Re: 駒学園の追走St.3−1 ( No.8 )
日時: 2016/10/04 05:53
名前: さくら

7章

8ターン目
「俺のターン、ドロー。そしてライフが回復し、
眠れる恐怖の攻撃力が上がる」

クレシスLP11200+500=11700
眠れる恐怖攻/守6800+500=7300

「そして眠れる恐怖の効果発動!
オーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、相手の手札を
1枚墓地へ送り、その後ライフを1000ポイント回復する!」

 エリーの大鎌が、周囲を回るユニットを切り裂き、その衝撃が可奈の手札を
吹き飛ばす。

可奈手札残:2−1=1
クレシスLP11700+1000=12700
眠れる恐怖攻/守7300+1000=8300

「・・・この瞬間、墓地に送られた魔力の供給の効果発動!
このカードがカードの効果によって墓地に送られた時、お互いにデッキから
カードを弐枚ドローする。そしてこのターン、バトルフェイズを行えない!」

魔力の供給
魔法
このカードが墓地へ送られた時、
お互いにデッキからカードを2枚ドローする。
このターン、バトルフェイズを行う事は出来ない

可奈手札残:1+2=3枚
クレシス手札残:7枚
クレシスLP12700+500=13200
眠れる恐怖攻/守8300+500=8800

「ならば俺は、カードを2枚伏せてターンエンドだ」

クレシス手札残:5枚

9ターン目
「私のターン、ドロー!」

 クレシスが眠れる恐怖の効果を使ったことで、相手ターンの
攻撃をしのぐことに成功した可奈。しかし、フィールドは伏せカードが4枚。
クレシスの場には攻撃力が0のくるみ、そして攻守が8300の
眠れる恐怖。そして同じく伏せカードが4枚・・・。
 セットカードの枚数は同じだが、盤面の突破力としては相手に
完全にゲームを掌握されている状態である。

(・・・こちらのライフポイントは5900。
クレシスさんのライフは13200、眠れる恐怖はこちらのライフと相手の
ライフポイントの差の数値で攻撃力と守備力が決定する・・・。そして、
相手のライフがこちらより2000ポイント以上上の場合、魔法、罠カードの効果の
対象にならない・・・)

 しかし効果モンスターの効果の対象にはなる。かなのExデッキには
ダークエンド・ドラゴンがいる。あのカードは攻撃力を下げることで、
相手の場のモンスター1体を墓地へ送る効果を持っている。
破壊を介さないことで、破壊する効果に対して発動するカウンターを
気にしないでいい利点はある、が・・・・。

(伏せカードが闇の幻影であった場合、効果を無効化されて破壊されてしまう
リスクがある。挙句、そうなってしまった場合こちらの伏せカードを全て
駆使しても、大ダメージを負う可能性を否定できない)

 とはいっても、だ。可奈の手札から逆転手を繰り出すには
Exデッキを駆使するしかないというのが現状である。
可奈はそう思いながら墓地のモンスター効果を発動した。

「墓地の馬頭鬼の効果発動!このカードをゲームから除外し、
墓地のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する!
私は墓地から、イル・ブラッドを蘇生!!」

 彼女の言葉に従い、墓地からはい出てきた地獄の門番。そして、
その隣に舞い降りた翼をもった鳥人の姿があった。

「さらに私は手札から、霧の谷の戦士を攻撃表示で召喚!」

霧の谷の戦士
☆4 風
攻1700
守 300
鳥獣族・チューナー:このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
このカードとの戦闘で破壊されなかったモンスターは、ダメージステップ終了時に持ち主の手札に戻る。

