ハーレムトライアングル 第五章 運命の五秒間 G |
- 日時: 2022/07/29 00:19
- 名前: 陣
- 「ええい! あのバケモノめが!!」
遂に始まった主力激突。雲山朝軍の先鋒オレアンダー軍が真っ向から山麓朝軍の前衛に挑み掛かる。 普段はラルフィント西部国境において外部からの侵入に対処しているため、中央での内乱に参加する事はほぼ皆無。ここまでの一挙投入はそれこそ十一年ぶりといっても良い。 それを率いるは前オレアンダー当主ガーネットの長女にして、雲山朝ギャナック王の長子ガネーシャ。父であるギャナックが僅か十三の年に真っ先に儲けた子供であるだけに、既に年令も二十五だが依然として独身。「鬣のある雌獅子」と言う異名通り、まさに猛女猛将というタイプであり、数多い弟妹たちのほとんどが会うのを避けて通るとまで言われる。 その風貌は母と共に、その最初の主人にして愛人でもあった大叔父ラプラコーンを髣髴するとも言われる。もちろんラプラコーンは彼女の生まれる数年前に亡くなっているが、やはりラルフィント王家の武断的な血の顕現とも言えるかもしれない。
「第一、二陣が突破されました!」
「後陣を前進させて厚みを加えよ!」
幕僚として中央に坐する女王の横から指令を飛ばすアンナ。
「ええい! 手緩い! 馬を引け! 私が出る!」
「いけません! まだ戦は始まったばかり! 陛下が出る幕ではありません!」
「く! こちらにもアレに対抗できる者はおらんのか!?」
父上は恩知らずのギャナックより遥かに年長の叔父のはず。なのに何故にあのような頼りになる兄弟姉妹を自分に授けてくれなかったのか。 ええい分かってる。もしそんな事になれば競争者を増やすだけだと。 なのに何故バーミアの連中は私よりも遥かに多い兄弟姉妹があそこまで争いもせずに一丸となっている。能力的にはギャナックもギャルソンも凡庸としか言えない輩のはずだ。なのに何故だ。 血か。血の秩序なのか。
「…」
「陛下?」
「ええい! 少し考えていただけだ! 問題ない!」
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