Re: 妖猫幻想草子 ( No.1 )
日時: 2015/03/07 15:24
名前: さくら

#00.終わりの始まりの終わりのry

「さて・・・あともう少しの辛抱ですから、動かないようにだけ注意して
くださいね?」

 一言、そんなことを呟いて少年が振り返る。漆黒の長い髪を揺らしなが
ら顔についたそれを払ってつづける。

「今回、みなさんをお連れするのは・・・まぁ、テーマパークみたいなものです。
そこで、殺人事件が起こるので皆さんで解決してください。
ちなみに、犯人とかそういうのは一切教えませんからあしからず」

 彼がそういうと、その後ろのほうに少しきつめの感覚で座っていた中の
一人が言った。

「なぁ、さくらよ?いつもみたいに禁断で遊ぶんじゃないのか?」

「ええ、まぁ・・・いろいろと、ありまして」

 さくら、と呼ばれた黒い長髪の少年が口を濁すと発言をした少年・・・七石天界こと、カイはヤレヤレと言いたげに口を開いた。
どうせ、またこいつの世界の住人になんやかんや言われたんだろう、と。

「ああはい。たまには別の世界でも作ってみたらどうだ、って・・・」

「だろうと思ったぜ。・・・それにしても、随分と人数が多いな、8人か?
いつも、せいぜい4,5人くらいだろうに」

 カイがそういいながらちらりと背後を顧みる。隣の席に座る弟、冥界を含めて、
その後ろの席にイワンと呼ばれた男、毎度よく一緒にいる風見義鷹に羽柴吉昭の二人。
 その後ろの席にルナ、という名前の少女とイヴというらしい女の子・・・足が不自由なのか、
車いすに座っている。彼女は、ルナと何やら親しげに談笑していた。

「それでさくら?一つばかり聞きたいんだが・・・」

「ああもちろん、事件にかかわるフラグをすべてさければデートもできますよ?
遊園地ですからね、デートスポットも一応用意してありますが、
そこかしこにフラグが転がっているので気を付けて歩いてくださいね」

 彼がそういった瞬間、がたんと全員が乗っているそれが揺れた。船のような形のそれが、
今回さくらが持ってきた移動用の空間で・・・普段は空間を直結させるそうだが、
多数の次元を直結させるときはこれを持ってくるらしい。が、やたらとよく揺れる。

「おい、さくら」

 そんな何度目かの揺れに耐えかねたのか、それまで黙っていた男、イワンが口を開いた。

「はい、なんでしょう?」

「・・・これでかれこれ14回目の揺れだが大丈夫なんだろうな?
いや、お前の世界に移動するのが数える程度だからな。どうしても不安が残るんだが」

「ああ、大丈夫ですよ。定員ギリギリなんで、ちょっとでもあばれたり、
動いたりしたら、
みなさん亜空間の藻屑になっちゃいますけど」

「そうか、それを聞いて安心した」

 そういった刹那、それを聞いた全員が蒼白になってさくらを顧みた。

「ちょっと待てぇ!?亜空間の藻屑ってどういうことだ!?
完全に安全な移動じゃないのかよ!!」

「・・・誰がそんなこと言ったんですか?
もう一度しか言いませんよ?目的地まで絶対に動くな、ちょっとでも
動いたら全員亜空間の藻屑になりますからね」

「な、なぁさくら・・・冗談やろ?
お前いっつもお客さん連れて行くからその分安全面を確保してるて
言うてたやないか・・・いややなぁ、そんな冗談」

「冗談抜きですよ。今回に限っては人数が多すぎてそこまで根回しできて
ないですから。あ、ちなみに私は無事ですよ?
亜空間から別の空間切り裂いて帰ればいいので。まぁ、ここの中なら
空腹になることも、喉が渇くこともありませんからね。・・・真空ですけど。
さすがに、談笑程度なら問題もありませんし、多少歩くくらいも
どうにかできま・・・」

