ハーレムバスタード 第二章 招かざる婿殿 @ |
- 日時: 2022/10/11 19:49
- 名前: 陣
- 「お久しぶりです。ジュスチーヌ様。ジュリエット御義姉様」
エルヴィーラ城の大広間。
エルヴィーラ家の関係者の居並ぶ中で、正面から挨拶を行うマックリィ。そして例によって斜め後ろに控えるビオラ。
思わずホウっとした雰囲気が流れる。
(これが噂のゴットリープの聖汚物…)
(一人だけでも凄いのに。この二人でなんて最高過ぎるわ)
(一日も早くウチの娘を傍に上げないと…)
(なによ。あんた自身が近付きたい癖に)
(うう。あんな美少年をこれから自由にできるなんて。ジュリエット様がお羨ましいわあ…)
周りで交わされるヒソヒソ声。
そんな喧騒を他所に、正面からマックリィを艶っぽく見詰める貴婦人。
「ほんとに久しぶり。元気そうでなによりだわ。マックリィ」
初対面ではない。かつて同母兄のアンドレイが婿入りしていた時期に何度か会いに来ている。
その言葉の底意は明らかだが、そこはそのままにかわす。少なくとも他にはそう見えた。
その中で、いかにも不機嫌といった感じで、斜め横から声を掛ける、二十歳余りの女性。
「まさか。貴方を婿に迎える日が来るなんてね。あんなに小さくて可愛かった貴方を」
今はそうでないといったニュアンスも込めたような口調。それに対し。
「はい。御義姉様」
表情は柔和だが、いかにも形式的といった調子。それに対しいささか苛立つように。
「死んだアンドレイは貴方を最後まで心配してたわ。それについて何か言う事は無いの?」
少し頭を捻るかに見えるマックリィ。そして。
「はい。御義姉様」
「ふざけないで!」
思わず立ち上がりかかるジュリエット。
その時。ビンッと鋭い音が撥ねる! いつの間にか礼服の中に忍ばせていた小楽器の弦に指を置いているビオラ。
「う…」
そのまるで刃でも飛ばされたかのような鋭さに、まるで切られたかのように、金縛りとなるジュリエット。少し置いてズルズルと席に崩れる。
しばし同じように固まっていた周囲だが、やがてしどろもどろな声が上がりだす。
(な、なんだ今のは?)
(流石は今や天下のレナス家。あのような者まで抱えているとは)
(でもカッコイイわあ)
それらに対し、あくまで平静な表情で、その場をまとめるジュスチーヌ。
「まあ。とにかく。長旅お疲れ様。とにかくまずはゆっくりしてちょうだい。エミリー」
部屋の隅から進み出る、小柄なメイド服の少女。
「はい。大奥様」
「御二人を御部屋まで御案内してちょうだい」
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