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駒学園の追走st2
日時: 2014/06/04 11:23
名前: さくら

st2.妖猫は闇に踊る - Cat monster dancing veil of darkness -

序 章>>1 08章>>9
01章>>2 09章>>10
02章>>3 10章>>11
03章>>4 11章>>12
04章>>5 12章>>13
05章>>6 13章>>14
06章>>7 14章>>15
07章>>8 あとがき>>16
メンテ

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Re: 駒学園の追走st2 ( No.7 )
日時: 2014/05/24 12:39
名前: さくら

6章

「朝倉!!おい、朝倉!?」

 その様子を見ていた可奈が思わず朝倉の名を叫ぶ。
その声が聞こえて、雷華はふと瞑想をやめてあたりを顧みる。朝倉の姿が
無いことに気が付いて、何か嫌なものを感じながら入口のほうへとかけていく。
 そこで見たのは、土壁にたたつけられて苦しそうにうめく朝倉の姿だった。

「・・・あーちゃん!?」

 その声に可奈とサラサが振り向く。そこにいる雷華の姿を
とらえて、可奈はすこし気まずそうな顔をした。

「なんで、なんであーちゃんが戦ってるの!?雛沢さん!!」

 声を荒げて可奈に詰め寄る雷華を、サラサがちょっと待って、と
なだめる。そのまま雷華の眼をまっすぐに見てサラサは言った。

「最初は、可奈が戦うつもりでいたんだ。でも、朝倉さんが
『ここで自分を捨て駒に使ってでも、逃げる準備をしろ』・・・て」

「そんな・・・!でも、このままじゃあーちゃん、本当に死んじゃう!?」

 駆けだす彼女を押さえ、可奈は苦々しげな顔をしていった。

「出るな!!この勝負を朝倉が受けた以上、外部となった私たちの
直接干渉は、すなわち朝倉の敗北、そして私たちの死亡につながる。
そうなったら、朝倉が何のために自分から外に出たのか、わからない!!」

「だったら!!」

「信じるんだ、朝倉を。・・・あいつなら、やってくれる」

 と、思う。というかだ、自身を蹴り飛ばしてまで戦線に立ったのだ。
勝ってもらわなければ困る。可奈はそう言う思いを呑み込みながら朝倉を
再び顧みた。
 朝倉は壁にもたれかかるようにして、
ずるりと背中を引きずるように立ち上がる。腹部に響く鈍痛と、背中から
来る痛みに顔をしかめる。
 やはりというべきか、サラサ・・・カーミラと戦った時のように、
ダメージが実際に体を襲っているようだ。全身を走る、電流に膝が笑った。

(・・・まずった、わね・・・攻撃の無敵化で防ぐなら、
戦闘ダメージを無効にすべきだったわ・・・いや、それじゃ勝てないか)

 みーこを倒す手段がただ一つだけあるとすれば、それは
ショーペンハウアーだけだ。朝倉のデッキでもっともな攻撃力の出る
カードは現状、機械族モンスターの枚数を調整したキメラテックより、
ショーペンハウアーとマリーチのみ。
 破壊という観点から見れば、ダーク・アームド・ドラゴンでもいけるが、
時すでに時間切れとでも言うべきかみーこの効果で墓地に貪られた後だった。

(まだ、あきらめるわけにはいかないわ。
雛沢さんを蹴倒してまで、無理矢理相手を変わったんだもの。
何があろうと、ここで止める・・・と、言いたいけど)

 指の震えが止まらない。背中がぬるりと生暖かい。どうやら、
背中を怪我したらしい。こういう感触はなれているが、それでも不快感を
覚えてしまう。おまけに、強く頭を打ったらしく、くらくらして足に
力が入らない。

「・・・?」

 ガクリと片膝を折った朝倉を、リリカはキョトンとした目で見ていた。
戦意喪失か、と思うしのぶ。

「・・・降参?」

「馬鹿、言わないで・・・ちょっと立ち眩みがしただけ、よ」

 そう言って膝を押さえて立ち上がる。が、それでも依然として
勝ち目を見出すのは難しい。次のドロー次第では負けが確定する。
それでも、それを理由に負けるのは責任放棄もいいところだ。
朝倉はそう思ってゆっくりと、デッキからカードを引いた。

9ターン目
「ドロー!・・・」

 引いたカードを顧みる。
違う、コイツじゃ使い物にならない。朝倉はそう思って守備表示の
カードに手をかける。
 翻ったカード、そのモンスターは壺だった。

「私は、メタモルポットを、反転召喚。
・・・さあ、お互いにカードをそろえましょう?」

メタモルポット
☆2 地
攻 700
守 600
岩石族効果:リバース・相手と自分の手札を全て捨てる。
その後、お互いはそれぞれ自分のデッキからカードを5枚ドローする。

「・・・わかっていた、わ」

 不意に、朝倉がそう呟いた。
それを聞いて、リリカが首をかしげる。

「判っていたわ、あなたのデッキの切り札が、みーこだってこと。
だから、ハウハウを呼んだってのに、コイツトロ臭いのよね。
なによ、モンスター4体破壊とか・・・そんなの間に合うわけないじゃない」

 そういいながら、自嘲気味にクックククと笑う朝倉。
俯き加減の前髪の奥で、黒い相貌が爛爛と光る。あきらめていないどころではない、
まだ勝つつもりでいる。それがわかって可奈は安堵していた。

「・・・だったとして、どうする?」

「決まってるでしょ、正攻法が間に合わないなら裏に回る。
裏には裏のやり方があるわ。正攻法より外道の法、情報操作は
私の得意分野よ。・・・外法(ヤクザ者)のやり方ってやつを見せてあげるわ!
手札から魔法カード、神意の威光を発動!!」

 朝倉が一枚のカードをディスクに差し込む。瞬間、
まばゆい閃光が辺りを包み、朝倉の場に存在するカードが
ショーペンハウアーを残してすべて消し飛んだ。

朝倉フィールド
メタモルポット×→墓地
人造天使トークン×→墓地

「神意の威光は私の場のカードすべてと、ライフポイントが100になる様に
支払うことで発動する魔法カード、その効果は・・・私の場に存在する、
特殊召喚を行う効果を持つモンスターカードの効果の強制発動!!」

「きょ・・・強制発動だと!?」

神意の威光
魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
モンスターを特殊召喚する効果を含む効果モンスター1体を
選択して発動することが出来る。
選択したモンスター以外の自分フィールド上に存在するカードをすべて
破壊し、ライフを100ポイントになる様に払う。
選択したカードのモンスターを特殊召喚する効果を含む効果モンスターの効果を
発動条件を無視して発動する。

朝倉LP1900−1800=100

「その効果により、
枢機卿−女神姫のショーペンハウアーを生贄に捧げ、
・・・唯一神直径第一使徒−聖四天ショーペンハウアーを特殊召喚!!」

 閃光に包まれた女神姫は、その中で白い翼を広げ、
魔力に髪をなびかせながら、ふわりと舞い上がり、そのまま
朝倉の傍らに着地した。神々しくも見るモノを魅了し引きつける、
緑色の瞳でリリカを見据える・・・。

唯一神第一直系使徒−聖四天ショーペンハウアー
☆9 光
攻????
守????
天使族効果:このカードは通常召喚できない。
「枢機卿−女神姫のショーペンハウアー」の効果でのみ特殊召喚できる。
このカードが特殊召喚に成功した時、お互いの墓地のモンスター全てを除外する。
このカードの攻撃力と守備力はこの効果で除外したモンスターの枚数×800になる。
このカードが相手のカードの効果対象になった時、
除外されたモンスターカードを2枚墓地へ戻す事でそのカードの発動と効果を無効にする。

「このカードの特殊召喚成功時、お互いの墓地からすべての
モンスターカードを除外する。私の墓地からは、
メタモルポット、ダーク・アームド・ドラゴン、情報破壊プログラム、
枢機卿−女神姫のショーペンハウアー、豊穣のアルテミス、
ディサイシブ・アームズ、終末の騎士、サイバー・ドラゴンの8枚」

「・・・獄卒のほむら鬼、天然メイドみーこ、死霊王−リッチ、
氷帝−イワン・トビノフスキー、魔殺商会戦闘員、鬼神−炎雷、
不幸少女−鈴蘭、メタモルポット。8枚」

朝倉墓地
メタモルポット→除外
ダーク・アームド・ドラゴン→除外
情報破壊プログラム→除外
枢機卿−女神姫のショーペンハウアー→除外
豊穣のアルテミス→除外
ディサイシブ・アームズ→除外
終末の騎士→除外
サイバー・ドラゴン→除外

リリカ墓地
獄卒のほむら鬼→除外
天然メイドみーこ→除外
死霊王−リッチ→除外
氷帝−イワン・トビノフスキー→除外
魔殺商会戦闘員→除外
鬼神−炎雷→除外
不幸少女−鈴蘭→除外
メタモルポット→除外

「そして、除外されたモンスターカードを合計した数値の800倍が、
このカードの攻撃力となる!!」

「えーっと、8+8が16で、16×8で128でその100倍だから」

「・・・12800だろう」

 サラサの言葉を聞いた可奈が、ため息交じりにそう呟いた。

唯一神直径第一使徒−聖四天ショーペンハウアー攻/守16×800=12800

「・・・それでも、足りない」

 リリカはそう言って小さくため息。
E0−貴瀬の効果は戦闘を行う相手モンスターの効果を無効化するもの。
それは、ショーペンハウアーの効果によって無力化可能。
だが、対象をとらないカードの効果までは、それで防ぐことはできない。
 魔人みーこの攻撃力は9000、その差分の数値3800ダメージでは
リリカのライフを削りきれない。

「まだよ・・・私は手札から融合の贄を発動するわ!!」

 朝倉がさらに1枚のカードを場に置いた。それを聞いてサラサが首をかしげた。

「・・・融合の贄?」

「Exデッキから融合モンスター1体を公開し、その素材となるモンスターを
墓地に落とすことで、デッキから融合と名のつくカードを手札に加えるカードだ。
化石融合−フォッシル・フュージョンなんかがサーチ対象にしたいカード
だろうな。現在だと、未来融合はもうないはずだし」

融合の贄
魔法
自分のエクストラデッキから融合モンスター1体を公開する。
デッキから、融合素材モンスターを墓地へ送ることで、デッキから
融合と名のつくカードを1枚選択して手札に加える
(この効果で墓地に送るカードは、最大3枚までとする)。

「私が指定するカードは、唯一神直径第一使徒−片翼の堕天使マリーチ!
デッキから、億千万の眷属−視姦魔人マリーチと、情報統合思念体の急進派
を墓地へ送り、死体融合術−ネクロフィリア・フュージョン−を
手札に加えるわ!!」

「・・・ネクロフィリア・フュージョンだと!?」

 それを聞いたしのぶが声を荒げる。可奈もそのカードの名を聞いて耳を疑った。
 ネクロフィリア・フュージョンは、ある地域で期間限定で数枚が
配布されただけでその存在すら都市伝説と言われているようなレアカードなのだ。
 そしてそれは、この世界のカード事情を知っているしのぶにとっても、
そしてリリカにとっても同じなのだろう、あの能面のような無表情に
やや驚いたような表情が浮かんでいた。

「もちろん、即時発動するわ!
特と見なさい、これが裏ルートで仕入れたマジモンのマジモンよ!!」

死体融合術−ネクロフィアリア・フュージョン−
魔法
自分の手札、フィールド上または墓地から、
融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、
融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する。
(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)

「・・・ダミーカード、とかじゃないみたいだな。
というか、どうやって手に入れた」

「裏の世界には裏の世界のルールがある。
それ相応の対価を支払えば、どんなものでも手に入るわ。
・・・如何しても手に入れたくてね、三十万ほど手渡したら
譲ってくれたわ。お金に相当困ってたみたいで、ね」

「・・・お前の金額の単位は非常におかしい」

「そう?裏金としては安い方だと思うけど?」

 そんな話をしてから、さて、と朝倉はリリカに向き直る。
既に元の無表情に戻ったリリカが何が出るのか、と問う。

「今、見せたばかりでしょう?・・・墓地から、視姦魔人マリーチと
情報統合思念体の急進派をゲームから除外して、
唯一神直径第一使徒−片翼の堕天使マリーチを融合召喚!」

唯一神直系第一使徒−片翼の堕天使マリーチ
☆10 光
攻????
守????
悪魔族・融合効果:億千万の眷族−視姦魔人マリーチ+情報思念体の急進派
このモンスターの融合は、上記のカードでしか行えない。
このカードの特殊召喚に成功した時、墓地の、「紅眼の覚醒」をゲームから除外する(除外しなかった場合、このカードを破壊する)。
このカードがフィールド上に存在する時、相手のターンのスタンバイフェイズ時に相手は手札と場の裏側カードを全て公開しなければならない。
手札を1枚捨てることで、相手の発動したカードの効果を1ターンに1度だけ、無効にし、破壊することが出来る。
また、相手が魔法・罠・モンスターカードの効果を発動するたびに、相手に1000ポイントのダメージを与える。
このカードの元々の攻撃力と守備力は、融合素材にしたモンスターの攻撃力の合計に、除外ゾーンのモンスターの数×200ポイントの数値になる。

 白いローブ、白い髪。そしてそれよりもなお深く、淡い白雪の様な
肌・・・しかしそれらを携えた白い少女の背中には、闇よりもなお暗い
翼、堕天使の証のそれがあった。

「このカードの攻撃力、守備力は融合素材としたモンスターの攻撃力
の合計、そして除外ゾーンに存在するモンスター1体につき200ポイント。
私は、墓地からさらに2枚のカードを除外した。よって、私の除外ゾーンの
カードの枚数は10枚。このカードは除外ゾーンすべてを対象とする。
つまり、あなたの除外ゾーンもよ」

「・・・変わらず」

 リリカがそう言って除外されたカードを見せる。
朝倉はそれを見て小さく笑う。

「攻撃力の計算、視姦魔人は3500、急進派は2500。
そしてお互いの除外ゾーンは合計18枚。それの200倍、3600。
その合計は」

唯一神直系第一使徒−片翼の堕天使マリーチ攻/守3500+2500+18×200=9600

 黒い片翼を翻しながら、笑顔のままに朝倉の隣に降り立つマリーチ。
ショーペンハウアーと並ぶその姿に、可奈は静かに息をのんだ。
 朝倉の手札は全部で3枚。相手の伊織の効果を封じ、さらにライフを
削ればマリーチの効果によってそれを無効化できるだけの手札を確保している。
 仮に、手札から発動するカードがあったとしてもそれすらもマリーチが
防ぐだろう。それをわかってか、しのぶは小さく肩をすくめた。

「ショーペンハウアーで、みーこを攻撃するわ!サンダラーズレイン!!」

 ショーペンハウアーの振り上げた杖、神器と称されるそれから放たれた
白銀の雷が一線、みーこを薙ぎ払う!!