 さくらがそこまで言った刹那、突然席を立ったイワンがカツカツとこちらに
歩み寄る。そしてガッとさくらの襟首をつかんで声を荒げる。

「ふざけるな!!そんな不安定極まりない状態で、この俺たちを招待したというのか!?
どういう了見だ、しんでも構わんというのか!!」

「うわっ、ちょ・・・暴れないでくださいって!?
ただでさ、不安定な空間で動いてるんですよ!?
これ以上暴れられたら、本当に亜空間の藻屑に・・・」

「そういう問題ではないのだ!!・・・いや、それも困るといえば困るが
まず、貴様自分だけ無事に助かるつもりでいただろう!そんなことで・・・」

 ぷすっ

「グハッ」

「まったくもう・・・大人しくしてろ、つっただろうが」

 ドサリと倒れたそれを席に押し戻すと、口調荒くそう言って元いた場所に戻っていくさくら。

「お、おい・・・何をしたんだ?」

「あー・・・面倒くさいから筋弛緩剤ぶち込んだんですよ。2時間くらいで元に戻り・・・」

 さくらがそういった、刹那これまでにない凄まじい揺れが船を襲った。

「「!?」」

「なっ・・・!!まさか!」

 さくらがそう声を荒げながら先ほどから彼がいじっていた機械に駆け寄る。
・・・瞬間、見てもわかるくらいにさくらの顔から血の気が引いた。

「お、おいさくら・・・まさか」

「は、はい・・・今ので完全に軸がぶれました。
この船、あと3分弱でぶっ壊れます」

 カイの言葉にさくらはあはは、と苦笑いしながらそういった。
そうかそうか、3分もあるのか・・・
そう言った刹那に修羅の形相を浮かべたカイがさくらに掴みかかる。

「ふざけるなコルァア!!何があと3分だ!?なんとかしろぉおおっ!!」

「ちょっと放してください、
今如何にかして次元に干渉してるところなんですからぁ!?」

「次元にって・・・お前やっぱり!!」

「全力で全員助ける努力をしてるんです!?最悪の場合は亜空間の藻屑に
なっていただくことに変わりはありませんが、それでも最善はつくします!?」

 そういうが早いか、さくらが向かっていた半透明のキーボードに
思い切り手のひらを滑らせる。瞬間、ポンポン、ポンという軽い音
を伴って、様々な記号の羅列が展開される。
 それを見て思わず手を放してしまったカイを尻目にさくらは
物凄い勢いで・・・それこそ指が倍以上に見える速度でキーをたたき始める。

「・・・第666式拘束機関解除、次元干渉虚数方陣展開・・・
コードSOLが破損している、だと!?・・・っち、別回路・・・
イデア機関あった!イデア機関接続・・・よし、これでとにかくあと
5分程度延命できる・・・それから座標・・・あ」

 そういった瞬間、さくらの顔が固まった。そのあとで、
しばらくの機能停止を経て、再びものすごい勢いでキーをたたき始める。

「周辺に座標指定できる空間がない、だと!?
ンなわけねぇよ!!俺が作った世界にそんな事象があってたまるか!?
禁断の派生パターンだけでも10通り近くあるんだ、それに
没にしたパロディや作る途中で座礁してしまった世界や、二次創作としての
世界なんかもあるはず・・・この近くにある、安定した空間なら何でも・・・
あった・・・あれ、でもこの座標、大丈夫かなぁ」

 さくらがそんなことを呟いた瞬間、船がまた大きく揺れた。

「「きゃあああああああああああああっ」」

「っち!!もう、ごちゃごちゃ考えてらんねぇ。面倒だからここでいいや!!
次元干渉虚数方陣展開、コードSOL、イデア機関接続、事象転移システム起動、
空間掌握システムオールグリーン、空間転移方陣、起動!!」

 瞬間、巨大な揺れと同時に当たりは閃光に包まれた・・・。