トップページ > 過去ログ > 記事閲覧
ハーレムバスタード  第一章 レナスの聖汚物 F
日時: 2022/10/07 07:12
名前:

「僕。お婿さん?」

ようやく口を開く、当事者本人。

その声は極めて中性的で、年令を感じさせにくい。確かに背も低い小柄だが、明らかに外見より低く、どことなく幼児的な物すら感じさせる。

その声を聞くや、痛ましげな表情を浮かべる、一同のほとんど。

「レナス家の聖なる汚物」。

威称とも蔑称とも付かない、それ自体が異様なまでの響きを持つ、彼に対して、いつしか世間から付けられた呼称。それはレナス家最大の悲劇にして代償の意味合いすら持つ。

先代当主オグミオスの未亡人にして、当代当主バージゼル唯一の側室ファシリアの末子。そしてレナス家全体の末子でもある少年、マッケリィ。

生母の血を受け継いでか、天真爛漫にして純真無垢を絵に描いたような存在だった彼。その母に関係なく、弟妹に対し公平に容赦ない、あのネメシスですら声を荒げるのを憚ったと言われる存在。

あるいはそれ故に起きたとも言える一大悲劇。

それは一年ほど前。ミラージュ戦役が終結し、少なくとも旧山麓朝内部におけるレナス家の覇権が確立し、シャーミーナの擁立と、それによるデュマ家の討伐といった新体制の試金石が着々と進んでいた時期。

当時病気に臥せっていた母ファシリアの見舞いの花探しに、レネス本領内を散策していたマッケリィが突如拉致されたのだ。

今までで何度も繰り返され、当然に予想されていたレナス家への攻撃。しかし今まで無かった、一番警戒の強い本領内での継承権の無い庶子への攻撃は完全な盲点。それ故に彼の探索は徹底を極め、それぞれが抱える裏社会や旧勢力へのパイプもフル動員しての一族挙げての捜索が展開された。

かつて百年以上も前、現在の雲山朝女王の玄祖父母の出会いも正体不明の拉致による物。それは未だに伝説的なロマンスとして語り継がれていた。

しかし今度において、拉致された者が投げ出された場所。
そこはレナス家によって滅ぼされたばかりの旧山麓朝の恨みと飢えと欲望の渦巻いた地獄の場末。
そこで何が起きたかは、ようやく彼が発見された一ヶ月後に判明する。

日頃の対立を棚上げし、互いの人脈をフルに使ってようやく掴んだ末弟の居場所に踏み込んだ、ネメシスとクリエートが見た光景。

それは。まるで腐った漬物を拭いたボロ雑巾にようになった無残な残骸。
瞳は輝きを失い、口はだらしなく開き切り、ただ息をしているだけの肉人形。
何十人、いやあるいは何百人もの野獣に、四六時中弄ばれなければこうはならないといえる究極の惨状。

「貴様ら! よくも罪も無い、こんな子供を! 弟を!」

明らかに事後直後だった野獣の一人を吊し上げるネメシス。だがそんな彼女に不敵に笑い返す野獣。

「フン。ならばお前は一体なんだ!? お前が散々に虐げ弄び、遂には飾り物にまでした、我らがシャーミーナ姫様に! 一体なんの罪があったというのか!?」

「なにい!?」

「恨むなら自分自身を恨め! 出来る事なら! お前の方こそ、こうしてやりたかったぜ!!」

Page: 1 |

Re: ハーレムバスタード  第一章 レナスの聖汚物 F ( No.1 )
日時: 2022/10/06 20:34
名前: 鬼末忠次
参照: http://onisue-chuuji.blog.jp/

これは酷い。陣さんならではですね。マックリィがどんな闇を抱えることになったのか興味深いです。
Re: ハーレムバスタード  第一章 レナスの聖汚物 F ( No.2 )
日時: 2022/10/06 22:26
名前:

モデルの一つはやはりマージェニックですね。

あの先例が無ければこれは出来なかったです。


あと歴史に名高いリンドバーグ息子誘拐事件もヒントにしています。

Page: 1 |