「・・・レベル6のイル・ブラッドに、レベル4の霧の谷の戦士を
チューニング!495年の時を経て今こそ漆黒の夜空へと羽ばたけ!」

 瞬間、閃光を切り裂き空に舞い上がる一人の少女。骨格のような翼に
クリスタルのような羽根を引っ提げた彼女は、真紅の瞳を爛と輝かせ、
牙をむき出しにして笑った。

「シンクロ召喚!現れろ、破壊の悪魔―フランドール・スカーレット!!」

破壊の悪魔―フランド−ル・スカーレット
☆10 闇
攻2800
守2500
悪魔族シンクロ・効果:チューナー+チューナー以外の闇属性モンスター1体以上
このカードは「吸血鬼」と名の付くモンスターとしても扱う。
このカードが特殊召喚に成功した時、フィールド上のカードを2枚まで破壊する事が出来る。
1ターンに1度、このカード以外の自分フィールド上のモンスター全てを破壊しその攻撃力の合計を
エンドフェイズまでこのカードの攻撃力とする事が出来る。
このカードがフィールドから離れた時、自分と相手は1000ポイントのダメージを受ける。

「フランドールの効果発動!!このカードが特殊召喚に成功した時、
フィールド上のカードを2枚まで破壊することができる!!」

『キュッとして、どかーん!!』

 可奈の効果発動の宣言とともに、くるみと、眠れる恐怖が破壊され、
クレシスの場にモンスターが消え去った。

「さらに、私は墓地の霧の谷の戦士とイル・ブラッドをゲームから除外し、
ダーク・シムルグを特殊召喚する!!」

 可奈の場に巻き起こる漆黒の風。その風を引きちぎるようにして現れた、
一羽の怪鳥。巨大な体を震わせながら、下品な声で哭きさけぶその頭には、
赤黒く穢れた愚者の宝冠が掲げられていた。

ダーク・シムルグ
☆7 闇
攻2700
守1000
鳥獣族効果:このカードの属性は「風」としても扱う。
自分の墓地の闇属性モンスター1体と風属性モンスター1体をゲームから除外する事で、
このカードを手札から特殊召喚する。
手札の闇属性モンスター1体と風属性モンスター1体をゲームから除外する事で、
このカードを自分の墓地から特殊召喚する。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、相手は
フィールド上にカードをセットする事ができない。

「・・・っく、まさかここまで一気に来るとはな」

 さすがにこれにはクレシスも若干驚いた声を出す。
フィールド上にカードがまるでない状態から、一瞬で攻攻撃力を誇る
二体のモンスターを並べ、さらに伏せカードを全て残している。
こちらにも同じ枚数のカードが伏せられているとはいえ、こちらが
形勢を逆転されたことに変わりはなかった。

「バトルフェイズ!!
フランドールでダイレクトアタック!!」

 フランドールの振り回した爪が一戦してクレシスを切り裂いた!

クレシスLP13200−2800=10400

「・・・この瞬間、俺はリバースカードを発動する!」

クレシスLP10400−3000=7400

「何っ!?」

 クレシスがそう宣言すると同時に、彼の場にふわりと少女が二人
降り立った。一人は青を基調とした半袖のシャツにひざ丈のスカート、
頭にホワイトプリマをかぶり、シャツとスカートの上に白いエプロンドレス
を着用しているメイドと、ピンクの長袖のシャツに、ロングスカート。
シャツの上に赤茶色のベストを羽織る、赤い大きなリボンで髪をまとめた大きな白い翼を持つ少女。
 二人は着地と同時に一人は腕を組み、もう一人は翼を翻して身を隠すようにして、
それぞれ守りの体勢に入った。

「俺が発動したカードは、エンパシー。こいつは、俺が2000ポイント以上の
戦闘ダメージを受けた時にライフを3000ポイント払うことで発動する。
デッキから、名称が異なる、テキストにお互いの名称を持つモンスターカードを
1枚ずつ選び、場に特殊召喚する。俺はその効果で、夢月と幻月を
守備表示で特殊召喚させてもらった」

エンパシー

このカードのコントローラーが、2000ポイント以上の戦闘ダメージを受けた時、
ライフを3000ポイント払う事で発動することができる。
デッキから互いの名称をテキストに含む、名称の異なるモンスターを2体選択して特殊召喚する。
このカードは1ターンに1度しか発動することはできない。

