ハーレムバスタード 第一章 レナスの聖汚物 K |
- 日時: 2022/10/09 20:17
- 名前: 陣
- 「レナス家の王子様」
レナス家の末子マックリィの側付の男装少女ビオラ。 一介の音楽士上りと言われる彼女に、いつしか付けられた異名。 その意味するところは様々だが、とにかく一番の理由は彼女の品格の高さ。悪く言うなら、成り上がりのレナス家の連中の誰よりも王族っぽいという皮肉もあるだろう。
しかしそれは同時に彼女の出自についての様々な憶測を引き起こす物でもある。 単に音楽に留まらない、あれだけの異能の才能。本来ならばとっくの昔に広く大きく知られていてもおかしくない。 だが一時失踪したバージゼルが連れてくるまでの彼女の経歴は全くの不明。
今まで一度も三姉妹に対し隠し事をした事の無かった、あのバージゼルが自分からその説明を進んでする事は無かったという。 あるいはそれでも三姉妹の方から説明を求めれば答えたかもしれない。但しビオラについては、あくまでマックリィの介護に関する物。自分たちの子ではない三姉妹としては自分たちから問い質すのは気が引けた。 特にマックリィの件では、ネメシスとクリエートにも責任は無いとも言い切れず、戻ってこないケーニアスの事も合わせれば尚更である。
それらもあるが、もう一つの重要ポイントは、これまでレナス家の番頭役にして種馬の役に徹してきた、あのバージゼルが初めてその枠を超えて単独行動を取った事自体。 あるいは彼として特に意識は無かったかもしれない。しかし今までレナス家の枠内から出た事の無かった、彼が初めてそこから飛び出し、しかも誰もが知らなかった異能の才能を連れ帰ったという事実は、レナス家の権力体制に実に大きな影響すら及ぼす事となる。
ビオラがレナス家の外で作った隠し子でないのかという点も含め、バージゼル個人の存在と背景が初めてクローズアップされたのだ。 あるいは初期の夜烏衆のような、影の親衛隊を妻子たちに対しても隠し持っているのではないのかという物をも含めて。
母とは切れ、事実上バージゼルのみの子となった「聖なる汚物」マックリィ。そしてその側付の「王子様」ビオラ。
「聖汚物」な彼らを得、かくしてレナス家の物語は、また予想外の新たな展開を迎える事となる。
そしてゴットリープでのデビューを終え、次に彼らが向かう舞台はエルヴィーラ。 反目の続くドゴール家とレナス本家の間に彼らを入れる理由の一つが、マックリィに対し、それぞれに借りと負い目を持つ双方に対する抑制と牽制である事は明らかに明白。
既にこの時点で、彼らとレナス家の新たなる将来は始まっていたとも言えるだろう。
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