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ハーレムトライアングル  第六章 時代を決めた男 H
日時: 2022/10/14 19:18
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「あっーははは!!」

登場として響き渡る豪快な笑い声。まさに獅子が笑うとすればこんな感じか。

「いやいや。全てが即答だな。どこまでもソツの無い奴だ。ソツの無い奴というのは面白味に欠けるのが普通だが、お前は無さ過ぎでかえって面白い。大した奴だ。褒めてやる」

「光栄です」

「それに。お前はあくまで我が新たな義父上殿の命に従ったまでだしな。その義父上を恨まぬ以上、お前を恨むのはただの筋違いの八つ当たりだ。そのような事をするほど私は恥知らずではない」

ホウッと和む一同。

「ただし。それでも私にとっては多くの戦場で生死を共にした大事な部下たちだ。直接の当事者であるお前を傍に置く事は、私にとってはやはりいくばくかの苦痛と拘りがある。その意味では遠くに行ってくれて正直助かる」

「当然の事です」

「まあ座れ。今日はお前の送別会だ。酌してやる」

「ありがとうございます」

すかさず場を空ける一同。流石に狭くなるが、互いに触れ合えた温かみもある。

互いに酌をし合い、和む一同。その中ではこういう話題も。

「まああの場でこいつにも言われたが、今は確かにそういう時代だ。早期の再統一が難しいとなれば、それぞれの家がもはや一つの国みたいな物だ。それぞれの都合で付いたり離れたりするのはこれからもっと激しくなるだろう」

「そういう物でしょうか」

「ああ。今度の戦は、結局はラージングラードを確保したこちらが勝った形だが、その犠牲も相当に大きい。十一年前の失敗もある。あちらの中でもっと決定的な分裂と抗争でも起きない限り、こちらから積極的に攻め込む事も出来ん。少なくとも父上はそう考えているだろう」

「ではまだまだ今の状況は続くと?」

「父上がバーミアに入られた後に生まれた私がこの年だからな。母上たちと違い、むしろ今の状況が当たり前の連中が増えればますますそうなるだろう。それが嫌なら…」

「なんよ?」

「いっそ逆に。独立でもすればいい」

思わず手を止める一同。

「若奥様。それは」

「まあ慌てるなロザンナ。あくまで仮定の話だ。ここは内陸だが、我がオレアンダーは国境に面している。このラルフィントに面している他国と規模的にも大して違いは無い。地形的にもラルフィントに対し新たな国境線を敷くにも無理はない。まあ統一時代に生まれている母上には想像も出来んだろうし、今の領主の弟にそこまでやれる度胸は無いだろうがな」

下手をするとどこまでもしゃべりかねない新妻。それにようやく口を挟む新夫。

「おい。余り大きな口で言うもんじゃないぞ。たとえ仮定でもな」

それに対し大笑いで応える新妻。

「あっーははは! あの義父上殿の息子とは思えん小心者だな。そうだ。あれをロザンナに聞かせてやれ。ほれ。あの婚礼の後の話」

「あれとは?」

「ちょっと。あたしも知らないわよ」

「あたちもー」

「親父に聞かされてないようだな。ああ。バーミアの仙樹本山でこいつと婚礼を挙げた後の話だ。婚礼の最後でギャナック王が俺の右手を取ったんだ。『最初の娘だ。よろしく頼むよ』ってね。正直気色悪かったが。その後に親父がこう言いやがった。『お前の左手は何をしてたんだ』って」

再びギクッとなる一同。思わずガネーシャの方にそれとなく視線を投げる。

「おいおい。今更なんだ。聞いただろ。よりによってこいつの前で言ったんだぜ。こいつの」

「ふふ。あれには流石に驚いたがな」

「で。何て答えたのよ。あんた」

心配げな表情の幼馴染。それに苦笑しながら。

「『親父ならどうした』って返したんだよ。そしたら何と言ったと思う?」

「わからんよ」

「『お前と同じにしただろう』ってさ」

一瞬の静寂の後、思わず爆笑の渦となる一同。

かくて一期一会の宴は遅くまで続いた。

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Re: ハーレムトライアングル  第六章 時代を決めた男 H ( No.1 )
日時: 2022/09/25 14:08
名前: 鬼末忠次
参照: http://blog.livedoor.jp/harem_series_suki/

カルシファー、かっこよすぎる! カルシファーファンとしては最高すぎる!
オレアンダーの独立話にここで繋がるわけですか。なるほどなー。
カルデナスの時代を見据える目は父譲りって感じもしますね。当のカルシファーが次世代に向けてどう動くかのか、それを考えるのも楽しそうです。
Re: ハーレムトライアングル  第六章 時代を決めた男 H ( No.2 )
日時: 2022/09/25 15:52
名前:
参照: https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/8380/1390739199/l50

ありがとうございます!

そこまで言っていただけると、ここまでやって来た事が報われる気分です。

オレアンダーの関係者が出てくるなら、やはりそこは欠かせないって感じでしょうか。

あと最後の問答は、実は有名な黒田父子からなんですよね。

大河ドラマの『軍師官兵衛』でむしろ長政が好きだった、自分としては最後にこうして欲しかったってのもありまして。

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