夢月
☆8 闇
攻2000
守2000
悪魔族効果:このカードが通常召喚に成功した時、デッキから「幻月」を1枚選択して守備表示で特殊召喚することができる。
このカードの攻撃力と守備力は自分フィールド上に「幻月」が存在する場合、2倍になる。
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える。
お互いのターンのエンドフェイズ時、自分フィールド上に「幻月」が存在しない場合、墓地から「幻月」を特殊召喚することができる。
その後、このカードのコントローラーはライフポイントに2000ポイントダメージを受ける。
この効果は1ターンに1度しか使用することはできない。

幻月
☆8 闇
攻2000
守2000
悪魔族効果:このカードが通常召喚に成功した時、デッキから「夢月」を1枚選択して守備表示で特殊召喚することができる。
このカードの攻撃力と守備力は自分フィールド上に「夢月」が存在する場合、2倍になる。
このカードが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えた場合、このカードの攻撃力の数値分、このカードのコントローラーは
ライフポイントを回復する。お互いのターンのエンドフェイズ時、自分フィールド上に「夢月」が存在しない場合、墓地から「夢月」を特殊召喚することができる。
その後、このカードのコントローラーはライフポイントに2000ポイントダメージを受ける。
この効果は1ターンに1度しか使用することはできない。

「夢月、幻月はともに悪魔族。夢幻館の効果で攻撃力と守備力が500ポイント上がる」

夢月攻/守2000+500=2500
幻月攻/守2000+500=2500

「そして、この二体はお互いがフィールド上に存在するとき、
その攻撃力と守備力を2倍にする」

「なっ・・・二倍だと!?」

『うっそ、なにアレ!あんなカードがあるの!?』

 その効果を聞いた可奈と、彼女の場にいたフランドールが声を荒げる。
・・・最も、驚愕を含む可奈のそれとは異なり、
彼女のそれはどちらかというと嬉々としたものだったが。

夢月攻/守2500×2=5000
幻月攻/守2500×2=5000

「・・・ターン、エンド」

可奈手札残:2枚


 フィールド上に君臨した双子の悪魔を顧みて、朝倉たちは生唾を飲んだ。
可奈の場にいるフランドールとダーク・シムルグの攻撃力を軽く上回り、
それだけでなく幻月は攻撃力分のライフゲインの効果を、夢月は破壊した
モンスターの攻撃力の半分の数値のダメージを相手に与える効果を持つ。
 さらに恐るべきはこの二体、どちらか片方でも場に残ればその直後には
墓地から片方を呼び戻す効果を持ことか・・・。

「何よアレ・・・どうやって突破すんのよ!?」

「・・・ブラックホールによる同時破壊を狙うのが一般的だとは思うけど」

 朝倉の言葉に、雷華が静かにそうつぶやく。しかしそれは相手も想定
しているだろう。あれだけの攻撃力を持つモンスターだ。
当然、戦闘による破壊はほとんど心配する必要もない。となれば、
警戒すべきは魔法、罠による除去だろう。

『多分あの伏せカードはほとんどあの二体をサポートするカードでしょうね。
それからおそらくは、ライフを回復して戦線を維持するカードか』

 これまでのカードの傾向を見てそうつぶやくカーミラ。確かにライフを
回復するカードは多く入っていそうだ。神の恵みを含めて埋まっている
魔法、罠ゾーンのカードを顧みながら、サラサは静かに可奈を見つめていた。

