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ハーレムトライアングル  第六章 時代を決めた男 J
日時: 2022/09/27 07:26
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かくしてラルフィント王朝分裂期の初期三十年を締め括る「三王大会戦」は幕を閉じた。

この名称の由来は、当時の三大勢力のトップであるギャナック、メロディア、カルシファーの三人が至近に揃った事とされ、王を名乗っていないカルシファーが二王と並ぶ扱いをされているのは、当時における彼の存在の大きさを物語る。

ただしあくまで名分を貴ぶ研究者からすれば、名称は否定しないが「三人目の王」はゴットリープで後詰していた山麓朝先王オルディーンであり、戦場での呼称は「三従兄弟妹会戦」と呼ぶべきという主張がある。
また別の意見では山麓朝王家の実質的家長は未だオルディーンであり、それまでの長きに渡る総決算としても、新参のメロディアでなく彼を入れるべきというのもある。
いずれの見解にしてもギャナックは必ず入るというのは間違いない。

そしてこの大会戦が歴史的に大きな意味を持つのは、この戦いがラルフィント王家の分裂抗争の長期固定化をほぼ決定付けたという点。

「時代を決めた男」カルデナスの隊の最終突撃に代表される最後の局面が典型であるが、この戦いは互いの戦力投入のタイミングの悪さも相まって、双方の犠牲と損害が余りにも大きくなった事でも歴史的。
その戦後処理もあって、各陣営ともにその後始末と新たな立て直しに実に十年以上もの多くの時間を費やし、その間において状況の固定化がほぼ決定的になったのだ。
またこれにはそれぞれの内部事情や地理的分布も含め、互いの勢力がほぼ均衡化し、動くに動けぬ状況になったという面も大きい。


その固定化によって皮肉にも一番の恩恵を受けたのは、意外にも最も統一に拘っていたはずのゴットリープのメロディア陣営。

結果的にギャナックの討滅はおろか、ラージングラードの回復すら叶わなかったものの、相手側にも多大な損害を与えた事によって、取り敢えず最低の絶対条件であるゴットリープの長期安寧は達成。政権の基盤をようやく安定化させる。
あくまで早期の武力統一を志向する、本人的には大いに不満の不本意だったらしい。だが動くに動けぬその間において愛する夫との間に多くの子女を儲け、一番問題のミラージュ家をはじめとする多くの方面と縁組させる事によって、以後、百年以上後の終焉まで続くメロディア朝の基礎を確立する事ともなる。
その主導者は夫の宰相だったにせよ、自らは政略結婚を拒否し、山麓朝にとって最大唯一のチャンスを潰したと後世に謗られもする、メロディアが果たしてどのような面目と胸中で自らの子女たちのそれを推進したのかは想像し難い。
しかしそうであっても、可能な限り本人たち自身の意思を尊重しようと努めていたのもまた事実。彼女の名誉と面子のためにもその点は公平に記しておきたい。

そして不肖娘の一応の安定化を見届けた事に安堵してか、先王にして山麓朝初代として歴史に名を遺すオルディーンが隠居地バルザックにおいて遂に逝去。最初の決起以来、いや四半世紀前の遭難以来長く続いてきた苦悶と苦闘の人生にようやくの幕を下ろす。
ちなみにその最後の言葉は「どこに行く?」という物だったと言われ、その意味を巡って当時より多くの論議が行われる事となる。

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Re: ハーレムトライアングル  第六章 時代を決めた男 J ( No.1 )
日時: 2022/09/26 21:43
名前: 鬼末忠次
参照: http://blog.livedoor.jp/harem_series_suki/

なるほどー。山麓朝に利したわけですか。カルシファー勢力はいずれどこかで凋落するわけですが、「三王大会戦」がきっかけになったのですか。
ミラージュ家との縁組。子沢山ならではの政策ですね。
オルディーンの最期の言葉は、以前陣さんが仰ってたオルディーン観を感じさせますね。故郷喪失者という。
Re: ハーレムトライアングル  第六章 時代を決めた男 J ( No.2 )
日時: 2022/09/26 21:50
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一気に全部行こうかと思いましたが、いささか勿体なくなったので、カルシファーとギャナックについては次に持ち越させていただきます。

まずは最年長者からって感じで。

呼び掛けの相手は自分自身か、それとも誰か特定の個人か。

それとも王朝か血統なのか。

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