ハーレムフロントライン 第三章 戦場 G |
- 日時: 2023/03/02 05:01
- 名前: 陣
- 「すごい…」
平凡は承知だが、そうとしか言いようの無い眼前の光景。 頭の中では考えていたものの、それら全てを無意味化させてしまう圧倒的なスペクタクル。 開けた空間の中。両軍団合わせて二万近くにも及ぶ圧倒的な数の真っ向激突。千や二千の程度を大軍呼びしている西方国家の常識とはまさに桁が違う。
既に多くの国々を征服して来たドモスは言うまでもなく、エクスターやオルシーニ、ニーデンベルグといった周辺国と対峙対決を重ねてきたメリシャントもまた、万単位の動員には慣れている。そういった世界に実際触れてみると、まるで場に不相応な気恥ずかしさすら感じてしまう。
「ふふふ」
改めて横を見る。そこには不敵な笑みで眼前を見つめるバラーシャの横顔。それを眺めると、こちらも自信というか安心感めいた物が込み上げて来る。
(やっぱりこいつを総大将にして良かった。やはり兄上だ)
そうした幕僚の心中を知ってか知らずか。前を向いたまま問い掛けて来る総大将。
「おい。で。こっちはどうする?」
「どうもこうも。打ち合わせの通り。こちらは本軍が包囲されないよう、相手を牽制するのがあくまで基本だ」
「ふん。つまらんな」
そんな中でも依然として続く押し引き。互いに無理をしないという感じで、餓狼と呼ばれるドモスとて、それは例外ではないらしい。
しかしそれにもやがて息継ぎめいた瞬間が来る。その時。いきなりこちらの周囲に響く轟音。
「な、なに?」
「魔法弾です!」
珍しく慌てた声を発するカエソニア。辺りにモクモクと立ち込める黒煙。
「慌てるな! 落ち着け!」
魔法弾に劣らぬ雷声を発するバラーシャ。それに圧倒されて落ち着きを取り戻すクレオンレーゼ軍。
やがて収まる黒煙。そして眼前に現れてくる一団。その中から大きく立てられている一本の旗。見間違えるはずの無い紋様。
(イシュタール王族旗!!)
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