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ハーレムフロントライン 第一章 凶報 @
日時: 2023/02/23 14:23
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「あの男が! ジャンダークトに!?」

激しい驚愕の声が室内に響き渡る。

時に仙樹歴1033年。ここはいわゆる西方諸国と呼ばれる小国群の北東部に位置するクレオンレーゼ王国。その中でも東部のメリシャント王国国境に近いバジルール城塞。

その一室の中で、一人の女性を前に、驚愕の表情をそのままにしている青年。クレオンレーゼ宰相家の出身にして、現宰相スマイラスの弟である、若将軍アスレー。その目の前に立つのはその副官にして、彼の乳母娘にして幼馴染でもある才媛カエソニア。

「はい。情報によりますと。ドモス王国西部方面軍司令官リンダ将軍の任命で、ジャンダークト城の城代に赴任したとの事です」

「そうか。あの男が…そこまで戻ってきたのか…」

一度は思い切り立ち上がるも、改めてドッカリと席に腰を下ろす若将軍。彼が「あの男」という呼び方をする人物は、この世で一人しかいない。
このクレオンレーゼ王国の南西部に位置し、西方諸国の中心国と目される比較大国イシュタール王国の元王子。先王ローゲンハイドの甥、そして同国の守護神として崇められた将軍ヒルメデスの息子。そして先年に同国で起きたクーデターの首謀者。ヒルクルス。

名前を知ってるだけではない。彼の人物とは個人的にも深い関りがある。かつてイシュタールに出向いた時に出会ったのを皮切りに交流をはじめ、逆にクレオンレーゼを訪問してきた時に、この城塞のこの部屋まで案内してきた事すらある。

(あの男は、あの窓から東を睨んでいた…)

かつての風景が蘇る。かつて二人だけでこの部屋で話し合っていた風景が。

(どうした。何を見ている? そこからは何も見えないよ)

(いや。見える。見ようとさえすればね。見えないのは見ようとしないだけだ)

(では何が見える)

(雲だよ。それも飛び切り黒い雲だ)

(…)

当時の風景を思い返し、再び溜め息を付く若将軍。

(まさか…あの男自身が黒い雲になるとはな…)

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