トップページ > 記事閲覧
ハーレムフロントライン 第六章 均衡 B
日時: 2023/10/12 22:15
名前:

「ええっ…」

慌てて大声を上げかかり、慌てて自分で口を抑えるアスレー。こういうのは何度やっても様にならない。

「そ、それって…」

そんな婿殿に対し、あくまで平静に言葉を続ける岳父。

「そうだ。ジェイングレイ様に御子を御産み頂くのだ。あくまで『スマイラスの子』をな」

「はあ…?」

意味が分からず、頭をグラグラさせているアスレー。それに対し、まだ分らんのかとばかりに説明を続けるマルローゼ。

「現在の公式としてジェイングレイ様はあくまでジェラード殿下への中継ぎ。あのイシュタールのグロリアーナと同じにな。だから再婚するわけにはいかん。だが今の時点で既にスマイラスの子を孕まれているのならば話は違う」

顔色を変えるアスレー。

「待って下さい!そうなればジェラード殿下は?」

「場合によっては王太子を退いて頂く。少なくともその可能性と選択肢が生まれる」

「殿下を廃位するというのですか?」

「私を誰だと思ってる。何よりも法と秩序を守らねばならぬ大法官だぞ。出来るならそのような大逆な真似は考えたくもない。だがジェラード殿下には致命的なまでの問題がある。御本人ではない。あの方自体は御父君譲りの善良な方だ。だがな」

「あ…」

「そうだ。いま幽閉中の母君シルヴィス太后様だ。メリシャント王族の生き残りという面も含め、今あの方を外に出したら大変な事になる。それに殿下は母君を慕っておられる。もし即位されたなら、真っ先に母君を解放しろと言い出しかねん」

「…」

「平時の美徳は必ずしも非常時の美徳ではない。それは法もまた同じだ」

「…」

「もちろんジェラード殿下を進んで害するつもりはない。殿下もまた我が国の貴重な後継者候補だ。出来れば失わせたくない。だが現状において殿下の即位はあくまで最後の選択としたい。いまイシュタールにおられるジェニファー様に御子が出来る可能性も含めてな」

「同意見ですか。バラケルス大将軍も」

「ああ。口にはしないが大方の重臣も同意見の模様だ」
メンテ

Page: 1 |

題名 スレッドをトップへソート
名前
E-Mail
URL
パスワード (記事メンテ時に使用)
コメント

   クッキー保存