億千万の眷属−食欲魔人みーこ攻9000×
唯一神直径第一使徒−聖四天ショーペンハウアー攻12800○
リリカLP4300−3800=500

「・・・紅眼の覚醒の効果で破壊を無効」

「問答無用、これで終わりよ!!マリーチでみーこを攻撃するわ!!」

 マリーチの放った漆黒の塊がみーこの振り払った腕の袖にぶつかり爆ぜる。
ぶつかりあった力同士が反発し、余波ともとれる衝撃が朝倉を押し戻した。

唯一神直径第一使徒−片翼の堕天使マリーチ攻9600○
億千万の眷属−食欲魔人みーこ攻9000×→墓地
リリカLP500−600=−100

 リリカのライフが0になったことにより、彼女の場にいたみーこの
姿が消え、マリーチとショーペンハウアーの二人の姿も消えた。
そしてそれとともに、結界を説いた可奈が、サラサに手を借りながら
外に出て、それより早く飛び出した雷華が倒れそうになった朝倉を支えた。

「っ・・・ごめん、かーちゃん、ちょっと無茶した」

 朝倉の言葉に、無茶しすぎだよ。と呟いて雷華は涙を浮かべたまま笑った。
メンテ
Re: 駒学園の追走st2 ( No.8 )
日時: 2014/05/24 12:39
名前: さくら

7章

 朝倉の健闘をたたえる可奈たちを顧みて、しのぶは小さくため息をついた。

「まったく、よりにもよって負けやがったか。ま、こんな時もあるさ」

 しのぶはそう言ってリリカの背中を軽くたたいてから
彼女は可奈たちに近づいた。それに気がついた可奈がすっと、3人の前にたつ。

「なぁに警戒してやがる?・・・まぁ、無理もねぇか。
取り合えず、ほれ。コイツは返すぜ」

 そう言ってしのぶがに背中に担いだカーミラを可奈に投げ渡す。
とっさにそれを受け止めた可奈。その可奈の腕に収まったカーミラに
サラサが近づく。

「カーミラ、大丈夫?」

『・・・な、わけ・・・ない、でしょ?けほけほっ・・・だいぶ治ったけど、
まだ色々足りないわ゛。・・・サラサ、カードを』

 そう言われて、サラサがデッキから薔薇殺しのカーミラのカードを取り出す。
彼女がそれに振れると同時、小さな光の粒子となって、カードの中に消えていった。

「カーミラ!?」

「・・・大丈夫だ、力を使い過ぎたんだろう。しかし、本当にこいつ等何者だ」

「ま、気にしなさんな。さて、約束通り、お前ら表に返して・・・!」

 しのぶがそう言った瞬間、何かを察知した彼女が振り向きざまに足を
振り上げる。同時に、ガツンという接触音が響き、しのぶの傍らに
長く伸びた大鎌が落ちていた。

「・・・おいリリカ、なにやってやがる?」

 蹴りあげた足を下ろし、大鎌の柄がズルリと起き上がってリリカのもとに
引き揚げていく。しのぶはそれを睨みつけながら言った。

「実力行使」

「それをやるなって言われてんだろうがこの大馬鹿野郎!?大体だ、
俺はこいつ等が勝ったら無条件でここから出すって約束したの、
お前聞いてたよなぁ?」

「うん、でも口約束は守らなくても問題ない」

 そう言ったリリカの手の中、そこに握られた大鎌がぐにゃりとゆがみ姿を変える。
その形状はL字型の金属の塊に変わり、その柄を握った彼女は無造作に
長身の方を此方に向ける。そこには小さな穴開いていた・・・。

「ッ!?ふせ・・・」

 可奈が思わずそう叫んだ刹那、火薬の爆ぜる音が響き同時に、彼女たちの
前に立ったしのぶが腕を振るうと、空間がゆがみ一振りの太刀が召喚される。
その刀を手首を返して回転させるとそのたびに激しい金属音が響き、
やがてリリカが手にした銃から発砲をやめる。
 しのぶがすっ、と切っ先を地面に下ろしそのまま横にスライドさせて肩に担ぐ。
そのさなかに、刃の滑った後に沿うようにして銃弾がきれいに並んでいた。

「あぶねぇじゃねぇか、こら」

 そういいながら小さく笑う。それを見ながら、リリカが冷徹に吐き捨てる。

「邪魔」

「こいつらには傷つけさせはしねぇぞ?俺は約束は守る主義だ」

 しのぶがそう言ってにやりと笑う。余裕の表情だが、その余裕を裏付けるだけの実力を、
彼女が持っていることもまた事実。
リリカはそれを知っているだけに、下手に攻撃に移れないでいた。
 最も、しのぶもまた可奈たちを背中にかばっているため、その場から動く
事はままならないのだが・・・。それでも、しのぶはそれをカンフル剤にしているのか。
この状況を楽しんでいるようにすら見える。
 リリカが地を蹴り、駆ける。手にしていた大鎌が間合いに踏み込むと同時に
両刃の剣に変化し、それを握って横薙ぎに切りはらう!
しのぶの刀がそれを受けて金属音を響かせ、つばぜり合いに入る。
押しても引いても動かない状況で、火花が散る。
 はじけ飛んで間合いを開く。リリカの剣が二丁拳銃に姿を変え、
しのぶが刀を返すと同時に空間がゆがんでそこから現れたのは投げナイフ。
いや、ナイフではない。空間から現れるのはありとあらゆる刀剣。
数百以上からなるそれらがリリカのもつ銃から放たれる弾丸を
ここぞとばかりに肉薄して迫る!
 それら刀剣を鎧袖一触、二丁拳銃を大鎌に戻して叩き落とす。
リリカが横薙ぎに大きく腕を振り払った刹那、その大鎌が蛇のようにうねりながら
しのぶめがけて鎌首をもたげて襲いかかる。
 しのぶがその切っ先をつかんで止めた刹那、その刀身と柄はしなやかな鞭となって彼女の腕をからめ捕り、
それを引っ張りながらリリカが大きく
息を吸い込んだ。その口から放たれた煉獄の炎がしのぶを飲み込む。
 その時、パチンという指をはじく音が響き、しのぶの周囲の
炎が爆ぜた。彼女の背後には、炎の鬣をまとう駱駝にまたがった銀の王冠を頭に載せた
女性が炎の熱気にエメラルド色の髪をなびかせて立っていた。

「・・・ペイモンを仕込んでいたのね」

「ああ、炎を操るにはその元素の王を呼ぶのが消耗しないでいいからな」

 しのぶがそう言ってにやりと笑う。次の一手を、無表情なリリカがそう考えた刹那。

「お・や・め・な・さぁあああああああああああああああああい!!」

 輝く巨大な白雷がリリカを一撃し、さらに立て続けに降り注いだそれが
周囲の木々を薙ぎ払って彼女を中心に山半分を消し炭にしてしまった・・・。

「・・・あー、面倒な時に来やがったな、全く」

 しのぶがうんざりしたようにそう呟いた。可奈たちが突然の閃光に
くらんだ眼がようやくモノを映し始めた時、しのぶの隣の空間が真っ二つに裂けて
そこから白いローブをはおった黒い長い髪の女性が姿を現した。

「よぉルル。飛んでもねぇタイミングで雷落としやがったな。
後ろ巻き込んだらどうする気だコラ」

「しのぶ姉さまがお守りになる以上、万が一にもありえないことが
判っていたからでこその落雷ですわ。第一、誰がドンパチやれと言いましたか。
まったく、後処理の都合も考えてくださいまし」

 山半分も消し飛ばしたお前が言えたことか。しのぶがそう言ってルルをねめつける。
それとともに、クレーターの中からリリカが飛び出してきて、大鎌を構えた。
・・・が、ルルの姿を見てきょとんと大鎌を下ろす。

「・・・なんでいるの?」

「なんで、ではありませんわ!!誰が殺してでも奪い取ってこいと言いましたか!!
精霊を薙ぎ払うあたりまでは見逃します、デュエルによって相手にけがを
負わせたことも
この際不問にしてもいいでしょう。
後でわたくしが治療する羽目に会うことはまいどのことですし・・・ですが!!
その後が問題ですわ!!口頭で契約書がない約束事であっても、しのぶ姉さまが
それをお受けになって、代打ちをした以上、それは立派に契約受理ですわ!
そうでありながら、契約を反故にするようなまねをするとは何事ですか!!」

 ガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミ・・・
ルルのものすごい勢いでのお説教が続き、いつの間にかリリカが正座させられていた。

「な、なんだ・・・これは・・・」

 可奈が呆れ気味に・・・いや、むしろ完全においてけぼりになっている様な
状態で呟く。それを顧みて、しのぶはまぁ何時ものこった。と言って頭をかいた。

「アイツはとりあえず面倒事を全部省きたがるやつでな、
部屋の掃除はそもそも面倒だから汚さない、新しく魔獣を捕まえるのが面倒だから
子供の段階から育てる・・・方が手間だと思うんだがな。多数の武器を使い分けるスキルがあれば、
戦場でも後方に下がる無駄なく戦える、でもそのために複数の武器を持つのは
面倒。だから可変する武器を持ち歩き、それすらも組み替えるのが面倒だから
自身の意思に合わせて自動で変わるものを選んだってわけだ。
今回だと、話し合いで時間がかかるのが面倒だから殺してでも奪い取ろうとしてたわけだが」

 ルルはそれを頑として許さなかったからな。だからこの状況だ。
しのぶはそう言ってため息をついてから、ルルのもとに歩み寄った。

「・・・おいルル、後は俺がよく言っておくから
お前、この空間の因果律の改竄とあいつらの手当て頼むわ。一人は怪我、一人は
霊力使い切ってて、一体は全身ぼろぼろで具現化すらできない状態だ」

 しのぶに言われて、何処までやらかしたんだお前らはと言いたげに
彼女をねめつけたルルが判りました、と言葉を切ってしのぶとの
すれ違いざまに言った。

「次は絶対にこのくらいじゃ許しませんからね」

「あー、そう言っておくよ」

 そう言って正座していたリリカを引きずって引き裂いた次元の中に
帰っていく。その現場をポカンと見送っていた3人のもとに歩み寄った
ルルは、さてとりあえず、と呟いてから可奈の口に小瓶の口を突き付けて
その中身を顎を押し上げて無理やり押し流した。

「むむっ!?」

「飲みなさい、飲まないなら鼻をつまんででも飲ませますわよ?」

 そういいながら、さらに瓶の中身を口の中に押し流す。
鼻をつままれてはたまらないかなはその中身をのどを鳴らして飲み干した。
 やがて、ルルが口から瓶の口を離し、とりあえずと一言おいてから言った。

「その薬はソーマの一種ですわ。まぁ、魔界製のものですので、
人間にはちょっと強すぎるかもしれませんが・・・今の空っぽのあなたには
十分でしょう。さて、そちらの方、背中に擦り傷がありますわね。
あと、少し呼吸音がおかしいですわ。肋でも折りまして?」

 さらりとそんなことを言いながらローブの中に腕を突っ込み、そこから
薬瓶のようなものを再び引きずり出してくると、その中に刷毛を突っ込んで
朝倉の背中にべったりと塗り付けた。ぞっとするような痛みが背中から
朝倉の脳を焼き切らんばかりに襲い掛かり、背筋を伸ばしたまま、
青い顔をして気絶した。

「あ、あーちゃん!?」

「魔界製の傷薬ですわ。本当は薄めるのですが、一応原液のままでも
人体に影響がないことは保証いたします。が、流石に刺激が強すぎたようで」

 そういいながら軽く触診してからローブの裏から包帯やら添え木やらを取り出して、
てきぱきと治療を施していく。

「・・・妙に手馴れているな」

「姉様が姉様ですからね。しのぶ姉様も生傷の絶えないお方ですし、
リリカ姉様は見ての通りです。なので、お二人の治療で少なくとも、応急処置や
治療の方法を覚えましたわ」

 そういいながら静かにため息をついて、今度はサラサのほうに近づくと、
彼女の手にあったカーミラのカードをディスクに置き、その周囲に何やら術を施していく。
 ・・・瞬間、カードの中からはじき出されるかのようにカーミラが現れ、
そのまま大きく翼を開いてブルリと体を震わせた。

『ッ・・・・あんた、何をした!?』

「失われた力の回復、そして、損傷した魔力回路の復元、
破壊された霊素粒子の回復と他治療を施しました。他に、悪いところは
ないでしょう?」

 そういわれてカーミラは自身の体を見回したり触ってみたりして
目を見開く。

『・・・おかしなものね、全部が治るのに軽く1か月はかかると思っていたのに』

 カーミラはそう言って静かに・・・しかし、ジリリと間合いを開く。
どうやら、完全に警戒しきっているらしい。当然か、とルルは思う。

『何を考えている?
お前も、あの二人と同じように彼女たちに危害を加える気か?』

「・・・姉二人の非礼は詫びるとしましょう。
わたくしは、穏便に済ませて来いといったはずなのですが、あの二人は
どうも、そういった事柄に関しては羽目を外しすぎるようで」

 そこまで言った刹那、カーミラの手にした黒い槍の矛先がルルの首に
突きつけられる。

『・・・そんなことは聞いていない、私が聞きたいのは敵なのか否かだ』

「敵である、という点は否定いたしませんわ。なにせ、貴方を駆逐し、
その背後の方々を消し炭にしようとした二人の妹ですもの。
敵の妹なのですから、当然敵でしょう。とはいえ、わたくしはあの二人ほど
暴力に突出して頼るつもりはありませんわ。
もっとも、貴方がやるというのであればわたくしは全力をとして
貴方を駆逐しなければなりませんが」

 そういって静かに翡翠色の瞳を光らせるルル。その瞳の邪気に気おされて、
可奈がウッと息をのんだ。

「下手に事を構えることは、決して利口であるとはいいがたいですよ、
精霊」

『・・・ッチ』

 舌打ち交じりに槍を収めるカーミラ。どうやら、本能的に相手にしてはいけない
と悟ったらしい。ルルはそれを見て静かに立ち上がると可奈たちに言った。

「さて、わたくしの仕事はこれで終了ですわ。
後日、貴方がたにはもう一度お会いすることになるかと思いますので、
その時まで、せいぜい大事にしていたくださいね」

 ルルがそういってすっと消える。
可奈がそれを追うように手を伸ばすが、その手は虚空を切ってあたりは色と
音を取り戻した。
メンテ
Re: 駒学園の追走st2 ( No.9 )
日時: 2014/05/24 12:39
名前: さくら

8章

 気絶していた朝倉が目を覚ました時には、
彼女は部屋のベッドに横たわっていた。どうやら、浪漫堂で眠ってしまった
ということにされたらしい。彼女が目を覚まして下の階に降りたときに
祖父にそう言われて、少しだけ怒られた。朝倉はそれを聞いて
小さく返事をしてから部屋に戻る。
 なんというか、惜しいことをしてしまったなぁ、とひとり思った。
何しろ・・・。

「・・・まさか、かーちゃんがここまで背負って連れて帰ってくれただなんて
そんな、そんなえろげーみたいなおいしい展開に気絶してるとか、
一生の不覚だわ。合法的に髪の毛にくんかくんかしたり、
うなじに舌を這わせたり耳に息吹きかけたり、胸触ったり
合法的なことやりたい放題だったのに・・・!!」

「・・・変態」

「変態じゃないわ、仮に変態だったとしても、
私は変態という名の淑女・・・!?」

 突然背後から聞こえてきた声に、何気なく答えてた朝倉は
その声音に目を見開いて固まった。聞き覚えのある声だった。それも、
つい最近のことである。いや、最近ではないつい今日のうちに
聞いた声だ。
 ばっと振り返ると、そこには女性がいた。長い銀髪、黒くて奥が見えない
深い闇のような瞳の女性・・・リリカである。

「なっ・・・あんた、どっから入ってきたのよ!?
この部屋鍵かかってんのよ!!」

「・・・ここから」

 そういって、壁のある方を指すリリカ。
どうやらいわゆる次元というやつを抜けてきたらしい。全くはた迷惑な
話だと朝倉は思う。

「で、いったい何の用なの?悪いけど、私オカルトグッズは何にも
持ってないから、ほしいならエジプトかマヤか雛沢さんちにでも行きなさい」

 別にそんなもの興味ない。彼女はそう言ってからロングコートの
ポケットに手を突っ込むと中をごそごそあさり始める。何を出すのかと
机の引き出しにそろりと手を伸ばしていた朝倉だったが、リリカは
きょとんと首をかしげてさらにごそごそとポケットをまさぐり始める。
 やがて、あれ?と首をかしげた彼女。それを見て呆れたのか、
背中の大鎌が切っ先の部分から返信して女性の姿に変わる。

「!?」

「「もー、リリちゃん、コートの内側の右ポケットの上から4番目だって、
しのぶさんいってたじゃないのー」」

 そう指摘された彼女はおもむろにそこに手を突っ込んでそこから取り出した
封筒を彼女に差し出した。

「・・・招待状」

「は?」

 リリカのつぶやいた漠然としたその一言。
その一言は、彼女が朝倉に手渡そうとするものを示し、そしてそれが
なんであるかを教えるには十分すぎる一言だった。

「・・・って、なんの招待状よ?」

「明日、妹が説明に来るから。・・・えーっと、ひかさわさん?」

「・・・雛沢、ね。ねぇ、そこの金髪の子」

 朝倉が大鎌から生えている女性・・・サラを顧みてそのあとでリリカに再び
目をやると、サラは苦笑いしながら答えた。

「「・・・めんどくさいから名前は憶えない主義」」

「最低ね、そこだけでも直させた方がいいわ」

 そうだね、努力してみるよ。サラがそういった後で何かを思い出したらしい
リリカがポンと合いの手を打って手の中にどこからともなくずらりと
朝倉に渡したものと同じ封筒を取り出した。

