ハーレムフロントライン 第六章 均衡 U D |
- 日時: 2023/11/04 16:23
- 名前: 陣
- 「お帰りなさいませ」
現地でも色々あったが、やっと戻れたクリアランスの我が屋敷。 玄関で迎えてくれるは、我が愛しの奥方マルビータ。流石にもう飛び出して抱き付くまではしないが、その平和で穏やかな笑顔を見ると、とにかく安堵の念が湧き上がる。
その前に王宮でジェイングレイ女王とジェラード王太子に帰朝報告を済ませ、派遣軍の解散を行っている。 叔母の無事帰還に歓喜を隠さない王太子に対し、あくまで礼節を崩さない女王。当然と言えばそこまでだが、身体を重ねた仲として、いささか寂しい感は否めない。
盟主としての政治パフォーマンスを済ませた、イシュタール勢はそのまま寄らずに、途中から本国に戻る。彼らにはまた自国内での権力闘争の日々が待っている。
屋敷内での湯船に浸かりながら、今までの事を考える。 面倒や厄介を避けるため、ロレントやセリューンら両軍トップらとの対面等は全てイシュタールの連中に任せた。こちらは事務方として全体の調整をやるだけだ。
その中で最も印象に残ったのは、両軍引き離しの間の人質としてドモスから預けられたロシェという少年。もちろんドモス側としても簡単に差し出すはずがない。最終的にはフィリックス自身がその間のドモスへの人質を買って出る事で実現した。危険ではあるが、成功すれば一大功績になる。
ドモス本国の王妃とも呼ばれる飛竜将軍ナジャとロレントの間に生まれたという少年。なぜそのような者が陣中に居たかと言えば、他の同世代と同じく、早くから戦場経験を積ませるために随伴させていたらしい。まさに恐るべきドモス。このような相手と戦うなど、それこそあの一度だけで終わらせたい。 またそれだけに二重王国陣営に引き渡された後でも全く物怖じせず、あちらをも感服させたという。オルシーニ女王マリーシアは顔を赤らめ、妊娠中のサブリナ女王ヴィシュヌなどは「このまま妾の子にくれ」と言い出して周りを大いに困らせたとか。
あの少年の事を考える度に、ヒルクルスに引き合わされたフェンリッヒの事も思い出す。彼もまたロレントの庶子だという噂もあるだけに、血という物を考えざるを得ない。
(あるいは。ロシェを返したのは間違いではなかっただろうか)
その場合はフィリックスが戻れなくなるだけに、それはそれで面倒だろうが、どうしても将来への禍根を残した感がしてならない。 確かに既にドモスにはクラナリア王国出身の正王妃アンサンドラからの出生による王太子アレックスがいると聞く。但し軍の主力であるドモス本国からの支持は薄く、今回の貢献でロシェへの支持はますます高まるだろう。
(あるいはセリューンとして、ドモス内部の紛争を助長させたいのだろうか)
考えねばならない事はまだまだたくさんあった。
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