10ターン目
「俺のターン、ドロー」

クレシスLP7400+500=7900

「スタンバイフェイズ、リバースカード、魔封じの芳香を発動!」

魔封じの芳香
永続罠
このカードがフィールド上にある限り、魔法カードは一度フィールドにセットし、
次の自分のターンが来るまで使用できない。

 可奈の場に現れた禍々しい形相の巨大な香炉。その香炉から鼻につくあまい
香りが漂っている。

「ダーク・シムルグが存在することで、相手の魔法・罠カードの使用を封じる
コンボか。だが、現状としては遅いんじゃないのか?」

「いいや、ここで羽箒をドローされて使われるくらいなら、
ここで発動して少しでも相手の動きを鈍らせる。それに、ここで新しく
カードを伏せられて状況をこれ以上進められても困る」

 可奈はそうつぶやいてふふんと、笑う。クレシスはそれを見ながら
可奈の場を顧みる。攻撃力2800の破壊の悪魔―フランドール・スカーレット、
ダーク・シムルグ、そして魔封じの芳香に伏せカードが3枚・・・。
 伏せカードのうちの1枚くらいはおそらく攻撃に反応する罠カードだろう。
可奈のデッキとしては、およそプライドの咆哮あたりが妥当なところか。
最も、それだと夢幻月の蘇生効果で発動後がかなりきついと思うのだが。

「まぁ殴ってみればわかるか。俺は夢月で、フランドールを攻撃する!」

「永続罠、強制終了を発動!!その効果で、私はフランドールを墓地へ送り、
このターンのバトルフェイズを終了する!!」

強制終了
永続罠
自分フィールド上に存在するこのカード以外のカード1枚を墓地へ送る事で、
このターンのバトルフェイズを終了する。この効果はバトルフェイズ時にのみ発動する事ができる。

「ほう、わざわざフランドールを墓地へ送ってまでロックを維持するか。
しかし、そこはダムルグでもよかったんじゃないのか?」

「いいや、フランドールにはもう一つの効果がある。それは
フィールドから離れた時にお互いのプレイヤーに1000ポイントの
ダメージを与える効果だ」

 可奈のその言葉とともに、墓地へ送られたフランドールの持つ杖が振り回され、
その一撃が可奈とクレシスをかすめて消えた。

可奈LP5900−1000=4900
クレシスLP7900−1000=6900

「俺はこれでターンエンドだ」

「ならばここで、私はリビングデッドの呼び声を発動する!!」

リビングデッドの呼び声
永続罠
自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。

「私が蘇生するのは破壊の悪魔―フランドール・スカーレット!!」

 リビングデッドの呼び声にこたえるように、地面から腕が突き出され、
そのまま大地に爪を立てて体を引きずり出してきたフランドール。
その相貌には爛々と赤黒い狂気が宿っていた。

「そしてフランドールの特殊召喚成功時に、相手フィールド上のカードを2枚まで選択して破壊することができる!!」

『きゅっとしてどかーん!ばぁい2!!』

 可奈の言葉と同時に、フランが夢月、幻月の破壊を試みる。
しかし、それを見越していたといわんばかりに、クレシスの場のカードが
翻った。

「俺は伏せていたかわいい悪魔を発動。このカードは、自分フィールド上に
存在する幻月が、破壊されるときに発動することができる罠カードだ。
幻月の破壊を無効化し、相手の場の魔法・罠カードを1枚選択して破壊する」

かわいい悪魔

自分フィールド上に表側表示で存在する「幻月」を破壊する効果が発動したときに発動することができる。
破壊を無効にし、その後、相手フィールド上の魔法、罠カード1枚を破壊する。
また、このカードが墓地の一番上に存在し、「幻月」が自分フィールド上に存在する場合、
自分フィールド上のモンスターの攻撃力を500ポイントアップする。

「さらに伏せカード、メイド幻想を発動!
このカードは自分フィールド上に存在する夢月が破壊されるときに発動し、
夢月の破壊を無効にし、相手の場のモンスターカードを1枚破壊する!」

メイド幻想

自分フィールド上に表側表示で存在する「夢月」を破壊する効果が発動したときに発動することができる。
破壊を無効にし、その後、相手フィールド上のモンスター1体を破壊する。
また、このカードが墓地の一番上に存在し、「夢月」が自分フィールド上に存在する場合、
自分フィールド上のモンスターは戦闘によって破壊されない