「・・・あと5人分渡さないといけない」

「で?」

「・・・家、どこ?」

 そういって首をかしげている。
なんでここが分かってほかの奴の家が分からないのか、とか尋ねるにしても
時間を考えろとか、大体にして魂狙った相手のヤサに夜中に殴り込むとか
どういうことだ、なにを考えているんだコイツは。

「・・・頭が痛いわ」

「・・・風邪?」

 そういいながら小首を傾げる。能面のように無表情だが、
仕草や行動から、ある程度慣れてくると感情を読み取れそうだ。思っていた
よりも表情豊かかも知れない。朝倉はそんなことを思っていた。

「誰のせいだと思ってんのよ・・・まぁいいわ。それ、明日渡してあげるから
こっちに渡してちょうだい」

 そういって片手を出すと、リリカはそれを見てからその封筒の束を
朝倉に手渡した。

「・・・後、よろしく」

「承ったわ」

 そのやり取りの後で、彼女は背中の大釜でバッサリと空間を引き裂くと
その隙間に姿をくらませてそのあとで片手を出して下からジッパーでも閉める
ように、空間を閉じていった。・・・後には元通りの朝倉の部屋が残っていた。

「・・・もう、寝よう」

 そういってベッドに転がって部屋の明かりを消すと、
そのまま泥のように深い眠りに落ちていた。
 翌日・・・。

「・・・なんだ、これ?」

「なにこれ、手紙?」

「・・・?」

 学校についてから朝倉はとりあえず可奈たちに昨日リリカから預かった
手紙を渡した。
 それぞれ、手にしたそれを見て3通りの反応を見せる。

「昨日のほら、リリカっていたでしょ?あれが持ってきたの」

「はぁ?あれって・・・昨日のアレか?!」

 それを聞いた可奈が声を荒げる。・・・もちろん、周囲には聞こえない程度だが。

「そうよ。で、あいつの妹が今日あんたの家に来て
この手紙について解説してくれるから、って言ってたわ」

「・・・ダンテこった」

 それを聞いた可奈が頭を押さえて背もたれに背中を預けて天井を仰いだ。

「・・・ともかく、私もこれが何なのかとかそれすらわからないのよね。
中身も見たけど、何が書いてあるのかはさっぱりだったわ」

 そういって、封筒の中身をこちらに見せる。
それを受け取って、折りたたまれた紙を開いてきょとん。

「・・・これなら、読めないこともないな」

「なん・・・ですって!?」

 それを聞いた朝倉がそういって目を見開く。
サラサも雷華もまた、マジで?と、可奈を顧みている。

「・・・そんなに驚くな、一応まかりなりに退魔師だぞ。
妖魔や悪魔たちの言語程度、ある程度読める」

 そういいながら目を通していた可奈は、しばらくして顔を上げると、
大体こんな感じだが、と語り始めた。。

「・・・明日より10日間の日程を用いてデュエルトーナメントを開催します。
ひいては、後日、案内のものが参りますので参加の是非をお知らせください。
・・・だいぶ端折ってるが、大体こんな感じだな」

「なるほどねぇ。つまり、これ大会の招待状だった訳?
つまりそのことを説明にあいつの妹が来るってわけね」

「そういうこと、だろうな・・・まったく、とんだ呪いの手紙だ」

 そういいながら頭を押さえて唸る可奈。
朝倉はそれを見ながら腕を組んでそんな大げさなと言いたげである。
 やがて、授業が終わって朝倉達が可奈とともに彼女の家でもある
浪漫堂にやってくると、受付に座っていた着物の女性、メノアが
可奈に声をかけた。

「可奈さん、お客様がいらしてますよ。お部屋のほうに案内しておいたので、
なるべく早くいってあげてくださいね」

 先手を打たれたか・・・と思いながら可奈は彼女に返事をして
自室を目指す。億劫そうな瞳のまま、扉を開けて中に入ると・・・。

「あら、おかえりなさい。勝手にお邪魔させていただいてますよ?」

「・・・ジョークだといってほしいものだ」

 可奈はそう言ってしかめっ面で頭を押さえた。
それを顧みて失礼な、とルルは言った。

「で、この手紙一体何なの?
雛沢さんが読んだ限りだと、大会の出場案内みたいだけど」

 朝倉がそういうと、彼女はあら、そこまでわかっているのなら話が早いですわ。と言った。

「そのままの意味です、わたくし共、妖猫の開く大会に参加していただきたく思います」

 そういって、得々とその大会のことについて語るルル。
曰く、彼女たち一族は聖戦の折りに神々に反逆し、戦って滅びたといわれているが、
実際は方々に散って偽装しただけであること。
 神々はそれを知っているが、こと、自分たちを本気で殺そうとすれば、
天そのものが覆るためできないこと。だったらもう、うじうじしてるのは
飽きたから、ド派手に復活宣言してやろうじゃないか。
というしのぶ発案の大会というのが、この招待状の内容であるらしい・・・。
 それを聞いて頭を押さえて俯く可奈、あきれてものも言えなくなって
天井を仰ぐ朝倉。もはや考えるのを放棄し始めている雷華に、とりあえず、
もうちょっと詳しくと思っているサラサ。それぞれを顧みながらルルは続けた。

「姉たちはそれぞれ、自身の兄弟を使ってチームを組んでおります。
わたくしは、当初は出る予定はなかったのですが急きょ参加する
運びとなりまして、メンバーを探していたところなのです」

「・・・それで、私たちにその役を買って出てほしい、と?」

 可奈の言葉に、ルルは静かにうなずいた。微笑を浮かべたまま微動だに
しない表情、瞬きすらして見せない翡翠色の瞳にえもいえぬ何かを、その場にいた
全員が感じていた。

「あなた方は、リリカ姉さまをデュエルで破った実績があります。
もちろん、一方のそれだけを見ているわけではございません。
あなた方のデュエルを因果を超えてみてまいりました。その結果として、
貴方方をわたくしのチームとして迎え入れようと決めたのですわ」

 そう淡々と言ってのける。

「・・・まぁ、デュエルと聞いて興味をそそらないわけじゃないわ。
でも、私はあまり乗り気ではないわね。あなたたちの一族の復帰なんて、
正直どうでもいいし、山車になるのは論外だわ」

「同感だ。・・・というよりは、魔物のいる世界に
退魔の心得すらないものを連れていくのは、仮にも退魔師の私にできるはずがない」

 それを聞いた可奈と朝倉がそれぞれの意見を述べて否定する。
最も、朝倉に至っては自分が興味がないから、という理由だが。

「無論、ただで出ろとは言いません。それに、わたくしたちの世界です、
わたくしたちが法であり、ルール。あなた方のほかにも、人間を招く以上、
身の安全は確実に保証します。もっとも、わたくしのチームとして
出場していただくわけですから、それなりの持て成しはさせていただきますわ」

 どうやら、安全は保障してくれるらしい。それを聞いて考えるしぐさ
を見せる可奈。朝倉は見返りが何かを考えているようだ。

「・・・安全性が確保されているなら、しかし」

「・・・ねぇ、どのみち私たち、明後日は普通に学校だから無理じゃない?」

 サラサの言葉に、全員がはっとしたように彼女を顧みた。

「そ、そうだよね・・・それに、デュエル自体も、ダメージが実体化したりして
かなり危ないんだもの・・・そんなところでデュエルするのは」

 それに続くように雷華が言った。
しかし、それを聞いたルルはそれなら御心配には及びませんわ、と言った。

「大会そのものは、あちらの時間では1週間ほどかかりますが、
こちらでは1日の間に終わりますし、デュエルの内容も契約を用いる
ゲームではなく、通常のデュエルとなりますので、姉さま方との
デュエルのように、デュエルを行って負傷するということはありません」

「・・・どういうこと?デュエルは異種族間同士では絶対に
そうなるものじゃないの?」

「はい、本来は魔族の力を人間が利用する際、または魔族が人間から
何かを奪ったり、えたりする時の対価を決めるためにゲームを行うという
ものが、現在ではデュエルという形に変わっただけです。
今回はあくまで大会はデュエルを行い勝敗を競うというものなので、
契約を求めるものとは異なりますので、通常のデュエルとなります」

 朝倉の言葉にそう答える。
どうやら、安全性は確保しているらしい。聞けば、彼女たちのほかにも
人間を何人か招待しているらしく、プロの人間も何人かいるのだそうだ。

「どの方も、異世界というワードに非常に興味を抱いたらしく、
そこでのカードやデュエルにひかれたから参加した、という方が
大勢いらっしゃるそうですわ」

 そう聞くと、ちょっと心が揺らぐなぁと朝倉。
他にいるメンバーがどんなものかは知らないが、プロというと普段は
滅多に会うことのできない実力者だ。そんな連中と一戦交えることが
できるというのは、確かにいい機会かもしれない。
 しかし、と可奈は思う。自身は兎も角としてほかのメンバーは
そういったものに耐性がない。知っている妖魔の類ならばいいが、それ以外に
それも、自身がいないときにはちあってしまう可能性を視野に入れるとなると・・・。

「・・・なんといわれても、お断りさせてもらう」

 可奈がそういって、ほかのメンバーは顔を見合わせていた。
その3人を顧みて、ルルは言った。

「ほかの皆様はどうでしょう?」

 その言葉を聞いていた朝倉が口を開く。

「見返りがある、っていうなら行ってもいいけれど。
でもね、私はあまり乗り気じゃないわ。あんなデュエル経験してるし、
大会だからっていうのも、信用ならないし、あの2人にあって、命の
保証があるとも思えないわ」

「・・・姉二人のことならばご心配なく。
わたくしのチームメイトとして招待する以上、絶対に手出しはさせませんわ」

「まぁ、プロとやらに興味がないわけじゃないけどね。
そういう相手とだって戦いたいし。ただ、うちのオカルト大将が
納得しないんじゃ、とても行く気にはならないわ」

 そういってちらりと朝倉が可奈を顧みる。
黙っていたサラサはと言えば、元が半分人外だからか、別に
まんざらでもなさそうな顔をしている。

「誰かオカルト大将だ」

 可奈がそういうと、ルルはそうですかぁ、と言ってから考えるしぐさ。

「あなた方に断られると、わたくしにはもう頼る当てはないのですが・・・
まぁ、無理強いする場面でもありませんし」

『・・・いいじゃない、参加してあげたら』

「「!」」

 不意に聞こえた声に振り替える。
そこにはくせっけの半透明の少女・・・カーミラがいた。

「どういうつもりだ?そんなことをすれば、サラサに危害が」

『たしかに、そうかもしれないわ。でも、彼女にも魔族の世界を
知ってもらえるいい機会だし、私は助けられた恩を仇で返すのは嫌いなの。
私とあなたの二人でなら、こいつらみたいなキチガイ染みたのじゃない限り、
対処は不可能じゃないわ』

 キチガイとは失礼な、と言いたげなルル。しかし、姉二人に殺されかけた
彼女からすれば、そういいたくなるのもやむを得ないか、と黙る。
 可奈は、そんな言葉を聞いて再び考えるしぐさ。確かに、自身の力と
カーミラの力があれば、並大抵の妖魔の力ならはねのけられるだろう。
雷華自身や、サラサのことも気がかりだがどうにかできなこともない。

「・・・朝倉はどうだ?正直、私はさほど乗り気ではない」

「そうねえ・・・考えてみれば、カーミラにあんた。向こうのほうの
事柄に従事してる輩が二人もいるわけだし、大会的には人間のプロが
数は限られるだろうけど参加、さらに開催はこっちの時間では一日程度
・・・あまり断る要素はないわね。まぁ、私も乗り気じゃないのは確かだけど」

 朝倉もまた、可奈ほどではないがあまり乗り気ではないというか、
どちらかと言えばきっかけがないという感じだろう。

「・・・サラサと紫陽花はどうだ?」

 朝倉に聞いてもおそらく平行線をたどる気がした可奈は、そのまま静観を
決め込んでいた二人に向き直る。

「んー・・・私は別に出てもいいよ?
可奈にカーミラもいるんでしょ。それなら、こっちも安全だし。
何よりさ、私自分以外の人外って、実はカーミラ以外は初めてなんだよね。
だからほかの人外にもあってみたいなぁって」

 そんなことを言ってからからと笑うサラサ。何とも気楽に構えている。
そんなことを朝倉とともに思いながら、雷華を顧みる。

「・・・わ、私としては・・・ちょっとだけ、興味はあるけど・・・
やっぱり、あぶないところにはあんまりいきたくない、かなぁ」

 結論、安全性が確保されているなら行きたい。ということだろう。
こうなってくると話は平行線のままだ。可奈はそう思ってどっちにするかの
きっかけを求めるように目を泳がせた。

「・・・ねえ、可奈?いっそのことデュエルで決着したら?」

「・・・」

 全員が、サラサをはっとした表情で顧みた。

「・・・そう、だな。まかりなりにも、私もデュエリストだったな。
この状況のことを思うと、本格的にそっちのことを忘れていた」

 あなたバカじゃないの、と言いたげな朝倉。もちろん、自分も忘れてた
ことは棚上げだ。

「・・・まぁ、そちらの方のデュエルは拝見していましたが
ほかの方のデュエルは見たことはありませんからね。いい機会です」

 ルルがそういって、可奈の部屋にある机にデッキをトン、と置く。
どうやら、自身が相手をするということらしい。

「わたくしが直に相手をしましょう。
ゲームルールは通常のデュエル、魔力妖力霊力など、その他力の使用禁止。
わたくしの勝利が確定した場合、わたくしのチームとして大会に参加
していただきます。わたくしが負けた場合、わたくしは別のメンバーを
探し、あなた方には干渉はしません」

「一応、大会中の身の安全や衣食住の確保についても付け加えておいてくれ」

「承知しましたわ」

 ルルが可奈の言葉を聞いてうなずいた。それを受けて可奈が立ち上がり、
デュエルディスクを手に取る。窓を開けて中庭に出ると、そこでディスクを起動する。

「相手は私がする。朝倉に半ば強制的にデュエルの相手を奪われたからな。
どうせだから私がやらせてもらう」

「・・・ま、順当なところね」

 可奈の言葉に朝倉がそういった。あの手のデュエルがこりごりなのだろう。

「では、始めましょうか」

 同じく、庭に降りてきたルルがディスクをまえる。
彼女のディスクはリリカの大鎌型とは異なり、鎖鎌の柄を鎖で腕に絡め、
その絡めた部分がデッキスペースとライフカウンター、墓地を形成し、
鎌の刃の部分がカードゾーンに変化している。

「「デュエル」
メンテ
Re: 駒学園の追走st2 ( No.10 )
日時: 2014/05/24 12:39
名前: さくら

9章

1ターン目
 先行1ターン目のランプがついたのはルル。
デッキから5枚。さらに手札を1枚引いてほかのカードと見比べる。

「わたくしは手札からフィールド魔法、
ヴワル魔法図書館を発動しますわ」

ヴワル魔法図書館
フィールド魔法
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカードのコントローラーが
魔法使い族モンスターの召喚、反転召喚、特殊召喚に成功するたびに、このカードに魔力カウンターを1つ置く。
このカードに乗っている魔力カウンターを3つ取り除く事で、自分のデッキから魔法カードを1枚手札に加えることができる。
また、フィールド上に存在する悪魔族モンスターが相手によって破壊され、墓地に送られた時、破壊されたモンスターの
レベル以下の悪魔族モンスターをデッキから特殊召喚することができる。
このカードは、カードの効果によって1ターンに1度破壊されない。

 可奈たちが向かい合っていた庭先が、彼女のフィールド魔法によって
その姿を大図書館に変える。

「さらに、手札から王立魔法図書館を攻撃表示で召喚しますわ」

 その図書館のなかに、小さな球体によって浮遊する足場が現れる。

王立魔法図書館
☆4 光
攻   0
守2000
魔法使い族効果:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分または相手が魔法カードを発動する度に、
このカードに魔力カウンターを1つ置く(最大3つまで)。
このカードに乗っている魔力カウンターを3つ取り除く事で、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

