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ハーレムフロントライン 第五章 惨劇 P
日時: 2023/10/10 08:25
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「兄さん! そんな…」

メリシャントの延長のように、クレオンレーゼの悲劇も続く。

急死したジェラルディン国王の後任として、急遽そのその異母妹ジェイングレイ王女の登極が決まる。

ただし前国王の息子ジェラード王太子の身分はそのままであり、あくまでその成人を待っての中継ぎという形。

なにせジェラードの生母であるシルヴィス王妃が国王殺しの凶行の犯人。しかもまだ生きて幽閉中であるという事自体がこのような配慮を余儀なくされてしまっているのだ。

(ええい!あのどこまでも忌々しいメリシャント女め!いっそ死んでくれていたら良かったものを!)

とにかく憎まれっ子は世に憚る。それは大人の女でも関係ないらしい。

ともあれ気の毒な話であるが、あの情緒不安定の母親の影響力が懸念される限り、ジェラードを即位させるわけにはいかない。特にこのような重大時においては。それだけは王宮のほとんどが一致している。

但し前王ジェラルディンの異母妹であるジェイングレイの中継ぎは必ずしも一致ではない。現在はイシュタールに送られている、ジェラードの異母姉ジェニファーを呼び戻すべきだという意見もあった。
しかし現在ジェニファーは未だイシュタール王太子フィリックスの有力な正妃候補。それ以上にもしクレオンレーゼ本土が危機に陥った時の保険として、外地に避難させておくべきだという意見が勝り、最終的にジェイングレイ案が通る事となる。

ちなみにジェイングレイ案が抵抗されたもう一つの理由。それは既にジェイングレイが宰相スマイラスの妻となっていた点。
たとえ中継ぎとはいえ妻が女王となれば、夫であるスマイラス、更には弟のアスレーも含めた宰相一族の権勢は一気に増大する。それを懸念するのは当然だろう。

何よりも真っ先に懸念したのは、本人であるジェイングレイ。

「どうしてもとおっしゃるなら! 私を離縁してからにしてください! そうすれば少しでも!」

普段ならそれを容れるはずのスマイラス。しかし何故かこの時は頑強にそれを拒んだ。

「無駄だ。たとえ形だけ離縁した所で、偽装としか思われまい。ならばいっそこのままでいたい」

「あ、あなた…」

そしてこの懸念は不幸にも的中する。

戴冠式の準備の中。厳重なはずの警護の隙を掻い潜って、クレオンレーゼ王国宰相スマイラスは狙撃された。犯人も動機も不明。

「兄上! 宰相閣下!」

瀕死の兄の手を必死に掴むアスレー。それに対して虚ろな目を向けるスマイラス。

「ジェイングレイを…この国を頼むぞ…アスレー…」

「は、はい…」

「クレオンレーゼは…クレオンレーゼは…滅亡せず!!」

「兄上ー!!」
メンテ

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