほどの戦いで美咲の手に握られていた鎖が地面に落ちていることに気づく。

(へへ……よし、コイツで……)

強姦男はその鎖を手を伸ばして拾う。
そして、それを美咲の首にぐるぐると巻いて絡ませる。

「……っ!」

苦しそうに顔を歪ませる美咲。

(おお、なかなか良い顔するじゃねぇか)

その表情に興奮して、さらに鎖を締め上げる強姦男。

「っ……!……っ……ぁ……!」

喉を痛めている美咲にこの責めは酷だった。

首を締め上げられて気道を圧迫された美咲は呼吸ができない。
いくらもがこうが拘束は解けず、首を鎖で絞め続けられる。

(……ぐっ……意識が……!)

やがて身体から力が抜けていき、美咲は意識を手放そうと……。



ざぐっ



「……っっ!!?」

凄まじい激痛が右肩に走り、美咲は悲鳴を上げようとする。
しかし、火傷を負って鎖で締め上げられている喉からはかすかな擦れ声しか出てこない。

「勝手に気絶してんじゃねーよ。お楽しみはこれからだろ?」

うつ伏せに倒れている美咲に圧し掛かっている男は左手で美咲の喉に巻いた鎖を締め上げつつ、右手に持った短剣で美咲の右肩を抉っていたのだ。

「そろそろ、弱ってきたか?まあ、念のために左肩もやっとくか」

そう言って、強姦男は美咲の右肩から短剣を引きぬき、今度は左肩へと振り下ろした。

ざぐっ

「っ……!!っ……!!」

左肩に新たに刻まれる激痛。
全身の火傷、締め上げられる喉、右肩と左肩に深く刻まれた刺し傷。

全身から止め処なく脳に響く痛みの嵐に美咲は懸命に耐え続ける。

「さて……これだけやりゃ充分だろ」

散々美咲は痛めつけた強姦男は、美咲がすでに虫の息なことを確認して再び服を脱がしにかかる。
首を締め上げられ、さらに両肩を刺されて腕が動かない美咲にはもはや抵抗はできない。

[………っ」

なすがままに下着まで剥ぎ取られてしまった美咲は、ただひたすらに目を固く瞑ってその屈辱に耐えるしかなかった。

「よう、服を脱がされた気分はどうだ?もっとよく顔見せてみろよ」

強姦男は美咲の髪を引っ掴んで、無理やり自分の顔にぐいっと引き寄せる。

「っ……!」

美咲は強姦男を睨みつける。
その顔は抑えきれない怒りと恥辱のせいで赤くなっており、瞳には涙が溜まっていた。
それを見て、強姦男の心は満足感に満たされる。

「そうだよ!その顔だよ、俺が見たかったのは!生意気に俺に指図ばかりしやがって!
今からタップリと今までの仕返しをさせてもらうからなぁ!?」

強姦男はそう言うと、ズボンと下着を脱ぐ。
その股間の一物はすでに限界まで勃起していた。

うつ伏せに押し倒された美咲には、強姦男が服を脱いだことしか分からない。
しかし、強姦男をスライムだと思いこんでいる美咲は、強姦男が自分の服を脱がせた後に
することといえば、自分を溶かして食べることだ。

つまりは、「変身を解いてスライムと化したヤツは今から自分を食うつもりなのだ」と認識していた。

(くそっ……放せっ……!放せっ……!)

美咲は何とか逃れようと弱々しい抵抗を見せるが、それは逆に強姦男の嗜虐心を煽るだけだった。
強姦男は美咲をうつ伏せに押し倒したまま、股間の一物を美咲の秘所にズリズリと擦りつける。

美咲はびくっと身体を震わせる。

(えっ……?まさか……?)

美咲は強姦男のしようとしていることが何なのか思い当り、目を見開いて顔を青くした。

(コイツ……私を……!?)

ようやく美咲は相手が自分を食おうとしているわけではないことに気がつく。
そう、コイツは自分を……。

(い……嫌だ……!)

美咲の中で恐怖が膨れ上がる。

美咲は同年代の中で比較すれば、かなり肝の据わった少女だ。
もともとヤクザの家に生まれたこともあり、人が死ぬところは何度も見てきた。
自分の命がかかるような場面でも、それなりに冷静でいられるくらいには場慣れもしている。

しかし、自分の抵抗が一切意味をなさず、ただ相手のなすがままにされるしかないという状況に耐えられるほど強くもなかった。
加えて、痛めつけられて重傷を負った身のせいか美咲自身も気づかないうちに弱気になっていたらしい。

怖い。スライムなんかに犯されたくない。

恐怖と緊張で呼吸が荒くなる。ガチガチと歯が鳴り、目に涙が溢れる。
相手が人間ではないという思い込みもあり、美咲はこれからされることを想像して怯えていた。




強姦男は美咲の秘所に自分の一物を擦りつけてやったとたん、明らかに美咲が怯えた様子を見せ始めたことに気を良くしていた。

「へへ……ほ〜ら、早く逃げ出さないと大事なところにぶち込んじまうぞ〜?」

強姦男は美咲の恐怖を煽るように、美咲へと言葉を投げかける。

「……っ!……っ!」

その言葉を聞いた美咲の抵抗が激しくなる。
美咲の顔を見ると、泣きそうな顔で嫌々と首を振っていた。

(ふん、あれだけ偉そうな態度を見せてたくせにこのザマか。所詮はガキだな)

まあ、こうやって怯えてくれたほうが自分は楽しいのだが。

強姦男は美咲の秘所に擦りつけていた一物を一度放す。
そして、再び美咲の秘所に狙いを定めてぴたりと押しつけた。

「さあ、美咲ちゃん。今からお兄さんが大人にしてやるからな」


そう言って、強姦男は自分の一物を一気に根元まで美咲の秘所にぶち込んだ。


「〜〜〜〜〜〜ッッ!!!」


美咲は背中を仰け反らせ、目を見開く。
口をパクパクと動かし、ハッ……ハッ……と荒い呼吸を繰り返す。
美咲の秘所からは血が出ており、強姦男の一物を伝って地面へぽたぽたと血のしずくが垂れ落ちる光景は、思わず顔を背けてしまうほどの痛々しさだった。

「……ぁ……ぁぁっ……!」

よほど痛いのだろう。
余裕など欠片も無い様子でただ涙を流しながら痛みに耐えている美咲を強姦男は後ろから抱き締め、
首筋に口づけをしながら胸を弄る。
強姦男は美咲の体温と肌の感触を身体全体で楽しんでいた。

「おら、まだこんなもんじゃねぇぞ」

強姦男は美咲の秘所に根元まで埋めていた一物を激しく動かし始めた。

ズッ……ズッ……ズッ……!

「っ!!ぁぁっ……ぅぁっ……!!」

美咲の体内で暴れる肉塊がさらなる痛みを与えてくる。
あまりの痛みに視界が明滅し、美咲は意識が飛びそうになる。

火傷の痛みや両肩の痛みも耐えがたい激痛だったが、秘所の痛みも凄まじかった。
加えて、この痛みは美咲にとって自分の存在に取り返しのつかない傷をつけるものなのだ。
強姦男が腰を打ちつけるたびに、美咲の心は殺されていた。

「……ぅぁ……ぁぁ……ぁ……!」

美咲は泣いていた。
全身を絶え間なく襲う激痛と、秘所を抉られる絶望感。
今までの責めで消耗しきっていた美咲の心は、現状の辛さに耐えられなかったのだ。


そして、美咲の心が折れたのと同時に。


強姦男が美咲の中で絶頂を迎え、欲望を解き放った。




その後も、強姦男は美咲を犯し続けた。
秘所、口、肛門、胸、髪……身体のあらゆるところを美咲は犯された。

美咲は放心していた。

痛かった。身体の全部が余すことなく痛かった。
秘所と肛門の痛みは特にひどく、その痛みが脳に響くたびに美咲の心は傷ついていた。

(……なんで……こんな目に……)

帰りたいと思った。
父やエルフィーネに会いたいと思った。
彼らとたわいもない話をして、笑い合いたかった。

そんなことを考えていた美咲は、ふとエルフィーネもこの場にいたことを思いだす。

(エル……)

そうだ、会いに行こう。
あのクソ生意気なチビといつものように口喧嘩でもすれば、自分もいつもの調子に戻るだろう。
そうすれば、嫌なことも全部忘れられるはずだ。

殺し合いも今はどうでもいいと美咲は思った。
ただエルに会いに行きたかった。


そして、美咲は何とか立ちあがろうとボロボロの身体に力を入れ……。






ざぐっ……






「……ぁ……?」


美咲は驚いた顔で自分の胸を見た。
なぜなら、美咲の胸に短剣が刺さっていたからだ。

心臓の位置に、深々と。
どう見ても助かる傷ではない。

そのことを理解した瞬間、美咲の身体から力が抜ける。

痛みは無い。
ただ急激に目の前が暗くなり、意識が闇に落ちて行くのが感じられた。


(え……?死ぬのか……?)


こんなところで?

エルにも会えないままで?


(……嫌だ……そんなの、嫌だ……)


自分は、会いたいのだ。

いつもは鬱陶しいだけのあのチビに、今は無性に会いたいのだ。

一目でいい。

エルに会いたい。

会って、話がしたい。

こんな気持ちのまま、死ぬのは嫌だ。


(……いや……だ……)


だが、美咲の思いは叶わない。

彼女は意識を失い、二度と目覚めることは無かった。



[12]投稿者:289◆J9f1Lk6o 投稿日:2009/07/20(Mon) 02:12 No.374  
≪会いたい  後編≫

「くく、傑作じゃねぇか、オイ……俺を散々馬鹿にしてやがったガキが全身白濁塗れの絶望面で死んでやがるんだからなぁ!」

美咲の心臓に短剣を突き立てて美咲を殺した強姦男は、心底楽しそうに下劣な笑い声を上げていた。

「ざまぁみやがれ!生意気な態度ばっか取ってるからこんなことになんだよ!
もう少し可愛げのある態度を取ってりゃ、こっちも少しは優しくしてやったってのによぉ!」

そう言って、強姦男は美咲の頭を思い切り蹴飛ばし、ぺっと美咲の顔に唾を吐いた。

「ああ、そうそう……お前の荷物は俺が有効活用してやるからよ。安心して地獄に行けや、くそガキ」

そして、強姦男は自分のデイパックに美咲の荷物を移し替えた後、歩きだした。
彼が貪るべき、次の獲物を求めて……。






休息を取ったことで、ロシナンテはようやく落ち着きを取り戻していた。

「すまない……見苦しいところを見せてしまったな……」
「いや、気にすんなよ。それより、一体どうしたっていうんだ?」

シノブはロシナンテに説明を求めた。

「ああ……世迷言と思うかもしれないが、どうか真剣に聞いてほしい。どうやら、私は……」

だが、ロシナンテが話し始めようとしたところで、耳障りな男の声が響いてきた。


放送が始まったのだ。






【鬼龍院美咲@まじはーど 死亡】
【残り38名】






【E−2:X4Y1/森/1日目:昼】


【強姦男@一日巫女】
[状態]:健康
[装備]:真紅の短剣@怪盗少女
    目出し帽@一日巫女(強姦男の私物)
[道具]:デイパック、支給品一式(食料12食分、水12食分)
    ウインドの薬箱@リョナラークエスト(未消費)
    隷属の鎖@アストラガロマンシー
    その他支給品(0〜2個)
[基本]:レイパー、ステルスレイパー
[思考・状況]
1.女を探して犯す

※隷属の鎖はマジックハンドだと思い込んでいます。
※ロシナンテは発火能力者だと思い込んでいます。・・・というか正解?


【鬼龍院美咲@まじはーど】
[状態]:死亡、全身火傷&白濁塗れ、全裸
[装備]:なし
[道具]:デイパック(空)




【D−2:X2Y4/森/1日目:昼】


【ロシナンテ@幻想少女】
[状態]:精神疲労大、魔力そこそこ消費
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6食分、水は0.25L程度消費)
    SMドリンクx9@怪盗少女
    防犯ブザー@一日巫女(本人は未確認)
    ガトリング(弾無し、安全装置未解除)@えびげん(本人は未確認)
[基本]:強者と戦い打ち滅ぼす
[思考・状況]
1.シノブと行動を供にする
2.自分の死に場所を言ってくれるまで何があってもシノブを死なせない
3.シノブとの約束を果たす前に、アーシャと戦う
4.自分が死亡した記憶を持っていることに混乱

※鬼龍院美咲をエルフィーネの母(たぶん20代後半)だと思い込んでいます。
※戦った相手(美咲)の名前を聞けませんでした。
※戦った相手(美咲)の外見はまだ他の三人に話していません。
(話す前に話題が逸れたため)
※ロシナンテの参戦時期は原作死亡後です。


【川澄シノブ&スピリット=カーマイン@まじはーど】
[状態]:火傷の痕、肉体的疲労中、精神的疲労中、魔力十分
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6食分)
    SMドリンクの空き瓶@怪盗少女
    あたりめ100gパックx4@現実世界(本人は未確認)
    財布(中身は日本円で3万7564円)@BlankBlood(本人は未確認)
    ソリッドシューター(残弾数1)@まじはーど(本人は未確認)
[基本]:対主催、”悪”は許さない、『罪を憎んで人を憎まず』精神全開中
[思考・状況]
1.ロシナンテ、エルフィーネ、アーシャとアクアリウムに向かう
2.バトルロワイヤルを止めさせる方法を探す
3.なるべく大勢と脱出する
4.ロシナンテについ死に場所を決めてやるなんて言ってしまったがそんな気はない

※エルフィーネを鬼龍院美咲の娘だと勘違いしています


【アーシャ・リュコリス@SILENT DESIRE】
[状態]:所々に擦り傷や切り傷の痕、疲労、魔力少し消耗
[装備]:なぞちゃんの小太刀@アストラガロマンシー
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6食分)
    デッキブラシ@La fine di abisso
    ヨーグルトx3@生贄の腕輪
[基本]:対主催、できれば穏便に済ませたい
[思考・状況]
1.ロシナンテ、エルフィーネ、シノブとアクアリウムに向かう
2.ルーファス、エリーシア、クリステルを探す
3.首輪を外す方法を探す
4.ロシナンテに対決を申し込まれたが受けるつもりはない

※彼女が案じていた女性の正体はミアですが、顔も名前も知りません
 但し、出会えれば気付ける可能性はあります
※銃=威力の高い大きな音のする弓矢のような物という認識をしました
※エルフィーネの要望に応え、彼女の変身については誰にも言わないことにしました


【エルフィーネ@まじはーど】
[状態]:所々に軽い擦り傷の痕、疲労、魔力十分
[装備]:ロザリオ@まじはーど
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6食分)
    モヒカンの替えパンツx2@リョナラークエスト(豹柄とクマのアップリケ付きの柄)
[基本]:対主催、鬼龍院美咲を探す
[思考・状況]
1.ロシナンテ、シノブ、アーシャとアクアリウムに向かう
2.鬼龍院美咲を探す
3.首輪を外す方法を探す

※とりあえず初めて出会う相手にはエルと名乗ることにしています



[13]投稿者:「戦士達の黄昏」その1 14スレ目の74◆DGrecv3w 投稿日:2009/07/23(Thu) 02:01 No.377  
――ドゴォッ!

あの、忌まわしい放送が終わった直後のことだった。
頭上を見上げていたアーシャ達の、近くにあった木が1本、轟音を立て揺れた。
揺らしたのは水色の髪の少女、川澄シノブだ。
彼女は無言で近くの木に拳を打ちつけていた。
アーシャ達は一斉にシノブの方へと顔を向ける。
しかし、誰も彼女の行動を言及しようとはしなかった。
その理由は2つ。
1つは彼女の行動理由は言及するまでもなく予想が付いたこと。
もう1つは、其々がその時、他人のことを気にする余裕がなくなっていたからだった・・・。

〜〜〜〜

「(シノブさん・・・。)」

そんな中、リトがシノブに話しかけた。
しかしシノブは答えようとしない。

「(・・・シノブさん。)」
「(・・・先輩と、ミサっちが殺られた。)」

リトの二度目の呼びかけに、シノブは静かに応える。

「(・・・二人とも、そう簡単に殺られるようなタマじゃない。)」
「(そうですよ。美咲さんはとても強い女性【ひと】ですし、カザネさんにはアリアさんがついてます。だから・・・)」
「(なのに、このイヤな胸騒ぎはいったいなんだっ!!)」

シノブはもう一度、木に拳を打ち付ける。
先ほどよりも大きな音が辺りに響き渡り、木が今にも折れそうな勢いでしなった。
シノブはその様子を歯を食いしばり見つめる。

「(で、ですが、彼の言うことが本当とは限りませんよ。私達を混乱に陥れるための出鱈目かも・・・)」
「(出鱈目だったら、こんな胸騒ぎはしないっ! アタシには分かるっ! あれは・・・あれは・・・!!)」

シノブはその先を言わず、崩れるようにへたり込む。
それからきつく握った拳を地面に叩きつけ、歯を食いしばり、全身を小刻みに震わせた。

「(・・・アクアリウムへ向かいましょう。)」
「(イヤだっ! 二人を殺った『悪』を探しだし倒すのが先だっ! 合流はその後でもっ・・・)」
「(彼女らが勝てなかった相手に、変身もできない今の貴女が闇雲に突っ込んで勝てると思っているのですかっ! 無策にも程がありますっ!!)」
「(なん・・・だと・・・っ!!)」

リトの悲鳴にも似た怒声に、シノブは思わずたじろいだ。

「(彼女らがこんなに早く倒されるなんて、相手がよほどの強さだったのか、なにか特殊な事情があったとしか考えられませんっ!!)」
「(リト・・・あんた・・・。)」
(そうか・・・。あんたもあれが・・・本当だって、感じてるんだな・・・。)

シノブは、リトの声から彼女の心情を悟りゆっくりと拳を開いた。

「(・・・すまない。)」
(そう・・・だよな・・・。自分で動くことができない、あんたの方が・・・もっと、悔しいんだよな・・・。)

シノブの言葉に、珍しく荒い息遣いを見せたリトは、大きく深呼吸をしてから応える。

「(・・・謝るのは私の方です。急に怒鳴ったりして、申し訳ありませんでした。)」
「(・・・早くエリねえと、合流しよう。エリねえなら、なにかいい知恵を持ってると思うしな・・・。)」
「(そうですね・・・。一刻も早くエリナさんとイリスさんに合流して、これからのことを相談しましょう。)」

シノブがゆっくりと立ち上がった、その時・・・。

〜〜〜〜

(そんな・・・ルー君が・・・。)

シノブが木に拳を打ちつけた様子を呆然と見ながら、アーシャは知り合いの訃報に驚きを隠せずにいた。
しかもその知り合いは、自分や恐らくは二人の親友も探そうと考えていた人物である。
アーシャは放送内容が偽の情報であることを信じたかった。
しかし、少しずつ蒸し暑くなってきている気候が先の放送に真実味を与え、簡単にはそれを許してくれなかった。

(・・・・・・エリー、大丈夫かな?)

アーシャはゆっくり空を見上げ、親友の一人、エリーことエリーシアの身を案じる。
死亡者として名前の挙がった知り合い、ルーファスは彼女の弟だ。
普段の彼女は自分よりもずっと冷静で頭の回転も良く、偽情報に簡単に翻弄されるような人物ではない。
しかし、弟のこととなると話は別である。
彼女にとって弟は、命に代えても守りたい大切な人であり、それ故に冷静さを欠きやすい。
先の放送できっと動揺しているに違いない。
もしかしたら、自責の念からトンでもない行動を考えているかもしれない。

(・・・私、信じてるからね! エリー!)

アーシャは大きく深呼吸して、脳裏を過ぎった最悪の展開を掻き消した。
そして、崩れるようにへたり込んだシノブの方へと一歩踏み出す。

(兎に角、今は彼女達を守りながら、二人と合流することを考えよう! これ以上、犠牲者を増やさないために!)

アーシャがそう心に誓い、ゆっくりと立ち上がったシノブの傍へ歩み寄ったその時・・・。
[14]投稿者:「戦士達の黄昏」その2 14スレ目の74◆DGrecv3w 投稿日:2009/07/23(Thu) 02:03 No.378  
(嘘よ・・・あの娘【こ】が・・・美咲が・・・死んだなんて・・・!!)

エルフィーネは信じたくなかった。
しかし、急に上がってきた気温がそれを許してはくれなかった。
そもそも、あの男ほどの実力があるのならば、こんな回りくどい真似をしなくてもあの場で全員を思い通りに殺すことだってできたはずだ。
それに、これだけ強力なメンツが揃い踏んだ状況だって、やろうと思えば強制的に引き剥がすこともできるはずだ。
それなのに先のルール説明にあった定時放送だけを流して、傍観を決め込んでいる。
つまり、あの男は極力この”ゲーム”とやらに介入しないつもりなのだ。
その男が宣誓通りに”ゲーム”に介入してきたということは、あの放送内容が嘘とは断定できないことになる。

(そして、なにより・・・この胸騒ぎが・・・許してくれない!)

エルフィーネは崩れるようにへたり込んだシノブを脇目に、大きく溜め息をつく。

(・・・美咲は、頭に超がつくお人好しで、単純で、ぶっきらぼうで、ちょっとからかうとすぐ暴力を振るう、手の掛かる娘だった。)

エルフィーネは静かに握り拳を作る。

(・・・でも、私の強力な相棒でっ! 最愛の親友だったっ! それを・・・それを・・・!!)

エルフィーネは頭上を睨みつけ、歯を食いしばる。

(許さないっ!! 必ず殺したヤツを見つけ出して・・・蜂の巣にしてやるっっ!!)

エルフィーネはロザリオをきつく握り締め、視線を空から下ろした。
その先には、立ち上がったシノブに、アーシャがゆっくりと近づいている光景と、一人佇んでいるロシナンテの姿があった。

(――そういえば。)

エルフィーネは無意識の内に、ロシナンテに声を掛けていた。

「――ねぇっ! ロシナンテおねーちゃん! さっきの『鎖の呪具を持つ魔の眷属』の話の続き、聞かせてよ。」

本当に単なる直感だった。
しかし、今のエルフィーネにとって、この話にはとても大切な情報が隠されている気がしてならなかった。
エルフィーネの突然の呼びかけに、ロシナンテだけでなくシノブとアーシャも顔を向けた。

「・・・えっ、あ、ああ。それは、構わないが・・・。」

ロシナンテの返事を聞くなり、エルフィーネはロシナンテの傍まで走り寄った。
シノブとアーシャはロシナンテの覇気のない声と、エルフィーネの行動に一抹の不安を感じて近寄る。

「その鎖の呪具を持つ魔の眷属ってさ、どんな姿をしてたの?」
「・・・えっとだな。私より、一回りぐらい小さくて・・・、目付きの鋭い少女・・・だったな。」
「――っ!!」

その瞬間、エルフィーネの中で直感が確信めいた物へと変わった。
そして沸々と湧きあがる怒りと憎しみ。
エルフィーネは顔を俯かせ、渦巻く激情を抑えながらロシナンテへ問い掛ける。

「・・・その娘ってさ、もしかして黒いロングヘアで、鋭い眼は赤茶色じゃなかった?」
「えっ? ・・・あ、ああ。そうだったな・・・。」

エルフィーネの中ではもはや抑え切れないほどの激情が渦巻いていた。
ほぼ確信に近い物を感じながら、エルフィーネは最後の確認をするためロシナンテに問い掛ける。

「それで、なんか、女の子というよりは、男の子みたいな・・・服装じゃなかった・・・?」
「・・・うむ、確かそんな感じだった。」
「そう・・・。」

エルフィーネはそれだけ言うと黙って俯く。

「・・・しかし、お前。よく分か・・・ぐがっ!?」

ロシナンテがずばり言い当てられた理由を聞こうとした刹那、エルフィーネの傍で、白い光が煌く。
その直後、ロシナンテは叩きつけられるように地面に投げ出された。

「――ロシナンテッ!!」

シノブは地面に転がったロシナンテに駆け寄る。
しかしそれよりも早く、ロシナンテに金と白の流線が1つ近づく。

「ごふぅっ!!」

直後、ロシナンテが苦痛の呻きをあげ宙を舞った。
シノブは彼女を追いかけ、地面に叩きつけられたロシナンテに駆け寄った。
そして、先に見た流線の正体を探った。

「・・・だ、誰だよあんた!?」

シノブの目の前に居たのは、金色の奇麗な髪をして、白い大きな十字架を担いだ修道女だった。
しかし、この場に彼女のような人物が居た記憶はない。
シノブは目の前で十字架を構える女性の正体が分からず、ただ見つめるしかなかった。
女性はなにかを呟きながら、肩に担いだ十字架の先を二人へと向ける。

「突然、なにをするのですか! やめてください! エルフィーネさん!!」
「えっ? エル・・・フィーネ・・・?」

その時、アーシャが横から割って入り込み、修道女へと組み付いた。
エルフィーネと呼ばれた修道女は、アーシャを振り解こうと身を捩る。

「離しなさい! アーシャッ!!」
「いいえっ! その十字架を下げてもらうまで、離しません!!」
「ど、どういうこと・・・!? アーシャ、あんた、ソイツのこと、知ってるのか!?」
「ええいっ!! 死にたくなければどきなさいっ!! シノブもよっ!!」
「なっ!? なんで、アタシの名前を!?」

シノブの困惑した声に、振り解かれないよう必死にしがみつきながらアーシャが答える。

「彼女はエルの、本当の姿だよっ!!」
「なっ・・・!?(リ・・・リト!? どうなんだっ!?)」
「(信じがたいですが・・・本当です・・・!! 彼女から感じる魔力は・・・鬼龍院エルと同じ物です!!)」

シノブは慌てて周囲を見回し、鬼龍院エルと名乗った少女の姿を探した。
しかし、どうしても見つけることができず、目の前の女性があの少女と同一人物であることを信じるより他はなかった。

「いったい、どうしたというのです! 答えてください、エルフィーネさんっ!!」
「ソイツは!! 美咲をっ!! 鬼龍院美咲を殺したのよっ!!」
「――えっ!?」
[15]投稿者:「戦士達の黄昏」その3 14スレ目の74◆DGrecv3w 投稿日:2009/07/23(Thu) 02:04 No.379  
エルフィーネの言葉に、シノブとアーシャは驚愕の声を漏らす。
その隙にエルフィーネはアーシャを弾き飛ばすと、担いだ十字架の先をロシナンテとシノブの方へと突き出した。

「殺したって・・・ま・・・まさか・・・!!」
「そうよ、シノブッ!! ソイツが戦った『鎖の呪具を持つ魔の眷属』ってのは、貴女の親友! 私の大切な女性【ひと】! 鬼龍院美咲よっ!!」
「そ・・・そんな・・・! ロシナンテ・・・あんた・・・ホントに・・・!」

シノブに抱き抱えられ、荒く息をしていたロシナンテはシノブの問い掛けに答える。

「た・・・確かに・・・私は鎖の呪具を持つ魔の眷属と戦いあれに痛手を負わせた・・・しかし、殺してはいない・・・。」
「そうね・・・戻ってきた貴女から、死臭はしなかったもの・・・!」
「・・・そ、そうだぜっ! 人を殺してきたかどうかぐらい、アタシでも分かるしなっ!」
(リトに聞けばだけど・・・。)

ロシナンテは美咲と戦ったが、彼女を殺したワケではない。
それに、彼女は悪戯に人の命を弄ぶような真似はしない。
つまり、彼女の見立てでは手傷を負った美咲でも十分対応できる状況だったのだろう。
あの美咲ほどの強さを持った相手ならば尚更だ。
下手に手傷を負わせた状態で放置すれば、彼女を自らの糧とする前に他人に掠め取られてしまう。
ロシナンテにとって、強者と戦い勝つことは生きていくことに近いはずなのだから、そんな計算違いは起こさないはずだ。
シノブはそう直感していた。
そしてなにより、今目の前で殺し合いなんてのを見せられ、正気で居られる自信がなかった。
シノブはなんとか事態を収めようと、ロシナンテを弁護することにした。

「アレほどの使い手ならば、あの程度の痛手でよもや死ぬようなことは・・・」
「そ、そうそう! ミサっちが、そう簡単に殺られるワケが・・・!」
「・・・傍に、誰か居なかったかしら?」
「そうだ! 傍に誰も居なければ尚更・・・って・・・ぁっ・・・。」

エルフィーネの質問に、シノブは美咲のお人好しな性格を思い出し言葉を詰まらせる。
彼女の性格ならば例え相手の本性が殺人狂でも、信じてしまいかねない。
もし、誰かが傍に居て、実はその者が彼女の命を狙っていた者だったとしたら・・・。
シノブは祈るようにロシナンテの回答を待った。
しかし、ロシナンテの答えはシノブの祈りを無残にも引き裂く物だった。

「傍に・・・そういえば・・・弱そうな男が一人・・・うぐぅっ!!」
「――ロシナンテッ!?」

突然、乾いた音が一回響いたかと思った直後、何かがシノブの目の前を過ぎり、ロシナンテの肩を掠めて地面を抉った。
シノブはエルフィーネの担いだ十字架から火薬の臭いを感じ、先の物の正体が、あの十字架から発射された銃弾だと悟った。

「な・・・なにも撃つことは・・・!!」
「そいつは、美咲を見殺しにしたっ!! 美咲は、ソイツに手傷を負わされなかったら、死ぬことはなかった!!」
「そ・・・それは・・・でも・・・だから・・って・・・!!」
「シノブッ!! 貴女、憎くないのっ!! ソイツは親友を見殺しにしたのよっ!!」
「うっ・・・そ・・・それ・・・は・・・!!」

当然、親友を見殺しにされて、シノブはなんとも思わないはずはなかった。
だからと言って、今彼女に当たっても、益して殺した所で解決するはずもない。
シノブはそう感じ、どう答えることもできず口篭ってしまった。

「・・・だからって! 彼女を殺してもいい理由にはなりませんよ! エルフィーネさんっ!!」

アーシャは二人のやり取りの間にファイアボールを撃つ体勢を整え、エルフィーネに制止を呼びかけた。
しかし、エルフィーネは彼女の言葉を鼻で嗤うと、彼女の方を向かずに問い掛ける。

「・・・貴女に、撃てるの?」
「・・・それが、貴女や皆を守るためならば。」
「そう。なら、撃ってみなさいよ・・・。・・・但し、チャンスは一度きり。一瞬でも躊躇えば・・・貴女は死ぬわ。」
「えっ・・・?」
「私の”マクベス”・・・あの蔓どもを一瞬で吹き飛ばしたアレが、貴女を確実に狙っているからよ。」
「そん・・・な・・・エルフィーネ・・・さん!!」

アーシャは自分も既に彼女にとって排除すべき候補になっていたことに、驚きと悲しみを感じずには居られなかった。
同時に、美咲という人の存在は彼女にとってよほど大きかったのだと、アーシャは悟った。

(・・・エリー、貴女は大丈夫・・・だよね・・・!?)

