ハーレムバスタード 第四章 婚儀という名の政治 L |
- 日時: 2022/12/09 05:57
- 名前: 陣
- 「どうも。ありがとうございます」
深々と頭を下げる新婦ジュリエット。胸に輝く大きなブローチ。
それに対し、一瞬は硬らせた表情を直ぐに緩め、複雑な微笑を返すネメシス。
「いえいえ。どうも。おめでとうございます」
一瞬、激しく凍り付いた場内が一気に和らぐ。
すかさず手にしかかった剣の柄から手を離すカディアとライシュ。
そのままテーブルを離れる新郎新婦一行。
「い、今のは何です?」
一瞬、主人を守ろうと動き掛かった、セルシウスが問う。
「何って。新婦へのプレゼントでしょ。それをわざわざ手を煩わすまでもないって気を利かせただけよ」
あくまで穏やかに答えるパールパティ。
「はあ?」
「驚いたな」
「ええ」
思わず顔を合わせるクリエートとダリアナ。
「なるほど。花嫁よりも立派な飾り物は花嫁への贈り物とみなす、か。あれでは無礼を問えまい」
「そもそもそうしていた事が非礼なわけですしね」
「父上も母上たちも咎められなかった、あの姉上を恐れないビオラの度胸も凄いが、他の二人も凄いな。あれはどちらも咄嗟のアドリブだ。その二人を試したとなれば、ビオラめ。相当な奴だ」
「あれもバージゼル様のお墨付きでしょうか。正直、小気味良くないと言えば嘘になりますが。レナス家全体の威信としてはどうなんでしょう」
「そもそも父上たちが姉上の横紙破りを今まで許して来たのは、姉上に乗っ取りの汚名を負わせてしまった負い目からだからな。もし父上たちがマックリィに姉上以上の負い目を感じているのなら、話は全く変わってくる」
「…」
その視界に映るビオラ。新郎新婦が席に戻るや、後ろの楽団の席に入り、大型の弦楽器を手に取る。
やがて鳴り出す音色。
華麗に賑やかに。やがて始まるダンスの宴。
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