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ハーレムフロントライン 第三章 戦場 @
日時: 2023/02/25 22:21
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「ようこそ。クィンクェへ」

任命された瞬間から全力で開始された派遣軍の編成。
総大将に任命されたのが人気と信用のあるバラーシャだった事もあって、参加への志願もスムーズに進行。
その事務処理にはアスレーもまたあれこれ尽力。それとなく顔を合わせようとしてくるバラーシャに対し、カエソニアが巧みに間に入る事で、業務を円滑に進めていた。

出兵は単に兵を出せば良いという問題ではない。
派遣先であるメリシャントの諒解は言うまでもなく、周辺国に対し派兵の意図の説明をも行わなければならない。
派遣先のメリシャントについてはシルヴィス王妃を介した申し入れ。表面的には要らぬ心配といった返事だったが、断りの文言が無かった事から、本音では願ってもない事だったのが分かる。あるいはシルヴィス王妃に対し暗に援軍派遣を要請していたのかもしれない。それはどうでも良い。
ただいささか関係者の感情を害したのが、後背となるイシュタールの反応。そちらもジェニファー王女を介した連絡を行ったが、その返答たるや、むしろ事前の相談が無いのを咎めるばかりの内容。多少なりともジェニファーを王太子妃に考慮されたいと望むなら、勝手な事をするなと言わんばかり。もちろん見返りの確約など何一つ無い。

「あいつら! こっちを属国だとでも思ってるのか!?」 

兄から見せられた手紙の写しをクシャクシャに丸め、思い切り床に叩き付けるアスレー。

「イシュタールのくせに! 生意気な!!」

「落ち着け。いつもの事だ。あそこの連中にとって西国外の出来事など、所詮は内輪の駆け引き材料でしかない。分かってるだろう」

「…」

「適当におだてて済む相手ならまだ安い物だ。違うか?」


その他のあれやこれやの末、ようやく出発する派遣軍。総数二千人。

それを国境で出迎えるメリシャント軍。

そして首都正面で改めて迎えに出てくる一人の青年貴族。

「どうも。クレオンレーゼの方々の接遇を承りました。アーダーンと申します」

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