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ハーレムフロントライン 第四章 外交 @
日時: 2023/03/04 16:18
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「…」

メリシャント東部で行われた激戦は終わった。

クレオンレーゼ軍が離脱した後。すかさずメリシャント本軍に向かったフェンリッヒ隊とヴィクトリア隊も含めた一大包囲劇によってメリシャント軍は半壊。
手慣れた傭兵諸団の援護を受けながら、一路クィンクェに撤退。

しかもメリシャントにとっては運の悪い事に、先立って起きていたドモスのクロチルダ王国への侵攻も落ち着き。傭兵には傭兵とばかりの、傭兵将軍カルナップをはじめとする他戦線の兵力もメリシャント方面への増援を続々と開始していた。

それによってかねてからヒルクルスの調略を受けていた、メリシャント東部の諸城市も次々と旗幟を鮮明。いまや首都クィンクェ近くまでの東部三分の一は実質的なドモス領に。

この一大危機に、クィンクェの王宮は一大紛糾。

要するに交戦か和睦か。場合によってはニーデンベルク近くのサラマンカなどの他都市に遷都するか。
更に他国からの支援を求める案もあったが、援軍に失敗したばかりの。クレオンレーゼをはじめとする西方国家は自分たちの国境を固めるのがやっとで、とてもそれに応えられない。

奇策としては、いっそ旧オルシーニ以来の宿怨のある二重王国に求めるというのもあった。メリシャントの重臣たちとして、自分たちの縁者にも多大な犠牲を出した、二重王国にそのような依頼をするなど、屈辱どころの話ではない。
だが背に腹は代えられない。二重王国とて、オルシーニに隣接するメリシャントがドモスに征服されるのは望まないはずだ。
それを強く主張した一人が実にあのアーダーン。どうもこの度の戦で彼の多くの縁者が戦死しているらしく、いまや反ドモス派の急先鋒にすらなっているとも聞く。
要するにこの論議の本質は親ドモスと親オルシーニではなく、反ドモスと反オルシーニの激突。それだけに感情的になり易く、妥協しにくい物があった。

そして反ドモス派としての弱点は、二重王国の反応が鈍い事。
先年はディヴァン王国の内紛に巧みな介入を行った二重王国だが、オルシーニとサブリナの間で激しい戦いを行ったのは僅か数年前。その当時の痛手は互いにまだ深く、新都建設も含んだ修好活動に尽力し続けている状態。
また旧サブリナ時代からの因縁のある、ペルセポネ王国がサブリナの勢いが弱まったのを見てか一気に攻勢を強化。サブリナとしても簡単に追い払えぬ長陣状態となってしまう。
そしてここまでペルセポネが攻勢を強められるのも、反対側のイシュタール王国が内紛で弱体化した上、現状維持派が政権を独占。背後を突かれる恐れが全く無くなったからに他ならない。


「要するにあいつめ。過去の自分の失敗を、現在の味方に完全に付けているというわけか。くそ!」

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