ハーレムトライアングル 第六章 時代を決めた男 A |
- 日時: 2022/09/16 20:44
- 名前: 陣
- 「決まったな」
その決定打の父親の感慨の如く、カルデナス隊の突入は、絶妙なタイミングもあって、このラージングラード大会戦の帰趨を完璧なまでに決した。
ハンマーと金床の関係のように両側から効果的に敵本軍に衝撃を与え、その混乱を倍加。
更にその混乱を見て、正面のギャナック本陣からリオレイア率いる近衛軍団が一気に突入。
ここにメロディア本軍は一気に総崩れ。その殿軍に転じたイーディスのミラージュ勢の決死の防戦に支えられながら、残った後方から必死に脱出を展開していく。
その光景を眺めながら、相槌を打ち合う二人。
「同感。ですな。残念ながら」
「聞き忘れていたが。貴公。自分自身で部隊を率いて戦った経験は?」
「いいえ。なるほど。どうやらそれが主因のようですな。現場を経験していたら、陛下のあの行動を当然に読めていたでしょう。策だけでは戦は出来ない。遅過ぎでしたが、やっと理解出来ましたよ」
「なあに。それを言ったら俺だって褒められた物ではない。ここ最近はあいつに任せっぱなしで、いささか現場感覚が鈍っていたようだ。ここはやはり俺自身であそこに出向くべきだった」
「で。これからどうされるつもりですか。自分と陛下を?」
「このまま二人とも捕まえてギャナックに突き出せというのか? 馬鹿な。そんな事をしたら、貴公たちよりもソツの無さそうなプラクシスがゴットリープの王になるだけだろう。そんな愚かな真似をする俺だと思うのか?」
「私たちの居た方が、むしろゴットリープの混乱と分裂が続いて好都合だと?」
「見ろ。未だに持ち堪えているのはミラージュ勢だけだ。後方から救援に動き出してるらしいプラクシス自身も加えれば、この敗戦の中、そちらで一番の株を挙げたのはミラージュだろう。お前たちを潰せば誰もがプラクシスの継承を当然と認める。違うか?」
「認めるしかないでしょうな。残念ながら。今は必要ならば貴方の尻の穴でも御舐めしますよ」
「そんな事してもらっても困るが。さてどうすれば貴公らを上手く脱出させられるのか…」
(大丈夫だよ)
「誰だ!?」
辺りを見回す二人。誰もいない。
(やあ。久しぶりだね。カル坊。シュナちゃんも一緒とは嬉しいねえ)
「なんだ。貴方ですか。賭けに負けた我々をからかいにでも?」
(とんでもない。ギャナック君からの伝言だよ。敗軍を追撃せよ。ってさ)
「それだけか?」
(そう。それだけ。今度は直接会えると嬉しいねえ)
風と共に消え去る気配。
「全く。あいつときたら。聞いた通りだ。要するに貴公らを無事向こうに送り届けろというのが、ギャナックの意思でもあるらしい」
「あの方が今回あちらに付いてると分かっただけで、もう十分ですよ。お任せします」
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