アーシャは今の彼女の姿に、同じく大きな存在を失った親友の姿を思わずダブらせてしまい、不安に駆られる。
その不安を中々払拭することができず、アーシャはその場から動くことができなくなってしまった。
アーシャの葛藤を確認したエルフィーネは、シノブへ声をかける。

「さて、いい加減、どきなさい。シノブ。貴女は美咲の親友だと言うから、できれば殺したくないの・・・。」
「・・・い・・・イヤだ・・・。」
「えっ?」
「イヤだっ! アタシは離れない!」

シノブはロシナンテを庇うようにきつく抱きしめながら叫んだ。

「確かに、ミサっちを見殺しにしたロシナンテは許せない! だけどっ! アタシにとってはロシナンテも、もう親友なんだっ! 親友を見殺しになんて、アタシにはできない!」
「お前・・・私を・・・親友・・・だと・・・。」
(親友か・・・初めて聞く・・・言葉だが・・・いい響きだな・・・。)

シノブは頬を伝う涙を拭うこともせず、エルフィーネを見据えた。
エルフィーネは一瞬思わずたじろぐが、すぐに気を取り直す。

「・・・甘ちゃんな所、流石は美咲の親友ね・・・。そっくりだわ・・・。」

エルフィーネは一度大きな溜め息をつき、それからすぐに歯を食いしばる。

(美咲といい、アーシャといい、シノブといい、どうしてこう・・・。私に関わる人は、妬ましいぐらいに・・・心優しく清らかな人ばかりなのよ・・・!)

そして、十字架の銃口を突き出し叫んだ。

「なら、一緒に死になさいっ!! あの世で美咲に会ったらよろしく伝えておいてっ!! 川澄シノブッ!!」
「――くっ!!」「――エルフィーネさんっ!!」
[16]投稿者:「戦士達の黄昏」その4 14スレ目の74◆DGrecv3w 投稿日:2009/07/23(Thu) 02:05 No.380  
エルフィーネの怒声が響いた直後、辺りに響く発砲音。
シノブはきつく目を閉じ、すぐに来るであろう身を貫く衝撃に備えた。
しかし、来たのは予想していた衝撃とは別の衝撃だった。
直後、耳元で聞える聞きなれた親友の叫び声・・・。

「ぐああああああぁぁああっ!!」
「――ロシナンテッ!!」

ロシナンテは持てる力の全てを賭けて身体を捻り、シノブと体勢を入れ替えたのだ。
そして、シノブへ衝撃が伝わらないよう、自身の背中に炎の壁を作った。
炎の壁に当たったことにより速度が抑えられた銃弾は、ロシナンテを貫くことはなく、彼女のデイパックを貫き背中を抉った所で止まっていた。
ロシナンテは崩れるようにシノブへともたれかかる。
シノブは彼女の背中から感じる血の臭いに、居ても立っても居られず叫んだ。

「ロシナンテッ! しっかりしろっ!」
「・・・生きているようだな・・・シノブ・・・。」
「『生きているようだな』じゃないっ!! あんた、どうしてっ!!」

シノブは泣きながら、ロシナンテに問い掛ける。
ロシナンテは力のない笑顔で答えた。

「心配するな・・・死ぬのは・・・初めてじゃない・・・。」
「はっ!? ど、どういう、意味だよ・・・!!」

シノブの問い掛けにロシナンテは不敵な笑みを浮かべて答える。

「私は・・・既に一度・・・死んでいるんだ・・・。」
「なに・・・言ってんだよ・・・冗談は・・・よせって・・・!!」
「冗談ではない! 私はこの世界に来る前、勇者と名乗る者達と戦い、一度殺されているのだ・・・。」
「なん・・・だって・・・!?」

シノブは驚愕の表情でロシナンテを見つめる。
ロシナンテは軽く笑みを零して、口を開いた。

「だが・・・あの時と違って・・・何故か・・・心地良いな・・・。お前のために・・・死ねるから・・・だろうか・・・。」
「アタシの・・・ために・・・だと・・・。」

ロシナンテは真剣な表情で、シノブを見つめる。
シノブはロシナンテをきつく抱きしめ叫ぶ。

「ふざけるなっ!! アタシのために死んでもらっても、アタシは・・・」
「シノブっ!!」

ロシナンテの怒声に、シノブは思わず言葉を詰まらせた。
ロシナンテは再び笑顔に戻ると、今にも消えそうな声でシノブに話しかける。

「私は・・・親友という・・・単語は・・・初めて・・・聞いたぞ・・・。魔族には・・・そういう単語は・・・存在しなかった・・・からな・・・。」
「ロシ・・・ナンテ・・・。」

シノブは音がなるほど強く歯を食いしばり、ロシナンテをゆっくりと離して見据えた。

「いい響きだった・・・。強者と戦い・・・打ち滅ぼした時と同じか・・・それ以上に・・・甘美なる・・・響きだった・・・。」
「もう・・・喋るな・・・。お願いだ・・・お願い・・・だから・・・!!」
「感謝する・・・ぞ・・・我が生涯で・・・最強にして・・・最愛なる・・・人間・・・川澄・・・シノ・・・」

ロシナンテは彼女の名前を最後まで言い切ることなく、そのまま眠りに堕ちるように項垂れた。

「――――――――――――――っ!!」

シノブは動かなくなった親友をきつく抱きしめ、声にならない叫びを空へと上げた。
暫くして、シノブは傷だらけの親友を優しく横たわらせると、勢いよく涙を拭いエルフィーネを睨みつけた。

「・・・・・・これで・・・満足したか・・・エルフィーネッ!!」
「満足したか・・・ですって・・・?」
「あんたと、アタシの親友を見殺しにした・・・アタシの親友を殺って、満足したかと聞いているっ!! 答えろっ!!」
「っ!!?」

シノブの怒りと悲しみに満ちた真っ直ぐな視線に、エルフィーネは思わず言葉を詰まらせた。

(なんで・・・どうして・・・私を・・・憎んでいないの・・・!?)

エルフィーネにはシノブの視線が理解できなかった。
親友の訃報を聞いた直後、別の親友を目の前で殺されたら、普通は憎しみを抱くだろう。
それなのに、今自分を捉えている視線には憎しみを感じられない。
・・・否。
憎しみの感情は確かにある。
しかし、それは自分自身に向けられてる物ではなく、もっと別の”なにか”に向けられていた。
それがどうしてかが分からず、エルフィーネは苛立っていた。

「そうね・・・まだ、美咲を殺したヤツを殺してないから・・・まだ足りないわ・・・。」
(これなら・・・どう?)

これならば流石の彼女も、自分を憎まずには居られないだろう。
エルフィーネはそう考えていた。

「そう・・・か・・・。まだ・・・足りないのか・・・。」
「ふふふ♪ ・・・そう、まだ・・・足りないわ。」
(さあ・・・私を憎みなさい・・・!)
「――アタシには分かるっ! あんたは・・・”悪”だっ!!」
「えっ・・・?」

しかし、彼女の思惑とは違い、怒声を上げるシノブの視線に、エルフィーネに対する憎しみはなかった。
シノブの視線には更に深い悲しみと怒りの色が浮かんでいた。

(どうして・・・私を憎んでくれないの・・・?)

エルフィーネは彼女の視線から憎しみ自体が消えてしまったのかとも思った。
しかし、すぐに違うことを悟った。
彼女の視線に混じる”なにか”に対する憎しみの感情も、確かに膨らんでいたからだ。
エルフィーネにはそれが歯がゆくて仕方なく感じられた。

(お願いだから・・・私を憎んでよっ!! その方が、楽なのよっ!!)

忌み嫌われ、憎まれ続けてきた存在故に、退魔士であるエルフィーネは憎まれることに慣れすぎていた。
だからエルフィーネは、シノブの憎しみを感じない怒りの視線に、苛立ちと例えようのない恐れを募らせていた。

(――お願いよシノブッ!! ”なにか”ではなく私を憎んでっ!! 私っ・・・私っ・・・こんな時、憎まれないと・・・どうしたらいいのか、分からないのよっ!!)
「――っ!! うおぉぉぉぉぉーーっっ!!」
「――うわっ!!」「――きゃぁっ!!」

エルフィーネは遂に居た堪れなくなり、断末魔の叫びのような雄叫びをあげマクベスを自らの周囲に着弾させた。
爆風と供に巻き上げられた砂埃に、シノブとアーシャは視界を遮られる。
そして、二人が再び視界を取り戻した時、そこにエルフィーネの姿は無かった。
暫く呆然と立ち尽くしていたアーシャは、慌ててシノブの傍へと駆け寄る。

「大丈夫!? シノブちゃん!!」
「アタシのことはいい! それより、早くエルフィーネをとめないとっ!!」
「気持ちは分かるけど、そんな状態じゃあ無理だよ! 今は一旦、休んだ方がいい!」
「アタシなら大丈夫だって言ってるだろっ! 邪魔をしないでくれよっ!」

アーシャの制止を振り切ろうとするシノブの頬に、突然衝撃が走った。
アーシャがシノブを叩いたのだ。
シノブは叩かれた頬を軽く押さえ、アーシャを見据える。

「・・・叩いたのは謝るよ。でもね、そんな浮き足だった状態じゃあ、助けられるものも助けられないよっ!」
「・・・助けられる・・・ものも・・・。」
「私も手伝うよ。だから、今は一旦休んで、気持ちを落ち着けようよ。ねっ?」
(かく言う私も・・・少し、気持ちの整理をしたいしね・・・。)

アーシャの同意を求める声に、シノブは暫しの沈黙の後、ゆっくりと頷いた。

「・・・そう、だな。ありがとう・・・アーシャねえ。」
「ど、どういたしまして。」
(『アーシャねえ』・・・って。私、”あねさん”と呼ばれる運命なのかなぁ?)

それからすぐにシノブとアーシャは、ロシナンテを丁寧に埋葬した。
そして、近くの木陰で軽く休んでから、エルフィーネの捜索を開始することにした・・・。
[17]投稿者:「戦士達の黄昏」その5 14スレ目の74◆DGrecv3w 投稿日:2009/07/23(Thu) 02:07 No.381   HomePage
【ロシナンテ、死亡】
【残り37名】

【D−2:X2Y4/森/1日目:真昼】

【川澄シノブ&スピリット=カーマイン@まじはーど】
[状態]:火傷の痕、魔力十分、精神疲労中
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6食分)
    SMドリンクの空き瓶@怪盗少女
    あたりめ100gパックx4@現実世界(本人は未確認)
    財布(中身は日本円で3万7564円)@BlankBlood(本人は未確認)
    ソリッドシューター(残弾数1)@まじはーど(本人は未確認)
[基本]:対主催、”悪”は許さない、『罪を憎んで人を憎まず』精神全開中
[思考・状況]
1.アーシャ・リュコリスと協力してエルフィーネを捜索する
2.エルフィーネの復讐をやめさせる
3.アクアリウムへ向かい富永エリナと合流する
4.ロシナンテのためにも、なるべく大勢で元の世界へ帰る
5.鬼龍院美咲と神谷カザネを殺した”悪”は絶対に許さない

※アーシャを”アーシャねえ”と慕うことにしました。

【アーシャ・リュコリス@SILENT DESIRE】
[状態]:所々に擦り傷や切り傷の痕、精神疲労小
[装備]:なぞちゃんの小太刀@アストラガロマンシー
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6食分)
    デッキブラシ@La fine di abisso
    ヨーグルトx3@生贄の腕輪
[基本]:対主催、できれば穏便に済ませたい
[思考・状況]
1.川澄シノブを守る
2.川澄シノブに協力してエルフィーネを捜索する
3.エリーが早まった行動をしていないか心配
4.どうにかしてエリーシアとクリステルに合流する

※彼女が案じていた女性の正体はミアですが、顔も名前も知りません
 但し、出会えれば気付ける可能性はあります
※銃=威力の高い大きな音のする弓矢のような物という認識をしました
※エルフィーネの要望に応え、彼女の変身については誰にも言わないことにしました

【エルフィーネ@まじはーど】
[状態]:所々に軽い擦り傷の痕、精神疲労大、魔力十分、現在変身中
[装備]:ロザリオ@まじはーど
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6食分)
    モヒカンの替えパンツx2@リョナラークエスト(豹柄とクマのアップリケ付きの柄)
[基本]:対主催、鬼龍院美咲を殺した者と邪魔する者を殺す
[思考・状況]
1.鬼龍院美咲を殺した者を探し出し殺す
2.邪魔する者も殺す
3.川澄シノブとアーシャ・リュコリスには会いたくない

※とりあえず初めて出会う相手にはエルと名乗ることにしています
※向かった方向はE−2X4Y1方面です、ロシナンテが合流してきた方角を頼りに移動中です
※魔力温存のため、シノブとアーシャからある程度離れたら変身を解除して行動するつもりです

※ロシナンテのデイパックはボロボロになっていて、中身は恐らく使い物になりません。
 一応、埋葬された場所はD−2X4Y4です。デイパックも同じ場所に埋葬されました。

@後書き
頑張ってロワっぽいことやってみたけど・・・無理矢理過ぎた気がしないでもないです。><
[18]投稿者:「姉として」その1 289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/09/22(Tue) 01:29 No.388  

鬱蒼と生い茂る森の中を歩いているのは、三人の女性だった。
りよなとエリーシア、そしてルカである。

エリーシアの右目の周りには青痣ができており、ルカの頭にはこぶができていた。

エリーシアの顔の痣は意識を取り戻したルカによって顔面に蹴りを入れられたため。
ルカのこぶは早栗を探そうと一人で駆け出したのをエリーシアの拳骨で止められたためである。

「……もうちょっと優しく止めてくれたら嬉しかったんだけどね、エリーシア……」

こぶの痛みに呻きつつ、ルカがエリーシアを睨んで言う。

「起きて早々、人の顔に蹴りを入れた貴女が言うことかしら?」

顔をヒクつかせながら、ルカに言い返すエリーシア。

「あの場合は仕方ないでしょ。それに言っとくけど、私はまだアンタを完全に信用したわけじゃないからね。」

あの後、意識を取り戻したルカはりよなの説得もあり、エリーシアを疑いつつも
とりあえずは信用することにしたのだ。

そして、一行は早栗を探すべく彼女の逃げた方角にある森へと足を進めていたのだが……。

「あ゛ーあ゛ー、てすてす。・・・ふぅ、ようやく繋がった
 ったく、そろそろコレ買い換えないといけないなぁ。」

突如聞こえてきた不快な声により、その足は止められた。

「……放送……」

りよなの呟きに、エリーシアとルカはハッとする。

状況の目まぐるしさのせいで放送について失念していたのだ。
慌ててデイパックから鉛筆とメモ用紙を取り出し、放送の内容を書き留める準備をする。

「2時間後の禁止エリアはC−2、4時間後の禁止エリアはB−1だよぉーん♪
 オニャノコ達は絶対入っちゃダメだかんねっ!」

エリーシアは禁止エリアをメモしながら、頭の中に地図を思い浮かべる。

(……今のところは関係なさそうね)

結構なことだ。
もしこの近くのエリアを指定されていたら、早栗を探す上で障害となっていたかもしれない。

「さて、次はー、みんな気になる死亡者の発表ー♪」

その言葉に、エリーシアの身体が強張る。

(……ルーファス……)

どうか、生き延びていて欲しい。
幼いころから病弱で、医者にかかりきりだった弟。
それが最近ようやく快方に向かい、元気な姿を見せてくれるようになったのだ。
それなのに、こんなところで終わってしまうなどあって欲しくない。

「じゃ、名前を読みあげていくよー♪ 合掌の準備はいいかなー?
 ひとーり、オルナ。
 ふたーり、篭野なより……」

横でりよなが瞳を見開く。

「……な……より……?」

盲目のりよなをずっと支えてくれていた大切な妹。
その妹が、死んだ。

光を写さないりよなの瞳、その瞳の闇がさらに深まった気がした。

「……ごにーん、鬼龍院美咲。
 ろっくにーん、那廻早栗……」

「……っ!!」

早栗の名を聞いたルカの顔が怒りと悔恨に染まる。
探していた少女、守ると誓った少女はルカが見つけ出す前に殺人者によって
殺されてしまったのだ。

「……じゅーににーん、リース。
 じゅーさーんにーん、ルーファス・モントール。」

(――――――――ッ!!)

その名を聞いた瞬間、エリーシアの時間が凍った。

(……ルーファス……弟……私の……)

視界がぐらぐらする。頭が痛い。

放送が続いているが、そんなものを聞いている余裕などない。
失ったものの重みにエリーシアはただ必死に耐えるしかなかった。






(51人中13人って……冗談でしょ……!?)

放送が終わり、必要な情報を書き留めたルカは死者のあまりの多さに唇を噛む。

まだこの殺し合いが始まってから6時間しか経っていないはずだ。
それなのに、すでに全参加者の4分の1が死亡してしまった。
想像以上に殺し合いに乗る輩が多いのかもしれない。

一刻も早く弱者を殺人者の手から保護しなければ。

(……もう、早栗のような犠牲者は出したくないわ)

そう思い、同行者の二人に向き直る。
そして、二人の様子を見て顔を顰める。

(……これは……まずいわね……)

二人の表情は絶望に染まっていた。
おそらく、先ほどの放送で大切な人が呼ばれてしまったのだろう。
彼女たちの心境を思うと、ルカもやりきれない。

だが、だからといって今休ませてやるわけにはいかない。

先ほどの放送で、早栗が死亡したことが告げられた。
それは早栗がこの森に逃げた後、まもなく殺されたということに他ならない。


つまり……この森に早栗を殺した人物がいる可能性が高い。


そんな危険性の高い場所で、二人がこの様では非常にまずい。

(せめて、エリーシアだけでも立ち直らせて今後のことを考えないと……)

ルカは二人を立ち直らせるために声をかけようとする。
だが、ふと鼻をつく微かな臭いに気がつく。

(……この匂いは……?)

覚えのある匂いだ。

一般人には馴染みの薄い臭い、だが人々を害するものを斬り伏せてきた
ルカにはかぎ慣れた臭い……。

そう、これは血の臭いだ。

(……まさか……)

ルカは立ち上がり、血臭のする方向へと顔を向ける。
エリーシアも気がついたのか、のろのろとルカと同じ方向へ目をやっている。
それを見て、ルカはエリーシアに告げる。

「ちょっと様子を見てくる。すぐ戻るから、リヨナを頼むわね」

そう言うと、ルカは譲ってもらったリザードマンの剣を構えて、
血臭の元へ向かって走り出した。

「…………」

そんなルカを、エリーシアはただ見送るしかなかった。







[19]投稿者:「姉として」その2 289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/09/22(Tue) 01:30 No.389  

木々を避け、枝を飛び越えながら野兎のごとくルカは進む。
やがて、視界が開けた先にあった光景は……。


「……っ……!!?」


そこにあったのは、地獄。

骨、肉片、臓物。
それらが辺りの木々に飾り付けられ、どす黒い血を滴らせ、
脊椎ごと引きちぎられた人間の頭部が、地面に突き立てられていた。

両腕を斬り落とされ、全身の皮を剥ぎ取られた少女が逆さに吊り下げられ、
ビクンビクンと痙攣を続けていた。

その吊り下げられた少女から剥ぎ取ったのであろう人間の皮膚が近くの木に
干されていた。

「な……何よコレっ……!?」

ルカの喉から引き攣った声が漏れる。

怪我人や死体があるかもしれないとは想像していた。
だが、このような狂気を目の当たりにするなど予想だにしていなかった。

目の前にあるのは人間の尊厳の全てを否定し、正気を根こそぎ刈り取る悪魔の宴だった。

さらに、ルカは吊り下げられた少女の顔を見て、気づく。

「……っ!!?」

その少女……両腕を失い、歯を折られ、全身の皮膚を剥がされた少女は……。


天崎奈々だった。


「……ナナ……!」

この殺し合いで出会った三人目の参加者。
先ほど別れたばかりの、先ほどまで元気だった少女の変わり果てた姿。

「……こんなっ……!こんなことっ……!」

溢れだす激情を抑えられない。

こんな非道な行いは許されない。
許されるはずがない。

そして、ルカは視線を奈々から横に移動させる。

そこには、この世のものとは思えない醜悪で歪な頭部を持つ化け物がいた。
その化け物は、ルカに対して禍々しい殺気を放っている。

間違いない。この化け物が奈々をこのような目に合わせたのだ。

「……たとえ、誰が許しても……神様が許したとしても……
 あたしはアンタを絶対に許さないっ!!」

ルカはそう言い放つと、化け物 ―― ルシフェルへ向かっていった。








エリーシアはルカが去った後も、ぼんやりと考えていた。

これからどうすればいいのか。

普通に考えれば、アーシャたちと合流するべきだ。
彼女たちと合流すれば自分たちの生存率は高まるだろうし、何より親友の二人が心配だ。
自分が合流すれば、彼女たちの力にもなれるだろう。

だが、どうしてもエリーシアはここから動くことができなかった。

弟 ―― ルーファスが死んでしまった。
守るどころか、出会うことすらできずに死なせてしまった。

今までの自分の行動を省みて、後悔する。

魔物を殺すことよりもルーファスを探すことを優先していれば。
撃たれた傷を治すことよりもルーファスを探すことを優先していれば。
りよなやルカなど放っておいてルーファスを探すことを優先していれば。

そんなことは考えても仕方の無いことだとは分かっている。

だが、どうしても考えずにはいられない。
横に座り込んでいるりよなに視線を向ける。

この子やルカがいなければ、ルーファスを救えたかもしれないのに……。

そんなことを、考えてしまう。

だが、りよなに視線を向けたエリーシアは気がついた。
りよなもまた自分と同じように、妹を亡くした悲しみに身を震わせていることに。

(……私は……)

何を考えていた?

自分が弟を守れなかったのを人のせいにしようとしたのか?

自分と同じように大切な家族を失った少女のせいにしようとしたのか?

(……最低ね……)

弟を守れなかったのは、自分のせいだ。
それをりよなやルカに八つ当たりするところだった。

それを気づかせてくれたのは、自分と同じ境遇のりよな。

たしかに、ルーファスを失ったことは悲しい。
それを考えるだけで胸が張り裂けそうになる。

だが、それでもエリーシアは立ち止まるわけにはいかない。
まだ、エリーシアには守るべきものがあるのだから。

アーシャ、クリス、りよな、ルカ。

彼女たちに力を貸し、彼女たちを守らなければならない。
そうしないと、死んだルーファスに顔向けができない。

エリーシアは未だに身を震わせているりよなに声をかける。

「……リヨナ」

その声が聞こえているのかいないのか、りよなは名前を呼ばれても何の反応も見せない。

「妹が死んでしまって悲しいのは分かるわ……私も同じだから。
 でも、こんなところで悲しんでいるわけにはいかないの」

りよなは何の反応も示さない。

「たしかに、貴女の妹が無くなったのはとても悲しいことよ。
 でもね、ここは殺し合いの場なのよ」

反応は無い。 

「そんなことでは貴女まで殺されてしまうわ。
 貴女の妹がそんなことを望むと思うの?」

ぴくっとりよなの肩が動く。
ようやく反応が見られたことにほっとするエリーシア。

「貴女は無くなった妹の分まで生きなければいけないわ。
 死んでしまった妹もそれを願っているはずよ」

りよなの俯いた顔が顔がゆっくり上がっていく。
相変わらず悲哀に満ちた表情だが、そこにはしっかりとした意志があった。

「……私は……生きないと……いけない……」

りよなの呟いた言葉は生存を目指す言葉。
その言葉を聞いて、エリーシアは喜ぶ。

「そうよ、こんなところで死ぬわけにはいかないわ。
 この首輪を外して、あの男を倒して、私たちは生き延びるのよ」

言い募るエリーシアに、りよなは弱々しくだが頷く。
エリーシアはそれを見て、安堵する。

この子はもう大丈夫だ。
どうやら、妹の死に完全に囚われているわけではないようだ。
少なくとも、生きる意志はある。
それならば、問題は無い。


「……たしは……を絶対に……ないっ……!!」


エリーシアはその声にハッとする。

ルカの声だ。

血の臭いを辿っていったルカが何かを叫んでいる。
おそらく、何かがあったのだ。

エリーシアは立ち上がり、りよなに向かって言う。

「リヨナ、さっきの声はルカに何かあったのかもしれないわ。
 私はルカのところに行くから、貴女は隠れていて。
 すぐに迎えに来るから……」

りよながその言葉に頷いたのを確認して、エリーシアはルカの元へ向かう。

「…………」

後には盲目の少女が残された。






[20]投稿者:「姉として」その3 289◇SqVSQKtY 投稿日:2009/09/22(Tue) 01:30 No.390  
神官見習いと巨人の戦いは、巨人の有利に傾いていた。

最初の邂逅と同じく、慣れない武器を手にルカは立ち回るが、
対して巨人は使い慣れた武器を持ち、ルカを肉塊に変えようと遠慮呵責無しに
その剛腕を振るう。
唸りを上げて風を切り、耳元を掠めてくる鋼の斧の迫力にルカは冷や汗を流す。

「このっ……!」

ルカは紙一重で迫る斧を回避し、巨人の利き腕を切り裂く。
だが、巨人は意に介さず横薙ぎにルカを反対の手に持つ刀で斬り裂こうとする。
慌てて、飛んで避けるルカ。
そのまま巨人を飛び越えて、反対側に着地する。

振り向くと、迫る巨人。
振り下ろされた斧をルカは横に避ける。

轟音、斧を突き立てられた大地が割れる。

その威力にルカは目を剥きつつも、隙を突いて巨人のわき腹を切り裂く。
しかし、やはり効いた様子が無い。
舌打ちしたルカは、巨人が仕掛ける前に間合いを取ろうした。
しかしその瞬間、腹部に鋭い痛みが走り、ルカは呻いて足を止める。

動き回ったせいで、エリーシアに切り裂かれた腹部の傷が開いたのだ。

(こんなときにっ……!)

焦るルカ。
巨人はその隙を逃さず、斧でルカを薙ぎ払う。
それを何とか手にした剣で防ぐも、威力を殺しきれずに吹っ飛ばされる。
そのまま木にぶつかり、背中を強打する。

「くっ!」
「ぃがっ……ぅ……!」
「……え……?」

ぶつかった木が呻いた。
驚いて振り向いたルカ。
すると、ぶつかったのが木ではなく、拷問の果てに虫の息となった
奈々であることに気がついた。

「……っ……!」

間近で見るとよりいっそう悲惨でグロテスクな様相の奈々に、ルカは息を呑む。

そのせいで、対応が遅れた。

頭上に影が降りる。
ハッと気づいたルカだが、もう遅い。
ルカと奈々の前に迫ったルシフェルは、袈裟がけに斧を振り下ろしていた。

(!?……やばっ……間に合わないっ……!)

死を覚悟するルカ。
だが、横から飛び出した影がルカを突き飛ばした。

「馬鹿っ!何呆けてるのよ、貴女は!?」
「……エリーシア!?」

飛び出してきた影はエリーシアだった。

「あ……あんた、リヨナはどうしたのよ!?」
「リヨナなら隠れておくように言っておいたわ。
 一応落ち着きは取り戻したから、しばらくの間は大丈夫よ」

ルカの言葉に、一息で答えるエリーシア。
そんなエリーシアの様子を見て、ルカは自分が心配するまでもなかったことを悟る。

「ぐ……げぅっ……」

その声に我に返るルカ。
慌てて、声の方向に目をやる。

そこには、胴体を真っ二つに切り裂かれ、上半身と下半身に分かれた奈々。
断面からは内臓がはみ出し、ただ弱々しく痙攣するだけの肉塊と化した少女。

「……そ、んな……ナナっ……!」

助けるつもりだった。
化け物を倒せば、エリーシアの魔法で何とかできると思っていた。

なのに、こんな……。

「……どのみち、あの状態では助からなかったわ……。
 私の魔法ではあんな重傷は治せないし、救う手立ては無かったのよ……」
「…………っ!!」

拳を血が滲むほど握りしめ、身体を震わせるルカ。

許さない。
許せない。
あの化け物だけは。

「……うああぁぁぁーーーーー!!」
「なっ!?待ちなさい、ルカ!」

いきなり飛び出したルカを慌てて止めようとするエリーシア。
だが、ルカは止まらない。

彼女は怒りに目が眩んでいた。

この殺し合いの場で起こる悲しみ、怒り、絶望、理不尽、狂気。
それらは決して彼女にとって許せるものではなかった。

そして、ルカのその怒りは自分自身にも向いていた。

最初の部屋で爆死させられた名も知らぬ少女。
守ると誓ったのに死なせてしまった早栗。
目の前の化け物の非道な行いの末に命を失った奈々。

この殺し合いの場で、ルカは誰一人として守ることができなかった。
人々を守る神官の端くれとして、それが情けなくて悔しかった。

激情に身を任せ、巨人に飛びかかるルカ。
そんなルカを巨人は払い飛ばそうと斧を振り上げ……。

ぞぐっ。

巨人の腕に突き刺さる、刀。
エリーシアが投げた日本刀だ。

それでも巨人に怯んだ様子は無いが、さすがに動きが一瞬止まる。

それを好機とルカは地を蹴り、巨人の頭上を捉える。
そして、頭部に思い切り剣を振り下ろした。

ずぐぅっ……!

ルカの振り下ろした剣は巨人の頭を深々と切り裂いていた。

(――……やったっ……!)

勝った。奈々の仇を取った。
その瞬間、ルカはそう思った。

「まだよ、ルカッ!!」

エリーシアの警告。
ルカはそれを聞いてようやく気づく。

その巨人が頭部に刃を突き立てられたにも関わらず、悠然と自分に視線を向けていることに。

(……そんな馬鹿なっ……!?)