「・・・魔法使い族デッキ?
でも、魔力カウンターを中心にするなら、普通エンディミオンだよね」

「・・・王立魔法図書館をいれるなら、魔法カードも相応のはず。
となると、デッキ構成的には後ろの効果、悪魔族のカードも多数入って
いると考えていいわね」

 朝倉がそうつぶやいて考えるしぐさを見せる。
可奈も、同じようなことを考えていた。

「魔法使い族モンスターが召喚に成功した時、ヴワル魔法図書館に
魔力カウンターが一つ乗ります」

ヴワル魔法図書館カウンター:0→1

「そして手札から、グリモの魔導書を発動」

「・・・魔導書だと?」

グリモの魔導書
魔法
デッキから「グリモの魔導書」以外の「魔導書」と名のついたカード1枚を手札に加える。
「グリモの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

王立魔法図書館カウンター:0→1

「デッキから手札に加えるのは・・・レメゲトンの魔導書。
更に発動」

ルルLP8000−500=7500

レメゲトンの魔導書
永続魔法
発動時にライフを500ポイント払う。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカードのコントローラーは悪魔族モンスターを
生贄召喚する場合、その数を1体少なくすることができる。
また、自分フィールド上の魔法使い族モンスターは1ターンに1度だけ戦闘によって破壊されない。

王立魔法図書館魔力カウンター:1→2

「・・・悪魔族と魔法使い族の戦闘態勢や生贄軽減の
カード・・・じゃぁ、あーちゃんが言ってたみたいに、混成デッキなのかな」

 雷華が言った。

「フィールドのほうは悪魔族モンスターをサーチする効果があったな。
まるで伏魔殿とエンディミオンを複合したようなカードだ」

 可奈はそうつぶやくようにして、相手のフィールド魔法をかんがみる。
魔法使い族モンスターは少なからずだが、自分のデッキにもある。
相手に比べれば少ないだろうが、壁としては使えるだろうし、悪魔族の
モンスターも割合的にはそこそこだ。活用させてもらうとしよう。

「わたくしはカードを2枚伏せて、ターンエンドですわ」

ルル手札残:1枚

2ターン目
「私のターン、ドロー」

 さてと手札を顧みて思う。
手札断札とゾンビ・キャリアのカード、さらにゾンビ・マスターが手札に
見える。

(・・・手札断札で、ゾンビ・キャリアを墓地へ送り、
ゾンビ・マスターの効果で、シムルグを捨ててキャリアを特殊召喚、
シンクロによって魔王ハ・デスに、そしてキャリアを効果で蘇生後
ダークエンドに繋ぐ・・・それによって、攻撃力は落ちるがレメゲトン
に影響されることなく魔法図書館を除去してダークエンドの攻撃で
ダイレクトダメージを叩き込める。・・・だが)

 相手の手札は1枚。発動に相手の手札をもコストとして数える
手札断札は使えない。それに、伏せカードの2枚も気がかりだ。

(ディメンション・マジックだった場合、ダークエンドの効果に対して
発動、ダークエンドを除去されたうえに上級魔法使い族モンスターを
置かれてはたまらったものじゃない・・・慎重に行かせてもらおう)

 可奈はそう考えると、そのまま手札の1枚を場においた。

「冥界の使者を、攻撃表示で召喚」

 現れたのは大鎌を手にした死神。その死神は、
目深に被ったフードの奥から、ルルの場を、じっと見つめている。

冥界の使者
☆4 闇
攻1600
守 600
悪魔族効果:このカードがフィールド上から墓地に送られた時、
お互いに自分のデッキからレベル3以下の通常モンスター1体を選択し、
お互いに確認して手札に加える。その後デッキをシャッフルする。

「・・・冥界の使者なら、悪魔族だから相手のフィールドを逆手に取りつつ、
手札にダーク・バットを呼べるね。ディメンション・マジックのアド損も
少しは軽減できる・・・かな?」

 雷華がそう朝倉に言った。朝倉はそれに小さくうなずくが、どこか
不安げである。

『悪魔族自体は割とメジャーな種族だからね、フィールド魔法を利用される
だろうということは相手もわかっているはず。それに対応した伏せカードも、
ある程度は用意されていると考えるべきだわ』

 それを聞いたカーミラの言葉。それと同時に可奈が動く。

「冥界の使者で、王立魔法図書館を攻撃!」

 振り上げられた大鎌が、図書館を支える足場に迫る。
瞬間、ルルの場のカードが翻る。

「リバースカード、フラウソロスの鉄壁を発動しますわ!」

フラウソロスの鉄壁
速攻魔法
魔法使い族モンスターが、戦闘、またはカードの効果の対象に
なった時に発動することができる。戦闘、またはカードの効果を無効にし、
お互いのプレイヤーはデッキからカードを1枚ドローする。
王立魔法図書館魔力カウンター:2→3

 王立魔法図書館の前に現れた豹の上半身の獣人。
その獣人の吐いた地獄の炎が、冥界の使者を押し戻して攻撃を打ち消した。

「このカードは、魔法使い族モンスターが戦闘、またはカードの効果の
対象になった時に、それを無効にし、お互いにデッキからカードを引くことが
できるカードですわ」

 そのあとで、お互いにカードを1枚引く。新たにひいた1枚を加えて、
可奈は手札の1枚を発動する。

可奈手札残:5+1=6
ルル手札残:1+1=2

「速攻魔法、手札断札を発動!互いのプレイヤーは、
手札を2枚捨てて、2枚ドローする!」

手札断殺
速攻魔法
お互いのプレイヤーは手札を二枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。

可奈手札残:5−2+2=5
ルル手札残:2−2+2=2

「私は手札から、死者の書を発動!」

 可奈の手元に現れた巨大な石板。
その石板に指を這わせた可奈。瞬間、可奈のはわせた指に沿うように
石板に掘られた文字が輝き、真紅の光を放ちながら一つの形になる。
 それは、愚者の宝冠を頭に構えた巨大な黒鳥だった・・・。

「死者の書は、手札からモンスター2体選択してをゲームから除外することで
墓地から、除外したモンスター2体のレベルの合計と同じレベルのモンスター
1体を特殊召喚する。・・・私が手札から除外したのは、音速ダックと
終末の騎士!レベル合計は7、よってダーク・シムルグを特殊召喚した!!」

可奈手札残:4−2=2

ダーク・シムルグ
☆7 闇
攻2700
守1000
鳥獣族効果:このカードの属性は「風」としても扱う。
自分の墓地の闇属性モンスター1体と風属性モンスター1体をゲームから除外する事で、
このカードを手札から特殊召喚する。
手札の闇属性モンスター1体と風属性モンスター1体をゲームから除外する事で、
このカードを自分の墓地から特殊召喚する。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、相手は
フィールド上にカードをセットする事ができない。

『出たわね、ダーク・シムルグ。相手のデッキにとっての
相性は最悪とはいいがたいかしら?』

 ダーク・シムルグを見たカーミラが呟いた。
相手はカードをセットできないが、発動はできる。速攻魔法など、
手札から直接発動できるカードのことを考えれば、決して完全に
相手を抑え込んだ状態とはいいがたい。が、それでも相当に動きにくいはずだ。

「私はさらにカードを2枚伏せ」

 可奈の場に新たに2枚のセットカードが現れる。
それを見たルルがすっと1枚のカードを発動する。

「・・・砂塵の大竜巻を使いますわ。
貴方の場の伏せカード1枚を破壊します」

 吹き荒れた突風が鋭い刃となって可奈の場の伏せカードを貫いた!

砂塵の大竜巻

相手フィールド上の魔法・罠カードを1枚破壊する。その後、手札から魔法・罠カードを1枚セットすることができる。

可奈フィールド:伏せカード(和睦の使者)×→墓地

「私はこれでターンエンドだ」

可奈手札残:0枚
ルル手札残:2枚


「・・・ワンターンで手札をすべて使い切ったわね」

 朝倉が呟いた。
ある程度手札を温存する傾向のある彼女にしては珍しい、朝倉はそう思った。
それだけのことをしないと、倒せないほどの相手ということか。

(これは思っていた以上に厳しい戦いになりそうね・・・)

 朝倉はそう思って小さく、歯噛みをして顔をゆがめた。
メンテ
Re: 駒学園の追走st2 ( No.11 )
日時: 2014/05/24 12:40
名前: さくら

10章

3ターン目
「わたくしのターン、ドロー」

「リバースカード、魔封じの芳香を発動!」

 可奈の場に表側になったカード、その前に現れた
物々しい形相の香炉。・・・その香炉から放たれる香りが魔法を封じる。

魔封じの芳香
永続罠
このカードがフィールド上にある限り、魔法カードは一度フィールドにセットし、
次の自分のターンが来るまで使用できない。

「・・・そちらがそうでしたか」

 それを顧みてルルが低く唸る・・・。どうやら、先ほどの砂塵の大竜巻は、
このカードを狙ってのものだったらしい。

「・・・そういえば言ってたわね、因果を超えてデュエルを見てきた、って」

 朝倉が呟いた。予め、こちらのカードに対する
対策を練ってきていたということだろう。何とも周到なことだ。
そう思いながらカーミラが言った。

『だとしても、発動してしまえば何も問題ない。
このまま一気に押し勝てるわ』

「王立魔法図書館の効果を発動、魔力カウンターを3つ取り除き、
デッキからカードを1枚ドローしますわ」

王立魔法図書館魔力カウンター:3→0
ルル手札残:3+1=4

「・・・確かに、砂塵の大竜巻は外しましたが
それもまた、一つの可能性。ここはもう一つ別の手を
行使するまで。わたくしは手札から、召喚僧−サモン・プリーストを
攻撃表示で召喚いたしますわ!」

 ルルの場に現れた目深にフードをかぶった、道士の姿をした
魔術師。その魔術師は、ローブの袖に腕を隠し、胡坐をかいて
腰を下ろした。

召喚僧サモン・プリースト
☆4 闇
攻 800
守1600
魔法使い族効果:このカードはリリースできない。
このカードは召喚・反転召喚に成功した時、守備表示になる。
1ターンに1度、手札の魔法カードを1枚捨てることでデッキからレベル4モンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはそのターン攻撃することが出来ない。

「このモンスターは召喚成功時、守備表示になります。
召喚成功時、魔力カウンターをヴワル魔法図書館に載せます」

ヴワル魔法図書館カウンター:1→2

「そして、手札の抹殺の使途を墓地へ送り、
サモン・プリーストの効果を発動します!」

 ルルの手札1枚の魔力を糧にサモン・プリーストが魔方陣を描く。
その魔方陣から現れたのは炎を纏う炎獄の魔術師。

「デッキから、フレムベル・マジカルを特殊召喚!」

フレムベル・マジカル
☆4 炎
攻1400
守 200
魔法使い族チューナー・効果:自分フィールド上に「A・O・J」と名のついたモンスターが存在する限り、
このカードの攻撃力は400ポイントアップする。

「さらに、ヴワル魔法図書館にカウンターが1つ乗りますわ」

ヴワル魔法図書館カウンター:2→3

 魔力が集まり、その三つがルルのもとに集まる。

「ヴワル魔法図書館の効果を発動。
このカードに乗った魔力カウンターを取り除き、
デッキから魔法カードを1枚手札にくわえます。
わたくしが選ぶカードは地獄の暴走召喚」

ルル手札残:2+1=3

「そして、フレムベル・マジカルと召喚僧サモン・プリーストで
シンクロ召喚を行います!」

 サモン・プリーストの姿が半透明になり、中に星の光が見える。
その隣にいたフレムベル・マジカルの姿が4つの輪となり、その中に
サモン・プリーストが入る。

「煉獄の闇より生まれし悪魔よ、幻視の恍惚と契約によりいでよ」

 現れたのはシルクハットに黒の外套を羽織った長くとがった耳と
長い鼻を持つ悪魔だった。

「シンクロ召喚、光を忌み嫌いし悪魔、ブラッド・メフィスト!!」

ブラッド・メフィスト
☆8 闇
攻2800
守1300
悪魔族シンクロ・効果:チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
相手のスタンバイフェイズ時、相手フィールド上に存在するカード1枚につき相手ライフに300ポイントダメージを与える事ができる。
また、相手が魔法・罠カードをセットした時、相手ライフに300ポイントダメージを与える。

「ブラッド・メフィストでダーク・シムルグを攻撃!
カースド・ブラッド」

 放たれた漆黒が衝撃波となり、その一撃がダーク・シムルグを薙ぎ払う。

ダーク・シムルグ  攻2700×→墓地
ブラッド・メフィスト攻2800○
可奈LP8000−100=7900

「・・・っぐ」

「わたくしは手札3枚をセットし、王立魔法図書館を守備表示に変更して
ターンエンドですわ」

ルル手札残:0枚

 ルルの場に三枚の伏せカードが現れる。瞬間、地鳴りとともに
可奈の足元から巨大な石板が現れた。

「この瞬間、私は墓地から死者の書の効果を発動する!
このカードの効果によって特殊召喚したモンスターが戦闘、または相手のカードの
効果によって破壊され、墓地へ送られた時、このカードをゲームから除外し、
モンスターの特殊召喚時に手札から除外したモンスターを手札に戻すことで、
破壊されたモンスターを攻撃力を300ポイントアップさせて特殊召喚する!!」

死者の書
魔法
手札のモンスターカードを2枚選択してゲームから除外する。
その後、このカードのコントローラーの墓地から、モンスターカードを
1枚選択して特殊召喚する。
また、このカードの効果によって特殊召喚したモンスターが戦闘、
または相手のカードの効果によって破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時、
このカードをゲームから除外し、モンスターの特殊召喚時に手札から除外したモンスター2枚を手札に戻すことで、
破壊されたモンスターを攻撃力を300ポイントアップして特殊召喚することができる。
このカードの効果によって特殊召喚するモンスターは、この効果で手札から
除外したモンスター2体のレベルの合計と同じでなければならない。

「除外ゾーンの音速ダックと週末の騎士を手札に加えて、
墓地からダーク・シムルグを特殊召喚する!」

 再び舞い上がった漆黒の風があたりを薙ぎ払い、
その風がやむと同時に、どす黒い巨大な鳥が現れる。

ダーク・シムルグ攻2700+300=3000
可奈手札残:0+2=2

4ターン目
「私のターン、ドロー!」

 ドローカードを顧みる。手札にある2枚のモンスターカード。
その2枚とのかみ合わせは微妙の一言。さらに・・・。

「ブラッド・メフィストの効果を発動します!
貴方の場のカード1枚につき、300ポイントのダメージを
受けていただきますわ」

可奈LP7900−300×2=7300

 ブラッド・メフィストの杖から放たれた黒い刃が可奈の体を
たたきつける。今のところ、受けるダメージは大したことはないが、
魔封じの芳香により、カードセットを余儀なくされるこのデッキにとって、
あのカードは最悪のカードという訳だ。
 だが、うかつに破壊すれば魔法図書館の効果によって、同レベルの
最上級の悪魔族モンスターの特殊召喚を許してしまう。
そう、破壊してしまえば、だ。

「ダーク・シムルグでブラッド・メフィストを攻撃!」

 可奈の言葉とともに飛び立った怪鳥が巨大な爪で悪魔を襲う。
悪魔は強大な魔力でそれを撃ち落そうと試みるが、その鳥の怪物は
何事もないかのように降下して悪魔の頭を踏みつぶした。

ダーク・シムルグ攻3000
ブラッド・メフィスト攻2800×→墓地
ルルLP8000−200=7800

「・・・フィールド魔法の効果は破壊された時、ダメステを
はさむ戦闘破壊なら、効果は発動しない」

 朝倉がそうつぶやく。
可奈はそれを聞きながら手札にある1枚をフィールドに出す。

「冥界の使者を守備表示にしてカードを1枚伏せて、ターンエンドだ」
可奈手札残:2枚

5ターン目
「わたくしのターン、ドロー。メインフェイズに伏せカード、
マモンの秘宝を発動します」

マモンの秘宝
魔法
自分の場に「レメゲトンの魔導書」が存在しない場合発動することはできない。
デッキからカードを3枚ドローする。その後、このカードをゲームから除外する。
このカードはデュエル中に1度しか使用することはできない。

