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ハーレムフロントライン 第六章 均衡 S
日時: 2023/10/31 07:01
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「やだ!」

案の定。思い切りゴネまくりな我らが王太子殿下。

「やだやだやだやだ! 絶対にやだ! 叔母上絶対に行っちゃやだ! 言ったじゃないか! 側に居てくれるって!」

「おいおい」

いかにも困ったといった感じのフィオリナ。間に合わせといえ、真新しい甲冑とマントに身を包んだ姿はその場の周囲の者たちを魅了する。
まさに王族将軍ならではの英姿。あるいはそれがまた甥の独占欲を刺激したか。

「別に遠くに行くわけじゃないぞ。国境近くのバジルールまで行くだけではないか」

「やだやだ! 側にいないんなら、遠くじゃないか!」

その王太子らしからね駄々っぷりに、流石に業を煮やしてか。

「おまえ…」

「いいかげんになされませ! 殿下!」

突然。別方向から響く大音声。何事かとばかりに、そちらを向く一同。

「長く殿下のお側に仕え続けて来た我らを! そこまで軽んじられますか!?」

その場に位置する、ポニーテール頭の少女騎士。

「ドリン?」

王太子ジェラード側付騎士ドリン。正式名オルドリン。シルヴィス太后の側付として、メリシャントから随伴して来た侍従オルドラン夫妻の娘。いわば幼馴染であり、気性の激しさでは誰にも負けない。
先日のシルヴィス太后の凶行の責めを負う形で、父が自裁を遂げただけに、その気負いはますます大きいとも聞く。ちなみに母の方は、現在幽閉中の太后の介護の中核を担っている。

そして肩を思い切り怒らせた相手に、試すかのように顔を向けるフィオリナ。

「ほう。頼もしいな。ドリン。ならばお前に何が出来る?」

「確かに私は。力でまだフィオリナ様には遠く及びません! しかし殿下の代わりに死ぬ事は出来ます!」 

確かに。体格も顔付きも近い。髪の毛を切り装束を改めれば、影武者が務まりそうな風情。いや恐らくはそうなるように、両親から育てられて来たのか。

同じような事を考えてか、思わず息を呑む周囲。そして不敵にニヤリとするフィオリナ。

「よし! その言や大いに良し! 後見人の資格で任ずる! お前が今日からジェラードの親衛隊長だ! 見事ジェラードの代わりに死んで見せよ!」

「はは! 全ては殿下と二つの国のために!」

意外な流れに、急に慌て出すジェラード。

「ち、ちょっと待ってよ。僕が言いたいのは…」

『よろしいな!!』

まさに有無を言わさぬ猛女二人の断言。それに思わず相槌を打つワガママ王太子。

「は、はい…」

「よし! では行くぞ! アルテミス!」

「はは!」

「叔母上ぇ…」
メンテ

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