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ハーレムバスタード  第一章 レナスの聖汚物 I
日時: 2022/10/08 22:07
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「今日も空が青いね」

思い切り背を伸ばし、歩き始めるマックリィ。それに対し柔和な表情で後に続くビオラ。

二人の生活が始まって一年近く。あのスパルタじみたリハビリも一段落となり、外出が出来るくらいになっていた。
一時期は廃人かと思われた表情や体調も、ある程度は回復。
しかし往時を知る者たちから見れば、以前にあった純真無垢さに代わり、どことなく退廃な艶めいた物が浮かぶようになり、言動も幼児退行的な物に。
受けた残虐からすれば当然だろうが、それを合わせてもそれでは説明できない違和感を感じる者もいた。

(確かに紛れもなくマックリィだ。しかし何か別人のように見える。父上の言ったように。あるいは本当に別の新たな魂でも入れたのだろうか…)


庶子とはいえ、いまや山麓朝の実権を握ったレナス家。
その快気祝いを盛大にやる事も出来たろうが、そもそも今回のマックリィの一大悲劇は公にもされていない。

いつの世と同じく下世話な噂ほど早く広まる物。
今度の場合も周知の事実であるが、レナス家としてはそんな事件は起きておらず、他家と同様、庶子については一々構ってられないとばかりの態度で通している。

臭い物には蓋と言えば単純だが、実際の問題は政治的に遥かに深刻。
すなわちマッケリィに加えられた非道が、ネメシスがシャーミーナに加えた非道の報復だという点がまず大きい。こちらも公式には否定されているが、ネメシスがシャーミーナに加えた各種の非道、そしてそんな穢された存在を女王としたという二重の点が改めて大きくフレームアップされたのだ。
そしてこれを助長したのが、ミラージュ戦役前からのドゴール家とレナス本家の対立。ネメシスの専横と横紙破りをかねてから苦々しがっていた、本家としては改めてネメシスの軽率と責任を問う構えを見せ始め出していた。
もちろんドゴール家というかネメシス派としても当然に黙っていない。そもそもマックリィが拉致されたのは本家の領内であり、本家の警備管理がなっていれば問題は無かったのだという主張。
結局は三姉妹とバージゼルらレナス家の中枢部が強力なまでの介入を行い、双方をなんとか力づくで鎮めたが、実際の拉致犯がこうなる事を意識的に狙っていたとすれば、この事件の背景には恐ろしく深い物がある事も暗示させていた。


よってそんな中、回復中のマックリィが衆人環視の中を自然体で歩き回る事。それはそのような下世話な事実は無かったという事を示す意味において極めて重要なのが分かる。
特に性的被害者としてトラウマになっていて当然のはずの、マックリィがその美貌をもって、むしろ多くの浮名を流していれば尚更に。

それもまた自然の流れだったらしいが、いつしかゴットリープの夜の社交界の華となっていた、マックリィ。
ただでさえレナス家の機嫌を取ろうとする連中が、まだ婚約相手も決まらない、十代半ばのマックリィに娘や孫、引いては妻まで差し出そうとする有様。
まだ差し出される側にとっても、いまや魔性すら身に付けたようなマックリィは強烈に引き付けられる存在であり、政略を口実に近付こうとする向きもまた多かった。

そして皮肉にも、ケーニアスの三家婿入りに見られるように、現時点で政略結婚の玉が尽きているレナス家としては、取り敢えずの懐柔役としてマックリィが働いてくれる事はむしろ政治的には好都合。
痛ましさは百も承知であるが、いつしかマックリィはレナス家の公娼としての役割を担っていった。

そしてそんな彼にいつしか付いた綽名こそが。

「レナス家の聖なる汚物」。

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Re: ハーレムバスタード  第一章 レナスの聖汚物 I ( No.1 )
日時: 2022/10/08 21:43
名前: 鬼末忠次
参照: http://onisue-chuuji.blog.jp/

「聖なる汚物」にそんな由来が。これはこれでマックリィ、憐れですね。マックリィを標的とした政治的策謀もこれからもあるだろうし、彼がそれをどうするのか見物です。
Re: ハーレムバスタード  第一章 レナスの聖汚物 I ( No.2 )
日時: 2022/10/09 17:02
名前:

世界最初の売春婦は神殿の巫女だったとも言われますね。

最近のゴルゴ13のスピンにおける「聖なる怪物」もヒントにしてみました。

まあ一番の元祖は「聖なる遺物」でしょうが。


また「動機」と「警備」となれば、当然あの事件ですが。

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