「・・・って、ことはメイド幻想の効果から処理されて、
そのあとに、かわいい悪魔の効果が処理される」

「最後にフランドールの効果が処理されて夢月、幻月が破壊される。のが
両方とも無効化されてしまうって感じね」

 サラサの言葉に続けて朝倉が応える。

「破壊を無効化したことで、二枚のカードの効果を発動!
メイド幻想の効果により、フランドールを破壊!」

 夢月の腕に魔力が宿りその一撃がフランの胸倉を抉り取り、そのまま
一瞬でたたき伏せる。

「そして、かわいい悪魔の効果により俺は強制終了を破壊する」

 幻月が、髪を梳くように腕を通す。そこから引き抜いた二本の髪に
力を宿し、槍状に姿を変えたそれが強制終了のカードを貫いた。

破壊の悪魔―フランドール・スカーレット×→墓地
リビングデッドの呼び声×→墓地
強制終了×→墓地

「この瞬間、フランドールの効果で、互いに1000ポイントの
ダメージを受ける!」

「かわいい悪魔は墓地の一番上に存在し、場に幻月が存在するとき
俺の場のモンスターの攻撃力を500ポイントアップする」

可奈LP4900−1000=3900
クレシスLP6900−1000=5900
夢月攻5000+500=5500
幻月攻5000+500=5500
クレシス手札残:6枚

11ターン目
「私のターン、ドロー!・・・私は手札から、ゾンビ・マスターを召喚!!」

 可奈の場に現れた死霊術師。その死霊術師の力に操られた
亡霊たちが、冥府の底からピラミッド・タートルを引きずり出した。

「ゾンビ・マスターの効果発動。手札を1枚墓地へ送り墓地から
アンデット族モンスター1体を選択して特殊召喚する」

ゾンビ・マスター
☆4 闇
攻1800
守   0
アンデット族効果:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
手札のモンスターカード1枚を墓地に送る事で、自分または相手の墓地に存在する
レベル4以下のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

「そして、この二体のモンスターで、オーバーレイ!!
二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!!」

 死霊術師と巨大な亀が交わり、その闇の中から巨大な竜が現れる。
下顎から巨大な牙を伸ばしたそれは天を見上げて大きく吠えた。

「漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!
今ここに降臨せよ!現れろランク4!ダーク・リベリオン・エクシーズドラゴン!!」

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン
ランク4 闇
攻2500
守2000
ドラゴン族エクシーズ・効果:レベル4モンスター×2
@:このカードのX素材を2つ取り除き、相手フィールド上の表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力を半分石、その数値分このカードの攻撃力をアップする。

「・・・ダベリオン?・・・そうか、攻撃力を半減させて
どっちか片方をふっ飛ばしたら次のターンに大きくライフを」

「いいえ、それだけじゃ足りないわ。2500程度のダメージじゃ、
エンドフェイズに夢月か幻月のどっちかが残っていて、ライフが2000
以上あれば墓地から特殊召喚される。しかも、特殊召喚されたモンスターの
効果は後出しの法則で一番最後に処理されて、
元の攻撃力2000+500(夢幻館)+500(かわいい悪魔)×2で
6000とかいう化け物が生まれるわ」

 サラサの言葉に朝倉はそう答える。つまり、両方を同時に吹き飛ばす必要が
あるのだというが・・・。

「私はダークリベリオンの効果を発動!
素材を二つ取り除き、相手の場のモンスター1体の攻撃力を半分にし、
その数値分、このカードの攻撃力を上げる!トリーズン・ディスチャージ!!」

 ダーク・リベリオンの翼の部分が開き、そこに周囲を旋回するユニットが
吸収される。そこから黒い波動のようなものが飛び、その一撃が幻月を
肉薄し、彼女の力を奪う。
 力を奪われた幻月は、苦々しげに顔を歪めながらカクンと膝を折った。