目の前の出来事が信じられない。

頭をほとんど真っ二つに切り裂いたのだ。
それなのに、この巨人はダメージを受けたそぶりすら見せていない。

……化け物……。

ルカの脳裏に、その言葉が実感を伴って刷り込まれる。
そして、ルカが離脱する前に巨人の腕はルカを殴り飛ばす。

「あぐっ……!」
「ルカッ!?」

ルカは殴り飛ばされ、地に叩きつけられた。
そんなルカに向かって、巨人が斧を振り上げる。

殴られたダメージのせいで、ルカは避けることができない。


巨人の腕が無慈悲に振り下ろされ、鮮血が飛び散った。








「あ……あ……!」

目を見開いて凝視する。

こんなことがあるはずがない。
こんな馬鹿なことがあって良いはずがない。

なぜ、こんなことが……。


「……エリーシア……何で……?」
「……無事みたいね……」

巨人がルカに斧を振り下ろす直前に、割って入ったのはエリーシアだった。

彼女はルカを守るために、自分の身をさらけ出したのだ。
そのせいで、エリーシアの背中は斧で切り裂かれ、夥しい量の血が溢れだしていた。

「どうして……こんな馬鹿な真似したのよ……!?」
「身体が勝手に動いたのよ……まあ、鎧があればどうにかなるかもって
 打算もあったけど……」

エリーシアはそう言って、笑う。
それを見て、ルカの顔が悲痛に歪む。

巨人の一撃はエリーシアの鎧をあっさり叩き割り、エリーシアの背を切り裂いた。

「……大丈夫よ……今すぐに死ぬようなひどい傷でも無いわ……」

そう告げるエリーシアの顔には、たしかに死相は出ていない。

鎧は一応の役割を果たしたらしく、大地を叩き割るほどの一撃を受けた
エリーシアの傷は、重傷ではあるものの即座に死に影響するほどのものではなかった。
すぐに手当てをすれば、エリーシアは助かるはずだ。

それが分かり、ルカは落ち着きを取り戻すとともに決心する。
それならば、ルカのやることは一つだ。

ルカは巨人に殴られた痛みの残る身体に活を入れ、立ち上がる。
それを見て、エリーシアは怪訝な顔をする。

「……ルカ……?」
「エリーシア……私がオトリになるわ。その間にリヨナを連れて逃げなさい」
「!?……何を言ってるの……!貴女も一緒に逃げるのよ……!」

ルカの言葉に、エリーシアは抗議の声を上げる。
そんなエリーシアにルカは言う。

「無理よ。アイツが私たちを黙って逃がしてくれるわけがないわ。
 二人で逃げても捕まって殺されるだけよ。
 だったら、まだ動ける私がオトリになって時間を稼ぐしかない。
 それは、あんたにも分かってるでしょ?」
「……っ!」

エリーシアが悔しそうに俯く。
ルカは続ける。

「いい?私が今からアイツの注意を引きつけてここから遠ざけるから、
 その間に、アンタたちは安全な場所に逃げるのよ」
「……分かったわ……」

エリーシアは承諾する。
ここでゴネても、ルカの邪魔になるだけだと判断したからだ。

「……ルカ、死んだら許さないわよ」
「分かってるわよ、私だって死にたくないしね」

ルカは笑って答えた後、少し声を落として告げる。

「……悪かったわね、殺人鬼なんかと勘違いして……」

そして、エリーシアが返すのを待たずに巨人へと駆け出していった。
そんなルカの様子に、こんな状況にも関わらずエリーシアは噴き出してしまった。

「……何よ、あの子も可愛いところあるじゃない……」

ともあれ、いつまでも呑気な感想を抱いている場合でも無い。

巨人に石を投げ、蹴りを入れつつ逃げるルカを追って、巨人はこの場から離れて行く。
それを見届けた後、エリーシアは足を引きずりながらりよなの元へと歩んでいった。







[21]投稿者:「姉として」その4 289◇SqVSQKtY 投稿日:2009/09/22(Tue) 01:34 No.391  

誰かが戻ってくる気配に気づいたりよなが顔を向ける。

「私よ、リヨナ……」
「……エリーシアさん」

りよなは戻ってきたのがエリーシアだと分かって、安堵の息を漏らす。

「……何があったんですか?ルカさんは一緒じゃないの?」
「……ルカは今化け物と戦っているわ。私は怪我をして戦えなくなったから
 貴女を連れて逃げるために戻ってきたのよ」

りよなを心配させまいと、痛みを堪えながら平時の口調で告げるエリーシア。
エリーシアが告げる話の内容にりよなが不安そうな面持ちを見せる。

「怪我……?大丈夫なんですか?それにルカさんは……?」
「あの子は大丈夫よ。それに、私の怪我もそんなに大げさなものじゃないの。
 すぐに魔法で治療するから、心配はいらないわ」

心配ないと言うように、ことさら軽い口調で言うエリーシア。
だが、りよなはそんなエリーシアに対して詰問する。

「……本当のことを教えてください。
 私、エリーシアさんたちに庇われているだけじゃイヤです……。
 せめて、真実が知りたいんです……」

りよなのその言葉に、エリーシアは言葉を詰まらせる。

この子はこの子なりに、現状について考えているらしい。
それを心配させたくないからと嘘を吐くのは、不誠実なのではないか?

「……そうよね……悪かったわ。
 私の怪我だけど……実際のところ、かなりひどいものだわ……」

悩んだ末に、エリーシアはりよなに真実を告げることにした。

「魔法で治療するにしても、私程度の魔法じゃ気休めにしかならないでしょうね……。
 早く怪我の治療をしないと危ないかもしれない……。
 それにルカも……いえ、あの子は大丈夫……これは本当よ……」

重い事実を、エリーシアは話す。
それを聞くと、りよなは黙って考え始めた。
そして、しばらくして口を開く。

「……エリーシアさん、傷口を水で洗って消毒しておきましょう。
 どれだけ効果があるか分からないけど、やらないよりはマシなはずです。」
「……そうね……」

それを聞いて、エリーシアも考える。
たしかに、そのくらいはしておいたほうがいいかもしれない。
破傷風にでもかかったら溜まったものではないし、りよなの言うとおり
やらないよりはマシだろう。

そう考えるうちに、傷口が疼いてきて呻くエリーシア。

「……じゃあ……お願いしても、いいかしら……?」
「はい。傷口をこっちに向けてくれますか?」
「……ええ……」

傷口をりよなに向けるエリーシア。
りよなはデイパックをごそごそと探っている。

その音を聞きながら、エリーシアは考えていた。

(……良かった……リヨナも立ち直ってくれた……。
 今の状況で自分のできることを前向きに考えてくれている……)

自分と同じ立場の少女が立ち直ってくれたことをエリーシアは喜ばしく思う。

(……リヨナには感謝しないとね。この子がいなければ、
 私はルーファスを失った悲しみで我を忘れていたかもしれない……)

エリーシアはりよなが妹を失って絶望している姿を見て、理不尽な考えに囚われずに済んだのだ。
この殺し合いで大切な人を失い、悲しみを感じているのは自分だけではないと実感できたから。

それに、自分と同じ境遇の者がいてくれるのはエリーシアにとっては大きな救いだった。
この少女も自分と同じ悲しみを抱いて、この殺し合いの打破に挑もうとしてくれている。

それだけで、エリーシアは救われる思いだったのだ。

(本当に……この子がいてくれて、良かった……)

エリーシアは心底からそう思った。




ごばぅっ!!




突如、背中に激痛が走った。
凄まじい痛みと熱。

「いぎぅあああぁぁぁぁっっ!!?」

エリーシアは悲鳴を上げ、地面をのた打ち回る。

痛い熱い痛い痛い熱い痛い!!
脳は激痛に満たされ、背中から響く耐えがたい痛みに意識が刈り取られそうになる。

(……何が……!?……何が、起こったの……!?)

エリーシアは痛みを堪え、混乱しながらも考える。

まさか、新たな殺人者が現れたのか?
だとすると、りよなだけでも何とか逃がさなければ……!

「……ごめんなさい、エリーシアさん……」

だが、その考えを切り捨てるかのようにりよなの声がエリーシアの耳に届く。
それを聞いて、りよなへと視線を向けるエリーシア。

目の前にはサラマンダー……エリーシアの最後の支給品を構えるりよなの姿。
その顔は恐ろしいほどの無表情で、エリーシアがぞっとするほどの凄味があった。

「な……んで……?リヨナ……?」
「……本当にごめんなさい……」

りよなは無表情のまま、エリーシアに謝る。
だが、エリーシアには意味が分からない。

恐らく、自分を攻撃したのはりよなだろう。
だが、それはなぜだ?
謝っているということは、間違えて攻撃したのだろうか?
いや、りよなの様子からして、それは無い。

りよなは、確固たる意志を持ってエリーシアを攻撃したのだ。

「……この殺し合いで最初に言われたことを覚えていますか、エリーシアさん?」

最初に言われたこと?
ルール説明のことだろうか?
だが、それが一体何だというのか……。

「……この殺し合いを開催した人は言ってました。
 この殺し合いで最後まで生き残った人には、どんな願いも
 一つだけ叶えてくれるって……」

たしかに、あの男はそんなことを言っていた。
だが、そんなことは殺し合いに乗っていない自分たちには関係無いはずだ。

「……私、放送でなよりが死んだと聞かされて絶望しました……。
 死んでしまおうかとも思いました……。
 ……でも、思いついたんです……。
 もし私がこの殺し合いで優勝して、なよりを生き返らせてほしいと
 願ったらどうなるのか……」
「なっ……!」

そんなことができるわけがない。
そんなことは不可能だ。

「……できるわけないって思いますよね……?私もそう思います……。
 でも、可能性はゼロじゃないと私は思うんです……」

そう言って、りよなはさらに話し続ける。

「この道具……サラマンダーみたいな道具や、エリーシアさんの魔法なんて
 私の世界の常識では考えられないんです……あり得ないものなんです……。
 それなのに、サラマンダーもエリーシアさんの魔法も存在している……。
 そもそも、この殺し合い自体が私にとってあり得ないんです……」

りよなは喋り続ける。まるで何かに憑かれたかのように。

「あり得ないものが……あり得ないことがこんなにたくさん起こってるんですよ……?
 だったら、なよりが生き返るってあり得ないことが起こっても不思議じゃないと思いませんか……?
 だって、そうでしょ……?なよりがこんな殺し合いに巻き込まれて死ぬなんて、
 それこそあり得ないんだから……だったら、なよりが生き返るのはむしろ当然だと思いませんか……?」

そこまで聞いて、エリーシアは気がつく。

(……この子は……)

「……なよりはずっと目の見えない私を支えてくれました……。
 いつも私に優しくしてくれて、私を気遣ってくれて……。
 私、お姉ちゃんなのに、あの子に何もしてあげられなくて……。
 なのに、こんなところで死んじゃうなんて……。
 私、まだあの子に何もしてあげてないのに……。
 そんなのって、おかしいでしょ……?おかしいですよね……?」

もはやエリーシアに喋っているのか独りごとなのかも分からないりよなの言葉。

エリーシアはそれを聞いていて、ただ悲しかった。
妹の死から立ち直ってくれたと思っていた少女は、ただ現実から目を逸らしていただけだった。
そして、彼女は妹を生き返らせるという目的のために妹がもっとも悲しむであろう選択肢を選んでしまったのだ。

エリーシアが立ち直るきっかけを与えてくれた少女は、エリーシアとは真逆の道を選んでしまった。

「……リヨナ……お願い、考え直して……貴女の妹はそんなことを望んで……」
「……うるさい、貴女がなよりを語らないで……」


ごばぅっ!!


エリーシアの言葉を遮り、サラマンダーの炎をエリーシアに放つ。
炎に焼かれ、エリーシアは苦鳴を洩らしながらもりよなに訴える。
何とか、りよなを思いとどまらせようと。

「……それに……目の見えない貴女が……どうやって優勝するつもりなの……?
 ここには、人間以外の……化け物もいるのよ……無理に決まってるわ……。
 悪いことは言わないから……ルカみたいな殺し合いに乗っていない……参加者に……
 守ってもらいなさい……」
「……もちろん、そのつもりです……私が優勝するために……」


ごばぅっ!!


再び放たれるサラマンダーの炎。
もはや激痛しか感じない身体に残った僅かな力を振り絞り、りよなに言葉を向ける。

「……私も……弟を……ルーファスを失って……悲しかった……。
 でも、貴女を見て……貴女がいてくれたから、私は……」
「……もう、喋らないでください……」

りよなは最後まで聞かずにサラマンダーを発動させる。

ごばぅっ!!ごばぅっ!!ごばぅっ!!ごばぅっ!!ごばぅっ!!

放たれる炎の嵐がエリーシアを猛然と襲う。
エリーシアはもはや悲鳴を上げることもなく、炎に呑まれていった。


そして、そこに残ったのは黒焦げになった焼死体のみ。

だが、それはりよなの盲目の瞳には映らない。

「……待っててね、なより……。
 ……絶対に最後まで生き残って、なよりを生き返らせてあげるからね……」

薄く微笑みながら、りよなはその場から去っていく。
もはや、彼女の頭にはなよりを生き返らせるという考えしか存在しなかった。







[22]投稿者:「姉として」その5 289◇SqVSQKtY 投稿日:2009/09/22(Tue) 01:34 No.392  

ルカが意識を取り戻す前、エリーシアは先ほどの生首騒動の二の舞とならないように
その場の全員の支給品を改めていた。

そして、新たに出てきた支給品で役立ちそうな物は二つ。

一つ目はリザードマンの剣。
少々武骨な作りで扱いにくそうだが、貴重な武器だ。

「この剣はこの子が目を覚ましたとき、協力的なら渡してあげましょう」
「……そうですね……渡した途端に斬りかかられても困りますし……」

エリーシアは横で寝ているルカに視線を向けながら言う。
りよなはそんなエリーシアの言葉に同意を示している。

いくらか話をした印象として、りよなはエリーシアを信用できる人間だと判断していた。

この人は殺し合いに乗るような人物ではない。

警戒心が強く人を滅多に信用しないりよなだが、弟を心配するエリーシアの言葉は嘘とは思えなかった。
そして、それゆえに同じ姉としてりよなはエリーシアを信用できると判断したのだ。

「次は、これを誰に渡すかだけど……」

二つ目はサラマンダー……説明書によると炎を放って敵を攻撃する魔法の品らしい。
確かめてみたところ、魔力の無い物でも簡単に扱える物のようだ。

「そうね……リヨナ、これは貴女に渡しておくわ」
「……えっ……?」

その言葉に驚いた顔をするりよな。

目の見えない自分にそんな危ないものを渡しても良いのか?

りよなはそう思ったのだが、エリーシアは持っていろと言う。

「確かに目の見えない貴女に渡すのは少し不安だけど、護身の方法が何も無いのはもっと不安でしょう?
 不用意に使わないようにすれば大丈夫だと思うから、とりあえずは持っておきなさい」

そう言った後、エリーシアはりよなの頭をポンと叩いて微笑みながら言う。

「それに、貴女は妹を守るんでしょ?だったら、何か武器が無いとね」
「……あっ……」

その言葉を聞いて、りよなは改めて思った。

そうだ。自分はなよりを守るんだ。
そして、これはなよりを守るために役立つもの。
私はこれで、なよりを守るんだ。

「……ありがとう、エリーシアさん……」

りよなは微笑んでエリーシアに感謝の言葉を述べた。

それはエリーシアが初めて見たりよなの笑顔。
それは、とても可愛らしい笑顔だった。




今は失われてしまった、二度と見ることの叶わない笑顔だった。








【天崎 奈々@BlankBlood 死亡】
【エリーシア・モントール@SirentDesire 死亡】
【残り35名】




【E−4:X4Y2/森/1日目:真昼】

【エリーシア@SILENTDESIREシリーズ】
[状態]:死亡(焼死体)
[装備]:破損したエリーシアの鎧(装備不可能)@SILENTDESIREシリーズ
[道具]:無し


【篭野りよな@なよりよ】
[状態]:盲目、中疲労、精神不安定
[装備]:木の枝@バトロワ、サラマンダー@デモノフォビア
[道具]:デイパック、支給品一式(食料・水9/6)
[基本]:マーダー、なよりを生き返らせる
[思考・状況]
1.ルカと合流する
2.善良な参加者を見つけて利用する


【ロカ・ルカ@ボーパルラビット】
[状態]:中ダメージ、腹部に裂傷
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式(食料7/6、水6/6)
[基本]:生存者の救出、保護、最小限の犠牲で脱出
[思考・状況]
1.オトリとなってルシフェルを引きつける
2.エリーシア、りよなと合流する
3.戦闘能力の無さそうな生存者を捜す
4.天崎涼子を探す

※エリーシアの支給品から食料、水、地図、時計、コンパスを補充しました。


【天崎奈々@BlankBlood】
[状態]:死亡
(上半身と下半身が真っ二つ、両腕損失、全ての歯を損失、
 頭部以外の全身の皮膚が剥がされている)
[装備]:無し
[道具]:無し


【ルシフェル@デモノフォビア】
[状態]:右腕に日本刀、頭にリザードマンの剣が刺さっている
[装備]:ルシフェルの斧@デモノフォビア
ルシフェルの刀@デモノフォビア
早栗の生皮(わき腹につけた)
[道具]:デイパック、支給品一式(奈々から奪った分)
バッハの肖像画@La fine di abisso(音楽室に飾ってありそうなヤツ)
弾丸x10@現実世界(拳銃系アイテムに装填可能、内1発は不発弾、但し撃ってみるまで分からない)
[基本]:とりあえずめについたらころす
[思考・状況]
1. ルカを追いかけて殺す
2.奈々の生皮は後で取りに戻る
3.ころす

※奈々の生皮はE-4:X2Y2に干したままです。

※ルシフェルの頭部についての補足。
見ただけで吐き気を催すような異様な形状をしています。実在する生物との共通点は一切見当たりません。
皮交換のとき以外は極力隠します。ハズカチイ
頭部から分泌するご都合主義的液体は、出すまでに時間がかかるうえ、
粘性が高く、すぐ乾燥するので、撒き散らして目潰し等の武器には使えません(少なくとも相手を拘束しないと役に立たない)。







[23]投稿者:『不幸は重なるもの 1』 289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/12(Mon) 18:41 No.396  

協力者を探して、昏い街の中を探して回ったフロッシュとカナリアだったが、
結局2時間近く探しても協力者を見つけることは出来なかった。

「誰もいませんねぇ……」

カナリアが眉をハの字にしてぼやく。
そんなカナリアを宥めるようにフロッシュが返す。

「……まあ、仕方ありません。殺し合いが始まって
 それほど時間が経ったわけでもないですしね」

……ちなみに彼女たちが街を探索をしていた間に、鈴音と八蜘蛛、桜が宿屋に侵入していたのだが、
宿屋を比較的初期に探索していたせいで、不運にも彼女たちはそのことに気付くことができなかった。

「……時間も惜しいし、ここの探索は切り上げて先に進みましょう」

フロッシュとカナリアは昏い街の探索を切り上げて、次の目標を目指すことにした。

「どこに行きましょうか?」

カナリアの問いかけに、フロッシュはしばし考えた後に答える。

「そうですね……この古い木造校舎に行ってみましょう。
 ここからは比較的近いですし、廃墟や塔に比べれば役立つ物が
 ある可能性が高い。何もなかったとしても、近くに村があるので、
 次はそちらを目指すこともできます」

こうして、彼女たちは古い木造校舎を目指すこととなった。






「……弓矢と霊力を帯びた札ね。私の物と比べてなかなか充実しているじゃない」

リネルはリョナたろうのデイパックの支給品を回収しながら、自分のものと比べて
随分と内容が充実しているリョナたろうの支給品に軽い怒りを感じていた。

「……さて、これからどうしようかしらね」

リネルは考える。
怒りに我を忘れてエンペラー1を使ってしまったせいで、魔力をかなり消費してしまった。
だからといって自分が他の参加者に負けるとは思わないが、最終的にキング・リョーナと戦うことを
考えると、できるだけベストコンディションを保っておきたいところである。

「……そうね。エンペラー1の効果が切れるまでは、当初の予定通りに他の参加者を探しつつ、
 あの小娘どもを探すとしましょう。支給品の中には回復アイテムも含まれているでしょうし、
 どちらにせよ、それが最善のはず……」

そう、エンペラー1の効果が持続している今こそ動くべきだろう。
他の参加者に負けることは無いにせよ、手こずることくらいはあるかもしれない。
ならば、能力の高まった今のうちにできる限り参加者を屠り、エンペラーTの効果が切れた後に休息を
取ればいいだろう。

「……ふふ……それにちょうど良い物を手に入れたことだしね……」

リネルが手に持つ物は、首輪探知機。
現在彼女の手にあるそれは、リョナたろうが乱暴に地面に投げつけたことにより、スイッチが入った状態と
なっている。

リネルは首輪探知機の画面を見て、スイッチを少し弄っただけでこの道具の用途を理解した。

「これがあれば他の参加者を探すのも楽になる……どうやら、運は私に向いているらしいわね」

酷薄な笑みを浮かべながら、つぶやくリネル。
そんな彼女の耳に、キング・リョーナが告げる放送の声が響いてきた。
その内容を聞き取りながら、オルナが死んだという事実に舌打ちする。

「……随分とあっさり死んでくれるわね。私にあれだけの屈辱を味合わせておきながら……!」

自分の手で嬲り殺しにできなかったこと以上に、自分を返り討ちにした者があっさり死んだということに
リネルは激しい怒りを覚える。

「……まあいいわ。死んだ者になど興味はないし、まだ生き残っている二人を早く探し出すとしましょう。
 ……あら?」

行動を開始しようとしたリネルは、首輪探知機にいつの間にか二つの光点があることに気が付いた。

「ふふ……ちょうどいいわ。この二人で憂さ晴らしといきましょうか」

リネルは光点の反応のある場所に向かって、凄まじい速度で駆けていった。





[24]投稿者:『不幸は重なるもの 2』 289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/12(Mon) 18:41 No.397  

フロッシュとカナリアが古い木造校舎へと向かう途中、どこからともなく声が響いてきた。
それが放送だということに気付いた二人は、耳をそばだてて聞き逃さないように注意を払った。

「2時間後の禁止エリアはC−2、4時間後の禁止エリアはB−1だよぉーん♪
 オニャノコ達は絶対入っちゃダメだかんねっ!」

指定された禁止エリアの位置に、フロッシュは苦い顔をする。

「……C−2……ですか……」

目的地であった古い木造校舎はC−2エリアに含まれている。

(嫌がらせですか、この男……)

このタイミングで禁止エリアに含むなど、わざとやっているとしか思えない。
そんなことを考えているうちに、放送は死者の発表まで進んでいく。

「じゃ、名前を読みあげていくよー♪ 合掌の準備はいいかなー?」
 ひとーり、オルナ。
 ふたーり、篭野なより……」

「……え……?」

呼ばれた名前に、カナリアが呆けた表情になる。
その様子に、フロッシュはカナリアのほうに振り返る。

「……カナリア?」
「……オルナ……さん……?」

呆然とした表情でオルナの名前を口にしたカナリア。
フロッシュはその様子を見て、大体の事情を察した。

「……カナリア……」

何と言えば良いか分からず、フロッシュが再びカナリアに呼び掛ける。
カナリアはフロッシュに振り返る。
何が起こったのか分からないという表情でフロッシュを見ている。

その顔が不意に歪んだ。

「ふえ……」

カナリアの瞳から涙が零れ落ちる。
次から次へと、涙が溢れだす。

「ふえええぇぇ……!オルナさんが……!オルナさんがぁ……!」

耐えきれなくなったカナリアが泣き出し始めた。
フロッシュはそんなカナリアを抱きしめて、頭を撫でてやった。

泣きじゃくるカナリアをあやしながら、フロッシュは考える。

(どうしましょうか……さすがにこんなところでいつまでも泣かせていたら、
 他の参加者に見つかってしまいますし……)

とはいえ、カナリアは親しい人間が亡くなって悲しんでいる。
今しばらくは悲しみに浸らせてやりたいところだ。

(……せめて、そばの森に移動しましょう。ここは見晴らしが良すぎます)

そう考えたフロッシュは、カナリアを抱きかかえて森のほうへ歩き出そうと……。


ざぐっ。


「……ぐぅっ!?」

突如、凄まじい激痛がフロッシュを襲った。
見ると、フロッシュの右足に鋭い氷塊が刺さっている。
氷塊はフロッシュの右足を貫通し、地面に縫い付けていた。

油断した。
カナリアを気にするあまり、周囲への注意を怠ってしまった。

「フロッシュさん!?」
「くっ……!カナリア、逃げ……!」

逃げて、と声を発する前にフロッシュの胸に氷塊が迫る。

それはつまり、抱きかかえているカナリアに氷塊が迫ってくることと同義。

「っ!」

咄嗟にカナリアを投げ捨てるフロッシュ。
これでカナリアの身に氷塊が突き刺さることはない。

だが、そのせいでフロッシュは身を守る術を無くしてしまった。
為す術もなく、氷塊はフロッシュの胸に深々と突き刺さった。

「がふっ……!」

フロッシュほどの腕前ならば、飛んでくる氷塊を盾で防ぐことなど造作も無いはずだった。
だが、カナリアを抱きかかえていたことが仇となってしまった。

倒れるフロッシュ。
投げ出されたカナリアは、地面に叩きつけられた痛みをこらえてフロッシュに駆け寄り、声をかける。

「フロッシュさん!フロッシュさん!」

だが、フロッシュはカナリアの声に何の反応も示さない。
そのフロッシュの様子から濃厚な死の臭いを感じ取ったカナリアは恐怖する。

「あ……あ……!フロッシュさん……!やだ……!」

精霊であるカナリアは今まで様々な生物の死に立ち会っており、死というものには慣れていた。
だが、親しい者が傷つき、死んでしまうという経験は一度も味わったことがなかった。
むしろ、カナリアは死を見慣れているだけに自分の大切な人が死ぬことに忌避感を持ってしまうのだ。

大好きな人たちに、今までに見てきた死を重ねてしまう。

ナビィの身体を媒介として復活したカナリアは、普通の精霊では感じることの無い死の恐怖というものを
他人の死という形で感じるようになってしまったのだ。

「死なないで……!グスッ……!死なないで、フロッシュさん……!」

精霊の竪琴を取り出し、必死で癒しの音色を奏で出すカナリア。

ヒュンッ!

だが、飛んできた氷塊が竪琴を掠めていった。

「きゃっ……!」

カナリアは驚いてこけてしまう。
だが、怯まずに落とした竪琴を拾い上げ……。

「!……そんな……!?」

カナリアは絶望に声を震わせた。

竪琴の弦が切れていた。
先ほどの氷塊はカナリアを狙ったのではなく、竪琴の弦を狙ったのだ。

これではフロッシュの傷を癒すことはできない。

「う……ううぅぅ〜……!」

涙が溢れる。
オルナに続いて、フロッシュまで死のうとしている。
そして、自分にはそれをどうすることもできない。

このままでは、フロッシュまで死んでしまう。

(やだ……!そんなの、やだぁ……!)

どうしようもない現状に、カナリアは泣き出したくなる。
だが、そんなカナリアを現状は気遣うことなく、余計に事態を悪化させていく。

「お前……精霊ね?」

その声に、ビクッと身体を震わせるカナリア。
声のほうに顔を向けると、そこには露出の高い服装を纏った少女 ―― リネルがいた。
その少女から感じる邪気にカナリアは身を震わせつつも、きっと睨みつける。

(この人がフロッシュさんを……!)

だが、カナリアの様子などお構いなしにリネルは続ける。

「今、オルナの名を口にしていたでしょう?
 お前、ヤツらの仲間なのかしら?」
「!?……まさか、貴女はロアニー……!?」

カナリアの言葉を聞いて、リネルは笑みを浮かべる。

「……どうやら、ヤツらの仲間で間違いないようね」

そう呟いた後、いきなりリネルの姿が消える。
カナリアは慌てて周囲を見回すが、次の瞬間には背後から羽交い絞めにされていた。

「!……は……放してくださいっ!」

悲鳴を上げるカナリアを無視して、リネルはカナリアの唇に自分のそれを押し付けた。

「んっ……!?んうぅぅ〜っ!!?」

驚いて逃れようとするカナリアを無理やり押さえつけ、リネルはカナリアの唇を貪る。
そして、カナリアの精気はリネルへとみるみる吸い取られていく。

「ん……んんぅっ……!?」

自分の精気を吸い取られていることに気がついたカナリアは焦る。

このままでは、精気を吸い尽くされてカナリアは消滅してしまう。

しかし、逃れようにも精霊のカナリアの力ではそれは不可能だ。
加えて、リネルの身体能力は強化されている。

どうあっても逃れることは叶わない。

(……ナ……ナビィ様……)

やがて、意識が薄れてきたカナリアは自らの死を覚悟し……。


と、いきなりリネルがカナリアを放して後ろへと飛ぶ。

その拍子にカナリアは地面に倒れそうになった。
だが、それを抱きかかえる手が横から伸びる。

「……無事ですか、カナリア?」
「……フロッシュ……さん……?」

そこにいたのはフロッシュだった。
虫の息だと思われたフロッシュが自力で立ち上がり、カナリアを救ったのだ。
彼女は右手にファルシオンを持ち、左手にカナリアを抱えながら、鋭い目でリネルを睨んでいる。

その佇まいからは瀕死の重傷を負ったとは思えないほどの気迫を感じる。

「……カナリア、この少女は私が相手をします。
 貴女は逃げてください」
「……嫌、です……私も……」
「……今の貴女では足手まといです。
 まともに動く力も無い上に、竪琴も使えないのでしょう?」

フロッシュはカナリアの言葉を遮り、にべも無く言い放つ。

「でも……フロッシュさんだって……」
「私は大丈夫です。あれしきの怪我で戦いに支障をきたすほど
 ヤワな身体ではありません」
「…………」

不安そうなカナリアに、フロッシュは笑みを向ける。

「……私を信じてください。貴女は私が守ります。
 探し人にも必ず再会させてあげます。
 そして、私もこんなところで死にはしません」

フロッシュの真摯な言葉に、カナリアはとうとう折れた。

「……分かりました」

カナリアはフロッシュの手から離れ、リネルと逆の方向に飛んでいく。
カナリアは去り際にフロッシュに向かって叫ぶ。

「絶対に後で追い付いてくださいね!約束ですよ!」
「ええ、必ず!」

カナリアの言葉に、フロッシュは承諾の意を返す。
離れて行くカナリアの気配を感じながら、フロッシュはリネルへと対峙する。

「……それで?」

リネルがフロッシュに問いかける。

「貴女、本当にあの子に生きて再会できるとでも思ってるの?」
「……いいえ……私はここで死ぬでしょう。
 貴女ほどの実力者を前に、そんな甘い考えを抱けるほど未熟ではありません。
 ……それに、そもそもこの傷では私は長く無い。」

フロッシュは自分の生命がもう長くないことは分かっていた。
だが、それでもカナリアを逃がすためにあえて嘘を吐いた。
フロッシュの身体が限界に近付いているのを知れば、あの無邪気な精霊は
絶対に自分を置いていくことなどできなかっただろうから。

(……すみません、カナリア。私は貴女を欺いてしまった……)

心の中で謝罪しながら、フロッシュは一秒でも時間を稼ごうと剣を構える。
だが、そんなフロッシュを小馬鹿にするようにリネルは笑い声を上げる。

「うふふふ……馬鹿な女ね。そんな状態であの子が逃げる時間を稼げるとでも?
 それに、あの子は私に精気を吸われてまともに動くこともできないのよ?
 あの子は貴女を殺した後に捕えて、ゆっくりと可愛がってあげるわ……」

リネルの言葉にフロッシュは表情を険しくする。

「……カナリアには指一本触れさせません!」

フロッシュはリネルへと飛びかかっていった。





[25]投稿者:『不幸は重なるもの 3』 289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/12(Mon) 18:43 No.398  

カナリアは必死で飛び回っていた。
彼女はフロッシュの言うとおり戦いの場から離れていたが、逃げるつもりなどなかった。

(誰か、他の参加者の人を探して助けてもらうんです!
 そうすれば、フロッシュさんだって……!)

