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ハーレムフロントライン 第四章 外交 E
日時: 2023/03/07 12:47
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「全く無い?」

怪訝な顔のクリスティン。それに応えるバラーシャ。

「ああ。あそこに陣取ったままだ。調略めいた事をやるかと思ったが何も無い。ただこちらを監視している」

「何もしてないわけではないだろう」

「ああ。メリシャントの様子を探る物見は全て捉えている。また積極的に仕掛けはしないが、こちらから走る連中は喜んで受け入れているようだ」

「見逃してるんじゃないだろうな」

「まさか。そんな事をしたらこっちが不利じゃないか。しかし」

「しかし?」

「いささか数が多くなって来た。こうなってくるとぶち込む場所も足りなくなってくる。まさか片っ端から殺すわけにもいかんしな」

「おいおい。しっかりしてくれよ」

呆れ顔のクリスティン。それに対してキッと睨み付けるバラーシャ。

「なに他人事みたいに言ってる。捕まえた連中の半分以上はイシュタールからのだぞ。お前たちこそしっかりしてくれなきゃ困る」

「…」

「長年の太平に慣れ切ったイシュタールがここみたいに大敵を国境に迎える事が出来るのか。いわばここはイシュタールにとっても最後の最前線のはずだ。特にお前らクリームヒルトの一族にとってはな」

「なに?」

「聞いてるぞ。何とかドモスと直に話を付けられないかと傭兵のルートでジャンダークトに来ているカルナップに働き掛けたそうだな。大金にデミミュラーの逸品まで添えて」

「そんな事が?」

「聞いてないのか。まあいい。カルナップはドモス王妃の姉の夫だ。そこからドモス王に働き掛けようってのは悪くない。但し今度の相手は悪かったな。ヒルクルスの上のリンダはドモス王の妹代わりとすら言われる実力者だ。それにそもそもドモス王は現場の指揮系統に口は出さないらしい。『リンダに言え』の一言で済まされたそうだぞ。そしてリンダはあくまで『西国はヒルクルスに任す』だそうだ。全く。ヴィクトリアといいリンダといい。大した色男だよ」

「どこから聞いた」

「あれだよ」

顎を国境の向こうにしゃくり上げるバラーシャ。

「嘘と思うなら確かめてみたらどうだ。親父殿。いや大伯父殿に?」
メンテ

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