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン攻2500+2750=5250
幻月攻5500÷2=2750

「さらに伏せていた地砕きを発動!
この効果で私は夢月を破壊する!!」

地砕き
魔法
相手フィールド上の守備力が一番高い表側表示モンスター1体を破壊する。

「このカードは相手フィールド上に存在する、守備力の一番高い
モンスターを破壊する、対象を取らないカード。
相手の場に守備力が同じモンスターがいる場合はこのカードのコントローラーが
その対象を決める!」

 天から振り下ろされた鉄槌が、夢月を打ち据え叩き潰した。

幻月攻2750÷2−500=825
夢月×→墓地

「!・・・また攻撃力が半減した?」

「そうか、あの攻撃力はフィールド魔法とかわいい悪魔、それから
夢月幻月それぞれがもつ攻撃力を倍にする効果があっての数値。
そのうちの片方が破壊されれば当然攻撃力はさらに落ちる・・・」

 そうなれば、二体の攻撃でこのターンでの決着も可能である。
可奈の狙いはこれか。ルルはそう思いながら静かに目を細くする。

「かわいい悪魔は場に幻月が存在し、そのカードが墓地の一番上にあるときにのみ
効果を発動するカード。上にカードがかさなればさらに攻撃力が落ちる。
いい判断だ」

「バトルフェイズ、ダベリオンで幻月を攻撃!
反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

 飛翔したダーク・リベリオンがその牙で幻月を貫いたその時、
クレシスの場のカードが翻る。

「俺は速攻魔法、ミラクル・フルーツを発動した!
このカードの効果で、俺はこのカードの発動後に受けたダメージの二倍の
数値のライフをこのターン終了時に回復する!!」

ミラクル・フルーツ
速攻魔法
このカードが発動したターンのエンドフェイズ時に、発動後に受けたダメージの数値の2倍のライフポイントを回復する。

ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン攻5250○
幻月攻825×→墓地
クレシスLP5900−4425=1425

「だが、エンドフェイズまでもたせはしない!!
ダーク・シムルグでダイレクトアタック!!」

 ダーク・シムルグが飛翔し、上空高くから滑空しその爪でクレシスを
襲う・・・瞬間、クレシスとダーク・シムルグの間に一体の悪魔が現れる。
悪魔は、その胴体についた振り子のような尾を振りその尾で腕と思しき
箇所にある鐘を鳴らしてその音でダーク・シムルグの攻撃を無効化した。

バトル・フェイダー
☆1 闇
攻   0
守   0
悪魔族効果:相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。
このカードを特殊召喚し、その後バトルフェイズを終了する。この効果で
特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

「・・・バトル・フェイダーだとぉお!?」

「そうだ、俺は手札のバトル・フェイダーを特殊召喚し、
お前のバトルフェイズを終了させる!」

「っく・・・カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!!」

可奈手札残:0枚

「メインフェイズ2終了時、俺はリビングデッドの呼び声の効果を発動する。
その効果で、俺は墓地から夢月を特殊召喚する」

 クレシスのフィールドから白い腕が大地を突き破って生えてきて
その下から青を基調にした金髪のメイドが現れ、服についた土塊をはたき
落として、ケホケホと咽び込んでいた。

「そしてエンドフェイズ、ミラクル・フルーツの効果により俺は受けた
ダメージの2倍の数値、ライフを回復する」

クレシスLP1425+8850=9275

「そして、夢月の効果発動。
自分フィールド上にこのカードが存在し、幻月が存在しない場合、
墓地に存在する幻月を一体選択して特殊召喚する」

 夢月が手のひらを地面に向けると、そこに巨大な魔法円が展開し、
その魔法円の中心から薄桃色の長袖のシャツに包まれた腕が伸び
夢月がそれを引き抜くと、つられるようにして幻月が舞い戻った。
そして、その幻月が現れた魔力による衝撃がクレシスを襲う。