「マモンの秘宝の効果により、デッキからカードを3枚ドロー、
更にその後、このカードをゲームから除外します」

ルル手札残:1+3=4枚
王立魔法図書館魔力カウンター:0→1

「さらにわたくしは王立魔法図書館を生贄に捧げ」

 王立魔法図書館の姿が消えると、そこに安楽椅子に腰かけた、
ストールに月の飾りのついたナイトキャップをかぶった紫色の
長い髪の魔女が現れた。

「紅魔の頭脳―パチュリー・ノーレッジを召喚しますわ!」


紅魔の頭脳−パチュリー・ノーレッジ
☆5 光
攻2300
守1200
魔法使い族効果:このカードの属性は地・水・火・風・闇属性としても扱う。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分または相手が魔法カードを発動する度に、
このカードに魔力カウンターを1つ置く。このカードに乗っている魔力カウンターを任意の枚数取り除くことで以下の効果をえる。
●カウンターを三つ取り除くことで、デッキから魔法カードを1枚手札に加える。
●カウンターを四つ取り除くことで、相手のフィールド上に存在する魔法・罠カードを1枚破壊する。
●カウンターを五つ取り除くことで、フィールド上に存在するモンスターカードを1枚選択して破壊する。
また、このカードが生贄召喚に成功した時、デッキから「紅魔の司書−小悪魔」を1体選択して特殊召喚することができる。
ヴワル魔法図書館カウンター:0→1

「そして、このカードの召喚に成功した時、デッキから
紅魔の司書―小悪魔を1体選択して特殊召喚します」

 パチュリーの指先に宿った魔力が描き出した魔方陣から現れた、
白いブラウスと赤いネクタイ、ロングスカート姿のショートカットの悪魔。
さほど魔力は強くないらしい彼女の手には、一冊の本が抱えられていた。

「このカードは、召喚、特殊召喚に成功した時デッキから通常魔法カードを
1枚選択して手札に加えることができます」

紅魔の司書−小悪魔
☆3 闇
攻 900
守 900
悪魔族効果:このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから通常魔法カードを1枚手札に加える事が出来る
(この効果で手札に加えたカードは、このターン効果を発動することはできない)。

「さらにその効果にチェーンして地獄の暴走召喚を発動しますわ!」

「なっ・・・あの伏せカード、全部魔法カードだったのか!?」

地獄の暴走召喚
速攻魔法
相手フィールド上に表側表示モンスターが存在し、自分フィールド上に攻撃力1500以下のモンスター1体の特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。
その特殊召喚したモンスターと同名カードを自分の手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する。
相手は相手フィールド上のモンスター1体を選択し、そのモンスターと同名カードを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する。

 ルルの発動したカードに従い、彼女の場に新たにセミロングくらいの髪の長さの
小悪魔と、ロングヘアの小悪魔が現れる。二人もまた、先に現れた
ショートの小悪魔と同様、ルルにカードを手渡した。

「わたくしは小悪魔2体を特殊召喚しますわ。さあ、あなたも」

「・・・デッキにダーク・シムルグはこれ1枚のみだ」

「では、小悪魔3体の効果により、デッキから通常魔法カード
封印の黄金櫃、フェニックスの炎、レラジェの矢の3枚を手札にくわえます」

ルル手札残:3+3=6

「そして、小悪魔3体でオーバーレイ」

 小悪魔さん態の姿が重なり、その姿が方陣の中に消える。
そしてその奥から、暗黒の瘴気をまとって現れた、1体の悪魔・・・。

「エクシーズ召喚、現れよ、CNo.65!
数多の怨念をまといし裁きの魔王、裁断魔王ジャッジ・デビル!」

CNo.65裁断魔王ジャッジ・デビル
ランク3 闇
攻1600
守   0
悪魔族エクシーズ・効果:闇属性レベル3モンスター×3
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターの攻撃力・守備力を1000ポイントダウンする。
また、このカードが「No.65 裁断魔人ジャッジ・バスター」をエクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。
●このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手フィールド上の効果モンスターは効果を発動できない。

「裁断魔王の効果発動!
このカードのエクシーズ素材を一つ取り除き選択したモンスター1体の
攻撃力、守備力を1000ポイントダウンさせます!」

 ルルが宣言した瞬間、ユニットの一つが魔王の持つ大鎌に宿り
その一閃が死者の書によってよみがえった怪鳥をたたき切った!

CNo.65裁断魔王ジャッジ・デビル素材:3→2
ダーク・シムルグ攻3000−1000=2000
        守1000−1000=   0

「パチュリーでダーク・シムルグを攻撃しますわ!」

 ルルの言葉とともに、紫色の魔女が掲げた手にまとわりついた炎。
その炎が巨大な下級となって放たれ、黒い鳥を襲う。

「罠発動!ガードブロック!」

ガードブロック

相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動することができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、自分のデッキから
カードを1枚ドローする。

「この戦闘によって発生するダメージを零にし、
デッキからカードを1枚ドローする!」

ダーク・シムルグ攻2000×→墓地
紅魔の頭脳―パチュリー・ノーレッジ攻2300○
可奈手札残:2+1=3枚

「ジャッジ・デビルで冥界の使者を攻撃!」

 振り上げられた大鎌の切っ先が、冥界の使者の持つ大鎌と
真正面から打ち合って火花を散らすが、上からかかる力が強かった
ためか、瞬く間に冥界の使者の大鎌は断ち切られ、そのまま
その本体までも切り裂いた。

CNo.65裁断魔王ジャッジ・デビル攻1600○
冥界の使者守 600×→墓地

「冥界の使者の効果発動!デッキからレベル3以下の通常モンスター
1体を選択して手札に加える!私はデッキから、ダーク・バットを手札に!」

可奈手札残:3+1=4枚

「わたくしのデッキに通常モンスターは入っておりません、
ご確認ください」

 そういってデッキを広げて見せるルル。それに、可奈がうなずくと、
では、と一言おいてから彼女は手札を3枚伏せる。

「わたくしはカードを3枚伏せ、さらにジャッジデビルを素材とし、
ダウナード・マジシャンを特殊召喚しますわ!」

ダウナード・マジシャン
ランク4 闇
攻2100
守 200
魔法使い族エクシーズ・効果:魔法使い族レベル4モンスター×2
このカードは自分のランク3以下のエクシーズモンスターの上に
このカードを重ねてエクシーズ召喚する事もできる。
この方法によるエクシーズ召喚は自分のメインフェイズ2にしかできない。
このカードの攻撃力は、このカードのエクシーズ素材の数×200ポイントアップする。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
このカードが戦闘を行ったダメージ計算後、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く。
ヴワル魔法図書館カウンター:1→2

 ルルの場に現れた少しごついゴーグルを頭に乗せたくせっけの魔術師。
どこかだらしなく下着姿に近い恰好でフラスコを前に不気味な笑みを浮かべている。

「このカードは、ランク3のエクシーズモンスターを素材として
エクシーズ召喚を行うことが可能なモンスター。そしてその攻撃力は、
素材にしたエクシーズ素材の数によって200ポイントアップします」

ダウナード・マジシャン攻2100+200×3=2700

「わたくしはこれでターンを終了しますわ」
ルル手札残:3枚


 新たにラわれたモンスターを目にして、可奈は静かに歯噛みをした。
ブラッド・メフィストを倒したと思った次の瞬間には、すでに
その攻撃力に肉薄するようなモンスターが立ちふさがっている。

「めっちゃクチャなデッキね、あの女・・・というか、普通じゃないわあれ」

 朝倉がそういいながらルルを顧みる。あんたのデッキも大概でしょうが。
と、カーミラは思う。

『いずれにしても、あのデッキに匹敵するだけの攻撃手段、そして
手数を持たないと本来のあいつらのデッキには勝てないということよ。
可奈がここからどうするのか、見ものではあるけれどもね』

 見ものではあるが、勝てるかどうかという点では微妙なところか。
少なくとも、攻撃力という点で考えれば、だが・・・カーミラはそう思って
静に口元をゆがめていた。
メンテ
Re: 駒学園の追走st2 ( No.12 )
日時: 2014/05/24 12:40
名前: さくら

11章

6ターン目

「私のターン、ドロー」

 カードを引いた可奈。手札は先程と違ってある程度潤沢な
札がそろっている。ダーク・シムルグを特殊召喚するのにも、十分な
素材がそろっているのだが・・・。

(レメゲトンの魔導書・・・あれが非常に厄介だ。
シムルグを呼んだとしても、ダメージが400ポイント通るだけ。
破壊できない以上、次のターンにダウナード・マジシャンとの戦闘で
一方的に破壊される。・・・おまけに、レベル6以下の悪魔族モンスターを
問答無用で通常召喚できる効果も、面倒だ)

 フィールド魔法との兼ね合いで、悪魔族モンスターは効果破壊をするごとに
湧き出てくるというのも厄介極まりない。

「さすがの可奈も攻めあぐねてる感じだね」

「・・・あぐねる?どころか、もうすでに風前の灯火に近いわ」

 サラサの言葉を聞いて、朝倉が吐き捨てるように言った。
それを聞いて、言い過ぎだよと言いたげな雷華だったが・・・。

(・・・現状、確かいそうかな?
あのフィールド魔法、除去耐性までついてる始末だから、
きっと簡単には除去できない。
ブラック・ローズ・ドラゴンで吹き飛ばすのも手だけど、
それだとフィールド魔法だけが残って、1時しのぎになるかも怪しいかな?)

『・・・A・O・Jも一つの選択肢かも知れないが、
このままではらちが明かない。それに、2体とも闇属性を内蔵している以上、あの2体の効果は期待できない。現時点では手詰まりもいいところね』

 カーミラがそういって口元に人差し指を這わせて考えるしぐさ。
可奈はそれをはたから聞きながら、言いたい放題言いおって、と思いつつも、
それに対してはうなずくしかなかった。

「・・・モンスター1体を守備表示、
さらにカードを1枚セットして、ターンを終了する」

 可奈の場に浮かび上がった2枚のカード。
その2枚のカードを顧みる可奈の目には、まだ確かな戦意が残っていた。

可奈手札残:2枚

7ターン目

「わたくしのターン、ドローです。
・・・わたくしは手札から、ペイモンを、攻撃表示で召喚しますわ」

 ルルの場に現れた炎の鬣をまとったラクダ。その背にまたがる
長い髪の女性。銀の宝冠を頭にかぶり、灼熱の鬣を持つ駱駝を駆る悪魔だった。

「このカードは、召喚成功時、場に魔法使い族の
ラバム、アリバムトークンを攻撃表示で特殊召喚します」

ペイモン
☆5 炎
攻2000
守1400
悪魔族効果:このカードは自分の場に「レメゲトンの魔導書」が存在しない場合、召喚・反転召喚・特殊召喚できない。
このカードの召喚に成功した時自分の場に「ラバムトークン」と「アリバムトークン」を1体ずつ特殊召喚する
(☆4 闇 攻1800/守100 魔法使い族)。
このカードが特殊召喚に成功した時、自分のデッキからカードを1枚選んで手札に加えることができる。
また、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカードのコントローラーが受ける効果ダメージは相手が受ける。

「魔法使い族モンスターが特殊召喚に成功したため、
ヴワル魔法図書館に魔力カウンターを一つ載せます」

ヴワル魔法図書館カウンター:2→3

「さらに、カウンターを取り除き、デッキから魔法カードを1枚手札にくわえますわ。
わたくしが加えるカードは、光術の錬金術書」

ルル手札残:3+1=4

「フィールドが、完全に制圧された・・・」

 ルルの場に立ち並ぶ5体のモンスター。可奈の場には守備表示モンスターが1体のみ。
現時点で、突破を許してしまえば、均衡を保つライフが大きく削られることとなる。

「さぁ、参りましょう。
ダウナード・マジシャンで守備表示モンスターを攻撃いたします!」

 ダウナード・マジシャンのかざした魔法瓶、その瓶の中で
弾けた魔法が守備表示モンスターを襲う。・・・瞬間、可奈の場のカードが
翻り、聖なる結界が攻撃を跳ね返す。

「―――聖なるバリア・ミラー・フォース!
このカードの前では、あらゆる攻撃は無効化される!」

 結界が跳ね返した攻撃は、一瞬でルルの場のモンスターを飲み込み、
その奔流が、ルルのモンスターゾーンを更地に変える・・・。

ルルフィールド
ダウナード・マジシャン×→墓地
紅魔の頭脳‐パチュリー・ノーレッジ×→墓地
ペイモン×→墓地
ラバムトークン×
アリバムトークン×

「・・・速攻魔法、ユダヤ人マリアの錬金術書を発動」

 ルルのフィールドに現れた一冊の術書。
それを、彼女が手に取り開いた。

ユダヤ人マリアの錬金術書
速攻魔法
自分フィールド上の魔法使い族モンスターが戦闘、またはカードの効果によって破壊された時、
デッキからレベル8以上の魔法使い族モンスターと、魔法カードを1枚ずつ選択して手札に加える。その後、デッキをシャッフルする。

「この効果により、デッキから
闇錬金導師縷々と、混沌への手引書を手札にくわえます」

 ルルの見せた2枚のカード。効果モンスターと速攻魔法のようだが。

(・・・なんだ?聞いたこともないようなカードがさっきからちらほらと)

 可奈は相手の手札に加えるカードに怪訝な顔をする。が、
デュエルディスクの反応が正常であるということは、コピーや
データベース上に存在しないダミーではないということだろう。

「わたくしは、墓地の悪魔族モンスターと魔法使い族モンスター5体までと
魔法カードを4枚選択してゲームから除外します」

「「!」」

 全員が聞いたことのないような召喚方法。
その言葉とともに現れた、黒いフードを目深に被った、白銀の長い髪の
女性。

「闇錬金導師縷々を、攻撃表示で特殊召喚いたします」

ルル墓地
紅魔の頭脳‐パチュリー・ノーレッジ→除外
ブラッド・メフィスト→除外
ペイモン→除外
召喚僧―サモン・プリースト→除外
フレムベル・マジカル→除外
抹殺の使途→除外
グリモの魔導書→除外
光の護封剣→除外
フラウソロスの鉄壁→除外

闇錬金導師縷々
☆8 闇
攻????
守2000
魔法使い族効果:このカードは魔法カードの効果を受けない。このカードは通常召喚できない。
墓地に存在する魔法使い族または悪魔族モンスター5体と魔法カード4枚をゲームから除外する事で特殊召喚する事が出来る。
このカードの攻撃力は特殊召喚時に除外されたモンスターのレベルの合計×500ポイントとなる。
このカードを特殊召喚するときにゲームから除外された魔法カードの効果を1ターンに1度手札を1枚墓地へ送る事で発動する事が出来る。
この効果によって発動した魔法カードは時墓地へ送られる。
この効果によって、速攻魔法を選択した場合、相手のターンにも使用することができる。

「そして、このカードの攻撃力は
特殊召喚時にゲームから除外したカードのレベル一つにつき500ポイントアップします。よって」

闇錬金導師縷々攻26×500=13000
ヴワル魔法図書館カウンター:0→1

「魔法耐性持ちの・・・攻撃力1万越えのモンスターですって!?
インチキ効果もたいがいにしないさいよ!?」

 朝倉がそれを見てそう声を荒げるが、その割に周りに視線は微妙に冷たい。

「お前が言うな」

「そうだね、朝倉さんは人の事言えないね」

『まったくだわ、唯一神直径第一使徒も似たようなもんじゃない』

「カーミラもだけどね」

『えっ?』

(薔薇殺しのカーミラも似たようなものってことだよね・・・)

 キョトンとするカーミラに、雷華は心中でそうつぶやいた。

「このカードの効果はまだ続きます。わたくしは手札を1枚墓地へ送り、
闇錬金導師縷々の効果を発動」

 ルルの捨てた手札1枚を媒体にして、闇の錬金術が行われる。
そして、その術式によって完成した力によって、可奈の場の守備表示モンスター、
終末の騎士が破壊され、除外される。

「このカードは手札を1枚をコストに、
このカードを特殊召喚した時に除外した魔法カードを1枚選択して、
そのカードを墓地へと送ることでその効果を発動することができます。」

