ハーレムフロントライン 第五章 惨劇 B |
- 日時: 2023/04/17 19:54
- 名前: 陣
- 「ふう」
ヒルクルスとの別れから一年。アスレーの仕事は基本的に最前線のバジルール砦と首都クリアランスとの往復である。
一番近いゲーブル城には、あの恐るべきフェンリッヒが依然として常駐。またそれまでのドモスの最前線だったジャンダークト城にはカルナップの軍がいてこれもまた面倒。
そしてこの二つの拠点に挟まれるメリシャントの小都市群もまた複雑な動きを見せ続けていた。
「今日も動きは無しか」
窓から外を見ながら、つまらなそうにボヤくバラーシャ。それに対し顔を顰めるアスレー。
「無くて結構だろうが。何か起きて欲しいのか」
「人聞き悪い事を言うな。私だって戦乱は好きじゃない。だがな」
「だが?」
「この安定は決定的な物じゃないのはお前だって知ってるだろう。あくまで単なる小休止だ。それを考えれば落ち着いていられるのか」
「…」
返す言葉も無いまま。共に外の風景を眺め続ける二人。
しばらくして。
「それにしても。大したもんだな。あのフェンリッヒってガキは」
「何がだ」
「だってそうだろ。ゲーブルからジャンダークトまでかなりの距離だぞ。下手をすれば孤立してしまうようなこんな飛び地によくいられるもんだ」
「確かドモス王の庶子って噂らしいな」
「いずれにしても。大した度胸だろうが」
「…ああいうのが好みか?」
「おや。妬いてんのか?」
「…」
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