「その後、俺は2000ポイントのダメージを受ける。・・・が」

クレシスLP9275−2000=7275
夢月攻(2000+500)×2=5000
幻月攻(2000+500)×2=5000

「ミラクル・フルーツは発動後に受けたダメージすべてを対象とする。
よって、このエンドフェイズ更なるダメージが発生したことにより、
その数値の二倍、ライフを回復する」

クレシスLP7275+4000=11275


「ライフがこのターンだけで12850ポイントも回復してるですって!?
インチキ効果もいい加減にしなさいよ!!」

「確かに、ここまでくるとインチキくさい効果してるよねぇ。
S・H・Ark Knight初めてアニメで見た時も思ったけどここまでじゃなったし」

 朝倉の言葉にサラサはそう答えながらポリポリと顎を引っ掻いた。

「で、でも・・・まだダベリオンの方が攻撃力はうえだし・・・
雛沢さんの方が、まだ盤面的には有利だよね?」

「・・・何とも言いにくいわね」

 雷華の言葉に朝倉がそうつぶやいた。おそらく、相手もそれは想像しているだろう。


12ターン目
「俺のターン、ドロー!神の恵みの効果でさらにライフを500回復」

クレシスLP11275+500=11775

 手札を顧みながら、可奈のフィールドに目を走らせる。伏せカード1枚に、
攻撃力5250のダーク・リベリオン。さらに、攻撃力2700の
ダーク・シムルグ。狙うなら、シムルグだが・・・。

(可奈の伏せていたあのカード、前のターンに伏せられていたものを、
俺はプライドの咆哮だと呼んでいた。だが、発動したのは強制終了だった。
可奈のデッキは魔封じの芳香を組み込んだデッキの性質上、罠カードと
魔法カードの割合は罠カードの方がやや多い。そして、こちらにこの二体が
いる状態で、伏せるカード・・・いずれにしても、夢月幻月のままでは
少しつらいか?)

 ヘタにかわされて次のターンに大ダメージ、などという事態は避けた方がいいだろう。
単純に考えても、である。

「・・・俺は、場の夢月、幻月でオーバーレイ!!」

「何っ!?」

「攻撃力4000越えのモンスター2体を捨てて・・・
エクシーズ召喚ですって!?」

 可奈と朝倉が狼狽し、周囲もクレシスの行動を見て目を見開く。
通常なら、このまま二体で殴りかかればいいだけの話だ。それを、わざわざ
エクシーズ素材にしてしまう必要はない。

「このモンスターのX素材には攻撃力4000以上の悪魔族モンスターが
2体必要なんだよ。命を狩り獲る天使の翼よ、歯車を揺さぶりすべてを
狂わせロ!エクシーズ召喚、現れろランク8、夢幻の双子悪魔!!」

 クレシスの場にいた夢月と幻月が、それぞれのカードから一か所に移る。
背中合わせになって立っていたようだが、やがてお互いに少し距離を開けて、
しげしげとフィールドを見回した後「口を開いた」。

『ほぉう、今日の相手は誰かと思えば精霊付きのお嬢さんじゃない。
フランちゃん元気?あ、あと令裡とか言う吸血鬼も元気してる?』

『そういえば、さっきチラッと出てきてたわね。フランちゃん。
駄目よ、あの子割と物静かにしてると後が怖いんだから。ちゃんと
発散させてあげないと』

 そんなことを当然のように話す二人。それを見て、流石最高
ランクの精霊だな、と可奈は思う。普通なら、特定の能力のある
者にしか、声を聴かせることはおろか話す姿を見せることもできないはずだが、
この二体はさも当然のようにそれを行っているからだ。

夢幻の双子悪魔攻4000+500=4500

「バトルフェイズ、夢幻の双子悪魔でダーク・シムルグを攻撃!!」

 白い翼をはためかせた幻月と同時に駈け出した夢月。
その夢月が踏み込みからダーク・シムルグの腹部に拳がぶつかる瞬間。
その間に鈍く輝く障壁が現れ、夢月の拳を受け止める!

