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ハーレムフロントライン 第五章 惨劇 E
日時: 2023/05/06 12:08
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「…恐ろしい奴だ…」

かつて一度だけ会ったその威容を思い返しつつ、アスレーが改めて怖気を震わせるのも無理は無い。

クレオンレーゼ国境に近く、ほとんど飛び地でしかないゲーブル城。そんなところに居れば、今回のような一大変事にはまずジャンダークト方面に逃れようとするのが普通であり常識。

おそらくクィンクェで騒乱を起こした連中もその想定だったのだろうが、相手が悪かったとしか言い様が無い。
なんとクィンクェで変事が起きたという報を聞くや、すぐさま準備を整え、ジャンダークトのカルナップに至急の使者を送ると共に、すぐさま飛び出してしまったからだ。それも。傘下の全部隊をそのまま引き連れて。

その総数は二千程度。普通ならばクィンクェのような大都市を攻められるような数ではない。
だがその時点のクィンクェは未だ騒乱の収まらぬ時点であり、しかも正門を管理していた反ドモス派の連中は、遠方から突っ込んできた連中が二重王国からの援軍だと誤解し、そのまま市内への突入を許すという致命的なミスを犯す。

かくて市内の形勢は逆転する。

それまで散々血に塗れた狂犬どもも、本物の狼の咆哮の前には立ちどころに萎縮。二重王国の援軍など嘘だと分かると、立ちどころに矛を返し、それまで追いまくっていた反ドモス派連中に反撃を開始。
今度は反ドモス派の連中が狩られる側となり、最初は王宮を占拠していたはずのアーダーン派も、ジャンダークトのカルナップ軍が接近してくるのを察知するや、すぐさま市外に脱出。煽動していた市民を見捨てる結果に。

そしてカルナップ軍の入城と共に、市内の動乱がようやく収まった頃には、市内の社会秩序は完全に崩壊。相互不信の蔓延する中、かくて膨大な難民が発生する事となったのである。

歴史的に、これがメリシャント王国滅亡の日と記録される事になるだろう。
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