そう、彼女は他の参加者に助けを求めるつもりだった。
カナリアは、フロッシュが自分を逃がそうとして嘘を吐いていることくらい見抜いていた。
だが、自分が足手まといなのは事実だ。あそこに残っても役には立たないだろう。

ならば、協力者を探して助けを求めるのがベスト。

現状ではフロッシュを救う手立てはそれしか無い。
カナリアは精気を吸われてほとんど力の入らない身体に鞭を入れて、必死で他の参加者を探していた。

そして、その必死な思いが通じたのか、カナリアは運良く一人の参加者を見つけることができたのだ。

「そ……そこのお兄さん!助けてください!
 フロッシュさんが……私の仲間が殺されそうなんです!」

だが、カナリアの幸運はそこまでだった。
……いや、元からそれは幸運などではなかったのかもしれない。

よりにもよって、彼女の見つけた参加者とは……。

「……あぁ?何だこりゃ、妖精か?
 まあいいや。可愛い顔してるし、さっそく頂いちまおうか!」
「えっ!?あっ……!?」

カナリアは危険を感じて離れようとしたが、遅かった。
男 ―― 強姦男はカナリアを押し倒し、そのままカナリアの服を両手で掴んで引き千切る。

「ひっ……!?」
「さあ、たっぷり可愛がってやるからなぁ……!」

鼻息荒く、カナリアの露わになった胸に舌を這わせる強姦男。

「い……嫌っ……!?嫌ぁぁぁっ!!?」

男の自分に対する行いにカナリアは恐怖する。

カナリアには性知識の類は無い。
だが、男の行為に言い知れぬおぞましさを感じ、死に物狂いで抵抗する。

しかし、元々人間よりも力が劣る上に、精気を吸われてしまったカナリアには
セイントを使う力すら残っていない。
今のカナリアの抵抗など強姦男にはほとんど意味が無かった。

そうこうしているうちに、強姦男の手がカナリアの秘所に滑り込んでくる。

「ひぅっ……嫌ぁぁ……!」

半泣きで身をよじるカナリアの頬に口づけながら、強姦男は服を脱ぎ始める。
そして、下半身を露わにした強姦男はカナリアの髪を乱暴に引っ掴んで、
自らの股間に押し付ける。

「!?……やだっ……やだぁぁっ!?」
「ちっ……!大人しくしろ、コラ!」

強姦男は暴れるカナリアを数度殴りつけ、殴られたカナリアは悲鳴を上げる。
カナリアが抵抗を弱めた隙を狙って、無理やり口に男根をねじ込もうとする。

「んぅっ!?んんぅぅ〜〜っ!!」

カナリアは口を固く閉じて抵抗する。
舌打ちした強姦男はカナリアの鼻を指で詰まんで、呼吸をできなくしてしまう。

「……っ……!」

やがて、耐えきれなくなったカナリアが口を開くと同時に、強姦男の男根が
カナリアの口に押し込まれた。

「んぅぅーーっ!!」

口いっぱいに不快な味が広がり、カナリアは吐き気に襲われる。

(やだっ……気持ち悪い……気持ち悪いよぉっ……!)

固く閉じた瞳から涙を零しながら、カナリアは幼い身体にぶつけられる男の凶暴な獣欲に
ただ耐えるしかなかった。

「へへっ……もっと激しく行くぜ?」

強姦男はそう言うと、カナリアの頭を両手で掴んで固定し、自らの腰を激しく前後に揺さぶった。

「んむぅっ!?んぐっ……んんぅっ!!んんーーっ!!」

男根を喉奥まで何度も突き込まれる衝撃に、カナリアはあまりの苦しさに限界まで目を見開く。

(苦しいっ……!!助けてっ……誰か……!)

心中で助けを求めるが、誰もカナリアを助けに来ない。
やがて、カナリアの口内をたっぷりと楽しんだ強姦男はカナリアの口の中に男の欲望をぶちまけた。

「んんんぅぅ〜〜〜〜っ!!」

カナリアの悲痛な声が耳に響くのを心地よく感じながら、強姦男はカナリアの口の中で10秒近く
たっぷりと射精を続ける。
そして、射精を終えた強姦男は乱暴にカナリアを地面に投げ捨てる。

「ひっく……ぐすっ……うぇぇ……!」

口の中を精液でいっぱいにされて泣きじゃくるカナリア。
そんなカナリアに再び圧し掛かる強姦男。

驚くカナリアに、強姦男はいやらしく笑いながら告げる。

「おいおい、これで終わりだと思ったのか?本番はこれからだぜ?」
「!?……嫌っ……嫌です……もう嫌ぁぁっ!!」

泣き叫ぶカナリアを押さえつけ、強姦男はカナリアを再び凌辱し始めた。





[26]投稿者:『不幸は重なるもの 4』 289◇SqVSQKtY 投稿日:2009/10/12(Mon) 18:44 No.399  
「……あら?」

カナリアを追いかけていたリネルは、道端にほとんど全裸で倒れているカナリアを見つけた。

その有様はひどいものだった。

衣服は乱暴に破かれ、身体中のあちこちに殴られた跡があり、胸や首筋など所々に
血が滲むほどくっきりと歯形がつけられていた。
秘所と口の端には白濁液が伝っており、明るく無邪気だった精霊の瞳からは光が消えていた。

「……ふぅん……」

その有様を愉快そうに眺めながら、鼻を鳴らす。

仇敵の仲間である精霊の少女がどのような目に会おうと、リネルは何とも思わない。
いや、むしろその様を嘲笑い、嗜虐心を満たすだけ。
特に何の痛痒も感じることなく、後ろに言葉を投げかける。

「……これはお前がやったのかしら?」

その言葉に、リネルの後ろから仰け反るような気配がする。
振り返ったリネルの視線の先にいたのは強姦男だった。

彼はカナリアを凌辱した後、近付いてくる人影を見つけて、姿を隠して様子を窺っていたのだ。

そして、幼い少女の姿をしたリネルを見て、危険は無いと判断、再び凌辱の宴を再開するために
リネルを背後から襲おうと忍び寄ったところでリネルに声をかけられたのだ。

「えーと……何のことやら……」
「とぼけなくてもいいわ。このガキは私の仇敵である女の仲間なの。
 コイツがどんな目に会おうと私にはどうでもいいことよ」

リネルの言葉に強姦男は目を瞬かせる。

「……仇敵?」
「……お前にはどうでもいいことよ。
 さて、どちらにせよお前を生かしておく価値は特に無いわね。
 死になさい」

リネルはそう言うと、手の平に炎を宿して強姦男に向ける。

(げっ!?このガキも発火能力者かよ!?)

焦る強姦男。
必死に考えを巡らし、リネルに言葉を紡ぐ。

「ちょ……ちょっと待った!
 俺が持ってる情報を教えるから、殺すのは勘弁してくれ!」
「……情報ねぇ……」

リネルは目を細めながら、強姦男を見据える。
その視線に得体の知れない恐怖を感じながらも、強姦男は言い募る。

「そう!とっておきの情報を俺は持っているぜ!
 さっき、あんたと同じ発火能力者に出会ったんだ!
 たしか、名前はロシナンテ……」
「そんな情報はどうでもいいわ。他には?」

リネルの言葉に強姦男は固まる。

「……えーっと……」
「……時間の無駄だったわね。さっさと死になさい」
「うわーお!?ちょっと待ってくださいよ、マジで!?」

強姦男は懸命に打開策を探る。

(考えろ、考えろ、考えろ……!
 このガキが今までに発した言葉から、
 コイツが何を望んでいるのかを……!)

情報。仇敵。仲間。女。

(!!)

そうだ!これだ!これしかない!

「待てっ!俺はアンタの仇敵を苦しめるのに役に立つぞ!
 それも、アンタでは決して不可能な方法でだ!」
「……どういうことかしら?」

問い返すリネルに、強姦男は笑みを浮かべる。

「すでに察しているかもしれないが、俺は女を犯すことを生業とする強姦男……。
 俺は今まで女を犯してきた経験から、女に恐怖や嫌悪、屈辱を感じさせることに
 関してはスペシャリストだと自負している……」
「…………」

冷めた目を向けるリネル。
その視線を浴びて、冷や汗をかきつつも強姦男は続ける。

「……アンタの仇敵は女なんだろ?なら、そいつを苦しめるのに俺という存在は
 これ以上ないほど役に立つんじゃないか?
 いや、必ず役に立つ!俺はアンタの目的に必要不可欠となる男だ!」

強姦男の言葉にリネルは最初のうちは冷たい目を向けていたが、
ふと自分がトカゲに襲われたときの屈辱を思い出す。
そして、視線を傍らのボロ雑巾のように打ち捨てられているカナリアに向ける。

目の前の精霊の悲惨な有様を、ナビィやエマと重ねてみる。

(……悪くは無いわね)

渋々ながらも、リネルは認める。
凌辱の限りを尽くされたナビィやエマを、笑いながら踏みつけるリネル。
そんな光景が実現すれば、彼女らに味わわされた屈辱の思いも晴れるかもしれない。

「……ふん……まあ、いいでしょう。
 殺すのは止めにしてあげるわ」
「!……感謝するぜ、お嬢ちゃん!」

感謝の意を向けた強姦男だが、放たれたのは灼熱の火球。

「うおわっ!?」

間一髪、避ける強姦男。

「リネル、よ。今度そんな呼び方をしたら殺すわよ」
「き……気をつけます、リネル様……」

怖々と、強姦男はリネルへと謝罪の言葉を向けつつ考える。

(……おい、コレって美咲のときと扱い同じじゃねぇか!?)

いや、もっとひどいかもしれない。
少なくとも、美咲はここまで高圧的ではなかった。

(くそっ……!対応ミスったか……!?
 いや、他のやり方じゃ殺されてただけだ……!)

強姦男は考える。
ここはひとまずは大人しくしておき、隙を見てリネルを犯して殺す。
要するに、美咲のときと同じだ。

(覚えてろよ……!俺にこんな態度を取ってただで済むと思うな、くそガキ!!)

殺意に燃える強姦男。

そんな強姦男を無視して、リネルはカナリアのほうに歩きだす。

「起きなさい、精霊」

そう言って、カナリアを蹴り飛ばす。

「うあっ……!」

カナリアは呻き声を上げて、意識を取り戻す。

「……うぅ……?」

意識がはっきりしていないカナリアだったが、強姦男を見て悲鳴を上げる。

「ひ……!!」

自分の身体を庇うように腕を交差させて、強姦男の視線から逃れようと後ずさるカナリア。
その身体は恐怖で震え、瞳には強い怯えの色が覗いて見える。

その様がリネルの嗜虐心を刺激する。
サディスティックな笑みを浮かべながら、カナリアに近寄るリネル。

「……!?」

カナリアは恐怖に駆られて、飛んで逃げようとする。
だが、リネルはカナリアを捕まえると、髪を掴んで顔を地面に押し付けさせた。

「ひぐっ……!」
「……邪魔な羽根ね」

そう呟いたリネルはカナリアの羽根を掴むと一気に引き千切った。

ブチブチブチィッ!!

「いぎぃあぁぁぁぁっ!!?」

羽根を引き千切られ、あまりの激痛に絶叫を上げるカナリア。
リネルは痛みに泣き叫ぶカナリアの顔を再び地面に押し付けて黙らせる。
やがて、大人しくなった頃合いを見て、髪を引っ張ってカナリアの顔をこちらに向かせる。

「さて、精霊……カナリアと言ったかしら?
 貴女を守ろうとしたあの女……彼女がどうなったか知りたくない?」
「……!?」

その言葉にカナリアは顔を上げてリネルを見やる。

「フ……フロッシュさんをどうしたんですか……!?」
「ええ、今見せてあげるわね」

リネルは二つ持っていたデイパックのうち、片方に手を入れる。
そして、そこから取り出したものをカナリアの顔の前に掲げる。

「ひっ……!?あっ……嫌あぁぁぁぁーーーーーっ!!!?」

カナリアは絶叫した。

なぜなら、カナリアの前に掲げられたのは虚ろな目で口から血を流す
フロッシュの生首だったからだ。

「うあっ……!ああぅぅっ……フロッシュさ……!うあぁぁぁっ……!!」
「ロアニーに逆らったものはこうなるのよ。少しは思い知ったかしら?」

愉快そうに笑いながら、フロッシュの生首をカナリアの顔に押し付けるリネル。

「ひぅっ……!うぅぅっ……!」

リネルを涙目で睨みつけながら、カナリアはフロッシュの生首を取り返そうと手を伸ばす。
だが、リネルはさっと後退するとフロッシュの生首を放り投げる。

そして、手に宿した火球をフロッシュの生首に向けて放つ。

ごぅっ!!

激しく燃え上がったフロッシュの生首は地面に落ちる頃には灰になっていた。

「う……あ……ああぁぁ……!!あああぁぁぁぁーーーーっ!!」

カナリアの悲痛な慟哭が周囲に木霊した。
それを聞きながら、リネルは心底愉快そうに哄笑を上げている。

その様を見て、びびるのは強姦男。

(や……やっぱ、当分はコイツに逆らうの止めとこ……)

懸命な判断である。

ふと見ると、精霊の少女はあまりのショックのためか、再び意識を失ってしまったようだ。
リネルは強姦男のほうを向いて、言葉を向ける。

「お前、この子を運びなさい」
「……え?殺すんじゃないのか?」

てっきり今までのリネルの行動から、憎い仇敵の仲間である少女は殺してしまうものだと
思っていた。

「ふふ……馬鹿ね。ただ殺すだけではつまらないでしょう?
 この子はヤツらの仲間であるというだけで使い道があるのよ?」

リネルは続ける。

「この子は、ナビィとエマの目の前で殺してやるのよ。
 もちろん、殺す前にこの子がどんな目に遭ったかをヤツらにしっかりと
 教えてやってからね……。
 ふふ……ヤツら、どんな顔をするかしらねぇ?」

そのときの仇敵の表情を想像しているのか、リネルは愉快そうに笑みを浮かべている。
強姦男はそれを聞いて、げんなりした表情を浮かべながら思う。

(勘弁してくれ……さすがの俺でもコイツにはついていけん……)

そんな強姦男にリネルは声をかける。

「今から適当な休憩できる場所を探すわ。
 そこに着いたら、貴女にはその子を休憩中ずっと犯し続けてもらうわよ。
 できる限り苦しませてやりなさい。」
「いえっさー!!」

リネルの言葉に間髪入れず、瞳を輝かせて強姦男は承諾していた。
カナリアの受難はまだ始まったばかりらしい。






[27]投稿者:『不幸は重なるもの 5』 289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/12(Mon) 18:45 No.400  

【カーラマン・フロッシュ@アストラガロマンシー 死亡】
【残り34名】



【D−3:X1Y4/森/1日目:真昼】

【カナリア@リョナマナ】
[状態]:気絶、疲労極大、精神疲労極大、
両羽根損失(飛行不可能)
全身に殴打痕と歯形、強姦男に恐怖心
[装備]:破かれた精霊の羽衣(ほぼ全裸)
[道具]:無し
[基本]:ナビィ達を探す
[思考・状況]
1.ナビィ達を探す
2.フロッシュの死に錯乱気味
3.オルナの死に悲しみ
4.強姦男こわい
5.敵と遭遇すれば臨戦態勢

※強姦男に強姦されました。
※セイントは2タイプあり、ブレイク(破壊)とイレイス(消滅)で使い分けている。
※ナビィはブレイクしか使えない。
※リョナ要素に盛り込むため、精霊も鼻血仕様になっております。



【リネル@リョナマナ】
[状態]:健康、魔力中消費
[装備]:血染めの布巻き、エルブンマント(通常服装)
首輪探知機@バトロワ
[道具]:デイパック(食料18/6、水18/6、支給品一式)
怪盗の心得@創作少女
弓@ボーパルラビット
聖天の矢×20@○○少女、
赤い札×9@一日巫女
弦の切れた精霊の竪琴@リョナマナ
レイザールビーのペンダント@現実世界
木人の槌@BB
サングラス@BB
ラブレター@BB
切れ目の入った杖(仕込み杖)@現実過去世界
ラウンドシールド@アストラガロマンシー
ファルシオン(曲刀)@現実過去世界
[基本]:リョナラー、ナビィ達か女性を探す
[思考・状況]
1.休憩できる場所を見つける
2.ナビィ達を殺す
3.女性を殺す
4.カナリアはナビィ達の目の前で殺す
5.強姦男はナビィ達を凌辱させるために生かしておく(気が変わったら殺す)
6.キング・リョーナには叶えてもらう望みもあるがぶっとばしたい
7.実は生娘、しかし、後ろの初めては奪われてしまった。

※エンペラー1の効果は切れました。
※エンペラー1は今日、あと1回しか使えません。
※レイザールビーとは、光を原料にルビーの中心に収束してレーザーを照射するもので、
 光が強ければ強いほど威力が増す。

※リョナたろう、リザードマン(桜)、フロッシュ、カナリアのデイパックは
 支給品を回収した後、残りの支給品ごと燃やしました。回収不可能です。



【強姦男@一日巫女】
[状態]:健康
[装備]:真紅の短剣@怪盗少女
目出し帽@一日巫女(強姦男の私物)
[道具]:デイパック、支給品一式(食料12食分、水12食分)
ウインドの薬箱@リョナラークエスト(未消費)
隷属の鎖@アストラガロマンシー
その他支給品(0〜2個)
[基本]:レイパー、ステルスレイパー
[思考・状況]
1.女を探して犯す
2.とりあえずリネルに従って様子を見る
3.休憩場所を見つけてカナリアを犯す

※隷属の鎖はマジックハンドだと思い込んでいます。
※ロシナンテ、リネルを発火能力者だと思い込んでいます。




【D−3:X1Y2/街道/1日目:真昼】

【カーラマン・フロッシュ@アストラガロマンシー】
[状態]:首なし死体
[装備]:無し
[道具]:無し






[28]投稿者:『八蜘蛛様の起床』 289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/17(Sat) 16:44 No.401  

「4時間後から2時間ほど、フィールド上に夏の風物詩、にわか雨を降らせるよ!
 ・・・って、予告したらにわか雨じゃないじゃんっ!」

その言葉と笑い声を最後に、放送は終了した。

放送を聞いていた桜は、緊張に固まっていた身体を弛緩させて、ほーっと安堵の息を吐いた。

「良かった……伊予那は無事だ……」

放送で伊予那の名前は呼ばれなかった。

放送によると死者の数は決して少なくはなかった。
にもかかわらず、放送で伊予那の名前が呼ばれなかったのは幸運といっていいだろう。

「うん……それは良かったけど……」

安心して気が抜けた桜の表情とは裏腹に、鈴音の表情は暗かった。

「……呼ばれた名前が多すぎるよ……まだ6時間しか経ってないのに……」

鈴音は不安そうに呟く。
実際に殺人者を目撃した(もっとも誤解ではあるのだが……)鈴音は、放送で死者が
何人か呼ばれてしまうだろうということは覚悟していた。

だが、まさかここまで多くの参加者が死亡しているとは予想外だった。

「……確かに、ちょっと多すぎるかな。思ったより危険なヤツが多いのかも……」

桜は鈴音の言葉に思案しつつ、伊予那の顔を思い浮かべる。

(早いとこ、伊予那と合流しないと……)

桜は伊予那と一刻も早く合流しようと、改めて強く誓う。

「……ん……んん……」

と、そのときベッドのほうから声がした。

はっと鈴音がそちらに視線をやるとベッドで寝かしていたピンクの帽子の少女が
目を覚ましたところだった。

少女は寝起きの不機嫌そうな目で辺りを見回している。

「……ここ、は……?」

状況を理解できていない少女は感じた疑問を口に出す。

そんな少女に、先ほどの暗い顔を無理やり笑顔に変えて鈴音が話しかける。

「ここは昏い街っていう街の宿屋さんだよ」
「?……お前……じゃなくて、貴女、誰……?」

笑顔の鈴音に、八蜘蛛は胡乱気な眼で問いかける。
その問いに、鈴音は八蜘蛛を怯えさせないように優しく答える。

「私は鈴音。この子は桜ちゃんだよ。
 安心して、私たちは殺し合いなんかするつもりは無いし、
 貴女にひどいことするつもりもないから……」
「そうそう!安心していーぞ、チビッ子!」

桜が笑いながら八蜘蛛の頭をポンポン叩く。
そんな桜の行いに軽く苛立ちを感じながら、八蜘蛛は今の状況を思い出す。

(……そうだったわ、今は殺し合いの最中……。
 どうやら夢ではなかったようね……)

あの忌々しい女剣士。
ヤツに胸を貫かれ、八蜘蛛は意識を失ったのだ。

(……生きているみたいね……。)

見ると、胸の傷は痕すら残らず治っている。
おそらく、自分の傷を治してここまで運んだのは目の前の少女たちだろう。
この少女たちの様子を見る限り、自分が殺し合いに乗っていることには気づいて無いようだ。

(……ということは、この子たちはあの女剣士が殺し合いに乗っていると
 勘違いして、殺されそうになっていた私を助けた、と言ったところかしら?)

八蜘蛛は現在の状況から、自分が意識を失っている間の出来事について推測する。
しかし、すぐに八蜘蛛の胸中に疑問が沸いてくる。

自分はかなりの重傷を負っていたはずだ。
それがこんなにも簡単に治るだろうか?

八蜘蛛は不思議に思い、自分の膨らみのない胸をぺたぺたと触る。
やはり、完全に治っている。

「……私の怪我、貴方達が治してくれたのよね?一体どうやったの?」
「え?……う〜んっと……私たちが治したわけじゃないの……。
 支給品に不思議な鈴があってね。その鈴が貴女の傷を治してくれたのよ。
 その後、鈴は粉々になっちゃったけど……」

それを聞いて、八蜘蛛は自分の支給品に小さな鈴が紛れていたのを思い出す。

(あの鈴は回復アイテムだったのね……)

しかも、あれだけの重傷を痕も残さず治したというのなら、かなり強力な物だったのだろう。
惜しいことをした、と八蜘蛛は内心で舌打ちをする。

(それもこれもあの女のせいよ……!)

全くもって忌々しい。
八蜘蛛は改めて思うと同時に、あの女剣士はどうなったのだろうかと、ふと疑問に思う。

「……ねえ、あの女……私を殺そうとした人はどこにいったの?」
「あ、大丈夫だよ。あの人は私が追っ払ったから」

鈴音の言葉を聞いて、八蜘蛛は疑問の声を漏らす。

「……追い払った?貴女が?」

あり得ない、と八蜘蛛は思う。

あの女は魔王軍三将軍たるこの自分を追い詰めるほどの腕前なのだ。
こんな戦闘能力の欠片も無さそうな小娘にどうにかできるわけが無い。

八蜘蛛の疑問の眼差しに、答えたのは鈴音ではなく桜だった。

「コラコラ、私たちを甘くみちゃいけないぞ、チビッ子?
 このお姉さんはキミを襲った女なんかあっさり返り討ちに
 しちゃったし、私だってついさっき変な男とでっかいスライムと
 戦ってきたところなんだからな!」
「ちょ……ちょっと、桜ちゃん……!」

桜の無駄に自信溢れる言葉に焦る鈴音。
そんな桜の言葉を聞いた八蜘蛛は値踏みするように桜と鈴音に視線を這わせる。

(……どう見ても強そうには見えないけど……)

しかし、見た目について言うなら自分だって同じだろう。
幼い少女の姿をした自分が魔王軍三将軍であるなど、何も知らない者はまず信じないはずだ。

ならば、この少女たちも見かけによらない実力者なのかもしれない。
実際、あの女剣士の姿は見えず、少女たちにも目立った傷は無いのだ。
その事実を無視するわけにもいかないだろう。

(隙があれば、コイツらを養分にしようかと思っていたけど……。
 しばらくは様子を見たほうがよさそうね……)

もし本当にこの二人があの女剣士を追い払うほどの実力を持っているのなら、
返り討ちに合う可能性もある。
ここは慎重に対応していくべきだろう。

幸い、彼女たちに自分に対する害意は無い。
今は彼女たちを利用しつつ、出遅れた分を取り戻させてもらうとしよう。

八蜘蛛はそう決めると、さっそくこの少女たちに取り入るために
無邪気な微笑みを浮かべて話し始める。

「……そっか、お姉ちゃんたち強いんだね。
 ありがとう、あの女から助けてくれて……」

鈴音はその笑顔を見て、何とか信用してもらえたようだと安心する。

「ううん、お礼なんていいんだよ。
 貴女みたいな子供が襲われてるのを見たら、
 助けるのは当たり前なんだから」

鈴音の言葉に微笑み、しかし次には八蜘蛛は表情に影を落とし不安そうな表情を作る。

「ねえ、お姉ちゃんたち……こんな殺し合いで私みたいな子供が生き残れるのかな……?
 さっきだっていきなり殺されそうになって、なのに何も抵抗できなくて……。
 お姉ちゃんたちが助けてくれなかったら、私あのまま殺されてた……」

そんな言葉を口に出しつつ、顔を俯かせて震えて見せる。
そうすると案の定、こんな殺し合いで人を助けるようなお人よし共は、
怯えている子供を励ます言葉をかけてきた。

「なーに、心配するなって!
 言っただろ?私たちは強いんだって!
 アンタのような子供一人くらい守ってやるからさ!」
「そうだよ!絶対に貴女のことは守ってあげるから、
 そんなに怖がらなくても大丈夫だよ!
 また怖い人が来ても、お姉ちゃんたちが追っ払ってあげるから!」

二人の頼もしい言葉に心の中で舌を出しつつ、八蜘蛛は縋るような目で二人を見る。

「本当……?私、家に帰れる……?」
「大丈夫!私たちがちゃんと帰してあげるから!
 だから、貴女は何の心配もしなくていいんだよ!」

八蜘蛛を元気づけるようにことさら明るい口調で答える鈴音。

「うん……ありがとう、お姉ちゃんたち……」

八蜘蛛は外面に無邪気な笑顔を貼り付け、内には狡猾な笑みを潜ませながら思う。

(ふっ……ちょろいものね……)

これで、駒は手に入れた。
相手はこちらをただの子供だと思って、全く疑っていない。
利用するのは容易だろう。

成果は上々だ。
出だしは躓いたが、それはこれから取り返せば良い。

そして、八蜘蛛には人間を養分にする以外にも新たな目的を胸に宿していた。

(待っていなさい、金髪の女……!
 必ずお前を殺して、この八蜘蛛様の養分にしてやるわ……!)

八蜘蛛は自分を手痛い目に合わせた女剣士に固く復讐を誓うのだった。




もっとも、復讐の相手はすでに死んでいるのだが。




[29]投稿者:『八蜘蛛様の起床 状態表』 289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/17(Sat) 16:47 No.402  

【D-3:X3Y1/昏い街・宿屋二階/1日目/真昼】

【美空桜@一日巫女】
[状態]:健康、ラーニング習得
[装備]:モヒカンハンマー@リョナラークエスト
[道具]:デイパック、支給品一式(食料2/6、水5/6)
ファイト一発*2@リョナラークエスト
[基本]:伊予那を探す・助ける・協力する(伊予那に害をなす奴を倒す)
[思考・状況]
1.伊予那を探す
2.八蜘蛛を守る

※サーディの顔は脳裏に焼きつきました。出会えば「夢」の人物だと分かるでしょう。
※リョナたろうをマーダーと認識しました。
※リザードマンを殺し合いに乗っていない優しいトカゲと認識しました。
※特殊な能力を持つ参加者の存在を知りました。
※1日目の昼時点で鈴音と情報交換をしました。
 エリーシアをマーダーと認識しました。
※ラーニングの極意を読んだことでラーニングを習得しました。
 自分が受けた技(魔法以外)をラーニング可能です。


【八蜘蛛@創作少女】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式
チョコレート@SILENTDESIREシリーズ
[基本]:ステルスマーダー
[思考・状況]
1.桜、鈴音を利用する
2.エリーシアを殺す
3.人間を養分にする
4.萩、ロシナンテと合流する
5.門番が自分の知っている門番か確かめる


【榊 鈴音(さかき すずね)@鈴の音】
[状態]:健康
[装備]:南部(残弾4)@まじはーど
[道具]:デイパック、支給品一式(食料2/6、水5/6)
ラーニングの極意@リョナラークエスト
[基本]:何とか殺し合いから脱出したい。
[思考・状況]
1.殺し合いに乗ってない人を探して、一緒に行動する
2.八蜘蛛を守る

※エリーシアを危険人物と認識しました。
※一日目の昼時点で桜と情報交換をしました。
 リョナたろうをマーダー、リザードマンを優しいトカゲ?と認識しました。



【ラーニングの極意とラーニングについて】
ラーニングの極意を読むことで、相手から受けた技を
覚えることができるラーニングを習得することができます。
ただし、ラーニングを習得するには特殊な才能が必要です。
(鈴音は覚えることができませんでした。)
また覚えることのできる技は一つだけで、二つ目を覚えた時点で
前に覚えていた技は忘れてしまいます。
魔法は覚えることができません。
(ただし、作品ごちゃまぜの本ロワでは魔法の定義・基準は曖昧なので、
 魔法と明言されていない技は覚えることができる可能性があります。)

ラーニングはリョナクエ勢ではリョナたろうしか習得できません。
リョナクエ以外のキャラがラーニングを習得できるかどうかは書き手の方にお任せします。
[30]投稿者:「黄金色の喪失」その1 14スレ目の74◆DGrecv3w 投稿日:2009/10/19(Mon) 05:17 No.403   HomePage
「ひあぁ・・・もぉ・・・やめ・・・て・・・・・・あひぃっ!」

閑静な森の中、少女の悲鳴が木霊する。

「ギャハハハッ! バーカ! やめられっかよぉーっ!!」

嬌声と懇願が入り混じった悲鳴を掻き消すように、男の嘲笑う声が木霊する。

「あぅんっ! いや・・・っ! いやぁぁ・・・っ!!」
「これが本物の”オナホ妖精”ってかっ!! アヒャヒャッ!!」

悲鳴の主、カナリアの身体が激しく宙を舞う。
固定されている下半身を軸に、グニャグニャと糸の切れた人形のように舞う。
哂い声の主、強姦男は自分の目の前で披露される舞いを、大きな木の幹に寄りかかりながら嘲笑っていた。

「オラオラッ! もっと踊れっ!」

強姦男は大声で笑いながら、乱暴に腰を動かした。
その度にカナリアは激しく舞い、悲鳴をあげる。

「・・・しかし、お前。確かに休憩中、できる限り苦しめろとは言ったが、よくも飽きずに犯り【やり】続けられるな。」

その様子を見ていた少女、リネルが強姦男の隣で溜め息混じりに呟いた。
強姦男はびくりと小さく身体を撥ねさせ動きをとめるが、すぐに腰を激しく動かしながら答えた。

「ま、まぁ、絶倫は俺の長所だからなっ。」
「ふっ、絶倫か・・・。確かに人間にしてはよくやるよ、お前・・・。」

リネルは溜め息をついて、強姦男の様子を一瞥すると、再び休息の体勢を取ろうとした。
その時突然、リネルのデイパックから小さな電子音が鳴り、彼女は慌てて強姦男の様子を一瞥した。

(どうやら、精霊を犯るのに夢中で気付なかったようだな・・・。)

尤も、この男に気付かれたところでどうということもないが、万が一ということもある。
こんな便利な道具の存在は、できる限り秘密にしておく方がいいだろう。
リネルはそう考え、何気なく席を立つふりをして木の裏に回った。

「・・・反応は1つか。」

リネルはデイパックから取り出した、首輪発見器を覗き込んで呟いた。

「真っ直ぐ近づいてきている・・・。くそっ、あのクズ。精霊をギャァギャァ騒がせ過ぎなんだよ。」

光点の軌跡から見て、あの精霊の悲鳴を聞いて何事かと様子を見に来たとみて間違いない。
リネルはそう考え、悪態をついた。

(・・・それに、そこそこに強い魔力の反応も感じる。)

反応の大きさだけで判断するならば、決して勝てない相手ではない。
しかし、エンペラー1の効果も切れ、魔力も少しではあるが消耗している今、できれば消耗したくない。

「動きがとまった。・・・あの男を発見したか。」

光点の位置や魔力の反応から見て、どうやら相手は強姦男を発見しその場で様子をみることにしたらしい。
暫しリネルは考え込み、やがて小さく頷いた。

(あの男を囮にして、少し様子を見てからでも遅くはないな・・・。)

リネルは気配を殺し、首輪探知機の反応と相手の動向に集中することにした。
・・・しかし、その判断が思わぬ事態を招くことを、この時の彼女は知る由もなかった。
[31]投稿者:「黄金色の喪失」その2 14スレ目の74◇DGrecv3w 投稿日:2009/10/19(Mon) 05:18 No.404   HomePage
(見つけたわ・・・。)

今、私の目の前では薄気味悪い気配を発する男が、聞いてるだけで吐き気を催す哂い声をあげながら少女を弄んでいる。
もう何度も犯られて完全に抵抗する力を失ったのだろう。
少女は男の突き上げにあわせ、糸の切れた人形のように舞いながら喘いでいる。
無駄だと悟りつつも必死に懇願している。
そんな様子を、男は嘲笑っていた。

(悪趣味・・・だ・・・わっ!?)

