ハーレムトライアングル 第五章 運命の五秒間 J |
- 日時: 2022/08/12 09:46
- 名前: 陣
- 「おい。聞いたか。あのガネーシャ様がカルデナス殿にプロポーズしたらしいぞ」
こういう噂は広まるのが早い。
「へえ。よっぽどアレの相性が良かったって事かな」
「羨ましいというか。気の毒というか」
次の戦に備えて大わらわな中、早くも城内は噂でもちきり。当然。上の方でも。
「へえ。兄さんに。光栄だな」
「なに考えてんのよ! 獅子姉様ったら!」
「全くだ。我が母ルクレーと同様、十一年前にカルシ、いや義父様に置き去りにされ、苦労した一人のはずだ。それがどうして?」
「…」
そんな中、早朝から支度に戻り、出陣の点検をしてるカルデナス。
あのまま寝所まで一緒では足腰が立たなくなると必死で辞退し、なんとか一人で寝たが、相当に腰が痛い。周囲からの目や声は気になるが、それどころではないというのが本音。
「やあ。おはよう」
思わずギクッとする。顔を合わせるのが怖くて、背を向けたまま答える。
「おはようございます」
「おまえ。夢を見たか」
「いいえ。おかげさまでグッスリ眠れました」
「私は見たぞ。十一年前のゴットリープ。戦場で迷子を拾ってな。二人で冒険した。どうだ。いい夢だろ」
「!?」
「どうした。妬いてるのか。安心しろ。今はお前が私の第一だ」
いかにも楽し気に遠ざかる声。
(ま、まさか「あの時」の…)
ヒューヒューとした声。
「やあ。朝から景気良いねえ。大将」
「エミヤか。どこ行ってた」
「場内の噂をあれこれ。で。結局あの人が奥方様。格好良さそうやね」
「まあな」
そこに加わるもう一つ。
「カルデナス様」
「ロザンナか。いつ戻った」
「カルシファー様からの御命令です。今日の戦ではカルデナス様の傍で補佐を行うようにと」
「我が愛しの義妹殿が思い切りむくれそうだな。そっちにもちゃんと挨拶してくれよ」
「承知いたしました」
立ち去っていく後ろ姿。それを見送りながら。
(親父の奴。アイツに何を指示したんだ…)
|
|