ハーレムフロントライン 第六章 均衡 I |
- 日時: 2023/10/18 07:07
- 名前: 陣
- 「大変です。アスレー様」
慌てて駆け込んで来るカエソニア。当然に彼女もまた秘密を共有する一人。
「どうした?」
「ジェラード殿下が。式には絶対出ないと」
「ジェラードが?」
それを聞いてアスレーと共に飛び出すフィオリナ。代わりにカエソニアを残す。
ジェラードの控の間。その中から聞こえて来る少年の声。
「嫌だったら嫌だ!」
その中に飛び込むアスレーたち。
そこにはゴールドの正装にしっかりと身を固めたジェラード。 ジェイングレイのシルバーに対し、こちらがゴールドなのは、あくまでジェラードこそが本流の正嫡である事を示している。 しかしその口から発した言葉は。
「何でジェイングレイ叔母上が王で、僕はまだ王太子なんだ!? 父上が亡くなれば僕が王なんじゃないのか!?」
「それは。殿下が成長するまでの…」
「どうせ次はジェニファー姉上なんだろう! 聞いたぞ! 母上の周りの人間はもうこの国の邪魔者なんだって!」
「誰が?」
ジロリと部屋の中を見回すアスレー。
慌てて目を逸らす周りの連中。中には敵意剥き出しで睨み付けて来る奴もいる。 幽閉中のシルヴィス太后がメリシャントから連れて来た側近ども。つまり今やメリシャント王国最後の生き残り。こいつらが余計な事を色々と吹き込んだに違いない。 全く。こいつら今の自分たちの立場が分かってるのか。まさにあの自己中心な太后の分身たちだ。
「僕を今すぐ王にするなら出てやる! そして母上をお助けするんだ!」
冗談ではない。そんな事をされたら大変な事になる。 やむを得ない。これ以上ゴネられるなら、逆にこの場に閉じ込めるしかない。 それは事実上の廃嫡を意味する。だが大法官をはじめとする重臣のほとんども同意するだろう。
その時。
「いい加減にしろ! ジェラード!!」
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