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ハーレムバスタード  第一章 レナスの聖汚物 D
日時: 2022/10/11 19:46
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「それで。マックリィ様への御用向きは?」

従者の一言に、話があらぬ方向に向いていたのに気付き、バツの悪い顔を作る、およそ半数。

改めて横の席から、息子に向かって言い渡すバージゼル。

「話は他でもない。マックリィ。お前の婿入り先が決まった」

普通なら晴れがましい筈の言葉。しかしその口調には表情と共に、いささか苦し気な調子が混じる。
心無し気か、他の面々の顔も厳しい。父と真向いの席の母などは、顔を伏せている。

「相手はエルヴィーラ家のジュリエット殿だ」

それに対し、主人の代弁のように、問いを発するビオラ。

「エルヴィーラ家と言いますと。アンドレイ様の?」

「そうだ。マックリィにはアンドレイの後釜に入ってもらいたいのだ」


エルヴィーラ家。それはラルフィント王国の西方部に属し、レナス本家に隣接する有力家の一つ。
別の二方はそれぞれサラミス家とドゴール家に接しており、いわゆる西方四家の中心部に位置する。
数年前、マックリィの同母兄であるアンドレイが婿入りしていたが、一月前に急死するという悲嘆事が起きていた。

アンドレイの相手であるジュリエットは、その父はレナス家の先代オグミオスの妹の息子で、三姉妹とは従兄妹の関係。そして母はサラミス家の出身という、典型的な近隣婚姻の生まれであった。
但し彼女がまだ幼い頃に父が亡くなると、相続問題のトラブルに嫌気が指した、母は家を出奔。実家にも戻らず、西方由来の朱雀神殿に入信し、そのまま国をも出てしまう。
家を継いだのは父の弟である叔父であり、その妻と共に、残された彼女を慈しんでくれたが、彼らに男子が生まれると厄介者扱い。
だが不慮の事故によって、叔父と従弟が共に亡くなると、叔母と共に残された、彼女が家付娘となる。

そして各方面との間の様々な折衝の末に選ばれたのが、当時次第に勢力を強めつつあったレナス家の庶子アンドレイ。
このような場合、家の格からすれば、継承権の無い庶子など問題外だとされるのが普通。だがラージングラードに養子で入った、彼の同母長兄サハウエイは先代オグミオスの実子であるとの噂が高く、もしもそれが顕在化すれば同母弟の彼にも多大な恩恵が巡ってくるはずなだけに、結局はそれを受諾する事となる。それには彼女の母が魔法学園でレナス三姉妹の次女と交流があったという縁も強かったという。
また彼の同母兄弟妹は、いずれも生母譲りの卓絶した美貌と性格の持ち主たちばかりであり、その意味でも重宝され信用があったというのも大きかった。

特にエルヴィーラ家において、その資質が必要とされたのは、ジュリエットの義叔母にして現在の当主代行とも言える、ドゴール家出身のジュスチーヌの存在。
現在はマックリィの異母姉ネメシスが亡き婚約者の縁から強引に当主となっているドゴール家であるが、本来の血筋を引くのはその婚約者の異母姉であったジュスチーヌ。よって領民も含め、未だにドゴール家では彼女を支持する勢力も侮れない。
よってエルヴィーラ家への婿には、妻となるジュリエットと同時に、彼女と微妙な関係にあるジュスチーヌをも懐柔するという重い課題がのし掛かる。

その難事をなんとか無難にこなしていたと見えたアンドレイであったが、それだけに今度の突然死にはその辺りに関する疑惑も強かった。

「御当主様」

「分かっている。しかし今のレナス家にはもはやマックリィしか残されていない。ジュスチーヌ殿の要請でもある。マックリィ。いやお前に頼るしかないのだ。頼むぞ。ビオラ」

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Re: ハーレムバスタード  第一章 レナスの聖汚物 D ( No.1 )
日時: 2022/10/05 02:12
名前: 鬼末忠次
参照: http://onisue-chuuji.blog.jp/

「アンドルーの相手であるジュリエットは、その父がレナス家の先代オグミオスの妹の息子」は娘では?
ジュスチーヌの名前も出てきましたね。いよいよ『ハーレムパンデモニウム』ばりの退廃な感じがしてきました。


Re: ハーレムバスタード  第一章 レナスの聖汚物 D ( No.2 )
日時: 2022/10/05 19:51
名前:

まさにラルフィント版の『パンデモニウム』かもですね。

あちらが「桃太郎」なら、こっちは「悪徳の栄え」プラス「嵐が丘」って感じでしょうか。

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