その時突然、少女に良く見知った人物の影が重なった。
黒く美しい長髪を揺らし、赤茶色の瞳を屈辱と絶望の涙に滲ませ、ゴミクズのような男に必死に懇願する彼女。
世界で唯一、私を人として接してくれた。
私を、供に戦う仲間として信頼してくれた。
私が全身全霊を賭け、愛すべきだった、護るべきだった・・・鬼龍院美咲の姿が、重なった。

(・・・間違いない。間違い・・・ないわ・・・!)

シノブ達と別れた後、私はロシナンテがやってきた方向を頼りに犯人を捜すべく走っていたが、誰にも遭遇しなかった。
なので魔力温存のため、一度変身を解こうと思った矢先、少女の悲鳴が響いてきた。
その悲鳴に導かれるように走ってきた私は今、こうして草葉の陰であの男の様子を窺っている。
その道中も誰にも遭遇していない。
つまり、美咲を殺したのは間違いなくあの男だろう。

(なにより・・・私の勘が・・・そう告げているっ!!)

私は一旦、男の周囲に注意を傾けてみた。
いくらロシナンテとの戦いで消耗していたとはいえ、美咲があんなクズみたいな男にアッサリと殺られるはずがない。
きっと、なにか陰湿で狡猾な罠か特殊能力を使ったのだろう。
そんな男が、気付いてくれとばかりに少女を喘がせているのだ。
なにか仕掛けをしている可能性は否定できない。

(ふぅん。逆上して飛び出してきたヤツを、返り討ちにするための罠は・・・なさそうね。)

どうやら周囲には特に仕掛けはしていないようだった。
ということは、なにか特殊な力を持っているのだろう。

(・・・それなら、気付かれる前に。)

残った魔力を全て注ぎ込んで狙撃すれば、この距離からでもあの男を跡形も無く消滅させることはできる。
仮にどんな特殊能力を持っていようとも、突然の攻撃には対応しきれないはずだ。
私は小さく頷いた。
そしてロザリオをゆっくり反転させ、長い方を前方に突き出すようにして抱え込んだ。
すると中心に一筋の線が走り、そこから上下に割れて中から一本の砲身が顔を覗かせた。
その黒光りする圧倒的な重厚感に、私は思わず生唾を呑み込む。
私は小さく咳払いをして気を取り直すと、肩膝を突き、ロザリオをしっかり抱え込む。
そして、もう一度周囲を確認した。
もし、周囲に僅かでも怪しい気配があれば、全魔力を注ぐことができないからだ。
全魔力を注ぎ込んでしまえば、私は無力な子供の姿に戻ってしまう。
逃げることさえままならない、子供の姿に戻ってしまう。

(ふっ・・・ふふっ・・・ふふふっ!)

結果、周囲にはあの男と少女、それに私以外には居ないようだった。

(私・・・、ツイてるわ・・・!)

これで、心置きなく全魔力を注ぎ込むことができる。
子供の姿に戻った後はこの森の中で気配を殺し、魔力の回復を待つことができる。
同じ次元に存在していることすら吐き気を覚えるあの男を、跡形も無く消し飛ばすことができる。

(彼女の仇を討つことが・・・できるっ!)

私は念には念を入れるつもりで、ゆっくりと魔力を注ぎ込むことにした。
ロザリオの内部に少しずつ魔力が溢れ、渦巻いていくのが感じられる。

(・・・消えろ、ゴミが。)

私は深呼吸をして、あの男を見据える。
あの男は、これから自分の身に起こることにも気付かず、少女が泣き叫ぶ様子を見て低劣な哂い声を上げていた。
少女が泣き叫ぶ様子を・・・。
少女が・・・。

(――美咲っ!!)

再び、少女に彼女の影が重なった瞬間、私の中でなにかが音を立てて壊れた。

「今すぐ消し飛べっ!! 外道がぁぁぁぁぁっ!!」

私の全魔力を乗せ。
私の全感情を乗せ。
立ちはだかる全てを無に還す、最強の魔砲”キング・リア”が咆哮した。
[32]投稿者:「黄金色の喪失」その3 14スレ目の74◆DGrecv3w 投稿日:2009/10/19(Mon) 05:19 No.405   HomePage
・・・時は少し遡る。

(ゆっくりだが、魔力が高まっているな。あの男に、魔法で奇襲攻撃をするつもりか・・・。)

私は強姦男の様子を窺っているであろう相手の、魔力の高まりを感じていた。
恐らくは、あの男がなんらかの罠を張っていると踏んで、強力な魔法で一気にかたをつけるつもりだろう。

(ククク、バカなヤツめ。あんなゴミクズのような男に、そこまで魔力を注ぐ必要などないと言うのに。)

あの男を殺すには、それこそ下級中の下級魔法でも十分過ぎるぐらいである。
それなのに、あの相手はかなり上級な魔法でも発動させるつもりかと言うぐらいに魔力を高めていた。

(まっ、私としてはその方が好都合だけどなっ。)

あの男を倒して油断した隙を突くだけでも、十分消耗を抑えられる。
それに加えて、あれだけ大きな魔力を消耗した後ならば、相手を制するのは赤子の手を捻るより容易いだろう。
自然と私の口元が綻んだ。

(フフフ・・・もし女だったら、残った魔力ごと精気を全て吸い尽くしてやろう。)

もう勝ったも同然だ。
そう考えた私は、相手をどう処理するかということを考え始めていた。

(これほどの魔力の持ち主だ、さぞかし旨いだろうな・・・。)

私が生唾を呑んだ直後。

「今すぐ消し飛べっ!! 外道がぁぁぁぁぁっ!!」
「――なっ!?」

その瞬間、私は自身の誤算を悟った。

(アイツッ・・・! 最初っから【はなっから】、あのクズだけが狙いだったのか・・・っ!?)

今にして思えば、これほど魔力を高められる使い手が、あの男を殺すには下級魔法で十分なことに気付かないはずがない。
それなのに、態々魔力を高め、上級魔法を放てるよう準備をしていた。

(ゆっくりと魔力を高めていたのは、周囲の気配を探っていやがったからかっ!?)

今まで私は、ゆっくりと魔力を高めていた理由を、あの男に気付かれないためだと思っていた。
しかし、本当は上級魔法を放った後の、第三者の奇襲を警戒していたのだ。
そして私は今、自分でも自惚れてしまうぐらいに完全に気配を殺している。
つまり、相手にとって私は・・・。

(・・・居ないことになっているっ!!)

もしそうならば、一刻も早くこの場を立ち去るべきだ。
どんな上級魔法が飛び出すか分からないが、どんな上級魔法であれあの男の近くに居ては、巻き込まれる可能性は非常に高い。
とはいえ下手に飛び出せば、返って巻き添えを食う結果になりかねないのも事実である。

(ギリギリまで見極めてから・・・避けるっ!)

幸いにも今の私は、何故か以前よりもずっと素早く動くことができるようだ。
理由は知らないがこの能力を持ってすれば、ギリギリまで相手の魔法を見極めてから逃げることができるだろう。
私はそう思っていた。
・・・だが、しかし。

「なっ・・・がはっ・・・ぁ・・・!!」

如何に素早く動けようとも、この世に質量を持った物質として存在する以上、決して超えられない壁がある。
この非常時にそんな単純なことを、私はすっかり忘れていた。

(ひ・・・光を・・・放つ・・・魔法・・・だとぉ・・・!?)

私の右肩、右腕を飲み込み、顔を掠めて通過していった物。
それは世界最速の存在、光の奔流だった。
それもただの光ではなく、触れる物全てを蒸発させるに足る高温を伴う光だった。

(く・・・そ・・・この・・・私が・・・・・・たかが・・・光・・・・・・なぞにぃ・・・!)

自身の二度にわたる誤算を悔やみながら、私は真黒な闇の流れに飲み込まれていった・・・。
[33]投稿者:「黄金色の喪失」その4 14スレ目の74◆DGrecv3w 投稿日:2009/10/19(Mon) 05:22 No.406   HomePage
「ふ・・・ふふ・・・ふふふ・・・!」

笑いが込み上げてくる。

「ふふふっ・・・あはっ・・・あはははははっ!!」

堪えても堪えても、嬉しくて、おかしくて、笑いが込み上げてくる。
私はお腹を抱えて笑うことにした。

「あははははっ!! やったっ!! やったわっ!! あは、あはははっ!!」

お腹を抱えながら、私は目の前を一瞥した。
そこには先ほどまで居た男女の姿は無く、あるのは真黒に焼け焦げた大地と大木に空いた巨大な横穴だけだった。

「あはははっ・・・こんなっ・・・あははっ・・・こんな簡単にっ・・・あはははっ!!」

お腹を抱えるだけじゃ耐え切れず、私は地面に伏せ、何度も地面を叩いた。

「こんなっ・・・うふふふっ・・・簡単にっ・・・ふっはははっ・・・殺れたなんてっ!!」

嬉しくて、おかしくて仕方ないはずなのに、何故か私の視界が滲んでいく。
地面を叩く手に、怒りと悔しさが混ざっていく。

「こんなっ・・・こんな・・・ははは・・・簡単に・・・殺れるヤツに・・・あははっ・・・美咲はっ・・・美咲はぁっ!!」

気付けば私は歯を食いしばり、地面を思い切り叩いていた。

「美咲はっ!! 殺られたっ!! こんなにも簡単に殺れるっ!! ゴミクズみたいなヤツにっ!!」

地面を叩く手が痺れてきても、私は構わず地面を叩いた。

「悔しい・・・っ!! 悔しい・・・っ!! くやしいぃっっ!!」

どうしてモモンガの大群と出くわしたあの時、私は変身して戦わなかったのだろう。
どうして魔力を温存しようとなんか、考えたのだろう。

「あの時・・・戦っていれば・・・戦って・・・いればっ!!」

そうすれば、ロシナンテがモモンガを引き付けることもなかった。
そうすれば、美咲と出会い戦うこともなかった。
ロシナンテと戦い、痛手を追っていなかったら、美咲はあんな男に殺されなかった。
私でも簡単に殺せる、あんなゴミクズのような男に、美咲は・・・。

「・・・違う。」
(・・・違わない。)

私はゆっくり首を横へ振りながらポツリと呟く。

「・・・私の・・・せいじゃない。」
(・・・私の・・・せいよ。)

誰に聞かせているのか、自分でも分からない。
しかし、私は口に出したくて仕方が無い気持ちでいっぱいだった。

「私が・・・美咲を・・・。」
(私が・・・美咲を・・・。)

私は一度、大きく息を吸って叫んだ。

「殺したんじゃないっ!!」
(殺したんだっ!!)

私の叫びが虚しく響く。

「違うっ! 違う、違う、違う、ちがう、チガう、チガウ、ちがうぅぅっ!!」

私は只管叫び、何度も地面を叩いた。
まるで、そこに誰かが居るかのように、拳を叩き付けた。

「うぁああああああああぁぁあぁぁぁーーっ!!」

いくら拳に乗せ放出してもなお、マグマの如く噴き出す激情に、私は遂に耐え切れなくなり叫んだ。
身体を弓なりに反らせ、天を仰ぎ見て声の限り叫んだ。
流れ落ちる涙と供に、最愛の彼女と過ごした記憶が流れ落ちていく。
そんな気がした。

(美咲っ!! みさっ!! みさぁぁっ!!)

自分でも驚くほど長い間、叫び続けた後、私はゆっくりと顔を戻した。

「・・・貴女のせいよ。」

ぐらぐらと揺れる意識の中、私はポツリと呟いた。

「貴女が、こんな私に変えたから・・・。」

目の前に優しく、暖かく笑う彼女の姿が映る。

「こんな、私に変えたから・・・私は・・・もう・・・!」

彼女の笑顔を掻き消すように、私は自分の両肩をきつく抱きしめた。

「生きる目的も、目標も・・・なくなっちゃったじゃないのっ!!」

私は助けを求める子犬のように、叫んだ。

「どうしてくれるのっ!! 鬼龍院・・・美咲ぁぁぁっ!!」

私は両肩をきつく抱きしめたまま地に伏せ、震えながら呻く。

「どう・・・して・・・くれる・・・の・・・ねぇ・・・・・・!」

しかし、誰も答えてくれなかった。
誰も、答えてくれるはずがなかった。
・・・それも、そのはず。
答えてくれる女性【ひと】は、もういないのだから・・・。

(・・・答えてよ・・・・・・鬼龍院・・・美咲ぁっ!)

【カナリア@リョナマナ 死亡】
【強姦男@一日巫女 死亡】
【残り32名】

【D−3:X1Y4/森/1日目:午後】

【カナリア@リョナマナ】
[状態]:死亡(跡形無く消し飛んだ)

【強姦男@一日巫女】
[状態]:死亡(跡形無く消し飛んだ)

※カナリアと強姦男の荷物も跡形も無く消し飛びました

【リネル@リョナマナ】
[状態]:瀕死(右腕と右肩喪失、顔面右側半分に激しい火傷)、エンペラー1発動中
[装備]:血染めの布巻き(ボロボロ)、エルブンマント(通常服装、ボロボロ)
首輪探知機@バトロワ(衝撃により破損、近くに首輪の反応があるかないかしか分からなくなりました)
[道具]:デイパック(食料18/6、水18/6、支給品一式)
怪盗の心得@創作少女
弓@ボーパルラビット
聖天の矢×20@○○少女、
赤い札×9@一日巫女
弦の切れた精霊の竪琴@リョナマナ
レイザールビーのペンダント@現実世界
木人の槌@BB
サングラス@BB
ラブレター@BB
切れ目の入った杖(仕込み杖)@現実過去世界
ラウンドシールド@アストラガロマンシー
ファルシオン(曲刀)@現実過去世界
[基本]:リョナラー、ナビィ達か女性を探す
[思考・状況]
1.昏睡中

※無意識にエンペラー1を発動させたため、一度に身体の大部分を失ったことによるショック死だけは間逃れました
 しかし、ミラクルベルかそれに近い回復効果を得られない場合、あと1時間もすれば確実に絶命します
 なお、回復効果が得られたとしても、失った右腕は戻らないし、顔面右側には重度の後遺症が残る可能性が高いです
※エンペラー1は2日目の午後になるまで使用不可能になりました

【エルフィーネ@まじはーど】
[状態]:所々に軽い擦り傷の痕、放心中、精神疲労特大、残魔力皆無
[装備]:ロザリオ@まじはーど
[道具]:デイパック、支給品一式(食料6食分)
    モヒカンの替えパンツx2@リョナラークエスト(豹柄とクマのアップリケ付きの柄)
[基本]:なにもない
[思考・状況]
1.茫然自失中
2.当然、リネルには気付いてない

※とりあえず初めて出会う相手にはエルと名乗ることにしています
※キング・リアに全魔力をつぎ込んだため、なにかしらの魔力回復手段を講じない限り1日は変身することすらできません

@あとがき
あっさり、ばっさり、やりすぎました・・・。orz
[34]投稿者:『巡り会い  その1』289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/25(Sun) 20:56 No.408  

えびげんは未だに銃を解体して遊んでいた。

「ふむふむ、なるほど〜……ここはこうなってて、ここはこんな感じ〜……。
 うふふふ、幸せ〜♪」

えびげんは殺し合いという状況を忘れて、幸せそうに笑いながら銃の部品を眺めていた。

「あ゛ーあ゛ー、てすてす。・・・ふぅ、ようやく繋がった。
 ったく、そろそろコレ買い換えないといけないなぁ。」

その声を聞いて、はっと我に返る。

「……え?うそ、放送?」

慌てて時計を取り出して、時間を確認する。

「!?……や……やばっ……もうこんな時間!?」

初香にお使いを頼まれてから、5時間近く経過していた。

えびげん、焦る。
あのお子様は、自分が銃で遊ぶのに夢中になって戻るのに遅れたことを知ったら、
めちゃくちゃ怒るだろう。

いや、その程度ならまだいい。
別れてから経過してしまった時間を考えると、いくら武装が充実しているとはいえ、
あの少女は殺されていてもおかしくはないかもしれないのだ。

(し……しまったぁぁ〜〜!?
 こんな殺し合いで、子供を放っといて私は何してるのよぉ〜!?)

えびげんは後悔する。

どうにも、あの初香という少女は図太さやふてぶてしさが目立ってしまって
失念していたが、彼女はまだ子供なのだ。
いくら彼女の武装が充実しているからといって、子供一人を放っておいて
銃で遊び呆けているとは何事か。

「……あ」

そこで、えびげんは気がつく。
すでに男の声が聞こえなくなっていることに。

「放送聞き逃した〜〜!!?」

涙目で頭を抱えるえびげん。
駄目だコイツ……早く何とかしないと……。

「うるさいっ!放っといてよ!」

えびげん、ナレーションに突っ込みを入れつつも焦る。

「ど……どうしよう……!
 これじゃ初香ちゃんが生きてるかどうかも分からないし、
 禁止エリアに運悪く足を踏み入れでもしたら……!」

えびげんはどうすればいいのか分からず、ひたすら悩む。

だが、結局は腹をくくることにした。

「こんな状況になったのは私の責任……。
 なら、せめて今からでも迅速に行動しないと……!」

そして、えびげんは銃を数分で組み立て直すと、初香の待つ国立魔法研究所に
急いで向かうことにした。






森の中を進むのは、先ほどダージュに痛めつけられ、ディレイ・スペルを
その身に刻まれた美奈である。

美奈はいつ自分に刻まれたディレイ・スペルが発動するかと気が気ではなかった。
放送が流れてきたが、禁止エリアだけを記憶に留め、後は全て無視する。
よけいなことに意識を傾けている余裕など、今の美奈には無いのだから。

「魔術師……!どこよ、魔術師……!?」

骨折した左肩の痛みを堪えながら、ひたすら魔術師を探して森の中を彷徨う美奈。

「うぅぅ……何でよ……!何で、私がこんな目に合わないといけないのよぉ……!
 誰か助けてよぉ……!」

次の瞬間には、ディレイ・スペルが発動して死ぬかもしれない。
そんな恐怖と緊張を強いられる今の状態は、精神力があまり強くない美奈には酷だった。

元々精神的に疲労していたところを痛めつけられたせいもあって、美奈の心はすでに限界なのだ。
身体の痛みを堪えて泣きながらよろよろと歩く美奈は、その場に彼女の姿を見る者がいれば、
憐憫の情を抱いたかもしれない。

だが、幸か不幸か周りには、彼女を助けてくれる者も彼女を殺そうとする者もいなかった。

やがて、森を抜けると西洋風の建物が見えてきた。

(あそこなら誰かいるかも……でも、もし殺し合いに乗ってるやつがいたら……)

先ほどダージュに痛めつけられたことを思い出し、美奈の恐怖がぶり返す。
だが、このままでも結局は遅延魔法が発動して自分は死ぬだけだ。

(だったら……行くしかない……)

美奈は萎えそうになる心を無理やり鼓舞させ、足をひきずるように動かしながら建物へと
歩みを進めて行った。






「おい……何の冗談だよ……?」

呆然とした表情で呟くダージュ。

「なんで、オルナの名前が放送で呼ばれてんだよ……?」

先ほどの放送による死者の発表。
その中には、自分が痛めつけ、屈服させ、ありとあらゆる苦しみと屈辱を与えて
殺してやるはずだったエルフの少女の名前が入っていた。

「……ふざけるなよ……」

ダージュは呟く。
その身体から怒気を滲ませながら。

「ふざけるなよ……!」

膨れ上がる怒気。
その怒りは何に対してのものなのか。

オルナか、彼女を殺したものか、はたまた自分自身か。

「ふざけるなよ、クソがぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

天に向かって叫ぶダージュ。
そして、そのまま天を仰ぎ見た状態のまましばらく固まっていたかと思うと、
次の瞬間には引き攣ったように笑い出した。

「くっ……くっく……くはははっ……!
 何でだよ……!?アイツは……アイツだけは俺が殺してやるはず
 だったのによぉ……!」

ダージュは、狂ったように低い声で笑い続ける。

「……くく……殺してやる……!
 オルナを殺したヤツ……オルナを殺そうとしたヤツ……
 オルナに関わったヤツ……全員皆殺しだ……!
 苦しめて苦しめて苦しめ抜いて、その上で殺してやる……!」

その表情に浮かぶのは、狂気。
生き甲斐ともいえる目的を奪われた彼が欲したのは、失った目的の代替物。

オルナの代わりとして、彼女と関わりを持った者たちに地獄の苦しみを与えるという、
あらゆる意味で歪んだ新たな目標を見出したのだった。





[35]投稿者:『巡り会い  その2』289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/25(Sun) 20:56 No.409  

オーガは何者かが東支部に侵入した気配に気がついた。

「ちっ……またかよ……!」

ロクに休息すら与えてくれないのか。
あまりにも千客万来な東支部に、オーガは辟易していた。

だが、迎え撃とうとするオーガにミアが声をかける。

「待って。気配からすると、相手は戦闘能力の無い一般人です。
 私たちから姿を見せて、警戒を解いたほうが……」
「駄目だ」

ミアの提案を、オーガは最後まで聞かずに遮る。

「相手が一般人だからといって、殺し合いに乗って無いとは限らないだろう。
 それに、そいつに強力な武器が支給されていたらどうする?
 下手をしたら、姿を見せた途端に殺されるぞ?」
「……それは……」

ミアは言葉を詰まらせて、俯く。
そんなミアに対して、オーガは面倒くさく思いながらもフォローを入れておくことにする。

「……まあ、お前の言うことも分からんでも無いさ。
 そのガキのこともあるし、相手を傷つけることに抵抗があるんだろう?」

そう言って、虚ろな瞳のまま座り込んでいるまゆこに視線を向けるオーガ。

モヒカンの襲撃によって傷ついた彼女は、あれから一言も喋らずに虚空を見つめている。
その様は正気の人間のものとは思えず、彼女の心が壊れてしまったのだということを
改めて実感できるものだった。

「…………」

ミアは答えず、唇を噛む。
オーガはそんなミアの様子を見て、溜息をつく。

「……とにかく、侵入者は俺が対処する。
 万が一ヤバくなったら、フォローを頼むぜ」

「……分かりました」

結局、オーガの言葉にミアは頷くしかなかった。
ミアが承諾したのを確認したオーガは、侵入者の元へと向かっていった。






「……遅い……」

初香はなかなか帰ってこないえびげんに苛立っていた。

「何やってるんだよ、あのメイドさんは……。
 まさか、最初から服なんて持ってくるつもりはなくて、
 ボクを置いていったなんてこと無いよね……?」

ぶつぶつと文句と不安を口にする初香。

「……まあ、文句言っても仕方ないよね。
 ひょっとしたら怪我とかして動けないのかもしれないし……」

死んだかもしれないという可能性はあえて考えないでおく。
それについて考えても無駄だし、どうせもうすぐ放送で分かることだ。

「……さて、ここの資料も読み終わったし、次はこっちの棚に
 取りかかろうっと」

初香とて、ただ何もせずえびげんを待っていたわけではない。
この研究所に保管されていた本や実験データを読みながら、初香なりにこの殺し合いの
不可思議な現象について解明しようとしていたのだ。

空間転移などの未知の技術を持つ組織が、殺し合いのフィールドに含めたこの研究所。

研究所。そう、研究所だ。
研究所というからには、『何か』の研究をするための施設だろう。
ならば、その『何か』とは何か?

初香はその『何か』が、参加者たちをこの場所に転移させた技術ではないかと考えたのだ。

わざわざ主催者たちが研究所という施設を……殺し合いにおいてさほど重要とも思えない施設を
含めたのはなぜなのか?
初香はその疑問の答えが『これは主催者たちによる遊びなのではないか?』と考えた。

つまり、まず最初に参加者にとって未知である転移の技術を披露しておき、そんな高度な技術を
持つ主催者たちには逆らっても無駄だという意識を植え付ける。
そして、その上でその未知の技術を解明する資料などをこの研究所……元々は転移の技術を
研究していたこの施設に置いておく。

そうすると、それを見つけた参加者が、

『この資料によって主催者たちの技術を解明すれば、主催者たちに対抗できるのではないか?』

という類の期待を抱くかもしれない。
そんな希望にすらならない希望を抱かせて、最後に全ての希望を打ち砕く。

あの性格の悪そうなハデ夫が好みそうなことだ。

(……まあ、推測に推測を重ねた妄想のようなものだけどね)

正直なところ、初香は自分のこの考えは9割方間違っているだろうと思っていた。

もし参加者に希望を抱かせた上で絶望させたいなら、このやり方は回りくどすぎて
非効率だと言うことと、やはりこれは推測だらけの妄想じみたものでしかないということが
大きな理由だ。

それに、初香がえびげんを待っている間に読んだ資料……もちろん全部では無く一部だけだが、
それには転移の技術についてなど全く書かれていなかったということもある。

(しかも、書かれてることも役に立たないことばかり……まあ、魔法の研究って時点で
 話にならないんだけどさ……)

初香はそう考えつつ、それでもこれらの資料を読むことで主催者の性格や何らかの隠された意図が
見えるかもしれないと、律儀に資料に目を通していた。

どうせ他にやれることは無いのだから、役に立つ可能性は低くても一応やるだけはやっておこうと
初香は考えたのだ。

だが、初香もさすがに徒労であるという思いが強くなってきた。
いくら天才少女とはいえ、これだけの量の、しかもほぼ確実に役に立たないであろう資料を
読み続けるのは精神的にも辛い。

「……さすがにもう止めとこうかな。
 疲れてきたし、せめて少し休憩しよっと……」

疲れを感じてきた初香は、ひとまず作業を中断することにして、今のうちに
食事を取っておくことにした。

そのとき、ちょうど放送が辺りに流れてきた。
それを聞きながら、初香はえびげんが生きていることにほっとする。
そして、安堵した自分に気づいて少し不機嫌になる。

(……まあ、ボクが頼んだ用件のせいで死んだりしたら後味悪いからね)

初香は、自分がえびげんを心配していたことが何となく面白くなくて、
誤魔化すように心中で呟く。

「それにしても、思ったより死んだ人が多いなぁ……これは急がないとまずいかも……」

人数が少なくなれば、それだけ脱出の可能性は低くなる。
協力者になってくれる者も少なくなるだろうし、首輪を解除できる技術を持った人間が
死んでしまっては、全ての希望が断たれてしまう。

「……本当に早くしてよ、えびげんさん……」

初香は焦燥感を感じ始めていた。
このままでは、脱出の可能性がなくなってしまう。

と、扉の向こうから足音が聞こえてきた。

(……やっと帰ってきたのかな?)

初香は期待するが、よく聞くとその足音はえびげんのものにしてはやたらドスドスとした
ものに聞こえる。

おそらく男性。
それもかなり大柄の人間だ。

初香は考える。
この参加者に対して、どう対処するかを。

(隠れてやり過ごす?……いや、それは駄目だ。
 死者の多さを考えると、もうモタモタしてられない。
 多少危険を冒しても、協力者を得るために行動しないと……)

初香はショットガンを構えて、迎え撃つ態勢を整える。

やがて、開かれた扉から現れたのは……。





[36]投稿者:『巡り会い  その3』289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/25(Sun) 20:57 No.410  

「お……?おお!?」

モヒカンは自らの股間が天を突く様を見て確信する。

「この反応……ここかぁぁっ!?ここに獲物がいやがるのかぁぁっ!?」

国立魔法研究所を前にしたモヒカンは、満面の醜い笑みを浮かべながらハイテンションに叫ぶ。

「しかも、この反応は……!!」

  幼  女  !  !

