ハーレムバスタード 第一章 レナスの聖汚物 B |
- 日時: 2022/10/04 23:13
- 名前: 陣
- 「お連れしました」
宰相府の中を歩き、大きな扉の前に立つ二人。
(入れ)
声と共に開く大扉。
中に大きく広がる風景。
横長の大机。その正面に座る三人の女性。 その両脇にはそれぞれ二人ずつの男女が座っている。
正面の三人がイヴゥン、オーフェン、アーリー。いわゆる「レナス三姉妹」。 右手に座るは、奥が三人の夫でありレナス家当主にしてラルフィント王国山麓朝宰相バージゼル、手前がその嫡男にして山麓朝大将軍クリエート。 向かって左手の手前はドゴール家当主にして山麓朝宮宰ネメシス、奥が先代当主未亡人にしてマッケリィの生母ファシリア。
公的な肩書に関係なく、共同家督権者三人を最上座に置く構成は、これがレナス家としての家族会議である事を表す。 この形に最も拘ったのがバージゼル。三姉妹としては夫にして当主であるバージゼルが最上座に座る事を求めたが、他の事では服従するバージゼルもこれだけは絶対に譲らなかったという経緯がある。
たかが家族会議というなかれ。少なくとも現在の山麓朝において、その最大勢力であるレナス家内部の決定はすなわち山麓朝全体としての決定。 すなわち深秘御沙汰である。
その名を内外に響かせる面々を前にしつつ、いささかも臆する事も傲然とする事もなく、ただ前に進み出るマッケリィ。 そしてその少し斜め後ろに位置する従者ビオラ。
「…」
その感慨を全く見せぬ相手に、いささか苛立った口調を発する正面中心の女性。
「遅かったな。昨日の相手はどこだ。アラート家か。シモン家か。マックリィ?」
それに代わって答える、斜め後ろの従者。
「バイバルス家でございます。イヴゥン様」
一見して僭越な行為を咎めもせず、思い切り大きな音で舌打ちして見せるイヴゥン。
「バイバルスか! よりによって最悪な! 三代も揃って恥という物を知らぬ最低の輩どもだ!!」
そんな相手に軽く首を傾げる右手の女性。
「あ〜ら。しょうがないんじゃない。お姉ちゃん。マーちゃんってとっても可愛いから。ついつい引っ張り込みたくなっちゃうのよねえ〜」
それに対し、反射的に答えるもう一人の女性。
「オー姉! いくら何でも不謹慎よ! ケーニアスがああなってるというのに!」
それに対し、何を今さらとばかりの物憂げな表情を浮かべるオーフェン。
「な〜によアーリーちゃん。あたしがここで深刻ぶった顔すれば、あの子が戻ってきたりすんの〜。もしそうならいくらでもそうしてあげるわよ〜」
|
|