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ハーレムフロントライン 第六章 均衡 U @
日時: 2023/11/03 07:25
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「クィンクェが…燃えた」

バジルール砦。いや今や西国全体の最前線バジルール城として大幅に拡張強化工事中の城郭の大広間。

そこに居並ぶ西国各地からの派遣諸将たち。そこでは連日のように訓練の合間を縫って情報共有の会議が行われている。

首座に位置するは、現在は消滅中のメリシャント王国の亡命王女フィオリナ。その両脇には、このクレオンレーゼ王国の女傑として名高いバラーシャ、そして西方内陸最大のイシュタール王国の才媛ガブリエラ。
これだけの歴史的な大所帯の最上部三人が全て女性なのは異様だが、この最大級の非常時において問題にする者は無い。適任者三人がたまたま女だったというだけの話。それにその三人ともが下手な男どもなど軽く吹っ飛ぶくらいの女傑揃い。またこのような寄合世帯では、象徴的な中核を持つ方が軋轢も少ない。

そしてこの日の会合に持ち込まれたのは、遂にクィンクェを舞台に行われたドモスと二重王国の一大決戦の詳報。

「二重王国が勝った。だが勝ち過ぎなかったという所か」

「確かに戦場から先に引いたのはドモスだ。しかし二重王国もボロボロで追撃出来る状態ではなかったらしいな」

「あのレイモンも死んだのか。ついこの前ジェイングレイ様の即位式に来ていたのが嘘みたいだ」

「サブリナ女王が参戦出来ていれば、そこで出番だったかもしれんな」

「セリューンは女たらしと聞くが。よりによってこんな時に孕ますとは何をやってるんだ」

「そもそもアイツの子供は愛人腹の一人がいるだけだ。子種が薄いんじゃないのか」

「同じ女好きでもロレントとはそこが違うな。あちらは何十人じゃきかんらしいし」

「それに今回の決戦もセリューン本来の形じゃない。アイツの得意は相手を自分に引き付けて逆撃する物のはずだ」

「仕方があるまい。あそこでドモスの暴逆を放置してたら、政治的に二重王国の失う物も大きい」

「ただでさえクィンクェの件の黒幕という噂があるからな。それを否定するためにも、犠牲を避けるわけにはいかなかったというわけか」

「ロレントもそれを見越していたというわけかな。そうなれば単なる力任せの野蛮人ではないぞ」

「名将は引き際を心得ると言いますしね」

「逆に言えば名将だからこそ引く事も出来るのだ。下手な将が引けば、ただ自ら崩壊するだけだ」

「それに引いたと言ってもドモスはまだジャンダークトを中心にメリシャント東部を占拠し続けている。軍としても国としても崩壊したわけじゃない」

「クィンクェも丸焼けになってしまえば、二重王国としても居座るだけの価値はあるまい」

「復興の義務まで負いかねんからな」

「おい!」

いいかげん場を弁えろとばかりに注意を飛ばすバラーシャ。それを苦笑気味に制するフィオリナ。

「いやいや。気にする必要は無い。どうせクィンクェはあの血に汚された時に死んでいる。むしろやっと火葬してもらったような物だろう」

黙る一同。あたかも火葬されたクィンクェに最後の弔意を捧げるかのように。

「…」
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