「ウヒアアッハハッッァァハハハハァァァッーーーーーーッ!!!!」

  モ  ヒ  カ  ン  狂  乱  !  !

スーパーハイテンションとなったモヒカンは、意味不明の奇声を発しながら国立魔法研究所に
突撃していくのだった。






「……で、捕まえてきたわけだが、どうするよコイツ?」
「な……何よ、いきなり襲いかかって……!?
 まさか、アンタたち殺し合いに乗ってるんじゃ……!?」

10代半ばであろうその少女は明らかに怯えた様相を見せていた。
そんな少女の首根っこを容赦なく引っ掴んで引きずってきたオーガに非難の目を向けながら、
ミアは優しくその少女に話しかける。

「大丈夫、安心して。私たちは貴女に危害を加えるつもりなんて無いから」
「で……でも、いきなり私に襲いかかって……!」
「その人が貴女を捕まえたのは、こっちも警戒していたからだよ。
 もし貴女が殺し合いに乗ってたら、私たちが危ないから……。
 ゴメンね、怖い思いさせちゃって」
「……うっ……」

ミアの優しい言葉を聞いた美奈は、堪え切れず涙を流し始めた。
この殺し合いの場でようやくまともな人間に会えたことで、美奈の緊張の糸が切れたのだろう。

「ど……どうしたの!?大丈夫!?
 そんなに怖かったの!?」

慌てて美奈に駆け寄ったミアは、良く見ると美奈の右肩が骨折していることや所々に打撲傷が
あること、上半身の服が破かれていることに気がついた。

ミアはオーガを睨みつける。

「……俺じゃねーよ」

オーガはうんざりした様子でミアの視線に答える。

「……おい、お前。その怪我は誰にやられた?」

オーガの言葉に、美奈ははっとする。

「そ……そうだ……!ねえ、貴方たち魔法とか使えない!?
 私、さっきエルフみたいな男に変な魔法掛けられて……!」
「……詳しく話せ」

美奈はエルフのような長い耳を持つ男に襲われたこと、そして身体にディレイ・スペルという
遅延魔法を刻まれたことを話した。

「ひどい……待ってね、すぐにその魔法を解いてあげるから……」
「ほ……本当……!?解けるの……!?」

美奈は希望に顔を輝かせる。
それに、美奈に刻まれたディレイ・スペルを確かめていたミアは笑顔で答える。

「大丈夫。貴女に掛けられた魔法は高度ではあるけど、
 解呪自体は難しく無さそうだから……」

そう言って、ミアはマジックロッドを掲げて美奈のディレイ・スペルの解呪を始める。
美奈の身体が光り始め、温かい感触に包まれる。

そして、美奈の身体に刻まれたディレイ・スペルの刻印が消えていき……。


バキン!


「!?」

ミアの顔が強張る。

それを見て、美奈が不安そうな目を向ける。

「え……!?な……何よ、どうしたの……!?」
「あ……大丈夫、解呪は成功したわ。ただ……」

ミアのはっきりしない物言いに、美奈は不安を募らせる。
それを横目に、オーガがミアに問う。

「……何か仕掛けてあったのか?」
「……はい。たぶんですけど、これは魔法を解いた瞬間に、
 その解かれた場所の情報を術者に与える魔法が仕掛けられていたんだと思います」
「……何?」

ミアのその言葉に、オーガは顔を顰める。

「ちょっと待て、だったら……」
「はい……この子に魔法をかけた術者は……
 おそらく、今ここに向かってきているはずです」
「アイツが……!?そ……そんな……!?」
「マジかよ、クソ……!」

オーガはすぐに荷物をまとめ始めた。
ミアも時間が無いことを意識し、手早く美奈に回復の魔法を掛け始めた。
痛みが和らいでいくことに驚いた美奈にミアが声をかける。

「ゴメンね。時間がないから完全には治してあげられないけど、
 これで走ることはできるよね?」
「う……うん……」
「貴女も私たちに着いてきて。
 大丈夫、貴女を襲った男が来ても必ず私たちが守ってあげるから」
「……うん……」

ミアの言葉に、美奈は素直に頷く。
元より、この状況では信用できるのはミア(と一応オーガ)くらいなのだ。
美奈に選択肢など無かった。

「準備はできたか?なら、さっさと行くぞ」
「はい!」

ミアはまゆこを背負うと、美奈と一緒にオーガの後を追い始めた。





[37]投稿者:『巡り会い  その4』289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/25(Sun) 20:58 No.411  

「ヒャアッハッハッハァァーーーーッ!!」
「っ……!?う……動かないでっ!!」

初香を見た瞬間、下劣な奇声を上げて襲ってきた男に対して、
初香は銃を構えて警告の声を上げた。

だが、ニヤリと笑った男は次の瞬間には5体に分身したのだ。

あり得ない現象を目の当たりにした初香はその瞬間、思考が停止した。
その隙に、分身の一人が迫ってくる。

(!?……し……しまった……!?)

慌てて銃を構え直し、分身を撃とうとする初香。

だが、初香は躊躇する。

(撃ったら……どうなるの……?
 分身……よく分からないけど、本体じゃないなら死なない……?
 それとも、どれを撃ってもこの男は死ぬの……?)

もし、死ぬとしたら。
自分は人を殺すことになる。

初香はそう考え、躊躇ってしまった。
そして、その躊躇は、初香に致命的な隙を作った。

「オラオラ、何ぼさっとしてやがるんだぁぁぁっ!!?」
「あっ……!?」

間合いを詰められた初香は、持っていた銃を分身の一人に奪われてしまう。
そして、迫ったもう一人の分身に殴り飛ばされる。

軽々と吹っ飛んだ初香は、窓を突き破って外に飛んで行った。

「がっ……!?」

吹っ飛んだ初香は地面に叩きつけられた瞬間、あまりの衝撃に気を失いかけた。
それでも何とか意識を保った初香は、身を起こそうとして、わき腹の激痛に悲鳴を上げて
悶絶する。

「痛っ……!?……ぅぅっ……!」

アバラが何本か折れたらしい。
凄まじい激痛に苦鳴を洩らしながらも、何とか身を起こして逃げようとする初香。

だが、そんな初香の頭上に影が降りる。

顔を上げた初香の目の前には、股間をギンギンに滾らせた巨漢の変態。

「どこに行こうとしてるのかなぁぁぁ?」
「……ちょっと花摘みにね。着いてきたら殺すよ」
「ヒャハハハ、殺してみせろやオラァァァァァ!!?」

そのまま初香を押し倒し、馬乗りになるモヒカン。

「うぁっ……!」
「ヒャハハハハ、さあイッツ・リョナタァァァイムだぜぇぇぇ!!」

そう言って、モヒカンは拳を振り上げる。
慌てて顔を庇う初香に、何度も容赦の無い拳の連打を浴びせ始めるモヒカン。

「ひぐっ……!あぅっ……!げふっ……!あぁぁっ……!」
「ヒィィィハハハァァァーーーーッ!!」

殴られるたびに悲鳴を上げる幼い少女。
モヒカンはそんな初香に興奮し、さらに初香を殴りつける。

そして、数分もの間殴られ続けた初香は痣だらけの痛々しい姿となっていた。

「う……あ……あぁ……!」
「ひひひひ、おいおいどうしたよぉぉ〜〜?
 まだまだここからが本番だぜぇぇ〜〜?」

そう言うと、モヒカンは両手で初香の頭部を掴み、息がかかるほどに顔を近づけてくる。

「こ、の……放せ、変態……!」
「お断りだぜぇぇぇ!!」

そう言って、モヒカンは初香の顔をベロベロ舐め始めた。

「ひぃ……!?」
「うぅぅ〜〜ん、デェェリィィシャァァァスゥゥゥ!」
「い……嫌……!?やだっ……やめてっ……!!」

モヒカンの行為に未だかつて感じたことのないほどの強烈なおぞましさを
感じた初香は必死で抵抗するが、モヒカンの力には叶わない。

モヒカンのナメクジのような舌が、初香の唇にまで這いまわり初香は悲鳴を上げる。

「いいいぃぃぃええぇぇぇあぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!」

そんな初香にさらに興奮したモヒカンは、初香の腹にユサユサと自分の股間を擦りつけながら
狂ったように天に向かって叫ぶ。

初香は、自分の腹部から伝わるモヒカンの股間の熱と感触のおぞましさに泣きたくなる。

(うぅ……気持ち悪いよぉ……!何とか……何とか、この変態を倒さないと……!)

そこで、初香は自分が纏っている赤いテーブルクロスの懐にスペツナイズ・ナイフを
忍ばせていたことを思い出す。

目の前の変態は、今度は初香の首筋に顔を埋めて耳たぶをチュパチュパとねぶり始めていた。
その感触は耐えがたいほどの嫌悪感を初香に与えてきたが、初香は涙目になりながらも
必死でそれに耐えつつ、ゆっくりと懐からナイフを取り出し……。

だが、右手がナイフを掴んだところで、その手をねじり上げられた。

「痛っ……!?」
「ひひひひひ、お嬢ちゃんの考えなんてお見通しなんだよ。
 いきなり抵抗が弱くなったら誰だって不意打ちを警戒するぜ、オイ?」
「っ……!」

(こんな男に考えを読まれるなんて……!)

初香はモヒカンを睨みつけながら、屈辱に打ち震えた。

モヒカンはそんな初香にニヤァァっと醜い笑顔を向け、初香の纏う赤い布に手をかけた。

「!?……やめっ……!」

何をされるのか悟った初香は慌てて両手でモヒカンの手を抑えようとする。
だが、それは叶わない。


[38]投稿者:『巡り会い  その5』289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/25(Sun) 20:59 No.412  

ビリィィィィィィィィィッ!!

初香の身体を隠していたテーブルクロスは、モヒカンの力に耐えられずあっさりと
引き千切られた。

露わになる初香の未成熟な身体を、涎を垂らさんばかりの表情で初香の平らな胸に視線を這わせる。

「……〜〜〜っ!!」

初香は顔を真っ赤にして、涙の滲んだ目でモヒカンを睨みつける。

「んんんんん〜〜〜〜良い顔だぜ、お嬢ちゃぁぁん……。
 よしよし、じゃあ良いモノを見せてくれたお礼をしないとなぁぁ?」

いつの間にか、モヒカンと初香の横に分身モヒが一体立っていた。

その手には、初香から奪ったショットガン。

モヒカンは分身モヒからショットガンを受け取り、初香の胸部にポイントする。

「っ……!?」
「このボウガンでお嬢ちゃんの身体に風穴を開けてやるぜぇぇぇ!!
 風通しが良くなって嬉しいだろぉぉおぉぉ、ヒャハハハハァァァァーーーー!!」

どうやら、モヒカンはショットガンのことを変わった形のボウガンだと思っているらしい。
そのことに初香は若干の疑問を覚えるが、どちらにせよ基本的な使い方が同じである以上、
初香に取っては大差の無いことだ。

そう、ショットガンだろうがボウガンだろうが弾が発射されれば初香は死ぬのだ。

「くっ……うぅぅっ……!」

恐怖に駆られ、逃れようともがく初香を愛おしそうに見つめるモヒカン。

「いいねぇぇぇ……何度見ても、女が怯える様は最高だぜぇぇぇ……!」

そして、モヒカンはショットガンの銃口を初香の眉間にゴッと押し付ける。

「ひっ……!?」

初香は思わず悲鳴を上げる。
向けられる銃口、そこから伝わる死の恐怖に初香の身体は震え始める。

「どこに穴を開けてほしいかなぁぁぁお嬢ちゃぁぁぁん?」
「ど……どこもヤダよっ……!何でこんなことするのっ……!?
 お願いだから、もう止めてよっ……!」

初香の震える声を聞いたモヒカンは嬉しそうな声を上げる。

「おやあぁぁ?最初のような余裕のある受け答えはどうしたのかなぁぁ?
 もう限界でちゅかぁぁぁ?」
「う……うぅぅっ……!!」
「へっへっへ、所詮はお子様だなぁオイィィ?」

そう言って、モヒカンは初香の露わになった胸に銃口をぐいぐい押しつける。

「このちっちゃな胸がいいかなぁ〜〜!?ひひひひ、ほれほれ!」
「あ……あ……!」

銃口を胸に押し付けられた初香は、その冷たい感触に怯えた声を上げる。
そんな初香をさらに嬲るようにモヒカンは銃口を移動させる。

「それともぉぉぉ〜〜……ここがいいかなぁぁぁ〜〜!?」

そう言って、今度は初香の股間に銃口を向ける。
息を呑む初香。

「や……やめて……!それ、除けてよぉ……!」
「ほぉぉ〜〜れ、ぐにぐにしてやるぜぇぇ〜〜!」
「ふぁっ……!ひっ……ひぅっ……!」

再び伝わる冷たい金属の感触。
今度は初香の秘所を襲うそれに、初香はたまらず声を漏らしてしまう。

その初香の様子にモヒカンのボルテージは限界を超えた。

「ひゃあ、もう我慢できねぇぇぇぇ!!
 徹底的にリョナってやるぜぇぇぇぇ!!」

そう言って、モヒカンはショットガンの銃把で初香の胸部を思い切り殴りつけた。

ボキィィィッ!!

「がぁぁっ!!?うぁっ……ごほっ……!!あっ……あぁぁぁっ……!!」

初香は胸を押さえて、激痛に苦しみのたうち回ろうとする。
だが、モヒカンが馬乗りになっている状態ではそれも叶わない。

ほとんど身動きのできない状態の初香は、ただその激痛に耐えるしかなかった。
だが、その初香にさらなる苦しみが襲う。

モヒカンががばっと口を開けて、初香の小さな鼻と唇に吸いついてきたのだ。

「むぐぅっ……!!?んんぅぅ〜〜〜っ!!」

気色悪さに加えて、呼吸ができない苦しさに初香はモヒカンから必死で逃れようとする。
だが、モヒカンに押さえつけられた初香の抵抗は再び無駄に終わる。

モヒカンは初香の肺に残った空気まで吸い出そうとするかのように、ずずずずず〜〜っと
音を立てながら初香の鼻と唇を貪る。

(……苦し……い…………息……が…………!)

肺からわずかな空気すら吸い出され、呼吸困難に陥いる初香。
だが、初香が意識を失う直前に、モヒカンはぶはっと口を放して初香を開放する。

「ぜっ……はっ……!げほっ……!はぁっ……はぁっ……!!」
「へへへ、まだまだこれからだぜぇぇ?」

モヒカンは腰を浮かせ、未だ苦しんでいる初香をひょいと抱き上げる。
そのまま初香の胴に両腕を回して、露わになった初香の小さな胸に汚い顔を押し付ける。

「いぅっ……!?」

自分の胸にモヒカンの顔が張り付いた感触に、先ほど胸骨を砕かれたばかりの
初香は痛みを感じて苦鳴を漏らした。

それによって、呼吸困難で朦朧としていた意識がいくらかはっきりする。
そして、初香はようやく自分がモヒカンに抱きかかえられていることに気がついた。

「い……いや……やだっ……!」

初香は恐怖に震える。

また痛いことをされる。
そう思った初香は、死に物狂いでモヒカンから逃れようと暴れまわる。

唯一自由になる足でモヒカンを蹴りつけて必死の抵抗をする初香。
だが、そんな初香をモヒカンはにやにやと眺めるだけ。

自分の抵抗が全く意味を為さない現状に初香の心に絶望が広がる。

このまま自分はこの男が満足するまで嬲られ、殺されるのだ。

(嫌だ……そんなの嫌だ……!!)

だが、抵抗の術は無い。

そもそも、初香には分かっていた。
銃を奪われ、この男に追い詰められた時点で自分は『詰み』だったのだ。

自分の力だけでは、この男から逃げることなど不可能なのだから。

「あ……あぅ……あぅぅぅ……!」

涙がぼろぼろ溢れてくる。


怖い。

殺されるのが怖い。
痛いことをされるのが怖い。

この男が、怖い。


すでに恐怖が限界となった初香はただ泣きながら弱々しい抵抗を繰り返すだけ。

初香は、心のどこかで自分はこんなにも弱かったのかと失望していた。
だが、諦めにも似た納得を抱いていた。

所詮、自分は子供だったのだと。

(……もう駄目……このまま……殺されるんだ……)

そして、とうとう初香は生存を諦めてしまった。

すでに初香は10歳の子供の身では到底耐えることのできないほどの苦痛と恐怖を
モヒカンによって与えられている。
初香は大人顔負けの精神力を持っていたが、そんな初香とはいえ、モヒカンの
鬼畜な攻めに耐えきれるほどの強い心は持っていなかったのだ。

「へへへ、さあ……良い声を聞かせてくれよぉぉ?」

そう言うと、モヒカンは初香の胴に回した両腕をそのまま締め上げる。


ミシミシィィッ……!


「!!?……いぎあぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!」

初香は胴を締め上げられる激痛に絶叫する。

モヒカンの締め上げは容赦が無かった。
子供に与えるには過剰すぎるほどに、全力で初香の細い胴を締め上げていた。

「ヒィィハハハァァァァ!!
 良い声だぜぇぇぇお嬢ちゃぁぁぁん!!
 このまま胴を真っ二つにへし折ってやらぁぁぁぁ!!」

モヒカンの叫びは、初香の耳には入っていない。
初香はすでに意識を失い、その身体はぐったりと力を失っていたのだ。

だがモヒカンはそんなことには気がつかず、初香の胴をへし折るために
さらに力を込め……。




バキィィィッ!!




次の瞬間には、モヒカンは吹っ飛ばされていた。

「やっぱり……貴方を放っておくべきじゃなかったわ……!」

怒りに震える少女の声。
そこに立っていたのは、マジックロッドによって変身したミアだった。





[39]投稿者:『巡り会い  その6』289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/25(Sun) 20:59 No.413  

ダージュが東支部に到着したときには、すでに東支部はもぬけの殻だった。

「ちっ……逃げたか……まあいい、ここから逃げる場所といえば
 西にある国立魔法研究所以外には考えられねぇ……。
 そこにいけば、あのガキとガキのディレイ・スペルを解いた人間に
 会えるってわけだ……」

ダージュは呟き、ふとそばにデイパックや支給品が複数落ちていることに気がつく。

「慌てて忘れでもしたのか……?
 役立ちそうなものだけ、もらっていくか……」

ダージュはデコイシールドと宝冠「フォクテイ」を自分のデイパックに仕舞った。

「さて……それじゃあ、追うとするか……」

ダージュは国立魔法研究所に向かって歩を進めて行く。






(疫病神かよ、こいつは……!?)

オーガはあまりの巡りの悪さに、頭を抱えたい気分だった。

今、彼の目の前には気絶したモヒカンが転がっており、そのモヒカンが襲っていた少女は
ミアによって回復魔法をかけられていた。

幸いモヒカンが気絶しているおかげで、オーガとモヒカンの関係は気付かれていないが、
このままではまずい。

なぜなら……

「ねえ……この男、どうするの?」

美奈の問いかけに、ミアは考える。

「そうね……少なくとも、放っとくわけにはいかないわ……」
「まさか……連れて行くなんて言わないわよね?」
「そうは言わないけど……」

ミアは迷っている。
美奈はそんなミアにはっきりと聞く。

「……殺さないの?」
「それは……」

ミアと美奈の会話に、オーガは気が気ではなかった。

美奈の言葉を聞く限り、美奈はモヒカンを殺しておきたいと思っているようだ。
ミアは殺すことに躊躇があるようだが、モヒカンはすでに多くの犠牲を生んでいるのだ。

いくらミアといえど、ここで見逃すほど甘くはないだろう。

「……動けないように拘束して……ここに置いていくのは……?」

前言撤回。

ミアの言葉を聞いて、オーガは自分がまだミアの性格を掴み切れていなかったようだと考え直す。

(だが、これはチャンスだ……)

ここで自分がミアの言葉に賛同すれば、美奈も渋々納得するかもしれない。
さっそくミアの意見に追従しようと口を開いたところで……。

「私……その子以外にも、この男が女の子を襲ってるところを見たわ……。
 コイツ、心底楽しそうに私と同じくらいの子を嬲り殺しにして……」

そのときのことを思い出したのか、美奈は身体を震わせる。

「っ……!」

ミアの顔色が変わる。
その表情にはモヒカンに対するさらなる怒りが浮かび、同時に決意の現れが見て取れた。

(!?……まずい……!)

オーガは慌てて、モヒカンに何らかのフォローを入れようと考えるが、

(……入れようがねーだろ、そんなもの!!)

当然、モヒカンの仕出かしたことにはフォローの余地などない。
加えて、今まで自分がミアに対して見せてきた性格は、どちらかと言えば東支部にいるときと
同じようなドライな面だ。
今更、こんな男の生命を尊ぶような博愛精神に満ちた言動を取っても、疑いの眼差しを
向けられるだけだろう。

「……分かった……この男は殺すわ……」
「!……そ……そうよ……!そのほうが……いいに決まってる……」

美奈は自分で提案しておきながら、いざとなったら殺すことに怯えを感じ始めたらしい。

(だったら、最初から提案するんじゃねぇ!)

怒鳴りたくなるのを堪えつつ、オーガは必死で考えを巡らせる。
だが、良い手が思いつかない。

(くそ……どうすれば……!)

「……待っ……て……」

焦るオーガの耳に、耳慣れない声が聞こえる。

「!?……良かった、気がついたのね!?」
「……その……男を……殺すのは、待って……」

モヒカンに痛めつけられ、気を失っていた初香が目覚めたのだ。

「殺すなって……じゃあ、どうしろって言うのよ?」

美奈は不満げに初香に言葉を向ける。

「……殺すなとは……言ってないよ……。
 ただ……ちょっと待ってって……言ってるだけ……」

初香はよろよろと立ちあがり、モヒカンがミアに吹っ飛ばされた際に放りだされていた
ショットガンの元へと向かおうとする。

「ま……待って!あれが欲しいなら、私が取ってきてあげるから、
 貴女は無理をしないで!」

そう言って、ミアはショットガンを拾ってきて初香に渡す。

「ありがと……そういえば、助けてもらったお礼もまだ言ってなかったね……」
「気にしないでいいよ、そんなことは!
 それよりも、傷の手当てを続けないと……!」
「大丈夫……少しは動けるようになったから……」

そして、初香はモヒカンの前まで近付くと、ショットガンをモヒカンに向けて構える。
それを見て、美奈は息を呑む。

「まさか、貴女がその銃で……!?」
「……うん……この男はボクが殺すよ……」

初香の言葉に、まゆこ以外の全員に緊張が走った。

「ば……馬鹿なこと言わないで!
 貴女みたいな子供に人殺しなんて……!」
「子供とか関係ないよ」

激昂するミアに、初香は冷たく告げる。

「ボクがこの男を撃つのを躊躇わなければ、
 こんなことにはならなかったかもしれないんだ」

初香は続ける。

「ボクにはこの殺し合いを生き残るための覚悟が足りないんだよ……。
 だったら、ここでこの男を殺しておいて、いざというときには
 殺しを躊躇しない心を手に入れておかないと……!」
「馬鹿言ってんじゃねーよ」

初香の覚悟に、水を差す言葉が放たれる。
初香はきっとその声の主を睨みつける。

オーガは、その視線を真っ向から受け止める。

「黙っててよ。
 貴方からしたら馬鹿なことかもしれないけど、
 ボクにとっては大事なことなんだ。
 人を殺す覚悟が無いとこの殺し合いには……」
「人一人殺したくらいで、そんなものは手に入らん」

初香の言葉を、オーガは冷たく遮る。

「何人殺したって人殺しを躊躇するヤツはいるし、
 逆に一人も殺してないやつでも、全く躊躇しないヤツもいる」

オーガは続ける。

「お前はどう考えても、前者のタイプだ。
 確かに一度殺しをすれば、ある程度は慣れるかもしれないが、
 そんな程度じゃ最初から殺しを躊躇しないヤツに通じるわけがない。
 逆に、人を殺したことによる精神的なダメージのほうがこの場では問題になる」

そして、オーガは初香に告げる。

「お前の場合、殺しをすることによって得られるメリットよりも
 デメリットのほうが大きい。
 切羽詰まった状況で仕方なく殺すならともかく、こんな気絶しているだけの
 人間をわざわざ殺す意味なんか無いんだよ」

オーガから告げられた言葉に、初香は顔を青ざめさせて肩を震わせる。

(……この人は……)

オーガの言葉は温情からのものではない。
実際に初香が人を殺した場合に、初香にとってメリットがあるか否かを冷静に、
冷徹に告げているだけなのだ。

おそらく、この男は人を殺したことがあるのだろう。
それも、一人や二人などという数ではなく膨大な人数を。

この目の前の男のような人間に、人を一人殺した程度の自分が太刀打ちできるのか?

(……無理だ……)

初香は殺しの覚悟で、この男に勝てるとは思えなかった。
初香が手に入れようとしていた覚悟は、最初から初香が得られる類のものではなかったのだ。

顔を俯かせて黙ってしまった初香に、オーガは近寄る。

「その武器……使い方はボウガンと同じか?」
「え……?うん、そうだけど……?」
「矢は入ってるのか?」
「引き金を引けば、弾は出るはずだけど……」
「……よし、そいつを寄こせ。この男の始末は俺がつけよう」
「……うん……分かった……」

初香は素直に頷いた。

この気絶した男を殺すのは、自分の役目では無いことがはっきりと分かったからだ。

初香はオーガにショットガンを渡す。
オーガはショットガンを初香から受け取り……。




そのまま、ショットガンで初香を殴り倒した。



[40]投稿者:『巡り会い  その7』289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/25(Sun) 21:01 No.414  

「なっ……!?」

ミアと美奈が驚愕の声を上げる。

「何をするんですか、ルシフェルさん!?」
「悪いな、ミア」

怒りの声を上げるミアに対して、オーガは無表情に謝る。

「できることなら、何事も無く穏便に済ませたかったんだがな……」

そこで、オーガは笑みを浮かべた。
その顔に、ミアと美奈はぞっとした。

それはオーガが今までに見せたことの無い凶悪な笑顔……リョナラー連合東支部の
オーガとしての顔だったからだ。

「さすがに、仲間が殺されるのを放っておくわけにもいかないんでな。
 悪いが、裏切らせてもらう」
「な……仲間……!?まさか……!?」

初香の言葉に、オーガは答える。

「その通り、そこに転がってる変態は俺の仲間なんだよ」

オーガは忌々しそうにモヒカンを見やる。

「じ……じゃあ、さっきの会話はボクにそいつを殺すのを止めさせるために……!?」
「俺が殺す流れにしないと不都合だったんでな」
「っ……!!」

初香は悔しさに撃ち震える。

(こんな……こんなヤツを信用したなんて……!)

初香の目に涙が滲む。
こんな男に、天才である自分があっさり騙されてしまったことが情けなくて
仕方が無かった。

(ボクは……やっぱり、ただの子供だ……!)

初香は無力感に撃ち震えていた。

そんな初香に銃口を突き付けながら、オーガはミアに命令する。

「さて……まずは変身を解いてもらおうか」
「……くっ……!」

ミアは悔しげに呻きながらも、変身を解く。
光がミアを包み、次の瞬間には変身の解けた金髪のミアの姿が現れる。

「よし……じゃあ、次はそのロッドを遠くへ投げ捨てろ」
「…………」

黙って、マジックロッドを投げ捨てるミア。
それを確認したオーガは、今度はモヒカンを起こすために声をかける。

「おい起きやがれ、モヒカン!!
 いつまで寝てるつもりだ!!」
「……ぐぅっ……!」

モヒカンは呻き声を漏らした後、頭を振って立ち上がる。

「……ん?おお、オー……じゃなくて、あー……」
「……もう意味ねーよ。オーガで構わん」
「ん?おお、そうか!」

嬉しそうに笑うモヒカンに渇いた笑みを向けるオーガ。

「……さて、モヒカン。
 さっそくだが……そいつらを殺せ」
「!?」
「イヤッハァァァァ!!了解だっぜぇぇぇぇ!!」

オーガの言葉にミアたちは顔を強張らせ、モヒカンは狂喜の雄叫びを上げる。

「くっ……!」
「動くなミア。このガキを殺すぞ」
「っ!……この……卑怯者っ!!」
「んん?良く見たら、あのときの女じゃねーか!?
 へへへ、こりゃついてるぜぇ!!」

万事休す。
初香を人質に取られたミアは戦うことができず、美奈も現状に震えるばかりで何もできない。

このまま彼女たちはモヒカンの餌食になるしか道はなかった。




パァァーーーーンッ!!




「……あ?」

オーガは呆けた表情で自分の胸を見る。

そこから大量の血が溢れていた。
位置からして心臓を撃ち抜かれている。

それを確認した途端、膝から力が抜ける。

(……何が……起こりやがった……?)

オーガは最後の力を振り絞って、背後を振り返る。
視線の先には、銃を構えるメイド服の女性の姿。

「……えびげん……さん……?」

初香の呟く声を聞きながら、オーガは心中で自分の不運を呪う。

(……このタイミングで……新手かよ……!)

ついてない。
全く持って、自分はついてない。

だが、このままで終わってやるものか。

せめて、自分を撃ったメイド服の女性に一矢報いる。
オーガは最後の力を振り絞って、初香に銃口を向け直す。

メイド服の女性が慌てる姿が見える。
銃をこちらに向け直しているようだが、間に合うはずが無い。

こちらは、後は引き金を引くだけなのだ。
たとえ再度撃たれたとしても、この引き金だけは絞り込んでやる。

(死にやがれ、クソガキ……!)

バァンッ!!

オーガのショットガンが火を噴き、少女の身体を撃ち抜いた。

それを確認した瞬間、オーガの意識は途絶える。
そして、彼はそのまま二度と目を覚ますことはなかった。





[41]投稿者:『巡り会い  その8』289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/25(Sun) 21:02 No.415  

オーガに撃たれそうになった初香を見て、ミアは初香を助けに向かおうとした。
だが、モヒカンのイリュージョンに邪魔されてそれは叶わなかった。

何とか分身モヒの攻撃を避わし、初香の救助に向かおうとしたミアが見たのは、
初香の前に身体を投げ出すまゆこの姿。

「まゆこちゃん……!?」

なぜ、心が壊れたはずのまゆこがそんな行動に出たのか?
そんなことは誰にも分からない。

だが、彼女は人々を守る魔法少女として戦うことを選んだ、心やさしい少女だった。

たとえ壊れてしまったとはいえ、その平和を愛する優しい心が今にも殺されようと
している初香を見て、まゆこの身体を動かしたのかもしれない。

そして次の瞬間、ショットガンが火を噴き、まゆこの身体を撃ち抜いた。

それと同時に、倒れるまゆこ。
次いで、オーガの身体も崩れ落ちた。

それを見たモヒカンの顔が赫怒に染まった。

「テメェラァァァァーーーー!!!
 よくもオーガをおおぉぉぉぉーーーー!!!」

怒りの雄叫びを上げ、イリュージョンを発動するモヒカン。

五体のモヒカンは、ミアに二体、美奈に一体、えびげんに二体の割合で襲いかかる。

「くっ……!」

マジックロッドを失い、武器を持たないミアにはその分身たちを捌くことは難しい。
加えて、美奈に襲いかかる分身にも対処しなければならないのだ。


パァァーーーーンッ!!
パァァーーーーンッ!!