「リバースカード、オープン!!聖なるバリア―ミラーフォース―!!」

聖なるバリア−ミラー・フォース−

相手モンスターの攻撃宣言時に発動することができる。
相手フィールド上の攻撃表示モンスターをすべて破壊する。

「この効果で、相手フィールド上の攻撃表示モンスターをすべて破壊する!!」

『あっまいわぁああ!!』

 夢月の声が響く。夢月の周囲を回っていたオーバーレイユニットが消費され、彼女の拳がミラー・フォースをぶち破った。

「夢幻の双子悪魔の効果発動。このカードはオーバーレイ・ユニットを一つ取り除くことで、
このターンのエンドフェイズ時までこのカードは相手のカード効果を
受けない」

「何っ!?」

 さらにそれに続いて幻月が二つ目のユニットに手をかけ、その力を吸収し、
その力を開放して二人同時にダーク・シムルグの腹をそのこぶしでぶち抜いた。

「さらにダメージ計算時に、夢幻の双子悪魔の効果を発動。
このカードのオーバーレイ・ユニットを任意の数取り除き次の相手ターン終了時まで、
このカードの攻撃力を、取り除いた数だけ倍にする。よって」

夢幻の双子悪魔攻4500×2=9000

夢幻の双子悪魔
ランク8 闇
攻4000
守4000
悪魔族エクシーズ・効果:闇属性攻撃力4000以上のレベル8悪魔族モンスター×2
このカードのX召喚は上記のカード以外では行えない。
このカードがフィールド上に存在する場合、名称を「幻月」または「夢月」として扱う。
このカードにX素材がないターンのエンドフェイズ時、
このカードのコントローラーは3000ポイントのダメージを受ける。
その後、墓地から闇属性レベル8悪魔族モンスター2枚を選択し、このカードの下に重ねてX素材とする。
@このカードのX素材を一つ取り除いて発動する。このターンのエンドフェイズまで、このカードの攻撃力を2倍する。
また、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、攻撃力が守備力を上回っていれば、
その数値の差分のダメージを相手プレイヤーに与える。
AこのカードX素材を一つ取り除いて発動する。このターンのエンドフェイズ時までこのカードは
相手のカードの効果を受けない。

夢幻の双子悪魔攻9000○
ダーク・シムルグ攻2700×→墓地
可奈LP3900−6300=−2400


「きぃまりましたぁああああああああああっ!!
勝者クレシス!夢幻の双子悪魔は強かったぁ!」

 文の声が響き、可奈はヤレヤレとため息をついて踵を返した。

「可奈」

 その可奈に後ろからクレシスが声をかける。そのあと、デッキに
手をかけるとそこから4枚のカードを可奈に投げ渡した。

「ッ・・・これは」

「持っていけ。ここから先の戦いそいつらがいないと少し厳しいだろう」

 手渡されたカード4枚を見て、可奈はあきれたようにクレシスを見た。

「ちょっと待て、こいつ等渡されてもライフコストで私が死ぬ」

「いいじゃないか、お前のデッキの最大火力はダベリオンくらいだろう。
そうとなれば、こいつ等はいてもいいと思うが?」

「・・・考えてみます」

 可奈はそう言ってクレシスに背を向けるとそのままルルたちのもとに
戻っていく。

「雛沢さん?何のカードを渡されたの」

 そう聞いてくる朝倉に、可奈はため息交じりに手渡された4枚を見せた。
そこには、先ほど可奈に止めを刺したカードを含む、一式がおいてあった。

「え、えー・・・」

「確かに強力なモンスターだが、今のままの私のデッキだとコストが重すぎる」

 そういいながら深くため息をついた可奈を、後ろにいた令裡とフランドール、
そして・・・夢月と幻月の二人がケタケタと笑っていた。