ハーレムトライアングル 第二章 門外不出の王 E |
- 日時: 2022/07/02 17:25
- 名前: 陣
- 「ホワイトホース…女学院!?」
いくら勅命の御荷物とはいえ、常宿の迎賓館に迎えるにはそれなりの用意や準備が必要という事で、取り敢えず引き渡しは翌日と決定。 その辺の手配を手慣れたロザンナに任せ、翌日エミヤを連れてのバーミア観光に赴くカルデナス。 久しぶりのバーミアだが、数年前に比べても相当に首都としての整備開発が進んでいる。中心部の享楽と背徳の都ぶりは相変わらずだが、周辺部では各種の多様な一般系の施設が増えている。
(それにしても女学院とはな。てっきり娼婦の養成所かと思ったじゃねえか)
十一年前の一時陥落によってゴットリープの脆弱性が証明された事もあり、安全性を重視する業者層が、バーミアへの移転や分割を進めているらしい。 現在バーミアを拠点とする雲山朝としては人や物の集積が進むという意味では願ったり叶ったりだろう。ただし本来はあくまでゴットリープ帰還までの一時の臨時首都という建前からすれば、バーミアの恒久化は分裂の固定化にもつながるわけでもあり、まさに痛し痒しといったところか。
「よおよお兄さん。傭兵の口なら、信用第一の錦屋にお任せな」
やはりこういう風体をしてるとそういう風に見られるのか。
「一応これでも王族の端くれのはずなんだがなあ」
「そうよんねえ」
思わず二人で顔を見合わす。
「それにしても。どうやってベニーシェにまで連れていくのか。まさか檻に入れてくわけにもいかないしなあ」
「前のオレアンダー公みたいにん?」
前オレアンダー公ガーネット。元は俺の大叔父の一人だった西方の実力者ラプラコーンの懐刀にして愛人。一時期は幽閉時代のギャナック王の預り人であり、その時の処遇ぶりが現在の両朝時代の引き金になったとも噂される。最初のバーミア攻撃にも加わっていたが、結局はギャナック王の軍門に屈し、現在は王との間に生まれた息子の後見役としてオレアンダーの自領に健在らしい。それこそ山麓朝側の元ミラージュ公リフィルのように。
(ミラージュ公か)
現在のミラージュ公はリフィルの次男プラクシス。その前は兄のペルセウスで、異母妹のメロディアと山麓朝の王位を争い、不審な死を遂げたとも聞く。
(そういえば。確かこっちも異母兄妹だったな)
昨夜のギャルソン王太子の言動がいささか引っ掛かっていただけに、エミヤに意見を聞く。
「決まってんじゃん。妹ちゃんを愛してんのよ」
「愛してる? 妹なのに?」
「おかしくなんかないよ。心当たりないん?」
無いどころではない。妹はいないが、俺には大勢の異母の姉たちがいる。今はほとんど近隣や家臣の元に嫁いでいるが、家にいた頃はそれは凄かった。 少なくとも俺の知る限りでは俺が親父の最初の男子だったためか、とにかく色々な意味で可愛がられた。 なかでも最大の危機だったのが、俺が浴場で姉たちの裸を覗き見していて精通を迎え、あわや集団逆輪姦されかかった時だ。 流石はあの親父の娘たちだけあって、誰が俺の童貞を頂くかで殺し合いを始めるかという騒ぎになってしまい、結局は偶然近くにいたロザンナが頂くという形でその場を収めた次第だ。 その結果、ロザンナは俺の姉たちの不興を買う羽目にもなってしまった。元々が親父の最新の愛人として、姉たちの母親たちの不興を買っていただけに、まさに重なった災難。結局は俺の教育係とする事で決着が付いたが、とにかくあの件ではロザンナに済まなかったとしか言い様がない。
そしてそんなロザンナを不快がらなかった唯一の例外が俺たち兄弟の御袋コンスタンチア。とにかく御祖母様コンスタンス譲りの陽気な天然肌。今頃はまた親父の他の女たちやウチの連中の女房どもと賑やかにドンチャン騒ぎだろう。それこそ息子の身の心配など全くせずに。 ちなみに親父より十も下の御袋がウチに嫁いで来たのは、それこそ十の年。当時からあの調子で、ウチの誰からも好かれ愛されるマスコットにしてアイドルな存在だったらしい。 そんな御袋に親父が初めて手を付けたのがいつだったかは分からない。あの複雑な性格の親父からすれば、直ぐとも俺が出来るギリギリとも思えるし。互いの母の血縁もあってか、どことなくその従兄であるギャナック王にも似ている御袋なだけに。 それもあってか御袋が親父に与えた影響には相当な物があるそうだが、一番確実なのは御袋が来るまではむしろ妖艶な年上趣味だったらしい、親父の女の嗜好を初心な年下趣味に変えた事。でなければロザンナに手を出す事もなかったろう。
(ま。あのロザンナとも上手くやってる御袋だ。単純バカのアイツくらいなんか別にどうって事もないだろ)
やっと話が最初に戻った。
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