ハーレムトライアングル 第六章 時代を決めた男 D |
- 日時: 2022/09/21 21:21
- 名前: 陣
- 「ふわ〜終わった終わった」
注文品の届け物も終わり、家への帰途を歩くオトレーレー。
季節はすっかり秋を迎え、夕焼けも眩しい。
今日もまた平和に暮れようとしているベニーシェ村の風景。とても二十年以上前に凄惨な殺戮劇が起きていたとは思えない。
いつ見ても見飽きない平和な風景に見とれつつ、ようやく家に帰りつく。
その戸を開けるや。
「遅かったな」
中から飛び出してくる男の声。
「ちょっと。これって勝手知ったる他人の家って奴?」
「おいおい。他人か。俺たち?」
「そうねえ。愛人。それとも恋人かしら?」
今まで向けていた背を返して、正面に向き直るカルデナス。
「なら。その恋人の無事な姿に何か言う事は無いのか?」
「言って欲しいの?」
「冷たい奴だな。相変わらず」
「知ってるくせに。あたしが熱いのは仕事場だけよ」
「おやおや」
部屋に入り、荷物を下ろすオトレーレー。
「ところで。いいのかしら。こんなとこに来てて?」
「何の事だ?」
「聞いたわよ。この前の戦の褒美で、別の王女様を奥方に迎えたんでしょ」
「知ってたか。やっぱり」
「そりゃそうよ。こういう噂は広まるのが早いわ。なんせ今度の王女様って、年上で男出入りの多かったアバズレな方なんでしょ。ほっといたら怖くない?」
「おいおい」
心配げな顔を作るカルデナス。すると。
「…ま。確かに年上なのは違いないがな」
奥の部屋から聞こえてくる声。
「誰!?」
奥の方から進み出てくるもう一人の姿。
先を鞘に刺した槍をステッキのように持ちながら、不敵な顔を浮かべる、豪奢な髪の女。
「お前が噂に聞くオトレーレーか。挨拶しよう。ラルフィント王国国王ギャナックが長子にして、前のオレアンダー領主ガーネットが長女。ガネーシャだ」
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