しかし、次の瞬間には美奈に向かった分身とミアに向かった分身の一体が消滅した。
驚くミアだが、救出に駆けつけてくれたメイド服の女性が頷くのを遠目に確認して納得する。

まだ一体残っているが、このくらいならマジックロッドを持たない自分でも何とかなる。

分身モヒの攻撃を避わしつつ、ミアは残った一体にハイキックを放つ。

「やあぁぁぁっ!」

気合いの声とともに叩きこまれた蹴りによって、残った一体も消滅する。

残りはえびげんに襲いかかっていった最後の分身と本体のみだ。






えびげんは迫り来る二体の変態を見据えながら、冷静に一体に銃弾を撃ち込んだ。


パァァーーーーンッ!!


銃弾を撃ち込まれた変態は消滅する。

舌打ちするえびげん。
どうやら、これも本体ではなかったらしい。

(……でも、これでチェックメイトよ)

銃弾は残り一発。
変態も残ったのは本体のみ。

えびげんは狙いを定めて、変態を撃ち抜こうと……。


ガンッ!!

「あだぁっ!?」

飛んできた何かが額にぶつかり、えびげんは痛みに蹲る。

「いったぁ〜〜……!何が飛んできたのよ!?」

自分の額にぶつかった物が何なのか確認すると、先ほど自分が撃ち殺した男の持っていた
ショットガンだった。

おそらく、変態が拾って投げつけたのだろう。

ひどいヤツだ。
銃は投げる物ではなく、撃つ物なのに。

「銃を投げるとか、銃に対する冒涜よ!
 こんな扱いをされて、銃も悲しんでるわよ!」
「ほ〜う……そうかそうか……。
 ところで、俺もてめえにオーガを殺されて
 悲しくて悲しくて仕方が無いんだがなぁ……?」
「……あれ?」

間抜けな声を上げるえびげん。
ふと見ると、変態はえびげんの目の前まで迫っていた。

慌てて銃口を向けるえびげんだが、モヒカンはそれを腕で打ち払った。
銃はえびげんの手から離れ、遠くへ転がっていった。

形勢逆転である。

「あ……あははは……」

誤魔化すように、笑顔を浮かべるえびげん。
頬には冷や汗が流れている。

「はっはっはっは」

モヒカンも笑う。

なんだ、意外と気が合うではないか。
えびげんは安心する。

「あっはっはっはっは!」
「ヒャアーーーハッハッハッハァァァ!」

笑う二人。

だが、モヒカンはいきなり笑うのを止めると、

「何がおかしいんだクソアマがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「きゃあぁぁぁっ!!?」

えびげんを押し倒すモヒカン。

「てめえは楽には殺さねぇ……!!
 全身の骨を砕いて、肉をぐちゃぐちゃに潰して、
 犯して犯して犯し抜いて、バラバラにしてやらぁぁぁぁ!!」
「いやぁぁぁーーーー!!暴力はんたーーーーい!!」
「やかましいぃぃぃぃ!!」

拳を振り上げるモヒカン。

だが、そんな彼に衝撃が走る。

ズブっ!!

「あおおーーーっ!!?」

モヒカンの尻にナイフの刀身が刺さっていた。

モヒカンが怒りの視線を向けると、そこには刀身の無くなったナイフを構える初香の姿。

「……えびげんさんから……離れて……!」

モヒカンに痛めつけられた身体をよろけさせながらも、初香は毅然とした表情で
モヒカンを見据えている。

モヒカンは獰猛な笑みを初香に向ける。

「痛めつけ方が足りなかったみたいだなぁ、オイ……!!?
 いいぜぇ、さっきとは比べ物にならないほどたっぷりと可愛がってやるからなぁぁ……!!」
「……隙ありっ!」

初香に気を取られたモヒカンの隙を突いて、えびげんはモヒカンの股間を思いっきり蹴り上げた。

ゴインッ!!

「うごっ……!!?ぐがああぁぁぁぁっ!!」

モヒカン、股間を抑えてピョンピョン跳ね回る。

いくらタフな彼とはいえ、これは痛い。
そんなことをやっているうちに、ミアと美奈が駆けつけてきた。

それを確認したモヒカンは怒りに震えつつも、さすがに退くべきだと判断する。

「覚えてやがれ……!!てめえら、一人残らず苦しめ抜いて犯しつくして、
 ゴミのように殺してやるからなぁ……!!」

モヒカンは捨て台詞を吐いて、全速力で逃げ去っていった。





[42]投稿者:『巡り会い  その9』289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/25(Sun) 21:03 No.416  

ミアはまゆことオーガの墓を作っていた。

オーガの墓まで作ることに美奈と初香は抗議の声を上げたが、ミアは首を振った。

たとえ裏切ったとはいえ、彼には助けられた部分があったことも確かだ。
それに死んでしまえば、敵も味方も無い。

平等に弔いたいというミアの言葉に、二人は渋々納得したのだった。

やがて、二人の墓を作り終えたミアは、墓の前で手を合わせて黙祷する。

そして、目を開けたときにはいつの間にか隣にメイド服の女性がいて、
同じように手を合わせていた。

「……いや、私が殺しちゃったわけだし、一応……ね?」

誤魔化すように笑うえびげんに、ミアは微笑む。

「……これからどうする?」
「そうですね……とりあえず、けっこう疲れちゃったし休憩がしたいです。
 さすがにもうヘトヘトですから……」

ミアはそう言いながら思う。

本当に疲れた。
この短時間で、いろいろなことがあり過ぎた。
風を操る少女との死闘、なぞちゃんの変貌、謎の男の襲撃、オーガの裏切り。

辛いことはたくさんあった。
だが、自分は生き残っている。

生きている以上は、あの男 ―― キング・リョーナを倒すまでは膝を折るつもりなどない。

(死んでしまった人たちのためにも、私たちが頑張らないと……)

ミアは改めて、この殺し合いの打破に臨む決意を固めるのだった。






「ちっくしょおぉぉぉ……あの女どもぉぉぉ……!
 絶対に殺してやるからなぁぁぁ……!」

モヒカンは憤怒の形相を顔に浮かべながら、道を進む。

「だが、さすがに俺一人じゃあの人数はキツイぜ……!
 何とかオーガのような仲間を見つけねぇと……!」

そんなモヒカンに声をかける者がいた。

「……よう、アンタ。
 さっきの戦い、見せてもらったぜ」
「……ああ?何だ、てめえは?」

モヒカンは胡乱気な目で声をかけてきた優男 ―― ダージュを睨む。

「そんなに警戒するなよ。俺はただ、アンタに協力したいと
 思って声をかけただけさ」
「俺に協力だとぉぉ?」

モヒカンの疑問の声に、ダージュは頷いて答える。

「ああ、そうさ。アンタ、あの女どもを殺したいんだろ?
 それなら、俺も一緒さ。
 俺は今、ある女を殺したヤツとその女の関係者を探してるのさ。
 詳しい説明は省くが、俺はそいつらを皆殺しにしたいんだ」
「……あの女どもが、その関係者だってのかよ?」

モヒカンの言葉に、ダージュは首を振る。

「いや……というか、分からん」
「はあ?」
「正直なところ、俺には誰がオルナの仲間なのか、
 誰がオルナを殺したのかということが全く分からないんだよ」
「おいおい……じゃあ、あの女どもは全く関係ないヤツかも
 しれねぇじゃねーか?」

モヒカンの呆れた声を聞き、ダージュは笑みを浮かべる。

「別にそれでもいいんだよ……要は、最終的に
 そいつらを殺せればいいんだからな……」
「……どういうことだよ?」
「分からないか?
 つまりさ……この場のヤツ全員を殺しちまえば、オルナを殺したヤツも、
 オルナの関係者も全員殺したことになるだろ?」
「……あー……」

モヒカンは納得する。
それと同時に、目の前のこの男が狂っていることも何となく理解した。

(まあいいか。一応協力するつもりはあるみたいだしな。
 適当に利用して、ポイだ)

モヒカンは目の前の男を利用することに決めた。
だが、そう考えているのはダージュも同じだった。

(あの分身の魔法は囮には最適だ……。
 俺のディレイ・スペルと組み合わせれば、最強かもしれない……。
 参加者を皆殺しにするために、精々利用させてもらうぜ……)

そう考え、ダージュは暗い笑みを浮かべてくっくっと笑う。

かくして、ここに異色のリョナラータッグが結成したのだった。





[43]投稿者:『巡り会い  その10』289◇SqVSQKtY 投稿日:2009/10/25(Sun) 21:04 No.417  
【オーガ@リョナラークエスト 死亡】
【まゆこ@魔法少女☆まゆこちゃん 死亡】
【残り30名】

【A−4:X2Y3 / 国立魔法研究所 / 1日目:午後】

【ミア@マジックロッド】
[状態]:魔力ゼロ(変身と回復のため)
[装備]:マジックロッド@マジックロッド
四葉のクローバー@現実世界(頭に装備)
[道具]:デイパック、支給品一式×2(食料12食分、水12食分)
火薬鉄砲@現実世界←本物そっくりの発射音が鳴り火薬の臭いがするオモチャのリボルバー銃(残6発分)
クラシックギター@La fine di abisso(吟遊詩人が持ってそうな古い木製ギター)
カッパの皿@ボーパルラビット
涼子のナイフ@BlankBlood
エリクシル@デモノフォビア
赤い薬×3@デモノフォビア
人肉(2食分)@リョナラークエスト
新鮮な人肉(当分は無くならない程度の量)
[基本]:対主催、できれば誰も殺したくない
[思考・状況]
1.体力と魔力の回復
2.巻き込まれた人を守る
3.なぞちゃんの捜索
4.バトルロワイヤルを止めさせる方法を探す

※オーガの本性を知りました。
※東支部で襲ってきたモヒカンが今回遭遇したモヒカンと同一人物だとは認識していません。
※オーガの持っていた肉が人肉だと気づいていません。



【登和多 初香{とわだ はつか}@XENOPHOBIA】
[状態]:疲労大、精神疲労中、全身打撲、アバラ二本骨折、胸骨骨折(魔法でいくらか緩和)
[装備]:ショットガン(残弾数2+15)@なよりよ
破かれた赤いテーブルクロス@バトロワ
[道具]:デイパック、支給品一式
火炎放射器(残燃料100%)@えびげん
スペツナズ・ナイフx9@現実
[基本]:殺し合いからの脱出
[思考・状況]
1.えびげんが探してきた服が見事気に入ったら、スペツナズ・ナイフを1本あげる予定
2.↑……だったが、助けてもらったのでもうちょっと条件を考慮しても良いと思ってる
3.仲間と情報を集める

※魔法の存在を知りました。



【えびげん@えびげん】
[状態]:健康
[装備]:三八式歩兵銃+スコープ(残弾1発、肩掛け用のベルト付き)@現実世界
メイド服@えびげん
[道具]:デイパック、支給品一式
髪飾り@DEMONOPHOBIA
エルデクーヘンx3@創作少女
魔封じの呪印@リョナラークエスト
パンダのきぐるみ@現実世界
豹柄ワンピース@現実世界
クマさんティーシャツ&サスペンダースカート(赤)@現実世界
ウェディングドレス(黒)@現実世界
ビキニアーマー@現実世界(コスプレ用のため防御力皆無)
[基本]:ハデ夫をぶちのめしたい
[思考・状況]
1.今度は初香をしっかり守る

※モヒカンを危険人物と判断しました。



【加賀 美奈@こどく】
[状態]:疲労大、精神疲労大、右肩複雑骨折(魔法でいくらか緩和)
[装備]:先の尖っている石@バトロワ世界(ポケットの中にしまっています)
(安全ヘルメットダージュに捨てられました)
[道具]:デイパック、支給品一式
木彫りのクマ@現実世界(一般的なサイズのもの)
AM500@怪盗少女(残弾1発、安全装置未解除)
※美奈は残弾数について確認していません。
奈々の拳銃(?/8)@BlankBlood
エリクシル@SilentDesire
[基本]絶対死にたくない、元の世界へ帰る
[思考・状況]
1.とりあえずこの集団についていく

※モヒカンを危険人物と判断しました。



【オーガ@リョナラークエスト】
[状態]:死亡
[装備]:無し
[道具]:無し



【まゆこ@魔法少女☆まゆこちゃん】
[状態]:死亡
[装備]:ミアの上着(墓に一緒に埋めました)
[道具]:なし (モヒカンとの戦いで喪失)






【B−3:X4Y1 / 森 / 1日目:午後】

【モヒカン@リョナラークエスト】
[状態]:顔面に落書き、頭部に木の枝が刺さった跡、カッパの皿が刺さった傷
脚に刺し傷、尻にスぺツナズ・ナイフの刀身が刺さっている
※ダメージはいずれもバカ補正で苦痛になっていませんが、一応出血はしています。
[装備]:無し
[道具]:無し
[基本]:女見つけて痛めつけて犯る
[思考・状況]
1.女を見つけたらヒャッハー
2.初香、えびげん、ミア、美奈を殺す

※東支部でのオーガ達との戦闘中の記憶が殆どありません



【ダージュ@リョナマナ】
[状態]:精神中疲労、魔力消費超微量
[装備]:なし(支給品を確認していません)
[道具]:不明(ランダム支給品を確認していません)
支給品一式
宝冠「フォクテイ」@創作少女
デコイシールド@創作少女
[基本]リョナラー、オルナの関係者を殺す
[思考・状況]
1.オルナの関係者を殺す。(誰が関係者か分からないので皆殺し)
2.現在は魔法も簡単なものしか使えないので強いヤツを避けながら夜を待つ。






[44]投稿者:289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/10/25(Sun) 21:18 No.418  
……何なの、この長さは……(´・ω・`)
休日二日が丸々潰れたぜ、コノヤロー。
[45]投稿者:『空回りの誓い その1』  289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/11/01(Sun) 16:50 No.420  
「この……しつこいわよ、アンタ!」

ルカは未だに黄土の巨人ルシフェルから逃げ続けていた。

すでに、エリーシアとりよなの居た場所からは充分離れた位置まで来ている。
ルカとしては、この辺でルシフェルを振り切って彼女たちと合流しておきたいのだが、
巨人はそれを許してはくれない。

後ろから迫る異形の巨人にプレッシャーを感じつつ、ルカはひたすら走り続ける。
だが、元々ダメージを受けていたルカには長時間走り続けることができるほどの
体力は残っていない。
さっさと後ろの巨人を何とかしないと、やがて体力が尽きたルカは殺されてしまうだろう。

そうこうしているうちに、先ほどエリーシアたちと出会ったときに見た巨大な塔が見えてきた。

(!……いつのまにか、戻ってきてたようね……)

逃げる方向などいちいち考えている余裕が無かったルカは、見覚えのある塔を見つけたことで
自分の現在位置をようやく認識できた。

(……よし、ここはあの塔を利用させてもらうわ)

ルカはあの塔の中に入り、ルシフェルをやり過ごすことを決めた。
塔の中がどのような構造なのかは分からないが、一本道ということはさすがに無いだろう。

今までのような見晴らしの良い平原よりは、巨人を振り切りやすいはず。
そう考えたルカは、塔の入口を探すべく塔の外周を回り始めた。

そして、外周に沿って走り続けたルカは塔の入口を発見する。
ルカはすぐさまその入り口へと入り込んだ。

(さあ、来なさい……ってアレ?)

だが、そこでルカは気がつく。
自分を追いかけていた巨人の気配が無くなっていることに。

(……罠かしら?)

ルカは角に隠れて気配を消し、用心深く周囲の気配を探る。

しかしその状態が10分近く続き、ルカはさすがにおかしいと感じ始める。
塔の外に出てみたが、周囲を見回してみても巨人の姿は見当たらなかった。

(どこに行ったの……?もしかして、諦めた……?)

もしそうなら問題は無いのだが、そこまで楽観的な考えはできない。
こちらを油断させるつもりなのかもしれないと、ルカは慎重な足取りで巨人を探す。

しかし、周囲を見回していたルカの鼻が微かな鉄臭い匂いを捉える。

(……まさかっ!?)

ルカの脳裏に浮かぶのは、最悪の考え。

それは、巨人が他の参加者を見つけ、なかなか捕まらない自分の捕獲を諦めて
その参加者を襲いに行ったのではないかということ。

そして、この匂いと経過した時間を考えるとその参加者はすでに……。

(嘘でしょ……!?また……また、私……!)

また守れなかったのか?
いや、もし自分の想像通りだとしたら、今回はなお悪い。

巨人をここに連れて来た自分のせいで、死人を出したことになるのだから。

ルカの全身を恐怖にも似た悪寒が駆け巡る。
焦燥に駆られたルカは全速力で匂いの発生源へと向かう。


やがて、ルカの視界に広がった光景は……。


「……あ……ああ…………!」

ルカはその光景を目にして、膝から崩れ落ちた。

そこには、全身の肉をぐちゃぐちゃに潰され、バラバラに解体された、
人間の原形を留めていない死体があった。

「そ……そんな……私……!私のせいで……!」

自分の行動のせいで、死人を出してしまった。
ルカの心は後悔と絶望に埋め尽くされる。

「……ごめん……ごめん、なさい……!ごめんなさい……!」

顔どころか、性別すら分からない有様となっている死体に、ルカは謝る。
その瞳からは涙が溢れていた。

誰一人守ることができず、それどころか自分のせいで死者すら出してしまった。
ルカはあまりにも不甲斐ない自分自身に、失望すら抱いていた。

(……こんなはずじゃ……なかったのに……)

ルカは思う。
これからどうすればいいのか。

(……そうだ、エリーシアとリヨナと合流しないと……)

だが、自分が合流してどうなる?
こんな自分が一緒に行動したところで、あの二人の役に立てるのか?

(……らしくない……!)

だが、その弱気な考えをルカは切って捨てる。

自分は人々を守るべき神官なのだ。
ここで足を止めるわけにはいかない。

ルカは立ち上がり、エリーシアたちの元へ戻ろうと歩き出した。

そのとき、ふとルカの視界の隅に長い棒のようなものが映る。
目をやると、杖が落ちていた。

(武器としてはちょっと頼りないけど……無いよりはマシよね)

人々を守るためには、武器が必要だ。
ルカはその杖を持っていくことにした。





[46]投稿者:『空回りの誓い その2』  289◇SqVSQKtY 投稿日:2009/11/01(Sun) 16:51 No.421  
「……なんで……なんでよ……?」

ルカは再び、絶望の淵に立たされていた。

その原因はルカの見つけた焼死体である。
なぜなら、その焼死体が身に着けている鎧は間違いなくエリーシアの鎧だったからだ。

「……なんでよ、エリーシア……!?」

すでに何度目かになる、仲間の死。
早栗、奈々、エリーシアと続けざまに襲い来る仲間の死に、ルカの心は深く抉られていた。

「……そうだ……リヨナ……リヨナは……!?」

だが、りよなの存在に思い至ったルカはりよなを探し始める。

エリーシアが殺されたということは、りよなの身も危ない。
いや……ひょっとしたら、りよなもすでに……。

「っ!……何考えてるのよ、私は……!?」

ルカは自分の不吉な想像を慌てて振り払う。

とにかく、今はりよなを探さなければ。

そう考え、走り出すルカ。

大声でりよなに呼び掛けようかとも考えるが、それではエリーシアを殺した殺人者にまで
聞こえてしまうかもしれない。

自分だけ襲われるならば、ルカはそれでも構わない。
だが、もしりよながこちらに合流した後にその殺人者が襲ってきたら、りよなの身まで
危険に晒してしまうだろう。

ルカはそう考え、呼びかけたくなるのを堪えながらりよなを探す。

だが、意外にもルカはすぐに視界の端にりよならしき影を見つけることができた。

「リヨナ!!」

ルカの声に、りよなは振り向く。

「……ルカさん……?」
「良かった……!無事だったのね、リヨナ……!」

ルカのその声には隠しきれない安堵と喜びが混じっていた。

「……エリーシアがあんなことになってて……私、てっきりリヨナまで……!」

りよなはルカのその言葉を聞いて、大体のことを理解する。

(……ルカさんは、エリーシアさんの死体を見たのね……。
 それで、一緒にいたはずの私のことを心配していた……)

りよなが考えをまとめたところで、ルカが問いかけてくる。

「ねえ、リヨナ……何があったの?
 なんでエリーシアはあんなことに……?」

その問いに、りよなは考える。

(……ルカさんはサラマンダーのことは知らないから、
 私がエリーシアさんを殺したのは分からないと思うけど……。
 でも、なるべく疑いは向かないようにしたいかな……)

そう考え、りよなは口を開いた。

「……エリーシアさんは戻ってきた後、
 すぐに私に逃げるように言ったんです……。
 『敵よ。逃げて』って……」

りよなの言葉に、ルカは考え込む。

(……敵?やっぱり、エリーシアは巨人以外の参加者と……?
 りよなと合流した後に、りよなに逃げるように言ったということは、
 合流した直後に、敵の気配に気づいたってこと……?)

そんなルカに、りよなが声をかける。

「……あの……エリーシアさんは……?」
「……エリーシアは……殺されたわ……。
 たぶん、貴女の言う敵にね……」

ルカは沈痛な表情で、りよなに告げる。

(……悲しむ素振りくらいは見せないとね……)

ルカの信頼を得るためには、エリーシアの死に無関心な様子を見せてはまずい。
りよなはルカの言葉に、顔を伏せて身体を震わせてみせる。

ルカはりよなが悲しんでいる様子がまさか演技だとは思わず、りよなに声をかける。

「……りよな。エリーシアの死を悲しむ気持ちは分かるけど、
 今はもたもたしてられないわ。
 エリーシアを殺した殺人者は、まだこの森にいるかもしれない。
 私も今の状態じゃ満足に戦えないし、一刻も早くこの場所から遠ざからないと……」

ルカはりよなの肩を叩いて促すと、りよなの手を取って進み始めた。
りよなはルカに手を引かれながらも、今後のことについて考える。

(……今の『満足に戦えない』という言葉からして、ルカさんもそれなりに
 ダメージを受けてるみたい……あまり、戦力的に期待しないほうがいいかも……)

もし役に立たなくなれば、隙を見てエリーシアと同じように殺してしまおう。
りよなは光を写さない瞳で、先を行くルカの背中を冷たく見据える。

ルカはそんなことには気付かず、改めてりよなを守る決意を固めていた。

(エリーシア……私が貴女の分までこの子を守り抜くから……!)

ルカは心の中で死んだ仲間に誓う。

その仲間を殺した者が、今まさに守ると誓った少女だとは知らず……。






【E−4:X3Y2/森/1日目:午後】

【篭野りよな@なよりよ】
[状態]:盲目、疲労小、精神不安定
[装備]:木の枝@バトロワ、サラマンダー@デモノフォビア
[道具]:デイパック、支給品一式(食料・水9/6)
[基本]:マーダー、なよりを生き返らせる
[思考・状況]
1.ルカを利用する(使えなくなったら殺す)
2.善良な参加者を見つけて利用する



【ロカ・ルカ@ボーパルラビット】
[状態]:疲労中、精神疲労中、ダメージ中、腹部に裂傷
[装備]:霊樹の杖@リョナラークエスト
[道具]:デイパック、支給品一式(食料7/6、水6/6)
[基本]:生存者の救出、保護、最小限の犠牲で脱出
[思考・状況]
1.りよなを守る
2.戦闘能力の無さそうな生存者を捜す
3.天崎涼子を探す




【?/?/1日目:午後】

【ルシフェル@デモノフォビア】
[状態]:健康
[装備]:ルシフェルの斧@デモノフォビア
ルシフェルの刀@デモノフォビア
早栗の生皮(わき腹につけた)
[道具]:デイパック、支給品一式×2(奈々とオルナの分)
バッハの肖像画@La fine di abisso(音楽室に飾ってありそうなヤツ)
弾丸x10@現実世界(拳銃系アイテムに装填可能、内1発は不発弾、但し撃ってみるまで分からない)
トカレフTT-33@現実世界(弾数 7+1発)
日本刀@BlankBlood
リザードマンの剣@ボーパルラビット
[基本]:とりあえずめについたらころす
[思考・状況]
1.奈々の生皮は後で取りに戻る
2.ころす

※日本刀とリザードマンの剣は身体から抜きました。
※オルナのデイパックを奪いました。
※奈々の生皮はE-4:X2Y2に干したままです。

※ルシフェルの頭部についての補足。
見ただけで吐き気を催すような異様な形状をしています。実在する生物との共通点は一切見当たりません。
皮交換のとき以外は極力隠します。ハズカチイ
頭部から分泌するご都合主義的液体は、出すまでに時間がかかるうえ、
粘性が高く、すぐ乾燥するので、撒き散らして目潰し等の武器には使えません(少なくとも相手を拘束しないと役に立たない)。




【D-4:X3Y4/螺旋の塔/1日目:午後】

【オルナ@リョナマナ】
[状態]:死亡、ぐちゃぐちゃのバラバラ(性別すら判定不能)
[道具]:無し(ルシフェルに奪われた)






[47]投稿者:『やっと動いたか、お前ら』  289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/11/01(Sun) 21:45 No.422  
「あ゛ーあ゛ー、てすてす。・・・ふぅ、ようやく繋がった。
 ったく、そろそろコレ買い換えないといけないなぁ。」

ゴートはその声に、呻きつつ目を覚ます。

「な……何じゃ……?わしは一体……?」
「はぁーいみんなぁー♪ キング様の第1回、素敵な定時放送の時間だよぉー♪」
「な……!?放送じゃとっ!?」

ゴートは驚きつつも、放送の内容を聞き逃さぬように耳をそばだてる。
そして、同時に現在の状況を思い出そうとする。

(そうじゃ……!わしは確か、ホムンクルスの女に……!)

あの女はどこに行ったのか?
放送を聞き終わったゴートは、未だスイッチが入りっぱなしだった懐中電灯を
手に持ち、辺りを照らす。

すると、門番は先ほどの鉄の物体の上ですやすやと寝息を立てていた。

「……こやつ……あの後、ずっと寝ていたのか?」

呆れた声を漏らすゴート。
ともあれ、この様子ならこちらから手を出さなければ襲いかかってくることも
なさそうである。

門番の殺気を思い出し、身震いするゴート。
触らぬ神に何とやらだ。

ゴートは門番を無視することに決めた。

「……ん?」

ふと、ゴートは門番が寝ている鉄の物体の横にデイパックがあるのに気がついた。

(この女のものか……熟睡しておるようだし、頂いても問題あるまい)

ゴートは忍び足でデイパックの傍まで移動し、デイパックを持ち上げた後、再び忍び足で
門番の元から去る。

そして、安全な場所まで来ると、デイパックを開けて中身を確かめ始めた。

そして、まず出てきたのは……。

「ぬおっ!?」

何かが勢いよくデイパックから飛び出してきた。

「な……何じゃ、お前は!?」

デイパックから飛び出してきたのは紫の髪を持つ裸の少女だった。
ただし、大きさは普通の人間の10分の1程度で、羽根も無いのに宙に浮いている。
明らかに普通ではない。

「何じゃと聞いておるのだ!答えんか!」

ゴートの怒声に、少女は再びデイパックに入り込んだ。
そして、しばらくごそごそやっていたかと思うと、再び顔を出し、両手でゴートに
一枚の紙を差し出した。

「むむ……何々……?夢の精霊バク……相手を眠らせる特殊能力を持つ……?」

その説明書を見て、ゴートは理解した。

「なるほどのう……つまり、お前も支給品ということか……」

ゴートの言葉に頷くバク。

「支給品というからには、わしの言うことには絶対服従じゃな?」

その言葉にも、バクは頷く。

「ふむ……つまり、相手を眠らせる力を持つアイテムと思えばいいわけじゃな」

バクの扱いを理解したゴートは、他の支給品を確かめることにする。

次に出てきたのは、マクラ。
このデイパックの本来の持ち主なら喜んだかもしれないが、ゴートには不要である。
無視して、他に支給品が無いかを確かめる。

そして、出てきたのは分厚い本だった。

「何じゃ?魔道書か何かか?」

興味を持ったゴートは、中身を確かめてみる。
そして、そこに書かれていたのは魔術についてではなく、レボワーカーという乗り物の
動かし方だった。

そして、その本に書かれているレボワーカーの形状を見て、ゴートは声を上げる。

「これは……あの女の乗っていた鉄の物体ではないか!?
 では、この本に書かれている内容が理解できれば、
 わしがあれを扱うことも……!?」

興奮したゴートはレボワーカーのマニュアルを貪るように読み進めていった。

そして、2時間程度の時間が経過したところでゴートは一息つく。

「ふう……まあ、こんなところじゃろう……」

そう言って、水を口にしつつパンを齧るゴート。

優れた魔術師である彼でも、その膨大な量の情報を完全に理解することはできなかったが、
それでも簡単な扱い方は理解することができた。

「……さて、問題はあの女の退かし方じゃが……」

ゴートは千切ったパンをバクに与えながらも、考える。

「単純に力尽くで退かそうとすれば、また殴り飛ばされることじゃろうな……。
 どうするべきか……」

そこで、ゴートはパンの欠片を小さな口で頬張っているバクに目を向ける。

「……そうじゃ、お前がいたではないか!」

いきなり顔を近づけてきたゴートに、バクは目を白黒させている。

「よし、バクよ!ついてこい!」

ゴートはそう言って立ち上がると、デイパックを背負って歩き始める。
バクも急いでパンを食べ終えると、主人を追いかけていった。






そして、ゴートは門番の元へと戻って来たのだった。

「さあ、バクよ!お前の力であの女を簡単には目を覚まさないような
 深い眠りに落としてやるのだ!」

ゴートはバクに向かって命令する。
バクはその言葉に頷いて、門番に向かって眠りの魔法をかける。

門番はその魔法を受けて、より深い眠りへと誘われた……のだろう、多分。

正直なところ、ゴートには何が変わったのかよく分からなかったが、
バクの力を信じることにした。

「よし、今のうちじゃ……」

ゴートは門番を抱きかかえると、よろよろとふら付きながらも門番をレボワーカーから
降ろすことに成功する。

その間、門番は目を覚ます気配すら見せなかった。

「くくく……よしよし、これでこの乗り物はわしの物じゃ……!」

ゴートはいそいそとレボワーカーに乗り込むと、さっそくマニュアルから得た知識に
従って、レボワーカーを動かし始めた。

ウイン……ガシャンガシャン……。

「おおおおぉぉぉぉーーーーーー!!?」

レボワーカーが自分の思う通りに動いたことに、年甲斐も無く興奮するゴート。
横でバクが呆れた視線を向けているが、全く気が付いていない。

「素晴らしいっ!!素晴らしいぞ、これはぁぁぁ!!」

ゴートは洞窟全体に響き渡るほどの大声で叫ぶ。

「……んん〜……」

だが、その声を聞いた途端、ゴートは固まる。
視線を向けると、上体を起こした門番が寝呆け眼の不機嫌そうな視線をゴートに向けていた。


その瞳に、徐々に殺意が芽生え始め……。


「バクゥゥゥゥ!!そいつを眠らせろぉぉぉぉ!!」

ゴートの悲鳴にも似た叫びに頷き、バクは門番に再び眠りの魔法を放つ。

……こてん……。

バクの魔法を受けた門番は、あっさりと眠りの世界に舞い戻っていった。

「ふう……!危ないところじゃった……!」

額の汗を拭うゴートを、半目で見つめるバク。
ゴートはやはり気付かない。

「……いや待て……このレボワーカーなるものを手に入れた今のわしなら、
 この女にも勝てるのでは……?」

そう思ったゴートはしばし考えた後、ニヤリと笑ってレボワーカーの拳を振り上げ、
門番に振り下ろそうと……。

「……い……いや、待て……念のためにリョナ・カーズをかけておこう……」

そう言って、ゴートは門番にリョナ・カーズをかける。

「くくく……これで良し……では、今度こそ……」
「……んん〜……」
「はっ!?」

門番が身じろぎして、身体を起こし始めた。


そして、不機嫌そうな視線をゴートに……。


「バクゥゥゥゥ!!眠らせろぉぉぉぉ!!」

再び門番に眠りの魔法をかけつつ、バクは思う。

変な人に支給されてしまった、と。






結局、ゴートは門番を殺すことを諦めた。

「ふ……ふん……!まあ、放っておけばここは後1時間と少しで
 禁止エリアとなるからな……!
 わざわざ、わしが手を下すまでもなかろう……!」

言い訳のようにほざくゴートに、バクは適当にこくこくと頷いてやる。

ゴートはデイパックからマクラを取り出すと、門番に放る。

「……このマクラをくれてやろう、ホムンクルスの女よ。
 それで、文字通り死ぬまでここで寝ておるが良い……」

くく、とゴートは笑う。

「……では行くとするか」

ゴートはバクをレボワーカーに乗り込ませると、レボワーカーを走らせて洞窟を抜けていった。


そして、洞窟には寝こけた門番が残された。
彼女はもはや、禁止エリアによる爆死しか道は残されては……。

「……ん……んん……?」

なんと、門番が起きあがった。
その眠そうだった目は徐々に開いていき、ついには眠気など欠片も感じさせぬほどの
ぱっちりお目目となったのだ。

「……あれ〜……?なんか、眠くなくなっちゃった……?」

門番は首を傾げつつも、マクラを片手に立ち上がる。

「……まあ、眠くなくなっちゃったら仕方ないよね……。
 眠くなるまで散歩でもしよ……」

門番は大きく伸びをすると、洞窟を出て行った。

なぜ、あの門番が眠気を失うという異常事態に陥ったのか?

