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ハーレムバスタード  第五章 ゴットリープの女帝 N
日時: 2022/11/26 00:45
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「そういえば」

ハタと思い至った表情のルシアラ。それに対し。

「何を?」

怪訝な顔で覗き返すルシタニア。

「今になって気が付いたけど。今度の坊やも『宰相の庶子』だったわね」

「そう。我らが偉大なる賢母ゼリア様と同じにね」

「あの時も確か。山麓朝との縁組を迫られたルドルフ様が、女王メロディアの夫君でもある、宰相シュナイゼルの庶子であるゼリア様を逆指名してかわしたと言われてるわね」

「当然でしょう。夫君と同じに、後継者も自分の一存で決めると公言して憚らなかったというメロディアよ。そんなのとまともに付き合えるわけないじゃない」

「でも。同時に下手に逆らったら噛み付いてくる危険もあったわ。それこそ後先の考えなしにね」

「それにしても。あれだけの派閥の跋扈をよく平気で許してたものね」

「それだけどの勢力もメロディアの前だけでは猫を被っていた事でしょ。本人もまた自分の子供たちが争うなんて全く考えていない。要するに信じたくない事は信じないってタイプだったらしいし」

「まるでどこかの三姉妹みたいにね」

「だから夫君のシュナイゼルは庶子であるゼリア様をこちらに嫁がせる事で、なんとか妻でもある主君をかわしたのよね」

「嫡子だから歓迎されるわけじゃない。まさに庶子ならではの効用よね」

「あとゼリア様との縁組のメリットのもう一つは、やはり母君アンナ様の関係から、カンタータ家とのパイプにもなってくれた事ね。それは今でも役に立っているわ」

「そう言えばカンタータ家の今の家老はアンナ様の直系になるユベール殿だったわね。あの方がウェルキンを引き受ける事でレナス家の不安要素を取り除いた」

いささか苦虫を噛み潰すルシアラ。

「そもそも。ウェルキンを不安要素と考える事が一番の問題だと思うんだけどね。むしろ決定要素と考える事が出来ればってね」

「でもそれだからこそマックリィの出番となったわけなのよね」

「その辺までも考えていたのかしら。ユベールは」

「とにかく。かつてゼリア様はバイバルスの行く末を大きく変えて下さった」

「そして。今度の坊やは一体何をもたらしてくれるのかしらね」

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Re: ハーレムバスタード  第五章 ゴットリープの女帝 N ( No.1 )
日時: 2022/11/26 07:54
名前: 鬼末忠次
参照: http://onisue-chuuji.blog.jp/

縁戚政治の面白いところですね。陣さんならではの面白さだと思います。雑談スレッドでも仰っていましたが、男の系譜にも政治センスのある人物がいて、女傑たちがそれを「余裕をもって利用する」と言う歴史があったようですね。マックリィもまた「余裕をもって利用される」だけの男なのか、要注目といったところです。
Re: ハーレムバスタード  第五章 ゴットリープの女帝 N ( No.2 )
日時: 2022/11/26 08:07
名前:

スペイン継承戦争が典型ですが、相続権付の嫡子が必ずしも歓迎されるわけではないって感じですよね。

首の皮一枚くらいの関係に留めるなら、むしろ庶子の方が好ましい場合もありそうで。

もちろんそのためには「尊重される庶子」である必要もまたあるわけですが。

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