 さらに、と一言加えたルルは手札のカードを3枚場に伏せてターンを終了した。

ルル手札残:2枚

8ターン目

「・・・ドロー」

 静かにカードを引き、手札を顧みる。
伏せてあるカードはない。手札には2枚の魔法カード。

「モンスターを守備表示でセット。
さらに、カードを2枚伏せてターンを終了する」

可奈手札残:1枚

9ターン目

「わたくしのターン。・・・手札からグレモリーを、
攻撃表示で召喚しますわ」

グレモリー
☆6 地
攻2300
守1200
悪魔族効果:のカードは自分の場に「レメゲトンの魔導書」が存在しない場合、召喚・反転召喚・特殊召喚できない。
このカードの召喚に成功した時、相手のデッキの上から三枚のカードを
確認し、任意の順番でデッキの一番下に戻す。
また、手札を1枚捨てることでこのカードの攻撃力以下の
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体のコントロールを
エンドフェイズまで得ることができる。

「グレモリーの召喚成功時、相手のデッキの一番上から3枚のカードを確認し、
それを任意の順番でデッキの一番下に送ります」

「・・・」

 デッキトップ3枚をめくり、可奈はそれを扇状に開いて見せる。
出てきたカードはピラミッド・タートル、サイクロン、霞の谷の戦士。

(・・・霞の谷の戦士の効果で、このカードをバウンスされると
厄介ですわね、破壊なら後ろのカードでどうとでもできますが・・・)

 バウンスには対応していない。ルルはそう思いながら言った。

「わたくしから見て左側が一番下になるように重ねて、デッキボトムへ」

 可奈がルルの言ったとおりに並べ替えてデッキの一番下に置くと、
ルルはでは、と一言断って攻撃を宣言した。

「グレモリーで守備表示モンスターを攻撃しますわ!」

 グレモリーのまたがる駱駝が踏みつぶしたのはピラミッドの甲羅を
背負ったカメだった。甲羅を踏みつぶされて中身が飛び出した亀だったが、
そのカメのちのにおいにつられて、同名のカードが場に現れる。

ピラミッド・タートル守1400×→墓地
グレモリー攻2300○

ピラミッド・タートル
☆4 地
攻1200
守1400
アンデット族効果:このカードが戦闘によって墓地に送られた時、
デッキから守備力2000以下のアンデット族モンスター1体をフィールド上に
特殊召喚する事ができる。その後デッキをシャッフルする。

「コイツの効果で、デッキからピラミッド・タートルを特殊召喚する!」

「闇錬金導師縷々でピラミッド・タートルを攻撃」

 闇錬金導師の持つ杖が翻り、その一撃がピラミッド・タートルを穿つ。
その中から、鈍い音が響いて棺桶が一つ転がり落ちる。

闇錬金導師縷々攻13000○
ピラミッド・タートル守1400×→墓地

「ピラミッド・タートルの効果発動!デッキから、ヴァンパイア‐令裡を特殊召喚する!!」

 可奈の場に現れた、セーラー服の吸血鬼。その吸血鬼は
ふわりと場に舞い降りると、その場で蝙蝠を侍らせて守りの態勢に入った。

ヴァンパイア−令裡
☆5 闇
攻1900
守1500
アンデット族効果:このカードが戦闘、またはカードの効果によって破壊された時、
手札の「ダーク・バット」1枚を墓地へ送る事で、そのターンのエンドフェイズ時にこのカードを特殊召喚することが出来る。
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し、相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、
破壊したモンスターのコントロールを得る。
手札の「ダーク・バット」を墓地に捨てることで、
自分フィールド上のモンスター1体を対象にする破壊効果を無効にする。

「なら、ここでターンを終了いたしますわ」

「エンドフェイズ、伏せカード、異次元からの埋葬を発動させてもらう!」

 可奈の場の磁場が干渉しあって歪み、異次元への扉が開かれる。

異次元からの埋葬
速攻魔法
ゲームから除外されているモンスターカードを3枚まで選択し、そのカードを墓地に戻す。

「私が選ぶカードは、ブラッド・メフィスト、終末の騎士の2枚だ」

可奈除外ゾーン
終末の騎士→墓地

ルル除外ゾーン
ブラッド。メフィスト→墓地

ルル手札残:2枚


「・・・ブラッド・メフィストを墓地へ?」

 可奈の行動に朝倉が一瞬怪訝な顔をした。
闇錬金導師縷々の攻撃力は除外した時点でのカードのレベルの合計、
今更除外ゾーンのカードを動かしたところで意味はないはずだが・・・。

「・・・多分だけど、ブラッド・メフィストじゃないとダメなんじゃないかな?
ほら、こうなった以上、可奈も本気だろうし・・・」

 サラサがそうつぶやいた。それを聞いて、朝倉は思った。
ああ、なるほど、そういうことか。・・・と。
メンテ
Re: 駒学園の追走st2 ( No.13 )
日時: 2014/05/24 12:40
名前: さくら

12章

10ターン目
「私のターン、ドロー!・・・よし、これで・・・リバースカード、
死者蘇生を発動!」

死者蘇生
魔法
相手か自分の墓地にあるモンスター一体を、自分のコントロールでフィールド上に特殊召喚する。

 神の祈りのこもった十字架が、ルルの墓地から地獄の悪魔を引きずり出す。
悪魔は手にした杖を眼前にかざして守りの態勢をとっているようだ。

ルル墓地
ブラッド・メフィスト→フィールド

「そして手札から、ゾンビ・キャリアを攻撃表示で召喚する!」

 ブクブクと膨れ上がった腐った死体が現れ、そのまま
可奈の場に乗ったりと座り込む。やる気があるようには見えないが、
ゾンビにそもそも意志がないのだからそう見えてもしょうがないか。

ゾンビ・キャリア
☆2 闇
攻 400
守 200
アンデット族・チューナー:手札を1枚デッキの一番上に戻して発動する。
墓地に存在するこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果で特殊召喚されたこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。

「レベル2のゾンビキャリアにブラッド・メフィストをわざわざ墓地から蘇生・・・・
なるほど、そうきますか」

 それを見てルルが小さく目を細める。

「私は、レベル8のブラッド・メフィストにレベル2の
ゾンビ・キャリアをチューニング!」

―――495年の時を経て、今こそ漆黒の夜空へと羽ばたけ!
 金髪のくせっけをちょっと変わった帽子で隠した紅いスカートと
白いブラウスを着た、背中に奇形の羽をもつ吸血鬼の少女が舞い降りる・・・。

「シンクロ召喚!現れろ、破壊の悪魔−フランドール・スカーレット!」

破壊の悪魔―フランド−ル・スカーレット
☆10 闇
攻2800
守2500
悪魔族シンクロ・効果:チューナー+チューナー以外の闇属性モンスター1体以上
このカードは「吸血鬼」と名の付くモンスターとしても扱う。
このカードが特殊召喚に成功した時、フィールド上のカードを2枚まで破壊する事が出来る。
1ターンに1度、このカード以外の自分フィールド上のモンスター全てを破壊しその攻撃力の合計を
エンドフェイズまでこのカードの攻撃力とする事が出来る。
このカードがフィールドから離れた時、自分と相手は1000ポイントのダメージを受ける。

「このカードの特殊召喚成功時、フィールド上のカードを2枚まで選択して
破壊することができる!
私が選ぶのはレメゲトンの魔導書、そして伏せカード1枚!」

『キュッとして、ドカーン!』

 おどけたような口調で握り拳を握るフランドール。
瞬間、ルルの場にあった魔術書と伏せカードがバラバラに砕け散った。

レメゲトンの魔導書×→墓地
伏せ×→墓地

「伏せカードの除去を優先するか・・・でも、
攻撃力はまだ全然足りない。魔法カードの効果は初めから
度外視してるとして、あの最後の手札はダーク・バットの
はずでしょ?それで、一体何をすると」

 朝倉がそういった刹那、可奈はまだだ、と言いたげに口元をゆがめて
その手札をデッキトップに差し込む。

「手札を一枚、デッキトップに戻し
ゾンビ・キャリアの効果を発動!墓地から、このカードを特殊召喚する!
さらに、このカードと破壊の悪魔―フランドールスカーレットを
シンクロ素材にする!さらに、このカードは墓地に送られた時
互いのライフを1000ポイント削る!」

可奈LP7300−1000=6300
ルルLP7300−1000=6300

「「「レベル10シンクロをさらにもう一段回だって!?」」」

(・・・これまでの因果で初めて見るカード、ですわね。さて、
どのようなカードが出てくるのか・・・?)

「レベル10の破壊の悪魔―フランドール・スカーレットに、
レベル2ゾンビ・キャリアをチューニング!
破壊の悪魔よ、永遠に幼き赤い月の血族のもとにその姿を昇華せよ!」

 破壊の悪魔の姿が変わる。張り付いていた狂笑は美しく妖艶な微笑へと変わり、
真紅の瞳には、幼さの残る外見にそぐわない蠱惑的な光が宿っていた。

「シンクロ召喚!すべてを薙ぎ払え、The Scarlet Sister −フランドール!!」

The Scarlet Sister −フランドール
☆10 闇
攻3800
守3500
悪魔族シンクロ・効果:闇属性チューナー+破壊の悪魔―フランド−ル・スカーレット
このカードは「破壊の悪魔―フランド−ル・スカーレット」と名のつくカードとしても扱う。
このカードが特殊召喚に成功した時、
フィールド上に存在するカードを3枚まで選択して破壊することができる。
1ターンに1度、自分フィールド上に存在するこのカード以外のカードをすべて破壊し、
そのカードの枚数×800ポイントこのカードの攻撃力をエンドフェイズ時までアップすることができる。
また、このカードと戦闘を行ったモンスターはダメージ計算終了時に破壊される。

「このカードの特殊召喚成功時、フィールド上のカードを3枚まで選んで
破壊することができる!私が選ぶカードは、闇錬金導師縷々と、
その後ろにある残り2枚のリバースカード!」

 フランドールの手にした杖が横なぎに振り回され、そこから放たれた
七色の輝く魔力の弾丸が、闇錬金導師とその後ろの2枚のカードを貫いた!

伏せカード×2→墓地

「この瞬間、墓地の光の錬金術書の効果を発動しますわ!
墓地に存在するこのカードと、破壊された闇錬金導師縷々をゲームから除外し、
デッキ、または手札から光錬金術師縷々を攻撃表示で特殊召喚します!」

「・・・なんだと!?」

 ルルの墓地から除外された錬金術書、その錬金術書に記された
奇術によって闇は光へと生まれ変わる。
現れた錬金術師は、白いローブに銀の長い髪を三つ編みにした少女の
姿を取り、どことなくその姿がルルにダブって見えた。

光の錬金術書→除外
闇連記導師縷々→除外

光錬金導師縷々
☆8 光
攻????
守2500
魔法使い族効果:このカードは通常召喚できない。“光術の錬金術書”の効果でのみ特殊召喚する事が出来る。
このカードは魔法・罠カードの効果を受けない。
このカードの攻撃力は破壊された闇錬金導師縷々と自分除外ゾーンに存在するモンスターの攻撃力の合計となる。
このカードは、1ターンに1度、除外ゾーンにある魔法カードの効果をそのカードをデッキの1番下に戻すことによって
発動する事が出来る。この効果によって、速攻魔法を選択した場合、相手のターンにも使用することができる。

「このカードの攻撃力は、破壊された闇錬金導師縷々の攻撃力に、
除外ゾーンのモンスターの攻撃力の合計となります。
・・・もっとも、モンスターの数が減っていますので、攻撃力は
少々下がってしまっていますが」

光錬金導師縷々攻13000+2300+2000+800+1400=19500
ヴワル魔法図書館カウンター:1→2

「な・・・魔法罠体制で攻撃力二萬近い攻撃力って・・・
なによこのカード!?」

 狼狽する朝倉。そしてこれには可奈も目を大きく見開き、
動揺しているようにも見える。

「このカードを突破するのは、そうそう容易ではないはずですわ。
いかに、そのカードが戦闘を行った相手をダメージ計算後に問答無用で
破壊する効果を持っていようとも、その前にあなたのライフが尽きることになるでしょう?」

「だが、それでもライフを削ることくらいはできる!
フランドールで、グレモリーを攻撃する!」

 フランドールの振りかざした杖、その杖にまとわりついた炎がグレモリーを
横一線にたたき伏せる!

The Scarlet Sister −フランドール攻3800○
グレモリー攻2300×→墓地
ルルLP6300−1500=4800

「・・・私のターンはこれで終了、だ」

可奈手札残:0枚

11ターン目
「わたくしのターン、ドロー。・・・わたくしはこのまま、光錬金導師縷々で
The Scarlet Sister −フランドールを攻撃いたしますわ!」

 ルルの攻撃宣言と同時に、錬金導師の一撃が、フランドールに叩き込まれる!
・・・が、そこに割り込む白髪の鬼武者の姿に、全員が目を見開き、
そして可奈は小さく笑っていた。

「ネクロ・ガードナー・・・!?
いつの間に墓地へ・・・手札断札の効果ね!」

 ふふん、と可奈が鼻で笑う声が聞こえる。

「ネクロ・ガードナーの効果を発動、
このカードをゲームから除外することで、このターン発生するダメージを
一度だけ0にする!」

ネクロ・ガードナー
☆3 闇
攻 600
守1300
戦士族効果:自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動する。
相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。

「ふむ・・・カードを2枚セットして、ターンを終了しますわ」

ルル手札残:1枚

12ターン
「ドロー!・・・フランドールを守備表示に変更して、ターンエンドだ」

可奈手札残:1枚


「・・・ドローカードがダーク・バットである以上、
そうするしかないのが痛いわね・・・」

『でも、手札にダーク・バットがあるということは、
ありとあらゆる破壊から一度だけは確実に身を守れるということよ。
壁モンスターを増やす必要はあるかもしれないけれども、
今はこれでいいと思うわ』

 朝倉の言葉にカーミラがそう答える。
ヴァンパイア‐令裡の効果は、相手に戦闘ダメージを与えた時に、
破壊したモンスターのコントロールを得る効果とあとふたつ、
対象を取るカードの効果を無効にする効果と、
破壊され、墓地へ送られたターン終了時墓地から自身を特殊召喚する
効果。その二つの効果を、手札のダーク・バットを墓地へ送ることで
発動する。
 2体までなら、その効果によって身を守ることもできるということだ。

「フランドールも、戦闘を行った相手モンスターを、
ダメステ終了時に破壊する効果がある。なら、相手はうかつには攻撃
できないはずだよね?」

「・・・うん、相手の切り札が光錬金導師・縷々なら、
効果モンスターの効果は有効だから、きっと、破壊を狙うなら
あのカードか、魔法カード。でも、魔法カードは
魔封じの芳香で1ターンの猶予がある・・・!」

 雷華はそういうが、どこか不安をぬぐえないでいた。
さっきの、墓地から発動してきた魔法カードのこともある。
もし、ほかにもまだ、そんなカードを仕込んでいたら・・・。


13ターン目
「わたくしのターン、ドロー。
・・・正直、12ターンもの間、よくもったと思うべきでしょう。
やはり、あなた方をスカウトして正解だったというべきですわね」

 ルルはそう言って静かに目を閉じると、同時に、場のカードを1枚起こす。

「セットしていたレメゲトンの魔導書を発動しますわ」

 ルルの場に、再び一冊の魔導書が現れる。
ソロモン王が用いたとされる魔導書は、はたして何を語るのか。

「さらに、魔法カード、フェニックスの炎を発動」

フェニックスの炎
魔法
自分の場に「レメゲトンの魔導書」が存在しない場合発動することはできない。
自分の墓地に存在する悪魔族モンスターで場に「レメゲトンの魔導書」が存在しないと
召喚、反転召喚、特殊召喚できない効果を持つモンスター1体を特殊召喚する。

「フェニックスの炎は、墓地に存在するレメゲトンの魔導書が
フィールド上に存在するときのみ召喚、反転召喚、特殊召喚
することができるモンスター1体を特殊召喚することができるカード。
わたくしは、その効果によって」

 墓地に存在するカードで、最も攻撃力の高いカードは
グレモリーの2300か、可奈はそう思う。それ以上の攻撃力はない。
フランドールを破壊するには、もう1ターンを経過させるか、或は
光錬金術師を犠牲にするしかないはずだ。

