ハーレムバスタード 第二章 招かざる婿殿 E |
- 日時: 2022/10/14 20:05
- 名前: 陣
- 「ずいぶんと賑やかな家になったものね」
現在のエルヴィーラ家の女主人ジュスチーヌの私室。 中央上部の壁には亡父と共に亡子を挟んだ家族の肖像画が飾られている。
「これも坊やのおかげかしら」
目の前の二人の前に置かれる茶菓子。 まるで子供のように、嬉しそうに手に取って口に放り込むマックリィ。傍でひたすら無表情のビオラ。
「前のアンドレイも良い子だったけど。ちょっと真面目過ぎだったかしら」
聞いてか聞かずか、ひたすら菓子をモグモグしているマックリィ。
「メイドたちとは仲良くやってるみたいだけど。家臣の娘たちとは断ってるみたいね。やっぱり面倒を嫌ってるのかしら?」
その視線の先はあくまでマックリィだが、明らかに話はビオラに向けられている。
「おかげであの娘たちったら、自分たちもメイドになりたいなんて騒いで、親たちを困らせてるみたいよ。あるいは狙ってやってるのかしら?」
それに答えず、無言で茶に口を付けるビオラ。それを見た娘たちが必ず見惚れる優雅な動作で。
「で。肝心のあの子とはどうしてるの?」
「あのコ?」
「決まってるじゃない。ジュリエットよ」
「御義姉様?」
「やあだ。いつまで言ってるの。もう義姉様じゃないわ。あなたの御嫁さんじゃないの」
「僕の。お嫁さん?」
あくまでキョトンとした表情。それに微笑みながら。
「私の頼みでここに来てくれて嬉しいけどね。マックリィ」
自然な様子で身を乗り出して。
「あなたって。本当に以前ここに来てくれてたマックリィ?」
その問いにもキョトンとした表情で返すマックリィ。
「以前のあなたって。いつも楽しく笑っていて、まるで天使みたいな子だったわ。もちろんあんな事があったのは分かるけど。それでも何か違うのよねえ」
スッと算盤状の物を懐から取り出すビオラ。その上に張られた弦にそっと指を置く。
それを見つつも、探るような言葉を止めないジュスチーヌ。
「噂に聞いたけど。あなたの以前の魂は死んで。今のあなたの魂は別人って。本当なのかしら?」
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