それは、彼女の手にしたマクラのせいである。
彼女が手にしたマクラは、眠りを防ぐ魔法のマクラ。

その名も、不眠マクラである。
その不眠マクラの効果により、門番は眠気を失ってしまったのだ。

門番は殺し合い開始から8時間以上の時を経て、ようやく動き出したのだった。

もっとも、放送を聞いていない上に禁止エリアに囲まれた現在の状況では
あっさり爆死するかもしれないのだが……。






【C−1:X4Y3/森/1日目:午後】

【ゴート@リョナマナ】
[状態]:残魔力中
[装備]:レボワーカー@まじはーど
(損傷度0%、主電源入)
バク@リョナラークエスト
[道具]:デイパック、支給品一式×2(食料11食分、水11食分)
猫じゃらしx3@現実世界
大福x10@現実世界
弓矢(25本)@ボーパルラビット
レボワーカーのマニュアル@まじはーど
[基本]:マーダー、キング・リョーナに復讐する
[思考・状況]
1.仲間のロアニーと合流する
2.キングへの報復方法を考える
3.ナビィ達を見つけたらキングの件とは別に報復する




【C−1:X4Y1/洞窟入口付近/1日目:午後】

【門番{かどの つがい}@創作少女】
[状態]:おでこにたんこぶが2つ、リョナ・カーズ状態
[装備]:不眠マクラ@創作少女
[道具]:無し
[基本]:眠くなるまで散歩
[思考・状況]
1.なんか眠くなくなったので、とりあえず散歩する
2.眠くなったら寝る

※第一回放送を聞いてません。
※不眠マクラの効果に気づいていません。
※自分が今何処にいるのか知りません。
※殺し合いに巻き込まれていることに気付いていません。
※ゴートを殴り倒した時の返り血が顔や服に付着したままです。なおこの件について全く覚えてません。





[48]投稿者:『仇と孤独と狂気 その1』 289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/12/12(Sat) 13:47 No.427  

その場は暗澹とした空気に包まれていた。

原因は先ほどの放送である。

「……冥夜……何で……!?」
「……オルナ……嘘だよ……オルナが……!」

明空が呆然としながら弟の名前を呟き、ナビィが涙目で仲間の名前を
呼びながら声を詰まらせる。

「……カザネ……!」
(こんな……こんなことって……!)

エリナの悲痛な表情、アール=イリスの嘆く声。
放送により、和やかだった先ほどの空気が一変してしまった。

クリス、伊予那、なぞちゃんはそんな三人の様子に何も言うことができなかった。

(……ある程度は覚悟していたけど……まさか、こんなに一気に……)

クリスは胸中で苦い思いを噛みしめる。
予想以上の死者の数、そしてその死者に含まれていた自分たちの関係者の多さ。

クリス自身も、親友の弟の名前が呼ばれたのだ。
動揺はあるし、彼を守れなかったことに対しての悔恨は深い。

「……俺は信じない……」

やがて、明空がぽつりと呟いた。
怪訝な顔で、他の五人が明空のほうに視線を向ける。

「……あんなヤツの言うことなんか……冥夜が死んだなんてことなんか、俺は信じない!」

明空が視線を上げて、大声で放送を否定する。

「そ……そうです!きっと、あの人は嘘吐いてるです!
 明空の弟さんや、エリナたちのお友達が死んじゃうなんてこと、あるわけ無いです!」

なぞちゃんが明空に慌てて同意する。
それを聞いたナビィも呟く。

「そうだよ……そうだよね!オルナが死んだなんてあるわけないよ!
 あんな殺しても死ななさそうな毒舌エルフがこんな簡単に死んじゃうなんて
 絶対おかしいもん!」
「そうさ!アイツは俺たちを騙すために嘘を言ってるんだ!」

その会話の流れにクリスは眉を顰め、伊予那は不安そうな顔で明空たちを見ている。

「ちょっと貴方たち……」
「……待って……」

明空たちを嗜めようとしたクリスだが、エリナはそれを制止した。

「今はあのままでいいわ……いえ、今あの子たちに放送が正しいと
 認めさせてしまったら、どうなるか分からない……」
「……そうね。最悪、このパーティが崩壊してしまうかもしれないし、
 今は時間を置いて、冷静になってもらったほうがいいわね……」

そして、クリスは気遣うようにエリナに声をかける。

「……貴女は大丈夫なの?」
「……心配しないで。ショックはあるけど、立ち止まるつもりはないわ」

エリナは気丈に振舞っているつもりだろうが、クリスには無理をしているようにしか
見えなかった。

「……やっぱり、私たちも同行したほうがいいかもしれないわね。
 私の探し人も死亡してしまったし、国立研究所に行く意味も薄くなったわ。
 死亡者の多さから考えて、皆で固まっていたほうが安全かも……」

エリナの様子に不安を感じたクリスは皆で固まって動くことを提案する。
だが、エリナはそれに対して首を横に振る。

「……駄目よ。むしろ死亡者が多いことを考えたら、探索範囲を広げて
 一刻も早く仲間や情報を集めないと、私たちに勝ちの目は出てこない。
 もたもたしていたら、手遅れになるわ」
「…………」

クリスは黙って、エリナの目を見つめる。
だが、エリナは視線を逸らさなかった。

エリナの意志は固いようだ。
クリスは溜息を吐いて、折れる。

「……無理だけはしないでね。亡くなった人のことを忘れろとは言わないけど、
 そのことを引きずっては駄目よ」
「……分かっているわ」

クリスは他の四人に声をかける。
そして先ほど話した通り、元の組に分かれて、クリス組は国立魔法研究所、
エリナ組はアクアリウムに向かうことにした。

「冥夜を見つけたら俺のことを伝えてくれよ!」
「オルナもね!それから、エマとカナリアのこともお願い!」
「……ええ、安心しなさい」

何度も振り返りながら手を振っている明空とナビィをクリスがたしなめながら、
彼らは北のほうへ向かっていった。








【B−4:X2Y2/廃墟/1日目:真昼】

【クリステル・ジーメンス@SILENT DESIRE】
[状態]:健康、魔力残量十分
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式(パン1食分消費)
モップ@La fine di abisso
白い三角巾@現実世界
雑巾@La fine di abisso
[基本]:対主催
[思考・状況]
1.国立魔法研究所に向かう
2.道中でアーシャ・リュコリスかエリーシア・モントールと会えたら合流する
3.首輪を外す方法を考える

※明空のことが何故か気になってます、もしかしたら惚れました



【御朱 明空(みあか あそら)@La fine di abisso】
[状態]:健康
[装備]:ブロードソード@アストラガロマンシー
(ナビィにもらった。鞘から抜くつもりは無い)
[道具]:デイパック、支給品一式
おにぎり×4@バトロワ
ランチパック×4@バトロワ
弁当×1@バトロワ
ジュース×3@バトロワ
包丁@バトロワ
ライター@バトロワ
傷薬@バトロワ
包帯@バトロワ
マタタビの匂い袋(鈴付き)@現実世界
ツルハシ@○○少女
[基本]:主催者の打倒
[思考・状況]
1.国立魔法研究所に向かう
2.冥夜の死は信じない
3.行き先はクリスの意見に従うつもり
4.殺し合いに乗る人なんていないと思ってる

※何かあったら自分が身体を張って仲間を守るつもりです



【ナビィ@リョナマナ】
[状態]:正常
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式(パン1食分消費)
ノートパソコン&充電用コンセント(電池残量3時間分程度、主電源オフ、OSはWin2kっぽい物)@現実世界(本人は未確認)
[基本]:対主催
[思考・状況]
1.国立魔法研究所に向かう
2.オルナの死は信じない
3.明空についてマタタビの匂い袋が他人の手に渡らないようにするつもり
4.キング・リョーナの行いをやめさせる






[49]投稿者:『仇と孤独と狂気 その2』 289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/12/12(Sat) 13:48 No.428  

明空たちが去った後、エリナも先を急ごうとする。

「……あれ……?」
「?……どうしたですか、伊予那?」
「あれって、デイパックじゃないかな?」

伊予那の言葉を聞いて、なぞちゃんとエリナは伊予那の指差しているほうを確認する。

すると、確かにデイパックらしきものが落ちていることが分かった。
近付いて中を確かめてみると、青いお札が数枚と果物ナイフが出てきた。

お札のほうは元々伊予那のもので、悪霊退散の強力なお札ということだった。
そして、果物ナイフのほうは調べた限りでは普通の果物ナイフらしいことが分かった。
なぞちゃんに渡そうかとも考えたが、また豹変したときに危険だと判断し、
ナイフを渡すのは止めておくことにした。

支給品の確認を終えたエリナたちは、廃墟から南下してアクアリウムを目指し始めた。






「……動き出したわね。どうする、涼子?」
「んー、そうだなー」

サーディの言葉に唸る涼子。
彼女たちの視線の先には、エリナたち3人の姿。

「……まぁ大分人数も減ったし、強そうなのは向こうに行ったみたいだから
 今なら接触しても危険は少ないんじゃない?」
「ふふ……なら決まりね。ヤツらを皆殺しにして首飾りを取り戻しましょう?」

サーディの言葉に涼子はうーんと唸る。

「そりゃまぁ、モンスターと一緒にいたってことは、アイツらもモンスターの
 仲間なのかもしれないけどさぁ……」

サーディと涼子は廃墟に大勢の人影が存在するのを確認し、さらにその中に
獣の耳を持つ少女がいるのを見て、彼女らは全員モンスター、もしくは
モンスターの仲間だと考えていたのだ。

「……はっきりしないのねぇ。じゃあ、私が確かめてきてあげるわ」

サーディはエリナたちが自分の首飾りを持っているのを遠目に確認していた。
そのこともあって、涼子の煮え切らない返事に焦れたらしい。
サーディは彼女を置いて、エリナたちのほうへと走って行ってしまった。

「せっかちだねぇ、サーディは。
 涼子さんは後からのんびり行かせてもらうよー」

先を行くサーディを、涼子は焦るでもなく後ろからのんびりと追いかけて行くことにした。






(……エリナ、後ろから人が近づいてくるよ)
「そう……分かったわ」

アール=イリスの言葉に後ろを振り返るエリナ。

振り返った先には刀を持った桃色の髪の少女。
その少女は表情に笑みを浮かべて、エリナの目の前まで歩いてきた。

「こんにちは、良い日和ね」
「こんにちはです!」
「あっ……えっと、こんにちは……」

少女に答えて挨拶するなぞちゃんに、つられて伊予那も挨拶する。
エリナはその様子に呆れつつも、その少女に問いかける。

「……それで、貴女……この殺し合いには乗っているのかしら?」
「うふふ……乗って無いと言えば貴女は信じるのかしら?」
「……」

サーディの笑顔に対し、エリナは無言。

(エリナ、この子……危険な感じがするよ……)
(……危険?)

どういうことなのかと、エリナはイリスに問う。

(この子の中に何か恐ろしいものを感じるんだ……。
 すごく禍々しい気配……牛乳に浸した雑巾を一か月放置したような……!)
(そこでボケないで)

思わずツッコミを入れるエリナ。
ふと、伊予那がエリナの袖をくいくいと引っ張っているのに気が付き、
視線を向ける。

(あの……あの人、とても危険な気配がします……。
 ひょっとしたら、何かに憑かれているのかも……)
(…………)

伊予那までアール=イリスと似たようなことを言いだした。
超常の感覚を持った二人にそこまで言わせる目の前の少女に、エリナは警戒を強める。

「……それで、何か用?」
「ふふ、つれないのね。
 まぁいいわ、本題に入りましょう]

サーディはそう言って、一呼吸置いた後に告げる。

「その首飾り、元々は私のものなのよ。
 それを返してもらえないかしら?」
「……これが、貴女の?」

エリナは首飾りを見つめて呟く。

「そう。だから、譲って欲しいのよ」
「……これが貴女のものだという証拠はあるの?
 この殺し合いの場で武器は貴重なことは分かるでしょう。
 貴女の言葉をあっさり信じて、簡単に渡すわけにはいかないわ。」

エリナはそう言って、サーディの提案を断る。
殺し合いの最中に、出会ったばかりの相手に武器を渡すほどエリナは馬鹿ではない。
加えて、この少女の言動・雰囲気を見ているとどうにも信用が置けるような相手とは思えないし、
そもそもイリスや伊予那の言葉によれば、この少女は内に禍々しい何かを秘めているという。

信用できる要素など欠片も無かった。

「そう……まぁ、最初から譲ってくれるとは思ってなかったけど……。
 ……いえ、違うわね。むしろ断られるのを望んでいた、かしら?」
「……どういうこと?」

眉を顰めるエリナに、サーディは唇に弧を描いて答える。

「簡単なことよ……これで貴女たちを殺す理由ができたでしょう?」
「なっ……!?」
(エリナ、危ない!)

逃げようとするエリナだったが、それより早くサーディの斬撃が飛んでくる。

(!?……速いっ!?)

そのあまりの斬撃の速さに、エリナは驚く。
エリナは刀を持っていたサーディを警戒して、攻撃されても回避する余裕がある
安全な間合いを取っていた。

だが、あまりにも速い攻撃……まるで刀が重さを持たないかのような鋭い斬撃に
計算を狂わされた。

そのせいで、エリナは逃げきれずに胸を切り裂かれる。

「がっ……!」
(エリナッ!?)

倒れるエリナ。
それを見て、なぞちゃんと伊予那が悲鳴を上げる。

「エリナッ!?」
「ひっ……イヤアァァァッ!?」
「ふふふ……あははははははっ!!」

哄笑するサーディ。
彼女はエリナの手から首飾りを奪い取る。

そして、倒れたエリナに刀を突きつける。

「ふふ、さようならエリナさん……」
「くっ……!」

エリナは何とか逃れようとするが、傷が深くて身体が思うように動かない。
サーディはもがくエリナを恍惚とした表情で見つめながら、刀を振りかぶり……

「ま……待って!」

だが、それを遮る声が響く。
サーディが視線を向けると、そこには銃を構えた伊予那の姿。

「う……動くと、撃ち……撃ちます!」
(……何かしら、あの武器?
 撃つって言ってるから、飛び道具なんだろうけど……)

一瞬疑問に思うが、すぐにどうでもいいことだと思いなおす。

あの様子では、どうせ撃つというのはハッタリだろう。
実際に撃つような度胸は無いとサーディは判断した。

サーディは首飾りからダイスを生成し、それをナイフへと変化させる。
そして、それを伊予那に向かって投げつけた。

「!?」

伊予那は慌てて回避しようとするが、間に合わない。
ナイフは伊予那の右手に突き刺さった。

「痛っ……あ……うああぁぁっ……!?」
「伊予那!?」

あまりの痛みに右手を抑えて蹲る伊予那。
それを見て、伊予那に駆け寄るなぞちゃん。

それを満足気に見つめた後、サーディは再びエリナに向き直る。

なぞちゃんはそれを見て、慌てる。

(エリナが……エリナが殺されてしまうですっ!)

エリナを助けなければならない。

動くのだ。
身体を動かして、あの少女とエリナのところまで近付いて、エリナを助けるのだ。
それも少女がエリナを殺す前に。

ならば、速く……普通の人間では不可能なほど速く動かねばならない。
そう、一瞬で。


ミアを風を操る少女から助けたときのように。


(……!?)

その瞬間、何かがなぞちゃんのうちから溢れだしてきた。

(な……何ですか、これ……!?)

それは恐ろしく冷たい、氷のような意志。
それはなぞちゃんの意志を凄まじい勢いで呑みこみ始めた。

(ひ……!?)

自分が呑みこまれていく感覚。
だが、なぞちゃんはその感覚を知っていた。

いや、思い出していた。

この意志に呑まれた後、ミアと離れ離れになっていたことを。
この意志に呑まれた後、ひどい怪我をして倒れていたことを。

この意志に呑まれた後、とても悲しい気持ちになっていたことを。

(い……嫌……!嫌です……!なぞは、また……!)

だが、なぞちゃんは自分のうちから溢れだす凶暴な意志に抗うことが
できなかった。

そのまま、なぞちゃんの意志はもう一つの意志に呑みこまれてしまった。





[50]投稿者:『仇と孤独と狂気 その3』 289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/12/12(Sat) 13:48 No.429  

ぞくっ。



「!?」

突如、身の毛のよだつような殺気を感じて振り向くサーディ。

そこには、顔を伏せた緑髪の少女。
いや、先ほどまでの彼女とは何かが違う。
決定的に違う。

少女が顔を上げた。

「ひっ!?」

サーディは思わず悲鳴を上げた。
その少女の目を見てしまったから。

一切の感情を写さない、渇ききった表情。
ただ殺意のみを宿す、氷のような瞳。

それを見たサーディには、彼女が人間どころか生物にすら見えなかった。
目の前の少女の異様な恐ろしさは、サーディの内なる悪魔にすら怯えを抱かせていた。

「う……あ……あぁ……!」

歯がガチガチとなる。
膝が笑っている。

(!……そ……そうだわ!このエリナって女を人質に……!)

そう思って、エリナへと視線を向けるサーディだったが、そこにエリナの姿はない。

「!?」

慌てて周囲を見回すと、いつの間にか伊予那が必死でエリナを引きずって逃げようとしていた。

「エリナ、さん……!しっかり、して……!」
「……う……ぅ……」

伊予那はなぞちゃんが変貌したのを察すると、自分とエリナも危険だと判断して、この場から
離れようとしていたのだ。

(余計なことを……!)

怒りの表情を浮かべるサーディだが、なぞちゃんの発する気の弱い者ならそれだけで
殺せそうなほどの恐ろしい殺気の中、伊予那の行いを阻止するのは不可能だ。

なぞちゃんが一歩前へと踏み出す。
それだけでサーディは強烈なプレッシャーを感じてしまう。

「……何なのよ……!?何なのよ、アンタはぁぁぁ!?」

サーディは声を震わせて叫び、首飾りから大量のナイフを作り出して少女に投げつけた。

だが、少女がその視界を埋め尽くさんばかりに迫るナイフ全てを、右へ左と身体を捻るだけで
軽々と避けてみせた。しかも、前へと歩き続けながら。

「な……な……」

そんな馬鹿な。
サーディが目の前の光景を信じられない。
だが、目の前の化け物相手にその隙は致命的だった。

「!?」

凄まじい勢いでサーディに肉薄する少女。

その瞳が宿す意志は、ただ一つ。
純粋な、混じり気無しの強烈な殺意のみ。

「あ……ああぁぁぁぁっ!!」

顔を恐怖に引き攣らせたサーディは無様に悲鳴を上げて逃げようとする。

だが、間に合わず……。


「覚悟は良いか、愚か者めぇ!!」


ズドガアアアアアァァァァァァァァアァァァァン!!!!

とてつもない速度で、なぞちゃんに何かが降ってきた。

「!?……な……何が……!?」

混乱するサーディ。
それに答えるように降ってきた何かが言葉を紡ぐ。

「ちっ、避けたか。3ゲージが無駄になったじゃないのさ。
 怪我は無いかね、サーディ?」
「……り……涼子……?」
「おう、涼子さんですよ」

なぜか無駄に誇らしげな笑みをサーディに向ける涼子さん。
間一髪、涼子の不意打ちを回避したなぞちゃん。
彼女は目の前に現れた新たな敵を冷たく見据えた。

「なんか物凄い顔で悲鳴上げてたから乱入したんだけど……」

涼子はそう言って、なぞちゃんを見て目を細める。

「……思った以上にヤバそうだね、この子。
 さすが、モンスターの仲間ってところかな」

涼子は思う。こんな目をする人間はまともではない。
やはり、彼女たちはモンスターの仲間だったのだと改めて認識した。

涼子は油断なくアーシャの剣を構える。
対して、なぞちゃんは先ほどの騒動でサーディが落とした双刀の
一本を左手で拾い、構える。

「サーディはあっちの二人を頼むよ。
 銃持ってるみたいだし、ほっといたら涼子さんが撃たれて死ぬべさ」

見ると、すでにかなり離れた位置に伊予那とエリナは移動していた。

「……分かったわ。あの二人を殺したら、私も加勢する。
 それまで時間を稼いでちょうだい」

サーディの言葉に、涼子は笑みを浮かべて答える。

「ああ。時間を稼ぐのはいいが……
 別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう? 」
「……なぜかしら、今とてつもなく不安になったわ」

げんなりと呟くサーディに涼子はけらけらと笑った後、表情を引き締めて
なぞちゃんに突進していく。

それを見送ると、サーディもエリナたちを殺すために彼女たちの元へと向かう。

ずぴゃっ。

「どえええぇぇえぇぇぇっ!!?
 涼子さんの剣があっさり真っ二つにぃぃぃっ!!?」

涼子の素っ頓狂な声を耳にしたサーディは目を細めながら思う。

(……あの二人を殺したら、涼子は見捨てて逃げたほうがいいかもね……)

サーディは9割方本気でそう考えていた。





[51]投稿者:『仇と孤独と狂気 その4』 289◆SqVSQKtY 投稿日:2009/12/12(Sat) 13:51 No.430  

「エリナさん!しっかりして!エリナさん!」

伊予那はエリナを引きずりながら、必死で呼び掛けていた。

胸を切り裂かれたエリナは夥しいほどの血を流していた。
その顔はどんどん土気色に青ざめており、その様は嫌でも伊予那に死というものを連想させ、
不安にさせていくのだ。

「……う……伊予那……」
「!……良かった、エリナさん!気がついたんですね!?」

伊予那はエリナが自分の名前を呼んだのを聞き、安堵する。
だが、足音が聞こえてくるのに気がついて顔を強張らせる。
足音のする方向に視線を向けると、先ほどの桃色の髪の少女の姿。

「……伊予那……私のことは放って、逃げなさい……!
 アイツは私が何とかするわ……!」
「何いってるんですか!?そんな怪我で何とかできるわけないでしょ!?」
「いいから……行きなさい……!」

エリナはそう言うと、伊予那から乱暴に銃を奪い取る。

(この子は……カザネと同じ目には合わせない……!)

そして、こちらへと走ってくるサーディを見据えて、引き金を絞り込んだ。


パァンッ!


だが、サーディは首飾りのダイスから盾を生成し、それを防ぐ。
エリナは舌打ちするが、銃弾により盾にひびが入ったのを見て取ると、構わず連射した。


パァン、パァン、パァンッ!!
バリンッ!!


そして、撃ちこまれた銃弾がとうとうサーディの盾を壊すことに成功する。
だが、すでにサーディはエリナへと間合いを詰めており、エリナに対して
双刀を叩きこもうとしていた。

(エリナ、避けてっ!!)
「……っ!!」

アール=イリスの焦った声が頭に響くが、エリナは逆に踏み込んでいった。


ずぐぅっ……!!


そして、双刀はエリナの胸を再び切り裂いた。

「ぐ……はっ……!」
(エリナっ……!?)
「エリナさんっ!?」

だが、エリナは構わずに震える腕で銃口をサーディに向けようと……。


ずぴゃっ!


「……っ!!」
(エ……エリナっ……!)

エリナの右手首から先が斬り飛ばされた。
当然、右手に握りしめていた銃は手首とともに失われてしまう。
胸と右手の切断面から溢れ出る血液に塗れ、エリナは激痛と貧血で
耐えきれずに崩れ落ちた。

「……あはははっ!捨て身覚悟で自分から突っ込んでくるなんて馬鹿な女ねぇ!
 私相手にそんな戦法が上手くいくと思ったのかしら!?」
「あ……あぁ……!エリナさん……!」

サーディの嘲笑の声と伊予那の震える声がエリナの耳に響く。
だが、エリナにはそれに反応する力は残っていない。

サーディは刀を振って血を払うと、伊予那へと視線を向ける。

「ふふ……さあ、次は貴女の番よ?」
「ひっ……!?」

サーディは次の標的に歪んだ笑みを向ける。
その禍々しさに、伊予那は怯えて後ずさる。

「この女は嬲る前に壊れちゃったからねぇ……!
 貴女はじっくり苦しめて可愛がってあげるわ……!」
「い……いやっ……桜……!」

伊予那は目に涙を浮かべて、思わず親友の名前を呟く。
サーディは伊予那のその反応に舌舐めずりせんばかりの表情を浮かべる。

「ふふ……いいわよ、貴女……!カザネもなかなか良かったけど、
 貴女は貴女で嬲りがいがありそう……!」

サーディの言葉を聞いた伊予那は聞き覚えのある名前に反応する。

「え……か……カザネって、エリナさんが探してた人じゃ……!」
「あら、知り合いだったのかしら……?
 ふふ、ご愁傷さまね……あの子なら私が全身をズタズタに切り刻んで
 殺してあげたわ……!」
「……そんな……!?」

目を見開く伊予那。それを見て、嘲笑するサーディ。
そのとき、伊予那は再びサーディの内に潜む禍々しい気配を感じ取る。

(やっぱり……この人、憑かれてる!
 でも……それなら、さっき拾ったお札で何とかなるかも……!)

伊予那が今持っているお札は強力な悪霊退散のお札だ。
もし、この目の前の少女が悪霊に憑かれたがゆえにこのような蛮行を行っている
のだとしたら、悪霊さえ追い払えば問題は無くなるはずだ。

だが、問題はどうやってお札を使うかだ。
桜と違って運動神経がよろしくない伊予那では、戦い慣れているサーディの攻撃を
掻い潜ってお札を張り付けるなどできようはずもない。

伊予那が悩んでいるうちにも、サーディは一歩一歩近づいてくる。

「さぁ……貴女もカザネと同じ目に合わせてあげるわ……!」
「……させないわ……!」
「!?」

サーディは背後から聞こえてきた声に驚いて振り向こうとする。
だが、その前に両腕を羽交い絞めにされてしまった。

サーディを捕えたのは、エリナ。
右手首を失い、胸を深々と切り裂かれたエリナは全身血まみれになりながらも、
その瞳の力を失ってはいなかったのだ。

「ちっ……!しぶといじゃない、この死にぞこないが……!」

サーディは半死半生の身で後ろから組みついてきたエリナを振りほどこうとする。
だが、エリナは重傷を負い、右腕の手首から先を失っているとは思えない力で
サーディを抑え込んでいた。

「っ……!……どこにこんな力が……!」
「……話は聞いてたわよ……お前がカザネを……!」
「……だったら、どうだと言うの?仇を討つとでもいうのかしら?」

サーディは嗤う。

「あはは、笑わせてくれるわね!今にも死にそうな貴女に今更何が
 できるというのかしら!?無駄なことは止めて大人しく死んでしまえば
 楽になれるわよ!?」

サーディの嘲りの言葉を無視して、エリナは伊予那に視線を向ける。

「……伊予那、逃げなさい……!この女は私が……!」

何とかする、と言いかけてエリナは驚愕に目を見開く。

なぜなら、エリナの目に映ったのはお札片手に必死の形相で突っ込んでくる
伊予那の姿だったからだ。

「うああぁぁぁぁ−−−−−っ!!」
「なっ……!?」

サーディも伊予那に気がつき、驚きの表情を浮かべる。
慌てて避けようとするが、そうはさせじとエリナが阻止する。

「く……くそっ……!」

焦るサーディ。
だが、そんなサーディの焦りを無視して、伊予那は突っ込んでくる。
そして、伊予那は右手に持ったお札をサーディの額に思いっきり叩きつけた。

ジュアアアァァァァッ!!

その瞬間、凄まじい音を立ててお札が青く燃え上がった。

(ギアアアァァァァァァァァッ!!?)

そして、お札はサーディの内に潜む悪魔を神聖な力で焼き尽くした。






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