「・・・そう、グレモリーの攻撃力は2300、確かにそれでは
フランドールを突破することはできないでしょう。
が、わたくしもこれ以上時間を浪費するわけにはいかないのです。
地上にいられる時間にも、一応制限がございますからね。
・・・長話もここまで、墓地より甦れ、アイム!」

「・・・アイムだと!?」

アイム
☆8 闇
攻2800
守2500
悪魔族効果:このカードは自分の場に「レメゲトンの魔導書」が存在しない場合、召喚、反転召喚、特殊召喚できない。
このカードが特殊召喚に成功した時、このカー以外のモンスターカードをすべて破壊する。

 巨大な毒蛇にまたがる青年。その精悍な顔の左右の方には、
猫と蛇の頭が生え、手にした松明が横に薙ぎ払われると同時に、
ルルの場も含めたフィールド上のすべてのモンスターを焼き尽くした。

ヴァンパイア‐令裡×→墓地
The Scarlet Sister −フランドール×→墓地
光錬金術師縷々×→墓地

「そしてわたくしは、墓地から速攻魔法、混沌への手引書を発動」

「・・・やはり、か!!」

 可奈はそれを見て鋭い目つきでルルをにらみ、苦虫を噛み潰したような
顔で歯噛みした。

混沌への手引書
速攻魔法
自分フィールド上の“光錬金導師縷々”が破壊された時のみ発動する事が出来る。破壊された“光錬金導師縷々”をゲームから除外する事で、
デッキ、または手札から、“混沌錬金導師縷々”を特殊召喚する。また、このカードが墓地に存在し、“光錬金導師縷々”が破壊された時、
このカードと“光錬金導師縷々”をゲームから除外する事で、デッキ、または手札から、“混沌錬金導師縷々”を特殊召喚する。

「デッキから、混沌錬金導師縷々を特殊召喚しますわ」

 被っていたフードがはだけ、その下から出てきた顔は、
ルルに瓜二つの女性。しかしその髪は黒く染まり、耳は猫の様相を呈していた。

混沌錬金導師縷々
☆9 闇
攻????
守3000
魔法使い族効果:このカードは通常召喚できない。“混沌への手引書”の効果でのみ特殊召喚する事が出来る。
このカードは魔法・罠・効果モンスターの効果を受けない。
このカードの攻撃力は自分除外ゾーンに存在する“闇錬金導師縷々”と“光錬金導師縷々”のフィールド上に存在していた時点での攻撃力の合計となる。
このカードは、1ターンに1度、デッキ、除外ゾーンにある魔法カードの効果をそのカードを墓地へ送ることによって発動する事が出来る。

「このカードの攻撃力は、フィールド上に表側表示で存在した、
闇錬金導師縷々と光錬金導師縷々の攻撃力の合計、すなわち・・・
19500に13000を合計した数値」

「32500・・・だと!?」

「カードの効果を一切受け付けない、
攻撃力3万越えのモンスターって何よ!?
私のデッキだってここまでインチキカードないわよ!!」

 朝倉が叫ぶのを聞いて、多少はその自覚があったのかと思う4人。

「・・・・さて、続けるとおっしゃるなら、このまま
ダイレクトアタックいたしますが?」

「・・・いや、そのカードを如何こうできるカードは、
私のデッキにはない。サレンダーさせてくれ」

「はい、よろしくてよ」

 可奈の一言とともに、フィールドは消え去り、元の庭先に戻った。
メンテ
Re: 駒学園の追走st2 ( No.14 )
日時: 2014/05/24 12:41
名前: さくら

13章

 デュエルが終了し、かくんと膝から崩れ落ちたかな。
どうやら相当緊張していたらしい、変な汗がどっと出てきて
背中が気持ち悪かった。

「ひ、雛沢さん?」

「さ・・・さすがに、今のは、堪えたな・・・もしこれが、
通常通りの契約をたがえたデュエルだったら、死んでいたかもしれないな」

 そういって、はは・・・と渇き笑いを漏らす。そんな彼女を顧みて、
ルルはにこにこと笑っていった。

「では約束通り、明日の午前6時にこの庭に迎えに来ます。
皆様、それまでにしっかりとデッキを調整しておくように。
最終的に戦うであろう姉たちは、みな先ほどのカードに匹敵するか、
それ以上のカードを持ち合わせております。
参考までに、ではありますが、しのぶ姉様のデッキの最大攻撃力は、
148800、特定の装備魔法以外のカードの効果を受け付けず、
除外ゾーンのモンスターのレベルの合計だけ攻撃可能で貫通効果持ちですわ」

「「「『何っ・・・どういう・・・ことだ・・・!?』」」」

「あ・・・でもたしか、アニメでも攻撃力20万のモンスター出たよね?
・・・だったら、一応、対処可能なんじゃないかな」

 ルルの言葉を聞いて、全員が言葉を失う中で、雷華はそう言って
考えるしぐさ。

「いや、アニメのアレはカード効果受けてたでしょ?
それに、この言い方だと、かつての攻撃力の最大値が14万ってことは、
今の状況だと、それ以上の攻撃力を余裕でぶっぱなせるってことよ。
第一、アニメのアレは2500素材にランクの合計23×1000ポイント、
さらにエクシーズ素材4つ捨てて4倍にした102000の攻撃力に、
相手の手助けがあって攻撃力がさらに2倍になってのことよ?
素の状態でその十萬を軽々と4万ポイントも超えた挙句に、さらに
それだけのモンスターなら少なくとも100回近い攻撃が可能な計算に
なる。つまり、こっちの攻撃モンスターが仮に20萬を超える攻撃力で
殴り掛かっても、そのモンスターを破壊されたら次のターンには
そのまま殴り倒されちゃう、ってことよ?・・・かーちゃん、理解できた?」

 最後の猫なで声までの間を、説明口調で一気にまくし立てる朝倉。
心なしか、息切れをしている彼女の姿を見て、雷華はコクコクとうなずいた。

『・・・まぁ、アニメはアニメ、よ。
どこぞの退魔師が負けちゃったせいで、最終的にはそんなの相手にデュエルしなくちゃ
いけないってことだけは確かよ。・・・もっとも、私たちのデッキパワーで
単純に勝てるとは思えないけどね』

 厭味ったらしく嘆息するカーミラ。しかし、どこか楽しげな口調に聞こえて、
サラサは笑っていた。

「すまないな、まさかあんなカードが出てくると思ってなかったものでな」

 そういって頭を押さえる可奈を顧みて、ルルは小さく咳ばらいをした。

「・・・ともかく、明日再びここに来ますので、時間厳守でお願い
いたしますわ。では、失礼」

 その一言とともに、静かに会釈をしたルルはすっ・・・と、闇の中に
溶けるように消えていった。それを見送りながら、全員が顔を見合わせる。

「・・・あの、雛沢さん?」

 そんな中、可奈に対して雷華が口を開いた。
どうした、と問いかける可奈に彼女はおずおずと口を開いた。

「え、えっと・・・カード、売ってもらえないかな。
こんな時間だから、もうしめ始めてるかもだけど・・・」

 その言葉を聞いて、可奈は微笑交じりにうなずいた。それにつられて、
全員が可奈とともに店の方に移動してカードを物色し始める。

「・・・なんじゃ主ら?唐突にカードをあさり始めて・・・。
まぁ、買ってくれるなら何でも構わんがの」

 レジ台に座っていたゼルタリアがきょとんとつぶやいた。
可奈はそれを聞いてため息交じりに答えた。

「・・・ちょっと厄介な大会に出ることになってしまって、
そのためのデッキ強化を」

「・・・なんじゃ、お主らもでるのか?
闇のもの主催の大会なんぞ、大概ろくなものでもないと思うが・・・なんじゃ?」

 全員が一斉にゼルタリアを見た。
それに対して彼女はキョトンとした顔を見せた。

「なっ・・・!?
じゃあ、ここでカード買ったら強化の意味ないじゃん」

「というか、あんたあの人が闇のものだって知ってたんなら
近づけさせないようにしろよ!?」

『そんなこと以前に「も」ってことはあんたも出るの!?
ジョークにしてはセンスがないわよ!!』

 朝倉、可奈、そしてカーミラが食って掛かる。

「安心せい、一々客の買ったカードなんぞ覚えとらんわ!
そもそも、お主らのデッキは全部ここのカードで、そこの売り場で全員で作った
デッキじゃろうが、今更目の前で補強も云々もないよ」

 そういってかっかっかと一笑に伏すゼルタリア。
ああ、そういえば初めてデッキ組んだ時もこの人たちに手伝ってもらったな、
と思うサラサと雷華。デッキの弱点やらをこっそり補強してもらった
経験のある朝倉は、あーもう、と声を押さえて吠えていた。
 そんな人たちをしり目に、雷華はカードのファイルを顧みていた。
雷族の中でも、電池メンを中心とする彼女のデッキにおいて、
他にも相性のいいそれ以外のカードがあるのではないかと思ったらしい。

「・・・よいカードはあったか、紫陽花?」

「・・・偽骸神龍とかどうかなぁって」

「ふむ、主のデッキの切り札は豪雷じゃったな?
あのカードは特殊召喚時に雷族モンスターを墓地から除外する
必要があるカード。最低でも5000ポイントの攻撃力を
確保することができる偽骸神龍は確かにいいかもしれぬのう。
あとついでじゃ、偽骸神と武神帝‐ツクヨミをサービスしてやろう」

「いいんですか?」

「よいよ。偽骸神龍は450円じゃ。ほかはわしが出しておこう」

「「・・・」」

 しっかり買い物をしたうえに、相談までしている。それもおまけをもらっている。
そんな彼女を見て頭を押さえる朝倉と苦笑を漏らすサラサとカーミラ。

「あの・・・ゼルタリアさん?商売ってなんでしたっけ?」

「しらぬ。わしはわしの信じるままに売買するまでじゃ」

 そういってからからと笑う。ああもうこの人は・・・。
可奈もまた朝倉と同じく、頭を押さえていた。そして・・・。

「じゃ、またあとで『荷物持って』泊まりに来るから」

「・・・おい、いつそんな話になった」

「いいじゃない、どうせ明日はあんたの部屋の前に集まるんだから、
じゃね」

「お邪魔した」

 雷華と朝倉がそういって帰っていくのを見送ってから、可奈はサラサの家に
向かい、彼女の荷造りを手伝って、カードのファイルを3冊ほど
持ち出して帰路につき、自室で4人分の布団を出してから、自らの準備
を始めた。・・・もっとも。

「・・・ダークエンド・ドラゴンの仕事が増えそうだな」

「・・・あー・・・まぁでも、効果を受けないモンスターには聞かないんだよね?
スキドレ積むのも考えたけど、自分のデッキも積んじゃうからなぁ」

 そうなったら元も子もないし。彼女はそう言ってため息をついた。

「なぁんだ、スキドレはあんたも考えたの?
やっぱ似たようなこと考えるやつはいるわよねえ。あの感じじゃ、
多分そこら辺は重点的に対策されてるでしょうけど」

 やってきた朝倉はずかずかと入ってきて、可奈が敷いた布団の上にドカッと
腰を下ろした。

「まぁそうだろうな。フィールドにセットされたカードを破壊したら、
墓地から発動してきたくらいだ。それくらいは充分な対策を
施しているだろう」

 ほかにも、面倒な事例はいくつもあるだろうが・・・とりあえず、だ。

「お前ら、魔素に耐性があるやつはどれくらいいる?」

「・・・なにそれ?
厨二病ならもうはやらないわよ?」

 可奈の言葉を聞いた朝倉が嘲笑交じりにため息をついた。
お前、私の本職を忘れたのか、と、可奈が問うと彼女はからからと
不気味な笑い声をあげていた。

「・・・まったく、魔素っていうのは俗に魔界と称される界にある、
いわば空気のようなものだ。魔物たちの体を構成する物質で
あると同時に、空気中にも微量ながら存在する、それら力の残滓だ。
今回行く世界がどれほどかはわからないが、状況によっては、
眩暈、頭痛、吐き気、熱っぽさ・・・風邪に似た症状が出てしばらくは
まともに動けなくなる」

「・・・それで?」

「これから魔素に体を慣らしてもらう。
悪魔やらと定期的に接触するようなことがあれば必要は薄いが、
お前らそんなことはないだろう?」

 可奈はそう言いながら香のようなものを炊き始めた。
やんわりとした甘い香りが部屋中に広がり、同時にかくんと、雷華が
膝から崩れ落ちた。

「かーちゃんっ!」

「・・・ぁれ・・・なんか、ちからが・・・はぃらなぃ・・・?」

「そのまま横になって寝るといい。目が覚めるころには、身体が
魔素に馴れてきているはずだ」

「ぅん、そぅする」

 雷華がそう答えて横になると同時に今度は朝倉が
顔を押さえて座り込む。

「な、・・・なにこれ、気持ち悪」

「まぁ、本来は人体に必要のない元素だからな。
悪魔退治なんてやってると、日常的に体内に取り込まれていくし、
蓄積していくが。・・・まぁ、ニコチンとかあの辺とは違って、
ない環境に暮らしていれば、2時間もしないうちに自然消滅する。とりあえず、
つらいなら眠れ。そのほうが、無駄に苦しまなくていいだろう」

「・・・くちおしいけど、どうやらそうみたいね。
なんか、力はいらな・・・」

 そのまま眠り込んでしまった二人を顧みて、可奈は小さくため息をついた。

「二人とも、やっぱりこういうところは人間だよね?」

「・・・こういうところは、もなにも、この中に人外は
お前だけだぞ、サラサ」

「半分だけ、ね?」

 サラサはそう言って大きく伸びをした後で、あくびを一つこぼしてから言った。

「眠くなるまでちょっとデッキ調整手伝ってよ?どうせ、
可奈は魔素には慣れてるんでしょう」

「・・・ああ、いいだろう」

 トン、と机の上に置かれたデッキ2つ。二人して明け方近くまで
あれやこれやといじっているうちに、日が昇り始めていた・・・。
メンテ
Re: 駒学園の追走st2 ( No.15 )
日時: 2014/06/04 11:24
名前: さくら

終章

 翌日、可奈たちがデッキの調整を終えるのとほぼ同時に、
朝倉達が目を覚ます。
 それをみてよう、と片手を上げた可奈とサラサに朝倉はぎょっとした。
机の上に整然と並ぶコインとサイコロ、ライフカウンター。
そしてその傍らに置かれるデッキとカードの山山々・・・。

「な、なにアンタ等徹夜でデッキいじってたの!?」

「ま、まぁな。徹夜には慣れている・・・この程度はどうということはない」

 そういいながら苦笑を漏らす彼女に、朝倉は何考えてるんだか、
といった具合にため息をついた。

「私はほら、ダンピーラーだし、夜型だから徹夜は別に
なんてことないんだよ。むしろ昼起きてる方がつらい」

「あっそ」

 サラサの言葉にそっけなく答えて、それを聞いた雷華は二人に言った。

「でも、大丈夫なの?
確か今日迎えに来るって言ってたし、向こうの方だと、そんなに
時間はないんじゃ・・・」

「―――その必要はございませんわ」

 雷華の言葉にその場にいない誰かがそう答えて、全員がはっと窓のほうを
振り返った。窓の前にある空間がひび割れ崩れ落ち、その奥に広がる
漆黒の中から、ゆっくりとした動作で先日の女性、ルルが現れる。

「先にも言いましたが、こちらでの1時間が向こうの世界での1日に該当します。
今から行けば、大体三日くらいは時間がある計算になりますので、
睡眠をとってデッキをいじる程度の時間は向こうでも十分ありますわ」

 そういってほくそ笑む彼女に、一同そっとため息をついた。
怒られはしないだろうが、お小言くらい言われるかなぁとサラサは思っていた
と、のちに可奈に語っていた。

「それで、あっち側にはどうやって行くのよ?」

「今開いているこの空間を抜けます。あ、呼吸その他はちゃんとできますので
ご安心ください。ただ、初めての方は酔う可能性があるのでそれだけは気を付けてください。
そうそう、酔い止めの薬があるので不安があるなら飲むといいですよ?」

