ハーレムトライアングル 第六章 時代を決めた男 B |
- 日時: 2022/09/20 20:22
- 名前: 陣
- 「遅かったな」
敵味方の主力が移動した後の戦場。
そこに取り残されたように位置する、オレアンダー軍とカルデナス隊。 共に激しく大きく損耗し息を切らせながら、まさに一触即発のように無言のまま睨み合っている。 その力だけは最後まで残して置いたって感じで。
正面から殺してやるとばかりに睨み付ける相手に返す一言。
「ああ」
弁解は言わない。文句は親父に言えとも言わない。 ただ正面から静かに睨み返すだけ。 今のご時世、そんなこと当然だろう。当てにしてたのなら、むしろおまえらこそが甘いとばかりに。
「!!」
その意を察し、すかさず武器を向けるオレアンダー軍。 もちろんカルデナス隊も応じる構え。 文句あるか。来るなら来いと。
「ふふ」
しばしの対峙の後、不敵な笑みを浮かべて歩み寄ってくるガネーシャ。 負けじとばかりに歩み寄り返すカルデナス。
離れた高台からロザンナを抱えながら、その光景を不安げに見下ろすエミヤ。
やがて互いに手が届く距離になった瞬間。
突如としてて握ったままの槍を真横に放り出すガネーシャ。
「!?」
思わずそちらに目をやった瞬間。
「ふん!!」
手放した手の拳を握った強烈な正面パンチを、まともに横顔に食らうカルデナス! うわっとばかりに大きく後方にブッ飛ばされる!!
大きく歓声の湧き上がるオレアンダー軍!! 逆に怒号を上げ、武器を構えて動き出そうとするカルデナス隊!!
味方を制しながら、よろよろと起き上がるカルデナス。 横を向いて折られた何本かの歯をペッと吐き出す。
(…十一年前。どうせこいつに助けられた命だ。ここでこいつに殺されるのも運命だろうよ。カルディ。後は頼むぜ。親父。せいぜい上手く言い訳しな。御袋。ロザンナ。エミヤ。オトレーレー。あばよ…)
不思議と何も執着は起きない。 ただ一つだけやっておきたい事だけは思い付いた。
さっきの相手と同じく腰の剣を横に投げる。
「?」
「悪いな」
同じくそっちを見た相手にすかさずパッと動き、正面の相手を抱きすくめるカルデナス。 その瞬間、相手の口を奪い、激しく吸う! 自分で歯を折った相手の口の血も流し込まれる!
「ううっ!?」
慌てて相手を突き飛ばし、悪戯成功とばかりに笑う相手を睨み返す。
「今まではそっちからだったからな。最後はこっちからやらせてもらったぜ」
「…いい度胸だ。自分から私にそこまでやってくれた男は初めてだぞ。カワイイ坊や…」
「光栄ですな。カッコイイ馬のお姉さん…」
どっと沸くカルデナス隊。今度は逆に憤怒をたぎらせるオレアンダー軍。
「お返しだ!」
今度は自分から襲い掛かるガネーシャ!! 正面から両手で突き飛ばし、カルデナスの上に乗る!
そして上から激しくビンタを左右からビシビシと浴びせ、やがて暑苦しいとばかりに、上の鎧を自ら脱ぎ始める!
思わず双方から沸き起こる歓声!!
顔を真っ赤に腫らせながら、馬乗りの相手の挙動に驚くカルデナス!
「おいおい! まさか! ここでやる気か!? 見てるぞ!!」
「それがどうした!! 文句があるなら風呂を持って来い!!」
またもどっと沸く歓声!!
脱げ! 犯せ! 犯り返せ!
もはや先ほどまでの殺気や憎悪はどこにも無かった。
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