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ハーレムフロントライン 第六章 均衡 F
日時: 2023/10/15 10:56
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(冗談じゃないわよ!)

シェルファニールのトップにおける国王・宰相・王家家長による危険な三者均衡。

もちろん野心家や謀略家にとっては格好の付け入る隙であり、これまでの長きにおいて数多くの謀略や罠が行われて来たらしい。
但し三者共に、その種の類に一切乗せられる事なく、互いに通報し合うなどでそれら全てを阻止しつつ、今日に致って来た。
しかしその間にあるのは個人的な親愛などでなく、あくまで国家としての必要。そしてそれは時間が経つにつれてますます強くなる一方と周囲に見えた。
やがてそうした謀略は一切姿を消し、ひたすら三者の関係を伺うのみとなる。遠からずそれが必ずや自壊するという確信の元に。

そしてその無言の重圧に耐え切れなくなった一人が、王姉にして宰相夫人であるエステリーゼ。もし母の身に何か起きれば、夫や子供たちの身に何があるか分かった物ではない。
迂闊な話だが、いささか弟を軽く見ていた事もあって、そうならないような信頼関係を弟との間に築くのを怠っていたのにやっと気付いた。そして慌てて接近を図った時にはもはや完全に無言の壁。口には出さず、態度も丁寧だが、そこにはもはや両親を同じくする姉に対する物ではなく、あくまで宰相夫人に対する物でしかなかった。

事態の深刻さに愕然とした彼女だが、そのまま黙っているようなタマではない。そのまま母の元に走り、マティアスを退位させるように迫った。後継は自分たちの息子を付ければ良い。

(そんな事出来るわけないでしょう。自分たちの将来が不安だから王を代えたいなんて理由が通ると思うの。それにやろうとしてももう無理よ。あの子は自分の周りをすっかり固めてるし、この国の有力家を幾つも味方に付けている。かなりの血を流す事になるわよ?)

(ならば御母様の家長の座を私に譲って下さい!私はマティアスの姉です!あれの上になる資格があるはずです!)

(私の時とは違うわ。私の時にマティアスのような兄弟はいなかった。私が死ねば、家長の座もマティアスの物よ)

(なら私の家族はどうなります!? マティアスに這いつくばって慈悲を請えと!?)

(そうよ。必要とならばそうしなさい。相手は国王であり、あなたは宰相の夫人なのだから)

(う…)

(それが嫌ならイシュタールのエロイーズの所にでも行きなさい。そうすればまだ安心出来るでしょう)

(お、御母様…まさかそこまで考えてエロイーズを…)
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