 そういいながら白い錠剤のようなものを持ち出すルル。
何とも準備のいいことだな、とあきれる可奈たち。

『・・・それで、向こうで寝泊まりする場所は確保できてるの?
一応、そういう約束だったはずだけれども』

「ええ、確保しておりますわ。もちろん、あなた方に危害を加えるような
悪意あるものではないことは、わたくしが保証いたします」

 カーミラの言葉に、ルルはそう答える。彼女はそれを聞いてそう、とだけ
答えると、そのままサラサの後ろに引っ込んだ。

「あ、私酔い止めもらっても・・・いいですか?」

 雷華がそう、挙手をして問うとルルはええどうぞ、とクスリと水を
手渡した。どこから出てきたのか知らないが、そこらへんのコンビニ
等で売っているペットボトルのそれだった。

「では参りましょう。これにつかまっていてください」

 そういって彼女が取り出したのは鎖鎌。自在に伸びるというその鎖を
朝倉、雷華、サラサ、そして可奈の腰に巻き付けさらに可奈はその交差部分を
身体に固定してほどけないよう確認する。こんな中に落ちたら
溜まったものではないという、朝倉達の意見によるものだった。

「そんなことしても、無駄ですわ」

 そういってルルが鎖を引っ張ると、カランという音とともに
固定していた部品が外れ、鎖がルルの手元に戻っていった。
それは、ほどけた、というよりは収納されていったというような感じだった。

「なっ」

「この鎖はわたくしの意思によって構成されています。
つまり、わたくしがほどけないと思えばほどけませんし、ほどけると思えば
どんな状況にあろうともほどけますわ」

「・・・便利なマジックアイテムだこと」

 それを聞いてうだるような声で朝倉は言った。ともかく、だ。

「だったら手間がない。しっかりつかんで離さなければいいだけだ」

 可奈の言葉に全員がそれもそうか、となんとも言い切れない
顔で苦笑した。そして、その後ルルに引っ張られるようにして飛び込む。
雷華は多少怖かったのだろうか、眼を閉じているようにも見えたが・・・
飛び込んだ直後には足元に感触を感じていた。

「・・・着きましたわ。もう鎖を離しても大丈夫ですわよ?」

「「はやっ!?」」

 ルルの言葉に思わずそんな言葉が口をついた。
それもそうだろう、飛び込んで須臾ほどの間に、だったのだ。
空間を飛んだことはないが、こんなに早くつくとは思いもしなかったのである。

「・・・酔うとか何とかのふりは何だったのか」

 朝倉がそうつぶやく。それを聞いて、ルルはそれはですねと答える。

「そういうこともあるのですよ、一瞬でついた、と感じたかもしれませんが、
実際は空間と空間をまたいで跳躍していますので、身体には多少の負担が
掛かるのです。その症状が、酔いの状態に似ているので酔うといったにすぎません」

 そういうもんなのね、と言いたげに乾いた笑いがこぼれる。
そういうもんなんだ、と可奈がうなずいたのを見て、サラサと雷華もまた、
朝倉と同じく乾いた笑いを浮かべていた。そこに・・・黒い羽根が舞い降りた。

「ルールッ様ぁああああああああああああああああっ!」

 上空から響く声、先ほど見えた漆黒の羽を降らせながら
少女が降ってくる。ピンクのセミロングくらいの長さの髪のある頭に
羽飾りのついた帽子かぶり、茶色いジャンバースカートを着用している。
そして、そのジャンバースカートのつなぎ目そって紫のリボンが並んでいた。

「・・・あら、あらあらっと。どうしたのですか、蓮華?
おうちでお留守番してなさい、って言ったではありませんか」

「だってだってだってだってだってぇえっ!ルル様のお帰りがあんまりにも
おっそいから心配になったのですよぉ!」

 そう声をあげながらルルに抱き付いて泣き始める。
そんな蓮華をあやす縷々と、それを見てなんなんだと言いたげな朝倉。
蓮華をしばらく見ていた可奈はふと、水蓮燈に似てるな、とつぶやいた。

「・・・水蓮燈?お姉様をご存じなのですかですか!?」

「「・・・お姉様?」」

 彼女の言葉に全員がきょとん。

「そう!お姉様なのです!流れる銀髪、黒を基調としたお洋服に
白いフリルのレースが愛らしい、見目麗しい私のお姉様!」

 そういいながら身振り手振りでそれを伝えようとする蓮華。それを見ていた
ルルが苦笑交じりに教えた。

「・・・水蓮燈は彼女を作る前に、わたくしが作った自立起動型の
ギミック・パペットですわ。この蓮華はその水蓮燈をベースにして
改良して作り出した後継機です。貴方たちの世界で言う、100年ほど前に、
彼女が完成して、一人でも大丈夫な状態になったので、彼女は旅に出ると、
現世に旅だったのですが・・・なるほど、奇妙な縁もあるものですね」

 そういってくすくすと笑う。可奈はそれを聞いて何やら嫌な予感がしていた。

「さ、それではそろそろ参りましょうか?
早くいかないと、桜花さんやジンが待ちくたびれてしまいますわ」

 ルルの言葉に先導されて可奈たちは彼女に続いて、
彼女の弟の家に向かって歩みを進めることにした。人里から少し離れて、
山道を進んだ先にあるのだという。
青々と茂る木々の下を歩き、流れ落ちる沢のそばをしばらく抜けると、
やがて目の前に大きな屋敷が見えてきた。

「・・・日本家屋、だな」

「・・・ええ、時代劇にあるような日本家屋ね」

「すっごい、こんなの本の中でしか見たことなかった!」

「え、日本の家って基本的にこんなのがほっとんどじゃないの?」

「「「え?」」」

「・・・え?」

 四者四要の答え。そして何よりサラサの日本に対する文化の違いというかに、
全員が困ったような顔で顧みる。そんな4人をしり目に、ルルは玄関の
引き戸を軽くたたいた。
 それからしばらくと経たずに、扉が開いて中から黒い長い髪の着物の女性と、
ショートカットのワイシャツにネクタイの少女。その少女の傍らには、
太刀魚のような頭と体、下あごの付近から6本の足の生えた奇妙な
生物が2,3匹ほど従っていた。

「・・・縛魂蟲か?たしか、死者から魂を奪って自らの
体内に飼育する妖蟲、だったか。こっちではまだ珍しい種類じゃないのか」

「・・・妖怪もでたらめねぇ」

 可奈の言葉をはたで聞いていた朝倉がそういって顔を引きつらせる。
そんな二人をしり目に、ルルは二人のことを紹介し始めた。

「・・・先程、名前だけあげていましたね、着物の方が桜花さん。
わたくしの末の弟、ジンの妻ですわ」

 そういわれて、着物の女性、桜花が静かに会釈をする。

「はじめまして、宮下桜花と申します。
ルル義姉さんから聞いてますよ、なんでもあのリリカ義姉さんに札勝負で
かった実力者ばかりだとか。こちらでのお世話は私たちが引き受けますので、
どうぞよろしくおねがいします」

「それから隣にいるのがそのジンの双子の兄、リリスの妻、四季ですわ。
・・・そういえば、四季?二人はどこに」

「・・・あー、リリィがね、『新しい武器作る』って言って引っ張っていった。
何かよくわかんないけど、ジン君の眼じゃないと刃として加工できないんだって」

 ぽわん、とした表情でそういって、彼女はくすくすと笑う。
それを聞いてルルはそうですか、と頭を押さえた。いったい今度は何を作る気なのか、
そう考えるだけでも頭が痛かったと、彼女は言った。

「・・・よっぽどとんでもない武器ばかり作ってるのね、この感じじゃ」

 朝倉が言った。ルルの性格は、先にあったリリカやしのぶに比べれば
超がつくほど穏やかだ。・・・比べる対象は間違っている気もするが。
そんな彼女がこの反応を示すだけでも、そうなんだろうなという予想は容易についていた。

「・・・今度はって、以前はどんなものを?」

 雷華の言葉にそうですねぇ、と言葉を濁しながら彼女は答えた。

「例えば、接触面を腐食させて毒龍を召喚する杖ですとか、
霊力のないものが撃っても妖怪や妖魔を霧散し、浄化できる銃ですとか、
変ったところでは、たしか、ある術を開発する手伝いをするといって、
その術者と一緒に獣のような魔物を召喚して戦う術を作り出したとか。
兎角、武器となるものなら何でも作ってるはずですわ。
かく言うわたくしの持つ鎖鎌も彼の作品ですし」

 先ほどの鎖鎌のことか、と雷華。
それほど変わっているというような感じではなかったが、それにしても
それすらも氷山の一角かと思うと、背筋が凍る思いを、可奈は感じていた。

「ま、今回はふつーにデッキが一番の武器だからさ、
いきなりバッサリとかはないから安心していいよ、人間さんたち?
・・・あ、精霊が4体と神獣が1体、それにダンピールもいるね?
まいっか。ようこそわれら妖猫の世界・・・闇亡界へ、じゃあ、私帰るから、
またねっ」

 そういって四季は指をはじくと同時に縛魂虫の群れとともに
姿を消し、あとには桜花とルルたちだけが残された。

「では、中にお入りください。立ち話もなんですから」

 そんな中で、桜花がそういって促し、ルルもまたそれに従ったので
可奈たちも言われるがままに中に入っていった。
メンテ
Re: 駒学園の追走st2 ( No.16 )
日時: 2014/06/04 11:25
名前: さくら

あとがき?

あい、こんにちはこんばんわおはようございました
さくらです
やっとこ2章終わりまして、次章からしばらくの間は大会編と銘打った
どんちゃん騒ぎを書きたいな、と思っていますw
リリカ、しのぶ、ルル、四季を筆頭にした禁断を知っている人にはある種懐かしい
キャラクターたちも大勢出てくると思います(ぇ
さて今回もネタバレ、裏事情キャラ紹介解説ほかを含めてあとがき行ってみようと思います。
・・・絶対に先に見るなよ、絶対だぞ?

1.闇猫族
 作中においての表記は妖猫族。猫又を含む、猫の化生の類とは異なる(あっちは化け猫族。ケットシーは分類的には
妖精族)。地球誕生のはるか以前に宇宙創成と同時期に誕生したとされる種族の一つであり、ぶっちゃけるなら、
創造神族の一種。起源として、那由他と呼ばれる存在をさし、そこから生まれ出でし子の血族を「長の一族」と称して、
その一族を中心として文明を築き上げ、氷河期以前までの時期を過ごしてきた。
 その後、那由他の娘であるリリトがその地位を引き継ぎ、その娘息子であるしのぶ、リリカ、夜深、ルル、リリス、ジンの
6人を中心とした集落で生活をしていたが、聖戦のおり、妖魔と神々との戦いに巻き込まれることを拒み、
長リリトが片腕のみを残して消失、ほかのものも、天界、地獄界、地上界、魔界、などの界に散り散りになって
これまで潜むように暮らしてきた。
 非常に温厚な性格を持つが、強力な呪術や戦闘技術を持っている一族で、傭兵として働いているものも多いという。また、
外見は常に若くみえ、齢が万を超えても人間の年齢的には二十歳前後位の外見のものもいる。
 長の一族の特徴として、その目に不可思議な力を持つとされていて、その力はさまざまであるとも。分類上は
妖怪に近い一族だとされているが、先述の通り、本来ならば創造神族に属する神々の一柱である。もっとも、そのことを記した
文書はすでになく、その歴史は闇に消えており、その名称も人間が初めて召霊に成功した時の姿が
「猫のようにも見えるが、よほど恐ろしくまがまがしい姿であった」と、いう記述が残っていたからだといわれている。

2.キャラクター解説

薔薇殺しのカーミラ
性別    :女
年齢    :2〜300歳前後
身長(cm):135.5
体重(kg):020.3
種族:吸血鬼
メインテーマ:薔薇殺しのカーミラ(紅魔城伝説U 妖幻の鎮魂歌:ラスボステーマ)
備考: 世界最古の女性吸血鬼、カーミラ・トランシルヴァニアのかつての姿。
少女のような外見だが、その実は戯曲にもなったあのカーミラのことである。少女の姿に黒い大きな羽、
数多の蝙蝠を従え、自らを霧に変える能力などを持つ。また、霧に魔力を加えることで、霧すべてを
感覚器官の一部として扱い、相手を捉えたり圧殺するような使い方もできる。
 友人の遠い血筋であるサラサに対して、留学中の手助けをするようにと、同名のカードに取り入れられた、
カーミラ本人の意思の具現化した姿であり、精霊であり、同時に思想の具現化であるために、
一度はサラサを乗っ取り、自らの思想に沿わせようとしたが、現在はただのおせっかいや気になっている。
 元キャラにしたのは東方紅魔郷より、レミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットを
足して2で割ったような感じ。

しのぶ・エイジェリング
身長:165cm
体重: 40kg
備考: 妖猫族の現長代理。多少野暮で粗忽なところもあるが、基本的にはおおらかな人物であり、
大体のことは爆笑しながら承諾してくれるところがある。超絶愉快型極楽快楽系戦闘狂であり、戦うということには
なにを問わず楽しさを求める。リリカ曰く、「たよれるねーさん。でも割りと短気」とのこと。
 高い戦闘能力を持ちその身体能力は高く、スカイツリー程度の高さなら助走なしで飛び越えられるとのこと。
デュエルモンスターズにおいても、攻撃力で上から殴る、を主体にしているためかビーストを愛用している傾向がある。
 元ネタキャラは三宅しのぶ(うる星やつら)を凶暴性9割増しにして各種格闘技や殺人術のスペックを
与えたらこうなった、という感じらしい。名前の由来も彼女。
 彼女の眼はルルとは違う濃い緑色をしており、その目には見切りや戦闘に関するありとあらゆる行動を判断する補助の役割を持ち、
また、それらの動きを行う際に体にかかる負担を軽減する能力を持つ。もっとも不要そうな能力だが、
相手から自身の体にかかる負担も軽減できるという点で、戦闘中屈指の打たれ強さを誇ることができ、まさにインファイトを
得意とする彼女の欲する眼としては最上級の代物だろう。

リリカ・エイジェリング
身長:170cm
体重: 50kg
備考: しのぶの妹。夜深という双子の姉がいる。基本的に表情がないため、なにを考えているのかよくわからないが、
もっぱら自分のことしか考えていない様子で、いつも勝手な行動をとりたがる。その行動原理は面倒くさいことはしたくない。
であり、交渉は時間がかかって面倒なので、可奈を殺して目的の本を奪おうとした。
 自信を退けた朝倉に一目置いており、降りあれば再戦したいと考えている。もっとも、あまりに悔しかったのか約束を反故にして
襲い掛かった挙句、山を半分吹き飛ばしてしのぶと戯れたりしていたあたり、結構負けず嫌いかもしれない。
 手にした大鎌はかつて人食いの業を背負って神々に処刑された女神であり、その骨と肉から打ち出したものである。
血をすすり、肉の感触を味わい喚起を上げるという、生体兵器じみたそれだが、リリカと意思疎通できる数少ない存在でもある。
 彼女の眼は昆虫の複眼のようになっており、筋肉の繊維1本1本の動きや、骨の動き、遠目や360度すべての視界を見ることができる、
まさに見切りという事柄にかけてはこれ以上なく特化した瞳である。

ルル・エイジェリング
身長:175cm
体重: 53kg
備考: しのぶ、リリカ、夜深の妹でジンとリリスの姉。上記の二人と比べても非常に温厚で大人しい性格で、諍いをあまり好まない。
錬金術師であるが、この世界の錬金術は化学反応を用いて物質を変化させるそれではなく、文字通り金を練成する技術であるために、
殆どやってることは魔法と差支えがない。過去、数千年以上の間の記憶がなく、それが姉たちによって封じられていることがわかり、
その封印を解かせるためにこの大会に参加することにしたという。
 彼女の瞳は翡翠色をしており、その目は様々な幻覚を魅せ、相手を蠱惑するという。蠱惑されると自らの痛覚が麻痺してしまい、
全ての感覚を浸蝕して現実と夢の境界を突き崩し脳を壊死させる。目を合わせ続けるだけで直接相手の動きを封じることができるが、
眼を見なければどうにかなるという点では上記の二人より対処はしやすいだろう。
 元ネタキャラはミント・ブランマッシュ(ギャラクシー・エンジェル)。別に社長令嬢じゃない。

3.次回予告
第3章:血統なる決闘1
デュエルスタンバイッ(キリッ
メンテ

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